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雨の味(一話完結) [12/25 レス返し]
日時: 2012/11/24 15:00
名前: 紫澄

こんにちは、紫澄です♪

お久しぶりです。
・・・いや、初めましての方のほうが多いですかね・・・?

というわけで、ひなゆめで更新していた「光が消える瞬間に」は一旦お休みして、一話完結を投稿したいと思います。

今回は美希のお話です。

ちょっと鬱々したお話なので、苦手な方はご注意してください。

あと、一話完結にしては長いです。注意してくださいませ。


それでは、どうぞ〜☆




















                                  【雨の味】














「あーぁ・・・雨、やまないかな〜?」





窓の外を見上げ、うんざりしたように―――だけど、ほんの少し楽しげに、泉はそう言った。







「まったくだな〜」



「そうだな。」



理沙と私はそれに賛同し、泉と同じように窓の外を見上げる。












黒々とした空から、大粒の雨がザーザーと、まるで天から水のたっぷり入ったバケツをひっくり返したかのように降っていた。









「ねぇ、美希ちゃん、理沙ちん。二人は雨って、スキ?」




唐突に、窓の外から視線を外し、振り返りざまに泉はそう聞いてきた。





「うーん・・・そうだな・・・スキかキライかで言われれば、キライじゃないかなー?」



理沙はそう言って、ほんの少し口の端を引き上げ、笑った。









「だってさ、雨が降れば、かったるい外体育が中止になるじゃないか。」




理沙は嬉しそうに微笑みながら、何とも理沙らしい理由を述べた。













「そうだよね〜 私も、雨ってキライじゃないな〜」



泉もそう言って、いつも通りにっこりと笑った。










「外体育が中止になるのもうれしいけど、なんというか・・・こうやって窓の外眺めているとさ、

傘がすっごくカラフルで、まるで地上に大きなお花がいくつも咲いたように見えるから、


私は雨もたまにならいいかな・・・なんーて、思うよ。」





泉はそう言って、楽しそうな表情を浮かべ、窓にへばりつくように両手をついて、校庭のほうを見つめた。




今はちょうど下校時間のため、たくさんのカラフルな傘が見えた。












「泉はロマンチストだな〜」



理沙は揶揄するようにそう言って、ニヤリと笑った。




「ち、違うよぉ///そんなんじゃなくて・・・」



「じゃあ、乙女チック。」



すかさず、私が泉にそう言う。





「み、美希ちゃんまで〜///」





泉は恍惚とした表情を浮かべ・・・「恍惚とした表情なんて、浮かべてないよぉ〜///」・・・そう言った。















「もうっ///美希ちゃんも理沙ちんも、人をからかって///そう言う美希ちゃんは雨はスキなの?キライなの?」




泉は依然、照れたように頬を赤く染め、笑いながら、そう私に聞いてきた。





私はその問いに一瞬、言葉をためらった。






なんといえばいいだろうか・・・と。


































「美希ちゃん・・・?」



急に黙り込んだ私を心配したのか、泉は不安げにそう声をかけてきた。




理沙も怪訝そうに眉をひそめて、私を見つめていた。




「いや・・・なんでもない。そうだな・・・私は、雨は嫌いだな。」




私がそう言うと、二人はピタッと動きを止めた。





どうやら、私のこの発言が意外だったらしい。














「・・・で、でも、外体育が中止になるんだぞ!?」



「そ、それに、雨の日はカラフルな傘がいーっぱいでかわいいよ?」



理沙と泉は気を取り戻したのか、私を見つめ、そう言ってきた。












「確かに・・・外体育が中止になるのはうれしい。それに、カラフルな傘を眺めるのもキライじゃない。そのうえ、雨は心の汚れを洗い去ってくれる感じもする。だけど・・・」
















頭をよぎるのは、過去の出来事。










忘れもしない、あの日も大降りの雨だった。





















「雨は・・・嫌いだ。」




私がそう言うと、泉と理沙は黙った。






なんだか、反応に困っているようだ。

























「あんたたち、掃除は終わったんでしょうねー!?」



ガラガラ、ガッシャーンと大きな音を立てながら、そう叫ぶ声が聞こえた。








「あっ、ユキちゃん♪」



「なんだ・・・我らが大先生、雪路じゃないか。」




泉と理沙は私から視線を外し、今しがた教室へ乱にゅ・・・もとい、入ってきた、雪路を見てそう言った。













「これはこれは・・・大先生さまの雪路じゃないか。」



私も半テンポ遅れて、雪路を見てそう言った。











「んで、掃除はちゃんとやったの?」




雪路は教室をキョロキョロと教室を見渡し、そう聞いた。






「ふっ・・・愚問だな、雪路。」




理沙は勝ち誇った表情を浮かべ、ほんの少し見下すようにそう言った。




そして、私と泉に目で合図を送ってきた。









なるほど・・・そういうことね。


















そうして、私たちはすぅ、と息を吸って、


























「「「まだ、やっていないっ!!!」」」


























大きな声で三人合わせて、そう言った。











「こらっー!!そこ、威張っていうところじゃないわよっー!?」



「「「きゃあ〜♪」」」







逃げろー



理沙がそう叫ぶや否や、私たちは教室内をバラバラに逃げ回った。









「こらっー!!待ちなさーいっ!!あんたたちっ、ちゃんと掃除をしなさーいっ!!」




雪路はそう叫びながら、バラバラに逃げ出した私たちを追いかける。




いつもの光景。




泉も、理沙も、雪路も、楽しそうに目を輝かし、あははと笑っている。




私も同じように目を輝かし、あははと笑っている。













ザーザー













そんなときでさえ、雨が私を呼ぶ。






雨。大雨。雨粒。落ちる。墜ちる。堕ちる。瞳。黒目がちの大きな瞳。睨む。私を。鋭く。階段。放課後。男の子―





















































「・・・っき・・・っき・・・美希っ」




ハッと気づくと、私は足を止めていた。



理沙や泉、雪路も足を止め、私のほうを不審げに見ていた。







「あぁ・・・いや・・・なんでもない。」



私は慌ててそう繕い、軽く笑みを作った。








「そうか・・・?なら、いいけど・・・」



理沙は未だ不審がりつつも、そう言った。




「美希ちゃん、大丈夫〜?」



泉も心配そうに眉を下げ、そう聞いてきた。




「あんたらしくないわねー」



雪路もそう言って、不審そうに首をかしげた。





「あぁ・・・本当に何でもないから、気にしないでくれ。」



私はもう一度、念を押すようにそう言った。








三人ともまだ納得のいかない顔をしていたが、私に気圧されたのか、小さく“・・・わかった”と呟いた。













「とりあえず。さっさと掃除して帰りなさいよね?」



雪路はそう言って、半ば逃げるように教室から出て行った。










「じゃあ、とりあえず、ちょーーーめんどくさいが、ちゃっちゃと掃除しちゃおうか?」



理沙が辺りに漂う空気を一蹴するように明るい声でそう言った。



「そ、そうだね。みんなでお掃除して、さっさと、帰ろーう!」



泉も、明るくはつらつとした声でそう言って、壁に立てかけてあったホウキを手にとり、床を掃きはじめた。






私も一拍おいてから、










「・・・そうだな、めんどくさいが、やらなきゃ帰れないんだから、やるか。」











そう言って、私も壁に立てかけておいたホウキを手に取った。























                              ☆    ☆    ☆




























あの後、掃除は3秒で終わり(というか、やめた)、私は一人、帰宅の路についていた。




本当は泉と理沙が、駅前のアイスクリーム屋さんに行こうと、誘ってくれたんだが、今日はとてもじゃないがそんな気分にはなれず、“寒いから”という理由から断っていた。



ブルーの傘のふちから雨粒が垂れる。












雨。











それは、私に過去の“ある出来事”を思い出させる、過去を誘うもの。












忘れたくても忘れることができない私の“罪”を再認識させられるもの。











私は小さく息をつき、傘ごしに空を見上げる。










雨は容赦なく、私に向かって落ちてくる。









あれはまだ、小学校に上がって間もないころだった。


























 
                                ★   ★   ★

































そのころは祖父の言いつけで、嫌々塾に通っていた。




その日も、雨だった。



ザーザーと雨粒が音を立てていた。












「・・・」









私は一人、階段の踊り場にある窓から空を見上げていた。



黒々しい雲を見上げ、小さくため息をついた。






今は、授業中である。



それにもかかわらず、私は授業を受けずに、ここで雨を眺めていた。





理由は簡単である。



授業に出たくないからだ。





勉強についていけないし、なによりクラスの男子がキライだった。



何かにつけて、私にちょっかい出してくるのが嫌でたまらなかった。



ほんの少し、みんなよりできないだけなのに・・・総理の孫がどーのこーのって。








だから、授業にはほとんど参加せず、こうして誰もいないところで外を眺めていた。



毎日、外はめまぐるしく変わっていく。



ひとつとして、同じ日はなくて・・・



自由で気まぐれな空が・・・正直、私はうらやましかった。





“空を自由に飛ぶ鳥になりたい”とよく人は言うけれども、私はその“空”そのものにあこがれていた。






それから、別に授業に出ないからと言って、怒られることはなかった。





先生たちは恐れているのだ。





首相の孫である私を叱ることが。




下手に叱れば、自分のクビが飛びかねないと。




実際、そんなバカな話はないと思うのだが・・・万が一の可能性として、恐れている。




それに、授業にほとんど参加しないといっても、たまにちゃんと出席するし、テストは必ず受けていたので、余計に叱りづらいのであろう。




そういう計算だけは得意だった。




















「ふぅ・・・はやく、かえりたいな・・・」



私はつまらなくて、独りそうごちた。



誰かが答えるわけもなく、ただ雨がザーザー降っている音だけがあたりに響いていた。






「・・・はやく、おわればいいのに・・・」




私はそう呟きつつ、クルッと回って窓に背を向けた。



そうして、右足を何かを蹴るようにブラブラと前後に揺らしながら、視線を床に向けた。





床は、雨が降っていて塾生が傘を中に持ち込むからであろう、ビショビショに濡れていた。



こんなときに、追いかけっこをしたら、滑って転んでしまうだろう。



私は少し視線をずらし、目の前に見える階段を眺め、“階段なら、なおさら危険だろうな”と思った。













しばらく、ぼーっと階段を眺めていると、




キーコーンカーンコーン
キーコーンカーンコーン




甲高い鐘の音が、あたりに鳴り響いた。













・・・授業終了のチャイムだ。




私は背中にしょっていたリュックをもう一度背負い直し、階段を下りて帰ろうとしたとき、















「おい、おまえ。なに“じゅぎょう”サボってるんだよ。」











後ろから、そう声をかけてくる声が聞こえた。




声変わり前の甲高い耳障りな男の声。




それと同時にクスクスといった声が聞こえる。







私はリュックの持ち手をギュッとつかんで、一瞥もせず階段を降りようとした。






すると、





「なに、ムシしてるんだよっ!“そーりのまご”のくせに“こくみん”にそういう“たいど”していいのかよっ」




そう言って、私の髪をつかんで、引っ張ってきた。






「っ!?や、やめてよっ・・・」




私は必死に抵抗する。




そのたびに髪を引っ張られる力が強くなる。





「あぅ・・・」




髪を引っ張られ、その痛みから涙が出てくる。




“ないてやんのー”とヤジが飛ぶ。




あはははと、笑いが起こる。









もう・・・限界だった。



































「・・・やめろっー!!」




私はそう叫んで、髪を引っ張っていた男の子を突き飛ばした。










すると、運悪く男の子の真後ろには階段があって・・・




おまけに床は雨でぬれていて・・・




男の子は私に突き飛ばされた衝撃でバランスを崩し、足を滑らせ・・・






















・・・階段から真っ逆さまに落ちていった。


















その瞬間、時間の流れが遅くなった。






不思議なことに、すべてがスローモーションに見えた。




男の子はゆっくりと、吸い込まれるように階段から落ちていく。




男の子は大きく驚いたように目を見開き、私を見た。




何か言いたそうに口を少し動かしたが、それは声にはならなかった。










そして・・・





















ドシャッ
























・・・床に叩きつけられた。











一瞬の沈黙。

























「あっ・・・あぁ・・・・あぁぁぁ・・・」




私は思わず、二、三歩後ずさった。




ほかにいた男の子たちも、驚いたように目を丸くし、口をパクパクと動かしながら、後ろに後ずさった。




そうして、私がすがるように見ると、男の子たちは“あっ・・・あうあう・・・あうあうあうあ・・・”と意味のない言葉を発して、慌てて逃げていった。




うわぁーあーあーと叫びながら。







どうやら、次は自分たちがやられると勘違いしたらしい。







ただ一人残された私は、階段から落ちて床に叩きつけられた男の子を恐る恐る見た。




頭からは血が流れていて、体はぐったりしていて動かなかった。




このころの私は血=死だと勝手に思い込んでいた。




そのため、この男の子は“死んでしまった”と思ってしまった。
だから、私が殺してしまった・・・と。

































「いっ・・・いやぁあああぁあぁあぁぁあぁー!?!?!?」




私はその場で頭を抱え、しゃがみこみ、そう叫んだ。







「どうかしたの!?」




その声を聞きつけたのか、さっきの男の子たちが呼んだのか、女の先生がパタパタと駆け足で階段を下りてきた。




「どうしたの?なにがあったの?」




うろたえた私を見て、慌てたようにそう言って、私が見つめている視線の先を見て固まった。





















「・・・榎本くんっ!?」



先生は驚いたように金切り声でそう叫ぶと、慌てて階段を駆け下り、血を流している男の子に駆け寄った。





「なにかあったんですかー!?」




それを聞きつけてなのか、ほかの先生もぞろぞろとやってきた。




そして、この光景を見て、絶句した。














「と、とりあえず、救急車をっ」



ひとりの若い男の先生がそう言って、スーツの内ポケットから携帯電話を取り出し、電話をかけ始めた。



ほかの先生も慌ただしく動き回り、やれ親に連絡だの、やれほかの塾生には目につかないように誘導するだのと素早く行動していた。



その中の数名は、しきりに男の子に話しかけていた。








そうして、最初に声をかけてきた女の先生が、私のほうへ戻ってきた。










「あっ・・・あぁ・・・」




私が男の子を突き落したのがバレて、そのことを責めにきたんじゃないかと、私は身体をビクッと震わせて、一歩後ろに下がった。







しかし、意外なことに、先生は私の前に立つと、すっと屈んで、












「大丈夫?美希ちゃん。」








目線を私の高さに合わせて、優しく聞いてきた。





私は呆気にとられつつも、こくんと小さくうなずいた。










「大変だったね。美希ちゃん、もしよかったら、なにがあったのか先生に教えてもらってもいいかな?」




先生は私を宥めるように、優しくそう問いかけてきた。




だけど、私は・・・









「あっ・・・あぁ・・・っ」








自分が突き落したと言わなくてはいけないのに、口が思うように動かず、意味のない声しか出せなかった。







それを先生はどうとったのか、同情するような表情で、





「・・・榎本くん、授業が終わった後、急いで教室から出ていったから、それで階段から落ちちゃったのかな?それを、たまたま通りかかった美希ちゃんが見ちゃったのかな?」





私に同意を求めるようにそう尋ねてきた。










「あっ・・・あぁ・・・あぁああ・・・あぅ・・・あぅあぅ・・・」






違います。私がカレを突き落したんです。













たったそれだけのことが言えず、さっきと同じように“あぅ・・・あぅあぅ・・・”と無意味な言葉を繰り返した。





自分の無能さに涙が出てくる。




すると、先生はさらに同情するように私を見つめ、







「・・・そっかぁ・・・大変だったね。今日はもう帰ろうか?お迎えの車が来てるよね。先生がそこまで送っててあげるから、帰ろうね。」






そう言って、私の手を優しく握って、私の横に並んだ。





「・・・」




私は黙って、こくんとうなずくと、先生は私を連れて歩き始めた。




私もそれにならって、歩き始めた。

















それからは、塾専用のロータリーに止めてある送迎用の車に乗り込み、いつも通り帰宅した。




私が車に乗り込む際、先生は運転手に今日の出来事について簡単に説明していた。




そのときにも、私は自分が突き落したんだと言えなかった。






最後のチャンスだったのにもかかわらず・・・











男の子は幸いにも命に別状はなく、病院に運び込まれた後、すぐに意識を取り戻したらしい。




ただ、幸か不幸か落ちた時のことは全くといいほど覚えてなく、医師は軽い記憶喪失だろうとのこと。




また、あの場にいた男の子たちも誰一人として、あのことは口外せず、押し黙ったままのようだ。




だから、誰も私を責める人はいなかった。









むしろ逆に同情された。





それが、私にとっては余計に苦しくて・・・




だからといって、私はほかの誰かにこのことを話すことはできなかった。








もし、お祖父さまにこのことが伝わったら、どうなったことかわかりゃしない。




私はただ、お祖父さまに“塾を変えてほしい”とだけ伝えた。







その後、私は要望通り、塾を変えてもらい(そこでヒナに出会うのはまた別の話)、事件(世間的には事故)のあった塾には一切かかわることなく、ここまできた。












それでも・・・




















ザーザー














雨の日は思い出す。





あの日の出来事と罪悪感を・・・
























                              ★    ★    ★






























相も変わらず、雨は降り続けている。






「ふぅ・・・」



思わず、ため息を漏らす。







久しぶりに落ち込みすぎたか・・・







青い傘を意味もなくクルッと回転させて、歩くスピードを少し上げたとき、私は足を止めた。






・・・遠くから、なにやら声が聞こえる。


























「・・・っい・・・おーい・・・おーい・・・美希ぃー」



「・・・美希ちゃーん」












それは理沙と泉だった。





二人は駅前のアイスクリーム屋さんに行ったんじゃなかったのか!?




バシャバシャと足音を立てながら、私にまっすぐ向かってくる。




よく見ると手にはカバンを持っておらず、代わりに傘と小さなカップを、理沙は一つ、泉は二つ持っていた。




そうして、私の前までやってくると立ち止まり、はぁはぁと苦しそうに肩で呼吸をした。







「理沙、泉、どうしたの?」




そんな二人を見て驚き、目を丸くしてそう聞いた。




普段、走ることどころか運動がキライな二人が走ってきたのだ。



私が驚くのも無理はない。











「み、美希ちゃ・・・ん・・・はぁ・・・元気なかった・・・からっ・・・」



「・・・っい、いつもと・・・様子が・・・変っ・・・だった・・・からさっ・・・」




泉と理沙はとぎれとぎれにそう言うと、私を見て笑った。



えへへ〜と笑った。




その光景に私は目頭が熱くなった。




こんなにも私のことを心配してくれる人がいる・・・




そう思うと胸がいっぱいになった。


















「美希ちゃん・・・?」



「べ、別になんでも・・・それよりも、二人はアイスクリーム屋さんに行ったんじゃなかったのか?」



私はグッと涙をこらえ、そう聞いた。






すると、泉と理沙は互いに顔を見合わせ、あはは、と笑った。





「だから、さっきも言ったじゃないか。」



「美希ちゃん、元気なかったから、心配してきたんだよ?」




理沙と泉はそう言って、にっこり笑った。






「どうして・・・?」



答えは聞くまでもないことなのに、思わず私は二人にそう聞いてしまった。




「“どうして・・・?”なんて、ふっ、愚問だな。」



「それはね・・・美希ちゃん。」



























「「友達だからだよ」」


























それは、短いけれども、大きい言葉。




それ以上の言葉はいらなかった。




「あっ、そうだ!はい、コレ、美希ちゃん。」




泉が突然何かを思い出したかのように、私に手に持っていた小さなカップを差し出した。







「ふっふっふっ〜ちゃーんとアイスは買ってきたのだ〜♪」



泉はそう言って、誇らしげに笑った。






私は泉の差し出したカップを受け取り、中身を覗いた。




淡いピンク色をしたアイスだった。




ところどころに赤い粒々が見える。




どうやらストロベリーアイスクリームのようだった。




手に持って、走ってきたためだろうか、アイスは若干溶けていた。







「ちょっと溶けてしまったが、まぁ・・・問題ないだろう。」



「ちなみに、これは虎鉄くんのおごりだから気にせず食べるのだ〜♪」








なんで、泉たちが学校帰りなのにカバンを持っていなかったのかが今分かった。




さしずめ、途中であった虎鉄にカバンを押し付け、ついでとばかりにアイスをおごらせたんだな。















「じゃあ、ありたがく、いただくとするよ。」




私はそう言って、傘を器用に顎と肩ではさみ、カバンは腕にかけて、アイスに刺さっているスプーンを引っこ抜いて、アイスを一口すくい、口に運んだ。





アイスはストロベリーの酸味とミルクの甘さ、そして、若干雨水が混ざり合った何とも言えない味がした。













「あぅぅ・・・ちょっと、雨が入っちゃったね・・・」



「走って・・・きたからかな・・・」




泉も理沙も、アイスを一口食べて、ほんの少し顔をしかめた。






でも、私は・・・










「・・・すごく、優しい味だな。」










そう呟き、ほんの少し頬をゆるませた。










雨にも、こんな優しいところがあるんだ。













「なぁ・・・たまには、雨も悪くないだろう?」




理沙はそう言って、口をにぃーっと広げて笑った。



泉もニコニコ笑って、私を見ている。





それに、私はもう一度空を見上げて、忌ま忌ましかった雨を見つめて、
















「まぁ・・・たまには悪くないかもな。」




そう言って笑った。






この二人といる今の雨は嫌いじゃないかも。


















「よぉーし、じゃあ、これから泉の家に行って、虎鉄にまた新しいアイスを買ってきてもらおうじゃないか!」




「おぉー美希ちゃん、それはグットアイディアだよ〜」




「じゃあ、泉の家にお邪魔するとしようか。」





そうして、私たちは雨の中、元気よく走りはじめた。










                                     (fin)









・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


ここまで、読んでいただき、ありがとうございました。


ひなゆめで初めて投稿した小説が美希のお話だったので、止まり木でも初心に戻って、一番最初のお話は美希にしようと思い、この小説を書きました。


タイトルと内容があっているか、いささか不安です。

なんか、ちょっと違う気がする・・・



個人的には、このあとの作品で病み小説を書きたいのですが・・・こちらでは書いていらっしゃる方があんまりいないようなので、どうしようかと悩み中。


まぁ・・・なんらかしら更新する予定です。

それでは、また〜☆




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Re: 雨の味(一話完結) ( No.1 )
日時: 2012/11/27 12:51
名前: ゆーじ


お久しぶりです、紫澄さん…!!

ひなゆめが潰れて、紫澄さん止まり木分かるかなぁ…と思ってたので、あなたさまの名前を見た時は嬉しかったです(笑)

そして久々の新作は美希の話!

美希の話は原作共々少ないので、とても新鮮な感じでした。

読んでいて、途中から『え!?まさか…!』とハラハラしましたが、そこまでは至らなかったので安心しました(笑)

美希はいい友達を持っていますね。私もそんな友達がほし(ry

相変わらず紫澄さんの作品は綺麗な作風で例え暗い内容でも癒されてしまう私がいます。

次回作期待しております!!


ところで全く関係ないお話なんですが、止まり木を私のtwitterで知ったとのことですが、もしや紫澄さんもtwitterをやっていらっしゃるんですか?
なら是非ともフォローさせて頂きたいです!!
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Re: 雨の味(一話完結) ( No.2 )
日時: 2012/12/25 20:27
名前: 紫澄

こんにちは〜紫澄です♪

レス返しが大変遅くなってしまい申し訳ないですっっ


☆ゆーじさん

ご感想ありがとうございます&大変遅くなってしまいごめんなさいっっ


>>ひなゆめが潰れて、紫澄さん止まり木分かるかなぁ…と思ってたので、あなたさまの名前を見た時は嬉しかったです(笑)


ありがとうございますっ
私も、止まり木でゆーじさんのお名前を見たときはうれしかったです。


>>読んでいて、途中から『え!?まさか…!』とハラハラしましたが、そこまでは至らなかったので安心しました(笑)


ハラハラしながら読んでいただけたようで、書いた身としては満足です(笑)

私が書くと、美希は切なくなってしまうので少しは救いのある話にしようと心掛けた結果、ラストは温かな友情に持っていきました。


>>相変わらず紫澄さんの作品は綺麗な作風で例え暗い内容でも癒されてしまう私がいます。

ありがとうございますっ

私にはもったいなさ過ぎるお言葉ですっ

これからも、暗い話にもほんの少し光が灯っているお話を目指していこうと思っています。


・・・一度くらい真っ暗な救いようのないお話も書いてみたいですけどね(ボソッ


>>ところで全く関係ないお話なんですが、止まり木を私のtwitterで知ったとのことですが、もしや紫澄さんもtwitterをやっていらっしゃるんですか?
なら是非ともフォローさせて頂きたいです!!


実はtwitterは見る専なのでやってないんです。

やってみたいとは思っているんですけど・・・

スマホじゃないので・・・なかなか・・・

もし始めましたら、ぜひゆーじさんをフォローさせていただきたいと思っておりますっ!




ゆーじさん、ご感想ありがとうございました。



それでは、また〜☆








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