西遊記
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タイトルは「にしあそびしるす」と読みます。念のため。
むかぁしむかしの中国。
遙か天竺にあるありがたぁいお経を求めて旅する三蔵(太助)というお坊さんがいました。
「ふぅ・・・遠いなぁ・・・天竺って・・・・」
そんな三蔵には3人のお供がいました。
「早く着くといいですねぇ」
まず1人、孫悟空(シャオ)
「あー、もう疲れたぁ。お腹空いたぁ」
もう1人の猪八戒(ルーアン)
「三蔵様ぁ、このへんで休みましょうよぉ」
最後に沙悟浄(花織)
4人は立ち寄った村で宿を取ることにした。
「4名様ですね。お部屋の方ご案内いたします」
そう言われて部屋に入ったはいいが・・・
「ベッドが二つしかないじゃない!?」
この時代にベッドなんかあったか?などとはつっこむな。
「2人ずつ寝ればよろしいと思います」
ポケポケとした口調で提案する悟空。
「2人ずつ!?」
それを聞いた八戒はすぐさま三蔵に駆け寄った。
「三蔵様ぁん。私と一緒のベッドに寝ましょうぉん」
「ちょっと!三蔵様はあたしと寝るんです!!」
そこに悟浄が割り込んできて八戒とにらみ合いになる。
「やるって言うの!?このカッパ娘!」
「何よ!年増で大飯食らいのブタ妖怪!!」
「言ったわね・・・・今日こそあんたを冥土に送ってやるわ!」
「それはこっちのセリフですぅ!!」
2人は武器を取り出し戦闘モードに入った。
「お前らいい加減にしてくれ・・・・」
三蔵が止めに入り、どうにか喧嘩は未然に防がれた。どうやらこの2人の喧嘩は今に始まった事ではないらしい。
「公平にジャンケンで決めるのはいかがでしょう?」
悟空がポケポケとしながらもまともな意見を言った。
「そうね。恨みっこなしよ」
「正々堂々勝負ですぅ」
「「じゃーんけーんぽん!!」」
グー、グー、パー。
「・・・・・なんで手が一本多いの?」
「あたしと八戒がグーで・・・パーは・・・・」
「・・・・はい?」
八戒と悟浄に混じって悟空もちゃっかり参加し、しかも勝っていた。
「なんであんたが入ってんのよ!?」
「そうですよ!せっかくの三蔵様との添い寝権が!」
「えっ!?」
それを聞いて悟空がハッと気付いた。勝った者が三蔵と一緒のベッドに寝るのだという事を・・・
おいおい、わかってないのに参加したんかい。
「お、俺と悟空が・・・・・・」
状況を理解した三蔵も顔が真っ赤になっていた。
(あああああああああ。眠れない!!)
三蔵はベッドの中で1人悶えていた。
隣を見ると・・・・
(いるぅぅぅぅぅぅぅ!!)
すやすやとかわいい寝息をたてている悟空の姿があった。
そりゃあもう天使のような寝顔で。いまだかつてこんなかわいい悟空いたでしょうかってなくらい。
(落ち着け俺。俺は僧侶だ。こんなことはこんなことは・・・)
「うぅーん・・・・三蔵様ぁ・・・・・」
ドキーーーーーン!!
悟空の寝言に三蔵の心拍数が小動物以上に早くなっている。
(うあああああだめだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!)
このままでは理性が吹っ飛ぶのを感じた三蔵はベッドから起きあがり、冷たい風に触れるため外に出ていった。
その頃、高い崖から宿を見つめる2人の影があった。
「兄さん。本当にやるのぉ?」
「当たり前だろ!三蔵を食えば不老不死になれるんだぜ!」
金角(たかし)と銀角(乎一郎)の兄弟である。
「行くぜ!銀角!!俺の熱き魂のあとに続け!!」
「うぅ・・・不安だよう」
「はぁ・・・はぁ・・・・ああ、仏様。どうか俺の罪を許してください」
宿の庭で夜空に向かって懺悔をささげる三蔵。
ちょっと息切れしてるぞお前。
「俺は僧侶なんだから・・・禁欲しなきゃ、禁欲・・・・」
と、そこへ!!
「お前が三蔵だなっ!?てめぇの命もらっちまうぜ!!」
「えぇっ!?」
金角が剣を手にして三蔵に襲いかかってきた!!
ガキィン!!
「なにっ!?」
金角の剣は三蔵に当たる前に何かに弾かれてしまった。
「こっそりつけてきたのが幸運だったわ!!」
八戒が飛び出してきて三蔵をかばったのだ。
「た、助かった・・・ありがとう八戒・・・・」
「三蔵様。お礼ならあ・と・で」
「うぅ・・・・・」
なんかいやぁな予感がするがこの際それはおいといて。
「くそっ・・・・おい銀角!こっち来て手伝え!!」
「え?ああちょっと待ってよ!」
岩影で隠れていた銀角が恐る恐る出てくる。
「まだ仲間がいたの!?」
「うわわ・・・・・・あ?」
八戒に睨まれ一瞬怯む銀角だが次の瞬間。
「き・・・・綺麗な人だなぁ・・・・・」
八戒の容姿に見ほれてしまう銀角。
かすかに顔が赤くなっている。
「あら?なかなかわかってるじゃなぁい」
綺麗と言われて八戒も悪い気はしないようだ。
「一体何なのよっ!」
「三蔵様!大丈夫ですか!?」
外の騒ぎを聞きつけ悟空と悟浄の2人も駆けつけた。
「くそっ、邪魔が増えちまっ・・・・・おりょ?」
金角は駆けつけた2人のうち悟空の方に目を向けた。
「か・・・かわいぃぃぃぃぃぃぃい!!」
ものの見事に悟空に惚れ込んでしまう金角。
「ふふふ。カッパ嬢ちゃん、あなただけ何にもなしねぇ」
「うるさいですよっ!!」
一方の悟浄はちょっと不機嫌。
「とにかく!三蔵様には指一本触れさせません!!」
悟空をはじめ全員が戦闘態勢に入ったその時!!
ボンッ!!
「きゃっ!?」
「な、なに!?」
「何にも見えないじゃないのぉー」
突然の煙で視界が遮られた!
「ふふふ・・・・三蔵は確かに頂きましたよ!!」
「誰!?」
晴れてきた煙の中から現れたのは特徴ある前髪の男!
その名も紅咳児(出雲)!!妖怪のプリンスだ。
その小脇には気絶した三蔵が抱えられている!
「三蔵様!!」
「返して欲しければあの山の洞窟まで来るのです!さらばっ!!」
「あっ!おい待てっ!!」
「待ってよにいさーん!!」
紅咳児は三蔵を連れて飛び去っていき、金角銀角も後を追って去っていった。
「そんな・・・・三蔵様・・・・・」
ショックを隠しきれない悟空。そこに八戒が近寄る。
「悔しいのは私達も同じよ・・・三蔵様を取り返すわよ!!」
「もちろんです!!」
悟浄も元気いっぱいに賛同した。
洞窟の中。
金角と紅咳児が向き合っている。
「なんであんたがこんなとこに・・・あんたも三蔵を狙ってたのか?」
「まさか。私の目的は悟空さんを私の花嫁にするためですよ」
「ぬ、ぬわにぃぃぃぃぃぃ!?」
紅咳児の発言にただならぬ反応をする金角。
「ちょっと待てぇぇぇぇ!!悟空ちゃんは俺のものだぁぁぁぁ!!」
「私はずっと前から目を付けていたのです。あなたの出る幕じゃありませんよ」
「ふざけるなっ!てめぇなんかに悟空ちゃんはわたさねぇ!」
「あなたのような子供に悟空さんはふさわしくありません。そちらの弟さんもそう思うでしょう?」
紅咳児は不意に端っこにいる銀角に話をふった。
だが
「あのおねーさん・・・・綺麗だったなぁ・・・・・」
八戒に夢中で上の空だ。
「ちょっと・・・・聞いてます?」
「あっ?えっと、三蔵をさらったまではいいけどそこからどうするんですか?」
「「悟空さんに交際を申し込む!!」」
紅咳児と金角のセリフが見事にハモった。
「なんであなたまで出てくるんですか!」
「てめぇこそ引っ込んでろ!」
紅咳児と金角の間にはすでにライバル意識が芽生えている。
「でも後の2人はどうするの?」
「お引き取り願う・・・ということで。よければあの女性はあなたに差し上げますよ」
「ホントに!?やったぁ!!」
「俺って一体・・・・」
洞窟の奥で縛られている三蔵は紅咳児達のやりとりを聞いて虚しくなっていた・・・・・
岩山の一角にぽっかりと口を開ける洞窟の前に悟空達を乗せた金色の雲が降り立った。
金斗雲という悟空の乗り物である。
「ここですね・・・三蔵様が捕らえられているのは」
「うふふ・・・三蔵様を助けるのはこの私よっ!」
「三蔵様を助けるのはあたしですっ!」
またも口げんかを始める八戒と悟浄。
2人の脳裏には助けた三蔵とそのままラブラブな展開に突入するシーンがすでに出来上がっている。
「それじゃ先に助けた人が三蔵様とラブラブですっ!」
「望むところよ!!それじゃ行くわよ!!」
「はっ、はい!!」
なんだかわからないが話がまとまったのだろうと悟空も察知し、勢い良く洞窟へと突入していった。
「来たみたいだぜ!!」
「そうですね。では行きますか!!」
紅咳児と金角が悟空を迎える体勢に入った。
銀角は岩影で様子をうかがっている。
「ほんとに大丈夫かなぁ・・・・」
この洞窟はそんなに広くない。
すぐに悟空達の姿が紅咳児達の視界に入った。
「みぃつけたわよぉぉぉぉ!!三蔵様を返しなさぁぁぁい!!」
「おとなしくした方が身のためですぅ!!」
やる気満々の八戒と悟浄が紅咳児と金角をビシィッ!と指さす。
「三蔵様を返していただきます・・・・」
悟空も後から現れ2人を見つめる。
「よ、よし・・・行くか・・・・」
「ふふ・・・・悟空さんは私のものです!」
バッ!!
紅咳児と金角は瞬時に悟空に近づき次の瞬間!!
「「つきあってください!!」
「・・・・え?」
2人は悟空に対して握手を求めるように手をさしのべていた。
・・・なんでこの状況でねる○んするかなぁ・・・・
「ちょっとまったぁー!!」
うわ。またお約束な。
奥から現れたのは全身を縛られながらもぴょんぴょんとはねて近づいてくる三蔵だった。
エビフライが歩いてるみたいだぞ。
「三蔵様!?ご無事でしたか!?」
ぴくっ
悟空の安堵の声に紅咳児と金角の2人が反応した。
「・・・まずはあっちを倒すのが先決のようですね・・・」
「異議なし・・・・」
2人はうなづくと同時に三蔵に向かって襲いかかった!!
「俺と悟空ちゃんの幸せのために死んでくれ!!」
「私の未来のために消えて下さい!!」
パッカーン!!
「そうはさせないってのよ!!」
「何勝手に進めてるんですかっ!!」
八戒と悟浄のツッコミ兼攻撃が2人の後頭部をヒットした。
「いたたた・・・・なにすんだよぉ・・・」
「私は悟空さんと仲良くなりた・・・・」
紅咳児のセリフが途中できれた。
「どしたよ?・・・はうっ!?」
悟空からもんのすごい怒りのオーラが出てる!
「三蔵様を傷つけようとしましたね・・・・」
「いやっ!あのっ!そのっ!」
「許しませんっ!!」
ぷちっ
ふぅっ
悟空は髪の毛を数本抜き取るとそれを吹き飛ばした。
むくむくっ
髪の毛は小さな悟空に変わり、悟空の分身出来上がり。
ちくちくちくちく
「いてっ!いてててててて!!」
「痛いですよっ!!」
ミニ悟空にちくちく刺されて逃げ回る紅咳児と金角。
「三蔵様を傷つける人は・・・・」
怒りのおさまらない悟空は如意棒を取り出した!
「誰であろうとゆるしませぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇん!!!」
如意棒が一気に巨大化した!!
ドッカーーーーーーーーン!!
「なんでこうなるのーーーーーーー・・・・・・」
「私は一体なにしに出てきたんでしょうかぁぁぁぁぁぁ・・・・・・・」
キランッ
巨大如意棒にぶん殴られ金角と紅咳児はお空の星になった。
「許さないですっ!!」
しかし悟空の怒りはまだおさまらない!!
「落ち着け悟空!南無阿弥陀仏・・・・」
慌てて三蔵は念仏を唱え始める。すると
「あ・・・・うううぅぅぅぅ・・・・・・・・」
こてんっ
悟空は急に意識を失いその場に倒れた。
「ふぅ・・・いつもはおとなしいのにキレるとどうしてこうなるかなぁ?」
悟空の頭の輪は三蔵が念仏を唱えると悟空を眠らせる効果がある。今みたいに悟空が暴走した時によく使う。
「とにかく・・・助けに来てくれてありがとう。みんな」
ようやく一息つけたのか、三蔵は八戒と悟浄に礼を言った。
「それじゃ三蔵様・・・・」
「あたし達とラブラブですぅぅぅぅぅぅぅ!!」
すると、ここぞとばかりに八戒と悟浄は三蔵に迫りまくった!
「だぁぁぁぁぁぁ!!!俺は僧侶だってばー!!」
たまらず三蔵は逃げ出した!!
「いいなぁ・・・・」
岩影の銀角は八戒に追いかけられる三蔵を羨ましげに眺めていた。
「うぅーん・・・・三蔵様ぁ・・・・・」
悟空は小さな寝言をつぶやきながら安らかに眠っていたのでありました。
こんな調子で果たしてこいつら天竺に行けるのだろーか?
劇終。
おまけ。
「なかなかやるじゃないか・・・・・・」
水晶にうつる三蔵達の様子をうかがう牛魔王(翔子)は不敵な笑みをうかべていた・・・・
「・・・ってぇ!!ちょっとまたんかい!!なんであたしが魔王役なんだよっ!!」
「まぁまぁ良いではないか、結構似合ってるぞ」
「似合っても困るんだよ!あたしは女だっての!!」
激怒する牛魔王とは対称的に、妻である羅刹女(キリュウ)は平然としている。
「しかも!なんでキリュウがあたしの奥さん役なんだよっ!!」
「私が?翔子殿の奥さん?」
・・・・・・・・・・・・ポッ
「なんで頬を染める!?今の「ポッ」てなんだぁ!?」
「・・・私は別に構わないぞ」
「いやだぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
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