『自分はそこらの平凡な連中とは違う。選ばれた、特別な存在なのだ』これは三島由紀夫「美しい星」に関する書評のなかで、自分を火星人だと思いこんだ平凡な中年男とその家族の行動が、間違った理屈や情報にしがみつくオカルト研究家やUFO研究家の姿に重なって見える、という意図で書かれた文章です。当然それ以外の含みなどあるはずはないのですが……『円盤とのコンタクト』を『自分を慕う可愛い女の子の登場』に置き換えれば、これはハーレム好きな者に対する分析とも言えるではありませんか。
という認識を持つことは、およそ人間と生まれ自意識のある者全てにとっての、火の出るような願望であろう。しかし、その認識を得るための努力を厭い、かつ、心の底で、自分の持つ能力が果たして衆に抜きん出るものであるかということに深刻な疑問を持つ者にとり、最後の希望は、何かそこに超自然的現象が働くことで、“ある朝、突然に”自分が選ばれた存在となることである。円盤(宇宙人)とのコンタクトなどは、まさにその理想型ではないか。
出典:トンデモ本の世界R(と学会、太田出版)343頁