七梨先輩遊びましょっ


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『花織の予定とは裏腹に・・・。』

てくてくてくてく・・・。今日は日曜日。
もちろん今あたしが向かっているのは、七梨先輩のおうち!
学校であんまり遊べない分、日曜日にいっぱい遊んでおかなくっちゃ。
という事で家にとうちゃーく。そして呼び鈴を鳴らそうとしたその時・・・。
「おや、花織さん。奇遇ですね、こんな所で会うなんて。」
「出雲さん。奇遇もなにも、シャオ先輩に会うために来たんでしょ。だったら七梨先輩に会うために来たあたしと会っても不思議は無いじゃないですか。」
「・・・それもそうですか。では呼び鈴を鳴らしてくださいますか。」
出雲さんに言われて呼び鈴を鳴らす。
しばらくしてドアが開き、中から顔を覗かせたのは・・・。
「なんだ、花織殿に宮内殿。なんの用だ?」
「キリュウさん。七梨先輩はどうしたんですか?」
慌てて尋ねると、冷静な顔のまま、キリュウさんはこう言ってきた。
「主殿はまだ寝ている。昨日夜遅くまで試練をしていてな。ちなみにシャオ殿は出かけている。というわけで帰られよ、宮内殿。」
「帰られよですって、出雲さん。」
いきなりすごい事言い出すなあ。あたしには帰れなんて言わないわよね?
「あ、あのうキリュウさん。私は・・・」
「出雲さん、キリュウさんが帰れって言うんだから帰った方が良いですよ。手に持っているお土産は、あたしが代わりにわたしといてあげますから。」
そして出雲さんの持っている箱を奪い取って、玄関に入る。
「じゃあ出雲さん。短い間ですが、お世話になりました。」
「というわけだ。宮内殿、またな。」
「ちょ、ちょっと二人ともー!」
出雲さんの叫び声が聞こえてきたけど、そんなのはお構いなし。
ドアを閉めて中に上がらせてもらう。
「おじゃましまーす。」
キリュウさんに案内されてリビングへ。箱はテーブルの上に置き、ソファーに座った。
「それじゃあ先輩が起きるまでここで待ちましょうか。ところで、ルーアン先生は?」
「ルーアン殿も寝ている。まあ、それはいつもの事だが。」
「はあ、そうなんですか。」
なんだ、ルーアン先生もどこかへ出かけたらよかったのに。
せめて七梨先輩が先に起きてこないかな。
しばらくの間沈黙が漂う。
もう、どうしてキリュウさんってこんなに静かなのかしら。
お客さんと話をしようって気にはならないのかなあ・・・。
ちなみにもう一人のお客さんの相手、離珠ちゃんはお饅頭を一生懸命に食べている。
いつまでもこうしていても退屈なので、持ってきたゲームをしようと思った。
背中のあたりから、あたしの秘蔵ゲームセットを出す。
「キリュウさん、一つゲームをしませんか?」
「げえむ?」
「ええ、家から持って来たんですけど・・・。」
あたしが取り出したのはドンジャラ!
麻雀はちょっとややこしいけど、これなら簡単に出来るよね。
「さあキリュウさん、ドンジャラしましょう。」
「・・・花織殿、ひょっとして二人でするつもりなのか?」
「ああ、それもそうですよね。じゃあ離珠ちゃんも一緒に・・・。」
と思ったけど、離珠ちゃんたらお饅頭食べるのに夢中になってる。
「やっぱり二人でやりましょう、キリュウさん。」
「ううむ・・・、どうせなら麻雀が良かったな・・・。」
「な・・・。」
なんて事言うんですか、キリュウさんは。
あたしがせっかく持って来たゲームにけちをつけるなんて。
「わかりました!違うゲームにしましょう。今度はこれです!」
そして取り出したのはトランプ。これならキリュウさんも・・・。
「花織殿、私はばばぬきとやらしかできぬぞ。」
「・・・なんだかそれって意味ないですね。しかたがない、今度は・・・。」
そして将棋盤を取り出す。これなら二人で十分楽しめるよね。
「さあキリュウさん、一局!」
「一曲?何か歌うのか?」
ずるっ。将棋盤を出してどうして歌わなきゃいけないんですか!
「違いますよキリュウさん、将棋を一戦やろうって事・・・待って下さい、将棋のルール知ってますか?」
「もちろん知っているぞ。しかし、なんだか駒の数が少なくないか?」
「そんな事ないですよ。これで全部です。」
あ、でも昔の中国の将棋とはルールが違ってたりするかも・・・まあ、大丈夫よね。
そして駒を並べ終わり、ようやく対局開始!・・・一応きいとこ。
「王様を取ったら勝ちなんです。これは知ってますよね。」
「何を当たり前の事を。さあ、始めようではないか。」
良かった、心配ないみたい。よーし、キリュウさんに勝つぞー!
「というわけでいざ勝負!!・・・って、なにやってるんですかキリュウさん!!」
「何って・・・。さいころを振っているのだが。」
「さいころぉ!?そんなもん将棋に関係無いじゃないですか!!」
「しかし、これを振って親を決めないと・・・。」
「だあああ!!それは違うゲームでしょうが!!!」
「そうだったか?」
「そうです!!」
疑問の顔になるキリュウさんから急いでさいころを奪い取る。
まったく、なんで将棋に親とか存在するんだか、とんでもない。
そんな事よりいつの間にさいころを取り出したんだろ。結構侮れないなあ・・・。
「それじゃあ始めましょう。キリュウさんからどうぞ。」
「よし、では・・・。」
キリュウさんがまず動かしたのは飛車・・・。
「・・・なんで端っこに?」
「別に良いではないか。さあ、次は花織殿だぞ。」
「は、はあ・・・。」
あたしは定跡通りに角の右斜め上の歩をつく。
「ふむ、なるほど。では・・・。」
今度キリュウさんが動かしたのは香車・・・。
「あの、キリュウさん、本当にルール分かってます?」
「・・・随分と不満そうだな。私が動かした駒にケチをつける気か?」
「い、いえ・・・。」
なんとなく気迫に満ちたその声にあたしは逆らえなかった。
そんなこんなでドンドンと駒を動かして行くと・・・。
「よし、王手だ。」
「王手・・・って、詰み!?」
「罪?花織殿、何か悪い事をしたのか?」
いちいちボケるなんて・・・一体誰に影響されてるんだろ・・・。
「キリュウさん、私の負けです。」
「負け?・・・確かにそれっぽいな。で、さっきの罪とは?」
「だからあ、王様が取られる状況になると詰みって言うんですよ。知ってるでしょう?」
「・・・そうだったか?まあいい、私の勝ちだという事だな。」
「そうですね。」
あの最初の状況からどうやって負けにならなくちゃならないんだか。
訳がわかんないなあ。キリュウさんって密かに凄く強いんだ。
「それにしても七梨先輩まだ起きてきませんね。」
「よほど疲れているのだろう。さて、次は何をするんだ?」
「とりあえず将棋はもういいですね。じゃあヨーヨーでも。」
そして取り出したヨーヨー。もちろん二つ。
「はいどうぞ、キリュウさん。」
「ああ、ありがとう・・・。」
二人してしゅるしゅるしゅると・・・。
「わーいわーい。」
「あはははは・・・。」
・・・って、楽しくなーい!!
「キリュウさん、せっかくだから何か勝負しましょう。」
「例えば?」
「例えば・・・何処かの的に当てるとか。」
「ヨーヨーを投げるのか?それは危ないぞ。」
「投げる訳無いでしょうが・・・。飛ばすんですよ、指につけたまま!!」
「となると、自分も一緒に飛んで行かないと・・・」
「そんな事しなくて良いんです!!」
怒った様に言って、ようやくキリュウさんは納得してくれたみたい。
ふう、疲れるなあ。ほんとにもう、一体誰の影響だろう。半分はシャオ先輩だろうな・・・。
「それじゃああの壁にかかってるマークにしましょう。」
「心得た。」
「せーの・・・」
「「それっ!」」
どがどがっ!!
なんと、二人のヨーヨーがぶつかり合っちゃったの。
そしてそれはあたし達の顔めがけて・・・!!!
「「ぶっ!!」」
直撃を食らって、ゆっくりとそこへ崩れ落ちるあたしとキリュウさん。
気絶する直前に離珠ちゃんが慌てて駆け寄ってきてくれたような・・・。

次に気がついた時。あたしとキリュウさんはソファーの上に寝かされていた。
どうやらキリュウさんはまだ気絶しているみたいで目を閉じている。
体を起こして周りをきょろきょろと見まわしていると・・・。
「あら、目が覚めた?あんたキリュウと一緒に何やってたのよ。」
る、ルーアン先生だ・・・。そうか、寝かせてくれたのはルーアン先生か。
「ありがとうございます、ルーアン先生。」
一応お礼は言っておかないとね。後で嫌味ったらしく言われるのはいやだから。
「あんた達を寝かせたのはたー様よ。というよりはあたしも手伝ったけど。た―様〜、愛原のじょーちゃんが起きたわよ―。」
えっ?七梨先輩も起きてるの?
キッチンの方を見ていると、果たして七梨先輩が顔を見せた。
「七梨先輩・・・。」
「よっ、愛原。音がして降りてきたらキリュウと一緒になって気絶してたもんだからさ。ほんとびっくりしちゃったよ。一体何してたんだ?」
「それは、その、ちょっとキリュウさんとゲームを・・・。」
まさか本当の事を細かく説明なんて出来ない。
あたしはもじもじしながらくちごもるのだった。
「二人して遊んでたって訳か。ふうん・・・。」
「まあいいわよね、たー様。あたし達もあそばせてもらったし。」
「えっ?」
ルーアン先生の言葉にあたしは当然反応した。
遊ばせてもらったってどういう事だろう・・・。
「ルーアン、俺達何かして遊んだか?」
「あらあ、寝ているじょーちゃんで色々遊んだじゃない。あーんな事とかこーんな事とか。」
「なんだそれ?」
「そうですよ、ルーアン先生。一体何なんですか?」
七梨先輩が首を傾げてるところを見るとこれはルーアン先生のでまかせだろう。
でも、なんとなく気になるなあ。寝ている間に二人して何かしたって事?
「もう、たー様ったら。実際に言わなきゃわかんないかしら?」
「実際に・・・?あーんな事・・・?・・・してないって!!
俺はただ愛原をソファーに寝かせただけだよ!!」
「え?え?七梨先輩、あたしに何かしたんですか?」
「だからしてないって!!」
七梨先輩が慌ててる。でもあたしにはまだぴんと来ない・・・。
「たー様、そんな責任逃れはいけないわよ。ばっちりやってたじゃない。」
「何言ってんだ!!第一、シャオにもまだ・・・あ、いや、その・・・とにかく!! 俺は何もやってない!!ルーアン、いいかげんでたらめを言うのは止めろ!!」
シャオ先輩に?・・・ああー!!そういう事かあ!!
やっと頭にぴんと来たあたしは、急いで七梨先輩にだきついた。
「もう七梨先輩ったら、あたしが寝ている間にそんな事してたんですかあ。」
「愛原・・・だからしてないってばー!!
おいルーアン、何とか言ったら・・・ってどこへ行くんだよー!!」
「ちょっとシャオリンを探しにね。じゃあね、たー様。」
言い残してルーアン先生は部屋から出ていった。
傍にはキリュウさんが寝ているけど・・・強引に考えれば二人っきり?
「七梨先輩、早く遊びましょう〜。」
「うわあ!!あ、愛原やめろ〜!!」
「もう、そんなに照れなくっても。」
なんだか今日のあたしったら大胆。こんなチャンスはめったに無いもんね。
「花織殿、やめろ〜!」
「もう、何キリュウさんみたいな事言ってるんですかあ。せ・ん・ぱ・い。」
「私はキリュウだ!!いいかげん目を覚ませ!!!」
「もう何がキリュウさんですか。・・・え?」
次の瞬間あたしの目の前にいたのは七梨先輩じゃなくてキリュウさんだった。
ほんと目の前。後少しでも近付けば、唇と唇が・・・。
「わわっ!!き、キリュウさん!?」
あたしは慌てて顔を離す・・・と、そこで初めてあたしは床に寝っ転がっていた事を自覚した。
「あ、あれ?七梨先輩は?ルーアン先生は?」
「まだ寝ぼけているのか?まったく、危うくおそわれるところだった・・・。」
やれやれと首を振ってキリュウさんがそこから起き上がる。
へ?もしかしてさっきのは夢・・・。
「あの、キリュウさん。一体何がどうなったんですか?」
「ヨーヨーが私達二人に直撃した。そして私達は気絶した。ここまでは良いな?」
説明を始めたキリュウさん。あたしはゆっくりと頷いた。
「しばらくして、私は目を覚ました。少し痛みが襲ってきたがなんとか体を起こした。しかし花織殿はまだ気絶していた。これもいいな?」
さっきと同じように頷く。なるほど、先に気絶から回復したのはキリュウさんって訳なんだ。
「それで私はソファーに寝かせようと花織殿に近付いた。
すると、花織殿が何やら寝言を言いながら私に抱きついたんだ。」
「げっ・・・。」
「後はあまり言いたくないが・・・。とにかく危ない状況だったわけだ。」
「は、はあ、どうもすいません・・・。」
あれは夢だったんだ。良く考えたらおかしい。
第一、ルーアン先生があたしと七梨先輩を置いて出かけるなんて訳が無い。
はああ、とんだ夢だったなあ・・・。
「ところで花織殿。主殿はまだ起きてこないが・・・まだ何かげえむをするのか?」
「あ、ああそうですね。うーん・・・何か良い物を考えますからそれまでしりとりでも。」
「・・・いいだろう、受けて立つぞ。」
考え込んだ後にきりっと顔を上げてソファーにでんと座るキリュウさん・・・。
しりとりでなんで熱くなってるんだろ。何かあったのかな?
「それじゃあ私からいきますね。七梨先輩!」
「・・・それはいいのか?」
「やっぱ駄目ですか・・・それじゃあ、ゲーム!」
「む・・・無味乾燥。」
「無味乾燥・・・。う・・・馬!」
「ま・・・まな板の上の鯉。」
「・・・ちょっとキリュウさん、そういうのは駄目ですよ。」
「そうか?では・・・うーむ、ま、ま・・・。」
何難しく考え込んでるんだろ。もうちょっと軽くやるとか・・・って、あたしはあたしでゲーム考えなきゃ。
え〜と、トランプも将棋もやっちゃったし・・・あ、オセロがあったんだ。
「キリュウさん。」
「ま、ま・・・。」
「あの、キリュウさん。」
「花織殿、話しかけないでくれ。ま、ま・・・。」
駄目だこりゃ。すっかりしりとりに夢中になっちゃってるよ。
しょうがない、ここは一つ・・・。
「離珠ちゃん、オセロやろう?」
いつのまにかお昼寝していた離珠ちゃん(ついさっき起きたみたい)に呼びかける。
最初は首を傾げていた離珠ちゃんだったけど、胸をドンとはってOKサインを出した。
よーし、ゲーム開始!!
「離珠ちゃん、あたしが代わりに置いていくからね。」
離珠ちゃんが置くには大変過ぎるので、それは当然の事。
もちろん一手ごとに持ち上げて全体を見せる事も忘れない。
というわけで、隣でうんうんうなっているキリュウさんをほったらかし。
離珠ちゃんとの勝負に熱中して・・・。
・・・気がついた時には夕刻。
「もうこんな時間?ちょっとキリュウさん、七梨先輩起きてこないじゃないですか。」
「おかしいな、さすがにこの時間まで寝ているという事は今まで無かったはずだが・・・。」
遊び疲れたということで三人して休憩を取っていた。
キリュウさんの入れたお茶で、出雲さんのお土産を食べながら・・・。
「・・・起こしてきてくれませんか?」
とうとうあたしは我慢できなくなって頼み事を。
だって、このままじゃあ何のためにきたんだかわかりゃしない。
「・・・しょうがないな。少し待っていてくれ。」
ため息をついたキリュウさんは、立ち上がったかと思うとすっとリビングを出て行った。
階段を上る音が聞こえる・・・。
「ふう、どうしたんだろうな、七梨先輩。
そういえば夜遅くまで試練をやってたって言ってたっけ。
けどこれは寝過ぎだよねえ。いくらなんでも夕方まで・・・。
それだけ試練がきつかったって事なのかな。今度キリュウさんに注意しなくっちゃ。」
ぶつぶつと文句を言うあたしを不思議そうに見る離珠ちゃん。
離珠ちゃんと言えば、シャオ先輩も帰りが遅いような。一体何処へ出かけたんだろうな・・・。
よく考えたらルーアン先生も起きてこないなんておかしいな。
お腹がすいて絶対起きてくると思うんだけど・・・。
と、そこでキリュウさんが戻って来た。けれど七梨先輩が一緒じゃない。
それに、なんだか申し訳なさそうな顔をしてるみたいだけど・・・。
「すまない、花織殿。」
いきなり謝ってきた?なんだか嫌な予感が・・・。
「どうしたんですか、キリュウさん。」
一応あたしは訊いてみた。するとキリュウさんは・・・。
「主殿は朝からいなかったようだ。どうやらシャオ殿と出掛けた様だ。」
「へえ、そうなんですか。」
やっぱりか。どうもおかしいとおも・・・
「ええっ!!?シャオ先輩と!!?」
「そ、そうだ。私はてっきり寝ているものと思っていたのだが。」
「ちょっと待ってくださいよ!だったら、そういう書き置きとか連絡を受けてるんじゃないですか?」
「それが、シャオ殿から出掛けに聞いた事は、“ちょっと出かけてきます”という事だけなんだ。
だからその、私はてっきり主殿は家で居るものと思っていたんだが・・・。」
なんてことなの。あれ?でも変だな・・・。
「キリュウさん、シャオ先輩からは“ちょっと出かけてきます”としか聞いてないんでしょ?
それだったら、七梨先輩は一緒に出掛けたって訳じゃないんじゃ?」
「・・・それもそうか。しかし花織殿、私の予想は多分間違っていないぞ。
それに、何故かルーアン殿も居ない。おそらく主殿達を探しに・・・」
「ちょっと待った!!」
なんだか語り出したキリュウさんを、あたしは慌てて止めた。
「最初あたしが来た時に聞いた事と全然違うじゃないですか!! ルーアン先生も七梨先輩も寝てるんじゃなかったんですか!?」
「それはその、私がそう思っただけで・・・。」
「・・・なるほど、正式に確かめたわけでは無いって事ですね?」
「・・・そうだ。」
呆れた・・・。なんでちゃんと確かめようとかしないんだか。
あたしは一体何のためにこの家に・・・。
「ところでキリュウさん、ルーアン先生が出掛けた事は気付かなかったんですか?」
「・・・朝にシャオ殿を見送った後、少し眠ったものだから。」
「へえ〜、二度寝したんですかあ。それじゃあ気付くわけないですよねえ。」
「花織殿、ひょっとして怒っているのか?」
だんだんと顔色と声色が変わり始めたあたしに気付いたのか、キリュウさんが恐る恐る聞いてきた。
チラッと横を見ると、離珠ちゃんもそんな顔。つまりおびえてるって事。
「怒ってますよ!!あたしは七梨先輩と遊ぶ為に来たんですよ!!
なのに、七梨先輩は居ない。あたしはキリュウさんに騙されたんです!!」
「騙したとは人聞きの悪い・・・」
「結果的にそうじゃないですか!!」
「そうだな。なんとお詫びして良いやら・・・。」
しゅんとなってうつむくキリュウさん。ま、反省してるみたいだしこれ以上怒るのは止めよっか。
「もういいですよ。時間も遅いし、あたし帰ります。」
「そうか・・・。色々すまなかった。この埋め合わせは必ずする。」
さっすが、分かってるなあ。でもいいや、もう。あたしは心が広いって所を見せないと!
「埋め合わせなんてしなくて良いですよ。キリュウさんとゲームができて楽しかったですし。」
「そ、そうか?」
「離珠ちゃんとも遊べたし。だから、また今度機会があったら遊ぶって事で。」
「・・・ありがとう、花織殿。」
ホッとした様にキリュウさんが言ってくれた。
離珠ちゃんの方見ると、ぺこりと笑顔でお辞儀してくれた。
七梨先輩には会えなかったけど、この二人との仲が深まったってことでよしとしようか。
シャオ先輩と七梨先輩が一緒に出掛けた、ったってルーアン先生が追いかけて行ったんじゃ無事じゃないだろうし。
というわけで、あたしは笑顔で玄関を出る。
「それじゃあまた。」
「ああ。」
手を振って別れの挨拶。キリュウさんと離珠ちゃんも手を振って返してくれた。
なんだか変な一日だったなあ。ま、色々遊べたからいっか。
でも、今度こそは七梨先輩と遊びたいなあ。そして・・・。
きゃーん、あたしってばなんてことを!!でもでも・・・。

<おしまい>

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