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タイトル第8回お題:涙 (2008/4/14〜5/18)
記事No49
投稿日: 2008/03/31(Mon) 01:25
投稿者双剣士
参照先http://soukensi.net/ss/
お題SSに取り組む前に、以下のルール説明ページに必ず目を通してください。
http://soukensi.net/odai/hayate/wforum.cgi?no=1&reno=no&oya=1&mode=msgview&page=0

なにか疑問などがありましたら、以下の質問ツリーをご覧ください。
そして回答が見つからなければ、質問事項を書き込んでください。
http://soukensi.net/odai/hayate/wforum.cgi?mode=allread&no=2&page=0

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「涙」をテーマにした物語を投稿してください。
嬉し涙、別れの涙、タマネギが目にしみた涙……いろんなバリエーションが考えられますね♪

【条件1】
元ネタは「ハヤテのごとく!」に限定します。
オリジナルキャラは、物語の主役やキーパーソンにならないレベルでのみ
登場可能とします。

【条件2】
えっちなのは禁止です。

タイトルデンタル・マジカ
記事No69
投稿日: 2008/05/18(Sun) 19:51
投稿者双剣士
参照先http://soukensi.net/ss/
 俺は 涙を流さない ダダッダァッ〜♪
 幽霊だから ゴーストだから ダダッダァッ〜♪
 だ〜けど分かるぜ 虫歯の痛み〜
 君と一緒に 悪を討つっ♪


 それは深夜の丑三つ時。楽しそうに歌い踊りまくる幽霊神父ことリィン・レジオスターの暴走に
安眠を妨げられた鷺ノ宮伊澄は、寝ぼけ眼(まなこ)をこすりながら満月に照らされた鷺ノ宮家の
縁側へと起きだした。
「神父さん……こんな真夜中に何をしてるんですか」
「おぉっ伊澄君、よく聞いてくれた。さっきから虫歯が痛くて眠れないのだよ、だから昔のアニメの
テーマソングでも歌って気を紛らわそうと……」
「……永遠に目が覚めないようにしてあげましょうか?」
「ノーノーごめんなさい、もうしません」
 伊澄がお札をかざしたのを目にした幽霊神父は瞬時に態度を改めると、今度は泣き落としに移った。
「しかし伊澄君、虫歯が痛くて眠れないのは本当だ。なんとかならないもんかね」
「私に言われても困ります。虫歯は生活習慣の乱れの証ですから」
「そんな殺生な。そもそもこれは君の親友が作った虫歯なんだぞ」
 幽霊神父が愛沢咲夜の虫歯の痛みを引き受けたのは原作166話。そんなこともあったっけ、と
半分眠ってる頭で伊澄が頷くと、幽霊神父は苦しげに顔をゆがめながら訴えかけた。
「そうとも、私は君の親友の身代わりで苦しんでるんだ! ここは親友を助けると思って
手を貸してくれ、お願いだ!」
「……そうはいっても、幽霊の虫歯治療なんて聞いたことないですし。いっそ痛みも何も感じない世界に
旅立ってはいかがです?」
「それは困る。マリアさんのパンチラフィギュアをようやくゲットしたばかりなんだ、第2弾のヒナギク版
出る6月中旬までは、あの世には行けんのだよ伊澄君」
 不謹慎ではあるが切実な幽霊神父の頼みを前にして、ちょっと可哀そうに思った伊澄だったが…
…そんな微妙な感情も睡魔には勝てない。くるりと背を向けた伊澄は、最後通告のつもりで言葉をかけた。
「とにかく私は眠ります。こんな真夜中に大騒ぎするのはやめてください」
「おとなしく我慢していれば力を貸してくれるのか、そうなのか伊澄君?」
「……おやすみなさい」
 障子を閉めた伊澄は布団へと倒れこみ、すぐにすぅすぅと寝息を立て始めた。小さな少女退魔師の
休息を、月の光と夜の静寂が優しく包み込んだ。鷺ノ宮家の庭には川の流れるさらさらとした音だけが
残されたのだった。


 そして翌朝。朝食を終えた伊澄は自室で番茶をすすりながら幽霊神父と対峙していた。あれから
幽霊神父は腫れあがった頬をさすりながらも呻き声ひとつ発しない。静かに我慢するという約束を
神父が守ってくれた以上、伊澄としても無下にすることは出来なくなった。
「神父さんの虫歯を治療することは出来ませんが……誰か虫歯を持ってる人に憑依して、その人と
一緒に歯医者さんに行けば治せるかも知れません」
「うん、正統派の解決策だな」
「問題は、誰に憑依すればいいか、なんですが……」
 鷺ノ宮家の一族に虫歯持ちは居ない。純和風の食生活をして渋い番茶を毎日のようにすすっている
から虫歯菌の寄り付く隙がないのだ。そして虫歯のない人に憑依したのでは、歯医者さんに行っても
治療のしようがない。
「それじゃ別の人をあたろう。そうだな、あの不幸体質の執事君とか……」
「ハヤテさまやナギに痛い思いをさせたりしたら私が許しません」
「じょ、冗談だよ伊澄君……」
 ほっぺたを押さえながら顔から冷や汗を流す、実に器用な芸当をしながら幽霊神父は狼狽した。
一瞬だけ本気の殺気を放った伊澄は相手がビビってるのを見ると、すぐに表情を和らげた。
「もっともあの2人にはマリアさんがついてますから、歯磨きを忘れるようなことはないでしょうけど」
「確かに。虫歯がないのでは当てに出来ないな」
「生徒会長さんもきちんとした生活してそうですしね。神父さんが知ってる人で、虫歯が出来ても
おかしくない乱れた生活習慣の人といったら……」


「は〜っくしょい! あうぅ寒っ……痛っ?!」
 宿直室の布団から跳ね起きた白皇学院の女教師こと桂雪路は、鈍い痛みを感じてほっぺたを押さえた。
周囲には飲み空けた酒瓶とビールのアルミ缶そして弁当の容器が散乱している。誰にも遠慮のいらない
独身女性の1人暮らし。ゴミの山に囲まれながら自由な暮らしを満喫していた彼女であったが…
…とうとうその代償を払うときが来たようだ。
《あらやだ、ひょっとして虫歯? そういや昨日は朝も夜も歯磨きしなかったっけ。でもたった一晩で、
こんなに痛むなんてこと……これって虫歯とは違うわよね、きっと何か堅いものが歯茎に刺さって
腫れちゃったんだわ、放っときゃそのうち直るわよ》
 自分の身に起きた異変を素直に認めないのは自堕落な人間の悪癖である。そんな自分の名前が
遠く離れたお金持ちの屋敷で挙がっていることなど、雪路には想像も出来ないことだった。


『やっぱり思ったとおり、桂先生は虫歯持ちだったみたいですね』
『うむ、気の毒だがこちらにとっては好都合。では行ってくる』


 翌朝。幽霊神父ことリィン・レジオスターは白皇学院の宿直室に居た。ほっぺたからは虫歯の
鈍い痛みが相変わらずズキンズキンと響いてくる。ただし昨日までと違うのは、今の彼は幽体ではなく
肉体を持っているということ。しかも絶妙のプロポーションを誇る成人女性の肉体を。
《うむ、咲夜君の身体もなかなかだったが、この身体もいろいろと遊び甲斐が……》
 途端にズキンとうずく虫歯の痛み。それは遠くから念波を送る伊澄からの警告か、それとも天に居る
誰かからのエッチ路線禁止のお達しか。
《……し、仕方がない。本来の目的を果たすとしよう》
 立ち上がった桂雪路こと幽霊神父は、その足で最寄の歯医者へと向かった。1度の診察では完全に
直らないだろうが、痛み止めをうってもらえば当座はしのげる。そうなったらこの身体は持ち主に
返してやろう……だがそんな幽霊神父のもくろみは30分もしないうちに打ち砕かれ、彼(彼女)は
とぼとぼと来た道を引き返すことになるのだった。


「……というわけで、歯医者に行きたいのでお金を貸してください」
「知らないわよバカーッ!!!」
 例によって例のごとく、時計塔の屋上に無敵の生徒会長の怒鳴り声が鳴り響く。所持金12円で
歯医者から門前払いされて、軍資金補充のためにやってきた学院の生徒会室。身体の持ち主の記憶に
よれば、ここにくれば無尽蔵にお金を借りられるはずなのだが……幽霊神父は雪路の記憶をたどり
ながら、たどたどしく哀願の声をあげた。
「そんな、お願いよヒナ! 歯が痛いの、眠れないの、ジンジンするの!」
「ちゃんと歯磨きしないのが悪いんでしょ! 自業自得よ、お給料日まで我慢しなさい!」
「そんな、死んじゃう!」
 恥も外聞もなく土下座する雪路を前にして、ふんとそっぽを向くヒナギク。しかし取り付く島もなく
拒絶してるようでいて、ちらちらと視線をこちらに振っていることに幽霊神父は気づいた。なんだかんだ
いっても目の前の少女は姉を見捨てることなんて出来ないらしい。よし、この女は堕とせるっ!!
「痛たたたたぁぁ〜〜」
 頬を押さえてごろごろと床の上を転がりまわる雪路。ボロボロと涙を流し、苦しそうに呻き声を上げて
のたうち回りながら幽霊神父はピンクの髪の少女の反応を待った。しかし少女の反応は変わらない。
「お姉ちゃん、わざとらしい演技はやめてくれる?」
「演技なんかじゃないわよ、本当に痛いんだってば!!」
「先月は食あたり、先々月は盲腸、その前は恩師のお葬式だっけ? お姉ちゃんがお金を借りるために
何でもするってことは分かってるの。どうせ今回だってお酒を買うお金にするんでしょ? 
長年付き合ってきた妹をナメないでくれるかしら」
「そ、そんな……」
 こいつは今までどんな人生を送ってきたんだ? 幽霊神父は愕然としたが、いまさら演技をやめる
わけにもいかない。歯医者に行かなきゃならないのは事実なのだから。こうなったら作戦変更といこうか。
「ヒナぁ、私たち世界で2人っきりの姉妹じゃない、困ったときは助け合おうよ」
「…………」
「信じてくれないならそれでもいい。歯医者まで一緒についてきてくれてもいいから、ね? 
お願いだからお金を貸してよ、こんなに痛くちゃ仕事だって出来ないんだから!」
「…………」
 ヒナギクの反論が止まってる。やはり哀れさを演出するより肉親の情を前面に出すのが得策か。
どうせ仮の肉体だと割り切ってる幽霊神父は、存分に涙を流しながら次から次へと譲歩を重ねた。
「お願い、歯医者さんに行かせてくれたら来月のお給料で返すから! いや、今までの借金だって
全部返すから!」
「…………」
「この痛みから助け出してもらえるなら、心を入れ替えて頑張るから! 本当よ、信じてヒナ!」
「……本当?」
「本当よ、この眼を見て! 嘘をついてるように見える?」
「……わかったわ」
 勝った、と幽霊神父は喝采をあげた。


 ところが、妹と手をつないで歯医者に向かう途中で、雪路こと幽霊神父は意外な人物に出会う。
「あれ、桂じゃないか。姉妹そろってとは珍しい」
「こんにちは、薫先生」
 幼馴染で同僚にして金づる。身体の持ち主の記憶では、目の前の青年の立場はそうなっている。
とりあえず妹から治療費を借りられる現時点ではスルーしていい人物……のはずだった。
だが彼が抱えていた紙袋の中身がちらりと見えた瞬間に、幽霊神父は自分の立場を忘れた。
「それっ! 超レアものの限定フィギュアじゃないかっ!」
「えっ? 雪路お前、こんなのには興味ないって……」
「どこで買った? まだ残ってるのか? つーか交換用の猫耳パーツは当然買ってあるんだろうなっ!! 
売り切れないうちに行くぞ、案内しろ! なぁに金ならある、今ならな!!」
 ヲタクの情熱丸出しにして目を輝かせる雪路と、そんな彼女の態度に眼を丸くする薫京ノ介。
そしてその背後では……黒いオーラを立ち上らせたヒナギクが、全身を震わせながら木刀・正宗を
大上段に振りかぶっていた。
「お、お……お姉ちゃんの、バカーッ!!!」


 ……気がつくと幽霊神父は鷺ノ宮家にいた。呆れ顔で見つめる伊澄に向かって彼は状況を問いかけた。
「正宗に打ち掛けられては、先生の身体に取りついたままでいることなんて出来ません…
…私がとっさに呼び戻さなかったら、本当に成仏するところだったんですよ、神父さん」
「そ、そうだったのか、思わず我を忘れてしまって……あれ、歯が痛くないぞ?」
「長いこと憑依してるうちに桂先生の虫歯と同化したみたいですね。まぁ先生はどっちにしても
歯医者に行かなきゃならなかったんですし、あちらに移したままでも良かったんじゃないでしょうか」
「そうか……いろいろ世話をかけたな、伊澄君」
「まったくです」
 頭を下げる幽霊神父にぷんと頬を膨らませた伊澄は、やがてぷぷっと吹き出した。
つられて幽霊神父も笑い出し、2人の(傍目には1人きりの)楽しげな笑い声が鷺ノ宮家の一室に
広がった。これで万事解決、世は全て事もなし……と喜んだのもつかの間。
「伊澄お嬢さま、三千院家から電話が……」
「ハヤテさまから?」
 黒服の持ってきた電話機を受け取った伊澄。彼女の耳に飛び込んできたのは、困ったような
照れたような少年の声だった。
「あ、伊澄さんですか? すみません、いま咲夜さんの妹さんがお屋敷に来てまして……歯医者に行けと
お父様がうるさいから家出してきたそうなんです。なんでも同じ理由でここに来た咲夜さんが一晩で
虫歯を治して帰ったのを聞いて、僕を頼れば同じことをしてもらえるって期待してるみたいなんですが…
…あの、神父さんはそこにいますか?」
 伊澄は幽霊神父と顔を見合わせた。


Fin.

タイトル第8回チャット会は中止しました
記事No70
投稿日: 2008/05/18(Sun) 21:06
投稿者双剣士
参照先http://soukensi.net/ss/
投稿者が1名だけでしたので、5/18のチャット会は中止しました。
1名だけの場合は管理人が批評をするという方法も用意していましたが、
投稿者と管理人が同一人物ではそれもかないません。

 やっぱり締め切りより早めに最初の投稿が来ないと、
他の方からの投稿って集まらないものなんでしょうか。

タイトルRe: 第8回チャット会は中止しました
記事No72
投稿日: 2008/05/18(Sun) 22:34
投稿者伊風
自分の場合は単に間に合わなかったんですよ…。
ネタはあったんですが、上手く広めることができず、結局無理でした。
そしてハヤテ知識抜けてることに今気づいてたりも…。
近いうちに投稿できるといいなぁと少し弱気な伊風でした〜。

『デンタル・マジカ』、最後の4文(歌詞でしょうか?)に強く惹かれましたっ!

>早めに最初の投稿が来ないと
確かにそういう人はいると思います。
でも、そこまで関係があるとは思えませんが。
単に時間がないとかだけかと?
皆さん忙しそうですし。
なんていったって、大人…。
自分も早く大人になりたいです〜っ
っと、余計な話をしてしまいました、すいません。

タイトルRe^2: 第8回チャット会は中止しました
記事No73
投稿日: 2008/05/18(Sun) 23:54
投稿者双剣士
参照先http://soukensi.net/ss/
伊風さん、書き込みありがとうございます。
間に合わなかったんですか、残念です。
またの機会を楽しみにしています。

>確かにそういう人はいると思います。でも、そこまで関係があるとは思えませんが。
>単に時間がないとかだけかと? 皆さん忙しそうですし。

 そう考えられれば楽なのですが、そうとは思えません。
伊風さんもご存知のリトバス草SS大会は期限2週間で
あれだけの数と質の作品が集まってきます。今回のお題は
期限が5週間もあったのですから時間不足はありえない。
 これは投稿者側の事情というより、この投稿所自体に
問題があるのだと思っています。現時点での私の考えは
日記のほうに書きましたのでご覧ください。
http://soukensi.net/odai/diary/200805.htm#20080505

>『デンタル・マジカ』、最後の4文(歌詞でしょうか?)に強く惹かれましたっ!

ありがとうございます。ですがあの歌詞は私の創作ではなく、
昭和時代にはやったロボットアニメの主題歌を私なりに
パロったものです。神父さんは享年82歳の人ですから、
こういう古いアニメにも詳しいわけですよ。