Re: 殺人犯水蓮寺ルカ 短編 (7月4日更新) ( No.1 ) |
- 日時: 2018/07/04 17:35
- 名前: masa
- こんにちはmasaです。
本編の更新です。
どうぞ。 -----------------------------------------------------------------------------------
前回、ハヤテは冤罪が証明されたルカと電話で話したが、一方的に切られてしまった。
ルカの電話があった翌日。
「ん!?電話?」
ハヤテが電話に出ると
『・・ハヤテ君、今大丈夫?』 「え!?ルカさん!?」
電話の相手に驚くしか出来なかった。 なぜなら昨日の感じから「もう二度と電話はかかって来ないだろう」っと思っていたからだ。
『・・大丈夫、なの?都合悪いならかけ直すけど』 「あ、すみません。大丈夫ですよ」
ハヤテが言うと電話越しでも安心を感じ取れ
『昨日はごめんね。いきなり電話切っちゃって』 「謝るのは僕ですよ。デリカシーの無い事を言ったせいですから」 『そんな事・・じゃ、お互い様って事にしよっか』 「・・そう、ですね」
ハヤテは敢えて食い下がらず、ルカの意見を尊重した。
『でさ。ハヤテ君は私に、会いたいの?』 「ええ、そうですね。出来る事なら」
ハヤテが言うと、ルカは長めの沈黙の末
『悪いけど、ハヤテ君から会いに来てくれない?ハヤテ君にだけなら、居場所を教えるからさ』 「分かりました。僕の方から」 『あのさ、誘っておいてあれだけど、大丈夫?私、今アメリカにいるんだよね』
ルカの現在地に驚きつつも
「行きます。色々と、話したいので」 『・・分かった。私も話したい事あるから、待ってるね。ごめんね、我儘言って』 「いえ、お気になさらず」
電話を切り、ハヤテは行動を開始した。
× ×
2日後(日本時間)。
ハヤテが指定の空港に降り立ち、手続等を終えて歩いていると
「お〜い、ハヤテく〜ん」 「あ、ルカさん」
声をかけられ、見るとルカがおり、迎えに来てくれていた。 5年ぶりに見るルカはやつれており、年齢の割に老け込んでいて、明るかった雰囲気は皆無だった。
「ホント、久しぶりだね」 「ええ。5年ぶり、ですからね」
お互いに懐かしさに浸ったが、
「ここじゃあれだから、行こうか。今住んでる所に案内するよ」 「あ、はい」
移動中の車内は恐ろしい程の静けさが支配していた。 ハヤテもルカも何を、何から話すべきか分からなかったからだ。
そんな沈黙支配の後、ルカが現在住んでいる家に着き、ハヤテは招いてもらった。
「えっと。何から話そうか」 「・・難しい質問ですね」 「だ、だね」
室内は2人きりと言うのもあり、また沈黙が支配したが、
「じゃあ、さ。私が話すね」
そう前置きし
「警察の記者発表、こっちで聞いたんだよね。 知ってるかもしれないけど、あの発表がある少し前に釈放されてたんだ。模範囚だからって」
気まずそうに言い、ハヤテは合いの手等はいれずに黙って聞いていた。
「釈放されて直ぐ後、私は日本を出たんだ。流石に釈放当日じゃないけど。だって、日本にはいられないし、居たくも無かったから」
泣きそうだったが、黙って聞いてくれるのでルカは続けた。
「私がどれだけ無実を訴えても、全然信じてくれないから。確かに借金してた事あるよ。でも、社長には感謝してたし、殺す訳無いよ。でも、信じて貰えなかった。証拠だってあるって、私が全然知らない事言われて、結局有罪。刑務所の中でも居場所なんて無くて、すっごく孤独だった。だから」
遂に泣き出したルカの背中をハヤテは優しくさすり
「日本を発ったっと。だから」 「ハヤテ君に電話で「会いたい」みたいな事言われて、色んな感情がぐちゃぐちゃになって切っちゃったんだ。本当にごめんね」 「もう、謝らないでください」
ボロボロと泣くルカを優しく抱きしめ、慰めた。
「ありがと。出来ればこのまま」 「落ち着くまで、こうしてますよ」
数分かかったが、ルカは落ち着いた。 そのためハヤテは抱きしめるのを止めて、最初の時と同様に向かい合うように座った。
「本当にありがと。ハヤテ君はやっぱり優しいね」 「僕は、当たり前の事をしているだけですよ」 「・・・」
お決まりの天然ジゴロに照れつつ
「あのさ。私の冤罪を証明してくれたのって、ハヤテ君達でしょ?」 「そ、それは」 「じゃなきゃ5年も経ってから再捜査なんてされないもんね。私の無実を証明してくれたから、再捜査が行われて冤罪が証明された。そうでしょ?」
答えないハヤテにルカは気付かなかったが、ハヤテの様子が明らかに変わっていた。
「ま、ともかく。皆にもお礼言わないとね。だって・・・」
ここに来てようやくハヤテが俯き、何かを言うべきかどうかを悩んでいる事に気付いた。
「ど、どうしたの?」 「あ、いえ。その」 「・・何かあるなら、言って。全部受け止める覚悟、あるから」
ハヤテは少し悩み
「信じるかどうか、自由です。でも、敢えて言います。 ルカさんの無実の証明は、僕1人で行いました」 「え!?ど、どういう事!?ナギや千桜、他の皆で頑張ったから・・」
黙り込むハヤテに
「全部、話して。可能な限る詳しく」 「・・分かりました」
× ×
5年前。ルカが逮捕された報道の直後
「あの、お嬢様」 「なんだよ」 「今世間を騒がせてる、あの事ですが」
ナギは直ぐに察し
「ルカの事、だろ?」 「ええ」 「・・分からない。誤認逮捕、っと思いたいよ」
ハヤテはこれ以上言及せず、その後もこの話題を出さなかった。
それから暫く経って、ルカの有罪が確定された報道の後
「あの、お嬢様」 「・・お前の言いたい事は、何となくで分かる。ルカの事だろ?」
ハヤテの沈黙を、ナギは肯定と捉えた。
「ルカが殺人罪で有罪。 ショックだよな」 「その事で、大事な話があります」 「・・単刀直入で話せ」
ハヤテは短く息を吐き
「僕達で、ルカさんの無実を証明しましょう!!あれは、冤罪です!!」 「お前、本気で」 「お嬢様は、ルカさんがあんな事をすると、本気で思ってるんですか?」
ハヤテの問いかけにナギは暫く黙り込み
「思わないよ。だがな」 「な、何ですか?」 「日本の警察は優秀だ。それに、あの事務所が裁判に優秀な弁護士をつけないとは考えられん。優秀な警察の捜査、優秀な弁護士の奮闘、その全ての結果が「ルカは有罪」って決めたんだ」
ナギは一旦間を空け
「お前の気持ちは分かる。だが、諦めろ」 「そ、そんな!!」 「出所したら、私達で支えてやろう。あいつなら、ちゃんと罪を償うからさ」
ナギが優しく言うと、ハヤテは
「分かり、ました」 「そっか」
翌日、ハヤテは紫ちゃんハウスを訪れていた。 そして千桜の部屋を訪問し、ナギの時と同じ事情を説明した。
「・・そっか。君はそんな事を」 「協力してください。僕は何としても」 「綾崎君の気持ちは痛いほど分かる」
千桜の言葉に希望が湧いたが
「だが、諦めろよ。ナギの言う通りだ」 「な!?千桜さんはルカさんのお友達ですよね?友達なら」 「確かに私とルカは友達だ。親友って言ってもいい」
千桜は少し間を空け
「だが、ナギが言った通りだ。非常に残念だが、ルカは有罪なんだ」 「・・・」 「友達だからこそ、ルカが真面目に出所して来た時に支えてやろう。な?」
ハヤテは返事せずに、お礼を言うと部屋を出た。 その後、ヒナギク以外の住人に同じ様に頼んだが、全員に同じ様な事を言われ、ハヤテはアパートを後にした。
翌日、ハヤテは生徒会室を訪れていた。 そして今度はヒナギクに今までして来た様に事情を説明し、協力を要請した。 正義感の強いヒナギクなら、っと思ったが
「ハヤテ君の気持ちは分かるわ。でも、協力は出来ないわ」 「な!?生徒会の仕事なら僕も」 「ううん、そうじゃないの。私もナギや千桜達と同じ考えよ。ルカの事は信じてるけど、残念ながら有罪なのよ」
諭すように言われ、ハヤテには絶望しかなかった。
「ルカの事、出所後に支えてあげましょ。ね?」
ハヤテは返事をせず、お礼を言って生徒哀室を後にした。
ハヤテは帰路につきながら
「(こうなったら、僕1人だけでも)」
こう決意し、動き始めた。
× ×
ハヤテが話し終えると、ルカはハヤテ同様俯いていた。
「(そっか。皆は・・)」
ハヤテを疑おうとも思ったが、ハヤテはこの手の嘘は絶対に言わないと信じていたので、ハヤテの言葉はすべて真実だと思えた。 第一、そんな嘘はナギ達に聞けば直ぐにばれるので、つく意味も無いし、ハヤテは手柄を横取りしたり1人締めするような外道じゃないので、余計に真実味を帯びていた。
「大変、だったでしょ」 「ええ。正直、危ない橋はいっぱい渡りました。事件現場に忍び込んで調べたり、辛抱強く聞き込みしたり、時にはハッキングして情報を得たり」 「そ、そうなんだ」
ハヤテの捜査方法に驚きはしたが、それ以上に感謝が浮かび
「ハヤテ君、ありがと。そんな危ない事してまで、たった1人で戦ってくれて」 「お礼なんて、止めてください」 「え!?」
ルカが驚いていると
「ルカさんの無実を証明する。なんてかっこつけたくせに5年もかかってしまって」 「そ、それは」 「5年も、ルカさんに辛い思いをさせてしまいました。すみませんでした」
土下座して来たハヤテに驚き
「あ、頭あげてよ、ハヤテ君」 「出来ません。ルカさんの心の傷を考えたら、これ位しないと割に合いません」 「そ、そんな事無いよ!!!!ハヤテ君が悪い訳じゃ無いのに、止めてよ!!!」
声を荒げるルカに驚き、ハヤテが顔をあげると
「ハヤテ君はたった1人なのに、必死で戦ってくれた。希望があるか分かんないのに、5年も1人で戦ってくれた。危ない事してまで、私の事を信じ続けてくれた。とっても嬉しいよ」 「ルカさん」
今度はルカがハヤテを抱きしめ
「ありがと、本当に。5年もたった1人で戦い続けて、大変な事も孤独だった事もあるでしょ?」 「え、ええ。無駄だから止める様にっと何度も言われました」 「ハヤテ君も私の同じ心の傷を負ったんだから、謝らないで。ね」
ハヤテの中の罪悪感は無くなった訳では無いが、だいぶ和らぎ、謝るのを止めようと思えた。
「ルカさん」 「ハヤテ君」
お互いに抱きしめあい、傷を癒しあった。
----------------------------------------------------------------------------------- 以上です。
次回は続きです。
では。
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Re: 殺人犯水蓮寺ルカ 短編 (7月6日更新) ( No.2 ) |
- 日時: 2018/07/06 20:10
- 名前: masa
- こんにちはmasaです。
今回は、とあるドラマとのクロスです。 まあ、今回だけですが。
では本編どうぞ。 -----------------------------------------------------------------------------------
前回、ルカは自身の無実を証明してくれたのはハヤテ1人だけだったと知った。
暫く抱きしめあった後、落ち着いたのでまた向かい合う様に座り
「それにしても、良く捜査出来たね」 「え!?」 「だって、大変だったんでしょ?一個人がさ」
ハヤテは少し悩み
「正直、「三千院家執事長」っと言うのは捜査するうえでは色々と都合が良かったんですよね。信用してもらえる要素にもなりましたし」 「それって。言い方は悪いけど、「ナギの名前を利用した」って事だよね」 「ええ。概ねその通りで」
肯定したハヤテにルカは不思議と何も感じなかった。
「でもさ、良く再捜査してくれたよね。向こうからすれば5年前に終わってるのに」 「・・・」 「ごめんね、ハヤテ君。全部、知りたいんだ」
頭を下げたルカにハヤテは数秒悩んだ末
「分かりました。ただ、人から聞いた話も混ぜるので、曖昧になる部分もあるかもしれませんが」 「それでもいいよ。モヤモヤする位ならさ」 「では、お話しします」
× ×
時間は遡り、記者会見・およびルカ釈放の数日前。
ハヤテは警視庁を訪れていた。勿論、5年間の努力と捜査の結晶を持参して。
受付に行くと
「すみません。警視庁特命係の杉下右京警部を呼び出してもらえませんか?」 「どのようなご用件でしょうか?」 「とても大事な話がある、っとだけ」
受付の婦警さんは首を傾げつつ
「杉下警部とお知り合いですか?」 「僕が一方的に知っているだけです。お願いします、大事な事なんです」
ハヤテの必死の顔に
「分かりました。お呼びします」 「助かります」
受付の婦警さんは電話を取った。
時間を少しだけ戻し、特命係
「暇ですね〜」 「・・良い事じゃないですか」
暇を持て余して呟いた冠城亘に杉下右京は言った後
「警察官が暇と言う事は、平和である事。良い事だと僕は思いますよ」 「そりゃ俺も同意見ですが。でも、暇すぎる」
愚痴る亘に右京は微笑んで紅茶を飲んだ。 すると特命係の電話が鳴り、右京が出た。
「はい、特命係。 はい?僕に、ですか? 分かりました。伺います」
電話を切った右京に
「何かあったんですか?」 「僕にお客さんだそうです」 「・・それって若い女性とか」
何やら期待を込めて言う亘に
「若い男性だそうですよ」 「俺も同伴しても?どうせ暇ですから」 「構いませんよ」
2人とも接見の準備を済ませ、特命係を出た。
2人が受付に着くと、婦警さんに示され、待っている客人の元へ赴き
「お待たせしました。貴方が」 「あ、はい。僕はこう言う者です」
声をかけられ、ハヤテは立ち上がって2人に名刺を差し出した
「三千院家執事長・綾崎ハヤテさんですか」 「三千院家って、世界的名家の大財閥じゃないか。そんな凄い人がどうして俺達に」
ハヤテの立場に右京は何時も通りだったが、亘は驚いていた。
「ともかく、座りましょう。話はそれからです」
右京は全員を促し、特命の2人は隣り合う様に座り、ハヤテはその向かいに座った
「それで。その偉い立場の方が僕にどのような用件でしょう?」 「杉下警部は、水蓮寺ルカって知ってますか?」 「はい?申し訳ありませんが、存じ上げませんが」
首を傾げる右京に
「5年位前に殺人事件を起こして逮捕された元アイドルですよ」 「ああ、成程。補足感謝します」
亘が耳打ちし、右京は納得が行き
「その水蓮寺さんが何か?」 「その事件ですが、冤罪だったっと突き止めたんです」 「はい?」
首を傾げる2人にハヤテは大きめでぶ厚めの封筒を差し出した。
「これは、僕の捜査の賜物です。ここに、色々と纏めてあります」 「拝見します」
右京は封筒の中身を見始めた。
「お願いします。再捜査してください。あれは冤罪なんです」 「だ、だがな。あれは5年前に終わったはずだろ?今更」 「お願いします!!」
亘に言われ、ハヤテは土下座した
「ルカさんは、友達なんです。僕はこの5年間、必死で情報を集め、確固たる情報を得たんです」 「お、おい。頭あげろよ。俺達が悪者みたいに」 「出来ません。再捜査を」
すると、書類を読んでいて沈黙を守っていた右京が
「頭を上げてください。そのままでは、話が出来ません」 「しかし」
一応頭を上げたが、直ぐにでも土下座出来る様にしていて
「これを読んで、興味が出てきました」 「右京さん!?」 「再捜査は、お引き受けします。しかし、再捜査の末「やはり水蓮寺さんは有罪」っと言う結末になる可能性もありますよ?」
ハヤテはそう言われる事を予期していて
「もしそうなったら、その時はその時です」 「・・そうですか。では、さっそく動きましょう」 「お願いします」
深々と頭を下げ、全てを託した。 すると
「一つ良いですか?なぜ僕の所へ?この資料ならば普通に捜査一課の方に持って行っても」 「信頼、出来なかったからです」 「はい?」
ハヤテは申し訳なさそうに良い
「その資料を渡しても、門前払いされたり、下手すれば揉み消されたり。信頼出来なかったんです。 ですが、杉下警部ならちゃんと再捜査してくれて、納得が行く真相に辿り着いてくれると、そう思ったんです」
ハヤテが言い切ると、
「そうですか。ありがとうございます。 冠城君、行きますよ」 「あ、はい」
2人はハヤテの分のお茶代を払って、出かけて行った。
それから3日程後。
ここは捜査一課の部屋
「ん!?背中がむずむずする」 「掻きましょうか?」
伊丹・芹沢両刑事が暇そうに言っていた。
「いや、これは何というか」 「うわっ、出たよ〜」
伊丹刑事の予想通り?特命の2人が来ていた。
「今日はお2人にお話があります」 「警部殿達はあっても、我々にはありません」 「帰ってもらえます〜?先輩の機嫌が悪くなる前に」
帰るように促された特命2人は
「5年前の、とある冤罪事件について、っと聞いても、ですか?」 「なにぃ!?」
亘に言われ、伊丹はようやく反応した。
「お2人は、水蓮寺ルカさんをご存知ですか?」 「誰ですか、警部殿」 「先輩。5年前に逮捕された元アイドルですよ」
芹沢が補足すると、伊丹は「知ってるよ」みたいな顔をし
「その元アイドルがどうかしましたか?」 「その事件、冤罪だったんですよ。我々の再捜査で、判明しました」 「これがその捜査資料です」
資料を受け取ると、伊丹・芹沢は目を通した
「こ、これは」 「凄い。完璧に纏められてて、決定的な証拠じゃないですか」
2人は驚いた後
「おい、行くぞ。捜査だ」 「あ、はい」
芹沢は去り際
「一応、お礼言っておきますよ。じゃ」
2人の後、特命2人の捜査一課の部屋を出て
「綾崎執事長のあの資料、凄いですね。欠損や捏造が無かったんですから」 「ええ。僕も驚いていますよ。 では、我々も行きましょうか」 「ええ。決戦ですね」
特命の2人はルカの元所属事務所に来ていた。
「えっと。警察の方がどのようなご用件でしょうか?」 「失礼ですが、貴方は?」 「集、っと申します。この事務所の副社長です」
ルカの元マネージャーの集さんが特命係の応対をしていた。
「確か貴方は水蓮寺さんの」 「ええ。あの子はあの事件を起こすまで、私が担当していました。それが」 「その事件について、ここの社長さんとお話ししたいのですが」
右京が言うと、集さんは怪訝な顔をし
「それは5年前に終わったはずじゃ」 「ともかく、社長を呼んでください。全てはそれからです」 「・・分かりました」
亘に言われ、集さんは応接間から出て行き、直ぐに社長を連れて戻って来た。
「警察の方が私に何か? なんでも、昔うちにいた水蓮寺ルカについて、らしいですが」 「なら話は早いですね。その件は、冤罪だと発覚しまして」
右京の言葉に2人とも驚いていた。
「とある筋からの情報を得て再捜査の末、冤罪だと判明しました」 「そうだったのですか。態々知らせに来てくれたんですね」
社長が明るく言うと、特命2人は鋭めの表情になり
「冤罪だったと言う事は、真犯人が別にいると言う事です。お分かりですか?」 「さあ?推理小説や刑事ドラマは好きですが、犯人が分かった事は無いので」 「社長さん、貴方ですよ」
亘の言葉に社長から笑みが消えた
「貴方が前社長を殺害し、その罪を水蓮寺さんに押し付けた犯人なんですよ」 「・・証拠はあるんですか?」 「勿論ありますよ」
右京は現社長が犯人であると言う証拠・根拠を全て説明した。
「・・動機は?この俺がそんな事する動機は?」 「お前、会社の金横領してただろ?」 「しかも、それは自身のギャンブルで作った借金の返済。及び、ギャンブルの資金確保の為ですね?」
特命2人に言われ、現社長は黙り込んだ
「社長?嘘ですよね?」 「信じたくない気持ちはお察ししますが、本当です」
集さんを右京が宥めると
「ッチ。何で5年も経ってから再捜査なんかしやがるんだよ」 「しゃ、社長!?」 「ああ、そうだよ!!俺がぶっ殺してやったんだ!!そしてその罪をあの水蓮寺ルカに押し付けてやったんだよ!!」
完全に豹変し、横柄な態度で言い切ると
「仕方ねえだろ。借金が膨らんで、やばい所からも借りていた。返さねえと俺の命が危ねえからな。だが、返せる当てなんかなかった。そんな時に天才の俺は閃いたのさ。会社の金を使えばいいとな。だからばれないように少しづつ誤魔化して金を得て、借金返済に充ててたのさ」
現社長は一旦間を置き、出されていたお茶を飲んだ
「だがそんな時、前の社長が気付きやがったのさ。俺を社長室に呼んで横領を咎めがった。そして「金を返すなら公にしない。だが、返さないなら警察に全て話す」なんて言いやがった。なんで俺の金を返さねえといけねえんだ?一度でも手にしたら俺のもんだろ!!だから殺してやったんだよ!! だがよ、このことがばれれば不味い事になる。ギャンブルが出来なくなるからな。そんな時天才の俺はまた閃いたのさ。一応は動機のある水蓮寺の野郎に押し付けてやろうってな」
自身に酔う様に言い切ると、続けた
「色々と上手く行ったお陰であいつは逮捕され、有罪判決を受けた。俺はお咎め無しで、社長の座も手に入れたのさ。やばい所からの借金も無くなったし、一石何鳥なんだ?って位得をしたのさ。俺って天才なうえに運もいいだろ?敬えよ、こんな俺をよ」
あまりの自分勝手さに亘は怒りで我を忘れそうになっていた。
「俺は悪くないぜ。会社の金を有意義且つ正しく使ってやったんだ。それを咎めやがって。逮捕するなら前社長を逮捕しろよ。そして動機があった水蓮寺ルカも逮捕しろよ。俺が捕まる理由なんて、一欠けらだってあるもんか。そう思うだろ?」
自分勝手すぎる現社長に
「いい加減にしなさい!!!」 「な、何だよ」 「そんな自分勝手の為に人一人の命を奪い、その罪を未来ある少女に押し付けるなんて、絶対に許される事じゃありませんよ!!!」
声を荒げる右京に
「うるせえクソ爺だ。言っただろ、俺は悪くない。正しい金の使い道をしたのに、それを咎めた前社長が悪い。動機があった水蓮寺ルカが悪い。 俺にそんな風に怒鳴られる理由なんて、ねえだろ。俺を逮捕するなんて、誤認逮捕も良い所だ」
「てめえ、いい加減にしろ!!!」 「お、正義の警察官が殴っていいのか?」 「冠城君、気持ちは分かりますが、殴ってしまってはこの外道と同じになってしまいます」
亘は胸倉を掴んでいた手を放した。 すると
「な、何だよ」 「この、クソ外道が〜」
集さんが現社長の事を思いっきり殴った。
「なにしやがる!!」 「それはこっちのセリフよ!!そんな自分勝手で2人の人間の人生を目茶目茶にしておいて、反省すらしないなんて、恥を知りなさい!!本当はもっと殴ってやるところだけど、貴方なんかと一緒になりたくないから、殴らないわ」 「お、おい警察!!俺を殴ったこの女を逮捕しろ!!」
すると
「殴った?冠城君、そんなところ、見ました?」 「いいえ、まったく。つまらない言い掛かりつけて、また罪を生み出そうなんて、本当に外道だな、お前は」 「殴っただろ!!何も悪くないこの俺をよ!!」
声を荒げていると、伊丹・芹沢両名が入って来て
「もういいですか?警部殿」 「ええ、お願いします」 「来い、この犯罪者め!!」
連れていかれる最中でも「俺は悪くないと」見苦しく言い張り、暴れていた。
「あの人が、あんな外道だったなんて」 「つらい現実かもしれませんが、受け止めてください」 「ああ。あいつの横領、現在進行形で続いてますよ」
集さんは血が出る程歯を食いしばり
「刑事さん、教えてください。何でルカが逮捕されて、有罪になったのか」 「・・良いでしょう。お教えします」 「他言しない、って条件付きますけど」
特命2人に言われ、集さんは頷いた
「捜査を担当した警察官や、裁判を担当した検事を買収してたんですよ。しかも、証拠を捏造したり、故意に隠したり。だからこそ、有罪になってしまったんです」 「おそらく、今頃その2人の所にも警官が行ってる筈ですよ」
実際、
「○○刑事だな。5年前の事件で聞きたい事がある!!」 「お、俺は、その」
「○○検事だな。5年前の事件で聞きたい事がある!!」 「そ、それは、その」
っとなっていた。
「私は、自分が恥ずかしいです。自分が担当していて、信じていたはずのルカを疑ったりして」 「心中、お察しします」 「冤罪を生んでしまい、あいつの陰謀を見抜けなかった我々警察にも責任があります」
集さんは涙を拭い
「刑事さん、とある筋の情報って」 「それは明かせません。守秘義務があるので」 「そう、ですか」
しかし、集さんには
「(きっと、綾崎君辺りね。あの子、優しいし、ルカと仲が良かったもの)」
っと言う確信があった。
「そう、ですか。真犯人が」 「ええ。貴方が戦ってくれたおかげで、間違いを正す事が出来ました」 「お礼しか言えんが、本当にありがとな」
ハヤテは右京達の呼び出されていて、事の顛末を聞いていた。
「君の完璧な資料のお陰で、我々の再捜査はだいぶ楽でした」 「凄いよな。俺も読んだが、「完璧」以外浮かばないよ、あれは」 「お褒めに預かり光栄です」
褒められているのだが、ハヤテの顔はうかなかった。
「君の資料には、真犯人は書かれていませんでしたが、もしや」 「いえ。何となく程度で目星はついてましたが、正確には」 「ま、何はともあれ。君には感謝状を」
亘が言いかけると
「僕は、当然の事をしただけです。感謝状は、受け取れませんよ」 「・・そうですか」 「報告、ありがとうございました。僕は仕事があるので」
今度はハヤテが支払いを済ませ、出て行った。
「凄い執念ですよね、5年間も」 「それだけ、彼が優しかった、っと言うだけですよ」
× ×
話を聞き終えたルカは、感謝でいっぱいだった。
「そうだったんだ。凄いね、その刑事さん」 「ええ。優秀だと言う噂は知ってましたが、そこまでとは」
笑みを向けあった後
「でもさ、ハヤテ君。一つ聞いて良い?」 「はい?」
ルカは少し間を空け
「どうして、そこまで私の為に戦ってくれたの?5年も1人で、危ない事までして」
聞かれたハヤテは少し間を空け
「ルカさんを、幸せにするためですよ。以前約束した通り」 「そ、そうなんだ////////////////////////////////////////////////////」
ハヤテの言葉にルカは真っ赤になり
「(折角頑張ってハヤテ君を諦めたのに、また好きになっちゃうじゃん。ううん、もう好きになっちゃってるよ、もう)」
こう思っていた。
因みに、報道前に日本を発ってしまったハヤテは知らないが、真犯人は裁判でも反省した態度を見せず、「自分は悪くない」とか「自分は無実だ」とか「逮捕するなら前社長にしろ!!」とか言い、問答無用で死刑になった。控訴は一切認められずに
事件に加担した捜査責任者は当然逮捕され、結構な重罪が課せられた。勿論、警察官の資格も剥奪された。
同じく事件に加担した担当検事も逮捕され、結構な重罪が課せられた。勿論、検事の資格も剥奪された。
----------------------------------------------------------------------------------- 以上です。
長くなってしまって、すみません。 相棒ファンの方も、あの2人のキャラを引き出せたか分からないので、それもすみません。 後、真犯人の外道っぷりに腹が立った方もすみません。
次回は続きです。
では。
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Re: 殺人犯水蓮寺ルカ 短編 (7月6日更新) ( No.3 ) |
- 日時: 2018/07/07 06:58
- 名前: ささ
- ささです。なかなかの外道っぷりですね。真犯人、特命係に持っていったのが不幸中の幸いだなぁ、ナギに持っていってたら、「死よりも恐ろしい」ことになっていただろうし。きっと今ごろ、ハヤテから再捜査の協力を頼まれた面々は…さておき、買収資金って横領した金だよな…ある意味流石ルカだなぁ…
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Re: 殺人犯水蓮寺ルカ 短編 (7月8日更新) ( No.4 ) |
- 日時: 2018/07/08 15:35
- 名前: masa
- こんにちはmasaです。
レス返しの更新です。
●ささ さん
>>ささです。
感想ありがとうございます♪
>>なかなかの外道っぷりですね。
なんか、すみません。ですが、同情するような犯人じゃあれだったので、「だったら思いっきり外道にしよう」って考え、ああなりました。
>>真犯人、特命係に持っていったのが不幸中の幸いだなぁ、ナギに持っていってたら、「死よりも恐ろしい」ことになっていただろうし。
ハヤテは「正しき法の裁き」を望んでいた事もありますし、今回の話でナギに言わなかった理由が分かりますよ。
>>きっと今ごろ、ハヤテから再捜査の協力を頼まれた面々は…
それに関しては、後の話で。
>>さておき、買収資金って横領した金だよな…
それもありますが、書くのを忘れちゃったんですが、記者に「良い情報あげるから金よこせ」っと、結構な情報料をもらったので、それからも支払われました。 記者がルカの情報を掴んでいたのは、真犯人が情報を売ったからです。
>>ある意味流石ルカだなぁ…
ルカ「そ、そうかしれないけどさ。 酷い」
ルカも結構不幸ですからね。
感想ありがとうです〜♪
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Re: 殺人犯水蓮寺ルカ 短編 (7月8日更新) ( No.5 ) |
- 日時: 2018/07/08 15:40
- 名前: masa
- こんにちはmasaです。
本編の更新です。
どうぞ。 -----------------------------------------------------------------------------------
前回、ルカはハヤテが自身の為にしてくれた事を深く知った。
ルカは自身に再び宿った気持ちとしっかり向き合い
「でもさ、よくナギが休ませてくれたよね。割と急なのに」 「・・・」
俯いて、何かを抑えているハヤテに
「ハヤテ君にとって、ナギ達の名前は出されたくないんだね」 「・・・」 「でもさ」
するとハヤテは遮る様に
「この5年間、僕は今迄通り、つまりルカさんが知っている呼び方で、皆さんを呼んだ事はありませんでした」 「・・聞かせて。お願い」
渋るハヤテに
「後で土下座位幾らでもするから、さ」 「分かり、ました」
× ×
話は5年前、ルカの有罪が確定し、ハヤテが捜査を断られた少し後
「お〜い、ハヤテ〜」 「なんでしょうか、三千院さん」 「え!?あ、いや」
ハヤテからの呼ばれ方にナギが困惑していると
「御用が無いのなら、行きますね。忙しいので」 「あ、おい。ハヤテ」
ナギが引き止めるの聞かず、足早に立ち去ってしまった。
「あいつ、なんで私を・・」
その翌日、アパート
「なあ、綾崎君」 「なんですか、春風さん」 「へ!?あ、いや」
千桜もハヤテからの呼ばれ方に困惑し
「用事が無いのなら、もういいですか?忙しいので」 「あ、ああ。夕飯何かな〜って」 「ちゃんと作りますよ。お待ちください」
様子のおかしいハヤテに首を傾げつつ
「何か、手伝うよ」 「結構です。お願いする事もありませんし」 「遠慮すんなって」
しかしハヤテはそれっきり何も言わず、せかせかと仕込み等を終え、出て行ってしまった
「???」
残された千桜は首を傾げるばかりだった。
さらに翌日
「ん!?どこか行くのか?」 「ええ、まあ」
今日は三千院家に遊びに来ていたカユラが出かける準備をしていたハヤテに話しかけていた。
「出掛けるなら、漫画買って来てくれ。今日発売日なんだ」 「剣野さん、それ位自分でしてください」 「・・え!?」
ハヤテからの呼ばれ方、そして普段は断らないお願いを断れた事に驚いていると、ハヤテはさっさと出かけた。
「私の事、名前で呼んでたよな?なんで苗字で・・」
数日後。
「全くあの3人は。いつもいつも」
ヒナギクは大きめの独り言を呟きながら、白皇の庭を歩いていた。 なぜなら、お偉いさんに呼び出され、提出されていない書類が沢山ある。その殆どが期限をとっくに過ぎてるから、早く出してくれ。 っと言われ、生徒会三人娘を問い詰めたところ、全部白紙の書類を渡された。 当然叱りつけ、協力して書類を片付けようとしたが、3人とも一瞬で居なくなったためだ。
「はあ。やるしかないわね。 あ、ハヤテ君だわ♪」
ハヤテを見つけ、手伝ってもらうのと
「ついでにアピールしちゃおうかしら♪私の魅力を」
そう思い、駆け足でハヤテに追いつくと
「あ、ハヤテ君」 「なんですか、桂さん」 「え!?あ、あの」
呼ばれ方に驚いていると
「用事が無いのなら、行きますね。忙しいので」 「え!?あ、ああ、ごめんね。実は、生徒会の仕事を手伝ってほしいのよ。あの3人が溜め込んじゃってて」 「さっき言いましたよね?忙しいっと」
冷たく言い放たれ、驚くヒナギクに
「大変なのはお察ししますが、僕にも用事があるので」 「ちょ、ちょっと待ってよ」 「なんですか、桂さん。僕は忙しいんです」
冷たく言われ、ヒナギクはただただ呆然とし
「ハヤテ君、私の事「桂さん」って」
確かに以前ヒナギクも意地悪された仕返しにハヤテの呼び方を変えていた時期があったが、ハヤテが呼び方を変えて来た事に驚き
「何時もなら手伝ってくれるのに。どうして」
結局ヒナギクの仕事が終わった時には夜になってしまい、学校に泊まる羽目になった。
それから数日後。
「なあハヤテ」 「なんですか、三千院さん」
未だにハヤテからの呼び方になれず、一瞬戸惑ったが
「お前、何してるんだ?」 「・・・」 「確かに、執事の仕事はある程度はしてくれてる。だが、朝早く出かけて帰ってくるのは何時も夜じゃないか。お前は」
ナギの言葉に
「報告する義理も義務も、ありません」 「え!?」
冷たく言われ、
「忙しいので、もう行きます」 「あ、おい」
ハヤテが立ち去った後、
「あいつ、まさか」
それから数日後。 ハヤテがまた出かけたので、ナギはアパートに来ていた。
「諸君。今回の議題だが」 「綾崎君。だろ?」
千桜に言われ、驚きつつも首を縦に振って肯定した
「ハヤテ君、どうしたのかしら?私達の事苗字で呼ぶし、お願い事しても断るし」 「なあヒナ、私達、綾崎君に何かしたか?例えば怒らせるような事をさ」
千桜に言われ、全員腕を組んで考えたが、誰も何も浮かばず
「それにだ。綾崎君は何時も「忙しい」って言ってるが、何か心当たりあるか?」 「カユラちゃんは?私は無いけど」
歩に言われ、カユラは今度は首も傾げ、考え込んだが
「無いな〜。仮にバイトしてるなら、言うだろうし」 「まあ、言わなかったとしたら、サプライズだろうが、サプライズされる人、居るか?」
誕生日は皆して過ぎたかまだまだなので、その推理もはずれと言う事である
「私には「もしかして」があるよ」 「「「「え!?」」」」
ナギが言うと、面々は驚き、視線はナギに集中した。
「たぶん、ルカの事だ」 「「「「!!!」」」」
ナギの言葉に全員目を見開いた。なぜなら、「ルカの事は口にしない様にしよう」っと、暗黙の了解で決まっており、それはルカの釈放まで続けようと暗黙の了解で決まっていたからだ。
「あいつは、ルカの事で何かをしようとしている。そう思うよ」 「「「「・・・」」」」
不思議と誰も反対意見を言わず、黙り込んだ。
ルカの逮捕報道から1年程経ったある日
「なあ、ハヤテ」 「なんでしょうか、三千院さん」
少しは慣れていたが、違和感は消えず
「実は、クラウスが隠居する事になった」 「すまんな。私ももう年だ」
クラウスがすぐに来て、補足した
「私は、お前に執事長を継いでほしいっと思ってる」 「引き受けてもらえるか?」
ハヤテは少し考え
「分かりました。引き受けます」 「助かるよ。安心して隠居できる」 「立場が変わっても、お前の仕事内容は変わらんよ。今迄通りだ」
話が終わると、クラウスは立ち去った。が、ナギは残り
「お前、本当に何やってるんだ?」 「報告すべきことは、ありません」
そう言うと、駆け足に近い速度で行ってしまった。
それから数日後
「ハヤテ、お前は」 「報告は」 「分かってるよ。 ルカの事、だろ?」
ハヤテに反応は無かったが、ナギには分かった
「ルカの無実を証明しようと、色々動いてる。違うか?」 「・・・」
否定も肯定もしないハヤテにナギは「肯定」っと捉え
「悪い事は言わん。諦めろ」 「・・・」 「あいつの無実を証明しようっていうなら、無駄なだけだ。お前の大切な時間を思って、言ってるんだぞ」
ナギは優しく言ったが、ハヤテは相変わらず無反応だった。
「ハヤテ、分かって・・!!」
ハヤテのあまりに冷たい視線にナギは心臓を握り潰される様な錯覚に襲われた。 今まで何度か経験した、自身を狙う殺し屋の視線。それが生ぬるく感じる程、冷たかったからだ。
「忙しいので、失礼します」 「・・・」
パクパクと情けなく口を開閉し、ナギは立ち尽くしていた。
それからハヤテは何度もナギ達に「ルカの無罪証明は止める様に」っと言われたが、その度に人を余裕で殺せる冷たい視線で黙らせ、やり過ごした。
× ×
「そうだったんだ」
話を聞き終わり、ルカの中でナギ達への気持ちが急激に消えていくのを感じた。 そう、今迄「大切な友達」っと思っていた感情が、急激に消えて行ったのである。
「ハヤテ君が、名前を出されなくなった気持ち、分かったよ」 「すみません」 「謝らないで」
謝るハヤテを宥め
「もう一つだけ、良い?」 「なん、でしょう」 「皆をそんな風に思ってるなら、どうして執事を辞めなかったの?話を聞くうえじゃ、皆を信頼してない。って捉えられるけど」
ハヤテは少し悩み
「三千院家執事長。この立場を利用するためです。捜査に都合がいいので」 「やっぱね」
ルカは呟いた後
「じゃあ」 「執事は、辞めてきました。ルカさんの冤罪を晴らした以上、執事を続ける理由は、全くありませんから。正直、執事を続けているの、苦痛でしたし」 「・・だね」
ルカも同意し、それと同時に「ナギ達の事は友達と思うのは止めよう」っと、誓った。
----------------------------------------------------------------------------------- 以上です。
次回は、ナギ達サイド(現在の)です。
では。
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Re: 殺人犯水蓮寺ルカ 短編 (7月8日更新) ( No.6 ) |
- 日時: 2018/07/08 19:25
- 名前: ささ
- ささです。意外にも「正しい法の裁き」を求めたんだね。自分自身で外道に落ちるわけにはいかないという思いからか、杉下右京警部のように…。
三千院家執事長なら「裏」にも顔が利きそうだけどな…「お前に明日は来ない」なんてやって神隠しをしたり、ゴ〇ゴに依頼したり、AT〇Xを打つとか…バチは当たらないけどね。ルカの苦しみを考えたらね。ってことはルカから電話がかかってきた時にはもう既に脱サラしたということか? っていうか、普通警察.検察ともに買収されていて証拠等隠蔽.捏造されているなんて思わないな… 逮捕起訴直後ならナギたちも動きようはあるけど。金の亡者で口が相当悪いが必ず勝つ弁護士とかを三千院家の資金で依頼するとか…体は子供頭脳は大人な探偵に依頼するとか… それとふと思ったけど、逮捕当時ルカは事務所のスターだったはずだけどよく持ちこたえたね…あの外道がなんか非合法なことをしたからだろうけど違約金等で火の車になったんじゃない?
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Re: 殺人犯水蓮寺ルカ 短編 (7月10日更新) ( No.7 ) |
- 日時: 2018/07/10 19:00
- 名前: masa
- こんにちはmasaです。
レス返しの更新です。
●ささ さん
>>ささです。
ルカ「感想ありがと〜♪」
>>意外にも「正しい法の裁き」を求めたんだね。自分自身で外道に落ちるわけにはいかないという思いからか、杉下右京警部のように…。
ハヤテ「ええ。非合法な方法で情報を得たのもありますし、悪に堕ちたくありませんでしたから」
>>三千院家執事長なら「裏」にも顔が利きそうだけどな…
ハヤテ「確かに、裏社会とのつながりも持てなくはありませんでしたが、合法的に裁けませんからね」
>>「お前に明日は来ない」なんてやって神隠しをしたり、ゴ〇ゴに依頼したり、AT〇Xを打つとか…バチは当たらないけどね。
罰は当たりませんが、それじゃ結局犯人と同じになっちゃいますからね。それを避けたんですよ。
>>ルカの苦しみを考えたらね。
ハヤテ「ええ。合法的に裁けなきゃ、根本的な解決には至りませんから。助ける事にもなりませんし」
>>ってことはルカから電話がかかってきた時にはもう既に脱サラしたということか?
まあ、「辞める準備を進めていた」って時に電話がかかって来たんですよ。なのでたった2日で会いに行けたわけです。
>>っていうか、普通警察.検察ともに買収されていて証拠等隠蔽.捏造されているなんて思わないな…
千桜「まあな。普通はそんなの「ドラマなどのフィクションだけの世界」って思うよな」
>>逮捕起訴直後ならナギたちも動きようはあるけど。金の亡者で口が相当悪いが必ず勝つ弁護士とかを三千院家の資金で依頼するとか…体は子供頭脳は大人な探偵に依頼するとか…
まあ、今回である程度の事は説明してますが、ナギ達は動かなかっただけです。その方法を知ってても、ね。
>>それとふと思ったけど、逮捕当時ルカは事務所のスターだったはずだけどよく持ちこたえたね…あの外道がなんか非合法なことをしたからだろうけど違約金等で火の車になったんじゃない?
逮捕当時、真犯人にはそこまでの地位はありませんでしたよ。集さんが色々と動いたおかげで、損害も少なくて済んだのです。名マネージャーですから。
感想ありがとうです〜♪
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Re: 殺人犯水蓮寺ルカ 短編 (7月10日更新) ( No.8 ) |
- 日時: 2018/07/10 19:05
- 名前: masa
- こんにちはmasaです。
本編の更新です。
どうぞ。 -----------------------------------------------------------------------------------
前回、ルカは5年間のナギ達の事を知り、友情を無くした。
一方、日本。
「はあっ」 「なあ、ナギ」 「・・何だよ」
三千院家に遊びに来た千桜がナギに話しかけていた。
「大丈夫か?溜息多いし、顔色も優れないし」 「・・気のせいだよ。食事もちゃんと取ってる。問題、無い」 「そう、か」
心配は消えないものの、本人が問題ないっと言う以上これ以上の言及を止め
「ところでさ。綾崎君はどうしたんだ?最近見かけないが」 「ち、千桜さん!!」 「へ!?あ」
マリアさんに言われ、ナギを見ると泣いていた。
「わ、悪い。聞いちゃ」 「辞めたよ、あいつは」 「え!?」
ナギは無言であるものを差し出した。 それは「辞表」っと大きく書かれた封筒で、許可を得て中を見ると
「一身上の都合で、三千院家執事を辞めさせてもらいます。お世話になりました」
っと直筆で書かれていて、ハヤテの名前も書かれていて、拇印が押されていた。
「な、なあ、これ」 「一応言うが、本物だよ。筆跡鑑定も指紋鑑定もしてもらったが、どっちもハヤテ本人だと認定された。無理やり書かされた形跡も発見されなかった」 「そ、そうか」
自分が言おうとした事を見抜かれ、千桜は曖昧な返答が精一杯だった。
「ま、まあ、あれだ」 「・・何だよ」 「な、何でもない」
千桜は逃げる様に帰宅した。
× ×
「そう、ハヤテ君が」
アパートへ帰宅後、偶々全員揃っていたので、千桜は事情を話していた。
「最近見かけないと思ったら、綾崎君、辞めてたとは」
カユラが言うと、全員黙り込んだ。
「今回の議題はだ。この5年間、そして急な退職についてだ」
千桜は咳払いした後、こう前置きし
「綾崎君の急な呼び方、態度の変わりよう。執事を急にやめた事だが」 「それは・・やっぱり私達のせいよね」 「私も、ヒナさんに同意、かな」
また沈黙が少し訪れた後
「ハヤテ君が必死で戦ってたのに、誰も手伝わなかった」 「それどころか、私達皆して「無実の証明は止めようよ」なんて冷たい事ばっか言ってたもんね」 「ええ。ただ、盲目的に日本の警察や司法を信じてた。間違える訳無いって」
ヒナギクの言葉に、誰一人として反対意見を言わなかった。
「ハヤテ君だけが、ルカを信じた。必死で戦った」 「悪い事、しちゃったよな。我々は」
カユラはそういうと
「私でも、同じ事するよ。信じてた面々が、殆ど裏切りに近い事をして来た。完全無視して来なかった事が、僅かに残った優しさだったのかもな」
カユラの考えは、誰もが思った事だった。それと同時に、もし自分がハヤテの立場だったら、話しかけられようが無視していたと、自信を持って言えた。
「ルカの苦しみを理解しようとせず、疑い続けてた。綾崎君の孤独・苦しみを理解しようとせず、止め続けてた」
千桜はこう言うと
「もし、私達の誰か、若しくは皆で手伝ってたら、ルカの無実はもっと早く証明出来ていた。なのに」 「誰も手伝わなかった。ルカに会いに行こうとも、しなかった」
千桜、カユラの言葉に全員黙り込んでいた。
「皆はどう思う?仮にルカに連絡が取れたとしたらさ」 「「「そ、それは」」」 「私は、許してもらえないと思う。こんな事をした私達は」
千桜が言うと
「友達だと思ってもらえないわね。こんな冷たい事したから」 「若しかしたら、「会いたくない」って思うかも」 「いや、かもじゃないだろ。会いたくないって言われるよ、綾崎君は別としてな」
全員溜息をつくと
「謝っても、無駄でしょうね。土下座しても、駄目でしょうね」 「5年もほおっておいたのに?って言われたら、返す言葉ないもんね〜」
また全員で溜息をつき
「ともかく、直接は出来ないにしろ、ルカに謝り続けよう」 「ええ。「信じてあげられなかった」っと言う罪の十字架を背負い続けましょ」
× ×
一方
「はあっ」 「ねえ、ナギ」 「・・何だよ」
マリアさんはどう言葉をかけるべきか少し考え
「このままでいいの?殆ど引き籠ってばかりじゃない」 「やるべき事はやってる。当主の仕事はしてるし、飲食などの生活に必要な事もやってる。問題ないはずだ」 「そう、だけど」
溜息をつくと、部屋を出た。
「元々引き籠り癖はあったけど、酷くなったわね」
マリアさんはブツブツと呟きながら廊下を歩き
「私やナギも、ルカさんを信じてあげられなかったわね。あのルカさんが殺人だなんて残酷な事、どんな理由があってもしないと分かってたはずなのに」
ルカと初めて会った時の事を思い出し、
「私やナギが、ハヤテ君のお手伝いをしていれば、ルカさんやハヤテ君を苦しめる事は無かった。何が年上のお姉さんよ。ハヤテ君の方が、ずっと大人じゃない。無駄に年上ってだけね、私は」
すると、近くの窓を開け、空を見上げると
「今のナギを救えるのは、ハヤテ君だけでしょうね。どこにいるの?ハヤテ君。貴方やルカさんに謝らせてほしいのに」
× ×
数日後。
「なあナギ、本当に大丈夫なのか?」 「問題ない。やるべき事はやってるよ」 「しかし」
家から出ようとしないナギに説得を試みていた。
「何時までも引き籠ってちゃ駄目だよ。太陽の」 「部屋の中で浴びてる。規則正しい生活も、送ってる」 「だからって」
頑ななナギに
「やる事やってるからって、ずっと家のなかって、やっぱよくないよ」 「煩い。ほおっておいてくれ」
千桜は溜息をつき
「分かったよ。それより」 「・・何だよ」 「マリアさんから聞いたぞ。新しい執事を断り続けてるって」
ナギは一瞬反応したが、返答等はしなかった。
「マリアさん一人じゃ限界がある。ここは」 「嫌だ。ハヤテ以外の執事なんて、お断りだ」 「だ、だがな」
すると、ナギは顔をあげ
「大丈夫だ。ハヤテは帰ってくる。帰って来て、私の執事をまたやってくれる。私には確信があるんだ」 「・・お前には悪いが、その可能性は皆無だよ。綾崎君が帰ってくる可能性はな」 「だ、黙れ!!!ハヤテは帰ってくる!!!私の勘は、外れたためしがない!!」
鬼気迫るナギに千桜はたじろぎ
「私は、ハヤテを待ち続ける。ずっと、ずっと」 「それでいいのか?マリアさんだって、何時かは辞めちゃうかもしれないんだぞ」 「マリアが辞めたいなら、止めはしない。1人で生活する術も、少しはある」
ナギはそういうと、
「ハヤテ以外の執事がつく位なら、首吊って死んでやる。嘘や冗談の類じゃないぞ」 「お前、そこまで」 「当たり前だ。私は、ハヤテが好きなんだよ」
それ以降黙り込んでしまったナギに、千桜は溜息をつき
「だったら、綾崎君が帰ってくるまでクラウスさんに戻って来てもらえば」 「あいつなら、言えば戻って来てくれるだろうな。でも、駄目だ」 「え!?」
驚く千桜に
「あいつは、十分働いてくれた。もう、ゆっくりさせてやりたいんだよ」 「・・分かったよ」
千桜が帰った後、ナギは
「ハヤテ」
また泣いていた。
「お前、何処にいるんだよ。帰って来いよ」
少しの間泣いた後
「お前は、ルカの所だろうな。きっと、ルカは「ハヤテなら」って居場所を教えるだろうし」
鋭い勘で的中させていた。
「私は、お前達を探さない、探させない。何時までも待ってるから、帰って来てくれよ。お前以外の執事は、嫌なんだよ。ハヤテ〜」
そのまま泣き続け、泣き疲れて眠ってしまった。
× ×
千桜はアパートに戻った後、先程のやり取りを可能な限り詳しく話した
「ナギの気持ち、分かるわ」 「私がナギちゃんの立場なら、同じ事してたもん」 「だよな」
千桜は少し間を空け
「実際問題、どう思う?」 「ハヤテ君が戻ってくる可能性? 私は、無いと思うわ」 「私も、無いと思うかな。最後に会ったあの感じじゃ」 「・・同意だ、私も」
全員の意見は一致しており、ハヤテ帰還の可能性は考えられなかった。
「私達で、ナギを支えてやろう」 「そうね。使用人が嫌なら、それしかないわね」 「ああ」
翌日から交代交代で三千院家に赴き、ナギを支え始めた。
最初はナギも迷惑そうにしていたが、何とか折れて皆の支えを受け入れた。
----------------------------------------------------------------------------------- 以上です。
次回からはルカ・ハヤテサイドに戻ります。
では。
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Re: 殺人犯水蓮寺ルカ 短編 (7月12日更新) ( No.9 ) |
- 日時: 2018/07/12 19:00
- 名前: masa
- こんにちはmasaです。
本編の更新です。
どうぞ。 -----------------------------------------------------------------------------------
ここはアメリカにあるルカの現住居。
全ての話が終わるとお茶を淹れ、一息ついていた。
「そう言えば、ルカさんはこれからどうするんですか?」 「ん!? 実は、前にこっちでライブした事あったでしょ?」 「ああ、はい」
原作やアニメでも触れられていた、ラスベガス公演の事です。
「その時お世話になった人がこっちにいてね。その人が色々と面倒を見てくれる事になってるから、平気だよ。この家だって、その人から借りてるし」 「成程。どうりで」
感心するハヤテに
「当分の間の生活に問題は無いよ。その人、物凄く良い人だからさ」 「そうですか。安心しました」 「私の事より、ハヤテ君だよ」
ルカはハヤテを心配そうな目で見て
「ハヤテ君はこれからどうするの?執事、辞めてきちゃったんでしょ?」 「ええ、まあ」 「大丈夫なの?」
心配そうなルカに
「僕にもこっちに知り合いがいるので、その人の伝で何とかしますよ」 「大丈夫?まさか危ない事じゃ」 「法律に違反するような事は何もありませんよ。まあ、色々と大変ではありますが」
乾いた笑いのハヤテに、ルカは少し悩み
「じゃ、じゃあさ。私の執事、やらない?」 「え!?」 「実はね、こっちでもアイドルやろうかなって、思ってるんだ」
そう言うと、少し間を空け
「私、アイドルやるのが好きだからね。凄く大変だろうけど、やりたいんだ」 「で、でも。ルカさんは」 「大丈夫だよ。確かに5年のブランクはあるよ。でも、これでも元トップアイドルだからね。5年のブランクなんて、あっと言う間に埋めてみせるよ」
笑顔のルカにハヤテは少し悩み
「でも、僕は」 「・・・」
渋るハヤテにルカは
「あのさ。自分で言うのもあれだけど、家事とか苦手なんだよね。料理もカップ麺位しか作れないし、バランス云々も計算苦手だし」 「そ、そうだったんですか?」 「お給料は何とか出すよ。だから、私の執事、やってくれない?」
ハヤテは少し悩み
「分かりました。ルカさんの執事なら、引き受けます」 「ありがと♪ああ、後ね」 「???」
ルカは少し悩んでから
「さっきも言ったけど、こっちでアイドルやるでしょ?その為に事務所に所属が決まってるんだけど、マネージャーさんがまだなんだよね。そんな大きくない事務所だし」 「は、はあ」 「だからね、執事業とマネージャー業を兼任してくれない?ハヤテ君なら、全部任せられるし」
一生懸命拝むルカに
「了解しました。不肖綾崎ハヤテ、ルカさんを支えさせてもらいます」 「ありがと。ああ、呼び方は今迄通りでいいよ。「お嬢様」なんて呼ばれたら、背中が痒くなりそうだし」 「了解です」
2人とも残ってたお茶を飲み干し
「さて。じゃ、買い物行こうか。食材とか全然無いし」 「えっとお金は」 「持ってるよ。お小遣い程度、だけどね」
照れながら言うルカにハヤテは
「僕が出しますよ。日本を出る時、全財産をアメリカドルに換えてから、来ましたし」 「ん〜。じゃ、お願いしようかな」
その後、この日は特に何もなく、ハヤテはルカが借りている家に泊めてもらった。
× ×
翌日。 ハヤテはルカの現所属事務所に赴き、挨拶と昨日の事を説明していた。
「成程ねえ」
日本語が話せる社長はこう呟いた後
「家は大手の事務所じゃないから、助かるよ」 「良いんですか?」 「構わないさ。他の面々には私から言っておくよ」
豪快に笑い、ハヤテがルカのマネージャーになる事を許してくれた。
「まあ、でも。お給料は微々たるものしか出せんが、頑張ってくれ」 「それは勿論。ルカさんを全米に名を轟かせるトップアイドルにしてみせますよ」 「ま、それになりに期待しておくよ」
挨拶等を済ませ、社長室を出ると
「だ、大丈夫なの?大見得切っちゃったけど」 「ルカさんなら平気ですよ」 「そ、そうかな?」
若干不安そうなルカに
「ルカさんは、5年のブランクを埋める事だけ、考えててください。それ以外は僕の仕事です」 「そう?じゃ、頑張るよ」
ハヤテからすれば激務なのだが、ルカに心配かけない様に出来るだけ顔とかに出さない様にしようと、誓ったのであった。
× ×
数日後。
ハヤテとルカは買い物に行くために近くのスーパーに向かっていた。 すると、あと少しで着くと言う時に
「・・・」 「え、えっと」
英語で話しかけられ、ルカは困ってしまった。 普段はスマホの翻訳アプリで凌いでいたのだが、今日に限って忘れてしまい、英語も話せないので、言っている事も返し方も分からないのである。
すると
「・・・」 「え!?」
ハヤテが相手と普通に話し込んでおり、暫くの応答の末、相手はお礼を伝えて去って行った。
「驚いた。ハヤテ君、英語話せるんだ」 「ええ。前はそんなに得意ではありませんでしたが、5年の間練習してたもので」 「へ〜」
感心した後
「って、待って。なんでまた」 「日本に、帰るつもりがありませんから」 「そ、そうなんだ」
深くは聞けなかったが、何となくで
「(きっと、私の無実を晴らした後、日本を出るつもりだったんだろうね)」
っと察していた。
買い物を済ませ、帰宅後
「ねえハヤテ君、お願いが」 「夕飯のリクエストですか?」 「そうそう。今日はね〜、って違〜う」
思わずノリツッコミした後、
「ハヤテ君はさ、英語を話せるし、読み書きも出来るんでしょ?」 「え、ええ。完璧に、ではないですが」 「十分でしょ。 でさ、私に教えてくれない?英会話も、読み書きも」
ルカは言い切ると、直ぐに
「アイドルとしてデビューする以上、それ位出来なきゃ絶対に無理じゃない?」 「絶対とは言いませんが。まあ、不利にはなる可能性も」 「でしょ?教えてよ」
必死の形相のルカに
「良いですけど、多少は厳しめになると思いますが」 「覚悟の上だよ。まあ流石に、前みたいに「坂道の上から押して強引に覚えさす」なんて事はしないだろうし」 「ま、まだ根に持ってたんですか」
以前ハヤテが敢行した「自転車を乗れるようにする方法」の事です。
「あれ、本当に怖かったんだからね」 「あ、謝ったじゃないですか」 「う、煩い!!ともかく、教えてよね。ご主人様の命令です」
ぷんぷんと可愛く怒るルカに微笑み
「了解です」 「うん、宜しい」
× ×
ハヤテとルカがアメリカに渡って1ヶ月程経った。
「はあ〜。なかなか仕事が来ないね〜」
夕食後、ティーブレイクをしていた時、ルカが思わず呟いていた。
「仕方ないですよ。地道に行きましょ」 「分かってるけどさ〜」
一応仕事はゼロでは無いのだが、名前を憶えてもらえるような仕事ではなかった。
「アイドルには下積みも大切ですよ」 「分かってます〜。日本でもたっぷり経験済みです〜」
ブ〜ブ〜と文句を言うルカをハヤテは後ろから抱きしめ
「大丈夫ですよ。この僕が、ルカさんの魅力を全米に分からせてあげますから」 「も、もう////////////////////////じゃあ、頼むよ〜////////////////////////////////」 「勿論」
離れたハヤテにルカは
「(正直、そこまで売れなくても良いかな。ハヤテ君と一緒にいられるもんね)」
ハヤテへの恋心を再燃させた今となっては、こう思っていた。
----------------------------------------------------------------------------------- 以上です。
次回は続きです。
では。
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Re: 殺人犯水蓮寺ルカ 短編 (7月14日更新) ( No.10 ) |
- 日時: 2018/07/14 15:30
- 名前: masa
- こんにちはmasaです。
本編の更新です。
どうぞ。 -----------------------------------------------------------------------------------
前回、ルカはハヤテに執事とマネージャーを兼任してもらい、英語も教えてもらう事になった。
それから暫く経って
「あ〜、暇だね〜」
ある日の夕食後、ルカは思わず呟いていた。
「仕方ないですよ。下積みと言うのは、長いと駄目ですが、無いのはもっと駄目なんですから」 「分かってるよ〜。私の下積み経験値、なめるなよ〜」 「分かってるなら愚痴らないでくださいよ」
小さな仕事はあるものの、大きな仕事には恵まれず、名声を得るには程遠かった。
「何とかならないもんかな〜」 「それは僕の仕事なので、ルカさんは何時でも自分の力を発揮出来る事だけを考えててください」 「はいはい」
後片付けをしているハヤテの後姿を眺めつつ、ルカは
「(我儘を言えば、売れて欲しいのは本当なんだよね。でも、今のままでも満足している私がいるのも事実なんだよね。大好きなハヤテ君と2人きりだし)」
こう思っていた。
因みに、ハヤテの教育方針で日常的に英語で話すように努力しています。 つまり、今迄の会話も殆どが英語です。
× ×
数日後。
「う〜っ、死ぬ程暇だ」
仕事も無く、ハヤテは仕事の為、家で退屈していてこう呟いていた。 どうやって持て余した暇を解消しようか考え込んでいると
「ルカさん、大変です!!」 「うわっ!!ビックリした!!」
突然ハヤテが帰って来て、大声を上げたのでルカも思わず声が大きくなった。
「な、なに!?急に」 「あ、すみません。ってそれより、朗報です!!」 「へ!?」
理解出来ないルカにハヤテは
「決まりましたよ。大手オーディション番組に出演が」 「え!?それってどんな番組?」
ハヤテに聞いた番組名を聞いてルカは
「そ、それって、大丈夫なの?」 「そ、それは」
ハヤテがとってきた仕事は、歴史ある有名番組で、その番組出身の超有名歌手も沢山いる程である。 しかし、合格者はかなり限られており、「1年近く合格者無し」っと言う記録も残っている程、厳しい物なのだ。
「ルカさんなら大丈夫ですよ」 「こ、根拠は??」
ハヤテは笑みを向け
「一兆万人のファンがいるアイドルだから、ですよ」 「も、元だよ。そ、そりゃそうだけどさ」 「ルカさんの実力は、世界最高クラスですよ。自信持ってください」
ハヤテの笑顔にルカの不安はだいぶ和らいだものの
「因みに、断る事は」 「無理です」
有無を言わせぬ笑顔にルカは溜息をつくしかなかった。
「幸い、本番まで少しとは言え、日があります。練習しましょ」 「あ〜、もう!!!やればいいんでしょ!!」
やけくそで言い、覚悟を決めるしかなかった。
× ×
そして本番当日。
「う〜っ、緊張して来た」
ルカ以外にも受験者はおり、全員同じ面持ちだった。
「大丈夫ですよ。ほら、深呼吸」 「う、煩いな!!分かってるよ」
緊張から来るストレスで少々口調が荒々しかったが、ハヤテは気にせず
「あ、もう本番ですね。僕は客席で応援してるので、頑張ってください」 「わ、分かった」
遂に本番が始まり、ルカの出番は何の因果か最後だった。
「(始まっちゃったよ〜。ど、どうしよう)」
ハヤテのお陰で英語は大分分かる様になっていたので、問題は無かったのだが、緊張は隠せなかった。
「(うわ〜、皆上手いな〜)」
素直に思ったのだが、審査員の顔付は鈍いもので、中には始まって直ぐにも拘らず、首を横に振られた受験者もいた。 そして
「次で最後です。ミスルカ・スイレンジ〜」 「(わ、私だ)」
ルカは軽く挨拶し、選曲を伝えると歌い始めた。 すると、会場は静まり返った。 「酷評」「厳しい」「辛辣」っと言う言葉を擬人化したらこうなる。っと陰口を叩かれる審査員は特にだった。 当然、いい意味で、だ。
「あ、ありがとうございました」
歌い終え、挨拶すると会場のボルテージは一気に上がり
「素晴らしい」 「まるで女神だ」 「感動したよ」
審査員の口々にこういい、好評だった。
そして結果発表ではルカのみ合格で、久しぶりの合格者に司会者も興奮していた。
× ×
翌日からルカは猛烈に忙しくなった。
仕事の依頼が引っ切り無しに来て、ハヤテが対応に追われた。 幸い、ハヤテは有能なのでうまくスケジュールを組んでルカに可能な限り負担をかけない様にしていた。
「ルカさん、次の仕事まで時間がありませんよ」 「あ、うん。またよろしくお願いしますね」
ハヤテに急かされ、スタッフにお礼を言うと、急いだ
「急ぎましょう。時間に余裕がなくなります」 「了解」
ハヤテの運転する車に乗り、次の現場に向かう道中
「ハヤテ君、免許あったんだね。大丈夫なの?」 「ええ。5年の間に、取得しました。こっちでも使える免許なので、ご安心を。シミュレーターで、ですが、練習もしましたし」 「やっぱ、凄いね」
感心しつつ、次の仕事に備え、準備を始めた。
「しかし、君の担当しているミススイレンジは凄いね」 「ありがとうございます」 「なんでまたアメリカに?日本でも十分に活躍が出来ると思うんだが」
収録中、お偉いさんに話しかけられ、こう聞かれたがハヤテは少し悩み
「あまり、触れないでほしいっと言うのが本音ですね」 「ま、良いけど。彼女のお陰で番組の視聴率、良いし」
実際、ルカが出る番組は高視聴率連発で、低迷の危機から脱した番組も多かった。 視聴者からも
「素晴らしい歌だ」 「女神が日本から降臨なされた」 「彼女を神格化したい」
っと言うありがたい意見もあった。 まあ、酷評意見も少なからずあるのだが。
× ×
「はあっ、疲れた」
久しぶりの休日を謳歌しているとき、ルカが思わず呟いていた。
「大丈夫ですか?大分お疲れが溜まっているように見えますが」 「平気だよ。これも慣れっこだし」 「無理は止めてくださいね」
ハヤテの出したお茶を飲み、ルカは
「私ね、ハヤテ君を執事兼マネージャーにして良かったって、本当に思うよ」 「え!?」 「だって、スケジュール管理もちゃんとしてくれるし、私生活も支えてくれるし」
言われたハヤテは
「それが僕の使命ですから」 「ともかく。ありがと、本当に感謝してるよ」 「・・光栄です」
これ以上は食い下がらず、お礼を伝えた。
「これからも頼むよ、執事君」 「了解です」
家事に取り掛かったハヤテを見ながら
「(出来れば、夫婦になって、名実ともに支えてもらいたいな。子供も産んで、最高の幸せを得たいな)」
こう思っていた。
----------------------------------------------------------------------------------- 以上です。
次回は続きです。
では。
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Re: 殺人犯水蓮寺ルカ 短編 (7月14日更新) ( No.11 ) |
- 日時: 2018/07/15 21:21
- 名前: ささ
- お疲れさんです、ささです。
ところで日本での過去は一応漏れていないってことなの?(冤罪とはいえ投獄されたっていう) 元とはいえ1兆万人のファンを持つアイドルは伊達ではないな! あと、ハヤテのスケジュール管理能力も。これじゃあ原作含め多くの作品でぞっこんになる人が多いわけだ。(よかったね、ルカ。ハヤテ独り占め出来て。泥棒猫に取られないし。)
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Re: 殺人犯水蓮寺ルカ 短編 (7月16日更新) ( No.12 ) |
- 日時: 2018/07/16 18:51
- 名前: masa
- こんにちはmasaです。
レス返しの更新です。
●ささ さん
>>お疲れさんです、ささです。
ハヤテ「感想ありがとうございます♪」
>>ところで日本での過去は一応漏れていないってことなの?(冤罪とはいえ投獄されたっていう)
まあ、一応は大丈夫です。ハヤテや事務所が揉み消しを行っているので。 借りにばれても、ファンは離れませんけど。
>>元とはいえ1兆万人のファンを持つアイドルは伊達ではないな!
ルカ「でしょ〜? 凄いのだよ、私は」←ドヤ顔。
>>あと、ハヤテのスケジュール管理能力も。これじゃあ原作含め多くの作品でぞっこんになる人が多いわけだ。
ハヤテ「そ、そんな事は。まあ、大変な事は多々ありますけどね」 社長「彼には助けられてばかりだよ、本当に」
>>(よかったね、ルカ。ハヤテ独り占め出来て。泥棒猫に取られないし。)
ルカ「そ、そうだね////////////////////////ずっと一緒だし/////////////////////////」
実を言うと、ハヤテを狙う人は結構いたりします(ハヤテ・ルカは気付いていませんが)。
感想ありがとうです〜♪
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Re: 殺人犯水蓮寺ルカ 短編 (7月16日更新) ( No.13 ) |
- 日時: 2018/07/16 19:00
- 名前: masa
- こんにちはmasaです。
本編の更新です。
どうぞ。 -----------------------------------------------------------------------------------
前回、ルカはアイドルとして順調な道を進み始めた。
それから数か月後。
相変わらず目が回る程忙しかったが、ハヤテの管理のお陰でルカへの負担はかなり少なく、無事に仕事をこなせていた。 勿論、時々ではあるが半日や1日休みを取る事も出来ていた。
そんなある日。 今日はルカは休みであり、家で寛いでいた。が、ハヤテは仕事で事務所に出勤していた。 ハヤテが仕事をしていると、電話が鳴り
「はい、もしもし。 え!?」
電話の相手にハヤテは驚いたが、直ぐに立て直して話を聞いた。
「分かりました。本人と相談してから折り返しの電話をします」
こう返事をし、電話を切った。
× ×
帰宅後、ハヤテは直ぐに
「ルカさん、実は映画出演のオファーが来たんです」 「え、映画!?それって」 「ルカさんの女優デビュー作、って事になりますね」
補足するように言い、
「因みにですが、ルカさんは演技の経験は」 「な、無いよ。日本にいた時も含めて、だよ」
ルカが言うと、ハヤテは少し間を空け
「どう、しますか?一応返事は「保留」って事になってますけど」 「う、う〜ん」
ルカは腕を組んで長めに考え込み
「ハヤテ君はどう思う?私に演技、女優さんとしての才能って、あると思う?」 「僕の個人的感想ですが、ルカさんにその手の才能もあると思いますよ」 「う〜ん」
ハヤテに言われ、また長めの考え込み時間に入った後
「分かった。ただ、才能が無いようなら容赦なくクビにしていいって、返しといて」 「了解しました。 ああ、後。その映画の主題歌も歌ってほしいって言われてますよ」 「まあ、そっちなら少しは自身があるかな」
翌日、ハヤテはオファーしてくれた相手にOKの返事をすると、相手はかなり喜んでくれて、大ヒット間違いなしとまで言う程だった。 ・・ハヤテが「才能が無いならクビにしても良いっと本人が言ってた」っと言う部分は無視されたように。
× ×
それから数日後。
「ルカさん、映画の台本が届きましたよ」 「お、早速だね。どれどれ?」
事務所に来ていたルカにハヤテが届いた台本を渡し、読み始めると
「ちょ、ちょっと待ってよ!!私、主役になってるよ!!」 「あ、言い忘れてましたっけ? ルカさんは主役兼主題歌歌手ですよ」 「う、うう〜。ちょっとしか出番が無い脇役だと思ったのに〜」
唸るルカに
「辞めます?何とか出来なくはないですが」 「そ、それは駄目!!折角もらった仕事だもん。全身全霊で演じるよ」 「そうですか」
すると、仕事に戻ろうとしたハヤテに
「ね、ねえハヤテ君。コツとかって分かる?演技するさ」 「う〜ん。確かにドラマ撮影のお手伝いのアルバイトをした事がありますから、少しは分かりますが」 「じゃ、教えてよ」
ハヤテは少し悩み
「心の底から、その役になりきる事。らしいです」 「ふ〜ん。ま、何とかするしかないか」
それから2日程後
「ルカさん、今度は主題歌が届きましたよ」 「お、どれどれ?」
歌詞カードを見ながら仮歌を聞くと
「良い歌」 「一流の作詞家・作曲家に頼んだって聞きました」 「よ〜しっ、気合入って来た」
× ×
そして、ついに撮影初日。
「う〜っ、緊張して来た」 「ま、頑張りましょ」
ルカは台本覚えや稽古、主題歌の練習と並行して他の仕事もこなしており、多忙であった。
「だ、大丈夫かな?他の出演者は「誰でも知ってる超一流の役者」ばかりだけど」 「ルカさんは、自分の与えられた役を演じきればいいんですよ。下手に気を遣えば、それが迷惑になると思いますよ」 「だ、だよね」
ハヤテに励まされたおかげで気が大分楽になり、集中できた。 その後、監督や脚本家らしき人も来て、軽く説明を受けた後、撮影に入る事になった。
「さて、ミススイレンジのお手並み拝見っと行こうかな」 「そうですね」
2人の会話がハヤテの耳にも届き、出番待ちの他の出演者からは
「大丈夫なの?」 「所詮は歌や振付が上手いだけのアイドルだろ」 「話題作りの為だけに呼ばれただけよね」
っと聞こえてきて、ハヤテは「ルカに聞こえてないと良いけど」っと心配になった。
だが、撮影が始まるとハヤテの心配や他の出演者の余裕は吹き飛んだ。 当然いい意味で、だ。
ルカの演技力はとてつもなく良く、数多の役を演じて来たベテラン超一流女優と互角以上の演技力を見せつけていた。 当然その事でルカとハヤテ以外は一気に気合が入り、アカデミー賞が本気で狙える。っと、本気で言いだす面々も多々いた。
休憩に入ると共演者に囲まれ、「凄い」とか「神がかっている」とか「圧倒的な才能を持っている」とか「君には負けない」とか「負けない様に全力を出す」などの叱咤激励をいただいた。
その後は特に問題は無く、初日の撮影を終えた。
自宅への帰路の最中
「どうでした?今日は」 「分かんないよ。一応は感触はつかめたかな。良い意味でも悪い意味でも」 「そうですか。他の皆さんは、よく見てるみたいですけどね」
撮影中感じた感想を伝えると
「まだ初日だよ。まだまだ撮影は続くんだから、評価はどんどん変わるでしょ?」 「ま、ルカさんの人柄なら平気だと思いますけどね」 「そう?」
× ×
それから数か月後。
「以上で撮影は終了です。お疲れさまでした〜」
ルカのデビュー作となる映画の撮影は終わり、
「疲れた」 「お疲れ様です。大変でしたね」
楽屋で寛いでいた所、ハヤテが労った。
「とりあえず、暫くは演技の仕事は要らないかな。大変だよ」 「まあ、取り敢えずは仕事の依頼は来てませんが、分かりませんよ」 「そうだよね〜」
同意したルカに
「今回の映画の評価次第では、また来るかもしれませんよ」 「ま、その時はその時だね」 「・・ですね」
疲労はあったが、この日はまだ仕事があったので、打ち上げは断って仕事に向かった。
× ×
それから暫く経って、映画が公開された。
反響は物凄く 「女神ルカは演技も凄い」「子々孫々まで残すべき映画だ」「アカデミー賞を取れなかったら、絶対に賄賂が動いてる」「タイ○ニックやア○ターを超えるのは間違いない」 っと言う意見がSNSなどで広まり、全世界で公開決定がすぐに報じられた。
「す、凄いね、私が出た映画」 「興行収入も物凄い事になってますね。この勢いなら、本当に超えちゃうかもしれませんね」 「そ、そうなるかな?」
自分が出た映画で、しかも初めての演技だったので、自身は無い様だ。
それからと言うもの、有名監督に「是非私の作品に出てくれ」「君の演技力に惚れた」っと、今迄の仕事に加え女優の仕事まで舞い込み、ハヤテは今迄以上の激務に追われる羽目になった。 それこそ、「ルカは仕事が終わって帰宅出来るのに、ハヤテは中々出来ない」っと言った事態が何度も何度も起こった程だ。
「疲れた。急いで帰って、執事仕事しなきゃ」
この日も仕事終え、遅めに帰宅した。 すると
「あ、お帰り」 「ただいま戻りました。今から仕事を」 「ああ、良いよ、それは」
そう言うと、ルカは
「掃除とかもしちゃったし、食事の準備も出来てるよ」 「え!?」 「ハヤテ君、忙しいでしょ? ハヤテ君の執事業を見てたら、いつの間にか覚えちゃった」
テヘッと言う感じで言うルカに
「すみません。執事でもあるのに」 「気にしないで。ハヤテ君のお陰で私も気持ち良く仕事出来るんだからさ」 「そ、そうですか」
気に病んでそうなハヤテに
「言っとくけど、ハヤテ君と比べたら、全然だからね。料理だって、ハヤテ君の方が圧倒的に美味しいし」 「そ、そうですか」
それから数日後。
「ん!?どうしたんだい?」 「あ、いえ」
何時も通り、テレビの収録を見守っていたハヤテにプロデューサーが話しかけていた。
「彼女は凄いね。近いうちに、「本当の神様」になるかもね」 「ルカさんなら、間違いなくなれますよ」 「・・それは同意だ」
更に数日後。
「たっだいま〜っ」
かなり久しぶりに速い時間に帰宅出来たルカがテンション高く帰宅すると
「あれ?ハヤテ君? 出かけてるの〜!?」
先に帰ったはずのハヤテが家におらず、声をかけても返事は無かった。
「買い物かな? ん!?」
----------------------------------------------------------------------------------- 以上です。
次回は続きです。
では。
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Re: 殺人犯水蓮寺ルカ 短編 (7月18日更新) ( No.14 ) |
- 日時: 2018/07/18 20:01
- 名前: masa
- こんにちはmasaです。
本編の更新です。
どうぞ。 -----------------------------------------------------------------------------------
前回、ルカは女優としての道も歩み始めた。
「はあっ」 「ん!?どうかしたのかい?」
あるテレビ収録の合間の休憩中、ルカが溜息をついたので、ディレクターさんが声をかけた。
「あ、いえ。何でもないですよ」 「そうか?まあ、そういうなら」
そう言ったものの、やはり気になり
「そ、そう言えば。君のマネージャー、変わったんだね」 「・・・」
世間話のつもりで言ったが、ルカは服の胸部分を強めに握って、返答しなかった。
「き、聞いちゃ駄目だったか?」 「そ、そう言う訳じゃ無いですよ」
可能な限り笑顔を作り、
「辞めちゃったんです。それだけです」 「え!?な、何で!? 君達は、「恋人一歩手前若しくは恋人そのもの」って色んなスタッフの間で話題だったのに」 「分かりません。急だったので」
それっきり口を噤んでしまい、収録再開も間もなくだったので、これ以上の言及は止めた。
「(ハヤテ君。なんで)」
詳しい話は、数日前(前回の続き)に遡る必要があります。
× ×
帰宅したルカはハヤテが家に居ない事を疑問思っていると、テーブルの上に置手紙を見つけた。
「な、なに、これ?」
ルカは恐る恐るっと言った感じで中を見た。
「ルカさんへ 急な事で驚いたかもしれませんが、ルカさんの執事を辞めさせてもらいます。マネージャー業は、他の優秀な方に頼んであるので、ご安心ください。 辞める理由は「僕が居なくてもルカさんはもう幸せになれる」っと判断したからです。 自分勝手な思い込みかもですが、僕の判断は間違ってないと断言出来る気がします。 ルカさん、お幸せに ハヤテ」
「な、何よ。何なのよ!!!」
読み終わると、こう言うしかなく、誰にぶつけて良いのか分からない怒りも沸き上がった。
「あ、そっか。ドッキリだね。カメラどこかな〜」
せめてもの救いが欲しくて「わざとらしい演技」をしつつ探したが、隠しカメラの類は見つからなかった。 今度は焦りが生まれ、所属事務所に急行した。
「そうか。やはり」
社長を問い詰めると、そう言って難しそうな顔をした後
「ミスターアヤサキが、急に言って来たんだ。「辞めたい」って」 「り、理由は聞かなかったんですか!!」 「聞いたよ。う〜ん」
社長は少し悩み
「教えるよ。怒らないでよ」 「は、はあ」
一応返事をすると、語りだしてくれた。
「え!?辞めるの?」 「はい。急で申し訳ありませんが」 「う〜ん。ウチとしては君にいてくれた方が、嬉しんだがな」
引き留めようとしたが
「すみません。決めた事なので」 「・・・分かったよ。ルカちゃんのマネージャーは、何とかする」 「助かります。出来れば、○○さんにお願いしてください」
ハヤテの推薦に
「まあ、彼女なら大丈夫だね。 でも、もう引き留めないけど、せめて理由位は」 「僕が居ない方が、ルカさんが幸せになれると思ったからです」 「君がいた方が幸せになれると思うんだが」
こう言ったが、ハヤテには響かなかった。 ので
「ミスターアヤサキ、君は辞めてどうするんだい?」 「知り合いがいるので、その人の伝手で何とかしますよ」 「若しかして、日本に帰るつもりかい?」
社長が言うと、ハヤテは首を横に数回降り
「日本に、僕の居場所はありません。帰るつもりもありませんし。アメリカのどこか、ですかね」 「そう、か。分かった。 今迄ありがとな」 「こちらこそ」
話を聞き終わると、怒りは湧きあがらなかったが、悲しみは湧きあがった
「彼には事務所を大きくしてもらった恩がある。だから、尊重した」 「そう、ですか」 「すまないな。君にも感謝しているが、彼を止められなくて」
ルカは気にしてないと伝え、社長室を出た。
× ×
話を現在に戻します。
「皆〜、今日もありがと〜」 「うおおお」
ライブを終え、舞台裏に戻ると
「ルカさん、急いで着替えてください。次の現場まで時間があまりありません」 「はい!!」
急いでステージ衣装から着替え、マネージャー運転の車に乗り込んだ。
「間に合いそうですか?」 「何とかするわ」 「じゃあ、台本読んでますね」
マネージャーが変わってもルカの忙しさは全く変わらず、寧ろもっと忙しくなった。 別にハヤテが引き受けなかった仕事を引き受ける様になったからではなく、オファーが引っ切り無しだからだ。
「はあ、疲れた」 「ちゃんと食事取ってるの?」 「あ、はい。勿論」
一応補足するが、嘘ではない。忙しくても自炊はしていた。なぜなら「前みたいな失敗をするわけにはいかないから」っと言うのが半分。もう半分は・・・だからだ。
「引き受けたからには、私の全てを捧げてでも、貴方を支えるわ」 「あ、ありがとうございます」 「あ、私、レズビアンじゃないわよ。独身だけどね」
冗談かはさておき、ルカは笑っておいた。
それから数日後。
「(何なんだろう、この物足りなさは)」
相変わらず仕事は忙しく、休日は取れない程だった。 しかし、ルカ自身それに不平不満は全く無く、寧ろ「ありがたい」っと感謝していた。 だが、どれだけ仕事こなしても、忙しすぎる日々を送っても、心の虚しさっと言うか渇きは癒えなかった。
「(沢山仕事を貰えて、ファンの人達にも喜んでもらって。なのに)」
ファンイベントには沢山の人達が集まり、そのイベントの参加権を得られなかった人達が抗議デモを行い、過激な物に至っては逮捕者が数人出る程、ルカは人気を獲得していた。
逮捕者が出る事はルカ自身嫌だったが、どれだけ呼びかけても効果は希薄で、「諦める」っと言う選択肢を選ぶしかなかった。とはいえ、イベントを開催する際は必ず呼びかけていた。
こんな有り難い事があっても、ルカの心が満たされる事は無く、「心が空っぽ」っと言う比喩がピッタリだった。 ルカ自身、こんな事になっている理由は察していた。だが、それから必死で目を逸らし、仕事やファンへの感謝に打ち込む事で、心の渇きを無理やり癒していた。
× ×
そんな生活を送って3ヶ月が経とうとしたある日。
「ねえ、ルカちゃん」 「あ、はい」
機材トラブルで仕事が無くなり、次の仕事まで時間があったので事務所で寛いでいた時、マネージャーがルカに話しかけた。
「なんというか、満たされてる?」 「え!? まあ、大変ですけど、充実した毎日を・・」 「嘘ね」
一刀両断され、言葉に詰まるルカに
「今の貴方の心は、何もない。「心が飢えと渇きで苦しんでいる」って表現が、相応しい状態でしょ?」 「そ、そんな事無いですよ。沢山仕事頂いてますし、ファンの方々から応援してもらって、心が苦しいだなんて」 「はあ。貴方は本当に、嘘が下手ね。演技があんなに上手なのに、嘘となると素人以下って言える位下手になるのよね」
言い返したかったが、脳が「何も言い返すな」っと命令しているかの様に何も浮かばず、ただただ黙り込むっと言う行動に出るしかなかった。
「分かってるんでしょ?そんな状態になる理由が」 「・・・」 「嘘は止めなさい」
すると、ルカの中で何かが壊れ
「ハヤテ君ですよ!!!ハヤテ君が居ないせいで心が空っぽになってるんですよ!!!」 「・・やっぱ分かってたのね」 「認めたくなかったんですよ!!!認めたら、私のかの何かが駄目になる。そう思ったから」
泣きだしたルカに、マネージャーは
「どうして、彼が居ないだけでそうなるのかは」 「・・・」 「言っちゃいなさい。楽になりなさい」
この言葉でルカの中で、せき止めていた最後の何かが壊れた。
「好きだからですよ!!!ハヤテ君が!! likeじゃなくてloveって言い切れる位!!!」 「 please marry me って彼に言える位?」 「あ、当たり前じゃないですか!!!私の気持ちはそれ位真剣です!!!」
ルカが言い切ると、溜息をつき
「それ位しっかりした気持ちがあるなら、何で彼を探さないのよ。貴方が呼びかければ、ファンは必死で探してくれるわよ」 「で、でも」 「遠慮しちゃ駄目よ。ファンに頼むのが気が引けるなら、事務所が探してあげるけど」
悩むルカに
「貴方と彼は、相性は抜群よ。結婚しない方がおかしいって言える位」 「探して、もらえるんですか?」 「任せなさい。アメリカにいるのは間違いないんだから、何とかなるわ」
ルカは一瞬だけ迷い
「お願いします。ハヤテ君に会って、 please marry me って伝えたいです」 「了解。じゃ、社長にも言ってくるわ」
そう言うと、部屋を出て行った。
「ハヤテ君、きっと会えるよね」
窓際に立ち、空に向かって言った。
----------------------------------------------------------------------------------- 以上です。
次回、最終回。
では。
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Re: 殺人犯水蓮寺ルカ 短編 (7月20日更新) ( No.15 ) |
- 日時: 2018/07/20 18:50
- 名前: masa
- こんにちはmasaです。
今回で最終回です。
本編どうぞ。 -----------------------------------------------------------------------------------
前回、ハヤテが急に辞めてしまい、ルカはハヤテへの想いの強さを再度自覚し、探す事にした。
探し始めて1ヶ月程経った頃。 その間、ルカは仕事で忙しいので、捜索に加わる事は出来なかったが、見つかる事を祈り続けていた。
「あの、ハヤテ君は見つかりましたか?」 「まだよ。アメリカは広いもの。簡単には見つからないわ」 「そう、ですか」
落ち込むルカに
「絶対見つけるから、落ち込まないで」 「・・・」 「絶対見つけて、彼へマネージャー業を委任するわ。その方が、ルカちゃんの為になるでしょ?」
からかい交じりの言葉に、ルカは真っ赤になった。
それから更に1ヶ月程経ったある日。
「ある程度の情報は集まったわ」
マネージャーはルカに中間報告をしていた。
「見たって言う情報や噂を中心に、片っ端から調べた結果」 「見つかったんですね!!」 「まだよ」
喜ぶルカに冷静に切り捨て
「でも、信憑性のある情報だけだから、あと少しよ。確実に彼の足跡は辿れてる」 「ハヤテ君、早く会いたいよ」
× ×
ある日。
「ルカちゃん、見つかったわよ。ハヤテ君がね」 「え!?じゃ、じゃあ」 「ただね、「見つかっただけ」っていうの?彼の現状は掴めなかったわ。今の職業とか、それ以外にも」
報告を聞いたルカは
「現在地・現住所。それを掴んだだけ、ですね」 「ええ」
ルカの言葉に同意すると、かなり言い難そうな顔になり
「改めて聞くけど、会いたい?」 「え!?」 「若しかしたら、だけど。結婚して子供もいる可能性だってあるのよ?」
この言葉に胸を締め付けられる感じがした
「知ってると思うけど、彼はモテルわ。イケメンだし、優しいし」 「覚悟は、出来てます。でも、どうしても会いたいんです」
ルカの強い目に
「結婚してたとしても?」 「その時は、その時です。あって、話して、祝福して、何時も通りの私に戻る。それだけです」
悲しみ・苦しみ・覚悟。それを内包させた目のルカに
「ここが、彼の居場所よ。その覚悟なら、大丈夫ね」 「ハヤテ君」 「・・送るわ。行きましょ」
× ×
ルカは調べ上げてくれたハヤテの現在地近辺に来ていた。 暫く隠れて待っていると
「(あ、あれは)」
最後に見た時と比べて少し逞しくなっていて、かっこよさに磨きがかかっていた。 少し悩んだが、1人で、電話等している様子は無かったので
「ハヤテ君!!」 「え!? ル、ルカさん」
ハヤテはルカの来訪に驚いていた。
「やっと、見つけたよ」 「何しに、来たんですか?僕なんかの所に」
冷たい口調にルカは一瞬たじろいだが、
「何しにじゃないよ!!会いに来たんだよ!!」 「・・帰ってください。スーパースターが見つかったら、大騒ぎです」 「ま、待ってよ!!」
立ち去ろうとしたハヤテを後ろから抱きしめて、引き留めた。
「こんな所、パパラッチに見つかったら、何を書かれるか」 「関係ない!!その時は、全部捨てるよ!!」
ルカの言葉にハヤテは
「ここじゃあれです。人気の無い近くの公園に行きましょ」 「・・うん」
移動割愛。
「で?ルカさんはどうして」 「会いたい。会って話したい。 それだけじゃ、駄目?」
真剣な眼に
「その話とは?聞きますから、それが終わったら帰ってください」 「帰らないけど、話もする」
少し悩み、ルカは
「ハヤテ君はさ、今何やってるの?」 「働いてますよ。今はとあるセレブの方の執事を通いでしています」 「やっぱ、ハヤテ君は執事なんだね」
嬉しそうに言うと
「じゃ、じゃあさ。恋人とか、結婚は?」 「口説かれる事はあります。かなり直接的、ですからね」 「ま、まさか」
不安そうなルカにハヤテはその理由に気付かずに
「恋人はいませんし、結婚もしてません。まあ、今執事をしている家の娘さんには熱心にアプローチされてますが」 「そ、そうなんだ。よかった」
「良かった」の部分はハヤテには聞こえず、ハヤテはルカが安心している理由は分からなかった。
「ルカさんの事は、テレビで見てましたよ。雇い主の方がファンなので」 「そ、そうなんだ。ねえ」 「テレビで見ていて、分かってました。今の貴方は、幸せだと」
ハヤテは一旦間を置き
「僕の判断は、間違ってなかったみたいですね。やっぱり、僕が居ない方がルカさんは幸せなんですね」 「・・・」 「もう、帰ってください。見つかる前に」
ハヤテはベンチから立ち上がり、帰ろうとした。 しかし、ルカは急いで立ち上がってハヤテの前に立ち塞がった。
「私が、幸せ?本当にそう見えるの?」 「ええ、見えます」
そう言うと、ルカは一旦俯いた後
「駄目だよ。私の幸せは、ハヤテ君が居ないと、生まれないよ。 前に言ったよね?2回も。私の事を幸せにしてくれるって。 そんな事言ったなら、責任取って幸せにしてよ!! 私、ハヤテ君が居ないと駄目なんだよ。心からの幸せになれない。 だから、私とずっと一緒にいて、私の事を幸せにして!!」
ルカが言い切ると、ハヤテは苦笑いを浮かべ
「なんだか、逆プロポーズみたいですね」 「逆プロポーズだよ」
言い返すと、ハヤテにキスした。勿論唇を奪う様に。
「前はね、諦められた。でも、今度は無理。だからね、ちゃんと言うね。 please marry me 」
真面目に言うルカに
「駄目ですよ」 「な、何でよ」
食い下がるルカに
「僕の手は、穢れてます。無実を証明する為とは言え、違法な事もしましたし、時には強引な事もしました。そんな僕じゃ幸せには」 「出来るよ!! 穢れてる。そう言ったよね? 私だってそうだよ。無実だったとはいえ、5年も刑務所暮らし。この事実は消えないよ。タイムマシンだってないし、消せないよ」
真剣に言うルカに
「でも、やはり僕じゃ」 「じゃあ、誰も私を幸せに出来ないよ。ずっと、不幸なまま生きて行かなきゃいけない。そんなの嫌だよ」
ルカは一旦間を置き
「ハヤテ君は平気なの?5年もかけて無実を晴らした相手が不幸なままでも」 「そ、それは、嫌ですが」 「だったら、幸せにして!! please marry me だよ」
再度言ったルカに
「なんか、色々と逆ですね」 「だ、誰のせいだと」 「 please marry me これでお相子です」
驚くルカに
「僕が、責任もって幸せにするよ。これでいいんだろ?ルカ」 「勿論だよ。よろしくね、ハヤテ」
お互い導かれる様に抱き合い、キスした。
「エヘヘ♪」 「////////」
笑顔のルカにハヤテは今更照れが出たのか、真っ赤になっていた。
「ねえハヤテ、戻って来てよ。旦那とマネージャー業を兼任して」 「分かったよ。雇い主さんは何とか説得してみせるよ」 「うん。いざとなったら、私も説得に回るからさ」
お互いに自然と笑顔になり、一旦分かれる事になった。
ルカが現マネージャーと事務所社長に報告するととても喜んでくれて、祝福もしてくれた。
しかし、ハヤテの方は大変だった。家主はかなり渋り、「給料を倍出すから辞めないでくれ」っと言われたがハヤテは引かず、何とか説得出来た。 だが、娘の方はもっと大変だった。ハヤテへの強い好意を持っているため、「辞めるなら死んでやる!!」っとまで言い出す程だった。何とか辛抱強く説得し、やっと許してもらえた。
ルカが結婚を発表した事で驚かれたが、相手がハヤテだと知ると9割以上の人が納得してくれた。元々そう言う噂が飛び交っていたからだ。 因みに、許してくれなかった人は「相手がハヤテだから」っと言う理由だった。つまり、「ルカを応援しつつハヤテを狙おう」なんて考える人が男女問わずいたからだ。 まあ、デモなどは発生しなかったため、そこはハヤテもルカも喜ぶところだった。
× ×
数年後。
「パパ〜♪」 「コラハルカ!!ハヤテに抱き着くんじゃありません」 「嫌です〜♪」
2人の間には娘が生まれ、ルカの血を色濃く受け継いだためか、超ファザコンである
「パパ大好き♪私が大きくなったら、ママと別れて私と結婚してね♪」 「それは出来ないよ。僕はルカの事が大好きだし」 「ム〜。絶対私に振り向かせるもん」
娘の言葉にルカは
「そんな事、絶対にさせないわよ。ハヤテは死ぬまで私の旦那様よ」 「ふ〜んだ。絶対にパパと結婚するも〜ん」
睨み合う2人に、ハヤテは慣れていたため
「ルカ、そろそろ出かけないと。仕事だよ」 「あ、それもそうね」
出掛ける準備はもう終わっていたので
「ハルカ、留守番よろしくね。知らない人が来たら、絶対に開けちゃ駄目だよ。何時もの人が来てくれるから、その人以外では鍵とか開けないでね。必ず確認してから鍵を開ける事」 「分かってるよ〜。何時もの事だもん」 「うん、いい返事だね」
ハヤテに頭を撫でられ、ハルカは笑顔になり
「パパ、早く買ってきてね。 あ、ママは帰ってこなくていいから」 「私だって帰ってくるわよ!!」
文句を言いつつ家を出て。
「色々あったけど、私、今幸せだよ」 「そう。それは良かった」
娘がいるとどうしてもイチャイチャ出来ないので、居ない瞬間を狙ってイチャイチャしているのだ。
「これからもよろしくね、ハヤテ」 「こちらこそ」
ハヤテとルカ、2人はとっても幸せだ。
----------------------------------------------------------------------------------- 以上、完結です。
休止中の長編は、近いうちに再開させます。
では。
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Re: 殺人犯水蓮寺ルカ 短編 (7月20日更新) 完結 ( No.16 ) |
- 日時: 2018/07/25 18:44
- 名前: ハヤ太
- お疲れ様です。
happy end でよかった〜と安心しました。 でも、 あの ルカの執事 っていうのがハヤテ君なら、一生 ルカの執事 にしておくのもいいかもしれませんね。(マリア風)
ところで、ナギたちはその後どうなったのですか? 少し気になります...
楽しく読ませていただきました。 ありがとうございました。
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Re: 殺人犯水蓮寺ルカ 短編 (7月20日更新) 完結 ( No.17 ) |
- 日時: 2018/07/27 18:35
- 名前: masa
- こんにちはmasaです。
レス返しの更新です。
●ハヤ太 さん
感想ありがとうございます♪
>>お疲れ様です。
ありがとうございます。何とか頑張れました。
>>happy end でよかった〜と安心しました。
実は、BAD ENDも考えてはいましたが、没にしました。
>>でも、 あの ルカの執事 っていうのがハヤテ君なら、一生 ルカの執事 にしておくのもいいかもしれませんね。(マリア風)
まあ、その方がこの小説でのルカの為になりますからね。ハヤテもルカの執事を辞めようって思わないでしょうし。
>>ところで、ナギたちはその後どうなったのですか? 少し気になります...
ナギ達に関しては「読者様のご想像にお任せします」ですね。
>>楽しく読ませていただきました。 ありがとうございました。
こちからこそ、感想感謝してます♪
感想ありがとうです〜♪
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