Re: 新世界への神話Drei 5月10日更新 ( No.66 )
日時: 2014/11/02 22:38
名前: RIDE
参照: http://soukensi.net/perch/hayate/subnovel/read.cgi?no=23

半年ぶりとなってしまいました…。

それでは、今回から第37話です。
どうぞ


第37話 霊に吹く風 

 光、海、風という同行者を連れ、ナギたちは先を進んでいた。

 次なる関門は、第四の間。

 そこを目指して、ハヤテは意気込みを新たにしていた。

 後を託した兄、雷矢の分まで戦うと。

 そんな彼に、話しかけてきた者が。

「そんなに肩に力を入れるな。気張りすぎだぞ」
「す、すみません。って、え……?」

 その声にハヤテは眉をひそめた。主や頼れる仲間のものではない。彼らに比べると厄介な、関わりたくない相手だからだ。

「まったく、それでは途中で力尽きてしまうぞ」
「ちょっと、神父さん!?」

 ハヤテの傍に、いつの間にかアレキサンマルコ教会の元神父であり、秋葉のロード・ブリティッシュを自称する男、リィン・レジオスターがいた。

「なんでここに来たんですか?」
「そりゃあ、リアルで度肝を抜くバトルが見れるというのに、あのアパートで留守番なんてできるわけがないじゃないですか!」

 子供のような言い分に、ハヤテは頭を抱えた。いい大人なのに、人の金でフィギュアを購入しているこのオタクに、散々悩まされているのだ。大人だけに、質が尚悪い。

「それにほら、私は一応君に憑いているという設定だし」
「ああ、そうでしたね…」

 ハヤテはたった数分のやり取りだというのに気だるさを感じていた。リィンを相手にするのは、本当に面倒くさい。

「おーいハヤテさん、何やっているんですか」

 すっかり肩の力が抜かれてしまったハヤテに、仲間たちが呼びかけてきた。気がつくと、ハヤテは彼らからかなり離れていた。

「一人でおかしな行動とっていると、置いていくぞ」
「すみません、すぐ行きます」

 仲間たちはリィンのことなどいないかのような言動を取っている・

 それもそのはず。彼らは本当にリィンのことが見えないのだ。

 実はリィンはすでに死んでおり、自爆霊としてハヤテに取りついているのだ。だから霊を見る力がなければリィンのことがわからないのだ。

 ちなみにリィンの死因は、自分が立てたダンジョンの罠にかかってのこと。教会の寄付金を私的な趣味のために使ったのだ。神に使えるものとしてあるまじき行為に、天罰が下ったのかもしれない。

 しかし、色々と性格に問題があるとはいえ彼は神父。

「気をつけたまえ」

 神妙な面持ちでハヤテに語りかけるその姿は、静かな威厳があった。ハヤテは胡散臭そうに振り返るが、リィンは構わず語り始めた。

「この先の第四の間、何やら怪しい気で満ちている」

 抽象的な内容なので無視してもいいのだが、一応ハヤテは聞いてやることにした。

「そう。この私が引きこまれてしまうような、そんな気が…あれ?」

 しかし、真面目に聞いていたのは最初だけでハヤテは途中から再び先へと進みだしていた。

「ま、待て!話は最後まで聞け!」

 リィンは慌ててハヤテの後を追いかける。

 そんなハヤテは扱いはぞんざいでもそれでもリィンの忠告はちゃんと受け入れていた。この男が真剣に話している時は、ごくまれだがその内容に深みがあったりするのだ。

 今回も、彼の話は核心を突いていた。それは、第四の間に着いてすぐにわかった。

「ああ、なるほど…」

 門の前に刻まれた文字を見て、ハヤテは納得した。

 そこには、霊の間とあった。つまりこの間には霊の力に満ちていて、幽霊であるリィンはそれに引き寄せられたということだ。わかってしまえば呆気ないものである。

 しかし拍子抜けしている場合ではない。

「霊の間ってことは…」
「ああ、あいつだ」

 この中で待ち受けている相手が霊の間ということから容易に察することができた。その人物を思い浮かぶだけで気が引き締まる。

 ゆっくり門を開けて中へ入ると、そこはやはり因縁の相手がいた。

「よう、よく来たな」

 霊のファムザックが使者、サイガが不敵な笑みでハヤテたちを出迎えた。



今回はここまで。
久しぶりの割に短くて済みません…