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執事とらのあな・Another One

初出 2005年11月19日
written by 双剣士 (WebSite)
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 今週の『ハヤテのごとく!』第56話からインスパイヤされた小ネタSSです。今度こそ、あらゆる意味で本宅には載せられません。あくまで小ネタとしてご笑覧ください。

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 マラソン自由形敗退の責任を取って修行の旅に出された綾崎ハヤテは、『執事とらのあな』を目指して林の中を歩いていた。うっそうと茂る木々の間を、床枝を振り払いながら前へと進むハヤテ。そんな彼が立ち止まったのは、林に入ってから2時間後のことだった。
「よぉ、遅かったじゃねぇか」
「え?!」
 誰もいないと思っていた林の中で少年に掛けられた声。振り向いた先にいたのは意外な相手だった。本来こんなところにいるはずがない存在……だが人語をしゃべって2本足で立ち、親しげに彼に話しかけてくるホワイトタイガー猫を、ハヤテは他に知らない。
「タマ……まさかなぁ。あの、タマのお兄さんか何かですか?」
「何言ってやがる。学園編でいちゃいちゃされてるうちにボケたか? オレっちのことが分からねぇとは」
「なんだ本物のタマか……でもどうしてここに? 見送りに来てくれたの?」
「目を覚ましやがれ。執事とらのあなを目指してんだろ? ここがそうで、オレっちが教官だよ。ビシビシしごいてやっからな」
「えええぇぇええええぇーーー!」
 ぶったまげて飛び上がるハヤテ。とらのあなの教官がトラだなんてシャレにもなりゃしない。
「そ、そんなベタな展開ありかぁっ?」
「うっせぇな、不満でもあるのかよ」
「不満というか不安が……せっかく第3部に入ったってのにあんまりだろ? このマンガ打ち切られるぞ、こんなことしたら」
「心配するなって。巻中カラーに新キャラまで出しといて、畑先生がこんなショボい手を使うわけないだろ。ここはいわゆる平行世界のひとつなんだよ、つべこべ言わずに覚悟を決めな」
 『ハヤテのごとく!』だから許される、登場人物同士のベタな会話。間借りしているブログ管理人のセンスのなさにハヤテは歯がみしたが、さすがに不幸慣れした主人公、すぐに気を取り直した。
《そうだ、文句なんか言ってる場合じゃない。お嬢さまの所に帰れるよう頑張らないと》
「何をぶつくさ言ってる?」
「な、何でもない何でもない。わかった、やるよ……」
「よぉし、じゃまずはダッシュだ! オレっちに付いてこい」
 茂る枝をものともせず、300キロの巨体を揺らせて山の頂上へと駆けてゆくタマ。人間離れしたハヤテの脚力をもってしても離されず追いかけるのが限界。少年は必死で三千院家ペットの後を追った。


「はぁ、はぁ、はぁ……」
「息整えてる時間なんかねぇぞ。最初のレッスンは遠吠え3千回だ」
「と、遠吠え? 執事と何の関係が……」
「つべこべ抜かすと食っちまうぞ。ナギのお嬢に届かす位の覚悟で吠えてみろ、そら」
「う、うん……」


 そして1ヵ月後。綾崎ハヤテが三千院家に戻る日がやってきた。わくわくしながら待ちわびていたナギたち一行の前に現れたのは……。
 ピンク色のネコ耳。
 白く長い尻尾。
 胸と腰をかたどる大きなリボン。
 首につけられた鈴。
 そしてミニスカートと、獣足シューズに差し込まれた縞ソックス。
 そう、第1巻8話『ネコミミ・モードで地獄行き』に登場した姿そのままの、獣少女コスプレしたハヤテの姿だった。あの時と違うのは中身の意識。恥じらいと後ろめたさを全身にまとっていた前回と比べ、より板に付いた自然な着こなしと愛らしい媚びの瞳を身につけた、真・綾崎ハヤテがそこにいた。
 それを見た一同の反応は……。
「キャーッ、ハヤテ君かわいいっ♥」
「いいっ!! 予想とはぜんぜん違ったけど、GJだぞハヤテ!」
「オーマイハニー……(ぽっ)」
 諸手を上げて歓迎してくれる主人とその家族のもとへ、ハヤテはためらいなく飛び込んだ。その後は執事長に嫌がらせをされることもなくなり、借金を抱えた可哀相な少年は三千院家のみんなに愛されて幸せな一生を送りました、とさ。


Fin.

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