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《第7回合同本転載枠》それはまるで魔法のよう
日時: 2015/06/10 21:13
名前: タッキー
参照: http://hayate/1212613.butler

どうも、タッキーです
今回は第7回のクイズ大会の賞品として、まことにもったいないことながら合同本への参加、そしてその中でも転載枠をいただいたので以前投稿した『それはまるで魔法のよう』の修正および書き加えたモノを再投稿させていただきます。ギリギリになってしまって管理人さんにはホントに申し訳ないです。すいません。

それでは『それはまるで魔法のよう』リメイク版…
更新!!








































三千院家の広大な敷地内、その中でも三千院ナギが生活をしている母屋から2キロほど離れた場所にぽつりと一軒家が建っている。元々三千院家の庭には森が多いこともあってその開けた所に建っているという少し不自然さが残る形ではあったが、この家を初めて見る一組の男女はとても嬉しそうな表情を浮かべていた。

「今日からここが私たちの家…。それにしても一応予想はしてたけど、まさか結婚式をあげた当日に引っ越すことになるなんてね」

「まぁ、たしかにびっくりですけど、でも…これでずっと一緒にいられますね」

「…うん」

今すぐ家の中へ飛び込みたいという気持ちを押さえながら綾崎ハヤテは鍵を回し、あえてゆっくりとドアを開けた。そこでは小窓から差し込んでくる夕日が何の変哲もないはずの玄関を輝かせ、まだ使われていない空っぽの靴箱やほこり一つない廊下、その奥から感じられる静けさはあたかも自分たちを歓迎しているかのように感じられた。
思わず感動に浸っていたハヤテだったが、ふと今日から自分の妻になった人物が隣にいないことに気が付いた。自分が舞い上がっていたせいで彼女を置いてきてしまったとハヤテが顔を曇らせながら外へ出てみると、その彼女は玄関の前にぼーっとした表情でつっ立っていて、そしてそのままハヤテに気づきもせずにずっとある一点を見つめていた。

「ヒナギクさん?」

「ふぇ!?あ、ごめんね。なんかこれ見てたら、私がハヤテくんと結婚したんだって実感がわいてきて・・・。」

ヒナギクが見ていたのは表札。ドアの右側、ちょうどヒナギクの頭ぐらいの高さにある薄い石造りの札に刻まれている二文字は彼女にとってはきっと新鮮なものなのだろう。ヒナギクがそっと手でなぞってみると石のひんやりとした感触が指先をつんと刺激し、それを丸彫りのなめらかな肌触りが優しく包む。自分が、今隣にいるこの人にとって特別な存在なんだということを強く感じることができた。無意識のうちに顔をほころばせているヒナギクにハヤテも自然と笑みがこぼれて、しかしそれでも一緒に家の中に入りたいという気持ちの消えない彼は手を差し出すとイタズラに彼女を呼んだ。

「荷物の整理もありますし、早く中に入りませんか?…綾崎さん」

「もう…からかってるつもり?」

ハヤテの手を取ったヒナギクは少し頬を赤らめながら彼に引かれるまま自分たちの新居の中へ入っていった。














  『 それはまるで魔法のよう 』














「ふぅ〜、これで一通り終わりですかね〜」

新居に持ち込んだ最後の家具、リビング用のソファを移動し終えたハヤテは汗をかいてこそいないがそれをぬぐうような仕草をする。

「お疲れ様。お茶、ここに置いとくわね」

「あ…ありがとうございます。それにしても意外と時間かかっちゃいましたね」

「そうね。でも結構いい感じじゃない。あまり飾った感じじゃないけど、こういう落ち着いてる感じのほうが私は好きよ」

インテリアの配置はハヤテが一任していたのだが、ヒナギクは最初から彼のセンスを否定するつもりはなかったし、それ以前にハヤテはこういうことに関してはうっとうしいほどに細かいので何も問題はなかった。現にさっき設置したソファをにらみつけながら顎に手を当て、まだなにやらブツブツとつぶやいている。

「やっぱりもうちょっと右のほうがこう…」

「ほらほら、そういうのは別に後でもいいじゃない。ご飯できたんだから冷めないうちに食べましょ」

ヒナギクの台詞でハヤテは初めてキッチンから漂う香りに気が付いた。スパイシーでコクがあり、なおかつどこか甘いそれはさっきまで労働をしていた彼の空腹を容赦なく刺激し、お腹が鳴りそうになったハヤテは急いでそれを両手で押さえた。

(カレー…か。相変わらずだな……)

ヒナギクが妻として初めて作ってくれた料理の味に期待し、それを表すかのようにハヤテはニッコリと微笑んだ。

「そうですね。それじゃいただ……おわっ!!!」

「きゃっ!!」
















  ふにっ……









「は、ハヤテ…くん?」

ハヤテはしばらく固まっていた。つまずいてこけた拍子にヒナギクも押し倒してしまっていた彼の手のひらには何やら柔らかい感触があり、それがなんなのか気が付いたときには既に力が入っていて、ヒナギクは突然の刺激に顔をしかめていた。

「んっ…!!」

「す、すいません!!ヒナギクさ…いたっ!!」

彼女から飛びのいたハヤテはゴッと鈍い音を立てて自分が置いたソファの角に頭をぶつけてしまった。後頭部を押さえて悶えているハヤテとは裏腹にヒナギクは考え事でもしているかのようにぼーっとしていて、そんな彼女をすごく怒っていると考えたハヤテは急いで頭を下げた。

「す、すいませんっヒナギクさん…!えっと、わざとじゃなくて、その…つい、でもなくて…うっかり、じゃなくて…え〜と…だから…とにかく本当にすいませ……?」

ハヤテの右手はヒナギクの両手に包まれていた。彼女はうつむいてしまっていてハヤテからは表情が見えず、名前を呼ばれても答えなかったが、突然握っていたハヤテの手のひらを自分の・・・ヒナギク自身の胸に押し当てた。驚いたハヤテは手を離そうとしたがヒナギクはそれを許さず、刺激に体を震わせてギュッと目をつむりながらもハヤテの手を強く掴んでそのまま自分に密着させ続けた。

「ハヤテくん…」

ヒナギクは自分の胸をハヤテの手で押さえつけるのをやめようとしない。彼女に名前を呼ばれてからハヤテの手は力が抜けたように一切の抵抗も示さなくなった。

「今までの私のはじめては全部ハヤテくんだから…。人を好きになるのも、憧れるのも…キスするのも…。だからこれからの私のはじめても全部、全部ハヤテくんがいい…。ハヤテくんじゃなきゃイヤ。以前、あなたは覚悟ができていないからって…そんなハヤテくんを私は待ってるって言ったけど、私たち、もう結婚したんだよ?本当は覚悟なんてとっくの昔にできてたんでしょ?だったら…」

顔を上げたヒナギクの顔は恥ずかしさが半分、寂しさが半分で、そんな彼女の表情にハヤテは言葉を発することができなかった。






































「だったらちゃんと…私のこと触ってよ…」











































・−・−・−・−・−・−・−・−・−・−・−・−・−・−・−・−・−・−・−・−・−・−・−・−・−・−・−・−・−・−・−・−・−・−・−・−・−・−・−・−・








































「夕飯…冷めちゃいましたね」

「………」

「ヒナギクさん?」

事後、ヒナギクはシーツの半分以上を占領して自らの身体を隠し、ハヤテに背を向けて悶絶していた。自分から誘ったという事実が後になって堪えたのだろう。どうやっても顔をあげようとしないヒナギクだったが、そんな彼女に微笑んだハヤテはベッドから足をおろしながらそっとヒナギクに話しかけた

「あの…一つお願いしてもいいですか?」

「な、なによ?」

恥ずかしさが消えたわけでもないし、現にお互い背をむけて顔を合わせてもいない。しかし、それでも嬉しかったという気持ちだけは伝わっている気がした。

「ヒナギクさんのこと…ヒナってよんでもいいですか?」

「ふぇ!!??な、なによいきなり!!」

頑として振り向かなかったヒナギクもさすがにハヤテのほうに体を返し、そんな彼女にハヤテは自分の頭をポリポリとかきながらはにかんだ。

「いや、ホント今更って感じなんですけど…さっきヒナギクさんが僕の名前を呼び捨てで呼んでるの聞いて、そういえばって…」

「ちょっ!!思い出させないでよ!!」

「いたっ!や、やめてくださいよ!可愛かったじゃないですか〜!!」

「だからそういうことを言わないで〜!!!」

ヒナギクの枕による攻撃から逃れるために急いでベッドから飛び降りて、目にもとまらぬ速さで服を着たハヤテは彼女が恥ずかしさでベッドから出てこられないことをいいことにドアの前でニッコリと微笑んでみせた。

「それじゃ、僕はご飯を温めなおしてきますから」

「あ、ちょっと待ちなさい!!」

「はは。ヒナギクさんはまだ立つのつらいでしょうし、ここまで持ってきますから」

そう言ってハヤテがドアノブに手をかけた瞬間、彼は自分の服が引っ張られるのを感じた。

「待ってって、言ってるでしょ……」

「ヒナギクさん……っ!!」

柔らかく、甘い感触がハヤテの唇に触れる。シーツこそ胸の前で持っているが、それを除くとまさに一糸まとわぬ姿のヒナギクは、まだ震えが残る足を精一杯伸ばしてハヤテとの距離をゼロまで埋めた。ハヤテが状況を理解したときにはもう唇は離されていて、目の前には顔を真っ赤にそめながらも頬を膨らませている恋人が不機嫌そうに自分のことをにらみつけていた。

「えっと…。僕、何か…?」

「名前!!」

「はい?」

「だから・・・!!」











   トスン…











言葉の勢いとは裏腹にヒナギクの足からはストンと力が抜け、そのままハヤテに寄り掛かる感じで彼の胸に顔をうずめた。

「ヒナってよんでくれるんじゃないの?ハヤテ…」

「…!」

「もう…ハヤテはおっちょこちょいなんだから…」

ヒナギクが微笑んでいるだろうということは安易に想像がついた。ハヤテがそっと背に腕を回すとヒナギクもシーツが落ちてしまうのも構わずに抱きしめ返してきた。彼女の体温が直に伝わり、彼女の甘酸っぱい匂いがすぐそばで香っている。それに酔いしれずにはいられないらハヤテは片手をヒナギクの後頭部まで移し、頷くことで角度の変わったハヤテの顔は、結果的に彼女の髪にキスをするような形になった。

「それじゃ、ご飯を温めなおしてきますね。……ヒナ」

「うん。いってらっしゃい…」

ハヤテが部屋を出るのを見送った後、そのままの格好ではいられないヒナギクはまだ見慣れない衣装ダンスから寝巻きを取り出し、それに身を包むとベッドにストンと腰を下ろした。さっきの熱がまだ冷めていないからなのか、それとも真新しい新居に引き立てられるこれからの生活に対する期待からなのか、どちらにしろ胸のドキドキは収まらない彼女は無意識に自分のお腹に手を当てていた。気のせいと分かっていても、温もりを感じずにはいられなかった。










「もう少しだけ二人っきりでいさせて欲しいってのは…ちょっと我が儘なのかな…」






















ジレンマを通り越して矛盾。しかし、だからこそヒナギクは自分が呟いた言葉とは逆の意味の言葉を声に出さずにはいられなかった。





























「あの娘にも…早く会いたいな……」





























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