Re: 新世界への神話Drei 12月29日更新 ( No.82 ) |
- 日時: 2016/12/31 19:49
- 名前: RIDE
- 参照: http://soukensi.net/perch/hayate/subnovel/read.cgi?no=24
- どうも。
なんとか年中に38話を終わらせることができました…
そでは、どうぞ
6 シャーグインと一体化している達郎の姿が若干変化し出しているのだ。フォルムがシャープから丸みを帯びた流線形のフォルムへと。
それを見たシェルドは呟く
「形態変化か…」
精霊と一体化している使者はその姿を戦況に合わせて変えることができる。これにより、どんな戦いにも対応することができる。それ自体は特に高等な技術という訳ではないため、青銅クラスでも使えるのだ。
「できたのは偶然だったけど、達はそれをうまくものにできた」
佳幸がそう言う頃には、達郎の形態変化が終わっていた。
それまでは従来のシャーグイン、シャチやサメに近い鋭いシルエットだった。それからどちらかといえばイルカを想像させる、角が取れた姿へと変わった。
「その姿がどういう能力を持っているのか、見せてもらおう」
シェルドは達郎のアクションに身構える。あの形態がどんな力を使ってくるかわからないので、まずは様子見といったところだ。しかし、達郎は動こうとしない。
ならばこちらから仕掛ければよい。実力はこちらが上なのは明らかなのだから、油断しなければ大丈夫だ。
達郎に向かって殴りかかるシェルド。しかし、その拳を達郎はかわした。
「なんだと!?」
シェルドは驚きを隠せなかった。今まで自分の速いパンチを、達郎は見切れなかったはずだ。それが今になってかわされるのか。
もう一度、達郎に攻撃して見る。二回目も避けられてしまう。
いや、拳が当たった感触があった。それが、受け流されたように思える。
加えて、もう一つ注目したことが。達郎の回避する動きが曲線のようだったのだ。これによって、シェルドは理解した。
「その形態は、防御に特化しているのだな」
防御能力を強化。といっても、相手の攻撃を受けて耐えるのではなく相手の攻撃を受け流せるようにできるのだ。
そんな防御に強くなった達郎だが、なんと彼はシェルドに向かって駆け出していった。
防御タイプが自分から突っ込むなんて、無謀もいいところだ。やはり甘いなと思いながらシェルドは拳圧を連続で繰り出した。ところがこれを、達郎は曲線を描くような動きで次々とかわしていく。
まるで、しなやかに泳ぐイルカのように。
「あのような動きをされては、当てることができん…」
直線的な軌道では曲線な動きを捉えることはできない。達郎の新形態はシェルドにとっては苦手ということだ。
曲線な動きで攻撃をかいくぐって、達郎はシェルドの懐にまで迫ってきた。
「だが、まだ甘い!」
そこでシェルドはフックを繰り出した。フックも曲線を描くパンチ。達郎を捉える事ができるかもしれない。
予想通り、拳は達郎に当たる。しかし、達郎は体の柔軟性を活かしその威力を受け流しつつ逆襲の蹴りを見舞った。
決まった。達郎は自信を持っていた。
だが、シェルドには怯んだ様子はなかった。それを察して、達郎は即座に距離をとった。自分がカウンターを喰らう訳にはいかない。
「確かに、防御能力は高くなった。それは誉めるべきだ」
ここにきて、シェルドはようやく達郎の実力を認める。
「だがそれでも、この俺に勝つことはできない」
それは、負け惜しみという訳ではない。
「防御はよくなったが、この俺に決定打を与える力がないままではないか」
そうなのだ。既にハイドロスプラッシュが通用しないことを証明されてしまった達郎には、シャーグインのパワー不足も相まってシェルドにダメージを与える手がないのだ。
「確かにそうだな」
だから、達郎は決意した。
「俺の力全てを、あんたにぶつけるだけだ」
達郎の力が高まり出した。
「おまえ、自分の全ての力そのものをぶつける気か」
シェルドは若干眉をひそめたような声をもらす。
力の全て。それは永遠に眠ったままになるまで力を使いきるということではないのか?
仲間たちも、心配になってくる。
「達郎、まさか…」 「大丈夫」
しかし達郎の考えはその疑念と違っていた。
「特攻みたいなことはしねえよ。ただ戦えるまでひたすら頑張るだけだ」
そう言って、シェルドに挑んでくる達郎。シェルドの攻撃を上手く防ぎながら攻めようとするも攻撃を決めることができない。
しかし達郎はその手を止めなかった。技や策などの小細工なんて今の達郎には持っていないし、あったとしてもシェルドには通用しないだろう。
それでも、達郎は戦いを止めなかった。それは戦いを始める前から抱いていた気持ちによるところもある。
花南や優馬、ハヤテたちの戦う姿を目の当たりにして、達郎は心を打たれていた。それに、ここで戦わなくては陽子や夜光に顔向けできなくなる。
「達郎、後は私たちに任せて下がりなさい」
だから、花南の言葉も聞き入れなかった。
「ふざけんな!俺の戦いだから、最後まで俺がやる!」
自分のために、陽子や夜光のためにも最後まで戦う。
その純粋な思いが、達郎からサメのようなオーラが浮かび上がらせた。水属性の魂の資質は純粋ということを、示しているように。
しかしいくらパワーを増すことはできても、攻撃のチャンスはこれで最後だ。決めることができなければ、それで終わりだ。
達郎はシェルドに対し、最後の攻撃を行おうとする。
その気迫は、今までの中で一番凄まじいものであった。だからシェルドも、全力で応えた。
「グランドフィスト!」
先程のものとは違い、速度がかなり上がっている。恐らくは威力も。
これは、受け流すなんて簡単にできない。
だから、達郎は下手にかわそうとはせず、そのまま真正面から受けた。
「直撃!?」
ハヤテたちは驚いてしまう。
だが、これが達郎の狙い。この瞬間に自分の力の全てをぶつける。
達郎の右手を中心に、水が渦巻きはじめる。
「スクリュートーピード!」
渦巻く水と共に拳を回しながらシェルドに叩きこんだ。あたかも魚雷のように。
グランドフィストを放った直後なので、シェルドは回避することができない。
シェルドもまた、達郎の新必殺技をガードせずに受けるのだった。
「相討ち!?」
単に結果だけを見ればそうだが、達郎が初めてシェルドをふっ飛ばしたのだ。達郎にとっては大きな意味である。
「攻撃が通じた…」
先程までと違い、新必殺技は確実にシェルドにダメージを与えることができたのだ。黄金の使者にも通じる必殺技を身につけた喜びは大きい。
「この技も事前の特訓で得たものか?」
ゆっくりと起き上がったシェルドは、一応聞いてみた。
「いや、たった今思いついた技なんだ」
それががむしゃらにやってきた成果だと達郎は信じていた。
「その努力は本物ということか」
シェルドもそう受け取っていた。
達郎は思っていた。このような戦いではないにしろ、父も仕事で困難に面した時、自分のように力をつくしたのだろう。
ただ、父には傍に仲間がいた。母や、佳幸の両親、他にも大勢が。
そして、自分にも…。
「これから先も戦いがあるが、それでもあがき続けるか?」
このシェルドの問いに、達郎は強い意志を持って頷いた。
それにシェルドは納得したようで、フィストネルとの一体化を解いた。
「ならばその先へ進み、あがき続けるがいいさ」
そして、シェルドは達郎たちに道を空けた。
「あがき続けるさ」
そう言って、達郎はシェルドを後にする。ナギたちも彼に続く。
達郎の後ろ姿を見送っていたシェルドは、彼に自分の姿を重ねていた。
「俺もあいつのように頑張っていたな」
精霊の使者となったばかりの頃、あこがれの人目指して修行していた。そして若輩ながら、あの人と同じ黄金の使者となった。達郎のように努力して。
「あなたの前まであいつらが来たら、どうなるんでしょうかね、師匠」
その場面を想像し、シェルドは思わず笑みをこぼすのだった。
これで第38話は終わりです。 2017年もよろしくお願いします
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