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三月のある日(一話話完結、短文)
日時: 2025/03/09 22:41
名前: ヒナギクおじさん

駄文失礼します。

「寒い」

 三月を迎え、春の気配が少しずつ近づいてきたと思われた頃。
 僕の隣を歩くヒナギクさんが、マフラーを口元に寄せながらそう呟く。

「昨日はあんなに暖かったのに、たった一日で、どうしてこうも気温が下がるのかしら?」

 恨めしいヒナギクさんの言葉に「確か」に、と僕は同意する。
 先月からの話になるが、今年は気温差の激しさが際立っており、10度と0度を行き来しているような日々が続いていた。
 三月にもなれば、例年であれば春物を押し入れから取り出す時期でもある。しかし、こうも気温差が激しいと、その判断も難しい。
 筆者も寒暖差アレルギーを抱えており、地球の気まぐれには本当にご勘弁を願いたい所だ。ティッシュがいくらあっても足りない。

「早く春にならないかしらね」

 筆者のどうでも良い情報は消雪溝に捨て置くとして。
 白い息を伴って漏れたヒナギクさんの言葉に、僕は「そうですね」と言葉を返した。
 ヒナギクさんと僕の口から出た白い息は、寒々とした三月の空に溶けていく。
 特に言葉も無く、二人消え行く息を見ながら「でも」と僕は言葉を続ける。

「寒い日が続くというのも、僕は嫌いじゃないですけどね」

 ヒナギクさんの視線が、空から僕に移る。僕の言葉の真意を探るように。
 その視線を受けつつ、僕はヒナギクさんを抱き寄せながら、耳元で呟いた。

「だって、ヒナギクさんを抱きしめられる大義名分が出来るじゃないですか」

 寒いから、身体を寄せ合う。正直、寒くなくとも出来ることではあるので、我ながらあまりにも適当過ぎる大義名分もあったものだと思う所が無いわけではないが。

「……ばーか」

 腕の中で頬を染めるヒナギクさんがあまりにも愛しかったので、その大義名分は一先ず、春物のタンスの中に仕舞っておこう、そう思った。

 そんな、晴れた寒い三月の日の出来事。
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