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Alice in Dreamland
日時: 2013/04/21 21:12
名前: 道草

どぅも★道草です!

アニメ4期も遂にアテネ回直前ということで、それを記念(?)して書いてみました。

ではよろしければご覧ください。





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私の名前は『アリス』。とある国の王女です。

ここは日本のとある地のアパート、『ムラサキノヤカタ』。

王女である私が何故ここにいるかといいますと、我が国では『王族は異国の地で修行せねばならない』という仕来りがあり、

私もそれに習って庶民の生活を余儀なくされている訳です。







……まぁ全部嘘ですけどね。

エイプリルフールもとうに過ぎ去っているというのに失礼しました。

ですがこれにはやむを得ぬ事情があるのです。

では改めてもう一度自己紹介しましょうか。



私は白皇学院理事長『天王州アテネ』。

幼馴染で元執事の綾崎ハヤテとギリシャ・アテネの地で再会し、古代の英霊との戦いを繰り広げた。

その後もなんだかんだあって気が付いたら……



体が縮んでしまっていた!!



『天王州アテネ』がこんな姿になっていると世間に知れたら、命を狙われ周りの人間にも危害が及ぶ。

霞愛歌の助言で正体を隠すことになった私は、ハヤテが執事をやっているアパート『ムラサキノヤカタ』に転がり込んだ……







……とまぁ、似たような境遇の某名探偵風に解説してみましたが、ご理解いただけたでしょうか?

冗談はさておき……今現在『天王州アテネ』としての力と記憶を失っている私は、ここでそれを取り戻す日を待っているというわけです。

これはそんなある日の出来事……



*   *



賑やかな小鳥たちのさえずりと、まばゆい日の光が朝の訪れを告げる。

寝床としている押し入れから抜け出し、部屋を出てアパートの階段を下りる。

ここまで歩いてきて、人の気配はしない。

居間にかけられた時計を見ると、既に朝としては遅い時刻である十時半を示していた。

おそらくもう各々出かけたのであろう。

静けさの中、私は一人アパートの縁側に腰掛けた。

心地よい日差しと、爽やかな風が体を通り抜けるようだ。

この清々しい天気に、朝が苦手である私でも意識がしっかりと覚醒し……

「・・・・・・」







「わんっ!!」

「はっ!?」

突然の声にびっくりして目を開く。

……いや、別に寝ていたわけではないですからね!勘違いしないでくださる?

……コホン。さておき気が付くと目の前には大きな犬が座っていた。

その顔には見覚えがある。

「アルマゲドン?」

「ばうっ!!」

名前を呼ぶと元気に返事をする。

この犬は『アルマゲドン』。野良犬ではなく一応飼い主はいるのだが、しょっちゅう逃げ出しては私のところにやってくる困った子だ。

「あはは、もうまた逃げ出してきたの?」

「くぅ〜ん……」

頭を撫でてやると、アルマゲドンは何かを咥えて私に押し付けてきた。

「ん、なにこれ?」

それは大きめのカゴだった。

手に取って中を見てみると、入っていたのはニンジン、タマネギ、ジャガイモなどの野菜。

一体どこから持ってきたのかしら?

首をかしげていると、誰かが走ってくる音が聞こえて顔を向ける。

「やっぱり、ここにきてたんだ!」

少し息を乱してやってきたのは一人の少年。

女の子のような可愛らしい顔立ちをしたその男の子は、このアパートの執事であり住人でもある『綾崎ハヤテ』だ。

「……ということはこの買い物かごはあなたの?」

「うん!いや〜、買い物中にひったくられちゃって困ったよ〜、あはは♪」

そう言いながら笑うハヤテに、少し呆れる。

盗んだ張本人はというと、舌を出してとぼけた顔だ。

「でもまぁ、ちゃんとここまで届けてくれたんだから、どこぞの執事さんより役に立ちますわね」

「もう、アーたんったら……」

私が頭を撫でるとアルマゲドンは気持ちよさそうに目をつむって尻尾を振った。

「……しかしこの子はなんで私のところに持ってくるのかしらね?」

この前のカバンの件といいなぜだろうと考えていると、ハヤテが答えた。

「それはやっぱりほめられたいからだよ」

「え?」

「アーたんにほめられるのが嬉しいから。僕もそうだったから、わかるよその気持ち……」

「……ふぅん」

どこか遠くを見るような眼差しでそう語るハヤテを横目で見る。

おそらくはかつて『天王州アテネ』と過ごした日々のことを思い出しているのだろう。

だがそれを思い出すことが叶わない私としては少し悔しかった。

……『天王州アテネ』か。

自分自身の事がわからないというのはなんとも歯がゆい感覚である。

なのでこの際、いろいろと訊いてみることにした。

「ねぇ、ハヤテ」

「なに、アーたん?」

「『天王州アテネ』はあなたのどこが好きなの?」

「ぶふぉっ!!?/////」

血でも吹き出すんではないかと思うほど激しく咳きこむハヤテ。見てるぶんには面白い。

それはさておき、確かにハヤテは優しいし、気が利くし、頼りがいがある。

実際多くの女子がそういう所に惹かれているのも事実だ。

だが同時に、彼女達のそういう気持ちに全く気付かないほど鈍感で、優柔不断で、奥手で、プライバシーがない。……あとついでに言うなら不幸。

天王州アテネは彼のどこに惹かれたのだろう?

「し、知らないよそんなの!!僕が知りたいくらいだよ!!/////」

「……まぁ、それもそうですわね」

当の本人すら忘れてしまっていることを分かるはずもない。

それならばと思い、質問を変えてみる。

「じゃあ、あなたは『天王州アテネ』のどこが好きだったの?」

「ごふぁっ!!?////」

今度は本当に吐血するハヤテ。

そして顔を真っ赤にしてあたふたする。

いろいろと忙しい男ですわね。

「そ……それは……/////」

「それは?」

「そ、それは秘密です!!/////」

「・・・・・・」

……このいくじなし。

結局、更に気になることが増えてしまっただけではないか。

こうなったら、記憶が戻ったらもう一度問い詰めて吐かせることにしよう。

とはいえ、今はこれ以上いじめるのもかわいそうだから話題を変えてあげる。

「ところで、他の皆さんはどうしたんですか?」

「ああ、お嬢さまなら次のマンガの構想の為に、伊澄さんの家に泊まるって。マリアさんとカユラさんもその付き添い。ヒナギクさんと千桜さんは生徒会の用事で、西沢さんは……」

「あ、もういいですわ」

ようするに今日は皆帰ってこないらしい。

ということは今夜は私一人か……

「・・・・・・」

私が黙っていると、ハヤテはこんなことを言い出した。

「寂しいなら、また一緒に寝ましょうか?」

「え?」

顔には出していないつもりだったが、もしかしたら読まれたのかもしれない。

ハヤテは変なところで察しがいい。

私は少し迷ったが……

「……うん」

たまには見た目のような子供らしく……甘えることにした。







そして迎えた夜。

今日はヒナギクの部屋の押し入れではなく、ハヤテの部屋の布団で眠ることとなった。

月明かりが窓から差し込み、どこか穏やかな雰囲気に満ちている。

そんな中、私とハヤテは同じ布団をかぶっていた。

「アーたん、もう寝た?」

「いえ、まだ……」

至近距離からの声に首をふる。

隣にはハヤテの顔がすぐそばにあった。

子供の体とはいえ、一つの布団に二人寝るというのはやはり少し窮屈なものだ。

だが、不思議と安心した。

どこか懐かしいような気がするのはどうしてだろう?

「・・・・・・」

考えていてもらちがあかないので眠ることに専念する。

とはいえ朝起きるのが遅かったので、まだそんなに眠気は……

・・・・・・

・・・・・・

……ZZZ



*   *



瞼を開くと、うんざりするほど見飽きた天井が広がっていた。

豪華なシャンデリア。

一人で眠るには大きすぎるベッド。

全てが満たされた広大な城。

神様が棲む城、王族の庭城、咎人の牢獄、永遠の呪縛……『ロイヤル・ガーデン』。

そこで私……『天王州アテネ』は目を覚ました。

「・・・・・・」

覚醒しきっていないなか体を起こす。

朝は苦手な私だが、隣の違和感にすぐに気づいた。

昨夜までそこにあった温もりがいない。

まるで初めから何もなかったかのように。

「ハヤテ……?」

その名を呟いても返事はない。

途端に私はいいようのない恐怖に襲われる。

「ハヤテ……ハヤテ……」

貴方がいない……そんなのは耐えられなかった。

またここで一人になる……それだけは絶対嫌だった。

「ハヤテ――――――――――――――!!!」

「どうしたの!!アーたん!?」

私の願いを聞き届けたかのように、扉を開いてハヤテが現れた。

その小さな体には私が仕立てた執事服を纏っている。

どうやら先に起きていただけらしい。

私はベッドから飛び出し、迷わずハヤテの胸に飛び込んだ。

「わっ!?ど、どうしたのアーたん!?怖い夢でも見たの?」

「……うん」

……ああ、そうか夢か。

今のこの不安な気持ちも、きっと夢によるものなのだろう……

そう思って、先ほどまで見ていた夢の内容を不鮮明ながら思い出してみる。

そこは見知らぬ地で、そこには見知らぬ人達がいた。

そして何故か……大人になったハヤテの姿があった。

だけど夢の中の私は今と変わらぬ姿で、一人だけ周りから取り残されていた。

なにより……私はハヤテのことを忘れてしまっていた!

私は愛しいハヤテの体をぎゅっと抱きしめる。

ハヤテへのこの気持ちがなかったことになる……それが一番怖かったのだ。

私がハヤテの胸に顔をうずめていると、彼は優しく頭を撫でてくれた。

それだけですごく安心する……

「アーたん、大丈夫?」

「……うん」

私は顔を上げ、間近にあるハヤテの顔を見つめる。

その瞳は純粋で、とても綺麗な色だ。

そしてそのまま顔を近づけ目を瞑り、私達は……





口付けを交わした……





顔を離して目を開くと、ハヤテは顔を赤くして微笑んでいた。

もう何度もしているというのに相変わらず初々しい。

……まぁ、きっと私も同じ顔をしているのだろうが。

「じゃあ、アーたん。朝ごはん作ったから、食べにいこ♪」

「……うん!」

私はハヤテに手をひかれ、その手を強く握り返した……







そして今日もいつもと変わらない、けれど幸せな一日を過ごした。

ハヤテに執事としての教育を施し、共に遊び、語らい、笑いあう。

毎日が黄金に輝いていた。

そして気が付けば、また夜が訪れた。

「あら、何かしらこれ?」

先に一人で寝室に戻ると、机の上に一冊のノートが置かれているのに気が付いた。

私のではないから、ハヤテのものに間違いはない。

気になってページを開いてみると、目が点になった。

「……漢字の練習帳かしら?」

そこにはびっしりと漢字が書きこまれていた。

しかし書かれているのはたった一種類、『正』という文字だけ。

それだけが何十個も並べられていた。

首をかしげていると、ハヤテが部屋に入ってきた。

「アーたん、お待たせー♪」

「あ、ハヤテ。このノートは何?」

尋ねるとハヤテは無邪気に笑ってこう答えた。

「ああ、それはアーたんとキスした数を書いてるんだ♪今は確か120回だよ」

「貴方、何してくれてますの!?/////」

可愛い顔をして、なんて恐ろしいことをしているのか!!

だがハヤテは続ける。

「将来、これで『ぎねすぶっく』に載せるんだ〜♪」

「そんな恥ずかしい記録打ち立てられてたまりますか!!!/////」

まったく、ハヤテの純心さはときに罪だと思う。

ハヤテ……恐ろしい子……!

「とにかく、そのノートはもうやめなさい!!/////」

「えー……」

「『えー』じゃない!!/////」

ハヤテは渋々うなずくと、今度は何かを思いついたようで顔を明るくした。

「じゃあ今度からは書かなくても絶対忘れないようにするよ!」

「だからいちいち覚えておくな――――――――――!!!/////」

叫んでそれきり、私はベッドに入り毛布をかぶる。

しばらくするとハヤテも躊躇いがちに隣に潜り込んできた。

これで今日も一日が終わりだ。

……だがまだ毎晩の恒例行事が残っている。

「・・・・・・」

私は体を起こして隣のハヤテに呼びかける。

「……ハヤテ」

「なに、アーたん?」

「……ん/////」

私が目をつむると、流石のハヤテも察したようだ。

そして私達は……121回目のキスを交わした。

これでまた恥ずかしい記録が更新されてしまった訳だが、まぁそこは甘んじて受けよう。

目を開くと、ハヤテは顔を赤らめながらも得意そうに笑っていた。

「えへへ〜♪」

「……!もう!!さっさと寝ますわよ!!/////」

私はハヤテから顔をそむけてベッドに横になる。

だが、その手はしっかりとハヤテの手を握っていた。

……願わくばずっとこの日々が続きますように。

そう思いながら、私の意識は深い眠りへと落ちて行った……



*   *



「……はっ!?」

勢いよく布団から上体を起こす。

まだ日は昇っておらず、月明かりが微かに闇を照らしていた。

目を凝らすと見えてきたのはこじんまりとした部屋。

そして隣には私よりずっと背格好の大きい少年、ハヤテが静かに寝息を立てていた。

「・・・・・・」

今のは……『天王州アテネ』の夢?

私の中の封じられた『天王州アテネ』の記憶が、あのような夢をみせたのだろうか?

普通に考えればそうなのだろう。だが私は不安に思ってしまう。

私は本当に『天王州アテネ』の夢をみていたのか?

それとも今の私の方が『天王州アテネ』の見ている夢なのだろうか?







……あるいは『天王州アテネ』も『アリス』も本当は存在せず、誰かが見ている夢、もしくは空想の産物に過ぎないのだろうか?

私にはわからない。

自己証明というもののなんと難しいことか。

そう考えると恐ろしくなってきた。

そんなとき……

「……アーたん」

「・・・・・・!」

ハヤテが……私の名を呼んだ。

顔を向けるとハヤテは目を閉じたままで、どうやら寝言だったらしい。

私はふと彼の手を握ってみた。



……温かい。



なぜ天王州アテネが彼に惹かれたのか、分かった気がした。

人は誰か名前を呼んでくれる、触れてくれる、一緒にいてくれる人がいて初めて、自分の存在を実感することができるのだ。

「……ハヤテ」

ハヤテの胸に顔をうずめる。

彼の胸の鼓動と温もりを感じ、私は安心する。

すると再び穏やかな眠気が訪れ、意識が薄れてきた。

まどろみの中、ふと思う。





次に起きたとき、私は一体何者なのだろう?

もう何が現実で何が夢か私にはわからない。

だけどそこに貴方さえいてくれるなら……どちらでもいい気がした。



Fin


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はい、ここまで読んでくださりありがとうございました!!

『胡蝶の夢』というのをイメージして書いてみたつもりなのですが、いかがでしたでしょうか?

まぁぶっちゃけ、ハヤテとアテネのイチャイチャイチャイチャっぷりを書きたかっただけなんですけどね(笑)。

アニメのアテネ回楽しみです!!というわけでキューティタッチ……

NiceCutie! Cutiemate!! Hey!!!

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