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1999年??月「(仮題)燃えるハートと露草の妖精」

初出 1999年03月28日
written by 双剣士 (WebSite)
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予告編

野村たかし「おおおぉーっし、やっとこの日が来たぜ! ファン待望の守護月天長編連載! しかも主役はこのおれ! 見る眼あるよなぁ大家さんも。太助や出雲さんの陰に隠れて不遇をかこっていたおれの立場もこれで変わる! ついに、ついにシャオちゃんをこの手にゲットだぁ〜!」
南極寿星「(ぽかっ)何をいきり立っておる、騒々しい」
たかし「いてっ‥な、なんだこのちんちくりんの爺さんは?」
南極寿星「(ぽかっ)だれがちんちくりんじゃ(ぽかっ)失礼な(ぽかぽかっ)」
たかし「痛い、痛いって‥なんだよ爺さん、邪魔邪魔。ここは『まもって守護月天!』のキャラしか入れない、それはそれは神聖な場所なんだぜ」
南極寿星「お主、わしを知らんのか。ふっ(嘲りの笑み)所詮はギャグキャラじゃのう。物語の鍵を握るといわれておる、この南極寿星を知らんとは‥そういえば、お主とは会ったことが無かったかの?」
たかし「な‥何局、受精? なんて、いやらしい名前の爺さんだ!」
南極寿星「南極寿星じゃ、馬鹿もん(ぽかっ)。わしは守護月天のお目付け役での、シャオリン様があの小僧にのめり込むのを制止するとともに、時を超えて万物を知る能力を持っておる」
たかし「なんだって! それじゃ、シャオちゃんを太助から引き離して、おれの元に呼んでくれよ!」
南極寿星「‥なんと浅ましい小僧じゃ。まぁいい、頼まれてもそんなことはせんからの。今日ここに来たのは、大家さんからの伝言をお主に伝えるためじゃ」
たかし「大家さんが? おおっ、それじゃ頼むぜ。シャオちゃんのハートをゲットするための方法を教えてくれるんだろ?」
南極寿星「こほん‥それがの、お主の連載、セイバーJの連載に続いて4月から始める予定じゃったが、延期になるそうじゃ」
たかし「えっ、そりゃ、そりゃ無いぜ爺さん。こっちはとっくにスタンバってんだからよ。このWebページを見てくれてるお客さんだって、おれの活躍に期待してるに違いないんだから」
南極寿星「そう、お主の都合はともかく読者の方々はそう思っておるじゃろうな。それで、わしが大家さんの代理として出てきたというわけよ‥大家さんが言うにはの、連載延期の理由は4つあるらしい」
たかし「ちぇっ、やめる理由を並べるようになっちゃおしまいだな‥続ける理由は、おれの熱意と、読者の期待! それで十分だろうが」
南極寿星「黙って聞け、大家さんに反感を買っても知らんぞ‥まず1つめの理由じゃがの、大家さんは3月にセイバーJの連載をやって、自分の性格を再認識したそうじゃ。プロット抜きで肩の凝らない短編を書くつもりだったが、見事に失敗した。じっくり時間を掛けてプロットを作って、それに沿って物語を展開する方が自分の性に合っているとな」
たかし「えっ、じゃこのショート連載は失敗だったってのか?」
南極寿星「そうは言わんが、連載を始める前にプロットを作る時間が必要だということよ。セイバーJではプロット抜きの前半・中盤でキャラクタを動かしすぎたため、終盤でエンディングの整合を取るのに苦労したらしい。知っておるじゃろう、3月24日からしばらく続いた休載期間のことを」
たかし「‥どーせプロット作ったって、いつのまにか勢いに任せて突っ走り始めるに決まってるのに‥」
南極寿星「第2にはの。毎日更新をすること自体は、時間的にも体力的にも思ったほど困難ではなかったらしい。じゃが問題は、締め切りに追われながら物語を書くという精神的重圧じゃな‥スランプに陥った時、締め切りを守るために自分でも面白いと思わない物語を書かなければならないプレッシャーは、これまで好きな時に好きなものを書いてきた大家さんには想像もつかぬものだったそうじゃ。それゆえに大家さんは締め切りを破り、充電期間を置くという選択をした‥今回も連載を始める前に、ある程度書き溜めをして保険を掛けておきたいと言うのじゃよ」
たかし「そんなの余計な心配だぜ。始めてしまえばこの野村たかし、大家さんの鼻面を引きずり回してでも面白い話にする自信は有るからよ」
南極寿星「‥大家さんもそう言うとったぞ。お主ならキャラクタパワーが有るから、どんな状況でも台詞には事欠かん。障害を克服できずもがき苦しんでも、それがお主のキャラクターだといえば読者は納得する。ボロボロにしようが性格が変わろうが最終的にどんなに不幸にしようが、固定ファンの少ないお主なら恐れるものはない。それに『いぶの夜』で完膚なきまでにぶち壊した前科もある‥ドタバタの主人公にはうってつけだとな」
たかし「‥大家のやつ、今に刺してやる‥」
南極寿星「3番目の理由じゃ。お主の友人に、ほれ、眼鏡を掛けた少年がおるじゃろう」
たかし「あ、乎一郎のことか?」
南極寿星「そうじゃ。あやつの連載小説が、2月半ばから止まっておる。その理由が、この日記風ショートだというのじゃな」
たかし「良く言うぜ、それじゃ3月6日の出雲さんのSSはどうなるんだ?」
南極寿星「そこじゃよ。大家さんは小説を書く前に、頭の中の劇場でキャラクタたちを遊ばせるそうじゃが、その舞台が2つの物語を同時進行する広さがないそうじゃな。あの神主のSSを書いた頃はセイバーJの連載がまだ序盤じゃったし、あのSS自体が軽いコメディだったので時間帯を区切って舞台を交代で使わせることができたそうじゃが、あの少年のは‥重い、あまりにも重い。舞台を2日間ほど借り切って試行錯誤しないと書けるものではない。そういうときに毎日更新の小説をやっていると、つい少年のSSを後回しにせざるを得ないそうじゃよ」
たかし「‥‥‥」
南極寿星「なぁ、お主、しばらく舞台を空けておいてやってはくれぬか。聞けばあやつとお主は無二の親友だというではないか。ここで意地を張ると、双方が不幸になるのじゃぞ」
たかし「‥わかったよ。あいつには色々借りもあるしな。乎一郎のSSをしっかり完結させておけば、心置きなくおれの小説に掛かれるって言うんだろ?」
南極寿星「そうじゃ。ここで我慢することが、結局はお主のためになる。分かってくれたか」
たかし「ああ。ところで爺さん、4番目の理由ってのはなんだい?」
南極寿星「ん?‥そんなこと、言うたかの。延期する理由は、今言った3つじゃ。納得してくれたんじゃろう?」
たかし「わかったけどよ、こうなると気になるじゃんか。爺さんさっきから言いたい放題言ってんだからさ、最後まで言っちまいなよ」
南極寿星「無いと言ったら、無い。それよりお主、自分の物語がどんな筋になるか、聞きたくはないか? 予告と銘打った以上、多少は漏らしてもよいと大家さんに言われておるのじゃが」
たかし「聞きたい聞きたい! どんなになるんだ、おれとシャオちゃんはどうやって結ばれるんだ?」
南極寿星「それじゃがの‥お主には悪いが、シャオリン様との仲は、諦めてもらう」
たかし「そ、そんな殺生な!」
南極寿星「お主がシャオリン様を追いかけている限り、お主に幸福は訪れん。原作の中でも薄々気づいてはおるのじゃろう? そこでの、何の因果か知らんがお主に心奪われる、新キャラの美少女を登場させる予定だそうじゃ。彼女の原形は‥」
たかし「待て、それ以上は言うな! おれは、おれは‥おれはシャオちゃん一筋の男なんだぁ! 新キャラと聞いて心を揺らしたり‥する‥もの、か‥」
南極寿星「ほほう、大家さんの意向に逆らうとでも? わしは別に構わんのだぞ。守護月天のSSを書いておる御仁は何も大家さん一人ではない。じゃが、お主をシャオリン様と結ばれるようにしてくれる御仁が‥いや、そもそもお主を主役にしてそれなりの幸福を与えようと言う御仁が幾人いるか、はなはだ疑問だが‥どうする、ここを離れて、別の家に移るか?」
たかし「‥ぐっ‥」
南極寿星「それに、大家さんは常々“翔子萌え”を公言しておる御仁じゃからのう。延期しているうちに気が変わらんとも限らん。お主、今は大家さんの機嫌を損ねない方がよいぞ。ほれ、納得したならさっさと退散せい」
たかし「‥(まずい、おれより山野辺の方が読者受けが良さそうだ)‥わかったよ爺さん。おれ、これから大家さんに挨拶に行ってくるよ。それじゃな(退席)」

南極寿星「‥ふう、なんとか説得できたわい‥言えんよのう、4番目の理由が、守護月天ともセイバーJとも違う新分野のSSを書く準備をしているせいだとは‥」


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