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私を退魔に連れてって

初出 2006年03月22日
written by 双剣士 (WebSite)
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 ナギには『もう友達を傷つけたりしないの』と言っておきながら咲夜には『敵をひきつけておいて』と言い放すダブスタ退魔師、鷺ノ宮伊澄。第71話の小ネタSSはそんな彼女が首尾一貫したらどうなるか、という発想から生まれました。ラストのオチは少々反則気味です。

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 ナギの屋敷に向かう途中で鯉の土地神に妖怪退治を頼まれ、向かった先で鯉ヘルペスの大妖怪たちに包囲されてしまった伊澄と咲夜。小技では対処しきれないと覚悟した伊澄は、親友の身を案じて先に逃げるよう促した。ところが返ってきたのは予想外の返事だった。
「大きな力を使うから……咲夜は危ないから、先にナギのところに行っていて」
「はいそやな、とでも言うと思たんか! 水臭いで伊澄さん」
「え、でも、本当に危ないから……」
 普段から何かと面倒見のいい咲夜が、よせばいいのに姉御肌なことを言う。大妖怪に囲まれた絶体絶命のピンチの中、背中合わせに励ましてくれる親友の言葉が頼もしく聞こえる……はずはなかった。こと退魔戦闘に関する限り、咲夜はまったくの無能力者なのだから。
「お願いだから言うこと聞いて……」
「何いうてんねん、ウチがおらんかったらナギとこまでの道も分からんお姫様のくせに! こんなとこで親友を置き去りにするほど、このサク姉ちゃんは薄情もんやないで!」
「いや、あの、でも……」
「えぇい、ゴタゴタ言わんでええ、伊澄さんの背中くらいウチが守ったるから、どーんと任せとき! そんなことより専門家やろ、ほれ、どんな技でもってバイキンマン軍団を蹴散らしてくれるんや?」
「ごめん、もう、手遅れ……」
 大妖怪そっちのけで漫才に興じていた愛沢咲夜と、その早口ぶりに振り回されて精神集中を乱してしまった鷺ノ宮伊澄。そんな2人が、バイキンマン呼ばわりされて復讐に燃えていた鯉ヘルペスの大妖怪に対抗できるわけも無かった。


 そして、伊澄を探しにやってきた綾崎ハヤテが現場に到着したとき。そこには少女たちの生気を吸って巨大化を遂げた大妖怪と、その両手に握られてぐったりしている咲夜と伊澄の姿があった。前にも似たようなシーンがあったよな、と考えながらハヤテは少女たちの名を呼んだ。
「咲夜さん! 伊澄さん! 大丈夫ですか?!」
「……お、おぉ、借金執事か……面目ない、やられてもうた……」
「ハヤテさま……私、もう……ダメかも……」
 ヒーローの登場にも表情を輝かせる余力すらなく、大妖怪の手の中でぐったりと首を傾ける2人の少女。彼女たちをこれほど消耗させるまでにいかなる行為があったのか、詳細を書くことが出来ないのは非常に残念である(作者的に)。ここがエロパロ板だったら遠慮は要らないのになぁ。
「もうやめろ、2人を放せ!」
「ハナセと言われてハナセればN○VAなんか要らなーい! 貴様こそ神妙にしろ、人質の命が惜しかったらなぁ!」
 いかにも悪役らしいセリフを吐く鯉ヘルペスの大妖怪。ハヤテは主人の友人たちを襲った巨大妖怪を鋭い目でにらみつけた。彼女たちを助ける手段が無いわけではない、必殺技『疾風のごとく』を使えば。しかしあの技は体力の消耗が激しいため使えるのは1日に1回だけ。つまりどちらか一方しか助け出すことは出来ない。
「借金執事……」
「ハヤテさま……」
 いまにも息絶えそうな2人の少女の視線が、迷うハヤテに集中する。ハヤテは抜群の運動神経で大妖怪の攻撃をかわしながら、頭の中で大急ぎで方程式を組み立てた。
《咲夜さん救出+巻田さんと国枝さんを呼んでもらう=伊澄さん見殺し+お嬢さまに叱られる、不採用》
《伊澄さん救出+ハンドソープでやっつけてもらう=伊澄さんにそれだけの体力が残ってなかったら一貫の終わり、不採用》
《2人にかまわず大妖怪に体当たり=僕のHPが妖怪のHPを下回ってたら一撃では倒せず3人ともお終い、不採用》
《2人を残して応援を呼びに帰る=非難轟々でハヤテのごとくの連載打ち切り、不採用》
《・・・・・・》
 堂々巡りを繰り返すハヤテの思考。そもそも2人の女性のうち片方を選ぶなんて行為、これまでのハヤテの不幸すぎる人生経験には1行たりとも書き込まれていないのだから無理もない。そうこうしているうちに逃げ回るハヤテの足元で枝が折れ、バランスを崩した少年は大妖怪の3本目の手に捕らえられてしまう。正義のヒーローが邪悪な手に握りつぶされる光景に、咲夜と伊澄は絶望のまなざしを向けるのだった。

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「……それで、ハヤテさまが絶命する寸前に巨大ロボに乗ったギルバートさんが乱入。『ハヤテさんに止めを刺すのはミーでぇす』って言いながら巨大妖怪との戦闘を始めてしまうけど結局は敗北。でもそのどさくさで逃げ出せた3人が力をあわせて、大妖怪に向かって禁断の新必殺技、アテナ・エクスクラメーションを放つの」
「……伊澄さん、あんたの発想もいいかげん電波やなぁ……」
 親友を時間稼ぎに使った理由を長々と説明する伊澄に、咲夜は深々とため息をついたのだった。


Fin.

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