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今夜は。(現在PM０２：３０)(一話完結)
日時： 2012/10/27 19:59
名前：
たっぺー
こんばんは、たっぺーといいます。はじめまして。
先日意気揚々とこれを「ひなたのゆめ」にupしたところその数時間後にサイト消滅。
これではあんまりだ、ということでこの掲示板に再upさせていだたくことにしました。
ついでに修正もしました。
ハヤテファンに再びチャンスを与えてくれた双剣士さんには感謝の極みです。
ハヤテ×泉です。
時期はわかりません。お屋敷はあります。
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「んー･･･もー、字が細かすぎて飽きちゃうよー。」
グーっと伸びをしながら瀬川泉は呟いた。手には表紙に猫の絵が描かれた文庫本が一冊。
正直普段の彼女からは想像も出来ない代物である。
「ふぅ･･･目もつかれちゃったし、ちょっと休憩しよっかなー」
購買で飲み物でも買おうかな、そんなことを考えながら泉はベンチから立ち上がり歩き出した。そして、数歩も歩かないうちに見知った人影をみつけた。
「あ！あれはもしかして･･･！」
泉は密かに思いを寄せる彼、綾崎ハヤテを見つけると、さっきまでの雰囲気はどこへやらブンブンと擬音が聞こえてきそうな勢いで大きく手を振った。
「おーい！ハヤ太くーん！」
「あ、こんにちは、瀬川さん。」
ハヤテは泉の挨拶に笑顔と会釈でかえす。
「やっほー！って、あれ？ナギちゃんは？一緒じゃないの？」
「あぁ、お嬢さまでしたら今はお屋敷にいらっしゃいます。」
「お家？じゃなんでハヤ太くんはここにいるの？」
「はい、実はお嬢様、女子会？というものをやってみたかったらしくてですね･･･」
「女子会？」
「えぇ、だから伊澄さんや千春さんをお呼びして、みんなで女の子だけのときしか語れないことを話すのだー、とおっしゃって･･･」
「で、男であるハヤ太は暇を出されました、と。」
「はい、そういうことになります。」
ハヤテは苦笑いをしながら頷く。
「そっかー･･･なるほどー。あのナギちゃんがねぇー･･･
そうだよね。確かにハヤ太くんも一応男の子だもんね！」
「い、一応ってなんですか！僕は、れっきとした男です！」
「えー？そんな可愛い顔してるのに？」
「可愛いとか言わないでください！だいたい･･･」
「にはは。冗談だよー。」「え？」
「私ハヤ太くんがとっても強くて頼りになる男の子だって知ってるよ。
そんなとこ、すっごくかっこいいし。」
「あ、いや･･･かっこいいだなんて、そんな･･･当然のことをしているまでですから･･･
あ！でもお世辞だとしても嬉しいです。ありがとうございます。」
ニコッとハヤテは微笑む。
「･･･はぁ、お世辞じゃ、ないんだけどねぇ」
泉はモゴモゴと呟いた。
「？なにかおっしゃいましたか？」
「！？べ、べっつにー？」
「･･･そうですか？あ、ところで瀬川さん。その本は？」
「あっ！これ？･･･フッフッフッ、よくぞ聞いてくれました！
･･･じゃーん！夏目漱石の『吾輩は猫である』だよー」
「おおー、『吾輩は猫である』ですかー。表紙の猫の絵可愛いですね。」
「うん！そうでしょー？私も気に入ってるんだー♪」
泉は誇らしげに胸をはった。別に自分が褒められたわけではないのだが。
「へぇー、なんだかいが･･･ゴホン、いえ、なんでもありません。」
「今なんだかものすごく失礼な事言おうとしてなかった？」
「そ、そんなことないですよ･･･知的にみえてとてもいいと思いますよ(営業スマイル)」
「･･･なんだか馬鹿にしてない？･･･まぁ確かに本当はヒナちゃんにたまには本でも読みなさいって無理やり持たされただけなんだけどね。」
泉は困ったものだとばかりに頭をかいた。
「やっぱり･･･」
「にはは･･･文字ばっかりの本なんて教科書だけで十分だよね･･･」
「あはは･･･あ、ということはその本もあまり読んでないんですか？」
「うん、全然。字ばっかりで飽きちゃって･･･さ。」
「そうですか。･･･あ！でしたら」
「ほえ？」
「でしたら僕がひとつ夏目漱石についてひとつ興味深いお話をいたしましょう。
これを聞いたら瀬川さんも夏目漱石に興味が湧くと思いますよ。」
「え、ほんとー？なになに？聞きたいな♪」
「はい、かしこまりました。･･･『I love you』」
「ふへ！？は、ハヤ太くん、いきなりなにを･･･！？」
泉は顔を真っ赤にして慌てふためく。好きな人に『愛してる』などと言われたのだ。
当然といえば当然である。
「この言葉、瀬川さんならどのように和訳しますか？」
「え？･･･あ、ああ。そういうこと･･･。」
「？なにがそういうことなんですか？」
「なんでもないよ。もう！」
「･･･そう、ですか？えっと、で、ですねどのように訳しますか？」
「えと、その･･･言わなきゃ･･･ダメ？」
「まぁ、はい。」
「あう･･･えと･･･そ、そりゃやっぱり･･･あ、『愛してる』かな///」
「うん、普通はそうですよね。でも、夏目漱石は違うんです。」
「ほえ･･･？じゃあなんて訳したの？」
「はい。それがですね。夏目漱石は『I love you』という言葉を『月が綺麗ですね』と訳したそうです。なんでも日本人はそんなにストレートにものを言わないと考えていたようで。」
「もっともこのエピソードが本当にあったかはわからないんですけどね。」
「え？」
「夏目漱石よりあとの時代の人が考えたという説もありますし、詳しいことはわかってないんです。」
「･･･とまぁ、こんな感じで話は終わりです。どうでしょう？
すこしは夏目漱石という人物に興味は持てましたか？」
「うん、、夏目漱石の本、もっとしっかり読んでみるね。」
「そうでしたら僕も嬉しいです。」
「ありがとう、ハヤ太くん。」
ハヤテの話が終わると泉は目をキラキラさせて言った。
「それにしてもなんだかすごいロマンチックな人なんだね。
夏目漱石って。」
「はい、なんだか憧れちゃいますよね。」
「え！？なになに？ハヤ太くんもそういうのに憧れちゃうのー？」
これはいい事を聞いたぞ、とばかりに泉はニヤニヤしながら聞いた。
ハヤテはバツが悪そうに頬をかきながらつぶやく。
「う･･･はい、まぁあの･･･やっぱりステキじゃないですか･･･そんな風な告白って。」
「ふーん･･･ハヤ太くんてば、ロマンチストー」
「からかわないでくださいよ。」
ハヤテは困ったように言う。
「あ、じゃあさじゃあさー！ハヤ太くん！告白するのとされるのどっちがいーい？」
「え？」
「いや、だからね。告白。したい？されたい？」
「･･･えーと、それって絶対に答えなきゃ･･･？」
「もっちろん♪」
泉は心底楽しそうに頷く。
「･･･はぁ、じゃあ答えますけど。僕は告白、されたいですね。」
「え？そうなの？なんだか意外かも！」
「そうですか？僕はそんな風に女の子に告白されたら･･･」
「･･･されたら？」
「僕は君のもの、です。 (キリッ」
「「･･･」」
「(あ、あれ？ボケたのに反応が･･･ない？)」
「(かっこいい･･･)」
「｢･･･｣」
「･･･ま、まぁ泉さんみたいな可愛い娘にいわれたら、ですけど、ね･･･」
「ほえ！？あ、あの、は、ハヤ太くんなにを･･･」
「あ！いや！すいません！変なこと言って！」
自分の発言で気を悪くさせたのかとオロオロしながら謝るハヤテ。
「あ、謝らないでよぉ･･･嫌じゃなかったから･･･むしろ嬉しかった。」
「え！？嬉しい？」
「あ！や！あ、あのそのえっと･･･ち、違うのぉ！！」
「そ、そうですか･･･」
「「･･･///」」
ハヤテの思わぬ言葉から始まってなんだかぎこちない雰囲気になってしまった。
なんだかお互いに目を合わせることも出来ない。
そんな気まずい沈黙に先に音をあげたのはハヤテだった。
「あ、あのえっとぉ･･･あ！そうでした！･･･きょ、今日はマリアさんにおつかいを頼まれていたんでした。お嬢様が女子会を終了させる前に行かなくちゃー！(棒)」
「！そ、そーなんだ！そ、それは大変だ！はやくいった方がいいよー！(棒)」
「はい！･･･なので、きょ、今日はこれで。」
「う、うん･･･バイバイ」
「はい･･･では、また。」
ゆっくりと遠くなっていくハヤテの背中を見ている泉の脳裏にさっきのハヤテの言葉がよぎった。
―･･･やっぱりステキじゃないですか･･･そんな風な告白って―
―僕は君のもの、です―
―まぁ泉さんみたいな可愛い娘にいわれたら、ですけど、ね―
手にある本に目を落とす。
表紙の猫がこっちを見ている気がした。
なぜだろうか、言わなければいけない。
今しかチャンスはないかもしれない。
―漱石先生！先生のお言葉、すこしお借りします！―
「･･･ハヤテくん！」
「はい･･･って、いま名前･･･！？」
ハヤテが振り向くと泉はまっすぐハヤテを見ていた。
「ど、どうしたんですk」
「こ、今夜は！」
「え？」
「今夜は！あの･･･今夜は月が綺麗ですね！」
「え、ええ！？･･･ あ、あの、せ、瀬川さん！？も、もちろん冗談で･･･」
「冗談なんかじゃ！」
大声で遮る。
「･･･瀬川さん？」
「冗談なんかで･･･こんなこと言わないよ･･･」
「瀬川さん･･･」
二人を静寂が包む。
「ハヤテくん･･･」
「･･･はい」
「ハヤテくんは･･･どう思ってる？」
「･･･」
「月、きれいかな･･･？」
またふたりの間に沈黙。
でも、なんだか今度のは全然苦しくなかった。
「･･･僕は」
「うん･･･」
「･･･僕は･･･」
「･･･」
「･･･いえ、僕も、そう思います。」
「･･･!!ハヤテくん･･･じゃあ！」
「はい｡」
笑顔でハヤテは言う。
「今夜は月が綺麗です！」
大きな声でハヤテは叫ぶ。
「それは･･･それはきっと。」
「泉さん！あなたといっしょに見てるからなんでしょうね！」
―表紙の猫もすこし微笑んだ気がした―
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「･･･あの二人、真昼間から月が綺麗だなんだって、なにを言ってるんだろう？」
「･･･さぁ？とりあえず邪魔しちゃ悪いしこの盗聴器だけ回収してヒナのところに行こう。本も返さなきゃいけないし。」
「･･･そうだな。」
〜FIN〜
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
草食系なんですよ、ハヤテくん。女の子に告白できないくらいに。
そしてなかなかうまくいかないものです。
読んでいただきありがとうございました。
[メンテ]
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