Re: 僕が主で君が従者 ( No.1 ) |
- 日時: 2013/01/27 18:53
- 名前: 唐笠
- 両親は働かない上に博打で金を使い尽くした。
私はその日の生活さえ困窮する毎日を幼少期から過ごしてきたのだ。
しかし、不幸中の幸いなのか、私はとことん金運なるものがあった。 道端で拾った宝くじは前後賞が当たるし、生活に困って街で途方に暮れてると、親切な人がお金や食べ物を恵んでくれたりもした。 後から両親に指摘されて知ったことだが、私のこの金色の髪はどうやら人目を惹くようである。 しかし、両親がどちらも黒髪なのに私が金髪とはおかしなものだ… まぁ、結局はそうした金もほとんどは両親が使い果たしてしまったのだが、それを見越した私が僅かながらも貯蓄をする事によりやっとの生活を送ってくることができた。
しかし、クリスマスイブの今日… 私は両親の作った150,000,000の借金のかたとして売られた。 そして今はその借金取りから逃げている真っ最中である。 だが、それもあともう少しで……
「見つけたぞ!」
終わる… 流石に私の金運もこの途方もない借金には勝てないらしく、ついには追いつめられてしまった…
せめて、最後は笑って死にたかったが、どうやらそれすらも叶わないようである。
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Re: 僕が主で君が従者 ( No.2 ) |
- 日時: 2013/01/27 19:15
- 名前: 唐笠
- 「さぁ、こっちにきな」
さすがに自分から行くのはちょっと怖い。 どのみち結末は変わらないと言うのに、私は自らピリオドを打つだけの勇気がないのだ。 だから、私はぎゅっと目を瞑った… 目が覚めたら、決して幸せではないが両親がいるあの毎日が待っていることを願って… 叶わないなんて解っている。だけど、私はどんな酷い仕打ち受けようとも、やはり両親の事が好きなようである…
「ったく、手こずらせるなよ」
足音が徐々に近づいてくる。 私の毎日を奪っていく足音が…
「まったく… クリスマスイブに、こんな女の子に大の大人が揃いも揃って、なんなんですか…?」
「あぁん!? 兄ちゃんには関係ねぇんだよ。どきな!」
なにか様子がおかしい… それが気になって、そっと目を開ければ、私と借金取りの間に一人の青年が立っていた。 もちろん知らない人である。
「例えどんな理由があろうとも、こんなにおびえてる子を放っておけるほど僕は人が死んでないんですよ」
「なら、兄ちゃんがこいつの借金払ってくれるのかよ? 150,000,000だぜ?」
「解りましたよ。少し待っていてくださいね」
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Re: 僕が主で君が従者 ( No.3 ) |
- 日時: 2013/01/27 19:30
- 名前: 唐笠
- そう言うと彼は、コートのポケットから何かの紙を取り出すと、それに何かを書き込み始める。
「きっかり150,000,000。ここにありますよ」
そう言って彼は借金の一人にその紙を手渡す。 もしや、あれが噂に聞く小切手なるものなのだろうか?
「おい、ちゃんとてめぇの口座には入ってんだろうな?」
「当然ですよ。なんたって、綾崎家ですから」
「なっ、綾崎だって!?」
綾崎。 貧乏最低辺の私でも小耳に挟んだことある。 なんでも気まぐれで島を買うほどの大財閥だとかなんだとか…
「へへっ、なら安心だぜ。 あばよ」
満足したのであろう借金取り達はそそくさとその場を後にしていく。
「大丈夫でしたか?」
私を助けてくれた綾崎が初めて私の方へ振り返る。 中性的な顔立ちだが、それ故の温かみがあり私の警戒を一瞬にして消しとばしていった。
「あぁ… すまない。しかし、あいにくだが、私は何もしてやれることがないんだ…」
そう、私には150,000,000に見合うどころか、人並みのお礼すらできない。
「別にいいですよ。僕の勝手でやっただけですから」
それなのに綾崎は笑顔でお礼はいらないと言ったのだ。
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Re: 僕が主で君が従者 ( No.4 ) |
- 日時: 2013/01/27 19:46
- 名前: 唐笠
- だが、それでは私の気が収まらない。
と言っても、私にあるのはなけなしの120円のみである…
「それにしても今日は冷えますね。失礼ですが、帰る先はありますか?」
たしかに綾崎の言う通り今日は冷える。 まぁ、雪が降っているから当然なのだが… そんないつもの達観してしまう癖のさなか、私はあるものに気がついた。 私のすぐ横には自動販売機があるのだ。 それに全財産を入れた私は缶コーヒーのホットを買う。 そして、それを綾崎に差し出したのだ。
「今はこれくらいしかできないけど、いつかは返すから…」
「わ、わるいですよ!こんな事してほしかった訳じゃありませんって!」
さらっと見ず知らずの相手に150,000,000を出す奴が何をぬかすのだ… そう心中でぼやくが、私も退く訳にはいかない。
「いいから貰っておいてくれ!」
「わ、わかりましたよ…」
私が余りにも強くおすからか折れた綾崎は缶コーヒーのタブを開けると一口のむ。
「とっても美味しいですよ」
その笑顔は私が今まで見てきた物の中で最高の物だった。 同時に胸の中が温かくなるのを感じた。
だから、私も笑顔を返す。 彼にもこの温かさを分けてあげたいから…
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Re: 僕が主で君が従者 ( No.5 ) |
- 日時: 2013/01/27 19:51
- 名前: 唐笠
- と言うわけで今日の分はここまでとします。
当初は携帯で投稿する予定でしたが、携帯では無理なそうで… 断念してPSPからなのですが、文字数制限が辛いですね。 読みづらい文になってしまい申し訳ありません。
誤字・脱字、表現の仕方などのご指摘がありましたら、よろしくお願いいたします。
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Re: 僕が主で君が従者 ( No.6 ) |
- 日時: 2013/01/28 19:44
- 名前: 唐笠
- ハヤテSIDE
見返りを期待した訳じゃない。 ましてや、やましい気持ちがあった訳でもない。
『困っている人がいたら助けられるような立派な大人になってくれよ』
幼き日の約束の通りにしただけだ。 だけど、その人の顔を僕は覚えていない… それでも、その言葉は今現在も僕の中で生き続けていた。
「おいしいですよ」
コーヒーを一口飲み、そう言うが、実はコーヒーは苦手なのだ。 しかし、この子が自分の持ち金を全てはたいて買ってくれた物にケチをつけるわけにはいかない。 だから、僕は微笑んだ。
「うむ、それはよかったのだ」
僕の反応に満足なのか、彼女も微笑んだ。 その笑顔に僕は思わず息を呑む… 先に言おう。僕は断じてロリコンではない。 だけど、彼女のその笑顔は僕の胸を温かくした。 金持ち特有の上辺だけの付き合いでは決して見れないそれに僕は強く惹かれたのだ。
正直に言おう。 彼女がほしかった。
偽りなく言おう。 僕は偽善者になると…
「あの… もし、行くあてがなければ僕の家にきませんか?」
「えっ… って、いやいや、借金肩代わりして貰っているのに流石にそれは私の気が退けるのだが…」
まぁ、当然の反応である
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Re: 僕が主で君が従者 ( No.7 ) |
- 日時: 2013/01/28 20:13
- 名前: 唐笠
- だが、その反応も予想通りである。
「でも、さっき借金はいつか返すって言いましたよね?」
「うむ… いつになるかは解らぬが必ず返すぞ。 なんなら、私の連絡先を……って、そう言えば今さっき家を失ったんだったな…」
「ね? なら、僕の所に住み込みで働いてくれませんか? それなら、借金分の返済もできると思いますよ」
我ながら、とんだ偽善者である。 やましい気持ちはない…? どう考えたって自身の欲望から発した言葉じゃないか… でも、それでも良かったのだ…
「し、しかし… 住み込みと言っても私は何もできぬぞ?」
「いいんですよ。 少しずつ覚えていけば。それより、きてくれますか?」
解っている。 彼女に拒否権などありはしないと。 別に僕が勝手にやったことなのだから、彼女は踏み倒しても問題はない。 だけど、全財産をはたいて缶コーヒーを買ってしまう程に律儀な彼女にはそれができないと言うことも解っている。
「そ、そうなのか? なら、よろしく頼むぞ!」
「はい、こちらこそよろしくお願いします。えっとぉ…」
「三千院ナギだ」
「綾崎ハヤテです」
こうして僕とナギ、二人の生活が始まったのだった。
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Re: 僕が主で君が従者 ( No.8 ) |
- 日時: 2013/01/28 20:15
- 名前: 唐笠
- という訳で本日はここまでです。
明日からはやっと屋敷編です
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Re: 僕が主で君が従者で ( No.9 ) |
- 日時: 2013/01/28 21:02
- 名前: サタン
- はじめまして、サタンと申す者です。
ハヤテとナギの立場が逆転した話ですか。 良いですね〜 私もハヤナギ派でして。
しかも、原作と違ってハヤテはロリコン?なのでしょうか? まあ、ハヤテは自身は否定してるみたいですが。 ナギの方はハヤテの下心に気づいてないようですね。 さて、次回から屋敷の話ですか、どんな展開になるのか楽しみです。
それでは、更新頑張って下さい。
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Re: 僕が主で君が従者 ( No.10 ) |
- 日時: 2013/01/29 08:52
- 名前: 唐笠
- ま、まさか私の駄文に感想が…!
サタンさん、初めまして。感想ありがとうございます。
立場逆転物ですが、それ以外も所々逆転しています。 その一つとして初期のナギ→ハヤテという構図を逆転させております。 まぁ、TKDSの節があるかは追々明かしていこうかと…←必要あるのか?
わざわざ書くまでもないかと思いますが拙作の爆弾は上記となります。 原作では未だに爆発していない二人の爆弾ですが、こちらでは遅かれ早かれ……
では、次回もよろしければおつきあいください。
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Re: 僕が主で君が従者 ( No.11 ) |
- 日時: 2013/01/29 12:47
- 名前: 唐笠
- 〜第2話「僕の従者達は僕を敬わない」〜
ナギSIDE
世の中とは不条理だ… それは頑張った者のみが言える言葉である。
なら、私はどうだろう? 確かに苦労はしてきたが、それでも誰かが助けてくれていた。 それは見ず知らずの人だったり運だったりと様々であるが、私の努力ではない。 だから、私にはこの言葉を発する資格はないのだ。
例え、夢物語かのような屋敷を見ても… 例え、きらびやかなシャンデリアを見ても… 例え、ホワイトタイガーが屋敷の中を歩い……
「って、これはおかしいだろ!?」
「いったいどうしたんですか?」
私の叫びに対してハヤテを何も問題などないと言った風に微笑むがたまったもんじゃない。 こんな大型肉食動物と暮らしていたら速攻胃袋行きであろう。って、まさか……
「は、ハヤテ… まっ、まさか…わ、私の仕事って……こいつの餌なのか!?」
たしかにそれなら、私が何もできなくても問題ないだろう。 なんせ、喰われるだけの簡単なお仕事なのだから…
「そんなわけないじゃないですか。ナギのお仕事は−−−−−」
「ハヤテ君、帰ってきていたんですね」
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Re: 僕が主で君が従者 ( No.12 ) |
- 日時: 2013/01/29 13:31
- 名前: 唐笠
- ハヤテの言葉を遮るようにして一人の人物がやってくる。
一目でメイドと解る姿をしており、優しそうな印象を受ける人だ。 あと、女の私から見ても美人だったりするが、そこの詳しい説明は割愛させてもらおう。
「あっ、マリアさん。ただ今戻りました」
「ただ今戻りましたじゃありませんっ! 何でパーティー中にいなくなったりするんですか!」
マリアと呼ばれたメイドは手を腰に当て、ハヤテにそう怒る。 なるほど、私のような貧乏人ならいざ知らず、ハヤテのような金持ちはクリスマスイブにはパーティーを開くようである。 そして、理由は解らないがパーティーを抜け出してきたハヤテお灸を据えられているわけだ…
「いや…そのですね……」
「はぁ… ハヤテ君の人嫌いは今に始まった事ではないですし、いいですわ…」
よく解らないがメイドの方が折れたようである。 しかし、このメイドは私に気が付いていないのか?
「ところでハヤテ君?」
「なんですか?」
「いつからそんな趣味をお持ちで?」
あっ、今一瞬私の方を見た… という事は私を無視しているのだな?
「えっとぉ… 話が全く読めないのですが…」
安心しろハヤテ。私もさっぱりだからな
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Re: 僕が主で君が従者 ( No.13 ) |
- 日時: 2013/01/29 13:59
- 名前: 唐笠
- 「それはこちらの台詞ですわ…
主人がパーティーを抜け出したと思ったら、小さな女の子を連れ帰っているのですから… クリスマスイブに犯罪者にでもなりたいんですか?」
「いや、さすがにそんなことはしませんよ… ただ、彼女には僕のメイドをやってもらおうと思いまして」
「この子にですか?」
おい、こら。人を指さすな。 そう言ってやりたいのは山々だが、世の中は第一印象が大事なためグッとこらえる。
「はい、ナギには僕のメイドをやってもらおうと思ってるんです」
「解りましたわ。では、110に電話を「だから何で、そうなるんですか!?」
ポケットからさっと取り出した携帯で警察に通報しようとするメイドだが、ハヤテはそれを奪うようにして阻止した。 まぁ、平たく言えばハヤテはロリコンではないかと疑われているのだろう。 しかし、その疑いは大きな間違いである。 ハヤテは私を不憫に思って手を差し伸べてくれたに過ぎないのだから…
「ハヤテ君。時には自分を認めることも大切ですよ…」
「いやいや! 何でありもしないことを認めなきゃならないんですか!?」
「今ならまだ軽い刑ですみますから」
完全にハヤテの話は無視なようだ…
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Re: 僕が主で君が従者 ( No.14 ) |
- 日時: 2013/01/29 14:18
- 名前: 唐笠
- と言うか、メイドなのにこんなに主人をバカにして問題ないのだろうか?
金持ちというのはとことん解らないものである。
それからと言うもの、この漫才と呼称しても差し支えのない会話が延々と続き、私はそれを傍観していた。 正直に言えば退屈だ。ハヤテがどうあろうと私の恩人には代わりなく、それが重要であったのだから…
「では、この子のことは好きでも何でもないと言うことですね?」
なのに何故だろう… この言葉だけはやけに私の中に響いた…
「えっとぉ………その……それは…」
私はどんな答えを期待しているのだろう? 烏滸がましくも、恩人に何を求めているのだろう?
「解りましたわ… 私からは許可しますが、ちゃんとクラウスさんの許可もとってくださいね」
「は、はいっ! ありがとうございますマリアさん!」
このメイドの判断基準はさっぱりである。 それとも、ただ単に押し問答に飽きたのだろうか? どちらにせよ、私にとっては基地と転がったことには変わりないのだからよしとしよう。 さっきの妙な迷いも追い出される事への不安から生じたものだろう。
「じゃぁ、ナギ。行こうか」
差し出されたハヤテの温かな手を私は掴んだ。
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Re: 僕が主で君が従者で ( No.15 ) |
- 日時: 2013/01/30 01:37
- 名前: ゆーじ
初めまして!ゆーじと申します。
題名につられて読んでみればとても面白いです!
ハヤテとナギの立場が逆転し、ナギがハヤテに仕える展開は誰しもが考えたことだと思います。
ただそうなるとナギの名前が三千院と豪華なのに、貧乏だという複雑な感じになっちゃいますが(笑)
そしてハヤテはどういう立場になってもマリアさんには勝てそうにないですね(笑)
とてもPSPで執筆しているようには見えなくて凄いと思います!
次回の更新、楽しみにしてます!
ではー♪
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Re: 僕が主で君が従者 ( No.16 ) |
- 日時: 2013/01/30 09:06
- 名前: 唐笠
- あわわわっ!?
ゆーじさんから感想いただけちゃいましたよ!? あの感動長大作『君の笑顔が見たいから』のゆーじさんですよ!?
すみません。取り乱しすぎました…
立場逆転は王道ですよね。 そこを私なりに特色をつけてやっていきたいと考えております。
名字については設定を考えてあるのですが、蛇足になりかねないので語らないまま終わるかもしれません←オイ
拙作では、マリア>ハヤテ>ナギが屋敷内の精神的勢力構図になります。 タマやクラウスは割愛と言うことで。
いやはや、若輩の身である上に、PSPだと少し前の文との繋ぎが悪くてすみません。 私自身読み辛い事は承知してますが、お付き合いいただけれれば幸いです。
では、よろしければ次回もお読みください
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Re: 僕が主で君が従者 ( No.17 ) |
- 日時: 2013/01/30 13:40
- 名前: 唐笠
- ハヤテSIDE
「なぁ、ハヤテ?」
「どうかしましたか?」
マリアさんの言いつけ通り、クラウスさんにナギのことを了承してもらうために向かっている道中、隣で歩くナギが僕を見上げて尋ねてくる。 僕はそれに対して、少し歩を緩め反応した。
「いや、余り大した事ではないのだがな…」
「別に遠慮しなくて構いませんよ」
「うむ、それなのだ… なぜハヤテは主なのに、さっきのメイドさんや私に対して丁寧な言葉を使うのだ?」
「あぁ、そのことですか。 それはただ単に僕がそうしたいからそうしてるだけですよ。 金持ちだから偉い訳じゃない。主だから敬わなきゃいけない。 そんな堅苦しい中で生きていくよりも、みんなで楽しくやっていけた方がいいと思いませんか?」
「た、たしかにそうだな… じゃあ、メイドさんがあんな口調なのも…?」
「はい、僕がそうしてほしいとお願いしたからです。 でも最初は、堅い敬語ばかりで大変だったんですよ? まぁその点、ナギは最初からそれだから大丈夫そうですね」
「す、すみません…!」
そう言いったナギは、赤面したまま俯いてしまう。
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Re: 僕が主で君が従者 ( No.18 ) |
- 日時: 2013/01/30 14:02
- 名前: 唐笠
- 別に責めたわけではないのだが、ナギ自身は後ろめたさを感じてしまったのだろうか?
とりあえず、ナギに合わせて僕も止まるが一向に動き出す気配がない…
こう言う時は何か気の利いた言葉をかけてあげるべきなのだろう。 だが、他者との関わり合いに消極的だった僕はその術を持たなかった… 別に上辺だけで付き合っている人たちになら何とでも言えただろう。 しかし、僕はナギを一度騙している。それも限りなく体裁よく… だから、これ以上の嘘や責任の持てない言葉は発したくなかったのだ……
僕がそんな自己嫌悪に陥っていると、途端にナギの僕の手を握る力が強くなる。 華奢な見た目通りに非力であるのか、痛くはない。 だけど、その必死さは痛いほどに伝わってきた… かつて、僕も同じ事があったから… その手を放すまいと、強く…強く…握ったのにその人はいなくなってしまった…
僕がその時に抱いていた感情と、今のナギの感情が同じかは解らない。 だけど、この手を放さぬようにする事くらいはしてあげれるから…
「ナギ…心配しないで…」
何がなんて言わない。ただそれだけの短な言葉。 だけど、何かが伝わったのだろう。
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Re: 僕が主で君が従者 ( No.19 ) |
- 日時: 2013/01/30 14:16
- 名前: 唐笠
- ナギは僕の手をしっかりと握り返すと、あの微笑みを向けてくれた。
「ありがとな、ハヤテ」
やっぱり、僕はこの笑顔が好きだ… さっきまでの悩みすらぬぐい去ってくれるこの温かな笑みが… きっと、これからも僕はこの笑顔に救われるだろう。 だから僕もそれに恥じぬようにナギを守ろう。 その笑顔が曇ることのないように…
ガチャ
「わ、若……」
「……………」
タイミングとしては最悪だった… 正直、今度は言い逃れできないと観念もする… なんせ扉から出てきた人物からすれば、主が小さな女の子と手を繋ぎ、見つめ合っているのだから… とりあえず言おう。僕はロリコンではないと……
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Re: 僕が主で君が従者 ( No.21 ) |
- 日時: 2013/01/31 08:19
- 名前: 唐笠
- 皆様、おはようございます。
まずお詫びを一点。
No.20の投稿ですが、私が携帯で修正したものです。 それゆえの文字化けなのか、そもそもネタがギリギリだったからなのかは解りませんが、本編には関係ないロリコンについての話なので、このまま削除していただこうかと思います。
次回からは最新の注意を払っていくので、どうぞ拙作をよろしくお願いします。
〜第3話『人には言えない秘密が一つや二つあったりなかったり』〜
ハヤテSIDE
「コホンッ いくら若の申し付けでも、それはなりません」
クラウスの低く、だがよく通る声が執事長室に響く。 ちなみに一応、例の疑惑は払拭されるよう弁明をはかり一段落はついている。
「そんな堅いこと言わないでくださいよ。 それに雇うのは僕なんだから、問題なくありませんか?」
「この屋敷に仕える物を束ねるのが私の仕事です。 よって、従者に関しては若と言えども口出しは許しませんぞ」
この堅物め… 普段はいい人なのだが、変なところで堅くて困る…
しかし、困ったものだ。 クラウス自身は祖父に雇われているため、僕にどうこうできる権利はない。
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Re: 僕が主で君が従者 ( No.22 ) |
- 日時: 2013/01/31 08:40
- 名前: 唐笠
- 「だが、しかし…」
そう言いかけたクラウスは一度ナギへと視線を移す。 それにつられて僕もナギの方へ視線を移すと、とてもおびえきった顔をしていた。 なるほど。ここで不採用が決まれば数刻前に逆戻りなのだから当然か…
「クラウス。真剣な話がある。奥の部屋に来てくれるかい?」
「かしこまりました」
そう言うとクラウスは席から立ち上がり、奥の部屋への扉を開ける。 重大な話をする時の僕の微妙な変化に気付いたのだろう。 こう言ったことに関しては付き合いが長いとは、ありがたいものである。
「ナギ。すぐに帰ってきますから、少々お待ちくださいね」
「は、はい…」
か細い声だった… さっき廊下で話していた時とは正反対に今にも消えてしまいそうで… それは僕に言いようもない不安を与えたのだ。
もう嘘はつかないと決めたから… だから、あの微笑みが消えてしまう前に戻ってこよう。 すぐに帰ってくると言ったのだから…
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Re: 僕が主で君が従者 ( No.23 ) |
- 日時: 2013/01/31 09:03
- 名前: 唐笠
- 「単刀直入に言う」
執事長室の奥。 そこは普段使われることのない部屋。 僕はそこに入り、クラウスと向かい合う形で備え付けの椅子に座る。
「ナギは必ず僕のそばにおく」
「なぜ、あのようなどこの馬の骨とも解らぬ小娘に固執するのですか…」
固執か… たしかにぴったりな言葉だろう。
「ナギは優秀だ。だから傍におく。それになんの不満がある?」
この言葉に嘘はない。 曲解となるが、ナギにしかできないことが存在するのだから…
「メイドでしたらマリア、執事なら私がいるではありませんか。 烏滸がましいと思われるかもしれませんが、私たちは共に従者として一流と自負しております」
「それについては僕の方からも異論はない」
ただし、それは"従者"としての話… 僕がナギに求めているのは"従者"としてのナギではない。"三千院ナギ"個人なのだ。
「ならなぜ!」
「ナギが欲しいからに決まってるだろ」
「………若…やはりロリコ「だから違いますって!」
途端に場の空気が緩くなってしまった… というか、揃いも揃って僕をロリコンに仕立てあげたいのだろうか?
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Re: 僕が主で君が従者 ( No.24 ) |
- 日時: 2013/01/31 09:21
- 名前: 唐笠
- 「しかし、そうなると話は変わってきますな。
従者としてなら試用期間を設けようとも考えましたが、娶るつもりなら話は別です」
「つまりは…」
クラウスの言いたい事は大方理解した。 それに遅かれ早かれ、これは解決しなければならないものだから別に構わないだろう。
「お分かりと思いですが、若には許嫁がいます。 だから、認めるわけにはいかないのです」
「でも、ナギが僕に足りうる存在ならば問題ないはず。 いくら、ジジィでも劣る方を相手に選べとは言わないだろう。 だからこそ、ナギを従者として雇いたいんだ。それを証明するために…」
これで僕が言えることは全てだ。 ここでクラウスに反対された時はそこまでだろう。
「解りました… ただし、2週間を試用期間とし、その中で私が判断させていただきます」
「ありがとう。クラウス…」
やっとこれでスタート地点だ。 そして、この2週間が勝負となる。
「ところで若。小娘に告白の方は?」
「まだですけど?」
「このヘタレめ…」
どうやら、僕の従者はとことん僕をバカにしたいようである…
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Re: 僕が主で君が従者 ( No.25 ) |
- 日時: 2013/02/01 08:00
- 名前: 唐笠
- ナギSIDE
不安、孤独、冷たさ… そう言った絶望に起因するものが途端に私を包み込でいく。 あの手が放れてからだ…
ハヤテはすぐに帰ってくると言っていた。 だけど、それは私にとって逆戻りのカウントダウンでしかない。 また、あの寒空の中で孤独に過ごすだけの… そして、そこには今まであった家も両親もいない。 ただ、この広い世界でポツン一人、私がいるだけだ…
『とっても美味しいですよ』
ふいにハヤテのあの温かな笑顔が浮かんできた。 出逢ってまだ一時間程だというのに何故だか、ずっと一緒にいたようにはっきりと…
「寒いのも、寂しいのもイヤだな…」
誰に向けてでもなく呟く。 その声はこの広い執事長室に反響することもなく消えていった…
そこで一つ気付いたのだ。私は返事を求めていると… 考えてみれば、私はここ最近ハヤテ以外と会話をしていない。 両親と話すのも、互いの一方的な伝言のみ… そして捨てられた私の前に突如として現れたハヤテ。 彼は私の言葉を……いや、言葉にできない言葉すら拾ってくれた。 たぶん私はそれが嬉しかったのだろう。
「もっと、ハヤテと話していたいな…」
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Re: 僕が主で君が従者 ( No.26 ) |
- 日時: 2013/02/01 08:21
- 名前: 唐笠
- それは私にとってのハヤテが変わり始めた瞬間。
そしてそれが確固なるものとなり、私を動かすのはまだ先の話だ。
ガチャ
「っ!?」
と、そこで急に後方の扉が開く音がしたので、思わず身震いしてしまった。 振り返れば、そこには先程のメイドさんがいるではないか。
言い忘れてたが、私は元来人見知りなのだ。 それも、こんな自分の知らない所で話したことのない人物と二人っきりにされてはたまったものではない。
「あ…あの…」
なぜだかメイドさんが私を見てくるので、何事かと聞こうとするが緊張から言葉にならない。 ハヤテ、早く帰ってきてくれ…
「ナギさんでよろしかったかしら?」
「は…はい…」
聞こえるかどうかも解らないほどの声で返事をする私に対して、メイドさんは何か納得したように微笑む。 ハヤテのそれとは違う種類の笑み。だけど、イヤな感じがするものではない。
「もし、よろしければハヤテ君とどうやって出逢ったか教えていただけます?」
それに対して私はただコクンと頷いた。 なぜだか解らないけど、このメイドさんは自分を酷に扱わないと思えたから…
そして私は語り始める。 家の事、借金の事、そして出逢いの事を…
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Re: 僕が主で君が従者 ( No.27 ) |
- 日時: 2013/02/01 08:41
- 名前: 唐笠
- マリアSIDE
ハヤテ君の反応から、ナギを拾ってきた理由は大方解りました。 でも本人はロリコンではないと言い張っていますけどどうなんでしょうね…
そんな従者として挟んでいいのか解らない疑問を抱きながら私は、こっそりと執事長室を覗き込みます。
「クラウス、真剣な話がある。奥の部屋にきてもらえるか?」
そして目にしたハヤテ君の行動。 執事長室の奥といえば、私も入室を禁じられている場所。 そこでの会話。しかも、真剣な話をするとき特有の鋭い口調。 どうやら、これは私が考えていた以上に大事なのかもしれませんね…
一メイドである私が出る幕じゃない。
「寒いのも、寂しいのもイヤだな…」
そう考え、自身の仕事に戻ろうとした私の耳に届く微かな声。 改めて部屋の中を覗き見てみれば、そこにはナギが一人でいました。 ここから見える窓に映る深い悲しみをたたえた顔。 まるで、もうすぐ自分が死んでしまうことを知っているかのような顔。
助けてあげたい。 ふいにそんな感情が沸き上がった私は扉を開けていました。 そこで彼女から教えてもらった話。 たぶん同情なんて意味は持たない。 必要なのは彼女の隣に立ってあげること…
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Re: 僕が主で君が従者 ( No.28 ) |
- 日時: 2013/02/01 09:00
- 名前: 唐笠
- そして、ハヤテ君はその場所の限りなく近い場所にいる。
それはたぶん本人も意図していないでしょうけど、きっとハヤテ君ならナギの隣に立てる。 更に一つだけ付け加えるなら、ナギがハヤテ君の隣に立ってくれればきっといつかは……
だけど、その前に解決しなければならない問題が二つ。 あの様子だとハヤテ君がナギを連れ帰った理由をナギに伝えていない事は明白。 だけど、ナギはハヤテ君が厚意で助けてくれた思っていること。
そして、ナギのこの瞳に隠された誰にも教えていない真実ですね…
第3話完
半端な感じですが第3話は終了です。 さてここまできたので原作との相違点をまとめると
ハヤテ:こちらが主。原作のナギばりにハヤテ→ナギとなっている。普段は丁寧な口調だが、真剣な時や高ぶっているときは口調が鋭くなる。少しだけ触れているが人嫌いでもある。
ナギ:やっと従者になれた。両親のことが好きというのは原作通りだが、その両親が原作のハヤテの両親であるという残念さ。ちなみに今のところ、ナギはハヤテのことを異性としては意識しておらず、あくまで恩人であり優しい人。
こんな感じになります。 ではノシ
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Re: 僕が主で君が従者 ( No.29 ) |
- 日時: 2013/02/02 09:08
- 名前: 唐笠
- 〜第4話『得手と不得手と機関銃』〜
ハヤテSIDE
何気ない日常。 特記すべき事のないそれは、僕にとって印刷されていく紙を見ているようなものだった…
刷られる内容はわかっている。 そこに書かれることは予め決められている。 そして、僕の手が加わらぬとも目覚めというスイッチ一つで勝手に動き出すのだ。
だけどある日、そんなモノクロな印刷用紙の中に一色の色が書き込まれた。
彼女に色はない。それ故に全ての色を持っていた。 彼女は字を書かない。それ故に僕に新鮮さを与えた。
彼女が紡ぐのは一つの絵。 それは他者から見れば落書き以下なのかもしれない。 だけれども、僕にとってはどんな画家の絵よりも素晴らしいものだった。
誰にもその価値は解らないだろう。それで良いと思った。 そんな絵を好む僕は変人呼ばわりされるだろう。事実、そうである。
全てはあの日… あの約束をした人物が僕の傍からいなくなり、始まった… そして、そのモノクロの印刷はつい最近まで続いていたのだ……
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Re: 僕が主で君が従者 ( No.30 ) |
- 日時: 2013/02/02 09:28
- 名前: 唐笠
- ドン!ガラガラドッシャーン!
まだ小鳥のさえずりの聞こえる中、いかにも典型的な音が隣の部屋から聞こえてくる。 それに僕は僅かに微笑むと、そちらに向かって歩きだした。
入室してみれば予想にたがわず、そこには床に散乱した元壷だったものと、尻餅をついているメイド服姿のナギがいた。
「大丈夫ですか、ナギ?」
「う、うむ、私はどうという事はないが、また壷を割ってしまって…」
そう言ったナギは割れた壷を見てシュンとしてしまう。 そう、ナギが僕のメイドになってから今日で3日目。 そしてその中で破損させたのは陶器類3つに食器類2セット、それと窓ガラス一枚だ。
別に金額にしてみれば大した事はない。それにナギ自身も悪気があってやったわけではない。 それよりも僕にとってはナギが怪我をしていないかが気がかりなのだ。
「割れる壷が悪いんですよ。 それよりも本当にお怪我はありませんか?」
たぶん壷を作った職人が聞いたら激怒するであろう言葉。 それを言いながら、僕はナギの手をとり怪我をしていないかを確かめる。
柔らかく、純白の肌。 そこにうっすらと残る傷の痕… ここ何日かでできた傷ではない。
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Re: 僕が主で君が従者 ( No.31 ) |
- 日時: 2013/02/02 09:46
- 名前: 唐笠
- けれど、その傷跡を見る度に僕の胸は痛んだ…
もっと早く僕が彼女に出会っていれば… そうすれば、彼女はこの傷と心の痛みを負うことはなかっただろう。
きっと、それは僕が何回目かのコピー機のスイッチを入れた日に行われたこと… もう、印刷されてしまったものを書き換えることはできないのだ。 無理に実行すれば字が読めなくなるだけ… 僕にできるのは、ただの読者としてそれを読むことだけなのだ……
「私は大丈夫だ… その…ほんとに……すまないと思っている…」
「だからいいんですよ。 さぁ、他の所に行きましょうか」
「いや、さすがに片づけくらいは自分でしていくぞ」
そう言ってナギはその小さな手で割れた壷の破片を拾い始める。 どうやら、僕がどう言おうとも片づけを強行するつもりらしい…
「手を怪我しますよ?」
見かねた僕も手伝おうとしたところにかかる聞き慣れた声。 それに振り向けば、箒と塵取りを持ったマリアがにっこりと微笑んでいた。 大方、先ほどの音を聞きつけてやってきたのだろう。
「あっ、マリアさん。わざわざありがとうございます」
そう言って箒と塵取りを引き取ろうとした僕をマリアさんは素通りしていく。
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Re: 僕が主で君が従者 ( No.32 ) |
- 日時: 2013/02/02 10:08
- 名前: 唐笠
- いや、流石にそれは酷いんじゃないかな…
そう心中で嘆く僕を余所にマリアさんは壷の破片を掃き集めていく。
「ま…マリア……さん… そ……れは…私が…やります……」
流石にナギも引け目を感じているのか、辿々しながらも意思表示をする。 余談だが、何故だかナギは僕と話す時以外はこの調子なのだ。 それを本人に問うてみたところ、人と話すのが得意ではないとの事… もしかして僕は人としても認識されていないのだろうか… そう悲しくはなったが会話がスムーズに運ぶだけ得と思うことにしている。
「いいんですよ。 それに速くしないとクラウスさんが来てしまいますからね」
そう言うマリアさんは再度ナギに微笑えんだ。 あくまで僕の憶測に過ぎないがマリアさんはナギを妹のように扱っている節がある。 対するクラウスはナギの粗を探して、何とか辞めさせようとしているように見えるのだ。
「若ぁぁぁぁぁぁ!!」
と、そこでクラウスさんの声が屋敷内に響く。
「ぅ…」
その声なのか、クラウスさん自身になのか、とにかく怯えの色を見せたナギは僕の背中に隠れてしまった。 そしてクラウスさんが入室しようとしたその瞬間、目の前を壷の破片が飛んでいった
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Re: 僕が主で君が従者 ( No.33 ) |
- 日時: 2013/02/02 10:26
- 名前: 唐笠
- ガシャンッ!
バリンッ!
「え"っ…」
入室早々、クラウスさんは声にならない声をあげた。 詰まるところ、マリアさんが塵取りに溜めてあった壷の破片を扉が開く前に投げつけたのだが、事情を知らないで入室したクラウスさんからしてみれば、扉を開けた反動で壷が落ち、その破片を踏んでしまったように見えたのだろう…
「いやですわ、クラウスさん。 壷なんか割っちゃって、ハヤテ君がなんて言いますかね?」
そう言うマリアさんは僕の方にウィンクしてきた。 なるほど、マリアさんの考えてることが大方理解できた…
「わ、若…こ、これは!」
「いいんですよ、クラウスさん。僕は気にしていませんから」
こうすれば誰も責められることがないと言うことだろう。 仮にあのままでは、いくら僕が庇ったところでクラウスさんはナギを責めただろうし、これでよいはずだ。
「誠に申し訳ありません! しかし、取り急ぎの連絡がありまして!」
「連絡ですか?」
なにかイヤな予感はしていたのだ… できれば、予感が当たらないでほしいものだが…
「はい、いいな「マリアさん、機関銃の用意をしてください!」
どうやら予感は的中してしまったらしい…
続く
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Re: 僕が主で君が従者 ( No.34 ) |
- 日時: 2013/02/02 10:42
- 名前: 唐笠
- 〜座談会?〜
ナギ「なぁ、バカ作者」
いや、急にその切り出しはどうかと思いますが… 第一、読者の方が置いてけりぼりだし…
ナギ「安心しろ。内容そのもので常にそうだからな。 それよりも今日は聞きたいことがある」
はい?
ナギ「この話に終着点はあるのか?」
一応、着地点だけは決めてますよ?
ナギ「途中経過は?」
そこは脳内であなた達が勝手に動いているので…
ナギ「要するにおまえが意図してない行動をすることもあると」
まったくもってその通りです。
ナギ(ダメだこいつ…早く何とかしないと…)
ちなみに、そのせいで伏線が拾えry…
ナギ「それくらいはやれ、バカ者が!」
因みに基本的に一話はハヤテとナギのSIDEのセットとなっています。
ナギ「3話のような例外もあるけどな… まぁ、なにはともあれこのバカをよろしく頼むぞ」
ぞ!
ナギ「おい…」
近々『一番大切だから』というタイトルの一話完結型短編も投下いたします。 SEE YOU AGAIN!
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Re: 僕が主で君が従者 ( No.35 ) |
- 日時: 2013/02/04 07:37
- 名前: 唐笠
- ナギSIDE
「ですから若のいいなず「それ以上言うなぁぁぁ! 何が悲しくて、あんな奴を許嫁にせなあかんのだぁぁぁ!」
執事長であるクラウスの言葉を遮るようにハヤテが吠える。 それにマリアさんから手渡された機関銃を持ちながらだから、なおさら恐い… と言うか、いつの間にえせ関西弁なったのだ…
「マリアさん、ナギを少しみててください。 僕は少しあいつと話し合ってきますから!」
「がんばってくださいね〜」
いきり立つハヤテとは対象的にマリアさんは笑顔である。 仮にも一人の命がかかっているのにだ…
「ではナギ。 私たちは"クラウスさんが壊してしまった壺"の片付けでもしましょうか」
「は…はい」
クラウスさんには悪いが、ここは二人が作ってくれた敷居に乗らせてもらおう。 そう考え、私は掃除を再開する。
時折目が合うマリアさんはこちらににっこりと微笑んでくれた。 私はこの人の笑顔が好きだ。 ハヤテのそれとは違った、母のような温かみがある。 私もできれば期待に応えたい。だが、現状はまともに会話もできないのだ… これはどうにかしなければならない問題なのだが、長年で染み着いたそれは一朝一夕ではどうにもならない…
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Re: 僕が主で君が従者 ( No.36 ) |
- 日時: 2013/02/04 07:50
- 名前: 唐笠
- まぁ、その問題については保留と言うことにしておこう。
しかし、あと一つだけ気になることがある。
許嫁
ハヤテほどの金持ちならばいて当然だろう。 だけど、その言葉が私から何かを奪っていくようで恐かった…
もう……奪われるものなどないというのに…
って、いかんいかん。 いったい私は何を考えているのだ。 今は目の前の仕事に集中しなければならないのに…
「ナギ、やはり気になりますか?」
「い……いえ…」
突然かかったマリアさんの声に少しびくついてしまうが、なんとか言葉を返す。 そう、借金を背負っている従者が主に干渉するなど許されるはずがないのだ。 それが、この胸に宿った一つの可能性だとしても…
「そう? ならいいですけど、ハヤテ君は今ごろ許嫁と二人っきりで楽しくやってるでしょうね」
主
従者
許嫁
二人っきり
出逢い
今
恩
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Re: 僕が主で君が従者 ( No.37 ) |
- 日時: 2013/02/04 08:05
- 名前: 唐笠
- そんな一つ一つでは一つの意味しか持たない単語が、いくつもの意味を持ち私の中で渦巻く。
まだ出逢って三日だ。 対しては向こうは年単位の付き合いだろう。
私は従者だ。 対して相手はハヤテと同じく金持ちだろう。
『とっても美味しいですよ』
『僕の家で住み込みで働きませんか?』
『ナギ…心配しないで…』
差し出された手。 ふれた温もりと優しさ。
そう…私はハヤテが……優しいハヤテが… きっとそれだけは許嫁も同じはずだ…
そこなら私も闘える。 それは、今まで流れに任せてきた私が初めて自主的に動いた瞬間。
---なぁ、ハヤテ。私……少しずつでも変わっていくから…ほんのちょっとだけ待っていてくれないか?
第4話完
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Re: 僕が主で君が従者 ( No.38 ) |
- 日時: 2013/02/04 10:27
- 名前: 唐笠
- 〜第5話『昔のアニメで勝ちフラグ立たせまくったのに負けた主人公がいる』〜
ナギSIDE
相手がどんなに美人でも、どんなに器量が良くても、正面から戦おう。 この胸に宿った一つの可能性と『私』を信じたいから… そう決心すると、ハヤテと許嫁がいるであろう部屋をの扉を開ける。
バタンッ!
そしてすぐに閉めた…
「……………」
正に絶句… それ以外、言うことはなかった…
まさか私の初恋がこんな早く終わるとはなぁ… いや、自分でも意外な結末だとは思うぞ。 あれ相手では、私のでる幕はないからな… 身分とかなんかよりも根本的に違うのだ…
「ナギ!見捨てないでよぉぉぉぉぉぉぉ!!」
部屋の中からハヤテの叫び声が聞こえてくる。 だが、私にはこの扉を開ける勇気はないのだ…
もう…あんな現実は見たくないから…
ここを開ければ、私の見たくないもの、受け入れたくないものがある。 だけど、『主』は開けることを望んでいた。 ならば私は『従者』として従うまでだ。
ガチャリ
「お呼び……ですか…?」
できれば今すぐここから逃げ出したい気持ちを抑え、その場に踏みとどまる。
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Re: 僕が主で君が従者 ( No.39 ) |
- 日時: 2013/02/04 10:49
- 名前: 唐笠
- 「ナギ!助けてぇぇぇぇ!」
その言葉に耳を傾けたくなかった… それでも、それは私の中で木霊する。
向き合わねば進むことはない。 そうだ、さっきまでの私はおかしかったのだ… 『従者』が『主』に恋するなどありえない。その逆は更にあり得ないだろう。 だから私の『あれ』はウソだ。一時の気の迷いに違いない。
「マイ、ラマン。さぁ、挙式をあげようじゃないか」
「いやだぁぁぁぁぁぁ!」
だって、女装して男と抱き合う人を好きになるはずがないから… しかもハヤテのその女装が似合っているから憎たらしい。
「ナギ!これは誤解だからね! 僕はふつうに女の子が好きなんだぁぁぁ!」
「照れるなよ綾崎」
女装ハヤテを抱きしめる許嫁(♂) はっきり言って気持ち悪い… と言うか、誤解もなにも女装してる時点でノリノリであろうが…
「し…失礼しました…」
そう言い、一礼すると私はそそくさと退室していった。
「ナギィィィィィィィィィィ!!」
ハヤテちゃんの叫びが聞こえた気がするが、私にあんな知り合いはいないため、おそらく人違いであろう。
「はぁ…」
ため息一つ。 今日は憂鬱な一日になりそうだ…
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Re: 僕が主で君が従者で ( No.40 ) |
- 日時: 2013/02/05 11:58
- 名前: 唐笠
- ハヤテSIDE
非常にまずい事態になった… それもこれも、帝のジジィが僕への嫌がらせとして用意した許嫁が原因なのである。
一つ言おう。僕の許嫁の名前は瀬川虎鉄(♂)
そして僕の名前は綾崎ハヤテ(♂)
どう考えてもおかしい… しかも、この許嫁は僕の女装を心底愛しているから質が悪い…
当然だが、僕にそっちの気はないためごめんである。 先ほども言ったが、僕は普通に女の子が好きなのだ。
『そう女の”子”が好きなのであーーーるぅぅぅ』
なんなんですか、その危ない表示は…
『平たく言わなくてもロリコンってこたぁ』
誤解を招くような言葉はやめていただきませんか!? というか、ナチュラルに入り込んできたあなたは誰なんですか!?
『天の声なのであーーーるぅぅぅ』
あっ、そうなんですか… パターン的に真面目に相手をしていても、ろくなことがないっていうあの天の声ですね。
『随分と酷い言い様だが、自分の状況を理解した方がいいと思うぞ?』
「…………」
そうだった… 僕は今、色々な意味でピンチだったのだ…
「さぁ、俺たちの愛を育もうじゃないか」
「丁寧にお断りさせていただきます」
女装服を剥ごうとしてくる虎鉄を押しやり、なんとか退路を作ろうとするのだが、この変態は無駄に力が強いため中々そうもいかない。
「てれるなよ、マイラマン」
「真面目に気持ち悪いですから!」
くっ… やはり、この変態の言うことなど聞くべきではなかったのだ。 変態が大人しく部屋で待っているというから、警戒しながらも入室すれば、あんの上女装を強要してくるというのはいつも通り。 しかし、こちらとていい加減諦めてもらわねばナギにあらぬ疑いをかけられてしまうため、話をスムーズに進めようと女装を受け入れた。
機関銃があるから大丈夫。結局は、その油断が今の惨事を呼んだ… 僕の着替えが終わって、機関銃を拾うまでのわずかな時間。 それをこの変態は驚くべき瞬発力で阻止するとともに、僕を押し倒したのだ。
完全に不意打ちだった僕は大した抵抗ができないまま、組み敷かれてしまう。 しかも、こちらに向かってくる足音が聞こえると、変態はまるで僕らが抱き合ってるかのふに見えるように僕を抱きしめた。 そして、先ほどの惨事を招いてしまったのだ…
「それにさっきの小娘にも公認になったのだから、気にすることないだろ?」
そうだ… さっきの状況を見たナギは間違いなく僕のことを、ウホッやホモォーーーな人だと思っていることだろう。要するにはこいつと両想い…
「な訳あるかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
バコッ!
ズシャーーーン!
人間殺る気になれば案外どうにでもなるもである。僕に殴り飛ばされてのびている変態を見てそう実感する。 とてもじゃないがホモなんて言う誤解はごめんである。それならば、迷わずロリコンを受け入れるというものだ。
『やっぱりロリコンじゃねぇか』
「マリアさーーーん。ここの変態、片付けといてくださいね」
屋敷のどこかにいるであろうマリアさんにそう頼んでおくと、先ほど逃げて行ってしまったナギを探すため、部屋を出る。
『おい、無視するんじゃねぇよ』
うーーーん… さっきから、幻聴が聞こえるなぁ… きっと疲れているに違いない。ナギの誤解を解いたらひと寝入りでもしよう。
「どこに行ったんだろう…」
あれから30分。屋敷の中を探し続けたのだが、いっこうにナギは見つからない。 といっても、30分程度では屋敷の半分も探せてもないのだから、さほど気にすることではないだろう。
「……………………まさか……家出…?」
いやいや、ナギに限ってそれはないよね…
『まだ3日しか一緒にいねぇのに、なぁにが分かるっていうんだよ?』
た、たしかに… でも、ナギの借金は僕が肩代わりしてるわけだし…
『それはてめぇが勝手にやったことだろうよ』
正に返す言葉がなかった… さすがに同性愛者に仕えたいなどとは思わないものだろう。 それに僕が一方的に好意を寄せているだけだ。もしかしたら、僕が気付かないところで傷つけていたのかもしれない…
「ははは……それじゃとう――――――って、いた!」
『結局、そんなパターンかよ』
屋敷内の窓から見える庭。そこにナギがそこにいたのだ。いや……いたというよりは寝ていたという方が正しかった。 そして、そのすぐ傍にはタマがいた。一つ言おう。玉はホワイトタイガーであり肉食動物である。僕はそれを承知で飼っている。 そして今の図はどう見てもタマがナギを捕食しようとしている図にしか見えない…
『は、ハヤテ… まっ、まさか…わ、私の仕事って……こいつの餌なのか!?』
まさに今、ナギが危惧していたことが現実になろうとしていた…
「させるかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
バコッ!
ズシャーーーーーーーー!
どうも今日は生き物を飛ばすことが多い日のようだ。だが、タマもさすが肉食動物。蹴飛ばされても大したことなさそうである。
「おいおい、やけに今日はアクティブな遊びじゃねぇか」
言い忘れていたが、この肉食動物は人語を解するだけではなく、しゃべることもできる。 あくまでも、僕の前だけの話ではあるが…
「遊びじゃないですよ!なに、僕のメイドを食べようとしてるんですか!」
「食べようとなんかしてねぇよ。 ただ単に、こんなところで寝てたら風邪ひいちまうから、寝室に運んでやろうと思ってな」
「なんだ、てっきり僕は捕食するのかと思ったよ…」
なにはともあれひと段落である。そう、ほっと一息つくと、僕は寝ているナギを起こさないように背負う。
「タマ、さっきはごめんね。ナギは僕が連れて行くから安心して」
「おう。 だけどよ、さっきのセリフを返すわけじゃないがメイドを喰っちまうなよ」
「そんなことしませんよ!」
まったく、タマも年々無駄な知識を付けていってしまって困るものだ… それに呆れながら、僕は寝室へと向かった。
背中に感じる温もりを背負って…
第5話完
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Re: 僕が主で君が従者 ( No.41 ) |
- 日時: 2013/02/13 11:46
- 名前: 唐笠
- 第6話『過去と今に続くもの』
ハヤテSIDE
夢を見ていた。
遠い日の夢を…
今なお、僕の胸に残る言葉と一つの感情を与えてくれた人の夢を……
「なぁ、お前はそこで何をしてるんだ?」
「困ってる人がいたら助けられるような立派な大人になってくれよ」
「お前は優しいやつだ。
だから、その優しさをもち続けてくれ。きっと、それで救われる人が何人もいるはずだからな…」
「残念だが、私たちはここでお別れだ。
だけど、私との約束を守ってくれればまたいつか逢えるよ…」
たった、これだけの言葉がでてくるだけの夢だ…
そこから先も、この声の主の顔もわからない。
だけど、僕にとって大切だということには変わりなかった…
「いつか、また逢える…か…」
誰に向けてでもなくつぶやいた独り言は開いた窓から吹き込む夜風にさらわれてしまう。
きっと、もう逢うことなんてない…
でも、仮にその時がきたら、僕はどうしたらいいのだろうか?
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Re: 僕が主で君が従者 ( No.42 ) |
- 日時: 2013/02/13 12:03
- 名前: 唐笠
- たぶん、今でも僕はあの人のことが…
でも、ナギのことだって…
これでは節操がないと言われても仕方がないだろう。
しかし、どちらも僕の偽ざらる想いなのだ…
逢いたいとは思う。
だけど逢いたくないとも思う…
正反対の願いだというのに、想いは一つなのだ…
「僕はいったい……どうしたいんだろう…」
それにこたえる者はいない。
ただ、月明かりが僕と隣に寝るナギをてら−−−−−−−−
「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?」
僕は何でナギと寝ていたんだ!?
1.一線を越えた
2.やらかした
3.お楽しみだった
ろくな選択肢が存在しない…
と言うか、さすがにそれはまずい気がするのだが…
………………あぁ…
そう言えばナギを寝室に運んだ時、仮眠のつもりで僕も寝てしまったんだった…
まぁ、いい。今日は変態の対応に疲れたし、もう一寝入りしよう。
そんなある意味自堕落な結論を出すと、僕は再び眠りについた。
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Re: 僕が主で君が従者 ( No.43 ) |
- 日時: 2013/02/15 09:08
- 名前: 唐笠
- ナギSIDE
幼き日の私。
その人物は雪の降る日、一人街角で佇んでいた…
誰もその人物を気に止める者はいない。 そう、それを眺める私ですら、私だと気付くまでは気に止めなかったのだから…
自分を見ている自分がいるなどおかしな話だ。 だけど、それは夢ならよくある話。だから、これは夢なのだろう。幼き日の私の…
少女は寒空の元、寒さに一人震えている。しかも着ているのは薄着一枚だけだ。 見るからに貧相で哀れであるが、これにもれっきとした理由があるのだ。 私の記憶が正しければ、今より3時間ほど前の私は、公園の隅に捨てられていたボロボロのコートを着ていたはずである。 しかし、そのコートは家で寒がっていた両親に「私には大きすぎるから」と言い、渡してしまったので今はない。 その後、そのコートの行方は知らないが、数刻の後に帰宅したときには既に無くなっていたのだ…
さて、話を戻して私の様子でも見てみるとするか… 大方、この手の夢は最後のいいところにいくまでは終わらないのだからな……
そう考え、見ているのだがいくら待とうとも私が動くことはなかった。 そう、まるで誰かを待っているかのように…
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Re: 僕が主で君が従者 ( No.44 ) |
- 日時: 2013/02/15 09:26
- 名前: 唐笠
- しかし、当時の私に頼れる親戚など存在しなかったはずである。
ならば、友達でも待っているのだろうか? こんな日に外で待ち合わせなどと言うバカらしい話があってたまるか…
結局、私はなぜ私が動かないのか解らず仕舞であった。
サクッサククッサクッサクク
その時だった。 誰かが雪道を歩いてくる足音に二人はハッと視線を移す。 当時の私がなぜ振り向いたのか解らない。だけど、今の私にはそれだけの理由があるのだ。
だって、その歩き方はハヤテの雪道を歩くそれと同じだったから… そして、二人の視線の先には傘をさし、こちらに歩いてくる一人の人物がいた。 そう、その人物はあの時のあの格好のままの……
「は……ヤテ…?」
呟いた私の声は誰にも届かない。当然だ。 あくまでこの夢の中での私は傍観者なのだから。
それよりも、なぜここでハヤテが出てくるのだろう? 私は幼き日にもハヤテに逢っていたとでもいうのだろうか? でも、それはありえない。なぜなら、このハヤテは今のハヤテと同じ姿をしているからだ。 この夢は約8年前の私を映し出したもの… そこに今のはヤテが出てくるなどあり得るはずがないのだ。
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Re: 僕が主で君が従者 ( No.45 ) |
- 日時: 2013/02/15 09:43
- 名前: 唐笠
- まぁ、そこは夢だから仕方ない。どうせ、都合のいいように変わるものだ…
そう頭では判断していた。だけど、それは違うんだと主張している私もいる…
−−−−−−あの日は運命の"再会"なんだ
そう主張する自分と、冷静な脳内。果たして正しいのはどちらなのだろうか?
客観的に見よう。あり得ない状況だ。
願いを込めよう。そうであってほしい。
なぜそうであってほしい? 特別になりたかったから…
何に対して? ハヤテにとっての…
なぜハヤテの特別になりたい? …………そうか…やっぱり私は…
そこまで考えた時、途端に視界がぐらついた。 世界が次々に崩れていき、私は夢から追い出される…
目を開ければそこは私の寝室だった。窓からは月明かりが差し込んでいる。 庭の日よりが気持ちよくてつい昼寝してしまったが、隣で寝ているハヤテが運んでくれたのだろう。
それを意識して高まる鼓動。 だけど不思議と冷静でいられた。
「なぁ、ハヤテ… お前と…私の出逢いは……特別か…?」
そっと囁いた私にこたえる者はいない。こたえなんてない。 ただ、優しげな月明かりが私とハヤテを照らしだすだけだった…
第6話完
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