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女神と共に第三部 3rd (6月22日更新)第四部へ
日時: 2015/10/03 17:12
名前: masa

こんにちはmasaです。

今回からこのスレで更新していきます。

では本編どうぞ。
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前回、ナギは面白い漫画を描くために旅に出ることにし、伊澄の案内で京都に行くことにした。


「成程。そう言う訳か」

いきなりこう言ったのはカユラである。

「作者の説明した通りだ。私は何としても勝たねばならんからな」

ナギの真剣な表情にカユラもつられて真剣な表情になり

「確かに、実体験を元にした漫画は面白いからな」
「だからこそ、なのだ」

カユラは少し間を置き

「でも、なんで京都なんだ?別に箱根とかでも良かったんじゃないか?」

この質問にナギは腕を組んで考え

「それも悪くはないが、箱根じゃ近すぎる。旅に出る意味は半分以下になる」
「そっか。で、所持金の残りは幾らなんだ?話を聞くうえじゃカードも携帯も無くて、それくらいしかないんだろ?」

聞かれたナギは財布を取り出して中身を確認し

「2万3千円だ」
「やれやれ。助けてやるから、家に来い」

そう言って歩き出そうとしたカユラを引き留め、

「気持ちだけ受け取っておくよ。誰の力も借りたくないんだ」
「気持ちは理解出来なくもない。でも、それは止めておけ」

そう言うと、カユラは隣の建物を見上げ

「ここ、北海道なんだぞ。ここからどうやって、誰の力も借りずに京都に行くんだよ。所持金2万3千円の奴が」

カユラの正論にナギは黙り込み

「伊澄、京都を目指していた我々がなんで北海道にいるんだよ」
「お、おかしいわね。記憶していた京都への道順に従ったはずなんだけど」

伊澄の様子にナギは「またか」と思いつつも

「結局、迷子って事だよな。私達は」
「そ、そうみたいね。ごめんなさいね」

素直に謝った伊澄にナギは頭を抱えるしかなかった。
すると、ナギはあたりをきょろきょろしているカユラに気付き

「ハヤテならいないぞ」
「な!?なんで綾崎君の名前が出てくるんだよ!!」

慌てるカユラにナギは

「じゃあなんで、きょろきょろしてたんだよ」
「そ、それはあれだ」
「あれって?」

訝しげな視線を向けてくるナギに

「悠太っちを探したんだ。お前さんの旅に同伴しないのはおかしいと思ってな」
「ほほ〜う。悠太を」

ナギはニヤニヤと不敵な笑みを浮かべ

「あ、ハヤテだ。お〜い」
「き、来てたのか。だったら実家に」

嬉しそうに振り返ると、当然?ハヤテは居なかった。

カユラは「しまった」っと思いつつナギの方へ振り替えると、ナギは「やっぱりか」みたいな顔をしていた。

「こ、これはだな」
「無駄だよ。この状況で気付かないのはハヤテぐらいなもんだ」

カユラは観念し

「何時だよ。何時から気付いてたんだよ」
「まあまあ最近だよ。確信は無かったが、ハヤテへの態度は他と違うからな。だからだ」

ナギの言葉にカユラは若干顔を赤くしつつ

「い、言うなよ!!!!!私は時期を見てるだけだ。近いうちに必ず告白するつもりでいるからな」
「分かったよ。それより、悠太達への報告はしておいてくれ。後、悪いが協力もしてくれ」
「ヘイヘイ」

2人の会話を聞いていた伊澄は

「(これは、益々頑張らないといけないわね。カユラさんまでハヤテ様を狙っているとなると、並みの努力じゃ足りなさすぎるわね)」

と、カユラへの警戒心を持つことにした。


あ、一応ここで補足しておきます。カユラが北海道にいた理由は、夏休みなので帰郷していたためです。


                    × ×


「やれやれ。やっぱりか」
「悠太君、誰からの電話だったんですか?」

三千院家に残った悠太が電話を切ると、直ぐにマリアさんに話しかけられた。

「カユラからですよ。お嬢様たち、京都じゃなくて北海道にいるみたいっすよ」
「そうですか」
「予想通りと言うかなんというか。やれやれ」

悠太は呆れるだけだったが

「(チッ、クソが!!!!!!!!!早速ハプニング起こしやがって!!!!!!!!!何事もなく京都について、何事もなく帰って来いよな!!!!!!!!!!!俺様の邪魔が本当に好きみたいだな、あいつらは!!!!!!!!!!!)」

とか思った人がいたそうだ。


                     × ×


「へー。ここがカユラの実家か」

カユラの実家は高そうなマンションだった。

「泊まっていくか?2人位なら何とかなるが」
「すまないが、急ぎたいんだ。出来る事なら今日中に京都に着きたいし」

エントランスに入ると、大きめの声が聞こえてきた。

「クライアントの方はもう来てるんだよ。だから」

電話をしている男性にカユラが近付き

「どうした、親父殿」
「おお、カユラか」

カユラの父親のようで、電話を切りつつ

「実は、海外からクライアントの人が来てくれてさ。でも、通訳の人が倒れちゃったらしくて」

見ると、スーツを着た外国人が待っていた。

「おお、そうだ。カユラ英語で来たよな?通訳してくれ」
「わ、私がか!?」

突然の事に驚くカユラに

「頼むよ。このゲームには社運がかかってるんだよ」

こう言ったカユラ父の言葉にナギは

「カユラの家ってゲーム会社なのか?」
「小さいけどな」

返事しつつ、待ってた外人に話しかけたが

「分からん」
「お、おいおい。頑張ってくれよ」
「無理言うな。発音が聞き取れん」

親子の会話にナギが

「それはオーストラリア英語だよ」
「「え!?」」

ナギはオーストラリア英語で話しかけていた。

そこへ伊澄が

「オーストラリア英語は発音が普通の英語と違うので、一般的なヒアリングでは聞き取れないんですよ」
「成程。ところで、君たちは?」
「友達だよ」

カユラが答えると、ナギが

「よければ通訳しましょうか?」
「悪いね。頼むよ」

頼まれたナギは再度外国人の方へ向き直り

「では、お話してもいいですか?」
「お願いします」

外国人は置いてあったパソコンを見ながら

「いただいた予算で、こちらのゲームを作りました」

ナギは言われたとおり、通訳した。

「おお、凄いな」
「だろ?なんせ、予算が10億円もかかってるんだ。売れなかったら、終わりだからな」
「じゅ、10億!?」

予想外の桁にカユラは驚いていたが、ナギは

「よく出来ていますって」
「それはよかったです」

重要な所だけ抜粋して通訳した。

「ここからが本題なので、きちんと伝えてほしいのですが」
「は、はあ」

身構えたナギに

「このゲーム、グラフィックは最新技術を活用し、最高の出来にしました。ですが、肝心のAIが搭載できませんでした」

予想外すぎる言葉にナギは絶句するしかなかった。

「「拘った内容にしたい」という趣旨に賛同し、予算も抑えようと努力しましたが、残念ながら、足りませんでした。AIを搭載させるとなると、最低でもあと5億は必要です。AIが無いと遊べないので、予算の都合をつけてほしいと伝えてほしいのですが」

絶句するナギに剣野親子の会話も聞こえてきた。

「いやあ。10億で完成してよかったよ。これ以上は1銭も出せないからさ」
「そうか。良かった良かった」

喜ぶ親子に会話の内容を伝えられないでいると

「それで、彼はさっき何と言ってたんだい?」
「あ、えっと」
「「分からない」っていうのは止めてくれよ。このゲームの発売が中止なんてなったら、おじさん首をくくらないといけなくなるからね」

ナギは益々真実を伝えづらくなり

「まあ、それより。早く通訳してくれよ」
「えっと、「面白いゲームが完成してよかったです」だそうです」
「そうかい。良かった良かった」

ナギには真実を伝える度量は無かった。


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以上です。

次回は続きです。

では。
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Re: 女神と共に第三部 3rd (10月6日更新) ( No.1 )
日時: 2015/10/06 15:45
名前: masa

こんにちはmasaです。

本編の更新です。

どうぞ。
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前回、ナギは色々手違いがあって北海道に行ってしまい、そこで帰郷していたカユラに会い、色々あった。


「ふあ」
「ん!?どうした?」

現在ナギ達は大型バスに乗っており、ナギは居眠りしていた。

「いやな、変な夢見た」
「へえ。どんなだ?」

ナギは言うべきか一瞬悩んだ末

「私の漫画が週刊連載したうえ、同雑誌で月間連載までされる夢だ」
「まあ、お前の漫画であれば、確かに変な夢だ」

ナギは溜息をついた後、

「なあカユラ、京都にはまだ着かないのか?」
「まだまだ全然だよ。まずは函館に行き、そっから新青森まで行って、そこで新幹線に乗らなきゃ京都へはいけないよ」

ナギは再度溜息をつき

「でもさ、バス代出してもらってよかったのか?一応礼は言っておいたけどさ」
「気にするな。通訳のお礼だよ。親父の厚意、受け取っておけ」

こう言われたが、ナギはまた腑に落ちず

「でもさ、伊澄が代わりに「AIがまだ未完成です」って伝えたら、親父さん青ざめてたぞ」

そう、ナギが言いづらそうにしていたので、伊澄が代わりに通訳内容を教えていたのである。

「まあ、借金することになるな。下手すれば、私の生活にも影響が出るな」
「だ、だったら」

カユラは読んでた漫画を閉じ

「ナギ、「人生何が起こるか分からないから楽しいんだ」って言うだろ?宝くじが当たるかもしれないし、な。だから、お前は気にするな」
「そ、そっか。これ以上はカユラの家族の問題だから介入は止めるが」

ある程度話が終わったので、カユラが通路を挟んで反対側の席に目をやり

「しかし、伊澄君まで寝るとはな。疲れてたのか?」
「さあ。座り心地がいいからじゃないか?この椅子が」

確かに、伊澄は気持ちよさそうに寝息を立てていた。


                     × ×


一方その頃、三千院家。

「あら?悠太君、何してるんですか?」

身支度を整えている悠太を見て、マリアさんが聞いていた。

「ああ、お嬢様の手助けに」
「へえ〜。一応聞きますけど、なんであなたが?」

一瞬でマリアさんの雰囲気が変わったが、悠太は気付かず

「俺は京都までの道筋知ってますし、実家が金持ちとはいえ、並外れって訳じゃないので、危険察知能力とかもあるので、大丈夫かと思ったので」

説明し終え、身支度の続きを始めた。

「(いい加減にしろよな!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!俺様が動いてナギの野郎を徹底的に邪魔してやろうとしたのによ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!てめえまで俺様の邪魔すんじゃねえ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!このゴミクズ野郎が!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!)」

とか思っていた人がいたそうだが、悠太は気付けなかった。

「じゃあ、俺行ってきますね。クラウスさん共々留守番お願いしますね」
「はいはい。でも、ナギが何処にいるのか知ってるんですか〜♪」

悠太は上を向いて少し考えた後

「先に京都に行って待ってようかと」
「へ〜」

またマリアさんの雰囲気が変わったが、やっぱり気付けず

「お嬢様は「強力な何か」を持っている人です。良くも悪くもその「何か」を専門機関にあるような超強力な磁石のように引き寄せるので、大丈夫ですよ。間違いなく、京都に行きつくので、待ってれば来ますよ」

悠太の解説に

「(貴様〜!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!てめえまで迷って大変な目にあって・・みたいな展開が期待できねえじゃねえか!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!俺様のコレクションの邪魔が本当に好きみたいだな!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!ええこら!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!)」

とか思った人がいたそうだが、悠太は知る由もなく、家を出た。


                   × ×


「京都か。まあ、無難に新幹線だよな」

悠太は携帯を取り出すと、時刻表を調べ、

「丁度いいな。うまい具合に東京駅への電車と京都への新幹線が並んでるから、思ったより、早くつけそうだ」

そう思い、最寄り駅で切符を買い求めた。


「京都か〜。久しぶりだな〜」

一方その頃、目的地の京都では・・

「いけないいけない。京都へはお仕事で来たんだった。浮かれてる場合じゃないわね」


                    × ×


一方その頃、ナギ達。

「しかし、中々面白い事がおきんな」

サービスエリアで休憩中ナギがぼやいていた。

「仕方あるまい。いくら実体験を元にするからって、旅に出たくらいじゃそうそう面白い事は起きないよ」
「そうだよな」

不満そうなナギにカユラは

「面白い事が起こりそうな方向へ自ら突っ込まなくちゃな」
「面白い事が起こりそうな方向、か」

そう呟くと、ナギは飲んでたジュースの缶をごみ箱に捨てた。

「さ、もう行くぞ。休憩時間も終わりだ」

カユラがバスに乗り込んで自分の席に座ると、

「乗り遅れとかありませんね?あっても自社では責任はとれないので」

添乗員の人がそう言うと、バスが発車した。

「まあ、旅は始まって間もないんだ。そう言うチャンスは意外とすぐに来るかもしれんぞ?」

そう言って隣の席を見たが、そこは空席だった。

「ええええええ〜」

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以上です。

次回は続きです。

では。
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Re: 女神と共に第三部 3rd (10月6日更新) ( No.2 )
日時: 2015/10/08 22:21
名前: ささ

ささです。
確かに通訳の件は重すぎるな。(13歳でなくても)
京都に行くはずが北海道って手違いでは済まないだろ!
悠太だからなぁ〜、ハヤテだったら自転車で京都へって言いたいのだが。
あっ、面白いことになった。
マリアさん、牧村さんのとこから猟犬型ロボを多数借りたいのですが(ナギを追いかけ回すため)
あと、悠太が迷子になる確率って、ナギがハヤテに関係なく自主的に登校する確率より少ないでしょ。
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Re: 女神と共に第三部 3rd (10月9日更新) ( No.3 )
日時: 2015/10/09 17:34
名前: masa

こんにちはmasaです。

レス返しの更新です。


 ●さささん

 >>ささです。

 ナギ「感想ありがとうな♪」

 >>確かに通訳の件は重すぎるな。(13歳でなくても)

 ナギ「だよな。プロでも伝えるかどうか悩むぞ」
 伊澄「ですよね〜」

 >>京都に行くはずが北海道って手違いでは済まないだろ!

 伊澄「そ、そんな事は。「ちょっと」間違えただけじゃないですか」
 悠太「どこが「ちょっと」だよ。真反対じゃねえか」

 >>悠太だからなぁ〜、ハヤテだったら自転車で京都へって言いたいのだが。

 悠太「当たり前だ。あんな化け物と一緒にしないでくれ」
 ハヤテ「ば、化け物って。そんな事は・・」

 >>あっ、面白いことになった。

 マリア「・・・」

 >>マリアさん、牧村さんのとこから猟犬型ロボを多数借りたいのですが(ナギを追いかけ回すため)

 マリア「あら♪良いですわね〜。さっそく100万台ほど奪・・借りましょう♪」
 帝「・・・やめろ。頼むから」
 クラウス「・・・頼む」

 >>あと、悠太が迷子になる確率って、ナギがハヤテに関係なく自主的に登校する確率より少ないでしょ。

 マリア「ですよね〜。本当に使えねえな!!!!!!!!!!!!このクソ野郎は!!!!!!!!!!!!!!!」

 悠太「・・・俺、何かした方がいいのか?」
 ナギ「止めておけ。話が進まん」


 ま、まあ。  感想ありがとうです〜♪

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Re: 女神と共に第三部 3rd (10月9日更新) ( No.4 )
日時: 2015/10/09 17:45
名前: masa

こんにちはmasaです。

本編の更新です。

どうぞ。
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前回、ナギ達はバスで一旦新青森を目指したのだが、途中のサービスエリア出発後、ナギがいないことに気付いた。


カユラがバスの車内で驚いているころ、ナギはサービスエリアのベンチに座ったままだった。

「(どうしよう、土地勘が一切ない北海道で迷子になった)」

こう思っていたものの、特に焦りとかは無かった。

「(バスに乗らなかったら、面白い事が起こるかもしれない。なんて思って、バスに乗らなかったら、本当に発車したか、あのバス)」

ナギは一応は考えがあって、ここに居るのである。

「これこそ、私が望んだものなのだ。漫画に出来そうな面白い事は、自らの手で作らねば」

そう宣言し、辺りを見渡した後、ポケットから財布を取り出し

「(幸い、お金はまだある。これで、京都にたどり着ければ、きっと)」

中身を確認し、ポケットに戻すと腕を組み

「まずは、どうすべきか、だ。まあ、手っ取り早くて無難なのは、タクシーを拾う事だな。お金はかかるが、やむをえまい」

そう言うと、駐車スペースを出て、道路に出た。
しかし、ここで冷静になったのか、

「待てよ。空車を探すべきなのだが、ここは高速道路だよな?じゃ、じゃあ来ないじゃないか。タクシーが来ても誰かが必ず乗ってるじゃないか」

頭を抱えたが、直ぐに

「仕方ない。こうなったら最後の手段だ。このまま歩き続けてタクシーが拾えるところまで行くか」

こう呟くと、ナギは出来るだけ端っこを心がけ、歩き出した。


                   × ×


10分ほど歩いたが、

「やれやれ。歩いても歩いても景色は変わらんな。正直、運転してたら、退屈すぎて眠くなりそうだ」

まだまだ余裕なのか、景色を楽しみながら歩いていた。

「そう言えば、北海道のどこかの道路では、車で走っていると、「知床旅情」が聞こえるって聞いたな。段差をうまく微調整して」

一応事実です。


そして、1時間ほど経ち

「流石に、疲れ始めたな。仕方ない。車とすれ違ったら、ヒッチハイクして函館まで行ってもらおう」

また暫く歩くと

「喉渇いたな。さっきのパーキングエリアで飲み物でも買っておけばよかった」

喉の渇きを感じ、周囲を見渡したが

「ここは、何処だ?高速道路を歩いていたつもりだったが、何時の間にか一本道の原野だ。コンビニなどの店も、販売機も無いから、手持ちのお金も紙屑同然だ」

ナギは思わずネガティブになったが

「いかんいかん。プラスに考えろ。マイナス方向に行ってしまったら、深みにはまるだけだ」

必死で思い直し、車とすれ違う事を期待して歩くのを再開した。


                    × ×


現実とは、非常である。

只々何事もなく、3時間が経過していた。

「流石に、疲れた。体力的にはある程度なら余裕はあるが、疲れた」

ナギが空を見上げると

「日が傾いて来た。もう夜か」

そう感想を漏らしつつ只々歩いていた。

「正直、ここまで歩けるとはな。鍛えてくれた悠太に感謝だよな。切っ掛けをくれたハヤテにも、な」

ただ何気なくこう思っただけだったが、ハヤテの事を思い出した事で

「そうだよな。頑張らなきゃ、勝負すら出来ない。そんな事は嫌だ。ハヤテを渡さない。「ハヤテのお嫁さん」は私のものなのだ」

こう決意し、ナギはまだまだ歩き続けた。


しかし、改めて言おう。「現実とは非常である」っと。

「い、何時の間にか夜になっていたな」

夜になっていて、街頭などないので、月明かりしかなかった。

「月明かりって、こんなに明るかったのか。いかに都会が眩しいのか分からされたよ」

こんな感想を浮かべつつ歩いていたが、

「もう、限界だ。7時間ぐらい歩いたかな」

その通りです。

「何なんだろうな、この気持ち。感謝の気持ちばかりだな。今の私には」

ナギの心には、今まで世話になった人たちへの感謝の念が浮かんでいた。

「きっと、こんな心境だったんだろうな。「食没」だったかな?これを修得直前のあの主人公の気持ちって」

誰の事かお分かりですね?

「歩かなきゃ。ルカに勝って、「ハヤテのお嫁さん」を手中にするために。だ、だが」

こう思ったが、膝から崩れ落ちてしまった。

「だ、駄目か。こんな極限状態に追い込まれるとはな。フッ、最期にいい経験が出来たよ」

ナギが思わず「死」すらも覚悟したその時、独特の機械音が聞こえ、見上げると飲み物の販売機。

「これは、天の助け」

こう思うと、すでに使い切ったはずの力が沸き上がり、販売機に駆け寄ったが、
「機械調整中につき、硬貨にてお買い求めください」
という張り紙があり、紙幣投入口は塞がれていた。

ナギは販売機に手をついて項垂れると

「仕方あるまい。このまま「死の運命」を受け入れようぞ」

と思ったとき、人の気配がし、見ると女性で、その女性は販売機でジュースを買って飲んでいた。

更に見ると、その女性は車で来ていた。

「きょ、京都まで乗せて行ってください」

ナギは藁にも縋る想いで目の前の女性に言った。


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以上です。

次回は続きです。

では。
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Re: 女神と共に第三部 3rd (10月12日更新) ( No.5 )
日時: 2015/10/12 16:20
名前: masa

こんにちはmasaです。

本編の更新です。

どうぞ。
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今回は、前回の続きではなく、ハヤテとルカに触れます。


前回より少し時間を戻し、悠太が京都へ向かった頃、天王州家使用人専用保養所の山小屋では

「あの、ルカさん。これは?」

テーブルの上に置かれた機械と少し変わった眼鏡を見ながらハヤテが聞いていた。
するとルカはドヤ顔しつつ

「ふっふーん。知りたい?」

こう言い切ったが

「いえ、別に」

ハヤテにこう言われてしまったので

「知・り・た・い!!!」
「すみません、知りたいです」

涙目で必死なルカにハヤテは聞くしかないと悟った。

「これはね、私が作った「俺が執事で執事が俺でマッシーン」だよ」
「な、なんですか、それ」

ハヤテは嫌な予感が拭えなかったが、好奇心に負けて聞くことにした。

「ナギが言ってたでしょ?面白い漫画は面白い体験から生まれるって」
「は、はあ」

ルカは立ち上がると窓際に立ち

「でも、私はアイドルちゃんなので、むやみに街中を歩き回れません」
「確かに」

ハヤテが合いの手を打つと、ルカは振り返り

「だからこそ、このマッシーンなのです」

ルカは機械と眼鏡を持ち

「こっちのメガネで見た映像は、こっちのヘッドマウントディスプレイでも見れるのである」

教授が生徒に講義するようにハヤテに言うと、更に

「勿論マイクも仕込んであるから、音声も聞けます。つまり、眼鏡をした人が体験した事をこのヘッドマウントディスプレイをした人も家から一歩も出ずに体験できる画期的なマッシーンなのである」

ルカは講義を終えると再度ドヤ顔で

「と言う訳で命名したのが「俺が執事で執事が俺でマッシーン」よ。大事な事だからもう一度「俺が執事で執事が俺でマッシーン」よ」

ハヤテは呆れるやら感心するやらで

「つまりですね、僕がこの眼鏡をかけて面白い体験をして来いって事ですか?」
「ご名答。っと言う訳で、早速行って来て。この山降りて」


                     × ×


ハヤテは私服に着替え、町に来ていた。勿論眼鏡をかけて。

「(面白い体験ねえ。そうそうないと思うけどね。ね、白桜)」
「(私に聞かないでくださいよ。まあ、マスターはトラブルを引き寄せやすい体質なので、そういう意味では大丈夫だと思いますが)」

白桜に言われたが、ハヤテは自信は無かった。

「ねえねえ。ハヤテ君の目線って面白いね。普段より高い位置で見れるから面白いし、街中のちょっとした汚れを気にしてるのが気付けて面白いね」
「そうですか」

ハヤテは場所を移動しようと立ち上がった。すると

「ハ〜ヤ〜テ〜様♪」

綾子に突然抱き付かれた。

「ハヤテ様〜。こんな所で会えるなんて運命ですわ〜♪」

子猫のように頬擦りしながらこう言うと、

「ハヤテ様」

間髪入れずにハヤテに大人のキスをした。

当然?眼鏡越しにルカにも見えていて

「(こ、この人は確か、神尾崎さん。なんでこんなところに)」

ルカは胸の内に激しい嫉妬の炎が燃え盛っているのに気づいた。

当然ハヤテも綾子も気付かず、綾子はキスを止めると

「あれ?ハヤテ様、今日は私服で眼鏡もかけていますねの」
「え、ええまあ。色々事情がありまして」
「フフ♪私服のハヤテ様も魅力的ですわ〜♪」

そう言うと、またハヤテに抱き付いた。

「ハヤテ君」
「な、なんでしょう」

ルカの声に強い殺気を感じ、綾子に聞かれないように声を潜めて聞いた。

「早くその人を引きはがしてよ」
「む、無理ですよ。神尾崎さんが満足して自主的に離れてくれないと」

過去の体験から綾子は簡単には離れてくれないので、ハヤテはこう結論付けているのである。

「ハヤテ様、誰かと話しているんですの?」
「あ、いえ。別に」
「ふ〜ん」

ハヤテは誤魔化したが、綾子は

「(この眼鏡、カメラか何かが仕込まれていますわね)」

気付いていた。

「ハヤテ様、折角運命的に会ったんですから、デートしましょうよ♪」
「そ、それは」

渋るハヤテに対し、綾子はハヤテの腕に抱き付き

「ほら、早く」

引っ張って行こうとしたが

「ハアイ、ダーリン♪」

今度はクリスが綾子が抱き付いていないほうの腕に抱き付いて来た。

「ダーリン、こんな所で会えるなんて、ディスティニーね♪」

綾子同様子猫のように頬擦りすると、ハヤテに大人のキスをした。

当然ルカにもこの光景は目に入り

「(こ、この人は、確かクリスティーナ・ディキソンさん)」

ルカはアテネに見せてもらった「ハヤテの婚約者候補」の写真を思い出しながら結論付けていた。
そして、綾子の時同様クリスにも激しい嫉妬の炎が燃え盛っていた。

「ハヤテ君」
「す、すみません。クリスさんも神尾崎さん同様自主的に離れてくれるのを待たないと」

ヒソヒソとルカに弁明していおいた。

「ホワイ?ダーリン、今日は私服に眼鏡ですね」
「ま、まあ。色々と事情が」
「お似合いですわ」

クリスは褒めると、ようやく綾子に気付き

「ミス神尾崎、いたのね」
「いましたわよ」

綾子とクリスはハヤテに抱き付いたまま睨み合っていた。
ルカはヘッドマウントディスプレイ越しにこの光景を見ていて

「(う、羨ましすぎる。私もハヤテ君に抱き付きたい)」

とか思っていた。
すると

「そう言えば。ハヤテ様、三千院さんが休業中のアイドルの子と勝負するって聞きましたわ」
「私も聞いたわ」

2人に聞かれ、ハヤテは悩んだが、

「まあ、その通りです。ナギさんは今度の夏コミで勝負することになってます」
「へ〜。そうなんですの」
「因みに、アイドルの人が勝つと、ダーリンの婚約者候補の座が手に入るとも聞きましたわ」

2人の異様な雰囲気に誤魔化せないと悟り

「は、はい。ナギさんが尽力すると約束もしました」

ハヤテは冷や汗を流し、只々嵐が過ぎ去るのを待つしかなかった。

「他に約束事とかしてないですわよね?ハヤテ様」
「ダーリン?」
「し、してないですよ。な、なに言ってるんですか」

誤魔化そうとしたが、勘の鋭い2人には十分で

「まあ、良いですわ。負けませんわよ、私は」
「私も負けないわ」

そう言うと、2人とも走って行ってしまった。

「(な、なんだったんだ。結局)」

ハヤテは何故2人が宣戦布告ともとれる発言をしたのか気付かなかったが

「(も、若しかして、さっきの宣戦布告、私に向けてしたんじゃ)」

ルカは気付いていた。


                     × ×


ハヤテは場所を変え、近くの公園に来ていた。

「さて。ルカさん、何か面白い事ありました?」
「別に」

先程の綾子たちとのやり取りでルカの機嫌は悪くなっていたが、ハヤテは気付かず

「あのさ。さっきの2人、いつもあんな感じなの?」
「え!?ええ、まあ」

ルカは唇をかみしめ、嫉妬を抑えていた。
すると

「あ、ハヤテ君♪」

声がして振り向くと、なぜか虫取り網を持った泉がいた。

「瀬川さん、こんにちは」
「うん♪それより、今日は私服に眼鏡なんだね」
「まあ、色々と事情が」
「ふ〜ん♪」

泉はハヤテの私服姿をまじまじと見ると

「ハヤテ君ってさ、私服も似合うんだね♪勿論眼鏡も♪」

ハヤテはただ単に褒めてくれたと思ったが、ルカは違い

「(ま、まさか。この人もハヤテ君の事を)」

泉の様子でこう察した。

「ねえねえ。ハヤテ君はこんな所で何してるの?」
「まあ、街をブラブラと。特に目的とかもなく」
「そうなんだ」

ルカはこれ以上嫉妬でどうにかなるのを避けようと、ハヤテに声をかけようとしたが

「じゃあ、私やる事あるからもう行くね」
「あ、はい」

それより早く、泉が言ってきた。

「あ、あのさ」
「??」
「今日は、会えて嬉しかったよ/////////////////////////またね」

そう言うと、泉は行ってしまった。

「ルカさん、どうします?まだ散策を続けますか?」
「もういいわ。戻って来て」
「え!?でも」
「いいの。戻って来てッてば」

ルカはこれ以上ハヤテが別の女の事と仲良くすることに耐えられそうになった。

「分かりました。戻りますね」
「うん」

返事すると、ルカは機械をはずし

「あれが、私のライバル達。 意地でも負けられない」

胸に手を当て、決意を新たにした。


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以上です。

次回は続きです。

では。
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Re: 女神と共に第三部 3rd (10月15日更新) ( No.6 )
日時: 2015/10/15 17:11
名前: masa

こんにちはmasaです。

本編の更新です。

どうぞ。
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前々回、ナギは北海道で彷徨い、偶然出会った女性に助けを求めた。


ナギが彷徨っていた頃、カユラは別のサービスエリアで悠太に電話していた。

「お、お嬢様がいなくなったって」

悠太は呆れるやら焦るやらであった。

「確か、函館直通のバスに乗ってたんじゃねえのか?」
「そうなんだが、「気が付いたらいなかった」ってな具合なんだ。魔術の類を使ったんじゃないかって」

悠太はナギがいなかった理由をなんとなく程度で察した。

「ともかくだ。伊澄と一緒に探す」
「ん!?伊澄もいるのか?」
「ああ。尤も、バスに乗ってからずっと寝てるが。たたき起こしてだな」

焦るカユラに悠太は

「大丈夫だ」
「へ!?」
「大丈夫だから、カユラはそのまま伊澄と一緒に京都に向かってくれ」
「しかし」

渋るカユラに悠太は

「お嬢様はああ見えて「何かを持っている人」だ。だから、間違いなく京都に行きつく。下手に探せば、お前さんまで迷子になる」

こう諭すと、更に

「俺も今京都に向かっている。だから、そこで合流しよう」
「分かったよ。悠太っちがそこまで言うなら、ナギを信じてこのまま京都に向かうぞ」
「ああ。待ってるぜ」

お互いに電話を切った。

「さてと。お嬢様はどんな方法で京都へ来るのやら」

そう呟くと、新幹線の自分の席に戻った。


                      × ×


一方のナギは無事に出会った女性の車に乗せてもらえ、京都へ向かっていた。・・が

「ぎゃあああああああ」

ジェットコースターであれば、申請さえすれば世界記録に認定されるほどの猛スピードで車は走っていた。

そして

「う、うう」

半ば気絶と言える眠りから覚めると、朝日が昇っていた。

「日本海、か?」

まだ朦朧とする意識を無理やり目覚めさせ、辺りを見渡すと

「これは、琵琶湖か。って事は、たった一晩で北海道から滋賀県までぶっ飛ばしたって事だよな」

冷静に状況を判断し

「生きてる。私、生きてるよ〜」

「生」に感謝していると

「そりゃ、生きてる。ランボルギーニだからな」

声が聞こえ、振り向くと助けてくれて、ここまで乗せてくれた女性が立っていた。

「ランボルギーニの最高速度は325kmだからな。だから、時速300kmで走っても問題は無い」

そう言うと、念押しなのか

「何の問題は無いさ」

そう言ったが、ナギは座っていたクッションを投げつけつつ

「法律的に大問題だわー。ボケーーー」

クッションをぶつけられた女性は

「命の恩人に何すんの」

文句を言ったが

「命の恩人どころか、仇になるところだったわ!!!」
「大丈夫だって。時速300kmぐらいじゃ死なないから」
「その速度で事故ったら即死だわ!!!!!」

軽い興奮状態のナギに女性は

「大丈夫よ。即死じゃなければ、私が治してあげるから」
「え!?あんた、医者なのか?」
「まあね。そう言えば、自己紹介がまだだったわね」

そう言うと、ナギと向き合い

「ドクター黒須。流しの医者よ」
「三千院ナギだ。助けてもらったのに、怒鳴って悪かったな」
「気にしてない」

握手をし、ナギは

「流しの医者だって言ってな」
「まあね。気に入った患者しか救わないって事。つまり、現代のブラック・ジャック先生かな」

自信満々に言われ、ナギは

「(自分でいうか!?ってツッコミをしたら負けだろうな)」

こう思い、

「そう言えば、言い出すチャンスが無かったから、今言うな。 助けてくれてありがとうな」

ナギは礼を伝えて頭を下げた。

「気にするな。一応は医者だから、困っている人を助けるのは義務だ」
「は、はあ」

ナギは
「さっきは気に入った人しか助けないって言ったのに」
と思ったが、言うのはやめておいた。

「さ、休憩が終わったら、行くわよ」

黒須さんはナギに買ってきた缶ジュースを差し出し、こう言った。

「でも、本当に京都まで乗せて行ってもらっていいんですか?私は函館まででよかったんだが」
「構わないさ。偶々、私もこっち方面に用事があったからな。ついでになる」

ナギはその用事を聞こうとしたが、黒須は朝日に向かって合掌していた。
合掌を終えると、ナギの方へ向き

「じゃあ京都に向かおっか」
「おー」


                      × ×


ナギが猛スピードに悲鳴をあげている頃、ハヤテは。

「ん?どうしたの?」

山小屋のテラスで星を見上げているハヤテを見つけ、ルカは話しかけた。

「悠太に電話を貰ったんですよ。ナギさんが北海道で迷子になったが、大丈夫だって。とりあえずは報告しておくって」
「そう」

ルカはハヤテの隣に腰かけ

「心配じゃないの?私の事はメイド長さんにでも任せて」
「大丈夫ですよ。ナギさんは、「持っている人」ですから。大丈夫だって信じてますから」
「ふ〜ん」

ルカは暫くの間星を見上げた後

「ねえハヤテ君、この際だから聞きたいんだけど」
「なんですか?」
「ハヤテ君は、アテネの執事を何時まで続けるつもりなの?」

聞かれたハヤテは少しの間沈黙した後

「それは、分かりません。今のアーたんは、僕無しでは生きていけないほどですが、万が一いなくなっても大丈夫だと思います。なので、ずっとってつもりはないです」
「・・・じゃあ」
「切っ掛けさえあれば、辞めるつもりでいますよ」

ハヤテの言葉にルカは

「その切っ掛けって?良ければ聞かせて」

ハヤテはまた間を空け

「僕の中で、切っ掛けは2つあると思ってます」
「2つ」
「一つは、「死」を迎えた時ですかね。死んじゃったら、流石に出来ませんからね」

ルカは不安そうに寂しそうなハヤテの横顔を見つめ

「もう一つは?」
「もう一つ、ですか」

ハヤテはまた間を空け

「すみません。忘れてください」

そう言うと立ち上がり

「もう寝ましょ。真夜中ですし」

そう言うと、小屋の中に入ってしまった。

「もう一つ、か。きっとそれは」

ルカはルカで察したようだった。
一方のハヤテは

「(もう一つは、ありえないだろうな、絶対に。だから、この切っ掛けは忘れておこう。その方がきっと)」

こう思っていた。


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以上です。

次回は続きです。

では。
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Re: 女神と共に第三部 3rd (10月18日更新) ( No.7 )
日時: 2015/10/18 17:00
名前: masa

こんにちはmasaです。

本編の更新です。

どうぞ。
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前回、ナギは助けてくれた黒須に猛スピードの車で悲鳴をあげつつ京都へ送ってもらっていた。


ナギが京都へ向かっていた頃、悠太は京都に着いていた。

「(さてと。京都に着いたはいいが、何するかな。お嬢様が来るまでまだかかりそうだしな)」

駅周辺を見て悠太はこう思い

「(観光でもして時間潰すか。1人でだけどな)」

こう思い、歩き出そうとしたその時

「悠太じゃない。こんな所で奇遇ね」

声をかけられ、振り返ると

「姉ちゃん」

悠太の姉で声優の真山美緒がいた。

「なんでここに?」
「お仕事よ。と言っても、機材故障の関係で、休みになっちゃったけどね。折角だから、観光でもと思ってここに居たのよ。悠太は?」

悠太は事情を説明した。

「成程、ナギちゃんがね」
「まあな。お嬢様の事だから、間違いなく京都に来れると信じているから、心配はしてねえけど」

悠太がこう言うと、美緒は少し間を置き

「で、悠太はどうするの?ナギちゃん、暫くは来れないんでしょ?」
「どうって。京都に来たんだから、観光でも。って思ってたんだが」

悠太が答えると、美緒が

「じゃあさ、一緒に回りましょ。スタッフの人も共演者の人達も忙しくて一緒に観光できなくてさ」
「そう、だな。1人で回っても面白さは半減しそうだし」
「でしょ?じゃ決まりね」

そう言うと、美緒は先導するような形で歩きだし、悠太は特に言い返したりせずに後に続いた。


                       × ×


「へえ〜。流石は有名な観光スポット・金閣寺ね。眩しい位金きらしてるわね」

2人はまず金閣寺に来ていた。

「流石だよな。作者も見て感動したらしいし」

実際凄かったです。

「そう言えば、金閣寺は本当は鹿苑寺っていうんでしょ?」

「そうさ。元は足利義満の北山山荘で1397年に西園寺を改築、新築によって一新したんだ。金色なのは自分の権威を示すためで、あの色は昔からだよ。昭和25年に放火で焼失したが、昭和30年に再建されてるよ」

悠太の解説に美緒は感心し

「流石ね。天下の白皇に通えてるだけはあるわね」
「勉強したんだよ。一応」

姉にツッコミを入れ、美緒は再度感心しつつ

「そろそろお腹空かない?甘い物でも食べに行きましょうよ」
「そだな」

2人は金閣寺を後にし、近所のお茶屋に来ていた。

「これこれ。食べてみたかったよね、あぶり餅」

美緒は嬉しそうに1本食べ

「甘じょっぱくて美味しいわね〜♪」
「へえ。俺も1本」

悠太も食べると

「うん、これはうまいや」
「でしょ?」

その後は会話も特になく、食べ終わってお茶を飲んでいると

「それで、この後どうするの?」
「そうだな。折角だし銀閣寺も見ておくかな」
「そうね。じゃ、行きましょ」

立ち上がった美緒に悠太は

「歩くのか?」
「いけない?」
「俺は平気なんだが、姉ちゃん大丈夫か?」

心配された美緒は

「声優は体力も必要だからね。6km位なら歩けるわよ」
「あっそ。ならいいか」


                      × ×


銀閣寺への道すがら

「悠太は流石の体力ね」
「姉ちゃんもだよ。まさか本当に歩くとはな」

実際、2人はずっと歩いていた。

「着いたわよ」
「ほう」

銀閣寺を見た2人は

「なんか、渋いわね」
「まあ、こういうもんさ」

金閣寺とは違った趣に感動していた。

「そう言えば、なんで銀閣寺っていうのかしら?銀色じゃないのに」
「それはだな、金閣と比較対象されるからそう呼ばれてるだけさ。どっちも足利将軍が建てたものだし、銀閣は東山山荘だからな」

悠太の解説に美緒は

「え!?でも、「銀箔を貼ろうとしたが、財政不足で貼れなかった」って聞いたけど」

「それは俗世だよ。元々銀箔を貼る予定なんかなかったらしいぜ。銀閣寺の正式名称は「慈照寺・観音殿」っていうんだ。金閣寺は「鹿苑寺・金閣」。名前からして違うものだろ?それに、慈照寺の方は「侘びさび」を重んじたんだ。だから、銀箔なんか貼る訳ないんだよ。にも拘らず、銀閣寺なんて呼ばれてるのはさっきも言った通り「対比されるから」だろうな」

更なる解説にまた感心し

「凄いわね。勉強になったわ」
「そうかい。ならよかった」

2人は慈照寺を堪能し、後にした。

「この後はどうするの?」
「宿に行こうかと」
「へ〜。どこ宿?」

悠太がナギとも宿泊する宿を教えると

「奇遇ね。私もそこに泊まる事になっるのよ」
「そりゃ凄い確率だな」

悠太はちょっとした偶然に驚いていた。


                     × ×


「ふう。いい湯だ」

悠太は部屋風呂で寛いでいた。
すると

「お邪魔するわね」

美緒が入って来た。勿論?裸でだ。

「な、なんで入ってくるんだ?部屋違うだろ!!」

驚く悠太をしり目に美緒を

「何よ、別にいいじゃない。それとも、30近いお姉ちゃんとは入れないっていうの?」

美緒は26歳です。

「そ、そういう意味じゃ。いくら姉弟でも、男女だし」
「気にしない気にしない。意識する仲じゃないでしょ」
「そうだな」

その後は世間話しつつ風呂を堪能し、入浴後は悠太の部屋で寛いでいた。

「今日はナギちゃんに会えなかったわね」
「まあ、明日辺りには会えるんじゃねえか?根拠はねえが」
「そうかもね。じゃ、自分の部屋に戻るわ」

美緒は部屋を出て行った。

そして翌日

「さてと」
「今日はナギちゃん探しでもする?観光ついでに」

真山姉弟は近所のお茶屋で朝のティータイムをしながら話していた。

「そうだな。まだ観光名所はあるし」
「じゃあ早速・・ん!?」
「どうした?」

言葉を切った美緒に聞くと

「見て見て、茶柱」
「ほお〜。良い事ありそうだ」

2人は気付かなかったが、ナギを乗せたランボルギーニが目の前を通過したらしい。


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以上です。

次回は続き?です。

では。
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Re: 女神と共に第三部 3rd (10月21日更新) ( No.8 )
日時: 2015/10/21 19:38
名前: masa

こんにちはmasaです。

本編の更新です。

どうぞ。
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ここは天王州家使用人専用保養所。


ナギが北海道などで色々な目にあっている頃、ルカはこの保養所で唸っていた。
なぜなら、漫画が殆ど進んでいないからである。

考えが煮詰まり、ハヤテを見るといつも通り執事の仕事をしていた。
少しの間見ていると、ハヤテの携帯に着信があった。

「もしもし。ハヤテです」
『あ、サキです。突然すみません』
「構いませんよ。どうしました?」

ハヤテが聞くと、サキさんは申し訳なさそうに一呼吸置き

『実はですね、お店で人手が足りなくて。それでですね、出来ればなんですけど、お手伝いに来ていただけるとありがたいのですが』
「成程。分かりました。すぐ行きます」
『すみません。お礼は必ず致しますので』
「お気になさらずに。では」

電話が終わるのを待ってルカはハヤテに話しかけた。

「どうしたの?」
「知り合いのお店が人手不足みたいで。なので手助けに」
「へ〜。経営者の知り合いなんていたんだね」

ルカはハヤテに笑みを向けた後

「で、そのお店ってどんなの?」
「同人誌ショップですよ」

ハヤテが教えると、ルカの目が輝き

「私も行く」
「へ!?」


                   × ×


「おお〜。秋葉だ〜」

結局ルカはついて来た。幸い?眼鏡とマスクで変装はしているが。

「顔バレしないでくださいよ」
「大丈夫だって」

その通り、何事もなくワタルのお店に着いた。

「すみません。また頼ってしまって」
「いえいえ。困った時は互い様ですよ」

申し訳なさ全開のサキさんを宥め、気にしてない感を出した。

「あの、ハヤテ様。お連れの方は?」
「ああ。彼女はですね」

ハヤテが紹介しようと振り返ると、ルカは薄い本(規制がギリギリかからない物)を見て、顔を赤くしていた。

「何薄い本見て興奮してるんですか」
「し、してないわよ!!/////////」

指摘されて恥ずかしかったのか、慌てて本棚に戻した。
漫才?が終わるとサキさんが

「では、私はちょっと用事があるので、出かけてきますね」
「あ、はい」

サキさんが出掛けた後、商品を陳列していたワタルに話しかけ

「ワタル君、今日は何から・・」

仕事内容を聞こうとしたが、ワタルは固まっていた。

「あ、あの」
「・・・」
「はい?」

ボソボソと何かを言ったので、ハヤテが聞き返すと

「ハ、ハヤテ。あんたの連れ、アイドルの水蓮寺ルカじゃねえか」

開店前の店内と言うのあり、ルカは変装を解いていた。

「な、なんであんたとアイドルが?」
「まあ、色々ありまして」

ハヤテが答えを濁すと、ワタルは

「も、若しかしてさ。メイド服で客引きしてくれるのか?ルカさんが」
「だ、駄目ですよ。仮にもアイドルのルカさんに」
「だ、だよな。ごめん」

素直に謝ったものの、

「でもさ、ウチの売り上げ厳しくてさ」

ワタルに売上表を見せてもらったハヤテは同情しか出ず

「分かりました。客引きなら僕がしますよ」
「い、良いのか?」
「元々お手伝いするつもりで来たので」

ハヤテは開店準備も手伝い始めた。
ルカも手伝おうとしたが

「あ、ルカさんは上の住居スペースで休んでてください」
「で、でも」
「アイドルの貴方にそんな事させられないので。あ、さっきのは冗談だったので」

そう言うと、上の住居スペースにルカを促し、ワタルも開店準備を再開した。

少しするとサキさんが戻って来た。

「よしっ、サキも戻って来たし、今日こそでっかく売るぞ」

サキさんは買ってきたものを冷蔵庫などにしまうと、ハヤテと共に外に出た。


                  × ×


「お店大変そうですね」
「すみません。心配させるようなところ見せちゃって」

サキさんが先程買ってきたものは、〜%引きとか、半額とかのシールが貼られた物ばかりだった。

「生活を切りつめても、栄養あるものを食べていただきたいので」
「なんか、気持ち分かりますよ」

ハヤテとサキさんがビラ配りをしている頃、ルカは言われた通り住居スペースで休んでいた。
とはいっても、

「チェックされた安売りのチラシに、ポイントカード。低予算で作れるレシピに、集めると色々と貰えるシール。凄い生活感だな」

ついつい室内を観察してしまった。

「いい加減、漫画描かないとな」

いまだ白い部分が大半を占めているネーム表を見てルカは、ナギが「面白い漫画を描くために京都へ行く」と言う言葉を思い出していた。

そして壁にかけてあったメイド服が目に入り

「よし、完璧っと」

メイド服に着替えると、鏡の前がポーズを決めていた。
すると

「あ、あの。まさか客引きしてくれるんですか?」

ワタルが部屋の入り口にいて、驚いていた。

「流石に「水蓮寺ルカ」としては出来ないわね。パニックになっちゃうし」
「ですよね〜」

落ち込むワタルにルカは

「大丈夫大丈夫。良い案あるから」


                    × ×


「いらっしゃいませー。コミックVタチバナへようこそー」
「あ、あの」

ハヤテはどう声をかけたらいいか迷っていた。
なぜなら、ルカがメイド服を着て、仮面をつけて客引きを始めたからだ。

「フッフッフー。私はね、店の売り上げを守る魔法少女・ややクリーミー☆マミよ」

堂々と名乗ったルカにハヤテは呆れ、突っ込む気が失せた。

「これ位しないとアイディアが出なくてね」
「はあ」

心配するハヤテをよそに

「凄いな。仮面をしててもアイドルだ」
「お客さんが増えましたね」

集客率が上がっていた。

「(仕方ない。万が一があったら、天王州家の権力で揉み消すか)」

ルカを止められないと悟り、ハヤテがこう思うと

「あ、あれはまさか!?」
「(早速か)」

ハヤテがどう揉み消すか考えようとしたが

「俺の綾崎じゃないかー」

声を発したのは変態・・・虎鉄だった。
ハヤテに抱き付こうとしたので、ハヤテは一瞬で20発以上のパンチを叩き込み

「コミックVタチバナへようこそー」

何事も無かったかのように客引きを再開した。

「あ、あのさ」
「気にしないのが普通です」
「ならいいか」

ワタルもサキさんも気にせず、ルカも「気にしなくていいか」と言う気持ちしかなく、客引きを再開させた。


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以上です。

次回はナギサイドです。

では。
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Re: 女神と共に第三部 3rd (10月24日更新) ( No.9 )
日時: 2015/10/24 18:15
名前: masa

こんにちはmasaです。

本編の更新です。

どうぞ。
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ナギは北海道を彷徨っていた時、ドクター黒須に出会い京都まで車で送ってもらえる事になったのだが、猛スピードを出したため悲鳴をあげるしかできなかった。


京都。歴史ある古都であり、観光名所も多い。教科書に載っている出来事も勿論あった。


ナギはその京都になんだかんだあったが着く事が出来た。あまり長くは無かった旅の終着点にである。

しかし、ナギは目的だったはずの終着点にて考えていた。

「漫画のアイディアが、全く出ていない」

ナギは「面白いネタ」を思いつくために旅に出た。しかし、肝心のネタはからっきしである。
ナギの旅は「京都に着く事」ではない。あくまで「何かを起こす事」が目的だった。

「(ある程度の予想は出来ていた。だが、僅かばかり期待していた。「何かが起こる」と。だが、起こらなかった)」

まあ、行きつく結論は、「時間を浪費しただけだった。ピンチを自らの手で拡大させた」である。

「(ともかく、漫画を描かなくては。勝負すら出来ないなんて、嫌だ)」

真っ白のネーム表と睨めっこしながら、こう思っていた。
そんなナギの様子を見た黒須は

「どうした?焦っているように見えるが」
「焦っているよ。この漫画には、ハヤテがかかっているんだ。だから、負けたくないんだ」

ナギは焦りと冷静さを半分ずつ混ぜた感情に見舞われていた。が

「まあ、それよりもだ。お腹空かないか?」

話の流れをガン無視した発言にナギは耳を疑い、少しの間沈黙した後

「あのさ。私の話、聞いてた?」
「聞いてたよ」

黒須は思い出すように上を向いた後

「「京都名物・湯豆腐が食べたい」だったわね」
「言ってねーよ!!!!」

全然違う内容にナギはツッコミを入れた。

「時間が無いの」
「何で?」
「漫画を急いで描かなきゃいけないの。作者も私も説明しただろ」

呆れすぎて怒りなど起こりようもなく、突っ込んでいた。

「だけどさ。お腹は空くもんだろ 「どうしてお腹は空くのかな♪」 なんて歌もあるし」
「あるけどさ。今の私は食事時間さえも削って漫画を描きたいの」

ナギはあくまでも食事時間を割くつもりでいたが

「まあまあ。何事においても「腹ごしらえ」は大切だ。だろ?」
「しかしだな」

ナギは言い返そうとしたが、自身のお腹が鳴ったため

「分かったよ「武士は食わねど高楊枝」とはいうが、「腹が減っては戦は出来ぬ」とも言うしな。湯豆腐でも食べに行こう」
「そうこなくちゃ」


                    × ×


2人はガイドブックにも載っている有名店にやって来た。

「豆腐。漢字にすると響きはあまり良くはないが、物凄いポテンシャルの持ち主だ」
「醤油をかけて食べるのは勿論美味だ。だが、塩をかけてあっさりと。と言うのも悪くない」
「暑い日は冷奴。寒い日には湯豆腐。季節を問わない。それに、味噌汁も鍋も豆腐が無いと閉まらない。凄いよな、豆腐は」

「3行もかけて解説すなー」

黒須の解説にナギは箸袋を黒須に投げつけつつツッコミを入れた。

「なんだよ。君だって美味しそうに湯豆腐を食べてるじゃないか」
「私が言ってるのは、3行もかけるなって事だ。無駄遣いじゃないか」

ナギの突込みに黒須は特に気にせず

「ああ。時間が無いんだったな。確か、漫画を描かなきゃいかないんだっけ?」
「そうだよ。忙しいんだよ」

ナギが言うと、黒須は箸をおいてから腕を組み

「折角だ。「豆腐が主人公の漫画」を描いてみたらどうだ?」
「無理言うなよ。作者は殆ど豆腐を食べないらしいし」

黒須は「そうか」みたいな顔になった後

「あ、でも。豆腐が主人公のゲームって無かったっけ?」
「ああ。何のゲームか忘れたが。ってか、作者は「存在を知ってるだけ」だぞ」

ナギは無駄な問答に溜息をつき

「ともかくだ。ルカに勝てなければハヤテはルカのものになってしまう。だから、「絶対に負けられない戦い」なんだよ」

ナギがこう言うと、黒須は湯豆腐を食べる手を再度休め

「君の対戦相手はルカっていうのか?」
「え!?ま、まあな」

黒須は少し考え込んだ後

「そう言えば、そんな名前のアイドルがいたっけ。じゃあ、手伝ってやるか」

黒須の言葉にナギは

「え!?漫画描けるの?」
「いや、全然」

即座に否定した黒須にナギは期待していなかったのか「やっぱり」と言いたそうな顔になり

「描けないさ。でも、私は医者だ。医者は問診で患者の病状を見抜けなければならない。つまり、「話を聞くプロ」なわけだ。だから、君の漫画のどこが悪いか的確に診断出来るはずさ」

黒須の自信を含めた言葉にナギは

「本当か?これ以上時間を無駄にはしたくは無いんだが」
「よく言うだろ? 「信じる者は救われる」 って。だから、信じてみてくれ」

ここまで言われ、ナギは

「分かった。じゃあ」
「で、どんな豆腐が主人公なんだ? 絹ごしか?木綿か?おぼろか?」

ナギを遮るように黒須が言ったため

「世話になったな。私は忙しいから」

そう言って店を出た。

「じょ、冗談だよ。待てって」

黒須は急いで会計を済ませ、ナギを追った。

追いついてきた黒須にナギは

「なんだよ」
「さっきの事は謝るよ。話は聞かせてくれよ。医者として」

ナギは立ち止まると振り返らずに

「私は、勝ちたいんだ。今までだって「勝ち」に拘った事はあった。でも、今の私は今までにないほどに「勝ち」に拘っている」

ナギは一旦間を置き

「私は「努力」と言うものをしてこなかった人間だ。 生まれた時から、生涯困らぬほどにお金があった。勉強も頑張らなくても出来ていた。 親は早くに死別してしまった。でも、私を支えてくれる人は沢山いた」

ナギはようやく黒須と向き合い

「分かるか?私は「恵まれた人間」なんだ。世にも珍しいな。 だから、「努力で勝利を勝ち取る」と言う必要性が全くと言えるほど無かった。だから、分からないんだよ。「頑張り方」がな。 それと同時に「努力で勝利を勝ち取る」と言う価値もな」

ナギが心境を吐き出すと、黒須は暫く黙った後、ナギでもわかる「医者の顔」になり

「「決着」は、とうの昔についてるかもしれない。 報われるはずの努力が報われないかもしれない。 全てが徒労に終わるかもしれない。 最初から、無駄だと分かっている事もある。 心は脆い。直ぐに折れてしまう。誰でもな」

黒須はここまで一気に言うと一旦間を置き

「でも、止めない。諦めない。 それが、今の君が求めている物なんじゃないか?」

黒須がそう言うと、

「その通りさ。だから、頑張ろうぜ」

声のした方へ向くと、

「悠太」
「大丈夫。俺も手伝うよ。だから、きっと描けるよ。お嬢様ならな」

悠太の優しい目にナギは安心し

「ありがと。でも、なぜ京都にいるのだ?」
「心配だったからな。でも、お嬢様なら必ず来れると信じて、先回りしてた」
「そうか。重ね重ねありがとうな」

ナギは笑顔でお礼を言った。

その様子を見た黒須は笑みを浮かべ

「よしっ。話が纏まったところで、「豆腐が主人公の漫画」をみんなで考えるか」
「考えねーって」

グダグダ同じ事を繰り返す黒須にナギは今まで以上の大きめの声でツッコミを入れた。


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以上です。

次回は続きです。

では。
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Re: 女神と共に第三部 3rd (10月27日更新) ( No.10 )
日時: 2015/10/27 17:47
名前: masa

こんにちはmasaです。

本編の更新です。

どうぞ。
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前回、ナギは無事に京都に辿り着いたが、ネタは浮かばず、自らの思いを打ち明け、悠太が合流した。


「所でだ。お嬢様、その人は誰なんだ?」
「ん!?ああ。この人は黒須。北海道で私を助けてくれた「一応」医者らしい」

聞かれたナギがこう答えると

「一応って。本物の医者だよ」

こう言い返したが、ナギは無視し

「さっきも言ったが、北海道を彷徨っているときにランボルギーニで助けてもらった」
「ランボルギーニ?って本物じゃねえか」

駐車場に止めてあった車を見ながら悠太はこんな感想を漏らした。

「で、お嬢様はこの後どうするんだ?」
「な、なにが?」
「何がって。漫画のネタ浮かんでねえんだろ?」

図星だったため、ナギは黙り込んだ。

「まあ、京都観光は俺はもういいよ。姉ちゃんと十分楽しんだし」

悠太がこう言うと、ナギは目を輝かせ

「美緒さん来てるのか?」
「まあな。仕事だって言って行っちゃったけど」

この言葉にナギは落ち込んだ。
すると

「美緒って、まさか声優の真山美緒か?」
「そうだけど」
「ほうほう。そんな有名人が姉か羨ましいな」

黒須は知っていたのか羨望の目で悠太を見たが、直ぐに

「あ、それより。京都はもういいんだったら、伊勢神宮にでも行くか?」
「伊勢?」
「私は元々お伊勢参りに行く予定だったんだ。京都に飽きたんなら、連れて行ってやるよ」

言われたナギは

「なあ悠太、伊勢って行ったことあるか?」
「まあな。親父の仕事の手伝いでな」
「ふうん。まあ、行ってみるか。ここでグダグダ時間を浪費してても仕方ないし」

ナギは結論付けたが

「でも、なんでお伊勢参りなのだ?医者なのに神頼みか?」

ナギが聞くと、黒須は

「「祈る事位しかしてあげられる事が無い」っていう、切実な願いがあるのさ」
「ふうん」

黒須が答えると、ナギは相槌を打った。
そこへ悠太が

「そう言えばさ、ランボルギーニって2人乗りだよな?どうするんだ?」
「ああ、そうか」
「電車で行くか?まだお金に少しは余裕あるが、お嬢様はこのまま車で行くのか?」

悠太が聞くと、ナギはここまでの道中を思い出し、身震いし

「よし、電車で行こう。車では悠太が送ってもらえ」
「え、俺か?なんか悪い気が」
「気にするな。天国に行けそうなほどだぞ」

悠太は、「最高の気分が味わえる」みたいな意味で受け取った。
なので、悠太が迷い始めると

「あら、なら丁度良かったわね」

声がしてナギも悠太も振り向くと

「麗。仕事じゃなかったのか?」
「急いで片付けてきたわ。それより、伊勢に行くんだっけ?1人は車で、後は一緒に行きましょ」

麗がこう提案すると

「お待ちください!!!」

また別の声が聞こえ、全員そっちを見ると

「伊澄。それにカユラも」

北海道で分かれたはずの2人がいた。

「やっと見つけたぞ。この迷子が!!!」
「な、なんだよ。迷ったのは謝るが」
「ったく。心配かけるなよ。幸い、悠太っちが「心配ないから探さずに京都に向かってくれ」って言ってくれたから、こっちまで迷子になる事態は避けられたがな」

カユラの言葉にナギは

「そうか。すまなかった、心配かけて」

素直に頭を下げて謝罪した。

「もういいよ。無事に会えたし。それに道中を楽しめたし」
「そうですね。私も楽しかったです」

伊澄が感想を言うと、カユラはシラケた目で伊澄を見て

「よく言うよ。乗り換えの時以外はずっと寝てたじゃないか」

指摘すると、伊澄は無言でポコポコとカユラに抗議していた。

「そ、それより。ナギが迷子になったのは私の責任です。私が迷わなければ、北海道に行かずに済んだのですから」
「それは間違いなく事実だな」
「だからこそ、お詫びに伊勢までの道案内をですね」

伊澄が言おうとしたが、

「なあ麗。ここまでどうやって来たのだ?さっきは聞きそびれたが」

無視する形で麗に聞いていた。

「ナギ。私にお詫びをですね」
「気にしてないからいいよ。お詫びなら、帰ってから美味いお茶でも淹れてくれ」

ナギが言うと、伊澄は

「分かったわ。最高に美味しいお茶をごちそうするわね」
「ああ。で、麗」

話が終わったので、麗は

「自家用ジェットよ。でもさ、1人ぐらいは車で送ってもらった方がよくない?折角の厚意だし」
「だよな。どうするか」

ナギが悩み始めると、カユラが

「フッ。そんな簡単な事も分からんのか?」
「ほう。して?」
「ここは京都だ。つまり、神社でお御籤を引き、一番運勢がよかった奴こそが、ランボルギーニに乗れると」

カユラは眼鏡をずりあげる動作をしながら解説し、ナギは

「成程。良い案だな」

早速一行は近くの神社に移動し

「まずは言い出しっぺの私だな」

カユラは祈りを込めつつ籤を引くと

「フム「吉」か。また微妙だな」

結果を読み上げ、次は悠太が引いた

「俺は「末吉」か。じゃあカユラの方が上か」

次は伊澄が引くと

「わ、私は「凶」です。なんか、嫌な予感です」

お御籤を凝視する伊澄を気にしつつも、おおとりをナギに譲った麗が引くと

「は、「半吉」あまり見かけないやつね。えっと、吉より下だったはず」

「吉」は4番目の運勢なので、上です。「半吉」は5番目です。

「情けないな、諸君。「持っている」私の運勢をとくと見よ」

道中の恐怖を忘れたのか、堂々と「良い運勢」を引くと宣言して引くと

「だ、「大凶」って。これも見かけんではないかー」

結局、一番悪い運勢を引き当ててしまい、項垂れた。

「まあ、気にするな。ただの運試しだ」
「うう〜」

ショックを受けるナギにカユラは

「私の勝ちだな。よし、運転頼むぞ」
「了解」

カユラは嬉々として車に乗り込み、黒須は発車させる準備を始めた。

「じゃあ、他の皆は家の自家用ジェットで行きましょ」

そう言うと、麗は案内し始めた。

その道中

「忘れてた」
「何をだ?」
「カユラはご愁傷さまだな」
「何で?」

ナギは黒須の運転を思い出し

「本人に聞けば分かるよ」
「「???」」

麗も悠太も首を傾げるばかりだった。

まあ、そのカユラは当然悲鳴をあげていた。


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以上です。

次回は続きです。

では。
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Re: 女神と共に第三部 3rd (10月30日更新) ( No.11 )
日時: 2015/10/30 17:29
名前: masa

こんにちはmasaです。

本編の更新です。

どうぞ。
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前回、ナギは悠太と麗、伊澄とカユラと合流し、黒須の提案で伊勢に行く事にした。


「はい、伊勢うどんおまち」

ナギ達は無事に伊勢に着いていて、うどん屋に来ていた。

「これが名物の」
「美味しそうですね」
「では、いただきます」

麗はうどんをすすり味わうと

「美味しい」
「柔らかい太麺がまたいいですね」

麗も伊澄も大満足で

「シンプルな味付けもまた格別だな」

悠太も満喫していた。

うどんを堪能した一行を店を出て

「ここはおかげ横丁ね」
「神様の「おかげ」で願いが叶った、って事なんだよな」

おかげ横丁にやって来ていた。
暫く歩くと伊澄が

「あ。私、あれ食べたいです」
「ああ、赤福ね。折角だし入りましょ」

店内に入った一行は赤福を注文し

「甘さがしみじみと美味しいですね」

伊澄は目を閉じてゆっくりと堪能し、麗は麗で

「心に沁みわたるわね」

同じ様に堪能していた。

「伊勢って名物多いわね」
「ええ。松阪牛に伊勢海老。名物満載ですね」

しみじみと感想を言う2人に

「旅を満喫してる場合かー」

我慢出来なくなったのか、ナギが叫んだ。

「何のために伊勢に来たんだよ。今夜中にネームが出来ないとお終いなんだぞ。時間が無いんだ!!」

焦るナギに悠太は

「しかしだな。一番の理解者たるカユラはまだ来てないしな」
「グヌヌ」

何時までも店にいる訳にもいかず、一行は近くの河原に移動した。

「さて、どうしようか?」
「きっと、何かが足りないんでしょうね」

暫く考えた後、麗が

「若しかしてさ。「追い込み」が足りないんじゃない?」
「追い込みか」

麗に言われたナギは宙を見上げた。

「そうかもしれんな。土壇場なのは明らかなのに、必死さが出ない。つまり、心にゆとりがあるせいだろうな」
「人間、追い込まれた時「信じられない力を発揮する」って言うでしょ?」

麗に言われ、ナギはウンウンと頷き

「よしっ。さっそくだ伊澄、私の事を追い込んでくれ」

突然無茶振りとも取れることを言われた伊澄は目を見開いてオロオロした後

「あ、貴方のお母様はデーベーソー」
「・・・」

伊澄流の必死の悪口に、場は暫く沈黙が支配した。

「伊澄、私が悪かった。「良い人」であるお前に悪口を求めた私が全面的に悪かった」

ナギは謝罪し、麗に視線を向けたが

「む、無理言わないでよ。ナギちゃんが「怒らなきゃいけない事」したなら別かもしれないけど、してないし、怒る時は理由などをしっかり説明して感情的にならないように諭すようにするからね。だから、「叱る」は出来るけど、悪口はね」

麗に言われ、ナギが俯くと、沈黙を守っていた悠太がナギの前に立ち

「情けねえな」
「え!?」
「この勝負は強要された物ではねえだろ?自分自身の意思で決めた勝負なのに何も出来ねえのは情けねえって言ったんだよ」

普段の悠太からは考えられない様な辛辣な言葉に、ナギは只々沈黙するしかなかった。

「「全力勝負」をして負けたなら、救いようはある。だがな、何もせずに負けるっていうのは救いようはねえぜ。そうなってくると「負けしかない人生」が待ってるぜ」

落ち込むナギに悠太は睨めつけるかのような目つきのまま

「フンッ。それでもいいならこのまま何もしなきゃいいさ。そうすれば、「何事においても負け犬」なんて情けねえ称号が生涯ついて回る事になるぜ。それでいいんだろ?」

厳しい言葉にナギは暫く俯いたが

「良い訳あるか!!!!!いいだろう。見てろよ。今日は一睡もせずに書き上げてやる!!!!!」

ナギはこう宣言すると、走って行ってしまった。

「あ、あの悠太さん?」

伊澄が恐る恐る声をかけると

「ん?なんだ?」

何時もの悠太だった。

「良いの?執事の貴方が主にあんな暴言を」

聞かれた悠太は少し間を空け

「良いんだ。「優しさだけでは人は救えない。時には突き飛ばすくらいの厳しさも必要」ってあいつを見て学んだからな。クビになったとしても、お嬢様にはあれくらいがいい薬さ」

悠太の考えを聞き、麗は納得して笑みを浮かべた。


                     × ×


夜。ナギはホテルの屋上でベンチに座って考えをまとめていた。

「(ネタ自体は浮かんでいる。以前から考えていた「49日で成仏してしまうが、見たいアニメが50日目にある男の幽霊が主人公の漫画」これでいけるはずだ。だが、イマイチ考えが纏まらん)」

ナギはこう考えた後、旅に出る前に貰ったアドバイスを思い出し

「(実体験か。でも、漫画のためとはいえ死ぬ訳にはな。臨死体験も嫌だし)」

なんと考えを纏めようと考え込んでいると

「まだ起きてるのか?」

声をかけられ振り向くと、黒須であった。

「お伊勢参りは早朝だから、早く寝た方が身のためだぞ」
「まあな。それより、今着いたのか?」
「まあね。思ったより時間かかちゃって」

黒須はナギの傍に立ち

「どう?漫画のヒントは掴めそうか?」
「今一つだよ。神頼みでもしたいくらいだ」

ナギの言葉に黒須は

「それは違うさ」
「え?」
「伊勢の神様に祈るのは、神様の力で願いを叶えてもらうって訳じゃない」

ナギが首を傾げると、黒須は言葉を続けた。

「人は弱い。だから、1人では頑張れない時もある。でも、「それでも自分の力で何とかしたいので見守っててください」って祈る場所なんだ」
「見守る、か」

その瞬間、ナギの脳裏に今までの旅と考えていた漫画のビジョンが重なった。

「どうした?」
「こ、これだ」
「え!?」

ナギは武者震いしつつ

「いけるぞ。これなら、勝てるかもしれん」

こう言い切った。


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以上です。

次回は続きです。

では。
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Re: 女神と共に第三部 3rd (5月21日更新再開) ( No.12 )
日時: 2018/05/21 17:15
名前: masa

こんにちはmasaです。

色々ありましたが、更新再開です。

では本編どうぞ。
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前回、ナギは自身の漫画の重要なヒントを掴んだ。


ナギは現在ホテルの部屋に戻り、一心不乱に原稿に向かっていた。
麗と悠太はその様子を見守りつつ

「凄い勢いね」
「まあ、案が纏まったみたいだし、良い事じゃねえか」
「そうね」

また暫くナギを見守り

「あんなに真剣なんだもの。邪魔しちゃ駄目ね」
「勿論だよ」

すると

「あら、順調みたいですね」
「マリアさん。いつの間に」
「今さっき着いたんですよ〜♪」
「は、はあ」

妙な笑顔に悠太は嫌な予感がしつつも今はナギ以外に気になっている人へ顔を向かた。

「(何でアイディアが纏まってんだ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!結局完成しなくて「不戦敗」と言う惨めな結末になって落ち込む様子をコレクション出来ねぇじゃねえか!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!もっと言えばそこに追い打ちかけて立ち直れねえほどのショックを与えてコレクションする計画も台無しじゃねえか!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!役に立たねえ野郎だな!!!!!!!!!!)」

とか思った人がいたそうだが、本人以外は知らなかった。

一方。

「お〜い、カユラ。大丈夫か?」

カユラはうつ伏せで寝転がっていて、生命反応は薄そうだった。

「話し、かけるな。色々、出そうだ」
「大丈夫じゃねえか」
「悠太っち、これは私の遺言なんだが」

カユラは少し間を置き

「ランボルギーニは、速い」
「な、なにがあったんだよ」

想像するのも答えを聞くのも怖いので、この話題は打ち切り

「もう寝るか?布団敷くぞ」
「そう言う訳には、いかん」
「ん!?」

カユラは立ち上がり

「あいつの理解者たる私が、ダウンする訳にはいかん。あんなに頑張ってるんだからな」
「・・そうか」

悠太が笑みを浮かべると

「なあ。誰かiPad持ってないか?」
「持ってるけど、何に使うの?」

麗が聞くと、ナギは直ぐに

「調べものしたいんだが、自分のは家に置いて来ちゃったからな」
「あ、そう言えばそうだったな。じゃ、俺のを使えよ。スマフォだが、あんま変わらんだろ」
「おお、すまんな」

悠太にスマフォを借りて、ナギは調べものを始めた。

「ねえ真山君、私のじゃダメなの?」
「時任の場合、緊急の連絡が入るかもしれないだろ?ここに来る前は仕事で一時的に抜けてたわけだし」
「ああ、そうか」

忘れてたという口調に悠太は多少呆れてた。

「そう言えばさ。真山君も随分軽装だけど、何持って来てるの?鞄も結構小さいし」
「大した物は持って来てないよ。海外旅行ならともかく、国内じゃ携帯と簡単な充電器、財布と簡単な着替え位だよ」
「ふ〜ん」

今度は悠太が麗の鞄を見つつ

「時任こそ何持って来てるんだ?俺と鞄の大きさは変わんないし」
「私も同じようなもんかな。まあ、これだけは何かがあった時の為に必ず持ってるけどね」
「お、ブラックカード。まあ、時任家のトップだから、普通か」

納得する悠太に

「まあ、どこかにはカードだけ持って「これでヒマヤラの頂上にサンドイッチ持ってこさせる」なんてバカげた事言う人もいそうだけど、私はそんな事しないわ。必要最低限のものは持って行くつもりだし」
「まあ、それが普通だよな。俺もだし」
「でしょ〜?」

麗が同意し、

「で、2人はどうなんだ?」
「私は今回こそ手ぶらだが、普段はちゃんと準備するよ。この旅は想定外だったし」

カユラの言葉に伊澄は小さくなっていた。

「まあ、君達と違うのは漫画やキャラソンCD、お気に入りのアニメDVDを持って行く事さ。私レベルになると旅先であろうと教養を得なければならんからな」
「お前さんらしいな。伊澄は?」
「私も似たようなものですね。まあ、アニメ関連のものは持って行きませんが、これは必需品ですね」

伊澄は着物の懐からお札を何枚か取り出し

「私の場合、悪しき霊に遭遇する場合もありますからね。「備えあれば患いなし」ってやつです」
「ここでもらしさが出る訳か」
「だな」

伊澄の力を知っているカユラが同意した。

「マリアさんはどうなんですか?」
「「「(そ、それは聞いてはいけないんじゃ)」」」

何気なく聞いた麗に悠太も伊澄もカユラも全く同時に思っていた。

「そうですね〜。私も必要最低限な物だけですよ。後、カユラさんや伊澄さんみたいに「旅先では手に入り無さそうな物」はもっていきますよ〜」
「へえ。なんですか?」
「「「(こ、これ以上踏み込まないでくれ〜)」」」

心の中で必死で願う3人の想いは残念ながら麗に届かず、麗は聞いてしまった。

「えっとですね〜♪」

マリアさんは持ってた鞄から色んな種類の包丁をその包丁の名前を言いつつ取り出し

「こう言う物は持って行くに限りますよね〜♪」
「は、はあ」

麗はマリアさんに話を振った事に公開していた。

「(フフフフフフフフフフフフフフフフフ♪これで職質されれば「この人(悠太)に無理やり持たされました」って泣きながら言えば困らせる事出来ますよね〜♪そうすれば私のコレクションが♪ああ♪)」

こんな風に思っている人がいた事は本人を除けば誰も知らない。
すると

「あ〜。楽しそうに盛り上がってるとこ悪いんだがな」
「ん!?お嬢様、漫画はもういいのか?」
「完成したのなら私が」

カユラを遮る様に

「まだだよ。徹夜になりそうだから、手伝ってほしい。頼むよ」
「勿論だよ。俺達で出来る範囲で」
「いっぱいお手伝いするわ」
「任されよ」

こう言ってくれた悠太、麗、カユラに

「すまん。感謝する」

手を合わせて深々と頭を下げた。

「(あ♪そうだわ♪手伝うふりして徹底的に邪魔しちゃいましょう♪そうすればそれはそれは面白い事になりますね〜♪そうなればもう♪ああ♪)」

とか思った人もいたそうだが、当然知らない。


                   × ×


翌朝5時。

「で、出来た」
「おめでとうな、お嬢様」
「完成してよかったわね」
「ああ」

するとナギは出来上がったネーム等を大事にしまい

「よしっ、行くぞ」
「ん!?どこにだ?」
「伊勢神宮だよ。神様にお礼を言わないとな」

一行はホテルを出て移動する事にした。

その道中

「へ〜、漫画かけたのか」
「まあな。完全に完成ではないが、何とかなるよ」
「・・そう」

ナギは黒須と話していた。

「・・ありがとうな」
「何が?」
「黒須のおかげで、ここまで来れたんだ。だから、ありがとう」

素直にお礼を言うナギに

「お礼は要らないよ。私の方も、何とかなりそうだからな」
「は!?」
「さ、お参り済ませちゃおう」

一行は本殿の前で手を合わせていた。
因みにナギは

「(神様、感謝します。この旅と、この旅での出会い、出来事に出会わせてくれた事を)」

他の面々より深めに感謝していた。
すると

  ドサッ

「ん!?あ、お嬢様」
「寝ちゃってるわね。神様の目の前なのにね」
「疲れてたんだよ。俺がおぶっていくよ」

悠太はナギをおぶり、ホテルに戻る事にした。


                   × ×


一行がホテルに戻ると

「悠太っち、大変だぞ」
「ん!?どうした、カユラ」
「何か事件でもあったの?」

カユラは慌てつつ

「こ、これ見てくれ」
「今日のスポーツ新聞だな」
「それがどうしたの?」

現状を理解していない悠太と麗にカユラは

「ともかく見てくれ!!!芸能面の上の方だ!!!」
「「どれどれ?」」

悠太と麗が指示された記事を見ると

  「水蓮寺ルカ 今日復活ライブ」

っとかなり大きめに書かれていた。


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以上です。

次回は続きです。

今後は出来る限り休止をしない様にしようと思います。

では。
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Re: 女神と共に第三部 3rd (5月21日更新再開) ( No.13 )
日時: 2018/05/22 23:48
名前: ささ

ささでーす。
再開おめでとうございまーす。無理しないでね〜。
徹夜で疲労困憊のナギの作品を捨てれば面白いな〜(約1名は共感してくれるはず)
ランボルギーニかぁ、時速300q出るからなあ〜(遠い目)
どこぞの体の部位があれな生徒会長なら「空を飛ばないなら全然平気よ」とか言いそう。
あれ、ペったんガールズどうしましたか?
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Re: 女神と共に第三部 3rd (5月24日更新) ( No.14 )
日時: 2018/05/24 18:11
名前: masa

こんにちはmasaです。

レス返しの更新です。


 ●ささ さん

 >>ささでーす。

 ルカ「感想ありがと〜♪」

 >>再開おめでとうございまーす。無理しないでね〜。

 ありがとうございます。勿論無理しない範囲で頑張ります。

 >>徹夜で疲労困憊のナギの作品を捨てれば面白いな〜(約1名は共感してくれるはず)

 誰か「あら♪いいですね〜♪では早速♪」
 クラウス「・・・止めろ」

 ナギ「・・・」

 >>ランボルギーニかぁ、時速300q出るからなあ〜(遠い目)

 カユラ「確かに出せるだろうが、実際の公道でそんな速度出したら不通に道交法違反だぞ。・・・怖いし」

 >>どこぞの体の部位があれな生徒会長なら「空を飛ばないなら全然平気よ」とか言いそう。

 麗「確かにね。闘争心を焚き付けなきゃ乗らないし」

 ヒナギク「・・・」

 >>あれ、ペったんガールズどうしましたか?

 ナギ「どうした?そうかそうか分からんのか」
 ヒナギク「じゃあゆ〜っくり分からせてあげるわね」

 カユラ「大丈夫なのか?」
 悠太「たぶんな」


 感想ありがとうです〜♪

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Re: 女神と共に第三部 3rd (5月24日更新) ( No.15 )
日時: 2018/05/24 18:16
名前: masa

こんにちはmasaです。

本編の更新です。

どうぞ。
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前回、ナギは漫画のネームを完成させ、お伊勢参りを済ませホテルに戻るとルカの復活ライブが知らされていた。


「復活ライブ!?しかも今日か!?」
「なあ悠太っち。このアイドルってナギの同人誌対決の相手だよな!?」
「あ、ああ」

驚きで多少は混乱していたが、考えは纏まっていた。

「同人誌対決とかどうなったんだ!?」
「と、ともかく電話したらどうだ?悠太っちはこのアイドルと知り合いなんだろ?」
「ま、まあな。しかし」

渋る悠太にカユラは

「ほら、早くしろ。私だってナギを応援している以上相手も気になる」
「待って、剣野さん」
「な、なんだよ。止めるなよ」

自身を止めた麗に訝しげな視線を送るカユラに

「今、朝の6時よ。こんな早朝に電話するなんて、迷惑よ」
「・・・あ」
「だから俺も返事が鈍かったんだよ」

カユラは気まずそうに

「じゃ、じゃあ。朝食の後時間を見計らって電話するか」
「そうだよ。まあともかく、お嬢様を部屋で寝かせてからだ」
「だな」

麗はホテルの新聞置き場に新聞を戻し、悠太達と一緒にまずは部屋に戻る事にした。

一行が去ってから少しして、黒須は先程の新聞を手に取り

「ルカと、同人誌対決。か」


                   × ×


その後時間を見計らい

「駄目だ。ルカの携帯には繋がらない」
「ハヤテ様の携帯にも繋がりません」

悠太と伊澄は何度かそれぞれに連絡を取ろうとしたが、駄目であり

「私の方も駄目ね。天王州家に電話しても、ルカやハヤテ君の事は教えてくれないもの」

天王州家は使用人の誰かは出るものの、聞いても「お答え出来ません」っと、麗相手でも突っ放られた。

「こりゃあ、何か結構な事があったかもな」
「ナギの為にも急いで帰った方が良いかもしれませんね」
「諸君、大丈夫だぞ」

焦る一向にカユラは無い胸を張りながら

「ライブチケットは3枚だが確保出来た。オタクネットワークを使って確保した」
「そ、そりゃあ凄いが」
「い、今はそういう事じゃないんじゃないの?」

カユラだけ違う考えに悠太も麗も呆れツッコミをした。
すると

「あの、帰りなんですが」
「何かあるのか?伊澄」
「あ、あの」

伊澄は少し迷いつつ

「飛行機、ですよね?帰りは」
「家の飛行機だから平気よ。第一、乗ったじゃない」
「そ、そうではなくて」

また少し悩み

「私、黒須さんの車に乗ってみたいんです」
「私の?別に構わんが、なんでだ?」
「えっと。ナギやカユラさんが「凄かった」って言ってたので、体験してみたくて」

恐る恐る話しており、説明した伊澄に

「分かったよ。じゃあ、君は私の車で送ってあげるよ」
「ありがとうございます」
「でもいいんっすか?俺達の目的は東京っすよ」

嬉しそうにスキップしている伊澄に聞こえない様に悠太が聞くと

「構わんさ。実は言うと、私も東京に用事がある」
「ああ、そうなんですか」

こうして一行は伊澄以外は時任家のジェット機で、伊澄は黒須のランボルギーニで東京に戻る事になった。

因みに

「(ナギも乗る飛行が故障とかで飛べないってなると面白そうですね〜♪それかハイジャックされて全く関係ない所に行かされるのも面白いですね〜♪そうなればナギの折角のネームが無駄になりますよね〜♪そうなれば♪ああ♪)

とか考えている人もいて

「(あ、そうだわ♪折角だから実際にハイジャックされるように色々手を打ちましょう♪そうすれば怖がる皆さんをコレクション出来ますし♪ネームが無駄になったナギをコレクションする事も出来ますね〜♪そこへ追い打ちをかければもっと♪ああ♪)」

その人はこんな事も思っていた。


東京へ戻る道中

「君はこの速度でも怖がらないんだな」
「え、ええまあ」

黒須の車はやっぱりな速さで、ナギやカユラ悲鳴を上げた速度と一緒だった。

「平気ではないんですが、怖い事には慣れてるので」
「・・へ!?」
「まあ、私には色々あるんですよ」
「ふ〜ん」

黒須は伊澄の力を知らないので、説明しても信じて貰えるか分からなかったので、適当に誤魔化した。

「それより、聞きたい事があるんだ」
「な、なんでしょう?答えられる限りはお答えしますが」

伊澄が言うと、黒須は少し間を置き

「水蓮寺ルカについて、だ」
「・・・」

因みに、無事に東京にたどり着いた事で

「(ふざけんじゃねえぞ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!なんで普通に東京に戻って来てるんだよ!!!!!!!!!!!!!!!俺様のコレクションが増えねえじゃねえか!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!役立たずなゴミクズ野郎どもだな!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!)」

とか思っており、さらに

「(あの国家権力の狗どもが!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!なんで俺様を職質しねぇ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!あの野郎に無理やり持たされたって嘘ついてコレクションする計画が台無しじゃねえか!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!役に立たねえゴミだな!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!ええこら!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!)」

こんな事も思った人がいたそうだが、本人以外は知らない。


                   × ×


「っは!!」

ナギが目覚めると、何時もの自分の寝室だった。

「いったい私は何時間寝てたのだ?外はすっかり暗くなってるが」

窓から見える外は完全に夜であり、時間は分からないものの、遅めの時間なのは容易に察せた。

「あ、そうだ。私のネーム」

ナギは急いで周囲を見渡し、室内の机の上の紙束を見つけ、中を見ると

「良かった。完成したのは夢じゃなかったか。無くしたりしなくて安心した」

因みに、ナギを寝室に運んだの悠太で、ネームをそこに置いたのも悠太です。
さらに言うと

「(あの野郎〜!!!!!!!!!!せめてナギの野郎のネームを処分させろよな!!!!!!!!!!俺様のコレクションを邪魔したんだからよ!!!!!!!!!!!!)」

とか思った人もいたそうだが、悠太は知らない(勿論ナギも)。

「しかし、今読み返しても見ても、面白い。我ながら良く出来たもんだよな」

ネームを見て自画自賛し、

「これなら、ルカにだってきっと負けない。今度こそ、勝って見せる」

決意を新たにし、

「ルカに勝てれば、手強いライバルは1人消える。あいつは、私からすれば最も厄介なライバルだ。似ている部分が多い以上、ライバル候補から去ってくれれば、万々歳だ」

こう思って先程の決意を強めた。

「さて、まだ原稿にはなっていないが、ハヤテに見てもらおうかな〜。きっとハヤテも褒めてくれるに違いない」

そう思うと、ハヤテが称賛してくれているところを妄想し。

「エヘヘ//////////////////////////////よしっ、じゃあ早速行くとするか」

幸いまだ夜遅くて迷惑になるような時間ではなかったため、ナギはネームを持って家を飛び出した。


                   × ×


天王州家に着いて門の所で事情を説明すると直ぐに通してもらえた。

「ハヤテはどこかな〜。自分の部屋かな〜」

スキップ交じりに庭を歩いていると、声が聞こえて来た

「なんだ、庭にいるのか。割と近くだな」

またスキップ交じりに歩き出し、声のした方へ向かった。

その道中、黒須に言われた「決着はとうの昔についているかもしれない」っと言う言葉がなぜか思い浮かんだ。

「お〜い、ハヤ・・・」

ハヤテを見つけたナギの目に衝撃的すぎる光景が飛び込んできた。それは

泣いているルカをハヤテが後ろから優しく抱きしめている光景だった。

さらに

「大丈夫。僕がルカの事を幸せにしてみせるよ」

っと言う何時にも増して真剣過ぎるハヤテの言葉が耳に飛び込んできた。


-----------------------------------------------------------------------------------
以上です。

次回は続き?です。

では。
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Re: 女神と共に第三部 3rd (5月24日更新) ( No.16 )
日時: 2018/05/25 22:15
名前: ささ

ささです。300qくらい出しているとオービスが反応しないとか…とか言うのを聞いたことがある。(真偽は知らんけど)それはさておき、通すなよ、天王州家の門番、強い口調で追い払われてうなだれて帰っていくナギが見れないんじゃない。でもまあ、ルカと抱き合って優しい言葉をかけているハヤテを見てびっくりしているナギが見れたからまあ、良しとするか。(程度は軽いけど)
警察が職質しないのはしょうがない!メイドさんだからな…で済んじゃうから。それにち(言い終わる前にナギによって成敗された)
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Re: 女神と共に第三部 3rd (5月27日更新) ( No.17 )
日時: 2018/05/27 17:55
名前: masa

こんにちはmasaです。

レス返しの更新です。


 ●ささ さん

 >>ささです。

 ナギ「感想ありがとうなのだ♪」

 >>300qくらい出しているとオービスが反応しないとか…とか言うのを聞いたことがある。(真偽は知らんけど)

 悠太「いや、俺も真偽は分からんが、たとえ反応しなくても駄目だろ。普通に法律違反だからな」
 黒須「まあ、ばれなきゃ・・駄目だな。マネするなよ」

 >>それはさておき、通すなよ、天王州家の門番

 使用人「な、何故ですか?三千院様はアテネ様やハヤテ坊ちゃんとも親しいですし、問題は無いはずでは??」

 >>強い口調で追い払われてうなだれて帰っていくナギが見れないんじゃない。

 誰か「そうですよね〜。 役に立たねえゴミだな!!!!!!!!!!!全く!!!!!!!!!!!!」
 使用人「(わ、私が悪いんでしょうか???)」

 >>でもまあ、ルカと抱き合って優しい言葉をかけているハヤテを見てびっくりしているナギが見れたからまあ、良しとするか。(程度は軽いけど)

 誰か「ですよね〜♪あの光景をネットとかに流せばもっともっと面白くなりそうですよね♪ああ♪」
 ルカ「・・・」

 >>警察が職質しないのはしょうがない!メイドさんだからな…で済んじゃうから。

 マリア「・・・」
 ナギ「い、言っておくが、あの時のマリアはメイド服じゃなくて私服だったぞ。そ、その理論は通じないぞ」

 >>それにち(言い終わる前にナギによって成敗された)

 ナギ「何を言おうとしたのか分かるが、失礼だぞ」←怖い笑顔。
 悠太「お、おいおい」


 感想ありがとうです〜♪

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Re: 女神と共に第三部 3rd (5月27日更新) ( No.18 )
日時: 2018/05/27 18:00
名前: masa

こんにちはmasaです。

今回で300話になりました。
なので、ちょっとした番外編をやります。

番外編なので、本編の流れは無視してください。
時系列も、ほぼ無視でお願いします。

では本編どうぞ。
-----------------------------------------------------------------------------------

ある日の天王州家。

「ん!?アーたん何読んでるの?」
「ええ、ちょっと」

アテネは読書に夢中になると曖昧な返ししかしないので、ハヤテは持ってきた紅茶を丁寧に淹れ始めた。

「ふう」
「終わった?」
「ええ、一応は」

アテネは紅茶を一口飲み

「私が読んでたのは、これですわ」
「ん!?それって」
「ええ。最近(更新時)始まったある漫画ですわ」

アテネは先程読んでいた本をまた手に取り

「普段漫画を読まない私ですが、これだけは読み続けたいですわ」
「それって「主人公が一目惚れした女の子に告白したら「結婚してくれるなら付き合ってあげる」って言われて後に本当に結婚する話だよね?」
「ええ。新婚夫婦のイチャラブコメディ、って私は思ってますわ」

アテネは本を置いて紅茶を飲み

「この話、今の私達に似ていません?」
「へ!?」
「運命的な出会いをし、結婚して色々ありつつイチャラブする所が、ですわよ」

堂々と言うアテネにハヤテは

「アーたん、結婚してないじゃん」
「フッ。しているようなものですわ!!!」
「あ、あそう」

自分で言ったくせにモジモジと照れているアテネに

「まあ確かに、ヒロインの人とアーたんは似ているかな。可愛い所とか、一見クールに見えるけど、隙だらけな所とか」
「で、ですよね//////////////////////////」

ハヤテからすれば何気なく言っただけだが、アテネには効果抜群で、暫く照れていた。
その照れから回復した後

「ではハヤテ」
「な、なに!?」
「この2人の様にイチャイチャしますわよ」

妖しい目つきでハヤテに言うと

「ア、アーたん!?目が怖いけど」
「フフフッ♪イチャイチャしますわよ〜」

ただでは済みそうにない雰囲気にハヤテは逃げる態勢を一瞬で整えた。
すると

「「ちょっと待った〜」」
「・・・」

突然聞こえた声にアテネの機嫌は急降下した。

「さっきから黙って聞いとったけど、えらい自分勝手な事ばっかり言っとったな」
「ほんとよ。まったく」
「なんですの、貴方達」

日向、ソニアに露骨に嫌な顔を向け、2人は敢えて無視して

「運命的な出会いをして、その相手と結婚するなんて、それはウチや。ハヤ兄とな」
「な!?何言ってるのよ。私よ!!!」

3人は睨み合い

「私の方が運命的ですわ!!!原作を見なさい!!!」
「関係ないで!!!ウチなんかあんな広い家で会ったんやから、運命以外の何物でもないやろ」
「くだらない。私だって運命的よ!!!」

漫画やアニメなら大火事になりそうな火花を散らす3人に

「(わ、私もハヤテ君とは運命的な出会いをしていると思うんだがな。まあ、この言い争いに参加しても勝ち目は薄そうだし、黙っておくか)」

千桜はこっそり火花を向けておいた。

暫く睨み合い

「こうなったら、だれが一番運命的な出会いをしたか、ハヤテに決めてもらいますわ」
「「敵ながら名案」」

しかしそこにハヤテはおらず、その事でまた言い争いが始まった。


                   × ×


逃げたハヤテは負け犬公園にいた。

「やれやれ。なんでこう、仲が悪いんだろ」

溜息をつきつつ先程の言い争いを思い出し

「運命的な出会い、か」

「ハ〜ヤ〜テ〜様♪」
「か、神尾崎さん」

毎度お馴染み綾子がハヤテに抱き着いてきた。

「何してるんですの?ここで」
「あ、いえ。えっと」
「まあ、大体の察しは尽きますが」

ハヤテは少し悩んでから説明した。

「成程。それなら私も愛読してますわ」
「そ、そうなんですか」
「ハヤテ様」

呼ばれたハヤテは嫌な予感以外しなかった。
なぜなら綾子の声色が艶を帯びていたからだ。

「運命的な出会いなら、私と、ですわ」
「は、はあ」
「さあハヤテ様。私と新婚生活を送りましょう」

ハヤテの嫌な予感は当たっていた。

「お望みなら、あの2人の様に質素なアパート暮らしでもいいですわ。寧ろその方が」
「あ、あの」
「さあ、ハヤテ様」

綾子の様子にハヤテは守護光速拳を発動し、逃げた。

「逃がしはしませんわ」


                   × ×


「成程な」
「大変だったな、ハヤテ」

ハヤテは三千院家に逃げて来ていて、悠太とナギに事情を話していた。

「申し訳ありませんが、ナギさん暫く匿ってもらえませんか?」
「別に構わんぞ。ほとぼりが冷めるまで家にいると良い」
「助かります」

ハヤテは安心からまた溜息をついた。

「運命的な出会い、ねぇ。確かに良い事だが、運命ってやつは殆ど一つじゃねえのかなあ」
「確かに悠太の言う通りだぞ。う、運命なら私だって//////////////////////」
「そ、そうなんですか」

因みに

「(フフフフフフフフフフフフフ♪このままハヤテ君の居所を皆さんに知らせればそれはそれは面白い事になりそうですね〜♪そうなれば♪ああ♪)」

こんな事を思っている人もいて

「(では早速皆さんに知らせちゃいましょう♪そうなればまたコレクションが♪ああ♪)」

その人はこうも思っていた。

「それなら俺もお嬢様も愛読してるが、あのヒロインはどっちかっていえばヒナギクに似てないか?」
「そうか?見た目だけで言えば納得は行くが」
「・・・」

ハヤテは何て言えば分からないので、沈黙を守った。

「まあ何はともあれ、運命的な出会いはきっと平等だよ」
「そうだな。「出会い」だけで言えばな」
「それに関しては僕も運命は感じますけど」
「(「結婚する」って運命は私だよな/////////////////////////////////ハヤテの運命の結婚相手、は私なのだ////////////////////////)」

ナギがこんな風に悶えていると、緊急を知らせる電話が鳴り

「なんだよ騒々しい。今忙しい」
「た、大変ですお嬢様!!!!暴走する乙女集団が襲来してきました!!!!」
「・・・は!?」

慌てるSPに対し、ナギは何の事か分からず間の抜けた声になった。

「天王州様を筆頭に物凄いオーラです。我々には止められません!!!」
「お、おいハヤテ。そうする・・・っていねえや」
「(全く。誰なのだ、ハヤテがここに居るなんて知らせたのは。折角ハヤテとあの2人の様にイチャイチャできると思ったのに)」

アテネ達は乗り込んできたが、いないと分かると直ぐに探しに出かけた。勿論ナギも加わって。

因みに

「(あらあら♪思った通り面白い事になりましたね〜♪  でもあの野郎!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!逃げんじゃねえよ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!逃げなきゃもっと面白い事になっただろうが!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!クズが!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!)」


                   × ×


一方のハヤテ。

「成程ね〜」
「すみません、急に押しかけてしまって」
「気にしなくていいよ。ここなら安全だよ」

ハヤテはある所に逃げ込んでいた。

「それにしても、運命の出会いからの結婚か」
「あ、あの。ルカさん?」

ハヤテが逃げ込んだのはルカの楽屋だった。

「あ、あの」
「・・・」
「えっと。なんでカギを?」

ルカは突然立ち上がると楽屋の鍵をかけた。

「ねえ知ってる?ここの楽屋って、中からも鍵がないと鍵の開け閉めが出来ないんだよ」
「は、はあ。それが何か?」
「さあハヤテ君。新婚さんがすることしようか」

ルカの目つきはアテネ達と一緒だった。

「あ、あの。その」
「逃げられないよ。窓は無いし、鍵は私から奪わないと開けられないし」
「あ、ああああの」

ハヤテはほぼ密室の楽屋に逃げ込んだことを後悔していた。


この後ハヤテがどうなったかは誰も知らない。


-----------------------------------------------------------------------------------
以上です。

いかがでした?番外編は。
まあ、番外編とはいっても、何時もと殆ど変わりませんでしたが。

次回は前回の続き?です。

では。
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Re: 女神と共に第三部 3rd (5月27日更新) ( No.19 )
日時: 2018/05/28 02:11
名前: ささ

ささです。300話おめでとうございます。えっと…スレッド数が1,2,3,…何スレあるんだっけ?最近モブ化しつつあるように見え、なおかつ番外編にも出してもらえなかったクリスティーナ・ディキンソンさん、お答えください。
あ〜あれか、そうだよね、ハヤテあれの主人公に似ているね。速いところとか…
綾子さん、じゃあ、…(以下ネタバレになるので省略)でもさ、詳しくは省略するけどあれで考えるとハヤテLOVERSは奥さんになりえなさそう。(全員に共通するある点がない)作者さんならわかるはず。
誰かさんnice、いままで尽く誰かしらの邪魔が入っていましたからね。いや〜私と気が合いますね。ナギがハヤテ捜索に加わっている内に、ちょっと秘蔵のコレクション拝見させて頂けませんか?
>>「なんだよ騒々しい。今忙しい」
「た、大変ですお嬢様!!!!暴走する乙女集団が襲来してきました!!!!」
「・・・は!?」
何も知らない人から見ると滑稽以外の何物でもない。いつから三千院家のセキュリティがゴミになったのだろうか…(無理もないが)
ああ、守護光速拳守る対象自分自身でも発動可能になっていたんだったね。
個室の楽屋かぁ、伊達にトップアイドル務めているわけじゃないか。この分だと無事に天王州家に帰れたかすら怪しい

追記
あ〜ようやく見つかったその時の楽屋映像
なになに、なるほど文〇に送り付けよう!
神尾崎グループの出版社にも

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Re: 女神と共に第三部 3rd (5月30日更新) ( No.20 )
日時: 2018/05/30 19:40
名前: masa

こんにちはmasaです。

レス返しの更新です。


 ●ささ さん

 >>ささです。

 泉「感想ありがと〜♪」

 >>300話おめでとうございます。

 ありがとうございます。色々ありましたが、ここまで来れました。

 >>えっと…スレッド数が1,2,3,…何スレあるんだっけ?最近モブ化しつつあるように見え、なおかつ番外編にも出してもらえなかったクリスティーナ・ディキンソンさん、お答えください。

 クリス「eightスレよ。zeroも含めると、だけどね。 って私のfamily nameはディキソンよ。間違えないでね」

 まあ、クリスに関しては第四部になれば、出番が増えます。

 >>あ〜あれか、そうだよね、ハヤテあれの主人公に似ているね。速いところとか…

 悠太「まあ。後、鈍感な所とかな」
 ナギ「天然ジゴロ気質な所、もじゃないか?」
 ハヤテ「・・・」

 >>綾子さん、じゃあ、…(以下ネタバレになるので省略)

 綾子「ん!?なんですの? まあ、ハヤテ様が望むのなら、私は質素でもド田舎でも、変な話公園や山の中でも良いですわよ」
 城山「・・お嬢様は一途ですね」

 >>でもさ、詳しくは省略するけどあれで考えるとハヤテLOVERSは奥さんになりえなさそう。(全員に共通するある点がない)作者さんならわかるはず。

 まあ、あってるかは分かりませんが、確かに無理ですね。自分の作品じゃ特に。

 >>誰かさんnice、いままで尽く誰かしらの邪魔が入っていましたからね。いや〜私と気が合いますね。ナギがハヤテ捜索に加わっている内に、ちょっと秘蔵のコレクション拝見させて頂けませんか?

 誰か「良いですよ〜♪とっておきは沢山ありますから♪」
 ナギ「・・・」

 >>>>「なんだよ騒々しい。今忙しい」
  「た、大変ですお嬢様!!!!暴走する乙女集団が襲来してきました!!!!」
  「・・・は!?」
  何も知らない人から見ると滑稽以外の何物でもない。いつから三千院家のセキュリティがゴミになったのだろうか…(無理もないが)

 悠太「まあ、天王州も神尾崎もめちゃくちゃ強いからな。訓練されてても、SPじゃ無理だって」
 クラウス「やれやれ、ですな」

 >>ああ、守護光速拳守る対象自分自身でも発動可能になっていたんだったね。

 ハヤテ「ええ。あの技は進化してますからね」
 綾子「進化してなければ、今頃」

 >>個室の楽屋かぁ、伊達にトップアイドル務めているわけじゃないか。

 ルカ「まあね。一兆万人のファンがいるからね」

 >>この分だと無事に天王州家に帰れたかすら怪しい

 さあ、それはどうでしょう。ご想像にお任せしますよ。

 >>追記
  あ〜ようやく見つかったその時の楽屋映像
  なになに、なるほど文〇に送り付けよう!
  神尾崎グループの出版社にも

 ルカ「ま、別にいいんじゃない?そうすれば・・グヘヘ」
 集「・・止めてね。特に決まってないけど、基本的に恋愛禁止よ」

 綾子「家のグループは扱わないと思いますわよ」


 感想ありがとうです〜♪

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Re: 女神と共に第三部 3rd (5月30日更新) ( No.21 )
日時: 2018/05/30 19:45
名前: masa

こんにちはmasaです。

本編の更新です。

どうぞ。
-----------------------------------------------------------------------------------

前々回、悠太達は急いで東京に戻り、ナギは自宅で目を覚ましてハヤテに会いに行くと衝撃的な光景と言葉を聞いた。


っと言う前々回の前日。

「あ〜、暇だな〜」

泉は心の中で愚痴を言いつつ町を歩いていた。

「美希ちゃんも理沙ちんも忙しくていないしな〜」

美希も理沙もそれぞれ私用でおらず、宿題も終わってしまったため暇を持て余していた。
特に何も考えずぶらぶらしていると

「(あ♪あれはハヤテ君♪ って虎鉄君ったらまた)」

ハヤテが虎鉄をぶっ飛ばしている所(>>8)を目撃し

「(やれやれ。あのハヤテ君があれだけ嫌ってるんだから、いい加減気付けばいいのに)」

実の兄に呆れつつ

「ハ〜ヤテ君♪」
「あ、瀬川さん」
「なんか、ごめんね」
「え!?」

突然頭を下げて来た泉に驚いていると

「虎鉄君だよ。迷惑かけてるから、妹として謝ったの」
「瀬川さんが謝る事じゃないですよ。全部、この変態屑のせいですから」
「ま、まあ。一応家族だから謝っとくよ」

また頭を下げて来た泉にハヤテは何も言い返さず、宥めるだけにした。

「ところで、瀬川さんは何をしに?」
「う〜ん。「何を」って聞かれると困るんだ。「暇を持て余してブラブラしてただけ」ってだけだからさ」
「そうだったんですか」
「私の事よりさ」

泉は少し間を置き

「ハヤテ君は何してるの?」
「ワタル君が新しくお店を始めたので、そのお手伝いです」
「へ〜、そうだったんだ。  ん!?」

すると泉は仮面をつけたルカを見つけ

「ね、ねえハヤテ君。あの人は?」
「え!?えっと、その」

泉が「水蓮寺ルカ」を知っているか分からなかったが、知っていたら色々と大変なので

「友達です。一緒にお手伝いしてるんです」
「へ、へ〜」

適当に誤魔化したハヤテに

「(あの人、変装してるけど、アイドルの人だよね。確か、水蓮寺ルカって名前で休業中のはずの)」

名前位だが、泉は知っていた。

「(な、何でここに!?変装までして)」
「あ、あの。瀬川さん?」
「ふえっ!?/////////////////////な、なに?///////////////////////////////」

考え事している間に間近でハヤテに顔を覗き込まれ、泉は赤面していた。

「急に黙り込んでしまったので、何かあったのかと」
「な、何でもないよ。わ、私も行くね」
「あ、はい」

泉は駆け出してその場を離れた。


                   × ×


泉は近くの公園のベンチに座り、考え込んでいた。

「(なんで、ハヤテ君はあのアイドルの人と一緒にいたんだろう。しかもハヤテ君は「友達だ」って言ってたし)」

暫く考え込み

「(確かにハヤテ君は凄い人だけど、アイドルちゃんと接点があるとは思えないし)」

幾ら考えてもハヤテとルカの関係性は分からず、その点は放棄し

「(私の女の勘だけど、あの子はハヤテ君が好き、だと思う。でなきゃアイドルが変装して一緒にビラ配りするって事に説明がつかないし)」

そう考えると、泉の胸に強めの痛みが襲った。

「(もしそうなら嫌だな。ただでさえ私のライバルは多いのに)」

胸の痛みと戦いつつ

「(そうと決まったわけじゃない、って思いたいな。仮面してたけど、可愛いって思えたし)」

ルカがライバルだと確定してしまえば、自分の勝率は大きく下がってしまう。泉なりの現実逃避を必死で行ったが

「(もしそうで、ハヤテ君とあの子が抱き合ってるシーンを見ちゃったら、私、泣いちゃうかもね。無いと思うけど)」

って事はナギが目撃したシーンの目撃者が泉だったら・・

「(おまけにハヤテ君が愛の告白してたら、当分寝込んじゃうな。そして嫌な私が生まれちゃうかも)」

しつこいようですが、ナギが目撃したシーンの目撃者が泉だったら・・


「やっぱり聞こう。あの子がハヤテ君の事を好きかどうか」

泉は決心し、立ち上がった。


                   × ×


「そろそろ休憩にしましょうか」
「うん、そうだね。流石に少しだけど疲れちゃったよ」

ある程度ビラを配り終え、2人がこんな風に話していると

「お〜い、ハヤテ君」
「おや?瀬川さん、また何か御用ですか?」
「え、うん。えっとね」

泉は少し悩み

「聞きたい事があってね」
「なんでしょう?」
「えっと、どう言ったらいいのかな」

泉が悩む一方、ルカは

「(この人は、前にハヤテ君の目線を見れる機械を使った時に見た)」

泉の事を覚えていて、

「(そして、ハヤテ君の事が好きかもしれない人)」

ルカ本人も気付いていなかったが、泉に敵意を向けていた。

「瀬川さん、ここじゃ話し難い事の様なので、一緒に来ます?」
「あ、うん。お呼ばれしようかな」

3人はコミックVタチバナの住居スペースに移動する事にした。


                   × ×


「では、僕はお茶を淹れてきますね」
「「あ、うん」」

ルカと泉を室内に残し、ハヤテは出て行ってしまった。

「え、えっと。暑い中大変ですね」
「い、いえ。好きでやってる事ですから」

とても気まずい空気が流れ、表の音が煩い位に聞こえて来た。
暫くこの空気が支配した後

「えっと。ハヤテ君に聞きたい事があったんだったね」
「え!?ううん。私が聞きたい相手は、貴方なんだ」
「私?」

泉はどうするか少し悩み

「ハヤテ君とは、どういう関係なの?」
「え!?えっと、「今のところ」友達だよ」
「そ、そうなんだ」

泉にはルカの「今のところ」っと言う言葉が気になり、

「失礼を承知で思い切って聞くけどさ」
「???」


「水蓮寺ルカさんは、ハヤテ君の事が好きなの?」
「!?」


-----------------------------------------------------------------------------------
短めですが、以上です。

次回は続きです。

では。
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Re: 女神と共に第三部 3rd (6月3日更新) ( No.22 )
日時: 2018/06/03 16:30
名前: masa

こんにちはmasaです。

本編の更新です。

どうぞ。
-----------------------------------------------------------------------------------

前回、泉とルカは邂逅し、泉はルカに「ハヤテが好きなのか?」っと聞いた。


聞かれたルカは暫く目を閉じて考え込んだ後

「そんな事を聞いて来て、しかもそれを聞くその雰囲気。若しかして」

ルカは泉を強めの目つきで見つめつつ

「貴方、ハヤテ君の事、好きなのね?」
「ふえっ!?//////////////////////////そ、それは///////////////////////////////」
「どうなの?」

モジモジしつつ正直に答えるべきか少しの間悩み

「うん//////////////////////////好きだよ。大好きだよ//////////////////////////////」
「どれ位?/////////////////////////////////////////」
「え、えっと。ハヤテ君のお嫁さんは、誰が何と言おうと、私がなりたい位//////////////////////////」

泉を見て、ルカは

「(この人は、嘘が苦手そうに見える。つまり、本当の事を言っている可能性が高いわけね。やっぱり、あの時感じたのは正しかった訳ね)」

直ぐに直感し

「ハヤテ君の、何処が好きなの?」
「優しい所とか、かっこいい所とか。後、いっぱい世話になってて、その時も嫌な顔を絶対にしない所とか」
「やっぱり、貴方もハヤテ君が」

ルカの言葉に泉は

「やっぱり、ルカさんもハヤテ君が好きなんだね」
「ええ、そうよ。貴方が言った「ハヤテ君のお嫁さん」は私がなりたい位にね」
「・・・」

室内は物凄く重い雰囲気になった。

するとそこへ

「あ、あの。この重い空気はいったい」

何も知らないハヤテが戻って来た。

「ねえハヤテ君、この人とはどういう関係なの?」
「どうと言われましても」

ルカに聞かれ、ハヤテは少しだけ考え込み

「友達、ですよ。とっても大切な」
「そう」
「・・・」

泉としては褒められて嬉しいのだが、「友達」っとして見られていた事にショックを受けていた。

「それだけ?ハヤテ君に世話になった。って聞いたけど」
「勉強を教えたり、困った事があったら助けたり。色々です」
「そう」

深い関係性ではない事に安心はしたものの、ライバルな事には変わらないので、

「ねえ。さっきの事、ハヤテ君にも言える?」
「ふえっ!?//////////////////////////////////////さ、さっきって!?」

答えは分かっていたが、態と聞き返した。

「さっきはさっきよ。私とハヤテ君について言った事」
「そ、それは」

泉は顔を真っ赤にしてモジモジしつつ

「い、言えないよ/////////////本の目の前じゃ///////////////////」
「そう。でも、私は言えるわよ」

ルカはハヤテに抱き着き

「私は、ハヤテ君が大好き。出来る事なら、「ハヤテ君のお嫁さん」は私がなりたい」
「は、はあ」

ハヤテにはルカの言う「好き」の意味が全く理解出来ず、曖昧な返ししか出来なかった。
すると泉が

「ね、ねえハヤテ君。ハヤテ君は、ルカさんの事、好きなの?」
「え!?えっと」

悩むハヤテに

「どうなの?私の事、好きなの?」
「まあ、好きは好きですよ」
「良かった♪」

ハヤテの言った意味はルカと泉には違って聞こえ、

「どこなの?ルカさんのどこが好きなの!!!!」
「そ、そうそう。私のどこが好き?」

聞かれたハヤテは「なぜそんな事を聞くんだろう?」っと言った表情で

「何事にも一生懸命だったり、純粋だったり、笑顔が素敵だったり。 ああ、後」
「後!?」
「一見完璧に見えて、結構隙だらけな所、ですかね」
「そ、そうなんだ/////////////////////////////////////」

褒められて真っ赤になって俯いてしまった。

すると

「ね、ねえハヤテ君。一応さ、一応だよ!!!一応!!!私の事は?」
「勿論瀬川さんも好きですよ」
「ど、何処が!?」

ハヤテはまた少しだけ考え

「やっぱり、子供っぽさが残る可愛い所、ですね。勿論笑顔もとっても素敵ですし」
「そ、そうなんだ/////////////////////」

泉も真っ赤になって俯いた。

すると、ハヤテの携帯に着信があり

「はい、もしもし?」
『ハヤテ君ね?大事な話があるのよ』
「集マネージャー」

ハヤテの電話相手に、ルカは強めに反応した。

『明日ルカの仕事でどうしても調整ががつかなくて、出てもらわなきゃいけないライブがあるのよ』
「ええ!?ライブですか!?」
『ええ、そうよ。中止に出来なくはないんだけど、その後の事を考えたら、出てもらった方がよくてね』

集さんは電話越しでもハヤテが驚いている事は伝わっていた。しかし、敢えて間をあけず

『だから、折角の機会だし、そこでルカに決めてほしい事があるのよ』
「な、なんでしょう?」
『分かってると思うけど、そのライブにはルカのファンが沢山来る。その沢山のファンの前で宣言してもらいたいのよ』

一旦間をあけ、今迄以上に真面目なトーンで

『「アイドルを続ける」か「このまま引退しちゃう」かをね』
「え!?」
『はっきりと決めてもらうわよ』


『まあ、ハヤテ君は答えが分かってるでしょうけどね』


-----------------------------------------------------------------------------------
また短めですが、以上です。

次回は続きです。

では。
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Re: 女神と共に第三部 3rd (6月6日更新) ( No.23 )
日時: 2018/06/06 17:50
名前: masa

こんにちはmasaです。

今回から、暫くの間駆け足での更新となります。

では本編どうぞ。
-----------------------------------------------------------------------------------

前回、ハヤテは集マネージャーにルカがアイドルを続けるか否かを決めるように言われた。


ハヤテは直ぐに電話の内容をルカに伝え、ルカは直ぐにでも「引退する」っと言おうとしたが

「(な、何で!?なんで「引退する」って言えないの!?何で!?)」
「あ、あの。ルカさん?」

黙ったままのルカに心配そうな視線を送ると、ルカは背を向けて「話しかけないでオーラ」を出し始めた。

「(答えを出せない理由は、正直分かんない。でも、もう一度だけライブに出れば、ライブで歌っている姿を見せれば、ハヤテ君は心底私に惚れるかもしれない)」

こんな事を考え、更に

「(だったら、もう一度だけライブに出てもいいかもしれない)」

今度は異様なオーラを出し、ハヤテは内容は分からないものの、あまり良い事を考えていない事は察せて、呆れつつ

「引退するかどうかはともかく、ライブには出るんですか?」
「・・・」

先程考えた事が成功するかどうか分からないので、

「答える前にさ、ハヤテ君に単刀直入に聞きたい事がある」
「はい?」

ルカは意味ありげに間を置き

「ハヤテ君はさ、女の子に興味ないの?」
「へ!?」
「答えて。私も聞きたいからさ」

ルカと泉の真剣な表情にハヤテがたじろいでいると

「綾崎、答えてやれ!!私の事が好きだと」

虎鉄がこんな事を言いつつ窓から(2階)来たので、ハヤテは虎鉄を蹴り落とし

「そこから落ちて死にやがれ!!クズ野郎が!!」
「(マスター、また人が変わってます)」
「(文句ならあのクズに言ってよ)」
「(言えるならとっくに言ってます)」

白桜とこんな風に話した後、

「別に、興味が無い訳じゃありません。ですが」

言葉に詰まったハヤテにルカは

「(そう言えば、前に「恋愛が分からない」みたいな事言ってたっけ)」

直ぐに思い出し、言葉に詰まっている理由を察した。
しかし泉は知らないので、ただただ待つだけだった。

するとルカは

「じゃあさ、女の子を好きになったり、結婚したりはするのね?」
「ええ、まあ。僕なんかを好きになってくれる人が居たら、ですけど」
「「そ、そうなんだ」」

2人とも安心し、ルカはルカで「ライブをすれば、ハヤテ君は私の事を好きになるかも」っと思い

「分かったわよ。事務所に行くから、連れてって」
「あ、はい。じゃあ迎えをお願いしますね」

ハヤテは電話をかけ、運転出来る使用人に迎えに来てもらうようお願いし

「え!?明日ライブなの?」
「ええ。なので今直ぐ行かないといけないんですよ」

1階に降りてワタルに報告していた。

「で、でもそうなると、人手が」
「大丈夫ですよ。天王州家の使用人の中の2人にお手伝いをお願いしておいたので、来てくれますから」
「そ、そうか。すまないな、頼りっぱなしで」
「お気になさらずに」

深々と頭を下げるワタルにハヤテは笑顔で返した。
すると

「あ、あの」
「はい?なんですか、瀬川さん」
「私も手伝うよ」

思いがけない提案に驚いていると

「私じゃ足手纏いかもしれないけど、迷惑かけちゃったからお詫びを兼ねてさ」
「ま、まあ。手伝ってくれるなら、俺は構わないが」
「では、瀬川さんにもお願いしますね」
「うん♪」

話が纏まると、丁度迎えの車が来た。勿論、手伝いを頼んだ使用人同伴で。
ハヤテとルカは車に乗ってルカの所属事務所に移動する事にした。


                   × ×


ルカの所属事務所に到着すると、受付で行き先を指定され、そこへ行くと

「久しぶりね。体調はどう?」
「まあまあですよ」
「それは良かったわ」

2人にはまだ微妙な空気感があったが、ルカも集さんも特に気にせず、

「一応説明しておくわ。明日、発表してほしい事はこれよ」

集さんは黒いファイルの様なものを差し出し

「9月に行われるラスベガスライブ。それを大々的に公表してもらうわ。でも、貴方がアイドルを引退するっていうなら、それの発表はしなくてはいいわ」

ここでいったん切り、ルカの様子を伺いつつ

「でも、引退するなら、引退を発表して。どっちを発表するかは、私からは何も言わないわ」

集さんの言葉にルカは長めの沈黙の後

「了解したわ。取り敢えず、練習したいから会場に移動して」
「ええ。悪いけど、ハヤテ君も一緒に来て」
「あ、はい」


                   × ×


会場では着々と準備が進められていた。

「ルカさんの事ですから、1日そこらでも大丈夫だとは思いますが・・」
「ん!?」

声をかけて来たハヤテにルカは

「(ハヤテ君はちゃんと女の子に興味がある。つまりここで私のキラキラした姿を見せれば、ナギに勝った後も色々と都合がいいもんね)」

こう思うと

「ハヤテ君の思う通り、10曲程度のライブなら、平気よ」
「成程。流石はルカさんですね」
「ま、まあね///////////////////」

ハヤテの笑顔と褒め言葉にルカは照れつつ

「ともかく、1曲目から順に音出しして。一度通しでやりたいから」
「分かったわ。誰か音出しして」

ルカはまだ未完成のステージに立つと、ルカにスポットライトが当たった

「本当に大丈夫なのかい?」
「大丈夫ですよ」
「ルカさんは、本物のプロですからね」

心配そうな社長に対し、集さんとハヤテは殆ど何も心配してなかった。

「(体が覚えている。 細胞に、刻まれている)」

ハヤテや集さんの思った通り、ルカは休んでいたとは思えない程、完璧に近い完成度を見せつけていた。

「(私からすれば、簡単な事だ。体が覚えている通りの事をすればいいだけだから)」

「うわぁーお」
「・・やっぱりね」

「(一分の狂いや、ミスもない)」

ルカは曲が進めば進むほど洗礼されていき、「一兆万人のファンがいる」と自称するだけはある。

「(どう?ハヤテ君。私、かっこいいでしょ?キラキラしてるでしょ? 恋愛が分からなくても、そんなの関係無くなる程、私に惚れちゃうでしょ?)」

リハーサルとは言え、ルカは完璧にステージをこなした。 ただし、そこには「自身が惚れたハヤテを自分に惚れさせてやろう」っと言う思惑があったが。

「凄いじゃないかルカちゃん。リハーサルでこんなに完璧なら本番でも」
「まだまだですよ。ここからさらに精度を上げていきますよ」

そう言い切ると、ルカはあからさまにハヤテをちらちら見つつ

「本番では、もっともっと高い完成度のステージをお見せしますよ」

そう言い切った。
しかし、ハヤテは分かってはいたのだが、こうもあからさまだとリアクションに困り、ほぼ無表情を貫いた。

「よしっ。じゃあアレンジ加えていきたいから、もう一度1曲目からお願いします」

そんなこんなでリハーサルは進んでいった。
ルカはリハーサルをこなしつつハヤテを見て

「ハヤテ君のあの表情、「効果は抜群だ」って感じね。このまま一気に心を盗んじゃうんだから」

こんな風な思惑に勿論気付かず、ハヤテは

「(やっぱり、ルカさんは凄いね、白桜)」
「(ええ。伊達にトップアイドルなんて称えられてる訳じゃ無いって訳ですね)」
「(ルカさんは本物のプロ。そしてあの感じ。やっぱり)」

同化している白桜にはハヤテの考えが当然の様に分かり

「(マスター。貴方の思いを、直接伝えるべきですよ)」
「(分かってるよ)」

リハーサルも終わり、ルカは関係者用の通路で

「どうだった?私は」
「とっても素敵でしたよ」
「でしょ〜?」

自分の狙い通りになり、ルカは

「(これはやっぱり、「効果は抜群だ」ね。これなら勝負に勝った後でも)」

こんな風にうまくいった事の余韻に浸っていると

「ルカさん、ここに来る前の話ですが・・」
「え!?」
「アイドル、どうするんですか? 続けるのか、引退するのか 」
「・・・」


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以上です。

次回は続きです。

では。
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Re: 女神と共に第三部 3rd (6月7日更新) ( No.24 )
日時: 2018/06/07 18:00
名前: masa

こんにちはmasaです。

本編の更新です。

どうぞ。
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前回、リハーサルを完璧にこなしたルカにハヤテが選択を迫った。


「私は水蓮寺ルカ。今は、ある重要な選択を迫られている」

ルカはかけてない眼鏡に手を当てるようにして、考え込んでいた。

「考えるのよ、ルカ。この選択が、とっても大事なんだから」

自分に言い聞かせ、目の前の光景に集中した。

「カレーうどんか、きつねうどんミニカレーセットか」

え〜、期待した方すみません。ルカは現在ライブ会場近くのうどん屋に来ており、店の前の食品サンプルとにらめっこしていた。

「今日は沢山動いたわ。つまり、エネルギー源となる炭水化物と、カレーの様なガツンと来る物が食べたい訳だが、カレーうどんでは物足りない可能性がある。でも、きつねうどんミニカレーセットは、きつねうどんがメインでカレーは添え物。きつねうどんは嫌いではないけど、今食べたいのはカレーよね」

ここまで一気に考えると、いったん落ち着け

「いっそ、大盛りカレーを頼むのはどうだろう?いや、ここはうどん屋だ。うどん屋なのにうどん以外を頼むなんて、スタバで牛乳だけを頼むようなもの。お店の長所を殺してしまうようなもの」

ルカはまた一旦落ち着き

「落ち着くのよ、ルカ。私の腹は何腹なの?焦りは何も生まない。私は、お腹が空いてるだけなのよ」

「少しは焦りなさい!!」

 ポコッ

「痛〜い!!叩いた〜!!なんか固くて長いもので叩いた〜」

ハヤテは丸めたポスターでルカを軽く叩いていた。

「全く。長々と無駄に行を費やさないで下さいよ」

ハヤテは呆れつつ更に

「そんなどうでも良い事で悩んでないで、考えるべき大事な事があるでしょ」
「考える事?何さ」
「アイドルの事ですよ」

ハヤテが言うと、ルカは食券を買いつつ

「なんだ、その事か」
「なんだじゃないですよ。大事な話じゃないですか」

注文した料理を食べ始めたルカにハヤテは

「貴方は仮にもトップアイドルなんですよ。ちゃんと考えてください。そしてきちんと決断してください」
「分かってるよ〜、も〜」

文句を言いつつ料理も食べつつ

「でもさ、私にも深刻な問題はある訳よ」
「な、なんですか?それって」
「そ、同人誌。今回はラブコメなんだけどさ、オチがイマイチしっくり来ないんだよね」

ルカは食事と愚痴をほぼ同時進行していた。

「確かに、それも大事ですよ。ナギさんとの決着がありますしね」
「でしょ〜?」
「ですが、ライブは明日なんですよ!!そっちが先です!!」

半ば叱られている状況なのに、ルカは

「やっぱ、カレーセットの方が良かったかも」

3分の2以上食べ終わっているのに今更な愚痴を言ったルカにハヤテは溜息をついた。

「(マスター。水蓮寺さんはこの問題を考えたり悩んだりしているんでしょうかね?)」
「(まあ、実際問題目を逸らしてるんだろうね。大事な事だって事は、僕達以上に理解はしてるんだろうけどね)」

ハヤテと白桜が話している一方で、ルカは話しかけて来なくなったことで黙々とカレーうどんを食べていた。

「(ですがマスター、貴方の考えでは)」
「(分かってるよ。でも、この答え合わせはその瞬間が訪れるまで、出来ないしね)」
「(そうですね。無粋でした)」


突然ですが。
二者択一。人はそういう問題に直面した時、どのような心理経過を経て決断に至るのか。
今回はそれを、ルカを介して見て行きましょう。


                   × ×


時間は飛び、深夜。

「(ルカさんは、こんな時間まで1人で自主練なんだね)」

現在は深夜2時を回っており、十分過ぎる位遅い時間だった。

「(あれ程の出来に至るには、並大抵の努力じゃ済まなかったはずですよね)」
「(だよね。本当に凄いもんね)」
「(ですが、水蓮寺さんは何を考えているんでしょうね)」

白桜に言われ、未だ自主練を続けるルカを見て

「(まあ、関係なさそうな事じゃない?)」
「(・・ですね)」

1人と1剣の予想は当たっていた。
では、ルカが何を考えているのかと言うと


「言われなくても分かってるわ。あの白い奴を倒せれば、私は英雄になれる」

なぜかルカは巨大ロボを操縦しており、交戦中だった。
相手ロボの銃撃を自身の剣で弾きつつ

「無駄だよ。その銃に世界を滅ぼせる程の威力があったとしても、当たらなければ、意味は無い」

ルカは持っていた光線剣で切り付けたが、倒すには至らず、コックピット周辺を破壊したに過ぎなかった。
しかし、相手ロボのコックピットにはハヤテが乗っていた。

「そ、そんな。どうして?私達はあんなにも深く愛し合っていたのに」
「どうしたのルカ。早く倒しなさい!!」
「で、でも。あれには愛する人が」

戸惑うルカに集さんは

「貴方がやらないなら、私がやるわ」
「そ、そんな。どうして愛する者同士がこんな悲しい戦いを」


「ルカさん、紅茶淹れたので、休憩してください」
「な、なにするのよ!!!」
「は!?」

ルカの頭の中では、ハヤテに集さん共々銃で消し飛ばされていた。


「愛する者同士、悲しみや苦悶を浮かべてそれでも戦わなきゃいけない悲しみ味わうもんでしょう!!!いきなり銃でズドーンは無いでしょう!!」
「な、何の話をしているんですか???」

ルカの妄想など分かる訳も無いので、いきなり文句を言って来たルカにハヤテは首を傾げるだけだった。
っとはいえ

「ルカさん、また無駄な事を考えていたんですか?真面目に考えましょうよ」
「失礼な。私だって真面目に考えてるよ」
「それは失礼しました」

しかし


「魔王、貴方の悪行もこれまでよ」
「ク、クソッ」

今度はルカは勇者になっており、超クライマックスの魔王戦だった。

「覚悟なさい!!貴方を倒して世界を平和に導くわ」

そういって勇者ルカが剣を振り上げると

「パパを虐めるな〜!!!」
「えっ!?」

突然現れた子供の魔物に、剣が止まった。

「パパを虐める奴は許さないぞ〜!!ぼ、僕がやっつけてやる!!」
「や、やめなさい。お前が叶う相手じゃない」
「あ、貴方の子供なの?」

魔王は答え辛そうに

「ええ。私の息子です。 勇者殿、私はどうなっても構いません。もう魔力も尽き、体力もあと僅かしかありません。抵抗はしません。 で、ですから息子だけは」
「パ、パパを倒すなら僕も倒せ〜!!じゃ、じゃなかったら僕が勇者を」

目の前の美しき親子愛を見ながら勇者ルカは

「(ど、どうする!?魔王を倒し、真の勇者となって世界を平和にするのは私の使命。で、でも)」

父を必死で守る子供魔物と、息子を必死で守る魔王。それを見ていると、心に迷いと痛みが襲い掛かり

「(魔王を倒せないと世界は混沌に包まれたまま。で、でも倒しちゃうとこの子はたった1人にになっちゃう。母親もいなさそうだし)」

迷う勇者ルカ。振り上げた剣の行方は・・


「ルカさん、お夜食に親子丼作ったんですけど」
「ハヤテ君!!!」
「は、はい!?」

突然怒鳴られたハヤテは訳が分からず、そんなハヤテにルカは

「どうして親子諸共やっつけちゃうの!!!勇者の決断にハラハラする所でしょ!!!せめて魔王だけ倒して、子供は「自分達で育てよう」って後味の悪さの中に温かみのある結末を用意するべきでしょ!!!」
「で、ですから、何の話をしているんですか???」

ルカの妄想などやっぱり分かる訳無いので、ハヤテは首を傾げるだけだった。


                   × ×


そんなこんなでライブ当日。

結局ルカは、何も結論出せないままだった。


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以上です。

次回は続きです。

では。
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Re: 女神と共に第三部 3rd (6月8日更新) ( No.25 )
日時: 2018/06/08 18:00
名前: masa

こんにちはmasaです。

本編の更新です。

どうぞ。
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前回、ルカは答えを出せないまま、ついにライブ開催となってしまった。


「私は、アイドルになりたかったわけじゃない」

ルカはこんな事を思いつつライブが始まった。
当然の様にお客さんは満員御礼で、立ち見客さえも出るほどだった。

「芸能界に、自分の夢に、沢山の悔いを残した両親が、周りを見返したい一心で、私を教育した」

ルカはこんな事を考えつつも歌も振り付けも完璧で、誰もこんな事を考えているとは気づいていなかった。

「人よりは努力はした。才能も、きっとあったんだと思う。才能の有無は努力じゃ埋まらないって聞いた事あるし」

するとルカには両親に何度も言われた言葉を思い出した。

「父さんと母さんの、仇を取ってほしいんだ」
「そう。私はその為に歌って、踊って、ステージで光り輝く能力を得た」

こう考え、目の前で沢山のお客さんが盛り上がっている光景を見て、

「こんな風に沢山の人を集め、魅了し、また再び足を運ばせる事は出来た」

するとまた両親を思い出し

「両親は好きだった。だから、「仇を取ってくれ」って言われて、喜んでもらえると思って迷う事なんてしなかった」

ここまで思うと、去年のクリスマスイブの事が鮮明過ぎるほどにフラッシュバックした。

「でも、結論は実の両親に1億5千万強の借金を押し付けられた。まあでも、その借金は無くしてくれた人がいたけど」

幸い間奏だったため、言葉に詰まった瞬間は悟られなかった。

「私は、何の為にここまでやって来たのだろう?この歌は誰のために歌っているのだろう?この、手に入れた能力で私は何をしたかったのだろう?」

すると再び去年の事がフラッシュバックし、

「あのクリスマスの日、涙は全て涸れ果て、夢は全て瓦礫と化した。そして、もう泣かない事を決めた。 泣く事など無いと思った」


                   × ×


回想入ります。

「9曲目が終わったら、いったんMCよ。そこで、「重大発表がある」っと言いなさい」

話は昨日のリハーサル後の話である。

「そしてその後、マイクを上にかざせば後ろのスクリーンからラスベガスライブの告知映像が流れるわ」

集さんは少し言い難そうに間をあけ

「でも、貴方が引退するっていうなら、マイクを床に置きなさい。そして「今日を持って引退します」って言いなさい。そうすれば、告知映像は永久にお蔵入りになるから」

また間をあけ

「そのままステージを降りてもいいわ。全ては、貴方次第よ。アイドルを続けるのか、引退するのかは。事務所はどちらの決断をしても、異論は挟まないわ」

回想終わります。


                   × ×


「アイドルを続けるって、誰の為に?何のために? 歌が無くても、楽しい事、うれしい事、いっぱいあるよね」

ルカの脳裏にはハヤテやナギ達と過ごした日々が思い出されていた。

「夢もライバルも。 そしてどうしようもない程に好きな人も出来た。だから辞めてやるわよ!!」

ライブをこなしつつもこう決断し、

「どれだけ歌っても、踊っても、努力しても、辛い事や悲しい事、間違った事しかないじゃない!!だから、やめてやるわよ!!もうこんな事、終わりにしてやるわ!!」

洗脳するかのように言い聞かせ、自身の決断を固めていった。

その一方、舞台袖では事務所の社長は心配そうに見守り、集さんは例えるのが困難な複雑な表情をしていた。
そしてハヤテは腕を組んで殆ど無表情を貫いていた。

「もう、9曲目だ。一体・・」
「(・・あの時、あの予想・・どうなの、ハヤテ君)」

集さんはルカを気にしつつハヤテを見ると、考えが読み取れなかった。


一方のルカは指定された9曲目を歌いながら

「私は、新しい夢を追うわ。やっと見つけた最高にして最強のライバルと共に。 そして、心から愛する人と生きるわ」

最後の決断をし、後は歌い終わってマイクを置くだけ。そう思ったその時

「・・・」
「「あ!!」」

舞台袖の社長、集さん、会場のお客さんは騒然となっていた。

なぜなら舞台上のルカが大粒の涙を流していたからだ。

「・・ルカさん」

一同大慌てで、ルカ本人にもなぜ自分の目から涙が溢れ出て来るのか分からないでいた。

しかし、ハヤテだけはただただ冷静に状況を見極めていた。

「ま、まずいぞ!!とりあえず照明を」
「余計な事は、しないでくれます?」
「え!?」

ハヤテの脅しとも取れる声色に舞台袖は凍り付いていた。
舞台袖が凍り付く中、ルカはただただ泣いていた。

すると会場から理由は分からないものの、チラチラと応援する声が聞こえ始めそれは爆発的に感染するように会場全体に広がった。

その声援を一身に受け、ルカは必死で涙を抑え・・・


持っていたマイクを高々と上にかざした。


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以上です。

次回は続きです。

では。
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Re: 女神と共に第三部 3rd (6月9日更新) ( No.26 )
日時: 2018/06/09 12:35
名前: masa

こんにちはmasaです。

本編の更新です。

どうぞ。
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前回、ルカは色々考えつつライブをこなし、止めるつもりだったが、アイドルを続けるっと言う意味のマイクを上にかざす行為をした。


ルカの行動に少しの間舞台袖でも思考が追い付いていなかったが

「告知映像!!急いで!!」
「もう準備出来てますよ」

慌てる一同をよそに、ハヤテだけは冷静にすぐ横に置いてあったパソコンをちょこちょこっといじった。
するとルカの後ろにあったスクリーンに「水蓮寺ルカ 緊急告知!!」っと大々的に映し出され

「エヘヘ、ごめんね。今から言う事を考えてたら、感極まっちゃって」

驚く観客をしり目にルカは手袋で涙を拭い

「久しぶりに皆に会えて、色んな事考えて、言いたい事はいっぱいあるの。でも・・」

すると今度は先程のスクリーンから「水蓮寺ルカ LIVE IN LASVEGAS」っと映し出された。

「今度は海を越えて、歌いに行くよ〜!! 皆、ついて来てくれるかな〜」

ルカが聞くと、観客はそれに応える様に歓声を送った。

「・・・」

安心する社長を含めたスタッフに対し、1人だけ複雑そうに舞台を眺めていた。

何はともあれ、ルカの復活ライブは大盛況のまま終わりを迎え、観客は全員余韻に浸りつつ帰路についていた。


                   × ×


一方のルカは無言のまま俯いたまま、楽屋へ向けて関係者通路を歩いていた。
その途中、集さんの横を通った。すると

「一応、お礼を言っておくわ」
「・・・」

返答はなく、全く立ち止まる事も無くルカは歩いて行った。
すると、ルカを護衛するように歩いていたハヤテを集さんは呼び止め

「全ては、貴方の予想通りだった。って訳ね」
「・・・」
「あの時・・」


                   × ×


話は少し時間を戻し、ルカが家出してハヤテが荷物を取りに行き、集さんに「ルカの借金を自分が代わりに返す」っと纏まった直後(第三部2ndのNo.56)。

「集さん、でしたっけ?」
「そうよ。何?」

ハヤテは少し間をあけ

「これは、根拠など全く無い、僕の勘なんですが。 ルカさんは、アイドルを止めないと思いますよ。漫画家として成功出来ても」

真剣な眼のハヤテに、集さんは少し考えた後、溜息をつき

「根拠はあるの?」
「無いですよ。勘、って言ったじゃないですか」

真意の読めない顔つきのハヤテに

「それは貴方が勝手にそう思ってるだけでしょ?」
「ええ。それは否定しません。 ですが、僕の勘は当たる事が多いですよ」

集さんは溜息をつき

「ま、取り敢えずは記憶の片隅にでも入れておくわ。 さ、銀行に行きましょ」
「ええ」

回想終わります。


                   × ×


「あの時、貴方の言葉は信じてはいなかった。適当に受け流していただけだった。でも、貴方の予想通りだった」
「・・・」
「言い方はあれかもしれないけど、「全て貴方の掌の上だった」ってとこかしらね」

皮肉交じりの言葉にハヤテは

「買いかぶり過ぎですよ。自分で言っておいて、勘が当たるなんて思ってませんでしたから。不安もありましたし。それにあの涙も、予想外でしたから」
「それでも貴方は凄いわよ。「ルカは止めない」って的中させたんだから」

素直に褒めて来る集さんにハヤテは

「・・もう行きますね。ルカさんの護衛等もあるので」
「任せるわ」

ハヤテはルカの後を追った。


                   × ×


ルカは天王州家使用人専用保養所には戻らず、天王州家の自室に戻ってきていた。そして、ベッドに仰向けに寝転がっていた。
薄暗い室内でボーッとしていると、ドアがノックされ、入室を許可すると

「ルカさん、ライブお疲れ様です。少し遅くなりましたが」
「ハヤテ君」

ハヤテは入室してルカの傍まで来ると

「夜風に、あたりに行きませんか?」
「うん、良いよ」

2人は屋敷を出て庭に来ていた。

「今日のライブ、感動しました。流石はルカさんって」
「そう」

ハヤテが自分を庭へ連れ出した理由が分からないでいると

「ルカさんは、やっぱり歌が好きなんですね」
「・・・」
「好きでなければ、あんな風に人を感動させるなんて、不可能ですもんね」

ハヤテの言葉に、ルカはハヤテに背を向けたまま複雑そうな表情をした。

「歌が好きだからこそ、あの涙だって」
「歌うのが好きだから、止めたくないから泣いたと思ったの?」
「・・ええ」

遮って言って来たルカに返しつつ

「止めたくない。そんな心の叫びが涙となって表れた。そう感じましたよ」

真面目に言うハヤテにルカは長めの沈黙の後、

「分かんないのよ!!!!」

普段のルカからは想像出来ないほどの叫びだった。

「あの時、止めるつもりだった。止めてやるつもりだった!!  借金はあったけど、ハヤテ君が何とかしてくれた。しかも返済を拒否するような形で」

ルカは落ち着いていたが、

「歌うのが好きで、止めたくないから泣いた!? 違うわよ!!!止める気満々だったわよ!!!」

ルカの叫びは心からの叫びに聞こえた。

「私を縛るものは何も無かった!!!!だから止めるつもりだった!!!でも、出来なかったのよ!!!」

後ろからで分かりにくかったが、ルカは泣いてると分かった。

「止めたかったのに、出来なかった!!!だから分かんないって言ったのよ!!!!」

遂に嗚咽すらも始めたルカにハヤテはある事を思い出していた。


                   × ×


話は少し戻し、ルカのライブの最中。

「綾崎、ハヤテ君ね?」
「え!?」

声をかけられ、振り向くとスタッフでは無い女性が立っていた。

「貴方はいったい」
「私はドクター黒須。流しの医者さ」
「はあ」

ハヤテは首を傾げつつ

「お医者さんが僕に何か?」
「とっても大事な話だよ」

黒須は少しの間間をあけ

「君みたいな人を、私は探していたんだ」
「お医者さんが僕を、ですか」
「ああ。君になら、あの水蓮寺ルカを幸せに出来るかもしれない」

突然の言葉にハヤテは驚き

「それってどういう」
「実は・・・」

回想終わります。


                   × ×


未だ嗚咽しながら泣くルカにハヤテは黒須の「ルカを幸せに出来るかもしれない」っと言う言葉を反芻し

ルカをそっ、と後ろから優しく抱きしめた。

「大丈夫。僕がルカの事を幸せにしてみせるよ」
「ハヤテ君」

ナギが見ている事など分からず、泣いているルカをハヤテはただただ優しく抱きしめていた。


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以上です。

次回は続きです。

では。
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Re: 女神と共に第三部 3rd (6月10日更新) ( No.27 )
日時: 2018/06/10 13:20
名前: masa

こんにちはmasaです。

本編の更新です。

どうぞ。
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前回、ルカはアイドルを止めるつもりだったが出来ず、ハヤテに慰められた。


ナギが衝撃的なシーンを目撃してから一夜明け。

「どうした、お嬢様。旅から帰って来てから妙に元気ねえな」
「・・そう、か?」

悠太はナギが衝撃的なシーンを目撃したことを知らないので、落ち込んでいる理由が分からなかった。

「なんか、心ここにあらずって感じだな。大丈夫か?」
「・・・」

答えないナギに悠太は短く息を吐き

「何があったか分かんねえが、頑張れよ」

そう言うと、持ってきた紅茶を淹れ、書斎から出て行った。


                   × ×


一方。

「すみません黒須さん。どうしてもやらなければならない事があるので、先に行っててください」
『そう、か。敢えてそれは聞かないよ。まあ、君は大財閥の使用人だ。心配はしてないから、先に行ってるぞ』
「ええ。必ず追いかけますから」

電話を切ると

「誰と電話してたんですの?」
「アーたん。ちょっとね」
「ふ〜ん」

するとハヤテはアテネの様子からまた「甘えたい症候群」だと直ぐに察し。

「ごめんアーたん。僕にはやらなければならない事があるんだ」
「へ〜」
「それが終わった後なら、甘えてきていいからさ」

ハヤテが言うと、アテネは

「そう、ですか。その言葉、忘れないでくださいね」

大人しく引き下がった事で妙に恐怖を覚えたが、ハヤテは行動を急いだ。


                   × ×


一方のナギ。
悠太に淹れてもらった紅茶を飲んでも落ち着かず

「やっぱり、聞けばよかったかな。あの時の事」

やはり、昨夜目撃した光景が心に引っかかり、なにも手付かずだった。

「でも、もし「ハヤテ、ルカを幸せにするって、どういう事なのだ」って聞いて」
「言葉通りの意味ですよ、ナギさん。ルカさんと結婚して幸せにするって意味です。婚約者候補なんて無視して」
「って言われたら」

ナギは自分で妄想しておきながら、その妄想で胸を押さえて震え

「そんな事言われたら、立ち直れないよな」

そう呟くと、自身が書き上げたネームが目に留まり

「そ、そうだよ。勝てばいいんだ。勝てば私にとって最大の脅威が居なくなる。アテネ達も脅威だが、ルカに比べれば幾分かだけましだ」

何とか自分を奮い立たせ、ペンを持つと

「書け!!!書くんだ私!!!この勝負、「絶対に負けてはいけない戦い」なのだ!!」

そう言い聞かせたが、ナギが仕上げたネームは30ページあるのに対し、原稿は全部真っ白。つまり、1ページも書けていないのである。
しかも、現在は8月4日。 決戦の日は8月の13日。 つまり

「作者よ。それって物理的に完成が難しいって事じゃないのか?」

はい、かなりね。

「書け!!!書くんだ私〜〜〜!!!」

「(フフフフフフフフフフフフフフ♪このまま何もせずに無駄な時間を過ごしてほしいですね〜♪そうすればとてもとても面白い事になりますね〜♪そんな事になればコレクションが増えちゃいますね〜♪ああ♪)」


                   × ×


一方その頃、ルカは。

「これがラスベガスライブの概要よ。そして今後のスケジュールもよ」

事務所に戻って集マネージャーの話を聞いていた。

「・・聞いてる?ルカ」
「え!?」
「やれやれ」

殆ど上の空のルカに集さんは溜息をつき

「アイドルは、続けてくれるんでしょ?」

ルカは目を閉じて暫く黙った後

「あと少しだけ、待ってください」
「・・・」
「決着を、つけなければならないから」


                   × ×


一方。

「確かに、このままじゃ間に合わないな」

ナギの様子を見に来た千桜はいきなり助けを求められ、事情を聞いたうえで言っていた。

「分かってるさ。だから「助けてくれ」って言ったんだ」
「・・・」
「正直、寝る間も惜しむ位・・」

途中で顔を歪めたナギに

「ん!?どうした?」
「北海道で歩き過ぎた。大丈夫だと思ったんだが、体に痛みがな」
「な、何があったんだ!?大丈夫なのか!?」

心配そうな千桜にナギは

「別に動けない位では無いよ。だから大丈夫だ」

ナギは千桜に真剣な表情で

「私は、やるしかないんだ」
「・・そうか。なら私も、出来る限りの手伝いをするよ。 寝る間を惜しんでな」
「ありがとう、千桜」

素直にお礼を言い

「私はこんな所で、負ける訳にはいかんのだ」

かっこよくナギが決めた直後

「うわっ!?な、なんなのだ!?」
「て、停電か!?」
「か、勘弁してくれ。折角決めたのに」

書斎内の2人が文句を言ってると

「お嬢様、平気か!?」
「悠太、真っ暗になったのだ」
「停電みたいだな。 お。千桜、来てたのか」

懐中電灯を持って部屋に来た悠太は2人の無事を確認した後

「ブレーカー見て来るから、ここは頼むな」
「ああ」

千桜に持ってた懐中電灯を渡し、別の懐中電灯をつけて部屋を出て行った。

「そう言えば、外は雨だな。雷もなってるし」
「全然気付かなかったのだ」

懐中電灯があるとはいえ、作業するには暗く、待つしかなかった。

「(フフフフフフフフフフフフ♪良い事思いついたわ♪このまま真っ暗にしときましょう♪そうすればナギを困らせる事が出来ますよね〜♪そんな事になれば私の望む「ナギの不戦敗」っと言う結果が待ってますね〜♪ああ♪)」

とか思っていた人がいる一方。

キィィィィ

「「ひい!?」」

突然書斎のドアが開き、人魂の様な明かりが近付いて来て、ナギも千桜も震えていた。

「な、何を驚いてるの?」
「なんだ、ルカか」

ドアを開けたのはルカで、人魂の様な明かりはただ単に懐中電灯だった。

「こんな漫才はどうでもいいわ。 ナギ!!」
「な、何だよ」

強めの口調で呼ばれ、ナギとルカは睨み合った。
その睨み合いが1分程続いた後

「私はハヤテ君が欲しい」
「・・・」
「ハヤテ君は、私を助けてくれた。優しくしてくれた。 心を盗んでくれた」

ルカはナギをさらに強めに睨み付け

「私は、ハヤテ君がどうしても欲しい。 だからこの勝負に勝って「婚約者候補No.7の座と結婚を前提とした恋人」になるわ」
「そんな事、許さない」

ナギも強めにルカを睨み返し

「お前がハヤテの婚約者候補になったら、私の戦いはより過酷な物になる。婚約者候補と言う武器をお前には与えない、恋と言う名の戦場からお前を退場させてみせる!!!」

ナギが言い切ると、この場は漫画やアニメならば激しい火花が散るという演出が為される程だった。

「私は、負けない。武器も手に入れるし、戦場からも出て行かないわ」


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以上です。

次回は続きです。

では。
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Re: 女神と共に第三部 3rd (6月11日更新) ( No.28 )
日時: 2018/06/11 18:00
名前: masa

こんにちはmasaです。

本編の更新です。

どうぞ。
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前回、ナギとルカはお互いに宣戦布告しあった。


「私は負けない。婚約所候補と言う武器も手に入れるし、恋と言う名の戦場も出て行かない」
「そうはいくか!!武器も与えない!!戦場からも出て行かせる!!」

ナギは言い切ると、目を閉じたまま

「旅をしたお陰で、本当に面白いと思えるネームを描く事が出来たんだ!!だから、お前に勝ってライバルを1人だけであっても減らす!!」

ナギの強い言葉にルカは振り向いて書斎を出る間際

「受けて立ってあげるわ。でも、今回も勝つのは私。ナギには2連敗という屈辱をプレゼントするわ」


                   × ×


場所は変わり、天王州家使用人専用保養所。

「ってかっこいい事は言ったけどさ」

ルカは原稿用紙と睨めっこしていた。 ルカの原稿用紙も全部真っ白であり、ナギ同様原稿が出来上がってなかった。

「ど、どうしよう。ナギに啖呵切ったまでは良かったけど、全然原稿が出来てない」

室内をウロウロしながら焦っていた。
勝負の日まであと九日。完成しなければ勝敗以前の問題である。

「悩んでる場合じゃないわ。兎に角描かないと。描かなければ何も始まらないわ」

焦る自分を無視し、ルカは机に向かって漫画を描き始めた。
しかし、焦りと言うのはメンタルにも影響を与える。つまり、漫画にも影響を与えるという事だ。

「(旅のお陰で、本当に面白いネームが描けた。か)」

ここに来る前のナギの言葉が引っかかっていた。それにより心の乱れを生じさせ、ペンの鈍りや遅さを生み出していた。
その結果

「う、嘘!?もう6時間も経っちゃったの!?まだ1枚も進んでないのに!?」

不安や焦りは悪循環を生み、余計にスピードを鈍らせ、クオリティさえも悪化させる。

「・・・」

ルカはまた考え込み、ネームを見返す事にした。

「ネーム、それなりな出来だと思うけど、結局はそれなりに纏まってるだけなんだよね。何か、しっくり来ないと言うか何と言うか」

床に寝っ転がり、何度も何度も考え込んだが

「あ〜〜っ、もう。どうしたらいいのよ〜」

「どうしたんですか?ルカさん」
「ハヤテ君」

上から覗き込んで来たハヤテに驚きつつ

「な、何でここに!?」
「僕も天王州家の使用人ですからね。問題なくここには来れるんですよ」
「そ、そうじゃなくて。大事な用があるんじゃ」

不安そうなルカにハヤテは

「ルカさんの手助けがまだ残ってますからね。それが終わったら、大事な用に取り掛かりますよ」
「そ、そうなんだ」
「それより、悩んでいたみたいですが」

ルカは打ち明けるか悩み

「ハヤテ君はさ、漫画って描ける?」
「簡単なお手伝い位なら、出来ますよ。ルカさんやナギさんみたいに一からってのは少し難しいですが」
「そ、そうなんだ」

落ち込むルカに

「ですが、アドバイスならそれなりに出来ますよ。これでも執事修行を10年積みましたし」
「10年!?そんなに!?」
「まあ、色々あるんですよ」

ルカはハヤテが10年前から執事をしていると知っているので、驚きはしたがすぐに納得がいった。
なので

「ね、ねえハヤテ君。これ読んでくれる?」
「今書いてる漫画ですか?」
「う、うん」

ハヤテはネームを受け取ると、読み始めた。

ルカの描いた漫画は現代にタイムスリップした紫式部のお話だ。

若い少女の姿で現代に蘇った紫式部は現代においても自分の作品が、千年先でも読まれている事に満足していた。
そして、その千年間で小説の表現方法が劇的に進化してる事に衝撃を受けた。

そこで紫式部は現代の表現方法を徹底的に取り入れ、現代であっても自分が一番の作家である事を証明するため、必死の努力を始めるのであった。

「へえ。面白そうじゃないですか」
「でしょ?」

しかし、紫式部は小説を書きながら疑問を感じ始めていた。

「・・・」

現代では他に楽しい事が沢山ある。千年前には書く事以外楽しい事は無かった。しかしここにはそれ以外であっても楽しい事はある。
食べる事、遊ぶ事、そして恋。 やがて彼女はその恋こそが本当の幸せだと悟った。 その恋が実って、物語はハッピーエンドを迎える。

「ど、どうかな?」

ハヤテが読み終わったのを感じ、ルカは恐る恐る聞いていた。

「ルカさん。僕は貴方の一番の良さは、明るくて、とても素直な所だと思うんです」
「そ、そうかな?///////////////////」
「なので、貴方には嘘は似合いませんよ」

ハヤテの言葉にルカは一気に照れから回復し

「う、嘘って」
「ルカさん・・」

ルカは後に「この時の出来事は、自分の人生において一番大事な分かれ道だった」っと語っている。


                   × ×


翌朝。

「ルカさん、調子はどうですか?」
「うん!?まあね」
「もう、大丈夫そうですね」

ハヤテはルカの様子から察し

「食事は作っておきました。冷めても美味しく食べれるものなので、後で食べてくださいね」
「うん。ありがと」
「では、僕はもう行きますね。ここにいれば安全ですが、何かあれば連絡すれば師匠が来てくれますので」
「ああ、メイド長さんね」

ハヤテは保養所を出ると直ぐに携帯を取り出し

「あ、もしもし?僕です、ハヤテです。例の準備は?」
『既に完了しています。直ぐにお迎えに上がれます』
「では、お願いします。場所は分かってますよね?」
『勿論です』

ハヤテは迎えに来た天王州家のヘリで目的地へと向かった。


                   × ×


一方のナギ。

「ん!?お嬢様、大丈夫か?顔色悪いぞ」
「疲れと睡眠不足が重なってるだけだ。平気ではないが、何とかなる」
「・・無理すんなよ」

悠太は眠気覚ましのコーヒーを差し入れし、書斎を出た。
すると、悠太と入れ替わりで昨日は三千院家に泊まった千桜が書斎に入って来た。

「中々進まないもんだな」
「そうだな」
「(でも、完成出来なければ、最も厄介なライバルに最も厄介な武器を与える事になる)」

そう考えると、否が応でもライバルの事が気になり

「ルカは、どうなんだろうな」
「さあな。私は聞いてないが、真山君なら知ってるんじゃないか?」
「・・じゃあ、聞くか」

書斎を出てキッチンにいた悠太に聞くと

「俺も詳しくは知らんが、ハヤテが言うには「何かが吹っ切れた様に凄いペースで描いてる。あのペースなら余裕で間に合いそうだ」ってらしいぞ」
「・・そうか」

ナギは急いで書斎に戻り

「ルカは大丈夫なのか。私は完成させられるのか?」

心配になったナギは見てしまった「ハヤテがルカを慰めている所」を思い出してしまい。

「(万が一勝てても、ハヤテは私に振り向いてくれるのだろうか?)」

ネガティブな事ばかり浮かんでしまうが、無理やり振り切り

「描くしかないんだ。余計な事は考えるな!!」


                   × ×


一方。

「ハヤテ坊ちゃん、そろそろ着きます」
「許可は?」
「既に取ってあります」

ハヤテは外の景色を眺め

「(思ったより早く着いたな。北海道に)」


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以上です。

次回は続きです。

では。
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Re: 女神と共に第三部 3rd (6月12日更新) ( No.29 )
日時: 2018/06/12 18:00
名前: masa

こんにちはmasaです。

本編の更新です。

どうぞ。
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前回、ルカは迷いを振り切ったが、ナギはネガティブな事ばかり考えてしまっていた。


「ん!?マリアさん、何してるんっすか?」
「ナギが今夜も頑張ってるようなのでお夜食ですよ〜」
「ああ、そうっすか」

ナギのお茶を淹れに来た悠太はキッチンでマリアさんと話していた。

「それで、ナギはどうなんですか?」
「まあ、結構頑張ってますよ。殆ど寝てない位」
「そうですか」

お茶の準備が終わった悠太はキッチンを出て行った。
すると?

「(このまま無理してナギが倒れてくれると面白いですね〜♪そうなれば私のコレクションが♪ああ♪)」

とか思っていた人がいたそうだ。


                   × ×


一方。

  「私、何でこんな事をやっているのだろう」

「丸二日かけて5ページ。このペースじゃ間に合わないぞ」

  「分かっている。だが、ペースが上がらないんだ」

ナギは漫画を描きながら次々と別の考えが浮かんでいた。

  「残るページは25。それに対して日数は7日しかない。しかし、同人誌には表紙や裏表紙、編集や製本作業もある。こんなペースじゃ間に合わない」

ナギは必死で色々と戦っていた。

  「間に合わなければ、勝敗以前の問題だ」

「ナギ〜♪とりあえずお夜食を♪」
「要らない。そんな暇はない」
「大丈夫か?殆ど何も食べてねえじゃねえか」

心配する一同をしり目に

「食事する暇すら、私にはない。軽食で良い。 マリア、すまんな。折角用意してくれたのに」

謝るナギに

「(ふざけんじゃねえぞ!!!!!!なんで俺様の夜食を食わねぇ!!!!!折角死なない程度の超強力な睡眠薬を盛ったのに無駄になったじゃねえか!!!!俺様のコレクションの邪魔すんじゃねえ!!!クズが!!!!)」

とか思った人がいたそうだ。

「本当に大丈夫か?」

  「大丈夫じゃない。体が重い、頭が痛い。 風邪ではないが、睡眠不足はここまで辛いとはな」

ナギは自身の症状を判断し、こう結論付けていた。

「問題ない。何とかなる」

手を止める訳にはいかないナギは何とかこう答えた。

「お嬢様、せめて少し食べてくれ。 1口サイズのサンドイッチにしたから、作業しながら食えるだろ?」
「・・すまん、助かる」

お腹が膨れると眠くなるのだが、食べないと余計に効率が落ちるので、少し食べた。

残酷に時は刻むが、ナギの効率は上がらず、余計な考えもどんどん出て来た。

  「この勝負に勝たなければ、最強のライバルに強力な武器を与えてしまう。そんな事になれば恋という名の戦争に、私の勝機は無くなる」

  「だが何故だ。前向きな気持ちで居れば、バリバリ原稿を書き進められるはずなのに。なのに何故こんなにもネガティブになる」

  「ハヤテ、助けてくれよ。せめて電話位くれよ。私とルカは、平等のはずだろ?才能の有無があるとはいえ」

  「なんでだよ。お前は「人の役に立つ事」が使命じゃなかったのか?それとも私なんか助ける価値もないって事なのか?」

  「ああ、そうか。分かったよ。この勝負で、ハヤテが私を応援したり助けたりする価値は、何も無い。私が負ければ、あんな可愛いアイドルと「結婚を前提とした恋人」になれる」

  「つまり、ハヤテが応援してくれるわけがない。勝利を願ってくれるわけがない。だから、こんな大変な思いをしているのに、連絡すらくれない。ルカばっかりかまっているんだ」

  「こちらから「助けてくれ」って言っても、断ってくる。来るわけがない」

「なあお嬢様。ここ数日ずっと顔色が悪いが、大丈夫か?」
「少し位寝ろよ。じゃないと」
「ここには悠太っちも千桜も私もいるんだ。少し位なら」

  「悠太、千桜、カユラ。お前達の励ましは素直に嬉しい。でも、何だろうな、このどうしようもない程の物足りなさは。ハヤテ、助けてくれよ。私はお前の婚約者候補なんだぞ」

  「ルカ、お前には「婚約者候補と言う武器」を与えたくない。そんな事をすれば、最強の勇者に最強の武器を与えるようなものだ。そんな奴と競っても、誰も勝てない。だから、お前には・・」

  「でも、私の原稿は落書きなんだ。そんなものでどうやって戦う?最強の魔王に爪楊枝で戦いを挑む様なものだぞ。如何なる毒も効かない魔王にだ」

  「あんなに色々あったのに、何も変わらなかった。こんな落書き原稿でどうやってルカに勝てというんだ。魔王に爪楊枝で勝てる訳無いじゃないか」

  「私は、また負ける。無様な敗北が待っている。私の勝利を喜んでくれる人なんて、誰もいない。頑張るだけ、無駄だ」

  「なんで私は、こんな事をやっているんだ?敗北が決定事項の戦いの為に、苦しい思いをして、必死で努力して。勝利なんて、見込みも意味もないというのに」

  「私はまた負ける。無様な敗北が、私にはお似合いなんじゃないか?私が欲しがってる特別な何かにはなれないんだ。ただ負けて、最強の勇者に最強の武器を献上するだけなんだ」

  「こんな事、意味なんかない。必死になる必要も、無い。だったらこんな原稿。 こんな原稿なんか・・・」

「お、おい、馬鹿!!」
「止めろ!!お嬢様!!」
「完成させる必要なんか、無いんだーー」

ナギは上に色々な物が乗っているのに、机を思いっきり叩いた。
すると、蓋をしてなかったインク瓶が運悪く宙を飛び、これまた運悪く傍に置いておいたすでに書き上げた原稿にかかってしまった。

その瞬間、一瞬だけ時間が止まったかの様に静寂が訪れた後

「お、お前。何やってんだよ」
「どうしたんだ。折角の原稿に」

騒ぎを聞きつけたマリアさんとカユラが書斎に来て、現状に驚いていた。

「と、とにかく拭く物だ」
「あ、ああ。これ使え」
「おろろ〜」

差し出された雑巾で何とかしようとしつつ

「ど、どれ位駄目になった?」
「軽く見積もっても、10枚か!?」
「どうした?自分の漫画を大事にするお前さんが」

驚く面々に対し、約1名嬉しさで顔が綻びそうになるのを必死で我慢していたそうだ。

そして

「もう、良いよ」
「「「え!?」」」
「こんな原稿、もう良いよ」


-----------------------------------------------------------------------------------
以上です。

カギかっこの前に空白があるセリフは全部ナギの心の声です。

次回は続きです。

では。
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Re: 女神と共に第三部 3rd (6月13日更新) ( No.30 )
日時: 2018/06/13 18:00
名前: masa

こんにちはmasaです。

本編の更新です。

どうぞ。
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前回、ナギは思い悩んだ末原稿を何枚か駄目にしてしまい、「もう良い」っと言いだした。


「もう、良いよ」
「も、もう良いって、何がだ?」
「お嬢様?」

心配する一同に

「この原稿だよ。もう、沢山だ」
「「・・・」」
「もう、疲れたよ」

今にも泣きだしそうなナギに室内は暫く沈黙が訪れたが

「な、何言ってんだよ、お前は」
「あんなに頑張ってたじゃねえか。どうしたってんだよ、お嬢様」
「・・・」

約1名以外に心配する視線を送られたが、ナギは

「現実的に考えてみろ。勝負までたったの3日しかないんだぞ。今からじゃ描き直せないし、よしんば描き直せたとしても、クオリティーは下がる」

ナギは一旦間を置き

「そしたら売れないし、勝負にだって負ける。だからもういいんだ」

ナギは机に突っ伏し

「もう、私は疲れたんだよ。このまま対決終了まで寝させてくれ」

ナギが言い切ると、室内には再び耳が痛くなる程の静けさが訪れた。

「(フフフフフフフフフフフフフフフ♪これこそ私の理想通りの展開ですね〜♪このまま追い打ちをかけちゃいましょう♪そうすれば更に面白くなりますね〜♪そんな事になれば私のコレクションが♪ああ♪)」

こんな事を考え、ありとあらゆる追い打ちの言葉を考え、実行に移そうとした人がいたそうだが

「諦めるのか?」
「って言うか、最初から勝ち目なんて無いんだよ。最強の魔王に爪楊枝で勝てると思うか?」

ナギの例えは、全員理解出来た。

「京都とか伊勢に行って、何かを掴んだ気になっていた。何かが出来るような気になってたけど、結果は同じだよ」

ナギは間を置き

「頑張る意味なんて、無いんだよ。結局負けるんだからな。だから、もう良いんだよ。こんな勝負に、必死になる必要はないのさ」

ナギは泣く直前の声色で言い切り、更に

「たかが、同人誌なんだよ」

ナギが言い切ると

「(これよ♪これなんだわ♪今こそ追い打ちをかけて二度と立ち直れない傷を刻み付けちゃいましょう♪そんな事になればこれ以上ないコレクションですよね〜♪ああ♪)」

こんな事を考えていた人がいたそうだが、

「サイバーフォーミュラ第10戦グランプリ」

ピクッ

「時速600kmを超える富士岡サーキットのトルネードバンク。視界さえブラックアウトして何も見えない中、風見はレースを諦めたか?」
「まだあるぞ。 バッファローマンとのデスマッチ。ミート君を救うタイムリミットまで残り30秒。キン肉マンは勝負を棄てたか?」
「お嬢様。某海賊漫画でもそうだ。 相手は格上の餅人間。懸賞金も倍以上の差がある。絶対的に不利だ。でも、何度倒されても、どんなに不利になっても主人公は勝負を棄てて逃げたか?」

千桜、カユラ、悠太の言葉は確実にナギの心に刺さっていた。

「お前は最初、この勝負には自分に主人公補正があるって言ったらしいな。主人公は自分だから勝つと。お前は何を見ていたんだ?」
「お嬢様。主人公ってやつは馬鹿みたいに諦めが悪いんだ。 どんな逆境を襲ってこようが、膝は折れ、拳が砕けたとしても、絶対に諦めねえだろ?」

千桜、悠太の言葉は更に更にナギの心に深く刺さり

「なあナギ、この勝負は誰かに強制されたのか?否、お前さんの意思で、お前さんがやると決めた勝負なんだろ?」
「カユラの言う通りだぜ、お嬢様。そんな勝負さえも投げ出すような軟弱者に、主人公補正なんか働かねえよ。疲れたなんてくだらねえ言い訳つけて、勝負目前で簡単に諦める様な奴にはな」
「2人の言う通りだ。お前は、何にもなれないぞ」

3人の言葉にナギは机に突っ伏したまま考え始めた。

「(私は、何のためにやっているんだ? 退屈だった、ずっと。 三千院家に生まれた。たったこれだけで、世界全てが肯定された)」

ナギの目つきが少し戻り

「(酷く退屈だった。生まれるだけで全てが決まるというなら、私じゃなくても良かったんじゃないか?今でも満ち足りてるからこそ)」

ナギの目つきは一気に戻り、机を叩いた。
その事でナギ以外は全員驚いていた。

「(そうだよ、そうなんだよ!!だからこそ、なりたかったんだよ。生まれただけで決められた何かじゃなく、特別な何かに)」

ナギは起き上がり

「(ハヤテの為ではない。ルカに勝つ為でもない。これは、私の為。自分自身で勝ち取った何かに、私はなりたいんだ!!)」

ナギの目つきも顔つきも完全に元に戻っており

「例え話が全部漫画やアニメとはな」
「な、なに!?///////////////」
「悪かったな。お嬢様には分かりやすいと思ったんだよ」
「そう言う事だ。分かりやすいって大事だ」

各々言い返す3人に

「でも、助かったよ。ありがとうな」
「「「・・どういたしまして」」」

ナギは笑顔でお礼を言った後、直ぐに険しい顔つきになり

「悠太。駄目になってしまった原稿は全部捨ててくれ。もったいないがな」
「え!?全部捨てちまうのか?」
「ああ。こんな落書きでしかない原稿なんか、私には必要ない。全部描き直す」

ナギの宣言に

「ぜ、全部!?」
「正気か!?ナギ。 大丈夫な原稿もあるのにか!?」
「その通りだ、カユラ。そんな気の抜けた原稿なんか、捨ててしまえ!!嫌なら鼻でもかんでろ!!」

心配する面々(1名以外)に対し

「私はいつの日か一兆部売る漫画を描く漫画家・三千院ナギ!!この程度の逆境を乗り越えずして、何が一兆部だ!!漫画の神様に「漫画をなめるな」って怒られるわ!!!」

ナギはこう言い切り、更に

「見ていろ、ルカ!!!まだ勝負はついて無いぞ!!!」
「やれやれ」
「何とかなったみたいだな」
「世話のかかる漫画さんだな」

溜息をつく面々(1名以外)に

「ほら、新しい原稿用紙だ。手伝うよ」
「おお。助かるぞ、ファイ」
「誰がファイだ!!中の人ネタしてる場合か!!」

盛り上がるナギと千桜に対し

「ん!?どうしたんだ?」
「いえ、別に♪」
「???」

「(ふざけんじゃねえぞてめえら!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!なんでナギの野郎は立ち直ってんだ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!3人もなんでナギの野郎に発破をかけてんだよ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!ナギの野郎を再起不能にしてコレクションする計画が台無しじゃねえか!!!!!!!!!!!!!!!!!!!俺様のコレクションの邪魔してんじゃねえ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!このゴミクズ野郎どもが!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!)」

とか思った人がいたそうだ。


-----------------------------------------------------------------------------------
以上です。

次回は続きです。

では。
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Re: 女神と共に第三部 3rd (6月14日更新) ( No.31 )
日時: 2018/06/14 18:00
名前: masa

こんにちはmasaです。

本編の更新です。

どうぞ。
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前回、ナギは一度は心が折れてしまったが、悠太、千桜、カユラのお陰で立ち直る事が出来た。


ナギは現在猛烈な勢いで漫画を描いていた。

「(正直、これを描いてもルカに勝てる保証はない。ハヤテがルカのものになってしまうかもしれない)」

まだ自分の中に不安は残るものの

「(だが、そんな物なんか今は無視だ!!まずは描け!!!全てはそれからだ!!)」

迷いは全くなく、漫画に全てが向けられていた。

「よしっ、下書きが完成したぞ!!」
「す、凄いな。本当に全部描き直したぞ」
「まさか本当に出来るなんてな」

千桜と悠太は感心しつつナギの漫画を読み

「しかも、クオリティは前より上だぜ」
「ああ。かなりレベルアップしている」
「当たり前だ。雑念だらけの前とは全く違う」

ナギは自慢げだったが、

「だ、だが。まだペン入れや背景や仕上げもあるんだ。本当に二日弱で」
「煩い!!」

ナギの強い言葉に千桜は驚き

「こんな時はこう言うだろ? 「出来る出来ないじゃない。やるかやらないか」だとな」
「・・そうだな。悪かったよ」
「いいか、千桜。未来の事を考えて不安になっても、何も生まれない。大事なのは、今やれる事に全力を尽くす事だ。そうすれば、道は開けるんだ」

言い切ったナギに悠太と千桜は素直に感心し

「お前、凄いな」
「それは、全部が終わった後言ってくれ」
「・・だな」

既にペン入れ等に取り掛かったナギに

「手伝うよ。それ位なら、俺でも出来るからさ」
「すまんな。迷惑かけて」
「水臭い事言うなよ。困った時はお互い様だ」

悠太も加わり、原稿を完成へと近付けて行った。

「(何とか間に合う方法があればいいんだがな。ナギがここまで頑張ってるんだからな)」

千桜がこう考えたその時

「お困りの様ね」

突然声が聞こえ、驚いてドアの方を見ると

「ね、姉ちゃん!?」
「美緒さん!?」

悠太の姉で声優の真山美緒が立っていた。

「悠太から聞いたわ。ナギちゃんの漫画、間に合いそうも無いんでしょ?」
「そ、それは」
「手伝うわ。道具と原稿貸して」

既に座って手伝う気満々の美緒に

「で、でも美緒さんお仕事は」
「気にしないで。偶々連休が入ってね。今日明日ってお休みよ。明後日も夕方からだし」
「で、でも」

申し訳無さそうなナギに

「大丈夫よ。これでも昔は漫画描いてたんだから、手伝い位なら体が覚えてるわ。それともナギちゃん、私のお手伝いは嫌?」

ここまで言われ、ナギは

「すみません、お願いします」
「うん、お願いされた」

美緒も加わり、かなりのペースで漫画は仕上がっていた。

「(す、凄い。前々からファンだった大人気声優が目の前に。しかもナギの漫画を手伝っている)」

千桜は別の緊張も加わっていた。
すると

「おい千桜、暇なら手伝ってくれ。まだ人手が足りん」
「え!?あ、ああ。しかし、私が加わっても足りるかどうか」

「(良い事思いついたわ♪手伝うふりして徹底的に邪魔しちゃいましょう♪そうすればコレクションが♪ああ♪)」

そう考え、実行に移そうとした人がいたそうだが

「私が手伝うよ」
「カユラ」
「一応だが、私も漫画描ける。5人でやれば、何とかなるだろ」

カユラはそういうと、千桜の隣に座り、すでに準備を始めていた。

「すまんな。このお礼は必ず」
「「「「水臭い事は言いっこなし!!!」」」」
「・・ああ」

ナギは感動し、漫画に向かった。

「(ふざけんじゃねえぞ!!!!!!!!このクソ女(カユラ)!!!!!!!!!!!!!折角手伝うふりして邪魔してやろうと思ったのによ!!!!!!!!!!!!!!俺様のコレクションの邪魔すんじゃねえ!!!!!!!!!!クズが!!!!!!!!!!!!!!!!!!)」

とか思った人がいたそうだ。

一方、カユラは手伝いを始めて少しして

「な、なあ千桜」
「なんだよ。忙しいから」
「あの人、大人気声優の真山美緒さんだよな?」

夢中で気付いていなかったのか、今になって聞いていた。

「な、何でここに」
「あの人は真山君のお姉さんだからな」
「そ、それは知ってる。そうじゃなくて」

混乱するカユラに千桜は一から説明した。

「な、成程な。ところでさ、千桜」
「同じ考えか?終わったらサイン貰おうって事だろ?」
「なんだ、一緒か」

こそこそと私語をする2人に

「おい、2人とも。忙しいんだから私語は後にしろ。お嬢様には時間が」
「「わ、分かってるよ」」

必死の皆にナギは一旦手を止めて

「皆、聞いてほしい。正直、迷惑かっばかけて申し訳ないと思ってる。でも、私にはあと二日しか残ってない。それまで、私について来てほしいんだ。なんとしても、完成させたいから」
「「「「勿論!!」」」
「ありがとう、本当に」

礼を言うと、皆無言で取り掛かった。

「(思えば13年、物質的に満たされて生きて来たと思う。努力何て、してこなかったと思う。全て、徒労に終わるかもしれない。例えそれでも、止めない!!!諦めない!!!)」

ナギは自身も鼓舞し、必死で取り掛かった。


                   × ×


二日後。

「出来たな、お嬢様」
「ああ。ああ」

感傷に浸るナギに皆「話しかけない方が良い」っと直ぐに悟った。
なので?

「「あ、あの」」
「ん!?」
「「サ、サインください」」

美緒は色紙を差し出す2人に

「貴方達、ナギちゃんのお友達の春風千桜さんに剣野カユラさんね?良いわよ」
「良いのか?姉ちゃん」
「ファンを大事にしてこそのプロよ」

色紙を受け取るとサインし

「えっと。千桜ちゃん、漢字は」
「あ、はい。季節の春に吹く風。千の桜です」
「はいはい。出来たわよ」

返された色紙にはちゃんと「春風千桜さんへ」っと共に美緒のサインがちゃんと書かれていた。

「で。カユラちゃんは」
「あ、はい。武器の剣に野原の野。名前はカタカナです」
「はいはい。出来たわよ」

カユラの色紙にもちゃんと「剣野カユラさんへ」っと共に美緒のサインがちゃんと書かれていた。

「「ありがとうございます。大切にします」」
「それは良かったわ。悠太、あんたにもサインしよっか?」
「要らないよ。有名人でも姉のじゃな」
「そう?」

千桜もカユラも「勿体無い」っと思っていたそうだ。

「さて、私はもう行くわ。仕事の準備とかしないと」
「美緒さん、本当にありがとうございました」
「気にしないで。応援とか行けないけど、頑張ってね」

ファンの有名人に励まされ

「なんとお礼を」
「いいのよ。弟の悠太が世話になってるんだし」
「世話になってるのは私なんですが」

美緒はナギに笑顔を向け、書斎を出て行った。

そしてそれから暫くして

「さあ、行こうか、ナギ」
「ああ」
「ルカが待ってるぞ」


ついに始まるナギVSルカの同人誌対決・再戦。 結末はいかに!?


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以上です。

次回は続きです。

では。
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Re: 女神と共に第三部 3rd (6月15日更新) ( No.32 )
日時: 2018/06/15 18:00
名前: masa

こんにちはmasaです。

本編の更新です。

どうぞ。
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前回、ナギは皆の協力を得て、同人誌を完成させる事が出来た。


「でも、ルカは会場に来て平気なのか?」
「ん!?」
「夏コミで着ぐるみとか、下手すれば死ぬぞ」

心配そうなカユラに千桜は

「ああ、それなら大丈夫だと思うぞ」
「へ!?」


                   × ×


回想入ります。

千桜は勝負の前に、居候させてもらってる天王州家に戻って来ていた。

「大丈夫なのか?ルカは素顔で出る訳には」
「あ〜、そこなんだよね。着ぐるみじゃ死ぬかもしれないし」
「お任せください!!」

突然した声の方へ向くと

「メイド長さん」
「私に任せてください。天王州家のメイドの名に懸けて、何とかしてみせます」
「「そ、そうなんですか」」

回想終わります。


                   × ×


「ってな訳でさ。詳しい事は知らんが、何とかなるだろ」
「ああ、そう」

取り敢えずの心配が消えたカユラに対し、ナギは緊張からくる顔色の悪さは感じたものの

「ルカは、何処なのだ?」
「さあ?もう来てると・・・」

言葉に詰まった千桜が見ている方を見ると

「同人誌、完成したみたいね」
「・・ルカ」
「不戦勝なんてつまらないものね。それが無くて安心したわ」

普段のルカからはありえないような挑発的なオーラが発せられていた。

「戦いの前に、ルールを確認しておくわ。 ルールはいたってシンプル。用意した百冊の同人誌のうち、一冊でも多く売り切った方が勝ち。もし、どちらも完売だった場合、一秒でも早く完売した方が勝ち」

ルールを提示すると、いったん間を置き

「このルールに不服は?」
「無い。そのルールで戦おう」
「そう。じゃあ、決着をつける時ね」

ナギもルカも睨み合い

「じゃあ、私には準備があるから」
「ルカ!!今度こそ、勝つ!!!」

ルカは返事をせず、去った。


                   × ×


一方のルカは、用意された個室に案内されていた。

「では水蓮寺様、こちらにお座りください。その後、良いと言うまで目を閉じててくださいね」
「あ、はい」

ルカは言われた通りにした。
そして数分後

「はい、もう宜しいですよ」
「え!?」

目をあけたルカはただただ驚いた。
目の前にある鏡には見ず知らずの人が映し出されていた。

「いかがですか?これなら恐ろしい程に勘の鋭い人でなければ、貴方が水蓮寺ルカだと分からないはずですよ」
「え!?え!?」

ただただ困惑するルカに

「メイクを施しました。これならば、そこらにいる一般人に紛れ、怪しまれる事は無いでしょう」

説明され、ようやく落ち着いた。
そして、鏡に映る自分を見て、納得も行った。
確かに言われた通り、鏡に映っているのは間違いなく自分なのだが、本当に「水蓮寺ルカ」っと言う自分なのか自信が持てなかった。

「さあ、行きましょうか。お手伝いなら、ハヤテ坊ちゃんからお願いされてますから」
「ええ」


                   × ×


そして会場少し前

「よしっ、設営完了だな」
「ああ」

ナギの方は準備完了していた。

「ところでだ、綾崎君は」

何やら嬉しそうにソワソワと辺りを探すカユラに

「こっちに向かっているそうだ。ただ、道が混んでてまだ着かないそうだ」
「そ、そうか」

ナギに説明され、明らかに落ち込むカユラに

「(な、なんでだ!?なんで「カユラも綾崎君が好きかもしれない」って思ったら、カユラに敵意を持ってるんだ!?しっかりしろ、私)」

千桜はこんな事を思い、急いでそれを振り払って

「さて。向こうも準備完了みたいだし、後は会場を待つだけだな」
「ああ」

ナギは返事をしつつ

「(思えばずっと、特別な何かになりたかった。自分だけの力で人を魅了し、沢山の人に称賛される、何かになりたかったんだ)」

ナギはこう思い、更に

「(そうだよ。あの日見た、この人みたいに)」

偶然なのか神の悪戯なのか、ナギの場所とルカの場所は背中合わせだった。
顔を合わせる事こそ出来ないものの、声などから様子を知る事は容易に出来た。

「(会場の10時まで、もう間もなく。決着がどうあれ、後たったの数時間で終わる)」

現在9時56分。ナギは不思議と落ち着いていた。

「(もし負ければ、最強のライバルに最強の武器を与える事になる。「婚約者候補No.7」っと言う武器をな。だから、負ける訳にはいかない。たとえ相手が神様みたいだと思った人であってもだ)」

考えていると、会場を知らせるアナウンスが流れた。

「(ルカ、勝つのは私だ!!!)」

ナギが静かに闘志を燃やしている一方

「なあカユラ、どっちが勝つと思う?」
「そんなの分からんよ。分かるのは、神様か作者位なもんだ」
「・・そうか」

すると

「ありがとうございましたー」
「(な!?ルカはもう売れたのか!?)」

振り返ると、ルカのサークルにはまだ数人ではあるが、お客さんがいた。

「(落ち着け!!まだ開場したばかりだ。それにまだ数人。 本当の勝負はお客さんが壁サークルを回り終えた一時間後位からだ)」

何とか自分を鼓舞し、自分の方へ向き直すと

「お、お前は」

立ち読みをしている人物に当然の様に見覚えがあった。

「真泉」
「ん!?おお、久しぶりだな」

真泉はナギの同人誌を途中で閉じ

「相変わらず、下手な漫画だな」
「・・・」
「だが、面白いぞ」

貶されたと思ったら直ぐに褒められ、驚いていると

「幾らだ?いただこう」
「あ、200円です」
「ほら」

真泉がお金を払った直後

「あ、師匠。面白い本があるなら私にも見せてくださいよ」
「駄目だ。ここでのルールは「面白い本は自分で買う事」だろ?」
「それもそうっすね。私にも一部ください」

真泉を師匠と慕う女の子もナギの同人誌を買い

「さ、行くぞ。同士諸君に「掘り出し物を見つけた」っと報告せねばな」
「あ、待ってくださいよ〜」

何だか分かんない嵐が去った後

「ま、まあなんだ。取り敢えずは良い滑り出しじゃないか?」
「そうだな」

ナギは笑顔が止まらず

「さあ、勝負はこれからなのだ!!」

そこから、七時間にも及ぶ長い戦いは繰り広げられた。
ナギの同人誌はたった200円のコピー本。しかし、そこには思いの全てが込められていた。

力を尽くしたからこそ、得られる喜びはある。死力を尽くしたからこそ、得られる幸せがある。
ナギは一冊一冊噛み締めるかの様にドキドキが止まらなかった。

途中から勝負を完全に忘れていた。ただただ自分の漫画が売れる事が嬉しくて。ただただ、自分の漫画を読んでもらえる事が嬉しくて。

そしてナギは

「そうか。これが求めていた何かだったんだ」

っと思った。

因みに、ルカの同人誌を買ったお客さんは

「フライ・ドルフィンの人、素顔を始めて見たけど、可愛かったな」
「ああ。アイドルになったら、間違いなく売れるよな」
「そうなったら、俺ファンになるぞ」

っと言う声がかなりあったそうだ(ナギとルカは知らない)。


                   × ×


そして、嵐のような七時間は過ぎ去った。

「ふう」
「お疲れさん、お嬢様」
「悠太」

今回は手伝いを千桜とカユラに任せていた悠太が来て、労を労っていた。

「どうだった?」
「ああ」

ナギの売り上げは90部で、少し残ってしまった。

「前は全く売れなかったのに、今回は90部。随分進歩したと言える。本当は「完売」っと言う栄光は欲しかったがな」

こう言ったナギに悠太は心配したが

「でも、仕方ないさ。悔しさは、正直ある。でも、後悔は無いよ」
「そっか。姉ちゃんにも良い報告が出来るよ」
「・・そうだな」

笑みを向けあう主従だったが

「で?ルカはどうだったんだ?」
「あ、忘れてた!! ルカは・・」

次回、ついに決着!!


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以上です。

次回は続きです。

では。
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Re: 女神と共に第三部 3rd (6月16日更新) ( No.33 )
日時: 2018/06/16 12:45
名前: masa

こんにちはmasaです。

本編の更新です。

どうぞ。
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前回、ついにナギとルカの同人誌対決が始まり、ナギは90部売る事が出来たがルカは・・・


ナギは振り返り、ルカのサークルを見ると、テーブルの上には「完売」っと言うプレートが置かれていた。

「・・・」

ナギ達が言葉を失っていると

「10分程、前です。完売したのは」
「あ、メイド長さん」
「水蓮寺様のお手伝いは、私がしておりましたので」

顔見知りの千桜に挨拶しつつメイド長は説明した。
一方

「ルカは100部完売。それに対して私は90部。って事は・・」

ナギは噛み締める様に間を空けた後

「私の、負け」

ナギの言葉に千桜もカユラも悠太もどう言葉をかけるか分からないでいた。

「そっか。私は負けたのか」
「ナギ。 な、なあルカ。この勝負の事なんだけどさ」

ナギに服を掴まれ、途中で言葉を切った。

「止めろ。下手な同情は、私が惨めになるだけだ」
「だ、だが」
「止めろ、千桜。お嬢様の気持ちを理解しろ」
「私もそれに賛成だ」

悠太やカユラに言われ、千桜は黙るしか出来なかった。

ナギは俯いて暫く考え込んだ後

「おめでとう、ルカ。この勝負、お前の勝ちだ」
「・・・」
「ルカ、ありがとうな」

突然お礼を言ったナギに悠太達が驚いていると

「お前のお陰で、私は色々な事を学べた。努力とか、自分の力で戦うとか、信じる事とか、生きる意味とか」

ナギは目を閉じて一旦間を空け

「本当に、沢山の事を学ばせてもらったよ。お前のお陰で、自分の力を超えて、何かを成し遂げる事が出来た。だから、悔いはないよ」

ナギの言葉にルカは沈黙を守り続けていた。

「自分の力を全て出し切って戦ったんだ。だから、この敗北に悔しさはあるけど悔いは無いよ。だから、ありがとうな」

ナギは言い切ると、ルカに背を向け

「ハヤテと、幸せにな」

ナギは必死で涙を我慢し、立ち去ろうとしたが

「待ちなさい」
「な、なんだよ。慰めなら」
「そんな、追い打ちをかけるような事、しないわよ。クズ野郎じゃあるまいし」

ナギは敢えて振り返らず、ルカの言葉を待った。

「確かに、この勝負は私の勝ちね。 つまり、私はハヤテ君の「婚約者候補No.7と結婚を前提とした恋人」になったわけよね。約束が反故されない限り」
「だ、だから私は」
「諦めるの?」
「「「「え!?」」」」

ナギを遮る様に言ったルカに驚いていると

「確かに、結婚を前提としているわ。でも、そのカップルの100%が結婚してるって、言い切れるの?」
「ルカ、お前」

千桜を含めて全員がルカが何を言おうとしているのか理解し始めていた。

「それともナギは、こんな勝負に負けた位で、ハヤテ君を諦める程だったの?」
「な、何だと」

挑発され、ナギはようやくルカの方へ向き直した

「こんな簡単に諦める程、ナギのハヤテ君への想いは弱かったの?婚約者候補になったくせに?」
「ふざけるな!!!!!!!!!」

ナギの怒号は会場全体に響き渡りそうなほど、大きかった。

「私のハヤテへの想いは絶対だ!!!!誰にも負けてないって自信持って言ってやるわ!!!!私の中で燃え盛る恋の炎は誰にも消せはしない!!!!」
「やっと正直になったわね。世話かけさせないでよ」

ナギが言い切ると、ルカはこういい

「そんな堂々と言うくらいなんだからさ、私からハヤテ君を奪おうって、思わないの?」
「だ、だがルカ。お前はそれで」
「なめないでよ」

冷ややかに言うルカにナギは言葉を失った

「私は、ハヤテ君を奪わせはしない。折角勝負に勝ったのに、簡単に奪わせるような事、しないわよ」
「・・・」
「それともナギは、恋と言う勝負からこんな簡単に逃げる程の弱者だったの?」

ルカに言われ、ナギはルカを睨み付け

「言ったな、ルカ」
「ええ、言ったわよ。軟弱者のナギさん」
「良いだろう。婚約者候補だろうが結婚前提の恋人だろうが、勝手になってろ!!!私はお前からハヤテを奪い取る!!!」

ナギは言い切ると、更に

「ただ、卑怯な真似はしない。ハヤテに私の魅力を伝えまくって、「ルカより私の方が魅力的な女」って分からせてやる。そうすれば、正々堂々と奪い取ったって言える」
「・・・」
「ルカ、後悔先経たずって諺知ってるだろ?それの体験者にさせてやるよ。折角出来た恋人を奪われるって、屈辱のおまけつきでな」

ナギが言い切ると、ルカは少しの間沈黙を守り

「やれるものなら、やってみなさい。私はハヤテ君を奪われない様に私の魅力を伝え続ける。ナギはハヤテ君を奪うためにナギ自身の魅力を伝え続ける。こういう勝負ね、今度は」
「受けてたとう。この勝負は、勝つ!!!」
「フンッ。後悔するのは、そっちなんだから」

ルカが言いながら振り返ると

「「「「あ、あれ!?」」」」
「な、何よ。じろじろと人の顔を」
「水蓮寺様、これを」
「あ」

ルカはメイド長にメイク落としを渡され、メイクしたままなのを思い出して直ぐにメイクを落とした

「なんだ。ルカはそうやって売り子してたのか」
「ええ、そうよ。ってそんな事よりも」

ナギとルカは睨み合い

「さっきナギは言ったよね?後悔先経たずって諺の体験者にさせるって」
「ああ」
「その言葉、そっくり返すわ。「挑発されたとしても、大人しく引き下がればよかった」って思わせてあげるわ。私とハヤテ君の結婚式でね」

ルカの言葉にナギの目つきは更に鋭くなり

「無理だな。ハヤテと結婚するのは私だ。結婚式で後悔するのはルカ、お前だ!!」

ナギの言葉にルカの目つきは鋭くなり

「勝負よ!!三千院ナギ!!」
「望むところだ!!水蓮寺ルカ!!」

2人は拳を合わせ、漫画アニメなら背景で炎が燃え盛る演出が施される雰囲気となった。

「まあ、ともかく。約束は守ってよね、同人誌対決は私が勝ったんだからさ」
「分かってるよ。約束は守るよ。 改めて、勝利おめでとうな」
「うん、ありがと」

2人が握手すると


「私達からも、祝福を言わせてもらえるかな?」


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以上です。

次回は続きです。

では。
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Re: 女神と共に第三部 3rd (6月16日更新) ( No.34 )
日時: 2018/06/16 15:28
名前: ささ

あ〜売れちゃったか〜つまんね〜奴だな〜
ルカ、勝利おめでとう。だけどさ、ひとついい?
忘れているでしょ、「婚約者候補」No7だよ、上に6人いるんだよ!ナギは置いといて上位4人は超がつくほどのハヤテ好きだし、財力はあるし…権力もあるんだよ!黒いものも白く出来るんだよ!アイドルのひとりや2人路頭に迷わせるんだよ!
とかまあ言っておいて、ナギルカにフラグがたっているような気がするのは気のせいでしょうか?
あ〜目にハイライトがない笑顔ってこうなんだ。ハヤテガンバ。全員と大人の階段登れば万事OK
じゃあね〜アテネ以下同居人にハヤテが関係持ちたいって伝えておいたから!多分今日の夕飯はスッポンとか、鰻とか牡蠣とか並びそう。
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Re: 女神と共に第三部 3rd (6月17日更新) ( No.35 )
日時: 2018/06/17 12:45
名前: masa

こんにちはmasaです。

レス返しの更新です。


 ●ささ さん

 ルカ「感想ありがと〜♪」

 >>あ〜売れちゃったか〜つまんね〜奴だな〜

 誰か「ですよね〜♪本当につまんねえ野郎だな!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
 ナギ「・・・」

 >>ルカ、勝利おめでとう。だけどさ、ひとついい?

 ルカ「うん、ありがと♪で、何かな?」

 >>忘れているでしょ、「婚約者候補」No7だよ、上に6人いるんだよ!

 ルカ「忘れてないよ。ってか「結婚前提の恋人」って忘れてるでしょ?」
 アテネ「・・・」

 >>ナギは置いといて上位4人は超がつくほどのハヤテ好きだし、財力はあるし…権力もあるんだよ!黒いものも白く出来るんだよ!

 ナギ「あ、いや。私もハヤテが超が付くほど好きなんだが////////////////////」
 伊澄「わ、私もです////////////////」

 ルカ「まあ、分かってるけどね。だからこそ、戦いがいがあるってもんだよ」

 >>アイドルのひとりや2人路頭に迷わせるんだよ!

 綾子「見縊らないでくれます?」
 麗「そんなつまんない事しないわよ」
 クリス「fair and squareで戦うわ」

 アテネ「・・・」←少し悩んだので黙ってる。

 >>とかまあ言っておいて、ナギルカにフラグがたっているような気がするのは気のせいでしょうか?

 ナギ「気のせいだ。私はハヤテ以外に「そういう意味で」今日は無い」
 ルカ「私もだよ」

 >>あ〜目にハイライトがない笑顔ってこうなんだ。ハヤテガンバ。全員と大人の階段登れば万事OK

 ハヤテ「ゼ、全然OKじゃないですよ。そんなの出来ないですよ」
 アテネ「・・ハヤテは私のものですわ」

 >>じゃあね〜アテネ以下同居人にハヤテが関係持ちたいって伝えておいたから!多分今日の夕飯はスッポンとか、鰻とか牡蠣とか並びそう。

 全員「・・・」
 ハヤテ「(今日は、帰れないかも)」

 感想ありがとうです〜♪

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Re: 女神と共に第三部 3rd (6月17日更新) ( No.36 )
日時: 2018/06/17 12:55
名前: masa

こんにちはmasaです。

本編の更新です。

どうぞ。
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前回、同人誌対決はルカの勝利で決着し、ナギがルカにお祝いを言うと、別の人物が声をかけて来た。


一方、丁度その頃、会場の外。

「時間かかっちゃったな」
「仕方ないですよ、混んでましたし」

ハヤテとドクター黒須が話していた。

「・・ありがとう。君のお陰で、私の患者は救われるよ」
「僕は何もしてませんよ」
「・・そう、か。 まあ、何はともあれ、上手く行くと良いがな」

黒須の言葉にハヤテは敢えて少し間を置き

「行きますよ、全て、ね」
「・・そう、だね」


                   × ×


一方、会場内。
ルカが声のした方へ向くと

「お父さん。 お母さん」
「え!?それって」
「あの、行方不明の!?」

驚く一同に

「2人とも、ど、どうして」
「どうしても、謝りたかったんだ」
「え!?」

申し訳なさしかない声色にルカが驚いていると

「お前に借金を押し付けて逃げた後、私達は北海道で大きな事故に遭った」
「事故!?」
「ああ。正直、天罰だと思ったよ。このまま死の運命に従い、地獄で閻魔様に裁かれよう。そう覚悟した」

思い出すようにルカの父は一旦言葉を切った。

「でも、そんな時とても良い先生に巡り会ってね。何とか体は元に戻れた。だが、お前にした事を考えると、複雑でしかなかった。そんな時だよ、お前が体調不良で休業するって聞いたのは」


                   × ×


一方、会場の外。

「成程。黒須さんがお伊勢参りをしたのはそう言う訳ですか」
「ああ。あの2人は治療でまだ遠出は出来ない。だから代わりにな」
「古風ではありますが、効果は覿面だったわけですね」

ハヤテに言われ、黒須は少し笑い

「元々の予感はあったけどね。誰かの強運が、運命に導いてくれるんじゃないかってね」
「・・そうですか」

ハヤテは直感的にナギの事ではないかと思っていた。


                   × ×


「2人はさ、どうしてここに来たの?」
「お前にどう謝るべきか、ずっと悩んでいた。会うべきかどうかも、悩んでいた。そんな時だよ、あの執事の少年が現れたのは」
「「(・・ハヤテだな)」」

悠太とナギは直ぐに悟った

「彼は不思議な少年だよ。彼といると、「心の悩みを全て話そう」そう思った。だから、彼に打ち明けたんだ、全てをね。そんな時、彼に言われたんだよ」


回想入ります。

「正直、許してもらえるもらえないは、二の次だと思うんです。申し訳ないという気持ちがあるのなら、誠心誠意謝罪すべきだと思うんです」

「「傷つく事」も、「拒絶される事」も、恐れてはいけません。勿論、「和解出来ないかもしれない」っと、思ってはいけません。全ては、誠心誠意、謝罪する所からです」

「大丈夫です。貴方達とルカさんなら、時間は確かに物凄くかかるかもしれません。ですが、やり直せると思うんです。だって、愛の絆があるんですから。  僕と違ってね」

回想終わります。


「許してもらえるなんて、思ってない。恨まれても、当然だと思ってる。だが、直接会って謝りたかったんだ」

そう言うと、ルカの両親は深々と頭を下げ

「本当に、申し訳なかった」
「・・・」

一分以上頭を下げた後、両親は

「彼が払ってくれた借金は、私達が返すよ」
「返す当てが、見つかったのよ」
「まあ、彼には拒否されたが、それでもね」


                   × ×


再び会場外

「予想通りだった。ってとこかしら?」
「集さん」

腕を組み、車を背に立っていたハヤテに集さんが話しかけた。

「全て、貴方が思い描いていた通りに、事は運んだ。流石ね」
「僕は、何もしてませんよ。ただ」
「ただ?」

ハヤテは少し間を置き

「捻じ曲がってしまった運命を、正しただけですよ。直せる運命でしたから」
「運命、ね。   それもそうね」


                   × ×


再び会場内。

「もう一度、芸能事務所を立ち上げる事にしたんだ。私達には、「水蓮寺ルカを育て上げた」っと言う経験値があるんだ」
「今度は地道に頑張るわ」
「だから、仇を取る必要は、もうない。お前は、好きな事をやりなさい。借金や我々に縛られる必要も、無いんだ。漫画が好きなら、思う存分描きなさい。応援するよ、ルカ」

黙ったままのルカに

「それにしても、ルカの同人誌は読んでみたかったな」
「ええ。でも、完売おめでと」

両親の言葉にルカは

「これ、大切にとっておこうって思ってた試し刷りの奴。これで良かったら」
「「え!?」」
「お金は要らないわ。だから、読んで。答えが出てるから」

受け取ると、読み始めた。

物語は、現代に蘇った紫式部のお話だ。小説しか知らず、小説を書く事が全てだと思っていた彼女は当然の様に現代でも小説を書き、ベストセラーを目指した。
しかし、過去の全てが遠い歴史に消えた時、彼女にとって小説は全てでは無かった。
この世には小説以外にも楽しい事はいっぱいある。愛する人との幸せもある。

だから小説は捨てて、新しい未来に生きる。紫式部はそう決意した。
しかし、その決意をした直後、彼女の体は少しずつ消え始めた。
まるで運命が「小説以外は許さい」っと言っているようで、彼女は嘆き悲しんだ。

このまま消えてしまおう。全てを捨てて残された時間を楽しく過ごそう。そう思った。
そんな時、愛する人に「君にとって小説とは何なんだい?」っと言われた。
彼女はただただ俯き、答えられないでいた。

すると。「自分との時間を大切にしてくれるのは嬉しい。でも、君には他にも大切な物があるだろう?」っと、言われた。
更に「大切な何かが欠けた状態じゃ、今の君みたいになる。だから、捨てちゃ駄目だ」とも言われた。


ルカは両親が漫画を読んでいる間、つい先日の事を思い出していた。


                   × ×


話はルカの復活ライブ後、天王州家使用人専用保養所にて、ルカがハヤテに自身のネームを見せた時。

「ルカさん、貴方に嘘は似合いませんよ」
「う、嘘って」
「ルカさん、貴方にとってアイドルとは何ですか? 漫画とは何ですか?」

驚くルカにハヤテは

「僕はこう思うんです。大切な何かが欠けた状態で、別の大切な何かを手に入れられても、それはとても脆い物だと。だって、いくら大切でも他の大切な何かが欠けてるんですからね。ですから、どちらも欠かしてはいけないと」

ハヤテの言葉は確実にルカの心に刺さっていた。

「ルカさん、もう一度聞きます。貴方にとってアイドルとは何ですか? 漫画とは何ですか?」
「そ、それは」
「自分の心に正直になってください。一生後悔しない答えの為に」

ルカは胸に手を置いて考えた。ハヤテに聞かれた事に答えを出す為に。
すると

「そう、か。なんでこんな簡単な事、分からなかったんだろ」
「・・・」
「私にとって、アイドルも漫画も、かけがえのない大切な物だったんだ。欠かしちゃいけない位」

答えを出したが、

「でも」
「確かに、アイドルとしても、漫画家としても成功するなんて、不可能でしょうね」
「そ、そうだよ」

取り乱すルカにハヤテは

「ルカさん、僕はあくまでも「1人では」不可能っと言いたいんです」
「え!?」

「確かに、2つを両立させるなんて、過酷を極めます。殆ど不可能と言える位。 ですが、今の貴方には支えてくれる人が、困った時には優しく手を差し伸べてくれる人が沢山いますよね?その人達の支えがあれば、きっと両立させられますよ。アイドルとして成功する事も、漫画家としても成功する事も、出来ると思うんです」

ハヤテの言葉はルカの中にあったモヤモヤを晴らしていった。

「ルカさんはさっき、アイドルも漫画も大切って言いましたよね?でしたら、どちらも手放しちゃ駄目です。二兎を追う者は二兎とも得ろ。諺は間違ってますが、そうすべきなんですよ。ですから、「命を懸けてでも両立させろ!!」この言葉を、贈らせてください。生意気、ですが」
「ハヤテ君」

ルカはハヤテに抱き着いた。

「ありがと。私、漫画描き直すよ」
「・・それが良いですよ」

回想終わります。


                   × ×


思い出し終わると、丁度読み終わった頃合いだった。

「あのね、お父さんにお母さん。私、アイドルを続けるよ」
「・・・」
「でも、それはお父さんの為やお母さんの為ではない。ましてや借金の為ではない」

ルカは一旦間を空け

「今迄ずっと、誰かの為に歌って来た。両親のため、仇を取るため、お金を稼ぐため。そこには自分の夢は無いと思ってた。仕方なく始め、仕方なく続けてる事だと、思ってた。でも、違ってた。ここまで続けて来たのは、他ならぬ自分自身の為でもあったんだ。って」

ルカの漫画には恋人に諭され、「小説は自分自身の為でもあった」っと返すシーンが描かれていた。
そして、その答えに「だったら、命を懸けてでも両立させるべきだ」っと、恋人に言われるシーンも描かれていた。

「私は、歌うのも漫画を書く事も好き。だから、過酷だったとしても、両立させてみせる。だって、私には支えてくれる人がいるもん。最強のライバルだっているし」

ルカの言葉にナギ達は思わず笑みをこぼした。

「だから、今度は私自身の為にも歌うよ。それが、私自身の幸せでもあるからね。勿論漫画を書く事もね」

ルカは両親と向き合い

「今は、2人を許す事は出来ない。許そうって気も、今は無い。 でも、これだけは言わせて」
「「・・・」」
「ありがとう、謝ってくれて。ありがとう、私に歌をくれて」

ルカの言葉に両親は膝から崩れ落ちる様に座り込み、

「ルカ、本当にごめん」
「本当に、ごめんなさい」

泣きながら再度謝った。


ルカの漫画は、こう締め括られている。

紫式部は恋人との生活と小説家として成功する事選び、いつまでも幸せに過ごした。
お終い。

っと。


-----------------------------------------------------------------------------------
以上です。

次回は続きです。

因みに、第三部はあと5話の予定です。

では。
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Re: 女神と共に第三部 3rd (6月18日更新) ( No.37 )
日時: 2018/06/18 18:00
名前: masa

こんにちはmasaです。

本編の更新です。

どうぞ。
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前回、ルカは両親と再会し、取り敢えずの和解は出来た。


全てが終わった後、ルカもナギもグダ〜ッとなっていた。

「疲れたな」
「疲れたわね」

すると、ナギは先程の出来事を思い返し

「でも、ハヤテがお前の両親を説得するなんて、思わなかったよな」
「ええ、そうね」

ナギの言葉にルカはニヤケ顔になり

「って事はさ、私とハヤテ君の関係は、両親公認って事だよね。ハヤテ君だったら、許すだろうし」
「な、なに!?まだそうと決まったわけじゃ」
「もう殆ど決まったようなもんだよ」
「ヌググ」

流石に言い返す材料が無いので、ナギは黙り込んだ。

「それより。私の婚約者候補の件は」
「もう手を打ってあるよ。決着した後連絡して、動いてもらってる」
「そう」

実際、ルカと両親の事が一応決着した後、ナギはクラウスに連絡して動いてもらったのである。

「流石に今日中は無理だが、明日にはちゃんと正式に決まるよ」
「約束を守って貰えて、安心したわ」
「約束は守るためにするもんだろ」

ナギの言葉にルカを笑みを浮かべ、

「でもさ、ナギも凄いよね。90部って、ほぼ完売じゃん」
「まあな。本当は完売が良かったんだが、仕方ないさ。ってかさっきもこの話」
「気にしない気にしない」

煮え切らないものの、無駄話自体は好きなので、受け流す事にした。

「でも、お前は自ら進んで茨の道を進む事にしたんだよな」
「まあね。自分で決めた事だし、後悔とかないよ」
「ライバルとして、応援するよ。アイドル水蓮寺ルカも漫画家フライ・ドルフィンもな」

するとルカは少し間を空け

「ナギはさ、このままでいいの?」
「何がだよ」
「私に2連敗もしたままでさ」

ナギは椅子から立ち上がり

「良くはないよ。出来る事なら、再々勝負したいよ。今度こそ勝つ為に」
「じゃあ、しよっか、再々勝負」
「・・へ!?」

断られる前提で言ったため、ナギは間の抜けた声を出した。

「良い、のか?」
「勿論だよ。ただし、10年後にね」

ルカも椅子から立ち上がり

「今回の勝負で、お互い力不足を痛感したでしょ?」
「まあな。一応は売れたが、「下手」って言われもしたし」
「だからさ、お互い10年間の修行期間に入ろうよ。10年もあれば、色々経験して、スキルアップするはずだし」

ルカに言われ、ナギは少しだけ考え

「分かった。10年後、また戦おう」
「そうこなくちゃ。まあ、10年後であっても、私が勝つけどね」

ルカの言葉にナギは

「いや、それはありえない。私は10年間で、お前を追い抜く。そして、背中が見えない程引き離す。覚悟しろ」
「ま、私も10年ただ黙って過ごすつもりはないし、どうなるか分かんないけど、その言葉は胸に刻んでおくよ」
「ああ」

また握手し、再々選を誓い合った。

「お、何かあったみたいだな」
「悠太」
「ゴミ出し、終わったぜ」

後片付けを買って出た悠太が戻って来た。

「ねえ悠太君、ハヤテ君は」
「さあ?まだ色々あるんじゃねえの?すぐここにも来るよ。場所は把握してるはずだし」
「そっか」

落ち込むルカを気にしつつ

「ところで。千桜もカユラも花火大会の場所取りしなくていいのか?」
「ん!?まあな」
「あ、えっと。私は」

しどろもどろの千桜に対し

「花火大会は確かに見たい。だが、綾崎君と見たいからな。見れないなら場所取りも意味をなさん」
「まあ、気持ちは分かるが」
「(な、なんでだ!?なんで私まで「綾崎君と一緒じゃなきゃ花火は見る価値が無い」なんて思ったんだ!?)」

話の区切りがつくのを見計らい

「お嬢様、差し入れだ。喉乾いたろ?」
「お、気が利くな。流石執事だ」
「ホントだね」

悠太が買って来た缶コーヒーで乾杯し

「あ、そう言えば。お嬢様、今回の感想聞いて良いか?俺、まだ聞いてないし」
「ああ、そうだったな。ま、気分良いよ。全然売れなかった奴が、ほぼ完売まで行ったわけだし」
「そっか」

悠太は笑顔になった。

「美緒さんは何て言ってたのだ?」
「おめでとうだとさ。気になってNG連発したらしいし」
「へ〜。美緒さんでもそんな事あるんだな」

すると、会話を聞いていたルカは

「ね、ねえナギ。まさかあの有名声優の真山美緒さんに手伝ってもらったの?」
「まあな。羨ましいだろ〜」
「ヌググ〜」

ルカも美緒のファンなので、羨ましさはひとしおである。

「まあ、いいや。あ、皆に報告ね。私とナギ、10年後にまた戦う事にしたから」
「10年後!?気が長いな」
「ま、修行だよ」

ナギの言葉に、皆納得いった。

「10年後か。俺は手伝えねえな」
「そっか。悠太は」
「すまねえな」

謝る悠太を宥め

「折角だ。花火見て帰るか」
「え〜!?私は綾崎君と」
「我慢しろ」

不満を言うカユラに、ナギは諭した。 ルカを気にしつつ。

「ってか後片付け位していけ」
「それは悠太がやってくれる」
「はいはい。片付けるから待ってろ」


                   × ×


一方のハヤテは、まだ会場外にいた。

「ありがとう。君お陰で助かったよ」
「僕は何もしてませんよ」

ハヤテは空を見上げ

「僕が手助けしなくても、ルカさんはご両親と和解する事は出来てたと思いますよ。お優しいご両親でしたし」
「なあ、君は」
「僕は無理ですよ。絶対に」

表情の変わらないハヤテに黒須は

「それは、君の両親が死んでるからか?」
「知ってたんですか?」
「流しの医者なんてやってると、裏の情報も少しは入ってくるんでな」

ハヤテは特に驚かず、

「あの親は、ギネスに申請すれば問題なく認定される程の駄目人間ですからね。駄目人間の世界大会なんて物があれば、「強すぎるから殿堂入り」って処分が下されますからね」
「ず、随分な物言いだな。親相手に」
「あんなの親だなんて思いたくないですよ」

憎き仇に対する言い方に黒須は少し考え

「なあ、もしだよ。もし君のご両親が生きてて、「やり直したいから一緒に住もう」って言って来たら」
「そんなの、絶対にありえませんよ。そんな確立、1秒後に地球が爆発する確率の方が、遙かに高いですからね」
「・・そうか」

流石にこれ以上聞いても無駄だと悟り、聞くのを止めた。

「さっきも言いましたが、あの親は駄目人間です。「申し訳ない」とか「罪悪感」なんてものは持ち合わせてないですよ。あるかどうか聞いたら「何それ、美味しい物?」って冗談抜きで聞き返してきますよ」
「・・悪かった。どうやら、君にとって聞かれたくない事だったようだ」

謝ってきた黒須に「気にしてない」と宥め、

「では、僕はこれで。行かないといけないんで」
「なあ、綾崎君。水蓮寺ルカを、不幸にするなよ。それは、全て君にかかってるからな」
「分かってますよ。誰かを不幸にするなんて、死んでもしたくないですから」

そう言うと、ハヤテは会場に向かっていった。

「約束、守れよ」

そう呟き、黒須も去った。


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以上です。

次回は続きです。

では。
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Re: 女神と共に第三部 3rd (6月19日更新) ( No.38 )
日時: 2018/06/19 18:00
名前: masa

こんにちはmasaです。

本編の更新です。

どうぞ。
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前回、ナギとルカは10年の修行期間後、再々選する事を誓い合い、ハヤテは黒須と話した後ルカ達の元へ向かった。


「おや?もう全部終わっちゃったみたいですね」

ハヤテがルカ達の元へ着くと、丁度悠太が後片付けをすべて終えた後だった。
すると

「ハヤテく〜ん♪」
「うわああああ」

ルカはハヤテを見つけた途端、飛びついた。

「私勝ったよ。私、ハヤテ君の結婚前提の恋人だよ〜♪」
「あ、はい。そうですね」

甘えん坊の子猫の様にハヤテに馬乗りになり、頬擦りするルカに

「(まるでアーたんみたい)」

少し呆れつつ

「あの、ルカさん。誰かに見られたら」
「その時は「私の恋人で〜す」って大々的に紹介しちゃうも〜ん」
「しかし」

説得は無理だと悟り、好きにさせてあげていた。
すると

「おい、ルカ!!!離れろ!!!」
「何よ、カユラ」
「そんな羨ましい事・・じゃなくて、けしからん事、許さん!!」

怒り心頭のカユラは猛抗議していた。

「恋人同士なんだから好きにしたっていいでしょ〜」
「煩い!!!離れろ!!!」

引き剥がそうとしたが、ルカは結構力持ちなので無理だった。

「おい、ナギ!!手を貸せ!!」
「合点!!」

流石のルカも2人の力には勝てず、引き剥がされた。

「チェ〜」
「「全く、ルカは」」
「(な、なんでだよ!!なんで私までルカに嫉妬してるんだ!?しっかりしろ。ルカは友達なんだぞ!!)」

一部始終を黙ってみていた悠太は

「それ位にして、花火会場に行こうぜ。片付けは終わったんだからよ」
「そうだな。良い場所が取れんからな」
「花火か。ねえねえハヤテ君、一緒に見ようよ」

誘ったルカにカユラは抗議しようとしたが

「行くぞ、カユラ」
「え!?お、おい」

ナギに引っ張られるように会場を後にする事になった。
千桜もそれに続いた。

「(ナギ、気を使ってくれたのかな?)」

ルカが何と無くで察していると

「なあルカ。ハヤテと少し話したいから、先に行っててくれないか?」
「え〜!?」
「頼むよ」

不満はあったものの、ルカは渋々会場を後にした。

「で、悠太。話って」
「ん!?ああ。 お嬢様の事さ」

悠太は前置きをし

「ハヤテは今回、お嬢様には手を貸さなかった。確かに俺や千桜、カユラの支えがあったとはいえ、なんでだ?お嬢様にはハヤテの手助けが一番」
「手助けしようと思えば、確かに出来たよ。でも、僕は敢えてしなかったんだ」
「な、何で」

ハヤテは少し間を置き

「助けちゃったら、ナギさんは誰かに依存しないと生きられない様になっちゃうからね。それを防ぎたかったんだ」
「成程な。天王州みたいになっちまうか。 それは分かった。でも、大変だったんだぜ。思い悩んで、壁にぶつかるし心は折れるしで」

悠太に言われ、ハヤテは少し黙り込み

「実はいうとね、予想出来てたんだよね。ナギさんが壁にぶつかる事も、そのせいで心が折れるかもしれない事も」
「な!?」
「だけど、僕が助けたんじゃさっき言った通りになるかもしれないでしょ?だから、千桜さんに頼んだんだ。「そうなった時は鼓舞してくれ」ってね」

ハヤテの説明に悠太は軽くため息をつき

「やれやれ。お前は本当にすげえよ。全部、予想通りだったんだからよ」
「そんな事ないよ。第一、同人誌対決の結果は予想出来なかったし」
「それでもだ。流石に10年も執事修行すると格が違うって訳か」

悠太の褒め言葉にハヤテは頭を掻き

「じゃあ、もう行くよ。ルカさんを待たせてるし」
「そうだな。俺もお嬢様達の相手しねえとな」

2人で会場を後にした。


                   × ×


ハヤテと別れた悠太はナギ達の元へ来ていた。

「場所、見つかったか?」
「それが全然」
「遅かったせいで、辛うじて見える所ばかりだ」
「ま、仕方ないけどな」

不満そうな3人に

「大丈夫だよ。手は打っておいた」
「「「え!?」」」
「ついて来いよ。かなり良い場所だからよ」

移動割愛

「ここさ」
「なあ悠太。確かにこのマンションの室内からなら、文句のつけようもない程良い場所さ」
「だが、どうやって入るんだ?こう言う所はセキュリティが」

不安そうなナギとカユラに

「知り合いが住んでるんだ。話はつけてあるから行こうぜ」

エントランスで話すと入れて貰えて、かなり上の階の部屋に入れて貰えた。

「おお〜、凄いな。ここからならよく見える」
「だろ?」
「悠太っち、凄いな。こんな所に住んでる人と知り合いだなんて」

目をキラキラさせるカユラに

「真山物産は不動産で財を成した家柄だからな」
「つまり、ここは真山物産で買ったのさ」

家主の男性がトレーを持ってきた

「麦茶だけど、差し入れだよ。後で他にも差し入れるし」
「ありがとございます」
「すいません。急に頼んじゃって」

申し訳無さそうな悠太に

「他ならぬ君の頼みだ。可能な限りは聞き入れるよ」

そういうと、キッチンに向かった。

「こんないい場所なら、綾崎君と見たかったな」
「我慢しろ、カユラ。今日だけは、な」
「・・そうだな」

ナギに諭され、カユラは不満げながらも従った。


                   × ×


一方のハヤテ。

「ありがと、ハヤテ君。両親の事」
「正直、余計なお世話かとも思ったんですが、ルカさんにはご両親と和解して貰いたかったので」
「そっか。でも、和解はまだかな。簡単にはいかないよ」

ルカの言葉や雰囲気でハヤテは「きっと直ぐだろう」っと思っていた。

「まあともかく、色々ありがと。ハヤテ君が動いてくれなかったら、拗れたまま後悔したかもだし」
「そうですか」

ルカの顔は勝利したのもあってか、晴々としていた。

「ではルカさん、折角ですから夜店にでも行きましょうか」
「え!?」
「ルカさんは沢山頑張りましたからね。そのせめてものご褒美ですよ」

ハヤテが言うと、ルカは少し迷ってから

「それって、ハヤテ君の奢り?」
「勿論ですよ。それなりにお金持ってきましたし」
「じゃあ、お言葉に甘えようかな。あ、でも」

ルカはまた少し迷って

「大丈夫かな?私、アイドルちゃんだよ。メイクも落としちゃったし、メイド長さんも帰っちゃったし」
「僕が守ります。ご安心ください」
「じゃ、甘えちゃおうかな」

ルカはハヤテの腕に抱き着き、お祭り会場へ向かった。

少し飛ばし、

「ふ〜っ、美味しかった」
「け、結構食べましたね。大丈夫ですか?」
「平気平気。アイドルちゃんはいっぱい動くから、エネルギーつけないと」

一応は納得のいく理由にハヤテが納得していると

「それにさ、こういう夜店で豪遊したいって、あるでしょ?」
「ま、まあ。少しは」
「でしょ〜」

笑顔のルカは更に

「って事でさ、ハヤテ君も楽しもうよ」
「へ!?」
「ハヤテ君もさ、子供の頃こう言う所で楽しめなかったでしょ?夜店にあるキラキラとした子供の夢が詰まってるところでさ」

実際、アテネと出会う前は生きるのに必死で、アテネと出会った後も執事修行に明け暮れていたので、ルカの言う通りなのである。

「そ、それにさ/////////////////折角の「恋人になってから」初デートなんだし、一緒に楽しもうよ////////////////////////」
「そう、ですね。楽しむべきですね」
「そうそう。じゃ、2人でリベンジマッチだよ」

その後も2人は様々な夜店で楽しんだ。
散々遊び尽した後、とあるビルの屋上

「いや〜っ、楽しかったね〜」
「ですね」
「でも、本当によかったの?結構使っちゃったけど」

やっぱり不安そうなルカに

「お気になさらず。ルカさんへのご褒美も兼ねてますから」
「そっか。ま、この500円もするお面のお陰でばれなかったし、万々歳だね」

ルカは割と最初の方にお面を買い、それをかぶってたお陰もあり、大丈夫だったのだ。

「こういうキラキラしたものは、手に入れると有難味が分かるんだね」
「そう、かもしれませんね」

話が途切れ、夜空や夜景を楽しんでいると、ルカがそっと手を重ねて来た

「ルカさん?」
「・・・」


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以上です。

次回は続きです。

では。
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Re: 女神と共に第三部 3rd (6月20日更新) ( No.39 )
日時: 2018/06/20 18:00
名前: masa

こんにちはmasaです。

本編の更新です。

どうぞ。
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前回、ハヤテとルカは夜店を堪能し、あるビルの屋上で2人きりになっていた。


突然手を重ねて来たルカに驚いてると

「あの、ルカさん?」
「ハヤテ君」

ルカはまるで導かれるようにハヤテにキスした(口に)。

「どう?ビックリした?」
「そ、そりゃ、まあ/////////////////////////」
「フフッ♪」

ルカは立ち上がって鉄柵の近くまで行き

「キスは前にした事あったけど、恋人になってからは、初めてだね」
「そ、そうですね////////////////」
「何照れてんの。アテネ達とは毎日してるくせに」

事実なだけにハヤテは何て返すべきか迷ってしまった。

「まあ、良いけどね。これからいっぱいするんだし」
「・・・」

リアクションに困るハヤテに

「何はともあれ。これで棺桶リストは一つ達成だね」
「なんですか、その棺桶リストって」
「ん!?前に作った、「死ぬまでにやりたい事」それをリストアップした事だよ」
「成程」

納得は行ったものの

「ですが、恐らく前の倒れた時に作ったものと推測出来ますが、あの時は別に命に係わる様な病気じゃ」
「う」

正論に返す言葉に詰まったが

「べ、別に良いでしょ。備えあれば患いなしっていうでしょ」
「ま、まあ、確かに」

正論を返され、ハヤテは追及を止めた

「それで、どんな事を書いたんですか?」
「うえっ!?////////////////////そ、それは////////////////////」

リストを見ようとはしないものの、聞きたそうなハヤテに

「し、知りたい?///////////////////////」
「そりゃ、少しは」

ルカはモジモジした後

「お、教える訳無いでしょ!!!!!教える位ならオッパイ見られた方がましよ」
「そ、そこまで言うなら聞きませんが」

あっさり引き下がったハヤテにルカは悪戯心が刺激され

「あのさ、ハヤテ君」
「はい?」
「ハヤテ君はさ、私のオッパイ見たいって思う?」

ハヤテは直ぐに何かを察した

「そう言うからかいはいいですよ」
「か、からかってないもん。ほ、本気で聞いてるもん」
「はいはい」

あくまでも無反応なハヤテに

「そうだもんね。ハヤテ君はアテネや千桜のを見てるもんね。一緒にお風呂に入るときに」
「そ、それは////////////////////////」
「まあ、アテネ達だったら、ハヤテ君が「見せてほしい」って言えば喜んで見せるだろうからね〜」

皮肉交じりに言うルカに、ハヤテは何も言い返さなかった

「で、でもさ。ハヤテ君が私のを見たいって言ったなら、見せてあげてもいいよ////////////////////////」
「ですから、そういう冗談はいいですって」
「チェ〜、引っかからなかったか」

ハヤテは「やっぱり」っと思っていた。
それに対しルカは

「(まあ、ハヤテ君相手なら別に見せても良いんだけどね。一緒にお風呂に入る事にもなるだろうし)」

割と真剣に言っていたそうだ。

少しの間会話が途切れた後

「ハヤテ君」
「ルカさん」

ルカはハヤテに抱き着いていた。

「駄目ですよ。僕達は恋人になりましたが、外だと誰が見てるか」
「良いよ、別に。マスコミとかにばれても、堂々と交際宣言しちゃうし」
「しかし」

心配するハヤテに

「事務所との契約には「恋愛禁止」は無いよ。だから大丈夫だって」
「そう、ですか」

ルカの意思に安心し

「(まあ、万が一やばかったら、天王州家の力でもみ消すか)」

っと、思った。

「ねえハヤテ君。これからさ、恋人としてよろしくね」
「ええ、勿論」

っと返したハヤテだったが

「(ねえ白桜、恋人って何したらいいの?)」
「(知りませんよ。確かに私は人間の性別にあてはめたら女ですが、ただの剣に聞かないでください)」
「(そっか。まあ、執事としてのスキルを総動員すれば何とかなるか)」
「(マスターなら平気ですよ)」

白桜に励まされ、ハヤテが安心していると

「あ、花火だ」
「始まりましたね」

綺麗な花火が何発も打ちあがり、ロマンチックな雰囲気を演出していた。

「でもさ、今更なんだけど、ここで見てていいのかな?」
「ここのビルのオーナーさんとは知り合いなので、問題ありませんよ。話しとおしてありますし」
「そっか」

暫く花火に見とれ

「ハヤテ君も幸せ者だよね」
「え!?」
「こんな可愛いアイドルちゃんの結婚前提の恋人になったんだよ。私もこんな素敵な彼氏が出来て幸せだけどさ」

ルカの言葉にハヤテは敢えて何も言わなかった。

「ハヤテ君」

2人は花火が上がる中、当然の様にキスした。

「これからもよろしくね」
「ええ、勿論」

2人はまたキスした。


-----------------------------------------------------------------------------------
以上です。

次回は続きです。

では。
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Re: 女神と共に第三部 3rd (6月21日更新) ( No.40 )
日時: 2018/06/21 18:00
名前: masa

こんにちはmasaです。

本編の更新です。

どうぞ。
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前回、ハヤテとルカはビルの屋上で愛を誓い合った?


ルカとハヤテがイチャツイテいる一方

「おお〜、綺麗だな」
「確かにな」

千桜とカユラは素直に花火に感動していた。

「(まあ、ホントは綾崎君と一緒が良かったんだが、我慢するか。ルカ、感謝しろよ)」

まあ、カユラはこう考えていたが

「ん!?お嬢様はこっちで見ねえのか?」
「いいよ。疲れてるから、ここで見る」
「そっか。今日は頑張ったもんな」

悠太に褒められ、嬉しいのだが

「(ホントはハヤテに褒めてもらいたかったな。 ハヤテ、か。あ、良い事思いついたぞ)」


                  × ×


一方の、ハヤテルカ。

「さて、そろそろ帰ろっか」
「え!?花火はまだ途中ですが」
「終わってから帰ったんじゃ大変だよ。それにさ、早く帰らないとハヤテ君は大変なんじゃない?」

ルカに言われ、思い出していた。アテネが「甘えたい症候群」を発症している事を

「帰ろっか?」
「そうですね」

屋上を後にし、帰路につき始めた。
その道中

「(それにしても、ハヤテ君が恋人か。これからが楽しみだな)」
「ん!?ルカさん、どうされました?」
「あ、ううん。何でもないよ」

突然笑い出したルカを不審に思って聞いたが、はぐらかされた。

「(まあ、アイドルとして忙しい以上デートは少なくなりそうだけどね)」

こんな事を考えつつ歩いていると

「ね、ねえハヤテ君」
「カップルの方々が、多いですね」

明らかにイチャツイテいるカップルが多数おり、花火大会なのでカップルが集まってくる事をすっかり忘れていた。

「じゃ、私達もイチャつこう」
「え!?あ、あの」

当然の様にハヤテの腕に抱き着き、負けない位イチャイチャオーラを出そうとしていた。
すると

「あ、すみませーん」
「「ん!?」」
「シャッター押してもらえます?愛の記念なんです」

見るからにチャラいカップルがカメラを差し出してきていた。

「あ、はい、良いですよ」
「上手く撮ってあげられるの?」
「ええ。一応技術は叩き込まれましたから」

ハヤテがカメラを受け取ると

「私達、もう付き合って3年になるんですよ〜」
「明日結婚式なんですよ〜」
「へ、へえ」

適当な相槌を返すと更に

「ねえねえ。折角だからハート作ろうよ」
「2人の愛の証で大きなハートをな」
「あの、もういいですか?」

ただただリアクションに困るので、急かした。

「「お願いしま〜す」」
「はい、チーズ」

ハヤテがシャッターを切る瞬間、2人はキスした。

「これで幸せの証〜♪」
「幸せの証〜♪ あ、君もありがとね」

カメラを返すと、イチャつきながら帰って行った。

「(いいな〜。私もハヤテ君とあんな風にイチャつきながら結婚したいな〜)」

ルカは少しだけ羨んでいた。


                   × ×


ハヤテとルカが帰宅すると、遅めの時間だった。

「疲れた」
「色々ありましたからね」
「もう寝ちゃおうか」

ルカはこう言った後直ぐに

「ねえハヤテ君、今日は一緒に寝ようか?」
「・・へ!?」
「何さ。もう恋人になったんだよ。一緒に寝る位普通じゃん」

悩むハヤテに

「アテネ達とは一緒に寝てるじゃん。恋人の私と一緒に寝ないなんて不公平だよ」
「わ、分かりました」
「やった♪」

喜ぶルカに

「(今日はアーたんと寝る事になってたんだけど。 ま、いっか)」

ハヤテはこう思っていた。

「じゃ、さっそく寝よう」
「え!?お風呂入らないんですか?」
「あ、そっか」

ルカは少し考え

「一緒に入る?///////////////////」
「え!?」
「冗談だよ。一緒に入りたいけど、まだちょっと抵抗あるし」

そう言い残し、ルカは自室へ引き上げて行った。

「さてと、僕は」
「ハヤテ坊ちゃん」
「ん!?あ、師匠。何か?」

アテネの機嫌取りを考えようとした所に、ハヤテの師匠でもあるメイド長が声をかけて来た。

「ハヤテ坊ちゃんにお客様ですよ」
「この時間に?なんだろ」

メイド長にお礼を言い、応対に向かった。

すると

「ふっふっふ〜、来たな少年」
「あ、あの」

客間にはお面をつけたナギが居た。

「私はコロリちゃん。君に用があったのだよ」
「(これ、正体について聞いちゃいけないやつだよね?)」
「(ええ、間違いなく)」

ハヤテ相談し、

「僕に何の用でしょうか」
「君にプレゼントだよ。ホレ」
「え!?えっと」

コロリちゃん(ナギ)が差し出したのは

「サイン、ですよね?ナギさんの」
「ああ、そうさ。ハヤテの似顔絵入りの、な」

するとナギはお面を取った。

「将来一兆部売る漫画家・三千院ナギの初めてのサインだ。ありがたく受け取れ」
「はい。ありがとうございます」

ハヤテの笑顔にナギは真っ赤になった。

「ま、ハヤテも座れよ。人ン家だが」
「あ、はい」

するとハヤテはナギの隣に座り

「そう言えば。ナギさんも同人誌、沢山売れたんでしたね」
「まあな。色んな人の力を借りたが、なんとかな」
「おめでとうございます。凄いじゃないですか」

褒めてくれるハヤテにナギは

「ありがとな。でも、90部だった。完売出来なかった」
「それでも凄いですよ」
「そ、そうか//////////////////////」

ハヤテに頭を撫でられ、ナギはまた真っ赤になった。

「次は完売出来るよう、頑張るな」
「僕も応援しますよ」

ハヤテに撫で撫でされ、頑張ったかいがあったと思うナギであった。


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以上です。

次回は第三部の最終回です。

では。
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Re: 女神と共に第三部 3rd (6月22日更新)第四部へ ( No.41 )
日時: 2018/06/22 18:00
名前: masa

こんにちはmasaです。

今回で、第三部はお終いです。

では本編どうぞ。
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前回、ナギ達は花火を堪能し、ハヤテはナギのサインを貰い、ナギはハヤテに同人誌の事で褒めて貰えた。


ナギ達が色々あった頃、あるマンションの屋上。

「はい。ああ、貴方ね。何か?」

法仙夜空が誰かと電話で話していた。

「綾崎ハヤテは変わらず監視している。でも、チャンスが無くてね。強引に作ってもいいけど、大事になれば天王州アテネや鷺ノ宮伊澄、その他の強者達が出てくる」

そう言うと相手は言い返してきたが

「恐れてなんかいないよ。ただ、出来るだけ面倒は避けたい。それだけさ。 ま、一旦そっちに戻るよ。作戦の立て直しと行こうか、ヒスイ」

法仙夜空、初柴ヒスイ。両者が不穏な動きをしている事はまだ誰も知らない。


                   × ×


ルカは入浴後、ハヤテが出してくれたアイスティーで寛いでいた。
すると携帯に着信があり、相手はマネージャーの集さんだった。

「はい、もしもし」
『決着は、付いたみたいね』
「ええ」

ルカは一旦間を置き

「これから、忙しくなるわよ。アイドルとしても、漫画家としても成功してみせるからね」
『そう。よろしくお願いするわ』

ルカは何となくで集さんがお辞儀していると感じ取った。

『アイドルの方は、全面的に私に任せなさい。私も全力で支えるわ』
「・・助かります」
『でも。貴方に恋人がいる事は内緒にしなさい。家との契約に「恋愛禁止」は無いけど、アイドルは恋人がいない方が圧倒的に良いわ』

集さんの言葉にルカは

「分かってますよ。「恋人はファンの皆さんで〜す」の方が良いって事でしょ?」
『そう言う事。まあ、相手が相手だから、「権力使って揉み消す」は容易いでしょうけど、注意しなさい』
「ええ、それも分かってます」

ルカのしっかりした返事に安心し

『それで、これからどうするの?今迄のマンションに戻るの?』
「その事なんですけど、これからも天王州家に御厄介になろうかなって。その方がハヤテ君と一緒にいられる機会が増えますから」
『分かったわ。荷物やマンションの契約は何とかするから、転出届とかは自分で何とかしなさい」
「はい、勿論です」

電話を切ると、ルカは自然と笑みをこぼした。


                   × ×


翌朝。

「って事で、ハヤテ君の恋人になっちゃいました〜♪」
「「「・・・」」」

リアクションの薄いアテネ、日向、ソニアにルカが?マークを浮かべていると

「何が「って事で」なんですの?」

ルカはナギとの同人誌対決に勝利し、ハヤテの結婚前提の恋人になっていたのだ

「作者さんが説明してくれた通りなのである」
「へ、へえ。そうなんですの」
「そうなんや」
「へ〜」

相変わらずハヤテに抱き着くルカに対し、納得した3人は

「(な、何だろう。3人から異様に怖いオーラが出てる気がする)」

ハヤテは怯えていた。

「ハヤテは良いんですの?約束したとはいえ、その程度の事で恋人を決めて」
「その程度って、酷いな〜」

ルカの空気を読まない発言にハヤテは怯えつつ

「ま、まあ。約束したからってだけじゃないけどね」
「どういう事や、ハヤ兄」
「えっと。ルカさんだったら、恋人もいいのかな〜って」
「ふっふ〜ん♪」

嬉しそうなルカに対し

「(全く。恋心が分からないくせに、良いご身分です事)」
「(全く。ハヤ兄のお嫁さんはウチやのに。ま、ええわ。絶対奪ったる)」
「(生意気な小娘。ハヤテさんのお嫁さんは私がなると言うのに)」

3人それぞれこう思っていた。

「(正直、恋と言う物は未だに分からない。でも、執事スキルを駆使すれば、何とかなるでしょ)」

ハヤテはこう考えていたそうだ。

「ところで、ルカはこの先どうするんですの?」
「あ、家?できればこのままここに御厄介になれたらな〜って」
「ま、良いですわ。ルカが気の済むまでここに住みなさい。マスコミとかの処理は我が天王州家が責任もって処理しますわ」

アテネが言うとルカは笑みを向け

「ありがと、ルカ」
「お礼は不要ですわ」
「そう」

すると、日向が話の切れ目を見計らい

「で、仕事はどうするんや?ルカお姉ちゃん、アイドルに戻るんやろ?漫画も描くみたいやし」
「アイドル稼業はマネージャーさんが何とかしてくれるって。漫画家の方は・・皆の力が必要かな」
「さよか。まあ、ハヤ兄か千桜お姉ちゃんがおれば万事解決やろ。ウチら、漫画読まへんし」

日向の言葉にアテネもソニアも頷いていた。

「漫画には素人さんの意見も大事になる時もあるんだよ。その時は頼むかもね」
「まあ、良いでしょう。ただし、かなり辛口で行くので、ご覚悟を」
「ソニアさんのは効くからね〜。ま、良薬は口に苦しって思うよ」

話は纏まった様に思え、3人から取り敢えず怖いオーラが消えてはハヤテが安心していると

「ところで。何時までハヤテに抱き着いているつもりなんですの?」
「そうやで。恋人とはいえ、くっつき過ぎや」
「そうですよ。私だってべったりしたいのに」

怖いオーラが復活し、ハヤテはただただ嵐が過ぎ去るのを祈るだけになった。

「ま、3人が嫉妬するのは分かるけど、ハヤテ君は私の彼氏だし、べったりするのは当然っと言う物だよ」
「「「ヌググ」」」

3人対ルカと言う構図にハヤテは頭を抱えていた。
すると

「ルカ、貴方生意気ですわよ」
「ホンマや。ウチより年上やからって、勘弁できんわ」
「許さないわよ!!」

睨み合いは激しくなり、ルカはハヤテから離れて3人に近付き、激しい火花を散らした。
っと、そこへ

「あ、あの。アテネお嬢様にお手紙が」
「あら、ご苦労様」

メイド長が怖がりながらアテネに手紙を差し出した。
アテネが封筒を開けると

「これは、どういう事ですの」
「な、何や?何があったんや?」
「アテネお嬢様?」

アテネはワナワナと震えながら封筒の中身を机の上に置いた。
そこには

  「綾崎ハヤテ婚約者候補No.7 水蓮寺ルカ」

っと書かれていて、正式に決まった旨も書かれていた。

「へ〜。ナギ、ちゃんと約束守ったんだね」
「「「余計な事を〜」」」

睨み合いは激化し、ハヤテはこっそり部屋を出た。

廊下を暫く歩いていると

「ん!? やあ、シラヌイ」

ハヤテの愛猫、シラヌイが甘えて来た。
ハヤテはシラヌイを抱っこし、

「シラヌイ、これから大変だよ〜」
「ニャ〜?」

どうしたの?っと言う鳴き声に

「ルカさんと皆さんとの言い合い、凄くなりそうだよ。これから一緒に暮らしていくのに」
「ニャ〜」

大変だね。っと励ましてくれるように感じ

「シラヌイ、僕はどうしたらいいっと思う?って、分かんないか」
「ニャ〜」

私が癒してあげる。っと感じ、ハヤテはシラヌイの背中を撫で、彼女の発する癒しに身を委ねる事にした。
シラヌイはハヤテに撫でて貰えて、甘え声を出していた。


こうして、ルカが正式に婚約者候補No.7になった事で、恋と言う戦争は激化の一途を辿った。

だがその裏ではよからぬ計画が進んでいた。
ハヤテを含め、計画者やその協力者以外は誰も気付いていない。

新たな悲劇は、またしても迫っていた。
果たして、その悲劇は回避出来るのか?

それは・・また次回以降にて。




           第三部〜婚約者候補乙女達の戦い〜 完





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以上です。

次回からは新しいスレで第四部を始めます。

では。
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