Re: 新世界への神話Drei 7月25日更新 ( No.61 ) |
- 日時: 2013/09/28 17:50
- 名前: RIDE
- 参照: http://soukensi.net/perch/hayate/subnovel/read.cgi?no=23
- また更新に大分間が空いてしまった…
早く進めたいんですけどね…
6 ミークが発した光によって一瞬視界を奪われてしまう優馬たち。 すぐに目が利くようになると、周囲がまた青空であることを確認する。事前にアースフィールドを展開していたので、今回は落下することはない。
「何かと思えば、さっきと同じような技じゃねえか」
達郎は胸を撫で下ろしていた。もっと規模の大きい、威力の高い攻撃を想像していたのだがその予想に反していたので安心しきっていた。スカイフィールドが一度破られていることもその要因となったのだろう。
「全く、芸のない奴だな…」
そのため敵の手中にいるというのに完全に達郎は油断しきっていた。そんな彼に、牙が剥かれた。
どうしてやるかと口にしている達郎は、突然間近で起こった爆発に巻き込まれてしまう。
「達郎!?」 「大丈夫か!?」
爆発音を聞いて、優馬たちは急いで達郎に無事かどうか確認を取る。
「平気っス」
ダメージは負ったみたいだが、立って話ができるのなら大したことはないだろう。
達郎が答えたのも束の間、今度は塁が脅威にさらされていた。
「な、何だこの風は…?」
身も裂くような猛風を前に、塁は腕でガードの構えを取る。吹き飛ばされそうになるが、なんとかこらえ切った。
この風も先程の爆発も、誰の仕業かわかっている。
「ミークはどこだ?」
ハヤテたちは犯人の姿を探すが、どこにも見当たらない。
姿を消して、どこかに隠れているのだろうか?
「どこにいる?姿を見せろ!」 「こそこそしているなんて卑怯よ!」
塁とヒナギクは周囲に向かって叫んだ。正々堂々とした性分であるこの二人にとっては、姑息な戦法など好ましくないものだ。
だがいくら呼びかけても、ミークは姿を現さず返答もしない。敵の求めに素直に応じるわけがないとわかってはいるが、それでも腹立たしくなる。
「優馬、ユニアースの角で見つけられませんか?」
伝助は至極冷静に提案した。ユニアースの角が持つ索敵能力ならば発見できるかもしれない。
優馬は伝助に頷いた後、槍の能力でミークを探し出す。彼はしばらく無言のまま槍に集中していた。
ハヤテたちも、その真剣な雰囲気に呑まれて黙っている。
「……ダメだ」
やがて、優馬は少々悔しそうに首を振って作業を止めた。
「ダメって、どういうことだ?」
予想外の答えに、ナギが若干意外そうな調子で尋ねる。
「まさか、ここもロクウェルの時と同じように、索敵能力を阻害する何かが放たれているんじゃ…」 「いや」
氷狩は山の間での戦いから仮説を立てたが、優馬はそれを否定する。
「ユニアースの角はちゃんと機能している。ミークがこの場にいることは角も捉えている」
その証拠に優馬は槍を見せた。槍は索敵中だということを示す光を点滅している。
「だが角はミークがここにいることはわかっているのだが、どこにいるのかわからない。突き詰めて言えば、本当に隠れているのか、実体が掴めないのか、とにかくどう言えばいいのか困っているみたいだ」 「なんじゃそりゃ」
話を聞いて、エイジたちも困惑してしまう。何を伝えたいのかわからない以上、こちらだって理解不能だ。優馬の言い回しが回りくどいこともその一因でもあるのだろう。
「どうかしら?私のスカイデッドホールは」
彼らが混乱している中、この場全体にミークの見下すような声が響いてきた。
ハヤテたちは辺りを見渡すが、やはり彼女の姿はどこにも見当たらない。そんな彼女に向けて、ミークはさらに続けて言った。
「このスカイデッドホールは、スカイフィールドと違って相手を閉じ込めることに特化した必殺技よ。私の作った異空間に飛ばされ、苦しむがいいわ」
ミークが作った異空間ということは、ここは天の間ではないということだ。言われてみると、スカイフィールドとは確かに雰囲気がどこか違う。発している力もより強いものを感じる。
しかし、ミークの姿が見えない以上攻撃のしようがない。ミークにダメージを与えればこの空間も消えるはずなのだが、これではどうしようもない。
逆に、ミークの方は何時でも攻撃可能で、尚且つ反撃を受ける心配はほぼないため思う存分攻撃ができる。
「その忌々しい陣、かき消してあげるわ」
その言葉に続くように、何かが削り取られるような音が聞こえてきた。
まさかと思って優馬は音がする下の方向を見た。途端、彼は焦り出した。
アースフィールドの円陣が、外周から削り取られようとしているのだ。これも、ミークの攻撃に違いない。
「おまえら、端に寄らず中心に集まるんだ!」
優馬が皆に呼びかける。陣が削られていく中で皆がバラバラに散っていたのでは危険である。少しでも安全を確保したいなら一か所に集まってもらわねば。
ミークは慌てふためく自分たちの姿を見て大層ご満悦だろう。虫唾が走るが、今はこらえるべきだ。仲間たちの安全の方が優先すべきである。
だが、逃げ遅れたものがいた。
達郎が崩れていく陣に足をとられ、踏み外して落下しそうになる。
「達郎!」
陣から転げ落ちそうな達郎の腕を、優馬が間一髪のタイミングで倒れこみながらも掴んだ。
「くっ、俺は力自慢ってわけじゃねえんだが…」
悪態をつきながらも、優馬は精一杯の力で達郎を引き上げようとする。自分で言うだけあって中々達郎は持ち上がらないが、手はしっかりと掴んでいた。
「無謀なことをするわね」
その光景を見て、ミークは嘲笑した
「足手纏いを助ける余裕なんてないはずなのに手を伸ばすなんて、そうとしか言いようがないわ」 「黙ってろ…」
優馬は苦しそうに息をつきながらもミークに言い返す。
「俺の勝手だろうが。口出しするんじゃねえ」
そんな彼の必死な姿を、ミークは面白いものの様に捉えていた。だから標的を、アースフィールドから優馬自身へと変えてきた。
優馬に集中攻撃を加え出したミーク。特に重点して爆撃したのは、達郎を掴んでいる手から腕にかけてだった。
まるでいたぶるかのように攻撃を続けていくミーク。だが、優馬はそれでも達郎から手を放したりはしなかった。
「意外としぶといわね」
ミークは頑として達郎を助け出そうとしている優馬に呆れと関心を抱いていた。
「どうあってもその手を放さないつもりね」 「当たり前だ」
確固たる思いを込めて、優馬は語る。
「こいつを助けることができるのは、俺だけだからな」
状況は彼の言う通りであった。優馬以外の味方は手が出せないよう、ミークが起こしている猛風に煽られ動けない。優馬をいたぶるのに邪魔はさせないというミークの徹底的なやり方だ。
そのため自分一人で達郎を助けなくてはならない。だからこそ優馬はここで手を引きたくないし、仲間たちも優馬がうまくやれることを祈っている。
「俺が手を放したら、こいつを助けることができなくなる。そしたらこいつは何もできなくなるし、俺もこいつに対して何もしてやれなくなる」
この手を放すのは簡単だ。だがそうすると後悔してしまう。そして、それを取り消すことは絶対にできないのだ。
特に命に関してははっきりとそう断言できる。五年前の先代のスセリヒメの件や医者として多くの患者たちを診てきた優馬だからこそ、説得力のある言葉だ。
「誰かが一人だけの力ではどうにもならない時に、俺はそいつを助ける。見捨てたくないっていう気持ちになっちまうからな」
我ながら饒舌だな、と優馬は感情的になっている自分を皮肉っていた。
だがその熱い感情こそが、達郎を掴む手を放さない所以であった。そんな彼の腕に着けているリングが微かに発行した。
優馬が持つ魂の資質に、リングが反応したのだ。
「いくぞ達郎!」
その瞬間、優馬から薄くぼんやりとしてわかりにくかったが、一角獣と思わしきオーラが発生した。そして、少しずつ達郎を持ち上げていく。
花南ほど確かではないが、仲間を助けたいという感情がマインドを発動させたのだ。
そんな彼に、ミークは再び猛攻を仕掛けてきた。
「……目障りね」
マインドに目覚めたから脅威として捉えたわけじゃない。優馬の人を助けようとする感情と、そんな彼に仲間がいることに苛立っているのだ。
自分だって明智天師のために戦っている。別に見返りを求めてのことではない。あの方から受けた大恩を少しでも返すだけのことだ。
だが、自分と師との間にははっきりとした結びつきがあるのだろうか。
優馬や彼らは、自分の様な理由も特にないのに、仲間としてよい関係を作り上げている。それがミークには羨ましく見えたのだ。
自分だって、明智天師ともっと良好に接していきたいと願うことがある。だが最近の、ジュナスが離反した頃からの明智天師とはそれができにくくなりつつあった。
それを思い出したミークは苛立たしい気分となり、半ば八つ当たりのように優馬へ攻撃を仕掛けようとする。先程と比べ、より力を入れた攻撃を。
「二人まとめて、落としてやるわ」
その時、大きな衝撃音が響いて耳を劈めいた。続いて激しい揺れが優馬たちを襲い、彼らはバランスを保つのが困難となってしまう。
運動神経が優れている者はなんとか姿勢を保てたが、そうでないナギや普段運動しない伝助などはその場で転んでしまう。
優馬も衝撃に打ち付けられるが、その前から倒れこんでいたためふらつくことはなかった。
「あの女、本当に大きな一撃を入れてきたな」
優馬をはじめ、誰もが皆これがミークの仕業であると感じていた。
しかし、それは思い違いであった。
振動の後、この空間に光が差し込んできた。ハヤテたちがそれを目で辿ると、四つの人影を目にした。
「あれは…!」
四つの内三つは全く知らなかったが、一つは見覚えがあった。それもそのはず、一度激闘を繰り広げた相手なのだから。
「兄さん…!」
三人の少女を連れ、こちらへと降りてくる人影はライオーガと一体化している綾崎雷矢本人のものであった。
まだまだ続きます
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