ハヤテのごとく! SideStory
この悠久の螺旋から助け出してくれるのは、誰? 私を助けてくれる、あの人は…………
初出 2005年12月09日
written by
双剣士
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毎週恒例の、『ハヤテのごとく!』小ネタSSです。今回は西沢家にシスター乱入の59話をモチーフに、ヒロインなのか弄られ役なのか微妙な存在の西沢さんを主役にすえてみました。
今回は執筆中に、指先に神が宿りました。考えなくても筆が進むなんて久しぶりの体験です。そのぶんバタバタした印象がありますけど、いいよね小ネタだし。
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執事修行と称してハヤテ君が我が家にやってきた、そんでもって私のことをお嬢さまだって! 夢だったら覚めないでほしい、てゆーか夢の世界に引っ越したい気分。
もったいなくて学校になんて行けない私は仮病を使い、今はハヤテ君とふたりきり。告白……するのは怖いけど、夢なんだもん、このくらいワガママ言ってもいいよね?
「お休みの……キスをしてくれませんか……?」
「OK、まかせろ(ぶちゅっ)」
きゃー、何なのこの展開! ハヤテ君の代わりにトラがいて、わわわ、私のファーストキスを強奪?!
嘘だよ、こんなことあって良いわけない! 夢よ夢、これは夢なんだってば。もういちど目をつぶれば、別のルートに入れるに決まってるんだもん!
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「お休みの……キスをしてくれませんか……?」
「……承知しました、お嬢様」
そうよ、ここはこうでなくちゃ。心なしかハヤテ君の返事がタイミング遅れたってことは、ハヤテ君も意識してるってことだよね、私のこと!
ハヤテ君の顔がどんどん近づいてくる。私はガチガチに緊張しながら瞳を閉じた。胸が熱くて苦しくてたまらない。もっとロマンティックなキスを期待してたけど、こんなので感触なんて分かるのかな。でもいいよね、相手はハヤテ君だし。
胸の熱さを手のひらで懸命に抑えながら、ハヤテ君の唇を待つ私。でも肝心の甘い味は全然来なくて……代わりに胸が、急に焼けるように熱くなった。やだ、これってせつなさ大暴走?!
「……ええぇぇ〜〜!!!」
思わず目を開けた先では、冷たい笑みを浮かべた三千院ちゃんが剣を持ってこっちを見下ろしていた。その剣は私の身体の上の……ハヤテ君の背中に真っすぐ突き立って、ドクドクと吹き出す血潮に染まっていた! それでそれで、ハヤテ君の身体の下にあった私の胸からも、だらだらと赤い染みが広がってて……。
「あ、あ、あ……」
「どろぼうハムスター、これで本望だろう? ハヤテと死ぬまで一緒にいられるんだから……」
う、嘘でしょ? 私こんなとこで死んじゃうの? こんな夢なんて無し無し、キャンセル、やり直しっ!
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「お休みの……キスをしてくれませんか……?」
勇気を振り絞って口にしたお願い。それを聞いて、ちょっと頬を染めながら近づいてくるハヤテ君。またトラとか三千院ちゃんとかが乱入してこないように、薄目を開けながら周囲を偵察する私。うん、今度は大丈夫みたいだね。
ぱふっ。
あれ? ハヤテ君は身を投げ出して、私のベッドの上に覆いかぶさってきた。意外に軽い感触にちょっとびっくり。だ、だめだよハヤテ君、いきなりこんな、私にだって心の準備ってものが……。
ちゅっ。
え、え、えぇっ? ハヤテ君、いまキスしたの? それも唇とかほっぺたじゃなくて、パジャマの第2ボタンに? ねぇ、これ何かのおまじない?
「それで少しは……マシになったと思いますよ」
ハヤテ君、にっこり微笑んで何いいだすの、訳わかんないよっ! それに声も微妙に女の子の声みたいだし、なにより何なの、その身から漂う気品あるお金持ちのオーラは? こんなのハヤテ君らしくないよ!
「あと私は……歩さまのことが好きですから。では、ごきげんよう」
ちょっとハヤテ君、話に脈絡ないし! こんな告白されたって頭グチャグチャだよ! それにごきげんようって何? ああっどこ行くの、帰らないでよ、説明も無しで独りぼっちにしないで!
ばたん。
ほ、本当に行っちゃったハヤテ君! ねぇどうなってるの、私なにか悪いことした? よくわかんないけど、とにかく最初からやり直しっ!
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冷静に、落ち着いて自分。だいたいアレよね、じっと待ってるだけだから余計なチャチャとかが入るんだよね。今回は作戦を変えてみようっと。
「お休みの……キスをしてくれませんか……?」
大きく目を見開いた後、恥ずかしそうに顔を近づけてくるハヤテ君。私も心臓が飛び出しそうだけど、ここで流れに身を任せたらさっきまでと一緒。ここは主導権を手放さないようにしなくっちゃ。
「……な〜んて言ったら、男の子は喜ぶのかしら?」
「……う、う、うわーん!」
ちょっと小悪魔チックな切り返しで魅力倍増……のはずだったのに、あれハヤテ君、泣いてるし! どうしちゃったのかな?
「そうですよね、僕なんかにこんな幸運が来るわけ……未来に期待したりしなければ、つらい思いはしないって学んだのに……」
「あ、あのゴメン、ハヤテ君! さっきのは本心じゃなくて、その、中の人が暴走したって言うか、そのぉ……」
「ひ、ひどい! 僕との関係は遊びだったってことですか? 絶望しました、九十九里浜に身を投げてきます!」
あぁっ、ハヤテ君すごい勢いで飛び出して行っちゃった! 九十九里浜に身投げ出来る場所なんか無いって突っ込む暇もなかったよ!
なんでこうなっちゃったんだろ、やっぱりサブヒロインNo.1の台詞は私には荷が重かったのかな?
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……はぁ。直球も変化球もダメなのかぁ。そうだよね、ハヤテ君が私の家に来てくれただけでも夢みたいだってのに、キスまで行っちゃおうなんて虫が良すぎたんだよね。いいもんいいもん、私らしくゆっくりやるんだもん。ハヤテ君との時間は、これからたっぷりあるんだし。
「お願い……眠れるようになるまで、手を握っててくれませんか……」
うん、これだよね。まずはこれで十分。
「OK、まかせろ(ぱふっ)」
あれ、手が硬い? なんか毛深くて、爪が伸びてて、肉球までついてて……ハヤテ君、こんな手してたのかな? 不審に思った私は首を横に向けて……。
「……きゃああぁぁーーーっ!!!」
Fin.
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