Re: 新世界への神話Drei 5月6日更新 ( No.69 ) |
- 日時: 2015/08/14 21:32
- 名前: RIDE
- 参照: http://soukensi.net/perch/hayate/subnovel/read.cgi?no=23
- またまた久しぶりの更新となります
どうぞ
4 「ここは…?」
気がつくと、ナギたちは不思議なところにいた。
全てが灰色の世界。上下感覚はあるものの、距離感がつかめない。自分たちも含めて、全てが曖昧にされている。
「もしかして、死後の世界というものでしょうか」 「やめてよ風!笑えないわよ!」
海は冷や冷やとしている。風の場を和ませるジョークだとしても、この状況ではそれを否定することしかできない。
「そう思われても仕方ないよな、この場合」 「なんか灰色の、はっきりとしない世界にいるんだからな」 「ちょっと!いい加減にして下さいって!」
他の者たちまで風に調子を合わせるものだから、ヒナギクも黙っていられなかった。
そんな彼女たちを余所に、ナギは何かを考え込んでいた。
「どうしたの?」
光は気になって彼女に聞いてみた。
「いや、私たちってあの不気味な大きなものに喰われたよな」
それははっきりと覚えている。あんなに食べられたくないと騒いでいたのを直前まで聞いていた。
「それなのに、どうして私たちはこうしていられるんだ?」 「ああ、それは…」
氷狩はナギの傍を指差した。
「そいつのおかげだ」
その先にあったのは、ナギがスセリヒメであることの証。
「龍鳳…」 「俺たちはどうやら魂を喰われてしまった。けど、龍鳳が守ってくれたから俺たちはここにこうしていられる」
喰われた魂は消えていくのだろうが、それを止めることができるものは自分たちの中では龍鳳しか考えられない。
その龍鳳を、氷狩は探るような目つきで見ていた。龍鳳が自分たちを、いやナギを守るために自ら力を使った。この場合、そうとしか考えられない。
ではやはり、ナギはスセリヒメに選ばれたということなのか?
「けど、それじゃあハヤテはまだ戦っているのか?」
ナギの問いに、氷狩はそちらに引き戻された。
「ああ、そうだろうな」
その答えを聞いてナギは少々思案し、そして意を決した。
「よし、早くここから出よう!」 「ええ?」
確認する様な応対に、ナギは続けて言った。
「ハヤテがまだ頑張っているんだ。だから、私たちもここでじっとしているわけにはいかないのだ!」
氷狩は思わず感心した。てっきり弱音を吐くかと思っていたが、ここで奮起するとは彼の予想外だった。ハヤテの存在がそうさせているのだろう。
「…そうだな」
氷狩は頷く。そして、彼だけではなかった。
「ハヤテ君一人だけじゃ、心配だものね」
ヒナギクをはじめとして、皆気を奮い立たせる。これもナギがもたらした影響なのだろうか。
スセリヒメとして認めるかどうかは別として、評価を改めるのだった。
「さて、それじゃここからどうやって出るか…」
脱出方法を考え始めるが、そんな暇は彼らに与えられなかった。
周囲に自分たち以外の気配を感じ、辺りを見渡す。
「どうやら、歓迎されているようだな」
いつの間にか彼らは、無数の亡者たちに囲まれていた。どこから現れたかはわからないが、数えるのが嫌になるほどだ。
「もう、いい加減にしてよね!」
幽霊の類が苦手なヒナギクはもううんざりしていた。
そんな彼女の叫びを無視するかのように、亡者たちはこちらに向かって駆け出してきた。
「やろうっていうんなら、こっちだって!」
エイジは一歩前に出て迎え撃とうとする。しかし、何か様子が違うことに気づき戸惑う。
「あれ、一体化できない?」 「このバカ!」
何がいけないのかわからないエイジに佳幸が咎めた。
「僕たちは今魂だけの存在なんだぞ。肉体がない以上、一体化は無理だ」
佳幸の言うとおり、一体化は自分の身体を変質させるもの。肉体がない今の状態では、一体化は不可能なのだ。
「まったく、そんなことにも気付かなかったのか」
困った奴だなと笑う達郎。だがその態度がどこか怪しい。
「こいつもわかっていなかったな…」
全員心の中でそうつぶやくのであった。
「一体化ができなくたって、こいつらを相手にすることには変わりはねえ!」
エイジは人型形態のウェンドランに亡者へと攻撃させる。ウェンドランは武器をうまく取り回し、時には亡者を殴って攻撃する。
どうやら亡者たちは大して強いという訳ではないみたいだ。ウェンドランの一撃一撃に次々と倒されていくところを見ればわかる。
ウェンドランに続くように、ヴァルキリオンやムーブランたちも戦い始めた。光、海、風の三人も剣を取り出して斬りかかっていく。
一体一体は容易に倒せても、数はきりがない。ナギあたちがこの場から脱出するための戦いは、そう早く終わりそうにはなさそうだ。
今回はここまでです
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