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Lachrymal Qualifiction
日時: 2015/04/20 00:42
名前: タッキー
参照: http://hayate/1212613.butler

どうも、タッキーです
今回で一話完結はいったん終了です
そして今回はいつもみたいにプロローグ的なやつがないです
それでは・・・
更新!















































無駄に広い廊下、無駄に高い天井。外にある菜園や森を一望できる大きすぎる窓の反対側には億単位で値段が付くのであろう絵画と、その合間にはここで愛情をこめて育てられた綺麗な花がこれまた値段の張る花瓶で飾られている。今は昼間だから必要ないけど、夜にこの屋敷に光を加えるのはもちろん一般家庭で使われているLED照明などではなく、金持ちという言葉しか連想させないほど大きくて豪華なシャンデリアだ。この屋敷が使っているシャンデリアにもLEDは使われているのだろうけど、見上げている私からしたら電球が光っている感じよりたくさんの蝋燭に火を灯している感じにしか見えていない。まったく、家具一つにどれだけのお金をつぎ込んでいるのやら。

でも、もうこの景色には慣れていた。
高校のときからたまに訪ねていたというのもあるのかもしれないけど、3か月くらい前から毎日通うようになったのが大きいんだと思う。
急に…いや、全然急じゃないか。なんとなく、あの人の見ていた景色を見たくなって…。私とあの人がすれ違ってしまった理由が知りたくて…。多分、それが理由だ。

「3か月前…か」

そう私が思わずつぶやいたときだった。後ろから響いてくる自分以外の靴の音が少しずつ大きくなっているのに気付いた。廊下を蹴る音の間隔が狭いからおそらく走っているのだろうけど、この時点でこっちに向かっている人物はこの屋敷の主であるナギかあともう一人に絞られる。今回はきっと後者のほうだろう。

「ママー!!」

小さい子が抱きついてくること自体はとても微笑ましいのだけど、これが結構キツイ。無意識というか、無邪気というか、とにかく全体重をかけてくるので思ってるより力が強いし、やっぱり身長差というものがある。この子はちょうど私の膝の関節に抱きついてくるから割れ物を運んでいるときとかはなにかと危ないのだ。
その時はしかりはするけど、怒りはしない。というより、私は以前のように誰かを強く怒ることができなくなっていた。

「どうしたの?アカリ」

今回はちゃんと身構えてたし、アカリも私が何も持ってないことを知っていて抱きついてきたみたいだから別にしかる必要はない。
私がいつものように抱き上げるとこの子もいつものように笑ってくれる。あたかも天使のようだと思って微笑んでしまう私は親バカという人種なのだろうか?
しかし、そのあとのアカリの次の言葉は私の笑顔に冷や汗を付け加えるのには十分すぎるモノだった。

「さっきね、ナギおねえちゃんにえをおしえてもらってたの!」

「……。へ、へ〜…。そうなんだ〜…」

「ママ、どうかしたの?」

「い、いや!なんでもないわよ」

ナギがアカリにとてもよくしてくれているのはとても感謝してるけど、早々にいろいろと教え込むのは少し遠慮したい。この前だっていつの間に吹き込まれたのか「しんやあにめみたい!!」とか言い出して寝かしつけるのが大変だったのだ。そういうのが良くないと批判をする気はさらさらないのだけど、正直まだ4つの子供の教育にはあまり…いや、常識的に考えてふさわしくないと思う。

「で、アカリは何を描いたの?」

娘を床に下ろしながら質問した私は期待しているのが3割、不安でしかたないのが7割という愛娘に対して失礼な考えをしていたのだけど、もちろんそんなことを知りもしないアカリはずっと嬉しそうにニコニコしながらノートから切り取っただろうB5サイズの紙を右手でひらひらと揺らしていた。


アカリがしばらくの間「えっとね・・・」とすこしもったいぶった後にバッと広げてみせた半紙は明るく色づけられていて、その中心には桃色の髪の女の子が二人描かれていた。一人は少しだけ横髪を結んでいて、もう一人は黄色のヘアピンで前髪の左側をかきあげている。やはりというかなんというか…アカリと私だった。

「あら、よく描けてるじゃない。がんばったわね」

お世辞とかじゃなくて、正直にそう思った。たしかに小さい子どもが描いた程度の絵で、クレヨン特有のざらざらした感じのある絵だったけど、その中にある温かさが私の目に映るこの絵を美しく飾っているのだろう。

「えへへ。そう・・・かな?」

ほめられて少し照れくさいのか、アカリはもじもじしながら私の顔をうかがっている。そんな娘の頭を優しく撫でてやると、彼女はまた照れくさそうに笑った。

「もちろん。アカリはやればなんでもできちゃうから、たくさんのことにチャレンジしないとね」

「うん!」

アカリは嬉しそうに頷くと自分の描いた絵を抱きかかえるようにしながらさっきとは逆方向に走っていった。今度はマリアさんあたりにでも自慢しにいくのだろう。
率直に言ってしまうと、アカリは褒められるのがとても好きだ。それが好きな子どもがいないかと聞かれたらそんなことはほぼないのだろうけど、その中でも彼女は特に好きなほうだと思う。良くも悪くもいろんなことをやろうとするし、上手くいかなくてもできるまで頑張ろうとする。まぁ、まだ4つだからできることのほうが少なくはあるのだけど、幼稚園の先生から聞いた話によるとこの年にしてはできることが多すぎるらしい。

そんなアカリのことをみんなは私によく似ていると言う。私自身もたしかにそうだと思う。負けず嫌いだったりするとこととか、たくさん努力するところとか、あとは見た目とかもあるだろう。
でも、がんばってるアカリと重なるのは私自身の面影じゃなくて、必ずと言っていいほどあの人の…あの子の父親の面影だった。欲自体があまりないのと、あってもなかなかそれを表に出さないところとか、すぐに無茶しようとするところとか、誰にでも優しいところとか…
























-もういい!!-





















「私も未練がましいな…」

まだ3か月、もう3か月。その月日をそんなに気にしているわけではないのだけどあの人がいなくなってからの時間はどこか長く、そして憂鬱に感じている。多分それが顔に出ていて、そんな私を少しでも喜ばせるためにアカリも無茶をしようとするのかもしれないけど、それが分かっていながら応えてあげられていない私はきっとあまりいい母親じゃないんだろう。
というか、それ以前に私はあの子に一番大切で一番あたりまえのものすら、私たちが絶対にあげなきゃいけないって決めていたものすらあげられていない。


























 −もうハヤテなんか…!!−





























「ねぇ…、ハヤテ…」

あなたが私のことを好きだと言ってくれた日のことを、今でもよく覚えている。あの時のあなたは子供みたいに泣いていて、私の服の裾をギュッと掴んで、何度も何度も、ただ‘ごめんなさい’て。私を傷つけたことに対して何回も頭を下げてくれた。
なのに私はあなたを傷つけたまま、ずっと何も言えていない。だから私にこんなことを言う資格はきっとない。涙を流すことだって、本当は許されるはずがない。

でも…

それでも…





























































 −ハヤテなんか…!いなくなっちゃえばいいんだーーー!!!−











































「ハヤテ…。また、逢いたいよ…」














 早く…かえってきてよ…



















 



















































どうも
ということで次の中編のプロローグ的な感じの話でした。次の話では「兄と娘と恋人と」のほうで残っている話もほぼ回収するつもりですので、お楽しみいただけたら幸いです。
それでは
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