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Knock(一話完結)
日時: 2013/06/01 21:04
名前:
唐笠
参照:
http://gree.jp/?mode=blog&act=view_per_entry&user_id=53442249&urn=urn%3Agree%3Ablog%3Aentry%3A664049441&gree_mobile=5d0ae0b5423bbbe09c48c29856906b67
皆様、こんばんは。唐笠です。
連載の合間に息抜きで少し短編をと思いまして。
今回の時間軸と場所はあえて明言しませんので、各自でご想像ください。
なお、URLリンクはGREEでやっているハヤごと創作ページとなります。
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Re: Knock(一話完結)
( No.1 )
日時: 2013/06/01 21:04
名前:
唐笠
参照:
http://gree.jp/?mode=blog&act=view_per_entry&user_id=53442249&urn=urn%3Agree%3Ablog%3Aentry%3A664049441&gree_mobile=5d0ae0b5423bbbe09c48c29856906b67
一人ぼっちの僕。
僕はずっとここにいるのに、誰も会いに来てくれない…
10年前のあの日からずっとここにいるのに……
いや、修正しよう。一人だけ僕に会いに来る人物がいた。
コンコン
いつも通りのノック。
僕の返事を待たずにその人物は入ってくる。
「今度は何の用だい?」
「その…用というほどでもないけど……」
こいつはいつもそうだ。
いつもあいまいな返事ばかり…
僕よりはるかに自由な存在だというのに、それを謳歌しようともしないやつだ。
「なら、なんで僕のところに来たんだい?」
「君なら答えをくれると思ってさ…」
「おいおい、冗談はよしてくれよ。
僕は君が切り離した一部なんだ。そんなやつが何を教えるというんだい?」
そう、僕は一人の人間ではない。
“綾崎ハヤテ”という人間の”天王洲アテネ”との悲しい過去を封じ込めた一種の器。
姿かたちこそ、綾崎ハヤテを象っているがそれすらも”綾崎ハヤテ”本人がこうして僕を使うための利便上すぎない。
だからこそ、”綾崎ハヤテ”に解らないことは切り離された僕に解るはずがないのだ。
「それにしても、最近はよく来るようになったな。
なにか心境の変化でもあったかい?」
以前の”綾崎ハヤテ”はそうそう僕に会いにきたりはしなかった。
それは、過去そのものである僕自身から目をそらすためでもある。
しかし、それでも年に一度。長いときは二年に一度くらいの割合で訪ねてきた。
“綾崎ハヤテ”がここにくる理由はただ一つ。いつも質問は決まっている。
「僕は…どうしたらいいんだろう…」
そして僕の返答も決まっている。
「アーたんの時のことを忘れたのか?
もう、誰かを不幸にするのはよそうよ…」
ただ、この言葉を聞きに来るためだけに”綾崎ハヤテ”はここに訪れる。
いったい、この言葉が”綾崎ハヤテ”に何を与え、何を奪っているかわからない。
解らないが、”綾崎ハヤテ”がそれを求めるのだから仕方がないのだ。
「そうだよね…
僕が係ると、みんな不幸になっちゃうんだ……」
“綾崎ハヤテ”はそう言いながら、上を見上げて泣いていた…
たまった涙が耐え切れなくなり、頬をつたり落ちていく……
それはわずかながら僕に衝撃を与えた。
いつもの”綾崎ハヤテ”ならこの言葉を聞いた後、二言三言話していき、何事もなかったように去っていくのに…
『なにもなかった』ことにできるのに……
なのに、今たしかに”綾崎ハヤテ”は『泣いている』。
確実に何かが変わり始めてる証拠である。
だが、ここから外を見ることはできない。
だから”綾崎ハヤテ”が今どんな状況でどのような人物と接しているかすらも解らないのだ…
「もし……僕が………」
その先の言葉は続かなかった…
だから、僕も返答できない。
まるで、互いが互いの言葉を待っているかのようにさえ思える。
別に僕は”綾崎ハヤテ”の言葉なんていらない。
あくまで、僕は”綾崎ハヤテ”を律するための存在なのだから与えれるものなどなくて構わないのだ。
「ごめん…もう帰るよ……」
それだけを言い残し、背を向ける”綾崎ハヤテ”。
結局、今回は何をしに来たのだろうか?
そして、僕に何を求めたのだろうか?
「今、君は楽しいかい?」
「………うん、とっても……本当に…とても楽しいよ」
泣き顔のままそう応える”綾崎ハヤテ”。
僕は何でこんなことを聞いたのだろう?
解らないけど、一つだけ言えることがある。
目の前にいるウソつきな”綾崎ハヤテ”のこの涙は本物だと…
本当に悩み、選べないでいるのだと……
「そうか…
なら、君がどんな選択をしようとも僕はもう何も言わないよ」
「…………………」
“綾崎ハヤテ”は無言だった…
ただ、少しだけ笑ったような……ほんの一瞬だけほころんだ笑みを浮かべると、再び僕に背を向ける。
「さよなら…」
「……………………………」
やはり、”綾崎ハヤテ”は無言だった…
それからどれだけの時間がたったのだろうか…
途方もなく長かったのかもしれないし、一瞬だったのかもしれない。
そんな曖昧な意識の中、突如として僕の意識は覚醒させられた。
コンコン
どうやら、またやってきたようだ。
「たまには、こっちから開けてあげるか…」
どういった風の吹き回しだろう。
自分でも自分の行動が信じられぬまま、僕は扉を開けた。
しかし、そこにいたのは”綾崎ハヤテ”ではなかったのだ。
僕の知らない少女。おそらく”綾崎ハヤテ”が知っているであろう人物。
「なるほど…
君がそういうわけか…」
そして、なんとなくだが事情を察した僕。
今までここに”綾崎ハヤテ”以外が訪れたことはない。
それは心の奥底にある僕という形を成した古傷に触れさせないため。
でも、そこに”綾崎ハヤテ”以外の人物が来たという事は…
「どうか、頼むよ…
もう、”綾崎ハヤテ”に僕は必要ないみたいだから……だから、これから先の未来ここは君の居場所だ」
そう言って、僕は扉をくぐる。
どうやら僕は長く居とどまりすぎたみたいだ。
「きっと、”綾崎ハヤテ”は決めきれない。
だから君が彼を護ってくれ。僕が苦しめ続けてしまった彼を……」
僕のその言葉に少女は優しく微笑んだ。
あぁ……笑顔ってこんなにも温かいものなんだ…
もう忘れてしまいそうだったその温かさを再び胸の奥に感じた僕は歩き出す。
彼女がこれから何をしてくれるかわからないし、知ることもできない。
だけれど、最期に一つだけ言わせてほしい。
「最後に君に逢えてよかったよ…」
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