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わたしのすべてがこわれるまで〔一話完結〕
日時: 2015/03/23 19:34
名前: タッキー
参照: http://hayate/1212613.butler

どうも、タッキーです
今回も一話完結なんですが前作「兄と娘と恋人と」のオリキャラが出てきます。そしてぶっちゃけその人たちにハヤヒナが叩かれる感じの話です。そしてタイトルが若干重いですがそんなことはございません!ちょっと重いだけです!ちょっとだけですから!!


コホン・・・


それではオリキャラの簡単な説明なんですが



竜堂 レナ(りんどう れな)
透き通るような桜色の髪の美少女・・・なんですが、ぶっちゃけ言うと神様です。ロイヤルガーデンとかいろいろあったんですがそれは前作のほうで

竜堂 岳(りんどう がく)
この人もレナちゃんと同じく神様。てかこっちのほうが世界とかイロイロ創っちゃってる感じです。黒髪でそりゃもうイケメン。本名はガウスなんでレナちゃんからそのまま「ガウス」と呼ばれていますがハヤテたちからは「岳」の名前で呼ばれています。それから前は初神(はつかみ)の苗字を名乗ってたんですが、レナちゃんと結婚してからは竜堂で通っています。神様が結婚するのは・・・まぁ、人間社会に溶け込んでいるからということで

竜堂 シン (りんどう しん)
岳くんとレナちゃんの息子。でもまだ赤ちゃんなので喋りません。名前だけしか出てきません。ちなみに漢字表記は「心」で「シン」です

綾崎アカリ
「兄と娘と恋人と」の方で未来からやってきたの
ハヤテとヒナさんの娘なんですが、今回は別に未来から飛んできたりしないです。名前が出てるので分からない方のためって感じです。ちなみにこの子はイラストたくさん載せてますのでよかったらお絵かき掲示板のほうも見ていただけると嬉しいです(しれっと宣伝乙


て感じです(これって多いのか?
ま、実質最初の二人しかでてきませんけど
それでは長くなるのもあれなんで・・・
更新です


















もう冬の寒さがほとんど感じられなくなった3月の後半、人々が少なからず新年度を意識しはじめるようになった頃、三千院家の執事長になった綾崎ハヤテも彼と今月結婚したばかりで基本的に専業主婦となった綾崎ヒナギクも、周りの雰囲気にせかされるかのように新年度の準備のため二人で買い物に向かっていた。もっともこの二人の一番の目的は引っ越したばかりの新居で足りないものを補充することなので、あまり新年度が関係しているわけではないがそれでも忙しくなるだろうということでいろいろ買い込むつもりでいる。ちなみに新居が三千院家の敷地内にあるのでマリアからは本家にある使っていないものを持っていた方がいろいろと楽なのではと提案されたが、二人とも自分たちの新居だからと断っていた。

「え?来月ほとんど帰って来れないの?」

「はい。今まではお嬢様が学生だったから少しはマシだったんですけど、もう白皇を卒業しちゃったので遺産相続の件とかで海外とか飛び回らなきゃならないらしくて・・・」

「そう・・・。でもメールとかはちゃんとしてよね。あと、出張で私が傍にいないからってほかの女の人口説いたりちゃだめよ?」

「そ、そんなことするわけないじゃないですか!!僕は・・・んぐっ!」

ハヤテの言葉を止めたのはヒナギクの人差し指だった。ハヤテが自分の唇に押し付けられている指から目を移した先には自分のことをじっと見つめているヒナギクの瞳があって、彼女は少し赤くなった顔でイタズラ気に微笑んでいた。

「ふふ、冗談よ。ハヤテがどこにいても、私がハヤテの一番なんだから」

その自信はどこからくるのか、そんなことをふと思ってしまったハヤテだったが現にそうなので今回は負けを認めざるを得ず、火照った顔を押さえようとしてもヒナギクが得意気な表情で先に行ってしまいそうだったので自分自信の顔を隠すこともできないまま追いかけるしかなかった。

「あれ?あそこにいるのレナじゃない?」

「ハァ・・・ハァ・・・ほ、ほんとですね。僕たちみたいに買い物なんですかね?」

ハヤテとヒナギクの今日の目的地であるスーパーの駐車場に彼女は立っていた。何もしないでつっ立ているところを見るとおそらく夫である岳のことを待っているのだろうが、そよ風になびく髪やその物腰というか、その雰囲気というか・・・とにかくどんな場所でも立っているだけで絵になる彼女のことを見ていると神様なんだと再認識させられるようだった。
しかしそんなレナに近づいてきたのは待ち人の岳ではなく5人ほどのいかにもチャラチャラしている別の男たちで、たちの悪いナンパなのはあきらかだった。下品な笑い声がハヤテたちにも聞こえてきて、それに駆り立ててられるように二人ともレナを助けに向かったがその心配は杞憂だったらしい。最初にレナにつかみかかった男をはじめにヒナギクも舌を巻く動きで彼女はチンピラたちを次々とのしていった。

「さ、さすがというか・・・。ホントに、やっぱり神様なんですね・・・。」

「う、うん・・・。」

残ってる男はもう一人だけになっていたが、残った男は大勢でかかったのにもかかわらずたった一人の女性に負かされたという事実がよほど癪に障ったのか、プライド的に引き下がれないのか、おそらくどちらともなのだろうが逃げずにレナのことをずっと睨み付けていた。この様子だと大丈夫だとふんだハヤテたちは必死に回していた足を緩めてもうすぐ終わるであろうこのいざこざを見届けようとしたが、人間は追いつめられるととんでもないことをしでかす生き物であり、まさに追いつめられている状況のこの男がその例に漏れないはずがなかった。男は忍ばせていた銃刀法違反ぎりぎりなくらいのナイフを取り出し、レナに突き立てようと走り出した。ナイフの切っ先は迷わず首を狙っていて、ハヤテたちもとっさに駈け出したが間に合う距離ではない。

「レナ!!避けてーーー!!!」

それはヒナギクがたまらずに叫んだ瞬間だった。レナと男の間に黒い陰が入り込み、男の腕を掴んで動きを止めた。真っ黒な髪に便乗にするかように上手くコーディネートしてあるモノクロの服装・・・いやそう見えただけなのかもしれない。それくらい彼の出すオーラは闇で塗りつぶされていて、ハヤテとヒナギクが一瞬だけ見ることのできた彼の目にはそれ以上に輝きが失われていた。








その後の出来事も一瞬で、断末魔と一緒にハヤテたちの耳を貫いたのは肉が引き千切られるような、骨がすり潰されるような・・・とにかく、嫌な音。そして・・・



































「お前、もう生きてなくていいよ・・・」







































それ以上に脳を黒く潰す、静かな「音」だった












 『 わたしのすべてがこわれるまで 』












ヒナギクがドアを力の限り開け放つ。彼女が全力を出したのならドアが壊れてしまってもおかしくないのだが、それが起きなかったのは何か細工でもしてあったのかもしれない。しかしヒナギクにはそのことを考える余裕も、ましてや考えつくこともなかった。今のヒナギクには彼女が凄惨な事件を目に焼き付けられた約1時間前から一人の人物・・・正確には人物でないその「存在」を問いただすことしか頭になかった。

「どうしてあんなことしたのよ・・・ガウくん」

岳の本名である「ガウス」をヒナギクが幼いころに略してから彼女は彼をこう呼んでいる。必死に走ってきて息の切れているヒナギクとは裏腹に彼女の目の前にいる青年はのんきに椅子に座って本を読んでいて、呼ばれると栞も挟まずに本を閉じ、回転椅子の機能を存分に使ってゆっくり振り向いた。窓から差し込む夕日が照らすその様はまるで映画のワンシーンのようで、ヒナギクはその光景を綺麗だとは思ったが、それ以上に恐怖を覚えた。それは昔からずっと変わっていない。いつだってヒナギクはどこかで彼に追いつけないことを自覚していて、その存在に怯えていた。

「あんなことって・・・ああ、あの人間のことか」

「ああって、あなた自分のしたこと自覚してるの!!」

「確かにレナに刃物を向けたんだから腕一本じゃ安いな。ちゃんと消しとくべきだったよ。」

ヒナギクには岳が自分の言葉の意味を取り違えたわけでもないことも、かといって彼の言葉が冗談じゃないこともすぐに分かった。

「そんなこと聞いてるんじゃない!!あそこまで酷いことする必要はなかったって言ってるの!!」

「酷いことって・・・殺してないんだし、記憶の改竄とか後処理までしてやったんだから感謝されこそはすれ、恨まれる筋合いはないっての・・・」

さすがに限界だった。ヒナギクはたまらず平手打ちのために右手を振るったがそれも岳に軽々とかわされ、何もできなかった手を痛めつけるように握りしめることしかできなかった。

「ガウくんは人の命をなんだと思ってるのよ・・・。一度間違えても、やり直せるのが人間じゃない。みんな、一生懸命じゃない・・・」

ヒナギクの言葉から勢いがなくった。しかしそれが岳の心を動かすわけもなく、それどころか彼はさらに冷たい目で彼女を見据えてため息をついた。

「じゃあヒナ、お前は自分の血を吸いに来た蚊を叩き潰して何か罪悪感を持つか?たとえ持ったしてお前はそれを一生胸に抱き続けることができるか?」

「そ、それは・・・でも、今回は人間じゃない!」

岳が再びため息をつく。彼の息遣いが聞こえるたびにヒナギクは部屋の温度が下がっていくような錯覚に襲われ、身震いした。

「お前、俺が神様ってこと忘れてんの?」

「!!」

「人間がただの動物にたいした感情を持たないのと一緒だ。俺が人間をいくら消そうが傷つけようが、それで罪の意識を持つほうがおかしいんだよ。さらに言うと俺が作ったモノをどう壊しても俺の勝手だろ?」

冷たい声。まるで、誰かが耳元で黒板をひっかいてるように頭が痛かった。

「逆に、俺にそういう観念があったとしてもだ。お前ならハヤテが誰かにナイフで殺されそうになったのに、それを許して次からは気を付けてねって言えるか?俺には絶対無理だ。未遂だったとしても、くい止めて改心させることができたとしても、俺は一度でも俺からレナを奪おうとしたヤツが存在しているのは我慢ならない。それに人間が同じことを繰り返す生き物なのは俺が一番知っている。なら、消すしかないだろ?」

「わ、私は・・・いつだってハヤテを守るわ。ハヤテだって私をいつも守ってくれる・・・絶対に・・・」




  バンッ!!




ヒナギクが震える身体から声を絞り出した瞬間、彼女は後ろで何かが弾けるような凄まじい音を聞いた。思わず振り返ってみるとさっき彼女が全力を出しても傷一つ付かなかったドアが粉々になってしまっていた。

「絶対って・・・お前にそれは無理だろ。お前は今ハヤテが何をしていて誰と話しているのか分かるのか?ハヤテが外国にいてもピンチに駆けつけることができるか?もしハヤテが明日沈んでしまう船に乗らなきゃならない場合にお前はそれを察知して引き止めることができるのか!?できもしないくせにそんな理想を語れていいよな!!お前はまだ大切な人が自分のせいで消えてしまう痛みを知らないもんな!!」

ヒナギクは何も言えなかった。何かを言う資格などないと思った。大切な人を取り戻すために何百億年の月日を一人で頑張ってきたこの神様に、人が持つ全ての痛みを知っているこの神様に、たった一人の人間が反論できるわけがなかった。

「お前は勘違いしてるようだから教えてやる!誰かを守ったり手に入れたりするってことはな、ほかの誰かを傷つけるってことだ!それがどんなに辛くても、望まなくても、誰かを好きになるってそういうことなんだよ!!そしてそれはお前が一番分かっていなきゃいけないことだろうが!!!」

「!!」

「・・・いいか。失恋した奴らから見ればお前は何もせずにハヤテに好かれ、そして何もせずに想いが通じ合うことができたいわゆるなんとなくで成功できた人間なんだ。だからお前はその他人を黙らせるほどに傷つけなくちゃいけない。絶対に失いたくないと思うのなら、別に方法があるはずだとかヌルイことを考える前にたとえ非人道的でも最善で確実な方法を選べ。お前は優しすぎるから無理は言わないが、いい加減覚悟ぐらいしとけ」

自分の弱さを噛みしめて、冷たい声にただうなずくことしかできなかった。

「ずっと傍にいて、離れないでいてほしいと思うのなら、そうならないようにお前が努力しろ。分かったな?」

「・・・はい」

















































時間は少しさかのぼって綾崎家

「岳さんを問いただしてくるって飛び出していったけど、ヒナ、本当に大丈夫かな・・・」

買った物品の整理が大変になったなどの愚痴は全くこぼさず、というより思いつかず、ハヤテはヒナギクのことをずっと心配していた。正直言い負かされている未来しか想像できないので、慰めるために温かいシチューでも作っておこうとハヤテが立ち上がると、タイミングがいいのか悪いのか、インターホンの音が響いた。



  ピンポーン



「は〜い・・・ってレナさん」

「ヤッホ〜。ちょっとハヤテくんに話があるんだけど、いいかな?」

「いいですけど、話って?」

その質問にレナは空を仰ぎ、少し考える仕草をしてみせた。ちなみに彼女の腕の中には今日一日ナギに面倒を見てもらっていたレナと岳の子供がスヤスヤと眠っている。

「う〜ん、今ガウスがヒナちゃんに説教してると思うから、私はハヤテくんに説教しちゃおうかな〜なんて」

「せ、説教っすか・・・」

「あはは、冗談だよ。じょ・う・だ・ん」

レナが綾崎家にくるのは初めてはないので彼女はハヤテに案内されるよりも先にリビングのドアを開け、そのまま食卓の椅子に腰を下ろした。ハヤテも二つのカップに紅茶を注ぐとそれを持っていってレナの向かい側に座った。

「まぁなんというか・・・ごめんね。ガウスがあんなもの見せちゃって・・・。」

「え?あ、いや・・・それは・・・」

「あ、あれでも多分ハヤテくんたちの前だから遠慮してたんだよ!ほら、出血とかなかったでしょ!!」

「は、はぁ・・・」

自分たちのことをちゃんと配慮して、その上で腕一本を握りつぶす様を見せつけられたハヤテにとってはどう反応していいか分からない話だっただろう。若干引き気味のハヤテをどうにか説得しようとレナはしばらく口をパクぱくさせていたがあまり長くは続かず、そのまま下を向いてしまった。

「ガウスがああなのは仕方ないの・・・。あなたたちには仕方ないで割り切れることじゃないと思うけど、私からはそう言うことしかできない」

「僕は・・・岳さんの行動をちゃんと理解してるつもりです。同じ立場に立たされたら僕はそうすることしかできないだろうから・・・」

「うん。ありがとうね・・・。ガウスのこと分かってくれて・・・。」

「ま、いろいろとお世話になりましたから・・・」

レナが紅茶をすする。その音だけが響いてとても静かだった。

「ハヤテくんはさ、自分たちの子供・・・アカリちゃんにはどう育ってもらいたい?」

唐突な質問だった。まだ生まれてもいないのに実は既に面識のある娘の将来を考えるのは少し変な気分だったが、ハヤテはあまり迷わずに答えられた。

「とにかく、いつも元気でいて欲しいですね。あとは・・・あまり心配はしてませんけど、正しいことができる大人になって欲しいです」

「そっか・・・」

微笑みながらの答えを聞いたレナは自分の息子の頭をそっと撫でた。

「実を言うとね、私たちはあまりどういう風になって欲しいとかはないんだ。親離れしなくたっていいし、こんな事言っちゃいけないんだろうけど、最悪誰かを傷つけても、殺めてしまったとしても、それにちゃんとした理由があるのなら私たちは許せる・・・と思う。もちろん、平気でそんなことするような子に育てるつもりは毛頭ないんだけど」

レナの口調が落ち着いているからだろうか、ハヤテは彼女の身も蓋もない発言を冷静に聞くことができた。

「どんなになってしまってもこの子は私とガウスの子だから・・・そして、私とガウスはこの子の親だから、まぁハヤテくんが言ったのと同じように元気に育ってくれればそれでいいかなって・・・」

ハヤテは彼女の言葉にうなずくことはできなかったが、それを受け止めることはできた。彼女が今抱いてる子どものことを大切に思っている。それさえ分かればハヤテには言うとはなかった。

「まぁ、ここからが本題なんだけど」

「え!?今の話で本題じゃないんですか!?」

予想通りの反応にレナはクスクス笑いながら、再びカップに口をつけた。

「えっとね・・・ガウスのことなんだけど」

「え?はい・・・」

「ガウスね・・・ヒナちゃんのこと好きなの」

ハヤテの中で時が止まった。いろいろな意味で、信じられなかった。

「えぇぇぇぇぇぇええええええええええ!!!!!」

「しーっ!そんな大声だしたらシンが起きちゃう!」

「あ、すいません。てか冗談ですよね?さっきの・・・」

「本当だよ?まぁ、愛してるかって聞かれるとそうじゃないんだろうけど・・・クラスの気になる女の子、的な?」

「そ、それって僕たちピンチなんじゃないですか・・・?」

ハヤテの言葉にレナはキョトンと首を傾げた。いかにも言っていることが分からないという感じの顔だ。

「いやだって岳さんがヒナのこと好きってことはその・・・ふ、不倫とかになるじゃないですか」

「ああ・・・そういうこと?」

ハヤテの言葉を理解してもレナに特別焦る様子はなく、それを見ていたハヤテのほうは逆に焦りが強くなっていた。

「別にガウスがヒナちゃんを好きでも何も変わらないよ?さっき言ったように愛してるわけじゃないんだし、ガウスの一番が私であることは絶対なんだし」

(だからその自信はどこからくるんですか!)

ハヤテの心の叫びが聞こえるはずもなく、いや、もしかしたら神様なのだから実は聞いていたりするのかもしれないが、レナは何食わぬ顔で紅茶をすすっていた。

「ガウスにはね、大切なモノの順位がないの。私が絶対で私が全てで、私以外はいつでも切り捨てられる。そんなになるまで苦しんできたから、だからガウスがヒナちゃんを好きでも私より傾くことは絶対にないし、ましてやハヤテくんからとるようなことも絶対にしない」

見たことのないほど優し気に微笑むレナにハヤテは彼女が自分たちに無いものを持っていることを気づかされた。彼女の言葉は信じているからとか、想いが通じ合っているからとか、そんな不確かな温かさから来ているのではなく、人間には想像もできない、確かな温かさから来ているのだと・・・。

「まぁ、でもやっぱり妬いちゃうかな〜。私がまだ怒られるようなことをしでかしてないだけかもしれないけど、もっと本気で怒ってもらいたいというか、喧嘩してみたいというか・・・」

「はは・・・。でも、僕は岳さんとレナさんが羨ましいです。あなたたちみたいにヒナと想い合えたらあまり心配とかもかけないでしょうし、いつでも僕の一番がヒナだってことを分かってくれますから・・・」

レナはハヤテの言葉に嬉しそうにうなずくと既に紅茶の入っていないカップを彼の方へ流し、抱いている息子を起こさないように立ち上がった。

「最後にもう一つ。ガウスは気紛れだからもしかしたら平行世界とか作っちゃうかもしれない。その全ての世界でハヤテくんがヒナちゃんを好きなるとも限らないし、ヒナちゃん以外の人を好きになって結婚してしまうかもしれない。」

「そ、そんなこと・・・!」

思わず大声をだしそうになったハヤテをレナは手で制した。

「まぁ身も蓋もない話をしているのは分かってるけど、黙って聞いて。たとえそんな世界だったとしても、ハヤテくんがヒナちゃんのことを好きでなくなったとしても、ハヤテくんはヒナちゃんを大事にしなきゃいけないし、そうしてあげて。いつだって一番に君のところにかけつけたのが彼女だってことを忘れないで・・・ね?」

「は、はぁ・・・」

「返事は?」

「は、はい!」

入ってきたときと同じようにクスクスと笑いながら玄関のドアをくぐるレナにハヤテはとまどうことしかできなかった。質問したいことが山ほどあったがきっと彼女はそれに答えてくれないということをどこかで察していたし、レナの向こう側に見えた二人の人影に質問の内容も忘れてしまった。

「お、ヒナちゃんだ。おかえり〜。ガウスの説教はどうだった?」

「どうだった・・・て。もう、容赦なくボロボロにされたわよ」

「お前が自分の立場もわきまえずにいろいろ言うからだろうが」

「そうだけどあんなに言うこと・・・っ!!」

突然、ヒナギクは彼女が最も安心できる匂いで包まれた。その温もりを感じているとさっきまでの怖かったことや悔しかったことが一気に込み上げてきたが、目頭からそれが溢れそうになる寸前のところで何とか食い止めていた。

「おぉ〜。相変わらずお熱いねぇ〜」

レナの冷やかしに我に返ったヒナギクは自分を抱きしめているハヤテに離れてもらおうと抵抗を示したが、ハヤテはまったく気にせず、それどころかさらに強い力で抱きしめてきた。

「は、ハヤテ?恥ずかしいよ・・・」

「もうちょっと、このまま・・・」

「いや、レナたちがまだいるのに、こんな・・・」

ヒナギクは目だけを動かして思わず部外者二人・・・正確にはレナの抱いている赤ん坊を含めて三人を盗み見たが彼女が心配していた温かい目で見つめられているようなことはなく、どちらかというと向こうも向こうだけの世界に入っている感じだった。

「ねぇガウス。私たちもギューってしようよ!」

「調子にのるな。バーカ」

「むぅ、バカって言った方がバカなんだからね!!」

「もうちょい静かにしてないとシンが起きるぞ?それよりヒナ」

ハヤテもさすがにヒナギクのことを離した。また何か言われるのかとヒナギクは身構えたが彼女の予想とは正反対に岳は優しく微笑み、そして小さい包みを投げてよこしてきた。

「今日の詫びだ。少し早いがどのみち必要だろ」

綺麗な放物線を描いて正確に手におさまったそれを見た瞬間ヒナギクは自分の顔が沸騰するかのように熱くなるのを感じた。ハヤテが何を渡されたのか確認しようとしても両腕で抱きしめる形で隠してしまい、決して見せようとはしなかった。

「えっと・・・ヒナになにを渡したんですか?」

「ん?妊娠検査薬」

「ちょっ!!はっきり言わないでよ!!」

「まぁ結果が分かったんなら俺らのトコに来い。責任もって面倒見てやるから」

聞かなきゃよかったと顔を右手で隠すハヤテと真っ赤な顔で睨んでくるヒナギクに勝ち誇った笑みを向け、そのまま岳は振り返りながら手を振ったがレナは夫とは逆にハヤテたちのほうへ近づいてきて岳に聞こえないように小声で話しかけてきた。

「ハヤテくんとヒナちゃんに一つ問題。ガウスが一番最初に生物に与えた感情はなんでしょう?あらかはじめ言っとくけど恐怖とかそういうシリアスなのじゃないよ」

ハヤテとヒナギクは顔を見合わせた。生物の一番原始的な感情と言われても全く分からなかったので、ヒナギクは取り敢えずそれっぽいことを言ってみることにした。

「愛・・・とか?」

「あ〜、ちょっと惜しいかな。正解はね・・・」

レナは振り返って早足で岳に追いつくともう一度ハヤテたちのほうを向いて嬉しそうに、そして岳にもよく聞こえるような大きな声で二人の気になっている答えを伝えた

「恋!!誰かを好きになりたいって気持ちだよー!!」

「だからシンが起きるだろうが!」

「もう、照れ屋なんだからー!」

「ほっとけ・・・」

恋愛に関しても少し先輩である二人の微笑ましいやりとりを見てしまったからだろうか、もう一度顔を見合わせたハヤテとヒナギクはお互いの顔がさっきより少し赤くなっていることに気づいた。

「岳さんに何言われたんですか?」

「は、ハヤテのこと大切にしろって・・・。ハヤテは?」

「僕も、ヒナのことを大切にしてあげてって・・・」

仕方ないことかもしれないが、二人には岳たちの伝えたかったことは分かったがなぜそれを伝えに来たのかはよく分からなかった。












































夜、12時過ぎの真夜中。電気はつかず、普段は街を照らしてくれている月も雲が覆い隠してその光は届かない。真っ暗だった。

「シンは?」

「もう寝た。で、何か俺に話でも?」

レナには真っ暗なのに自分の夫の表情が見えているような気がした。

「まだ拗ねてるの?別に何も起きないんだからガウスがヒナちゃんにお節介なことぐらいハヤテくんに教えたっていいじゃない」

「そういうことじゃなくて・・・って、レナ?」

「ん〜?」

レナが岳の背中に寄り添うように身をゆだねる。自分がこうすることで岳が反論できなることをレナは知っているし、岳はそのことを自覚していながらも結局は彼女に負けてしまう。

「私たちってさ・・・本当に愛し合ってよかったのかな?」

「・・・そんなの、俺のほうが聞きてぇよ」

「ふふ、そうかもね・・・。でもね、私は後悔なんかしてないし、ガウスがどこまで変わっても愛せる自信があるよ?」

「それはお互い様・・・だっ!」

「きゃっ!」

岳は一瞬で振り返るとレナを抱きしめた。レナも少し驚きこそしたがすぐに微笑むと岳の背中に手を回して力を込めた。

「・・・私はガウスが誰かを傷つけることを嫌う優しい人だって知ってる。でも、だからって私はガウスを苦しませないために離れることはできない。それにガウスだって・・・」

「離すわけねぇだろ。バカ・・・」

「うん、知ってる・・・。だからね、私たちが愛し合うことで私の・・・そしてガウスの心が綻んでしまっても、たとえガウスが前を見れなくなるまでその身体を血で汚してしまってもいいの。私はガウスから離れられないしガウスも私から離れられないから・・・だから、ガウス・・・」

レナが顔を上げて岳の唇に自分も唇を近づけ、それと同時に岳も顔をゆっくり近づける。少し長くて、少し濃厚な時間が終わっても、それでも離れないとばかりに二人の唇の間に銀に光る糸が残った。

「私の全部が壊れてしまっても・・・私を愛して・・・」










































どうも
なんというか、原作を読んでいるとハヤテをめちゃくちゃ叩きたくなるのになぜかヒナさんのほうを叩いてしまっている今回。でもぶっちゃけ自分が言いたいこと(誰にとは言わない)を綴ったつもりです。あと、一話完結なのにこれからの話の伏線を少しだけはったつもりです。前作から読んでいただけている方にはピンとくるとこがるかもです。
ちなみに次も一話完結・・・ではなく、なぜか二話に分けて話を作ります。理由は「このタイトル使いたいなぁ〜、でも雰囲気的にこれじゃあってない。じゃあ前編と後編に分けてしまえ!」みたいな感じです(さっきなぜかと言ったな。あれはウソだ
そんな感じでもう少し短編をやってから中編に移る予定です。

それでは

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