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ハヤテの病気 (一話完結)
日時: 2019/03/27 20:55
名前: masa

初めての方は初めまして。ご存知の方はこんにちはmasaです。

今回は、やっぱりな思い付きなネタです。

正直、鬱展開がありますし、暗い展開もありますし、色々と問題があるかもしれません。
そう言うのが苦手な方はご遠慮した方が良いかもしれません。

時系列等は話の中で触れますが、原作の展開等は完全無視しています。ご了承ください。

以上を許せるという心の広い方は、本編どうぞ。
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ここは毎度お馴染み三千院家。

「お〜い、ハヤテ〜」
「はい、ただいま」

呼ばれたハヤテはナギの書斎に行き

「悪いが、お茶を淹れてくれ。喉が渇いた」
「了解しました」

待ってる間、ナギは漫画の続きを書いていた。
しかし、十数分後。

「遅いな。何時もならとっくに来るのに」

しびれを切らし、キッチンに行くと

「おい、マリア」
「あらナギ。何か用?」

ナギはキッチンを見渡した後

「ハヤテは?」
「ハヤテ君? 何時も通り屋敷のどっかで仕事してるんじゃない?」
「え!?来て無いのか?」
「2〜3時間前からここで仕込みしてたけど、来てないわ」

マリアさんの言葉にナギは首を傾げ

「さっき、ハヤテにお茶を頼んだんだが、おかしいな」
「え!?確かに、そうね。 じゃあ私が」
「良いよ。折角来たから自分で淹れる」

結局ナギは自分で紅茶を淹れ、ティーセットを持って書斎に戻った。


翌日。

「ん!?」
「どうしたの、ナギ」

夕食時、出された食事を食べたナギが声をあげたので聞くと

「今日の夕食、誰が作ってくれたのだ?」
「ハヤテ君だけど」
「そんな馬鹿な」

ナギは数口食べたが、やはり首を傾げていた。

「どうしたのよ」
「味がしないぞ。 いや、しない訳じゃ無いが「素材の味しかしない」って感じだ」
「え!?」

言われたマリアさんもナギの食事を食べると

「本当。ハヤテ君にしては珍しいミスね」
「まあ、食えない訳じゃ無いから食べるけどさ」

食後、後片付けもハヤテに任し、マリアさんは入浴後の何気なくキッチンの前を通ると

「あら?」

電気がついており、中にはだれもいなかった。
おまけに何と無く皿を見ると

「ど、どういう事!?」

普段ピカピカの皿が、油などの汚れが残っている物が多く、洗い直した方が良かった。

「???」

マリアさんは首を傾げつつも洗い直した。


                   × ×


翌日。

ナギが暇を持て余してテレビを見ていると、携帯に着信があり、相手は歩だった。

「どうした〜。なんか用か〜」
『ねえナギちゃん、ハヤテ君は?』
「ハヤテ?さっき屋敷で見たぞ」

ナギが言うと、歩は驚きの声をあげた

『それ、変だよ。だって今日はハヤテ君が来てくれる日だよ。朝から楽しみに待ってたのに』
「え!?ああ、そうか。今から向かわせるよ」

電話を切るとハヤテを呼び、先程の件を言うと

「ああ、そうでしたね。直ぐに行きます」

急ぎ足で立ち去ったハヤテの背中をナギは首を傾げつつ見送った。


それから数日後。

「なあ。最近のハヤテ、おかしくないか」
「奇遇だな。私も思ってた」
「私もだ」

ナギが言うと、千桜とカユラが同意し、ヒナギクと歩も頷いていた。

「私達が用事を頼むと忘れちゃったり、変なミスしたり」
「前まではそう言う事とは無縁だったから、我々も驚いていたんだ」

千桜とカユラの言葉にナギは頷き

「それにね。私達が呼ぶと、一瞬詰まってから私達の名前を呼ぶし」
「あ、それ私も」

ヒナギクと歩の言葉には驚いていた。

「こっちでもそうだ。用事を忘れたり。 後、料理も味付けを忘れたり、食べられない訳じゃ無いが変わった味になったり」
「「あ、それはこっちででもだ」」
「掃除とかの家事でもそうだ。なんか変なミスが増えてるし」
「「それもこっちででも」

同意する面々に申し訳なさそうに

「まあ、流石に名前を呼ぶときに詰まる事は無いが」
「「そう、何だ」」

皆して首を傾げていた。
すると

「「「「ま、まさか」」」」

歩以外の全員が同時に声をあげ

「ど、どうしたのかな、皆」
「い、いや。確証はないが、まさか」

未だ首を傾げる歩に対し、千桜はほぼほぼ結論を得ているようだった。

「明日、確かめてみるよ」
「頼んだわよ、ナギ」

ヒナギクに言われ、ナギは頷いた。


                    × ×


翌日。

「あの、お嬢様。何処に行かれるんですか?」
「黙ってついて来い」

SPに運転を頼み、車である場所に向かっていた。

「ここ、病院じゃないですか。まさかお嬢様、どこか悪いんですか?」
「私じゃない、お前だよ」
「え!? 僕は別にどこも」
「良いから黙って検査を受けろ!!」

ナギに怒鳴られ、ハヤテは大人しく従った。

「マリア、違うよな」
「・・祈りましょう」

ハヤテが検査を受けている間、ナギもマリアさんも生きた心地がしなかった。

それから数分後。検査が終わり

「先程の患者さんのご家族はあなた方ですか?」
「「あ、はい」」
「・・中へどうぞ」

医者に促され、診察室に入った。

「正直、受け止める覚悟はありますか?」
「「・・ハイ」」

お医者さんは少しの間黙り込んだ後

「綾崎ハヤテさんは、「若年性認知症」を患っています」
「「そ、そんな」」
「お辛いでしょうが、紛れもない事実です」

医者の言葉に2人とも絶望を感じ、それとと同時にハヤテの異変も合点が行ってしまった。

「知っていると思いますが、この病気に明確な治療法は存在しません。現代医学じゃ治せない病気なのです」
「だ、だが先生。 投薬治療とかで進行を遅らせる事も出来るんだろ?」

ナギの言葉に医者は少しの間黙り込み

「残念ですが、綾崎さんの病気は少し特殊で、「投薬治療等で進行を遅らせる事」は不可能です」
「「な!?」」
「残酷な事実を重ねるようで申し訳ありませんが、綾崎さんの認知症は進行が速く、他の方々より2倍程度早いみたいです。さらに、私の見立てでは「余命3年」っと言った所でしょうか」

医者の言葉にナギは

「ま、待てよ。認知症が原因で死ぬなんて」
「あるんです。事故などが原因ではなく、「死因・認知症」っと言うのは毎年報告されてるんです。一般的じゃないってだけです」

医者がこの手の嘘を言っても何の得にもならず、下手をすれば訴訟レベルなので真実だと思い知らされた。

「兎も角、残された時間、患者さんと少しでも長く過ごしてください」
「「は、はい」」

診察室を出た2人は暗く、

「ナギ、どうするの?」
「皆には、明日私が報告する」
「・・そう」

先に車で待たせていたハヤテと合流し

「な、なんかあったんですか?」
「何でも無いよ。お前は疲れてるだけだ。ゆっくり休養をとれ」
「そうですよ。休養を取ってください」
「は、はあ」


                   × ×


翌日。

「ねえナギ、どうだったの?」

ヒナギクに聞かれ、ナギは少しの間黙り込んだ後

「話す前に、聞く。 覚悟はあるか?」

ナギが聞くと、全員頷いた。

「じゃあ、言うぞ。 ハヤテは「若年性認知症」を患っている」

  ドサッ

ナギが言うと物が落ちる音がし、皆振り向くと

「う、嘘でしょ、ナギ」

仕事でいないはずのルカがいて、先程の音はルカが鞄を落とす音だった。

「お、お前。どうして」
「機材トラブルとかで延期になって、今日はお休みになったから遊びに来たの。 ってそんな事より!!」

ルカはナギに詰め寄り、

「ナギ、さっきのは嘘なんでしょ!!!ハヤテ君が認知症だなんて」
「・・嘘じゃない。こんな嘘、言って何になる」
「そ、それは」
「まだ、ある」

ナギは医者に言われた事を一言一句伝えた。

「そんな事って」
「ハヤテ君が何をしたのさ!!! バカな親の元に生まれて、それでも必死で曲がらずに一生懸命生きてたのに!!!」

歩の言葉は誰もが同意出来、

「その運命を決めた神様がいるなら、地獄に落ちても良いから殴りたいよ。何十発でもさ」

この言葉にも同意出来た。

「つらいが、受け止めるしかないよ。運命を変えられるわけじゃないし」

ナギの言葉に全員暗くなり、ルカに至っては大粒の涙が止まる事無く流れ続けていた。

「ルカ、辛そうね」
「仕方ないんじゃないかな。だって」
「ルカと綾崎君は、恋人同士だもんな」

そう、ここでのルカは「ハヤテへの告白が成功し、恋人同士になっている」のである。
ナギもヒナギクも歩もそれを知ってなおもハヤテへの想いを捨てられず、「ルカからハヤテを奪うために努力している」のである。

「なあナギ。認知症って事は」
「私達の事は、分からなくなるだろうな。今も少し危ない位だし」

ルカは無言で落とした鞄を拾うと、無言のまま帰ってしまった。

「お、おいルカ」

後を追おうとした千桜をヒナギクは止め、

「今は、そっとしておきましょう」
「・・分かった」


                  × ×


翌日。

ナギ達が皆でテレビを見ていると

『突然ですが、速報が入ってきました。 大人気アイドルである水蓮寺ルカさんが突然引退を発表しました。詳しい情報はまだ入って来てませんが、本人の直筆メッセージがマスコミ各社に送られてきたようです。詳しい情報は入り次第お知らせします』

ミ○ネ屋を見ていて、いきなりこんな発表がされ

「ど、どういう事だ、これ」
「わ、分からん。見てよう」

暫く見ているとルカの事務所前に中継が行き、事務所スタッフが対応に追われていた。
するとルカが殺到しているリポーターの前に現れ

『詳しい事は後日話しますが、引退報道は事実です。今いただいている仕事はすべてこなしますが、新規の仕事はうけません』
『つまりスケジュールの仕事が終わり次第正式に引退って事ですか?』
『はい、そうです。詳しい事は会見で話します』

ルカは報告を済ませると、事務所に入って行った。

「ルカの奴、どう言うつもりなんだ」
「さあ。まあ、会見するって言ってたし、それを見ようか」

数日後、ルカの記者会見が開かれた。

「以前も言いましたが、私は今いただいている仕事が全て終わり次第、引退します。これは、もう既に決めた事です」
「何故ですか?あれ程精力的に仕事をこなしていたのに」

「・・私の友達が、苦しんでるんです。その人を助ける為です。私はその人に、沢山沢山恩を貰いました。それを返す為にも、私が助けたいんです。それが引退理由です。仕事をしながらじゃ、無理なので」

その後も質疑応答を行い、時間になったので記者会見は終わった。

「やっぱ、ルカはハヤテの為に」
「まあ、恋人があんな状況じゃな」

ナギ達はルカの引退理由は何となくで察しがついていた。


                   × ×


数日後。

ハヤテは病気のせいもあり、ミスが多発していた。だが、ハヤテにはその自覚が無く、指摘されてやっと気付くほどだった。
ナギ達は交代でハヤテの介護を始め、ハヤテがミスをしない様に気を張り続けていた。

「大変だな」
「だが、そういうもんだよ、介護って」
「介護する事に文句は無いんだけど、やっぱり」

ハヤテの病気は進行しており、ナギ達の名前が出て来ない事は頻発していた。

「このままじゃ、自分の名前すら、分からなくなるって」
「ホント、神様は残酷よね。一発位殴らせてほしいわ」

勿論ルカも介護に加わっており、ナギ達以上に精力的に介護していた。

そうこうしているうちにルカの仕事が全て終わり、正式に「引退発表」を行った。
それから数日後

「ねえナギ、お願いがあるんだけど」
「何だよ」
「ハヤテ君を、引き取らせて」

ルカの言葉に驚いていると

「だって、ナギ達は学校とかあるでしょ?その間は介護出来ないし、今のハヤテ君にはこの屋敷は広すぎるよ。迷っちゃって見つからないって、結構あるじゃん」
「そ、それは」

正論にナギは黙り込み

「今の私は仕事を辞めてるし、学校にも行って無い。つきっきりの介護に適した人は居ないでしょ。おまけに恋人だし」

畳みかける様に言ったルカに

「じゃあ、どうするんだよ」
「私が今住んでるマンションで一緒に暮らす。そこならずっとつきっきりって出来るし」
「・・駄目だ」

否定された事に驚いていると

「もっと安全な所を用意する。そこに住むってなら、許す」
「分かった」
「金銭的な事は、私が全部援助する。私だってハヤテに恩義を感じてる。それ位させろ」
「・・分かった」

ルカは引っ越し、ハヤテの介護を始めた。

「ハヤテ君、何してるの」
「え!?何でしたっけ」
「ほら、座ってて」

体に染みついているからか、目を離すと家事をしようとするので、気が抜けなかった。
だが、ルカはそれを苦に感じず、笑顔でいる様に務めていた。

この時のハヤテの病気は結構進行しており、ルカは毎日自己紹介し、自分達の関係も毎日話していた。

「ハヤテ君、何処行くの」
「え!?トイレに」
「トイレはこっち。そっちは部屋だよ」

トイレの中まで連れて行き、恥ずかしがるので外で待っていた。

「(今のところトイレでの粗相はないけど、心配だな)」

床に座り込み、思わずため息をついた。


                   × ×


それから暫く経った。
ナギ達も当然ルカを手伝い、少しでもルカの負担を減らしていた。
心配になったルカが介護の事を聞くと、皆して

「ハヤテに恩義を感じているのは自分もだから気にしないでくれ」

っと、心からの言葉でルカを安心させていた。

そんなある日

「買い物に行ってくるから、家にいてよ」
「え!?ああ、はい」

近所のスーパーに買い物に行き、出来るだけ急いで帰路に着いた。
だが、休日で混んでいたので予定より遅くなってしまった。

「ただいま〜。ハヤテ君ー」

室内に入るとハヤテはいなかった。

「あ、あれ?トイレかな?」

家の中を全て(クローゼットやタンスの中まで)探したがいなかった。

「ど、どうしよう。あ、そうだ」

慌てたルカは千桜に電話し

『え!?い、居なくなった!? どういう事だ』
「分かんないよ。買い物に行って帰ってきたら、居なくなってて。一応家の中は全部探したんだけど」

不安そうなルカに千桜は少し考え

『そ、そうか。「徘徊」だ。認知症の人は、それがあるって斬った事あるし』
「ど、どうしよう」
『とりあえず落ち着け。私もすぐに行く。ナギ達には私から連絡しておく』

電話を切った後、ルカは戸締りをして家を飛び出した。

一方の千桜は、生徒会の会議中だったが事情を話して抜けさせてもらい、ナギ達に連絡を取って一緒に探し始めた。
だが

「ど、どうしよう。見つからないよ〜」
「泣くな、ルカ。見つける方が先決だ」
「う、うん」

探せど探せど見つからず、最悪の予感が何度もよぎった。

それから1か月後。

「え!?見つかった?」
『ああ。迎えに行くから、一緒に行くぞ』

ルカは迎えに来た三千院家の車に乗り、

「ねえ。何処にいたの?」
「なんでも、町中をうろついていた所を保護されたらしい。 様子がおかしかったので職質した警官が気付き、施設に受け渡したみたいだ」
「そう」

施設につくとハヤテはおり、話し掛けてもルカ達の事は分からなかった。

事情を話し、ハヤテを引き取りルカと暮らしてた家に戻した。


                   × ×


それから3年の月日が経った。

以前の失敗を踏まえ、ルカは何処にも出かけず、必要な物は他の誰かに頼み、買って来てもらっていた。

ハヤテの病気はかなり進行し、言語障害も見られ始め、自分の名前が分からなくなり、自己紹介をしても数十秒後には忘れてしまってまた自己紹介をすると言った生活を送っていた。

幸い寝たきりにはまだなっていないが、徘徊癖が時々出てしまうので、ルカはトイレすらも落ち着いて出来なかった。
だが、それに文句は言わず、「愛する人の為」っと思って相変わらず笑顔を絶やさない様にしていた。

この頃になるとルカはハヤテの介護をナギ達には任せず、1人で行っていた。
流石に苦言を呈したが、「病気がこんなに進行しちゃったハヤテ君は混乱しちゃうよ」っと言われ、任せていた。

「ハヤテ君、ずっと一緒だからね」
「・・・」
「私は、どんな事があってもハヤテ君といるからね」


一方の、ナギ達

「ルカの奴、大丈夫かな」
「でも、私達が何か言うと怒るしな」

ナギと千桜は勿論、他の皆も心配していたが、ルカ本人が文句を言う以上買い物などのお手伝いが限界だった。

「あいつ、アイドルだった頃の名残はもう無いよな」
「町中でも、気付かれないだろうな」

ルカはかなりやつれ、髪も手入れをしてないのでボサボサだった。
かつて「一兆万人のファンがいるアイドルちゃん」を自負していたとは思えない程になっていた。

「何とかしたいけどな」
「無理だな。今のルカは、私達の話を殆ど聞かないよ」


                   × ×


それから更に2年経った。

ハヤテは「完全に寝たきり」になってしまい、言葉も発さなくなってしまった。
ルカの介護もかなり大変になったが、文句一つ言わずに続けていた。

「ハヤテ君、ルカだよ。分かる?」
「・・・」
「駄目か」

このやり取りには慣れていたので、泣いたりはしなかった。

そんなある日

「なあルカ」
「ん!?なに、千桜」
「何と言うか」

千桜は少し言葉に詰まってから

「大丈夫か?」
「・・何が?」
「・・いや、何でも無い」

かけるべき言葉が迷子になり、何も言えないでいた。


それから数日後

「ん!?寝ちゃってたのか」

介護中に居眠りしてしまい、起きると

「ハヤテ君!? ハヤテ君!!!」

ハヤテの様子がおかしく、ゆすって起こしても反応が無く

「ど、どうして-------!!!」

何気なくハヤテの手に触れると、異様に冷たかった。

「ちょ。ハヤテ君、ハヤテ君!!!!!」

必至で呼び掛けても反応は無く、我に返ったルカは急いで救急車を呼び

「ハヤテ君、嫌だよ」

病院に向かう車中、ナギ達にも知らせておき、病院についたら病院名を伝え、処置室に入ったハヤテを処置室の前で必死で祈った。

駆け付けたナギ達はルカの様子から声を掛けられず、一緒に祈るしか出来なかった。

それから数時間後、処置室から医者が出て来た。

「先生、ハヤテ君は」
「残念ですが、ご臨終です」
「そ、そんな」

医者の言葉にルカ達がショックを受けていると

「病院についた時点で殆ど手遅れで、救急車の中でも・・・。恐らく、自宅に居る時には既に」

この言葉がとどめになり、ルカは気を失ってしまった。

「お、おいルカ。しっかりしろ!!」
「我々に任せてください」

医者は冷静で、今度はルカの処置をしてくれた。


                   × ×


それから暫く経った。

ハヤテの葬儀も済ませ、ナギが資金提供してくれたおかげで立派なお墓が建てられた。
ナギは「一緒に暮らそう」っと提案したが、ルカは頑なに拒み、ハヤテと過ごした家を離れなかった。

「ルカ、大丈夫かな」
「綾崎君の介護っと言う責務が無くなったんだ。暫くは、立ち直れないだろうな」

心配になったナギ達は交代で毎日ルカの元に行き、励ましていた。

そんなある日。

「お〜い、ルカ。居るか〜?」

千桜が訪れると普段は返事があるのに応答が無く、嫌な予感がした千桜は貰っていた合鍵で中に入った。
すると

「ルカ!? お前、何してる!!!」
「ああ、千桜。何って、ハヤテ君の所に行くんだよ」
「馬鹿な真似はよせ!!!!」

ルカは手首からかなりの出血をしており、千桜は止血を施しつつ救急車を呼んだ。
幸い大事には至らなかったが

「何で助けたの!!!死なせてよ!!!」
「馬鹿を言うな!!!どこの世界に友達を助けないバカがいるんだよ!!!」

千桜に怒鳴られ、

「ハヤテを喪って悲しい気持ちは分かる。だが、死のうとするなんてバカな真似はさせるか!!!」

ナギにも怒鳴られ、ルカは泣き出してしまった。

「大丈夫かな、ルカ」
「・・監視するしかないな」

退院後、ルカの希望でハヤテと過ごした家に戻したが、再び自殺未遂を起こし、再度退院後は無理やり三千院家に住まわせた。

しかし、そこでも自殺未遂を何度も起こし、刃物や紐状の物など自殺に使えそうな物はナギやマリアさんの監視下に置かれた。

「ナギ、お願いだから死なせてよ」
「またそれか。そんなの許さんと、言ってるだろ」
「嫌だよ。死なせてよ」

落ち込むルカは更に

「ずっと一緒だよって、ハヤテ君と約束したもん。っと言う事はだよ、「あの世でも一緒」って意味だもん。だからさ、ハヤテ君の元に行かせて。お願い」
「・・そんな事、ハヤテが望むと思うか?」
「う、煩い!!!死なせろったら死なせろ!!!」
「駄目だ!!!」

皆で交代でルカを監視下に置いたが、口癖の様に「死なせて」っと言い、その都度宥めていた。

だが、ちょっとした油断で刃物を放置してしまい、ルカの自殺未遂を許してしまった。
幸い助かったが、ルカは「また、生きちゃった。なんで死神さんは私を嫌うの」っと、愚痴った。


「ルカ、こうなったら最後の手段だ」
「出してよ!!!」

密室の様な部屋にルカを入れ、

「出す訳にはいかない。そんな事をすれば、お前はまた死のうとするだろ」
「・・・」
「だから、その考えを完全に捨て去るまで、そこに監禁する」

室内には刃物は無く、紐状の物は無く、窓も明り取り程度で人間が通るのは不可能な大きさで、唯一の出入り口のドアも内側にはノブ等は無く、室内から開けるのは不可能だった。

「すまないな。友達として、お前を死なせるわけにはいかないんだ」
「・・・」
「本当に、すまん」

ナギは室内への通信を切り、溜息をついた。

「ナギ」
「千桜」
「ルカ、大丈夫か?」

監視カメラを見つつ心配そうに言うと

「あいつは今、ハヤテを喪って精神的に追い詰められてる。こうする以外に手は無いんだ」
「・・仕方ないよな」
「時が経てば、あいつはきっと立ち直るよ。 私は信じてる」
「・・私もさ」

しかし?

「皆、酷いよね。なんで死なせてくれないんだろ。友達の為っていうなら、私を死なせてよ。ハヤテ君の元に逝きたいよ」

壁に両手と額を当てながら、こう呟いていた。


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以上です。

長いうえに、色々とすみません。
後、もし不快にさせてしまったのなら、それもすみません。

では。
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