いけない☆花織ちゃん!


初出 2001年01月14日
written by よしむらさん
SSの広場へ
愛原花織、中学一年生。
彼女は燃えていた、いや萌えていた。
全ては愛しいあの人のため!
「今日こそは、今日こそは七梨先輩のハートをゲッチューだよっ!」

「しちーり先輩っ!」
学校の屋上で1人佇んでいる太助を見つけた花織は
元気いっぱいに話しかけてきた。
「………」
「先輩?」
しかし太助はぼーっとした表情で花織の声に何も反応しない。
「もしもし?先輩?せんぱーい」
「…あっ?あぁ、愛原か…」
やっと気付いた太助が返事をするがまだ少し目がトローンとしてる。
「どうしたんですか?」
「いや、ちょっと寝不足で…ふぁぁぁ…」
そう言って太助は大きなあくびをして見せた。
「だめですよぉ、ちゃんと睡眠はとらないと」
「いやー、夕べはシャオ達がなかなか寝かせてくれなくてさ」
「え?」
太助の言葉を聞いた花織が怪訝な表情になる。
「ついつい遅くまでやっちゃって」
「遅くまで…ヤっちゃって!?」
カタカナにしただけでえらく意味が変わった気が。
「最初は単なる気まぐれだったんだけど、ハマったら抜け出せなくて…」
「な、ナニがハマって抜けないんですか…」
段々花織の思考は危ない方向へ行こうとしている。
「シャオやキリュウもすっかり虜になっちゃってさ。
ルーアンなんかもう一回、もう一回とせがむから…」
「な、な、な…」

ボンッ!

「お、おいっ!愛原!?」
熱暴走した花織はそのまま昏倒し、保健室へと運ばれた…



「どうも、愛原花織です」
誰に言っているんだか。
それはともかく、今時刻は夜中をまわろうとしている頃。
何故か花織はほっかむりで顔を隠している。
…今時泥棒でもこんな格好はしない。
「気分の問題です」
だから誰に言っているんだ。
それで今、花織は七梨家の玄関前に来ていた。
「きっとアレは何かの間違いよっ、真相を突き止めてみせるわ!」
なんだかスパイにでもなった気分。
007の音楽が花織の頭ん中で流れている。
「問題はどうやって入るかよね…」
まさか『おじゃましまーす』なんて正面から入るわけにはいかない。
あくまで隠密に調べなければならない。
「やはり、これの出番かしら…」
花織はポケットから一本の針金を取りだした。
「ゴメンね、七梨先輩。スパイとは非情なものなの」
本人ノリノリであった。
「うんっ…」
花織は針金を鍵穴に入れて、鍵を開けようとゆっくり動かし始めた。
はた目には滅茶苦茶怪しい光景だ。
もしこの場を誰かに見られていたならば通報されていただろう。

数分後。
「開かない…」
当たり前である。素人に簡単に出来るわけがない。
「ダメよ、あきらめちゃ!なんとしてでも…真相を…」
ガチャ
「え?」
花織がノブに手をかけるとドアはあっさりと開いてしまった。
「鍵…かけてなかったの…」
不用心だぞ、七梨家。



やっとのことで花織は七梨家の中に潜入した。
立派な不法侵入だが乙女にはそんな理屈は通用しない。
「先輩はあそこかな…」
見ると一階のリビングの明かりがついている。
「どれどれ…」
こっそり近付いてドア越しに部屋の話し声に耳を傾けた。
「太助様っ、早速始めましょう」
「おぉっ」
(七梨先輩とシャオ先輩だ…)
「あたしもやるーっ!」
「私もまぜてもらおうか…」
(ルーアン先生にキリュウさん?)
どうやら七梨家メンバー勢揃いのようである。
(一体何を始めるつもりなのかしら…)
「やっぱ多人数プレイは燃えるわよねー」
(た、多人数プレイーっ!?そ、そんないきなり…)
ルーアンの爆弾発言に花織は思わず叫びそうになる。
「気持ちいいですよねーっ」
「うむ。私も同感だ」
(えーっ!しかもあっさり同意してるーっ!)
聞いている花織の方が恥ずかしくなっている。
「キリュウのマメ、随分大きくなっているじゃないか…」
「ふふ、今夜は私の巧みな指使いを見せてやるぞ…」
(た、巧みな指使い…それにま、マメって?)
何かを想像し、花織の顔が赤くなってきている。
「太助様ぁ…早くいれてくださぁい…」
(しゃ、シャオ先輩まで、何かやらしい事言ってるーっ!?)
「それじゃあ…まずは昨日の続きからいこうか?」
「はい」
(き、昨日の続きって何よーっ!?一体何をしてるって言うのーっ!?)
あらぬ想像で花織の顔はすでに真っ赤になっている。
「まずは準備を整えなきゃ…」
「そうだな、やっぱりいろいろ道具がないと…」
(道具ーっ!?ま、まさかムチとかローソクとかそんな…)
花織はどんどん勝手に妄想を膨らませていく。
「よし…こんな感じでいいか…」
「太助様ぁ、早くぅ」
「あたしもぅ待ちきれなーい…」
「私もだ…」
(なんか楽しそうにしてるーっ!?)
もはや花織は再び熱暴走寸前だった。
(いつの間に七梨先輩ってこんなに進んだの!?
シャオ先輩達はもう調教されちゃってるの!?
もしかしてすっかり身体を開発されちゃって
いろんなプレイを楽しもうっての!?)
とても中一とは思えぬ発想である。
想像力が豊かすぎるのも考え物かもしれない。
「それじゃ…いよいよ突っ込むぞ!!」
(つ、つっこむってまさか、アレを…!
ダメ…!それは…それは…あたしの役目だよっ!)
ついに花織はドアを開けて部屋に乱入した!
「先輩やめてーっ!!」



「……はぁ?」
「あ、あら?」
部屋に入ってきた花織を唖然として見つめる七梨家メンバー。
4人ともテレビの前に並んで座っている。
(あ、あれ?服は…ちゃんと着てる?)
「愛原…?なんでここに?」
「い、いや、その!ヒマなんで遊びに来たんです!
呼んだけど誰も出なかったんで勝手に上がらせてもらいました!」
慌てて花織は嘘の言い訳でその場をごまかす。
「せ、先輩こそナニしてるんですか!?」
「何って…見ての通り、テレビゲームだよ」
「て…テレビゲーム?」
それを聞いた花織が素っ頓狂な声をあげる。
「この前買ったんだけどこれが面白くてみんなでハマっちゃって。
毎晩遅くまでやっちゃうんだよ」
「それじゃ…多人数プレイっていうのは…」
「このゲームは最高5人まで同時対戦が可能なんだ。
これが面白いんだよ」
「た…対戦!?それじゃルーアン先生がもう一回、っていうのは…」
「ルーアン負けず嫌いだから対戦で負けても
もう一回、もう一回って言って勝つまで頑張るんだよ」
「き、キリュウさんのマメとか巧みな指使いとかは…」
「キリュウったらコントローラーの持ち方がおかしいんだよ。
慣れるまで随分苦労してさ、手にマメが出来てんだ」
「早くいれてってのは…」
「ソフトを本体へ早く入れてって…気が焦っちゃって」
「昨日の続きってのは…」
「ストーリー本編がもう少しでクリア出来そうだったんで…
ついつい楽しみにしちゃって」
「じゃ、じゃあ準備とか道具ってのは…」
「武器とか装備とかを整えてたんだけど…」
「さ、最後の突っ込むってのは!?」
「いよいよラストステージに突っ込むぞ、って…」
「な…」
それを聞いた花織はへなへなと座り込んだ。
結局全部、自分の勘違いであった。
(なんだぁ…よかったぁ…)
真相を知ってほっと安堵の溜息をつく花織。
だが次の瞬間、花織は物凄く恥ずかしくなってきた。
(ってバカバカあたしのバカ!一体何を想像してたのよーっ!)
混乱している花織を見かねて太助が話しかけてきた。
「せっかくだし、愛原もやるか?対戦はあと1人参加出来るし」
「は、はいっ!」



翌日。
「おっ、花織ちゃん、おはよっ。今日も魂は熱く燃えているかい?」
「あ、野村せんぱ…ふぁぁぁ…」
登校途中、偶然出会ったたかしが花織に話しかけてきた。
「どした?寝不足か?」
「うん…夕べは先輩と一緒だったから…」
「え…ど、どういうこと?」
「シャオ先輩達も一緒に…5人でやってたの…」
「ご、5人!?」
「七梨先輩、上手いんですよ。テクニックが絶妙で激しいったら…」
「な、な、な…」
何を想像しているのか、たかしの顔が真っ赤に紅潮していく。
「あたしもあのゲーム買って練習しようかな…って野村先輩?」
たかしはすでに真っ白に燃え尽きて
花織の声は聞こえていなかった…。



続かない。

SSの広場へ