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誰がため、何のため 3/15更新
日時: 2012/04/22 18:25
名前: コサッキー

初めまして、コサッキーという者です。
これは私にとって初投稿となります。なので、誤字脱字が酷いと思われます。
尚、この小説はオリキャラが多数出ます。更に、原作通りにいかないところが多々あります。
稚拙な文だと思いますが、よろしくお願いします。
場面は、ヤクザに追われ、家から出た所からとお思い下さい。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

第一話「始まりは終わり」


12月24日、クリスマスイブ。

青髪の少年、綾崎ハヤテは公園の前に佇んでいた。

「ここまで…くれば…大丈夫…」

走った為荒くなった息を整えながら、ハヤテは思考を巡らす。

(あのタイプのヤクザは取り立てるまで追ってくるタイプ…。しかも…)

そこまで考え、コートの中にいれてた紙を取り出す。そこには変わらぬ金額が書いてあった。

(一億五千万…。何だろうと、絶対に見逃す訳がない!!)

溜息をつきながら、自動販売機で飲み物を買うためにハヤテは公園へ入って行った。

そして、自動販売機の前で見たものは、



金髪ツインテールで、可愛いドレスを着た、ちっちゃな女の子だった。



ハヤテはその光景に少しの間見惚れていた。

だが、それも束の間。女の子に二人の男が話しかけるのが見えた。

「君、可愛いね〜」

「俺たちとどっか行かない?」

「え?へ?」

困惑する少女を見た瞬間、ハヤテは駆け出していた。

「その子に、手をだすなぁあああああ!!」

「ごべらっ!」

奇声をあげながら、二人の男は散って行った。

(全く…パトラッシュの命日にナンパとはいい度胸だ)

「あ…ありがとう」

後ろからかけられた声にハヤテは振り向く。

「なんか知らんが…助かったよ…」

「う、うん…」

体が勝手に動いた為、何と反応したらいいかわからないハヤテだった。

「へくちっ」

すると突然、少女がクシャミをした。

(こんな寒空の中、コートも着ずに居ればそうだよね…。しょうがない…)

ハヤテは自分のコートを少女にかけた。

「女の子が体を冷やすもんじゃありません」

少女は渡されたコートを着ると、

「安っぽいコートだな」と、のたまわった。

ピキッ!その言葉に固まるハヤテ。それに気づかず、言葉を続ける少女。

「作りは荒いし、生地は重い。おまけにサイズはブカブカだ」

流石のハヤテも怒りそうになった。だが、

「でも、暖かい。気に入った♪」

少女の微笑みに怒るに怒れなかった。

「そうだ、お前の名前は?」

「……名前?」

「うむ!私は三千院ナギだ!お前の名前は?」

「僕の名前はーーー」

質問に答えようとした、瞬間。



「見つけたぞ、綾崎ぃ!!」



公園の入り口から今一番聞きたくない声が聞こえた。

「ゴメン!」

少女に謝り、ハヤテは公園を走って後にした。




ハヤテが走り去った後。

「綾崎……綾崎なんなのだ全く…」

残念そうな顔の少女がいたとか。

***


人通りの少ない道路に怒声が響く。

「待てやぁあああああ!!」

後ろから聞こえてくるヤクザの声にハヤテは反応を示さない。

(待てと言われて待つ人なんていない!!)

捕まるイコール死。その事実は、ハヤテの体力、そして精神力を徐々に削っていた。

(クソッ…!)

その事実に内心で毒ずくが何も変わることはない。



その時、前にビニール袋を提げた男が現れた。



(ーーッ!)

いつものハヤテなら、なんてことは無かっただろう。だが、今のハヤテは極限状態とも言える状態。よける事など、出来る筈が無かった。

(ぶつかるっ!)と衝撃に備え、目を瞑った瞬間。



強烈な浮遊間を味わった。



突然の事に、受け身もとれず、ハヤテは地面に叩きつけられた。

「ぐっ…!」

予想以上の痛みにハヤテは蹲ることしかできなかった。

さっきまで鮮明だったヤクザの声が遠ざかる。視界がボヤける。意識が遠のく。

そんなハヤテが最後に見た光景は、男が遠ざかっていく姿だった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


第一話終わり。
次回、ハヤテの運命やいかに!





























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Re: 誰がため、何のため ( No.1 )
日時: 2012/04/23 20:12
名前: コサッキー


では、第二話です。どうぞ♪


――――――――――――――――――――――――――――――


             第二話「終わりは始まり」



「うぅ……」

ハヤテは、体に感じる痛みで意識を取り戻した。

「一体ここは…?」

周りを見渡すが、人は一人もおらずハヤテ一人。壁に囲まれており、あるのは窓とドアが一つずつだけ。窓は小さく、ドアも硬そうで開きそうに無い。

ダメ元でドアを蹴ろうとした時、地面が揺れた。

(揺れた…?まさか!)

窓に駆け寄り、外を覗くと。見えたのは、陸が遠さがって行く光景だった。

「そんな…」

ハヤテは力なくその場に膝を着いた。

(死ぬ……。終わりだ…)

そのときのハヤテは絶望しきった表情だった。

(せめて……謝りたかったなぁ)

十年前に酷い別れ方をした女の子を思い出しながらハヤテは意識を手放すように眠りについた。



* * *



ガンガンガン!とドアを激しく叩く音が響く。

(なんだ…?)

その音でハヤテはのっそりと起きた

だが、意識が完全に覚醒する前にドアが開き、ガタイのいい男が入ってきた。そして、まだ寝ぼけているハヤテの腕を掴んだ。

『来い』

「え?」

日本語ではない言語に戸惑うハヤテを尻目に、男はハヤテを引きずって部屋から出した。

「一体なんですか!」

怒鳴るハヤテの前に黒光りする物が出される。

(拳銃…!)

『歩け』

何を言っているか、ハヤテには理解できなかったが拳銃を突きつけられれば逆らう事は出来ない。

『歩け』

拳銃をもう一度突きつけられたので、ハヤテはゆっくり歩き始めた。



* * *



歩き始めて、数分がたった。

ハヤテが連れて来られたのは、船の外つまり港だ。さらに歩き、倉庫の前に着いた。
『入れ』

拳銃を一瞥し、ハヤテは倉庫の中へ入っていった。



倉庫の中はガランとしていた。あるのは、手術台のような物と、手術着のようなものを着た数人の者だけだった。

その中の一人がハヤテに近づき、日本語で話してくる。

「さて、わかっているな?」

「何がですか」

「それは虚勢か?まあいい。すぐに喋れなくなるのだからな」

ハヤテはその言葉に、拳を握り締める。だが、男はその動作を見て肩をすくめた。

「逃げようとしても無駄だ。この周りには何十人もが逃げた者を捕らえる為に待機している。だから……」下卑た表情をしながら「諦めろ」と言った。

ハヤテもその言葉に諦め、死を覚悟したその時――――



ドゴォオオオオオオオオオオオオオン!!!



男の後ろが突如爆発した。

「な、何だ!!」

(今だ!!)

その場にいた全員が爆発に気を取られた隙に、ハヤテは入り口付近の男を倒し、名も知らぬ土地へと駆け出して行った。



* *  *



『いたか!』 『こっちにはいなかったぞ!』 『クソッ…!どこに行きやがった…!』 『探せ!』

怒声が響く中、ハヤテは身を物陰に隠していた。

(予想以上に人が多い…)

先程逃げたはいいが、知らぬ土地である。アテなどあるはずも無い。

『いたぞ、こっちだ!』
くっ…!」

見つかってしまい、ハヤテは物陰から飛び出し、走る。

(このままじゃまた捕まる…!)

そう思いながら角を曲がる。その瞬間、



ゴンッ!と同じタイミングで曲がった何物かとぶつかった。



「くぅー…!あっ、ゴ、ゴメンナサイ!」 「つぁー…!わ、わりぃ!」

同時に謝る二人。

『いや、こっちこそ!』……またもや同タイミングで謝る二人。

「ま、立てるか?」そう言って手を差し出してくる青年。

「あ、ありがとうございます…」手を取ってハヤテも立ち上がる。

その時、青年の後ろから銃を構えた数人の男達が現れるのがハヤテの目に映った。

それを見た瞬間、ハヤテは青年を突き飛ばしていた。

すべての光景がスローモーションに見えた。突き飛ばした青年が目を丸くしていた。自分の視線が低くなっていく。

それを最後にハヤテの意識は遠のいていった。



――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

第二話終了!
……またもやハヤテの運命やいかに!
………芸無いな、私。
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Re: 誰がため、何のため ( No.2 )
日時: 2012/04/25 19:33
名前: コサッキー

では、第三話です。
どうぞ♪


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


          第三話「不可思議な体験」



「あれ…?僕…」

ハヤテは、冷たいコンクリートの感触ではなく温かい何かの感覚で目を覚ました。

「確か僕……誰かを庇って……そうだ、あの人は―――」

ハヤテの言葉は続かなかった。何故なら、



周りが自分が倒れた筈の場所ではなく、満開の花畑だったから。



「……………………」 開いた口が塞がらないハヤテだった。

だが、すぐに我に返り、

「僕……死んだ!?」と、叫びうなだれた。

満開の花畑といったら、三途の川を渡った後の光景。普通はそう連想する。ハヤテも、その例に漏れることは無かった。

だが、その連想を打ち砕く存在がハヤテの前に現れた。






「あんたが綾崎ハヤテねー?」






その言葉はすぐ前からかけられた。

ハヤテが顔を上げると、そこには――――――服装は、薄紫色のゆったりした服の上に、白衣を着ている。容姿は後ろで纏めてあるものの地面につくほど長い薄紫色の髪をもち、右目が青色、左目が赤色をした――――――スタイルがいい女性が立っていた。

(綺麗な人だな…) ハヤテは目の前の女性に見惚れながら、そう思った。

「…?どうかしたのかしらー?」そんなハヤテの胸中も知らず、女性は首をかしげながらハヤテへ質問した。

「い、いえ何でもないです!」

「そうー?まー、いいわー。んで…」指をハヤテに向け、「あんたが綾崎ハヤテで間違えないわねー?」と再び訊いた。

「は、はい…。って、何で僕の名前を?」

「細かいことは気にしないー。それでー、ここがどこだか……わかるかしらー?」

ハヤテは少し考えた後、「天国とか……ですか?」と答える。

その答えに満足したのか、女性は微笑み、「はっずれー♪」と楽しそうに返す。

「じゃあ……ここは?」

「死と生の狭間……ってとこかしらねー?」

「死と生の狭間……つまり僕、死んだんですか…」

ハヤテは肩を落とした。先程死ぬのがいやで逃げた。だけど、結果は変わらなかった。それは、ハヤテの心にいとも簡単に突き刺さった。





「いや、死んではないけどねー」





「は……?」

だからー、と言いながら女性は出来の悪い生徒を優しく怒るように指を一本立て、ハヤテの鼻を軽く叩いた。

「ここは生と死の狭間ってさっき言ったでしょー?だから、今あんたは『死にかけ』って言った方がいいわねー。それで、本題はここからー」

「本題…?」『死んでない』という事実に少し安心しながら、ハヤテは聞き返す。



「あんたは『死にたい?』それとも『生きたい?』」



「―――――――――」

ハヤテは何も言えず、俯いた。その本題は、ハヤテの心を的確に突いてきたから。

(もし……ほんとにもし……『死にたい』って言ったなら……楽になれるのかな…)

いままでの人生を振り返ってみると、あの家族とは言いたくない両親の為に働く毎日。その事しか浮かばない。唯一家族と呼べる、兄と過ごした日々も数少ない。

(それなら……死んだほうが…)

そう決意し、顔を上げたとき、





『ハヤテ…私とあなたはずっと…』 かつて永遠を誓った少女の言葉がよみがえった。





「――――っ!」

何かを言おうとした、口が止まる。そして、本当の答えへと口が動く。

「僕は―――――」








ハヤテを見送った後のこと。

「全くー。あいつも人使いが荒いんだからー」

そう言う女性の表情は、どこか呆れた感じである。

「にしても……」表情を不思議そうにして、



「あいつが『人間』に興味を持つとはねー…」と呟いた。





           *     *     *




「はぁっ!」

「お、起きた」

「ここは…」

ハヤテは周りを見渡す。そこは、先程倒れた場所だった。

「おーい」誰かがハヤテの前で、手を振る。

「えっと……あなたは…」

「さっき突き飛ばされたやつだ」

その言葉に、全てを思い出す。だとしたら……。

「あの男たちは!?」

「え?ああ、あれか」

そう言って、青年が指差した先には男達が積み重なる様に倒れていた。

「…………」

「……大丈夫か?」

「ええ……何とか…」

一先ず、お互いに自己紹介することにした。






「僕は、綾崎ハヤテです」

「俺は…ディオだ」

ディオと名乗った青年は、光る程の金髪、目は碧眼といった容姿だった。

「んで、お前は何で逃げてるわけ?」

「えっと、それは…」

ハヤテは今までの経緯をディオに説明した。その説明に、ディオは興味深そうに頷きながら聞いていた。

「大変だな…」

「はい…」

……大変という度合いを過ぎている気がしたが、真剣にディオが聞いてくれたことが嬉しかったのか、気づかないでいた。

「んで、これからどうする訳?」

「うっ!」そんな事、考えていなかったハヤテは図星をつかれ、胸を押さえた。

「……何も考えてないわけ?」

ディオの問いに、ハヤテは目をそらした。

「おいおい…」

ハヤテの反応に、呆れるディオ。

「ま、そんな事だろーと思ったさ…」

そう言って、後ろを向きすぐに振り返る。その手に日本刀を持ち。

「やる」

そして、その日本刀をハヤテに差し出した。

「え…?何で…」

「どうせ、狙われてんだろ?なら、持ってけよ」

「で、でも…」

「やるって言ったんだから受け取れよ。それとも、お前は人の好意を断るのか?」

「……………わかりましたよ」

結局受け取るハヤテだった。だが、正直ありがたくもあった。武装した追っ手に対抗するする術が欲しかったのも事実だ。出来れば、銃などが欲しかったがこの際贅沢は言ってられないだろう。

「よし!」受け取った姿を見て、満足した様に頷くディオ。

「んじゃ、俺もいくわ」

「どこに…?というか、ディオさんは何でここに?」

「あー…」ばつが悪そうに、頭を掻きながら「俺も逃げてんだよ…」と答えた。

「ディオさんもなんですか…」

「まーな。でも、もう少し逃げるつもりだぜ?まだ、やりたい事もあるしな♪」

そう言ってディオは笑った。

それにつられ、ハヤテも笑った。

「んじゃ、俺は行くわ」

「はい」

「じゃあな、ハヤテ!また会おうぜ!」

そう言い、ディオは走り去っていった。

「僕も行こう…」

声は沈んでいたが、それとは反対に気力はみなぎっていた。

そしてディオと反対の方向にハヤテも体を向け、走った。





その時、ディオが走り去っていった方向にて。

『見つけたぁああああああああああ!!』『やっべ!』『待てやこの野郎がぁああああああああああああああ!!!』

という叫び声と、爆発音が聞こえたとか。







          *   *   *


ハヤテが行動を再開してから数十分が経過した後のこと。

「はぁああああ!」

ハヤテは鞘に入った日本刀を男に振りぬいていた。

『がぎゃぁ!』

倒れる男。

「はあ……はあ……」

ハヤテは息を整えながら、周りを見渡す。

ハヤテの周辺には、男達が三人ほど倒れ伏していた。

(これで……何回目ですか…)

ディオと別れた後、男達に見つかりその度倒していた。

ズキッ。と体全体が痛む。

(…っ)

勿論、無傷という訳ではない。右肩、左脇腹、左足にそれぞれ銃弾を一発づつ撃たれていた。故に、今のハヤテは満身創痍といえるだろう。

(クソッ……血が…)

傷口から血がたれ、路面に跡を残す。それも、ハヤテの怪我を増やす原因の一つでもあった。血が見えればそれを追って敵が増える。当然怪我をした状態では、逃げれず、戦うしかない。

(目が……霞む…)

何も見えないような状態でハヤテは進む。

それが唯一ハヤテに出来ることだから。

不意に、ガクッっと膝が曲がった。それを皮切りに、全身の力が抜け、倒れてしまった。

そのまま、目を閉じようとした時、





「ハヤテ…?」





「アー……たん…?」

女神の名を持った、少女の声が聞こえた。

その姿を一目見ようと、顔を上げたと同時に、


ドクン。何かが自分の中で跳ねた。同時に何かがハヤテの中を駆け巡る。


「がぁ…!?」

その痛みともいえない何かがハヤテを襲い、ハヤテは意識を失った。


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

第三話終了!

次で出るよなー…。

じゃないと、始まらない…!

という訳で、次回!
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Re: 誰がため、何のため ( No.3 )
日時: 2012/04/25 21:01
名前: 迅風

こんにちはー♪ ザ・迅風さんなのですっ!!!

うにゃー、現れたぜコサッキーさんの小説領域……!! 話も何かと動き出した様子だからいよいよ感想さんにゃ……!!

……うん、とりあえず感想に入ってみようかにゃ☆ ……一人の感想って相変わらずなっれないな……。

まぁ、それはともかくっ。

では感想ですが……初めから見てった感じだとこのハヤテはアテネへの謝罪の気持ちが初めから明確に表れてるタイプですか……!!

そしてチビジ……小さな金髪少女にナンパ入れてる男たちをブッ飛ばすハヤテ。パトラッシュの命日だからね……不謹慎……!! だけど普通に告白とかに使われる日だから、その実どっちが不謹慎かと言えば五分五分みたいなものなのさ……!!

ちなみに少女よ。――彼の名前は綾崎ハリケーンにゃっ!!!(←キラーンと嘘を教える私)

さて、その後ハヤテは謎の男に倒され、挙句船に乗せられたわけですかー……。そしてハヤテの体はばっらばらに……!! ……なるはずが、まさかの衝撃でご破算に……!?

……臓器提供が無く救われない子供たちの運命がまた一つ歪まれてしまった……。

冗談はともかくとして――……ここからが本題なわけだけれど……青年を庇ったハヤテは……おお、ハヤテ、死んでしまったのか情けない……!! 的な展開かと思えばハヤテは死んでなくて、生死の狭間にいるのですかー……!!

そこに現れた女性……うん、容姿や口調から彼女かーというのがわかる……!! でもこんなに早くに出るんですね……!!

ああ、私も書いた過去の小説を思い出すにゃあ……そうだ、巨大イカ……。……やべ、巨大イカどうにかしないと……。

それはそれとして。生きるか死ぬかを提示されたハヤテは……うん、家族間や周囲や不幸による様々な可能性を考えると死んだ方が楽、なんでしょうねー……。

だが、そこで彼女の事を思い出した、か……!!

……やはり罪の後悔やら謝罪の気持ちやら明確に表れてる様子ですね、このハヤテは……!!

そうして彼女により蘇生されたー……というより息を吹き返した的なハヤテ!! さて、その後相手の男性と自己紹介なわけだけれど……ディオさんですかーへー……ほー……一つ尋ねますが――。

――時を止められますか!?

……コホン、まぁそれはいいとして……。……うん、何で日本刀出てくるんだろう……。平和な封建社会が放剣社会へ早変わりですにゃー……。

にしてもなぜにディオは逃げてる――……というか彼の事情はいったい……? 見つかって逃走劇大発展してるけどねっ!!

しかしハヤテ凄いですね!? 右肩はともかく左わき腹に足をやられて良く動けるねぇ!? 文字通り満身創痍というやつか……。出血で出血死のピンチも来てるし……!!

だけど最後に聞こえた声の主は……!!

何でいるんだろう、とか気にかかり……というか結構逃走したんだね……!! まさか船から屋敷まで走ったか……!?

何にせよ次回からの展開が楽しみですねーっ♪ 次回からある程度始動、という感じですかにゃ……!?

ともかく次回からも楽しみにしております☆

……キャラリクエストあれば聞いておきますねっ☆

それでは☆ ばいにゃっ☆
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Re: 誰がため、何のため ( No.4 )
日時: 2012/04/26 07:00
名前:

こんにっちゃ〜♪フィッシュもみじんこと椛です♪
まさかコサッキーさんが小説を始めるとは………! 目についた瞬間狂喜しましたよ!
本当は夜にあげるつもりだったんですけどね……次の日になって申し訳ないです。
………ていうか本当に1人感想って切ないものですね〜……次回から自分の小説のオリキャラをつへてきてもよろしいですょうか?

というわけで三話一気に感想といきますか……!!
物語はクリスマスイヴから始まるんですね。作り方としてはなかなか珍しい始まり方で新鮮さをかんじます♪
まぁクリスマスイヴは日本人にとっても貴重だからね!ナンパしたくなるのもわかるけど……ナンパした奴に聞きたい……あんたらロリコンだろ!
そうでなければチビで無愛想でまな板ゲホッ!    …こほん………普通の金髪幼女をナンパするなんて考えられない! というか考えてたまるかぁ!!
そしてつるぺた幼女ナギはハヤテの名前もわからず放置と……うん。これは次にいこうか。(放置)

そしてなんかハヤテ捕まっちゃった!?  でもそのおかげかディオという少年に巡り会いましたね……時を止めれば完全にあのDI◯なんですけどね……!
ハヤテもそのおかげで解剖される運命から脱出したわけですが……でもなんかめちゃくちゃ重症だった!?  いや、てか生死の狭間行っちゃったよハヤテ!!
でもそこであった彼女……迅風さんには心当たりがあるっぽいですが生憎私には誰か思い浮かびませんね……でもその後の『あいつ』的な意図の発言には結構想像が膨らみました♪

とても端的ですがとりあえずこれで三話分の感想を示させてもらいます……なんかあらすじっぽくないか!?   と思っても気のせいにできない長さだ………!
でも語り尽くせないときにはTwitterで語って差し上げますよ……永遠に!
では今回はこれで♪しーゆーあげインダス川!
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Re: 誰がため、何のため ( No.5 )
日時: 2012/04/26 18:40
名前: 満月

こちらでは初めましてですねー…!! Twitterでもお世話になってる満月です!!

コサッキーさんの小説ー♪ 楽しみにしてたのですっごい嬉しいです…!!

一人での感想ってあんまり慣れてないんですが、頑張ります…!!

クリスマスイヴから始まりましたねー♪ なんかしょっぱなからピーンチッ…!!

まぁ、しょうがないですねー… ハヤテ不幸の星の下に生まれた子ですから…

それで、ナンパされてる子が居た、と まあそれがロリコンか否かは置いておくとして、ハヤテは船でポーン、と……不幸だなぁ…

でもそのお陰でディオに会えたからラッキーなんですかね…?

それで逃げたと思ったら…生死の狭間!? 凄い事になっちゃってる!!!

そこで会った方と『あいつ』に興味津々です♪

その後にこっちに戻ったら…ハヤテ大変ですね…!! ディオも頑張れ…!!

……久しぶりの感想グッダグダ…!! 

キャラのリクエストがありましたらどうぞですー♪

次回も楽しみにしてます♪ ではまたー♪
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Re: 誰がため、何のため ( No.6 )
日時: 2012/04/28 15:45
名前: コサッキー

感想が……来てる……だと…!?

という訳で、初のレス返し!!



▼迅風さん

>こんにちはー♪ ザ・迅風さんなのですっ!!!

感想ありがとうございますぅうううううううううううううううううううう!!!←(土下座する作者)

ハヤテ「いきなり何ですか!?」

だって、迅風さんだよ!?あの、迅風さんだよ!?

ハヤテ「だからって、いきなり土下座はないでしょう!?」

>うにゃー、現れたぜコサッキーさんの小説領域……!! 話も何かと動き出した様子だからいよいよ感想さんにゃ……!!

たった、それだけの理由で…! ほんとにありがとうございます!

>……うん、とりあえず感想に入ってみようかにゃ☆ ……一人の感想って相変わらずなっれないな……。

やっぱ、迅風さんはそうなんでしょうねー…

ハヤテ「オリキャラが沢山いて、その人たちで感想してますもんね…」

……ま、私もだけどね☆

>まぁ、それはともかくっ。

>では感想ですが……初めから見てった感じだとこのハヤテはアテネへの謝罪の気持ちが初めから明確に表れてるタイプですか……!!

はい…!私の考えたハヤテはそうなります!

やっぱり、ずっと後悔してたのでは…と思いまして。

>そしてチビジ……小さな金髪少女にナンパ入れてる男たちをブッ飛ばすハヤテ。パトラッシュの命日だからね……不謹慎……!! だけど普通に告白とかに使われる日だから、その実どっちが不謹慎かと言えば五分五分みたいなものなのさ……!!

確かに…!

ハヤテ「よくそういう話は聞きますからね…」

金髪少女「というか、最初に何か言いかけてなかったか?」

……………。さーて、次行くかー。

金髪少女「おい!」

>ちなみに少女よ。――彼の名前は綾崎ハリケーンにゃっ!!!(←キラーンと嘘を教える私)

少女「そうなのか!!強そうな名前だな!」

ハヤテ「違いますからぁああああ!!嘘を言わないでください!」

…………別によくない?

綾崎ハリケーン「よくないですよ!!って、名前が!!」

>さて、その後ハヤテは謎の男に倒され、挙句船に乗せられたわけですかー……。そしてハヤテの体はばっらばらに……!! ……なるはずが、まさかの衝撃でご破算に……!?

>……臓器提供が無く救われない子供たちの運命がまた一つ歪まれてしまった……。

ハヤテ「結局、あの人は誰なんですか…」

ま、後々出るさー。

そして、よかったね、ハヤテ。

ハヤテ「本当ですよ…」

でも、そのせいで子供達がぁ……!今からでも遅くない!行って来い、ハヤテぇ!

ハヤテ「行きませんから!」

>冗談はともかくとして――……ここからが本題なわけだけれど……青年を庇ったハヤテは……おお、ハヤテ、死んでしまったのか情けない……!! 的な展開かと思えばハヤテは死んでなくて、生死の狭間にいるのですかー……!!

ハヤテ「ほんとに死んだかと思いましたよ……。それで、生死の狭間とは…?」

あそこでの記憶は、ハヤテにはありません。なぜなら、あの女性が消したから!

>そこに現れた女性……うん、容姿や口調から彼女かーというのがわかる……!! でもこんなに早くに出るんですね……!!

フッ……!←(実は出す予定が無かったキャラを出しました…。)

女性「適当よねー…」

ごめんなさいねぇ!でも、そっちのほうが展開しやすかったんだよ!

女性「あっそー。やほー、迅風さーん♪」←(笑顔で手を振る)

>ああ、私も書いた過去の小説を思い出すにゃあ……そうだ、巨大イカ……。……やべ、巨大イカどうにかしないと……。

女性「捕まえて、食えばー?」

なにその展開!?

>それはそれとして。生きるか死ぬかを提示されたハヤテは……うん、家族間や周囲や不幸による様々な可能性を考えると死んだ方が楽、なんでしょうねー……。

>だが、そこで彼女の事を思い出した、か……!!

>……やはり罪の後悔やら謝罪の気持ちやら明確に表れてる様子ですね、このハヤテは……!!

ハヤテ「本当は死にたかったんですけどね……でも、やっぱ心残り…みたいなものでした…」

先程も言いましたが、私は物凄く後悔してるのでは。って思ってたんですよねー…。

ハヤテ「死ぬのは、謝ったあとでも出来ますし…」

待とうか!?

>そうして彼女により蘇生されたー……というより息を吹き返した的なハヤテ!! さて、その後相手の男性と自己紹介なわけだけれど……ディオさんですかーへー……ほー……一つ尋ねますが――。

ディオ「ディオだ♪よろしくなっ♪」

まあ、いろいろ変わった奴ですよ…。

ディオ「んで、何を聞きたいんだ?」

>――時を止められますか!?

ディオ「出来るぜ」

ハヤテ「えぇえええええええええええええええええええええ!!!???」

>……コホン、まぁそれはいいとして……。……うん、何で日本刀出てくるんだろう……。平和な封建社会が放剣社会へ早変わりですにゃー……。

ハヤテ「そういえば、何で持ってたんですか…?」

ディオ「マジックだ」

な訳無いよねぇ!?

というか、ここで渡しとかないとハヤテが素手で戦うことになるんですよねー…。……この先ずっと。

ハヤテ「ある意味貰えてよかったです…!」

ま、銃刀法違反だけどね☆

>にしてもなぜにディオは逃げてる――……というか彼の事情はいったい……? 見つかって逃走劇大発展してるけどねっ!!

ディオ「……聞くな」

ぶっちゃけ、どうでもいい理由ですけどね…。

ディオ「あいつ、本気で追ってくるんだもんよ…」

>しかしハヤテ凄いですね!? 右肩はともかく左わき腹に足をやられて良く動けるねぇ!? 文字通り満身創痍というやつか……。出血で出血死のピンチも来てるし……!!

ハヤテ「自分でも驚いてますよ…」

根性もありますけど……意地が大きかったりします。

まあ、とある理由があるんですけどね♪

>だけど最後に聞こえた声の主は……!!

>何でいるんだろう、とか気にかかり……というか結構逃走したんだね……!! まさか船から屋敷まで走ったか……!?

おそらく、検討がつくでしょう…!というか、ハヤテ言いましたし。

ハヤテ「僕、どんだけ逃げたんですか…?」

船から、屋敷。その間数回の、戦闘有り。

>何にせよ次回からの展開が楽しみですねーっ♪ 次回からある程度始動、という感じですかにゃ……!?

>ともかく次回からも楽しみにしております☆

今回からある程度は始動します…!

そして、ありがとうございます…!ご期待に背くことがない様がんばります…!

>……キャラリクエストあれば聞いておきますねっ☆

……………マジ…ですか…!

どうしようどうしよう!!

ハヤテ「落ち着いてくださいよ…」

無理無理無理!!

で、では主人公で!人数はお任せします!

>それでは☆ ばいにゃっ☆

感想、ありがとうございました♪



▼ 椛さん

>こんにっちゃ〜♪フィッシュもみじんこと椛です♪

感想ありがとうございますぅううううううううううううううううううう!!

ハヤテ「デジャブ!?」

>まさかコサッキーさんが小説を始めるとは………! 目についた瞬間狂喜しましたよ!

ダウトォ!

ハヤテ「素直に喜びましょうよ!」

>本当は夜にあげるつもりだったんですけどね……次の日になって申し訳ないです。

いえいえいえ!もらえるだけ嬉しいですからね!?

>………ていうか本当に1人感想って切ないものですね〜……次回から自分の小説のオリキャラをつへてきてもよろしいですょうか?

どうぞぉ!

ハヤテ「即答!?」

面白いじゃん!

ハヤテ「そんな理由!?」

あと、一人感想は切ないですよねー…。という訳で、何人でも来てオッケーです!

>というわけで三話一気に感想といきますか……!!

よっしゃ、バッチコイ!

ハヤテ「テンションがわからない!」

>物語はクリスマスイヴから始まるんですね。作り方としてはなかなか珍しい始まり方で新鮮さをかんじます♪

ぶっちゃけ、ここから始めないと出来ないってだけですけどね♪

>まぁクリスマスイヴは日本人にとっても貴重だからね!ナンパしたくなるのもわかるけど……ナンパした奴に聞きたい……あんたらロリコンだろ!

ナンパ男1「だ、誰がロリコンだ!」

ナンパ男2「そうだ、ロリコンじゃねぇ!」

どーでもいいから、ロリコンでいいやー。

ロリコン共『えぇえええええええええ!?』

>そうでなければチビで無愛想でまな板ゲホッ!…こほん………普通の金髪幼女をナンパするなんて考えられない! というか考えてたまるかぁ!!

少女「誰がチビで無愛想でまな板だ!」

なに殴ってんの!?

ロリコン「可愛かったから、声かけただけなのに!」

黙れ、ロリコンが!!

>そしてつるぺた幼女ナギはハヤテの名前もわからず放置と……うん。これは次にいこうか。(放置)

ナギ「うぉおおおおおい!」

まあまあ。

>そしてなんかハヤテ捕まっちゃった!?でもそのおかげかディオという少年に巡り会いましたね……時を止めれば完全にあのDI◯なんですけどね……!

ディオ「時ごとき止められるぜ」←(キラーン)

ハヤテ「ごとき!?ごときって何ですか!?」

実際ごときなんだよ…。

>ハヤテもそのおかげで解剖される運命から脱出したわけですが……でもなんかめちゃくちゃ重症だった!? いや、てか生死の狭間行っちゃったよハヤテ!!

庇ったときに、心臓とかにも当たってましたからねー…。最も、ハヤテはわかってませんが。

ハヤテ「何か夢を見ていたような……」←(生死の狭間も覚えてない)

>でもそこであった彼女……迅風さんには心当たりがあるっぽいですが生憎私には誰か思い浮かびませんね……でもその後の『あいつ』的な意図の発言には結構想像が膨らみました♪

まあ、私のオリキャラの一名ですよ。

女性「まあー、よろしくねー」

そして、『あいつ』は……結構すぐわかると思います♪

>とても端的ですがとりあえずこれで三話分の感想を示させてもらいます……なんかあらすじっぽくないか!? と思っても気のせいにできない長さだ………!

いえいえいえ!?私には十分でしたよ!

>でも語り尽くせないときにはTwitterで語って差し上げますよ……永遠に!

やってみろ!

ハヤテ「だから、そのテンションは何なんですか!?」

>では今回はこれで♪しーゆーあげインダス川!

むむっ!………思いつかない…!

ハヤテ「何も対抗しようとしなくても…」

くっ…!感想ありがとうございましたぁあああああああああああああああ!!!

ハヤテ「ヤケクソ!?」




▼満月さん

>こちらでは初めましてですねー…!! Twitterでもお世話になってる満月です!!

感想ありがとうございますぅうううううううう!満月お嬢様ぁあああああああ!!

ハヤテ「お嬢様!?」←(単なるノリさっ!)

>コサッキーさんの小説ー♪ 楽しみにしてたのですっごい嬉しいです…!!

ダウトォ!

ハヤテ「だから、素直に喜びましょうって!」

無理だね!

ハヤテ「威張ることでもありませんよ!」

>一人での感想ってあんまり慣れてないんですが、頑張ります…!!

頑張って下さいお嬢様…!じいは応援しておりますぞ!←(白ひげをつけ、老執事へ変身!)

ハヤテ「そのノリは何!?」

>クリスマスイヴから始まりましたねー♪ なんかしょっぱなからピーンチッ…!!

ハヤテですから♪

ハヤテ「そんな認識は嫌だ…!」

>まぁ、しょうがないですねー… ハヤテ不幸の星の下に生まれた子ですから…

満月さんもこう言ってるけど?

ハヤテ「うわぁああああああああああ!!」

>それで、ナンパされてる子が居た、と まあそれがロリコンか否かは置いておくとして、ハヤテは船でポーン、と……不幸だなぁ…

不幸ですよねぇ…

ハヤテ「しみじみと言わないで下さい!」

>でもそのお陰でディオに会えたからラッキーなんですかね…?

ラッキーっちゃラッキーです。

後々、助かることがあると思いますし。

>それで逃げたと思ったら…生死の狭間!? 凄い事になっちゃってる!!!

女性「私が頼まれて呼んだんだけどねー」

それでも、凄いよ……充分に。

>そこで会った方と『あいつ』に興味津々です♪

ぶっちゃけ、満月さんも知ってる奴です♪

女性「まー、よろしくねー♪」

『あいつ』も、名前自体は出ないけど、すぐに出ますー♪

>その後にこっちに戻ったら…ハヤテ大変ですね…!! ディオも頑張れ…!!

ハヤテ「大変ってレベルじゃないですよ……」

ディオ「爆発させながら追ってくんだもんよー…」

>……久しぶりの感想グッダグダ…!! 

全然でしたよ!?

>キャラのリクエストがありましたらどうぞですー♪

何…?!じゃ、じゃあマキノ、アートさん、スワンさん、シキ、ミライ、エンでお願いしますぅ!

ハヤテ「多い!?」

多いなら、減らしてもらって結構です…!

>次回も楽しみにしてます♪ ではまたー♪

感想ありがとうございましたー♪







では、下から本編です♪

大事な場面なのに、上手く言った気がしない…。

では、どうぞ♪


――――――――――――――――――――――――――――――――――――





人には誰しも、変えたい過去というものがあるだろう。

人によって、変えたい過去は様々であろう。

例えば、恥ずかしい事をしてしまった過去。

例えば、後悔するほどの事をしてしまった過去。

そしてそれが過ちを犯し、人を傷つけてしまったなら尚更である。

だが、時を戻り過去を変えることは誰にも出来ない。

しかし、時間が経ち過去を清算する時は来る。

それは、どんな罪でも、どんな過去でも、全ての人にも訪れる――――



             第四話「ごめんなさい」



夢を見た―――

女神の名を持つ、少女との酷い別れの夢を――――




「ぅ…」

「!!」

ハヤテのうめき声のような呟きに、ベッドのそばで座っていた少女は肩を震わせた。

それに呼応するように、ハヤテは静かに目を開いた。

「ここ…は…」

まだ、焦点の合っていない目で、傍らの少女へとハヤテは話しかけた。

「私の……屋敷ですわ……ハヤテ…」

「屋……敷…」

帰ってきた答えにも、驚かずハヤテはただ聞き返す。

だが、返ってきたその声に飛び起きた。

そして、今度は焦点の合った目で少女を見据える。

その少女は――――

「アーたん!?」

「久しぶりですわね…ハヤテ」

ハヤテがずっと謝りたかった、天皇州アテネその人だった。




「………………」

「………………」

……沈黙が二人を包む。

「……それで、ハヤテ。あなたは何でここに…?」

その沈黙を破ったのはアテネだった。

「えっと…」

ハヤテは、今までのいきさつを包み隠さずアテネに話した。

その話を聞いたアテネは、その顔を怒りの表情へと染めていった。

「やはり、あなたの親は…!」

その言葉にハヤテは顔を伏せた。

「ハヤテ…?」

「結局……正しかったのは君で…間違ってたのは僕のほうだったよ…」

そう言い、顔を上げたハヤテの表情は、悲しそうに笑っていた。

「それはっ…!」

「いいんだよ、アーたん。今の僕ならそれがわかるけど、昔の僕はそれがわからなかった。ただ、それだけだよ」

「…っ」

その言葉にアテネは何も言うことが出来なかった。

「……ハヤテ」

「何?アーたん」

ハヤテがアテネへ顔を向けると、アテネは俯いていた。

「ごめんなさい…!」

「え…」

いきなりの謝罪にハヤテは驚いた。

「あの城からあなたを追い出した後から……私は、ずっと後悔してた…!」

俯いているアテネの肩が震える。

「私だってあんな事言いたくなかった…!でも、私がもっと…。もっと、冷静になっていれば…!あなたは、傷つかずに済んだかもしれなかったのに…!」

雫が、俯いたアテネから零れる。

「……アーたん」

「……な、に?」

顔を上げたアテネの顔は、涙でグシャグシャになっていた。

その涙を指で拭き、ハヤテは言う。


「ありがとう」


「……え…?」

あまりにも予想外だったのか、アテネはポカンとした顔になった。

「ありがとうね、アーたん」

「な、何で―――」

「僕のことをそこまで考えていてくれてありがとう」

「で、でも!私はあなたを傷つけた!それが、あなたは憎くないの!?」

お礼なんか言われる謂れはないと言わんばかりに声をアテネは荒げる。だが、それを受けてもハヤテは微笑んだまま続ける。

「憎くないよ。それが、僕を思っての行動だってわかったからね」

それに、とハヤテは続ける。

「僕も、謝らなきゃいけないんだ」

「何を…?」




「あの日、幼い僕には君の苦しみがわかっていなかった…。僕の両親から僕を守ろうとしてくれた気遣いも…。君が、あの城にどんな気持ちでいるもかもわからずに、理解したつもりで、君を傷つけてしまった…。だから……ごめんなさい……!」




ハヤテは深々と頭を下げた。許してくれなくたっていい。憎んでくれたっていい。それでも、この気持ちだけは、アテネに伝えたかった。

「あなたも……私のことを、思っていてくれたのですね…」

「うん…」

「それで、ハヤテ?」

微笑みながら、アテネがハヤテの頬を指す。

「あなたも泣いてるわよ?」

「え…?」

言われて、ハヤテは初めて気づいた。自分が泣いている事に。

「あ、あれ…?おかしいな…。と、止まらないや…」

「フフッ…。相変わらずの泣き虫ね…」

「うっ…!ア、アーたんだって泣いてるじゃないか!」

「なっ…!」

そして顔を互いに見合わせ、二人で笑う。


――――互いに謝った。

――――そして笑いあった。

――――それは、互いの抱えていた罪が赦された、その証拠。





「ところで、ハヤテ?あなた、これからどうするの?」

ひときしり笑いあった後、アテネがハヤテにそんなことを聞いた。

「あー……何も考えてないや…」


「それなら、」

それは、出会ったあの日と同じ。

「私の執事をやってくれません?」


「うん!!」



そして、黄金色の新しい未来が始める。




―――――――――――――――――――――――――――――――――――



よっし、グッダグダぁ!

最悪だ…

しかも、レス返しのほうが長い気が…。

では、次は4,5話!

それじゃ♪

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Re: 誰がため、何のため ( No.7 )
日時: 2012/04/28 15:45
名前: コサッキー

という訳で、4,5話!!

うん、今『何言ってんのこいつ』みたいなのが聞こえた気がする…。

でも、書いておいたほうがいいと思うんだ!

という訳で、どうぞ!

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


             四,五話「視る者」




ハヤテとアテネが笑い合ってる同時刻。

一人の青年が船の甲板で大声を上げ、笑っていた。

「くはははははははははは!なるほど、そういう事か!」

その青年はハヤテが先程出会った青年。

名はディオ。

ディオはひときしり笑った後、呟いた。

「あー、笑った笑った。にしても、あいつの言ってた事がよーく、わかったなぁ…」

薄紫色の髪を持った女性をディオは思い浮かべる。

「謝りたいかぁ…。最初『死にたい』って言おうとしてた奴が、『生きたい』って言うには充分な内容かねぇ」

顎に手を当て、ひときしり考えた後、ディオは大きく頷き、顔をおもちゃを見つけた少年のような表情へと変える。

「やっぱ、面白そうな奴だなぁ…」

「なーにが面白いんすか?」

突如後ろから声がかけられ、ディオは振り返る。

そこには、眼鏡をかけ、亜麻色の髪を持った少年が立っていた。

「おー、お前か」

その少年に気楽そうに声をディオはかける。

「お前かー。じゃないっすよ…」

少年はこれ見よがしにため息をついた。

「その様子じゃ、随分と探したようだな♪」

「何で、楽しそうなんすか…」

「楽しいじゃん」

「こっちは、これっぽっちも楽しくないんですけどねぇ!?」

「はっはっはっはっは!」

少年の反応にディオは楽しげに笑った。

「ま、笑っていられんのも今のうちっすよ」

「は…?」

少年の言葉に眉をひそめるディオ。



「だって、もうあの人来ますし」



その言葉にディオは、自分の顔が急速に青ざめていくのがわかった。

そして、それと同時に、

「見つけたぁあああああああああ!!」

突如、自分の真横に現れたオレンジの髪色をした少年に殴られ、ディオの体が吹っ飛んだ。

「げばぁ!?」

「はぁ…はぁ…」

殴ったオレンジ髪の少年は息を切らしていた。

だが、そんな事は気にせず倒れているディオに近づき、胸倉をつかむ。

「んで?遺言はありますか?」

「開口一番それかよ!?」

「こっちがどんだけ探しまくったと思ってんだ、あんたはぁ!」

「ものの数時間だろ!?」

「ものの数時間で、世界中探しまくるこっちの身にもなれやぁあああああああ!!」

叫びながら、ディオをオレンジ髪の少年は胸倉をつかんだまま揺らす。

「ギ…ギブ……」

「死にますよー?」

傍らの眼鏡の少年に言われ、ようやくオレンジ髪の少年は手を離した。

やっと開放されたディオは白い顔をしていた。

「んじゃ、帰りますよ?」

オレンジ髪の少年がディオへ言う。

「えー」

「か、え、り、ま、す、よ?」

そう言うオレンジ髪の少年の顔からは、逆らえないようなオーラが滲み出ていた。

「わかった、帰る。帰るから後一つだけやって欲しい事がある」

「何ですか…」

さも、めんどくさそうにオレンジ髪の少年は聞く。

「んとよー…。そいつらの事なんだけどよ…」

そう言って、ディオは少年たちの後方を指差した。

指した先を追い、振り向くと。





そこには、先程ハヤテを追っていた男たち、そして手術着を着た男たちが積み重なって倒れていた。





「こいつらがどうかしたんすか?」

さして、驚きもせず眼鏡の少年がディオに問いかける。

「いや、ちょっとな。ある事を消して欲しいだけなんだよ」

「ある事…?」

怪訝そうにオレンジ髪の少年はディオを睨む。

その視線を受け、ディオは否定するように手を振る。

「勘違いすんなよ、ちっぽけなことだ」

「じゃあ、なんすか?」

「なーに、簡単なことだ」




「単にそいつらの脳から、『綾崎ハヤテ』に関する事を消して欲しいだけだっつーの」




「……それだけ……なんですね?」

確認するように、オレンジ髪の少年は訊く。

「正確にいうなら……。そいつらから『綾崎ハヤテ』に関すること。『綾崎ハヤテに関する借金の事』も消して欲しいなー。全世界から」

気楽に言うディオにオレンジ色の髪の少年は額に手を当て、ため息を吐いた。

「わかりましたよ…。それで、帰ってくれるなら安いものですよ…」

そう言うと、オレンジ色の髪の少年は右手を上げ、呟いた。

「『集まれ』」

その言葉を発すると同時に、積み重なっている男たちの頭から光が出た。そして、その光はオレンジ色の髪の少年の右手に集まって一つになった。更に、どこからか光が飛んできて、またもや右手に集まり一つになった。

「『消去』」

そう呟き、右手を握り再び開くと、光は跡形もなく消えていた。

「ふう…」

「サンキュー♪」

「んじゃ、帰るとしましょうか」

オッケー。と呟くと、ディオは屋敷がある方向へ目を向けた。

「さってさて、綾崎ハヤテはこれからどんな事を俺に見せてくれんのか…。全く…楽しみだな♪」

そう言った後、三人はその場から消えた。



――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


4,5話終了!

ディオの存在が謎になるねぇ…

次は五話で!



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Re: 誰がため、何のため ( No.8 )
日時: 2012/04/28 20:15
名前: コサッキー

という訳で、第五話♪

どうぞ〜♪

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――



ハヤテが、アテネの執事になった直後、部屋のドアがノックされた。

「誰かいるの…?」

「ええ。あなたの他に、一人だけ…ね」

『アテネ様、六花です』

「入っていいですわよ」

その言葉に、ドアが開き入ってきたのは――――

「あら♪」

正真正銘の、メイドだった。



         第五話「日本へ」



「起きていたんですか♪」

入ってきたメイドさんは、ハヤテを見るなり笑顔になった。

「は、はい…」

その笑顔に、ハヤテは照れたのか曖昧に返事をしただけだった。

「む…」

その反応が気に入らないのか、かすかに機嫌が悪くなるアテネ。

「あらあら、アテネ様?やきもち等焼かなくていいと思いますよ♪」

「だ、誰も妬いてなんかいませんわ!!」

「そう言うことにしておきましょうか♪」

予想通りの反応だったのか、クスクスとメイドは笑っていた。

「あのー…」

その会話に乗れないでいた、ハヤテが恐る恐る二人へと声をかけた。

「あら、ごめんなさい♪」

「い、いえ…。え、えっと……貴女は一体…?」

「そういえば、自己紹介がまだでしたね」

そう言ってメイドの女性はハヤテの前に立つ。

「私は、志姫六花です♪アテネ様のメイドをしています♪六花と呼んでくださいね♪」

志姫六花と名乗った女性は、ハヤテへ手を向けた。

何かと思い、顔を見るが彼女は笑顔のままであった。

「(ハヤテ…。あなたも、自己紹介しなさい)」

アテネが囁いてくれた言葉にやっと理解したのか、ハヤテは慌てて自己紹介した。

「ぼ、僕は綾崎ハヤテです!」

「よろしくお願いしますね、ハヤテ君♪」

よく出来ましたね。とでも言うように六花は笑みを深めた。

「うぅ…」

その笑顔に照れ、ハヤテは顔を赤く染めた。

「…………」

ギュゥウウウウウウウ!

「いたたたたたたたたた!?な、なにするのアーたん!」

「ふんっ!」

アテネは、拗ねた様に顔を背けた。

なだめようとし困惑するハヤテ、その光景を微笑みながら見守る六花。

それが、その後数分続いた。






「それで、ハヤテ君を執事にするんですよね?」

その質問は、その光景に満足した六花から投げかけられた。

「え、ええ。だから、ハヤテの執事服を頼めるかしら?」

「わかりました。ところで…」

困ったような表情で六花は二人に問いかける。

「もう朝なの……わかってますか?」

「「えぇ!?」」

その言葉に驚き、二人は窓の外を見た。

窓の外は、眩しいほどの光に溢れた、朝だった。

「「…………」」

「その様子じゃ、わかってないようですね…」

六花は一つため息を吐くと、

「それじゃ、朝ごはんにしましょうか♪」

といまだ驚いている二人に向けていった。




          *   *   *



「そういえば、ハヤテ君」

「はい?」

朝ごはんの後、六花が質問を投げかけてきた。……因みに、朝ごはんは何故か和食であった。

「ほんとに、ハヤテ君は借金を押し付けられたんですよね?」

「はい…。って、何で今それを?」

「いえ、気になって調べたのですが…」

そう言って、六花はテーブルの下から束ねた紙を取り出し、テーブルに置いた。

「なんですの、それは?」

「ハヤテ君の借金に関して調べたものです」

「それがどうかしたんですの?」

「ええ…」

「ま、まさか…。僕の借金が増えでもしたんですか!?」

まさかと思い、ハヤテは身を乗り出した。

だが、六花は首を振って否定した。

「増えてはいませんから…」

「じゃあ、何なの六花?」

「その逆で……無いんです」

「無い…?」

「ええ。ハヤテ君の親が押し付けたはずの借金が記録に残ってないんです」

「それは……喜ぶことではないの?」

アテネの言葉にキョトンとした表情になり、すぐに笑顔になる。

「ただ、気になるだけって言ったじゃないですか♪」

ドドッ。その言葉に二人は椅子から転げ落ちそうになった。

「り、六花〜!」「り、六花さん…!」

「いいじゃないですか、無くなったんですし♪」

「確かにそうですけどね!?」

「言い方があるでしょう!?よりによって、そんなシリアスな言い方をしなくてもいいですわよ!」

言い寄る二人にも、六花は笑顔のままであった。

「単に二人の反応が見たかっただけですから♪」

「「ちょっとー!!」」

叫ぶ二人。六花はそれも楽しそうに受け止めていた

「ところで、アテネ様」

思い出したといわんばかりにアテネへ話しかける六花。

「今度は何ですの!?」

「いえ、日本に帰らなくてはならないのですが…」

「何故です!?」

「キリカさんが逃げたからです」

「またですの!?」

「という訳でハヤテ君」

「は、はい!」

いきなり、呼ばれハヤテは驚いた。

「準備をしてくださいね♪」

「はい!」

ハヤテは、執事としての初めての仕事に、ワクワクしていた。




舞台は日本へ。

ここから、ハヤテの本当の物語が始まる。

何の為に、そして誰の為に、ハヤテは物語を紡いでいくのか。



――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――




五話終了!

やっぱ、グッダグダ…!

でもやっと、日本に…!

六花さんのプロフィールは、次かな…?

という訳で、次回!
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Re: 誰がため、何のため ( No.9 )
日時: 2012/04/29 15:18
名前: コサッキー

という訳で、第六話です♪

特に話すことも無いのでどうぞ!


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――



ハヤテ達が日本に帰ってきてから数日が経った。世間では、正月といわれる時期。

「平和だなぁ…」

ハヤテは日本の天皇州家の庭を掃除しながら、そんなことを呟いていた。

余談であるが、ハヤテが日本の天皇州家を見たときは、大層驚いていた。

だが、そんな事は今のハヤテにとっては遠い昔のように思えた。

なぜなら、自分には縁がないと思っていた平和な日常が送れているから。

「本当に…」青く澄み渡る空を見上げ、「平和だなぁ…」と感慨深く呟いた。



          第六話「平和な日々」



「老人じゃないんですから…」

「あ、六花さん」

呆れたような声が聞こえたので、振り向くと同僚でメイドの六花が立っていた。

「どうかしたんですか?」

「どうかしたんですか?じゃ、ありませんよ……もう、老人みたいでしたよ?」

「そうでしたか?」

「無自覚なんですか…」

呆れた六花に、ハヤテは首を傾げるばかりであった。

「そういえば、六花さん」

「なんですか?」

ふと何かをハヤテは思い、六花へ質問した。

「アー…、いえ、お嬢様は?」

「ああ…。先程、起きてまだ寝ぼけてますよ」

やっぱりですか…。と呟き、ハヤテは苦笑を漏らした。

「ところで、ハヤテ君」

「はい?」

今度は六花がハヤテに質問した。

「まだ、呼び方は慣れませんか?」

「ええ、まあ…」

気まずそうにハヤテは頬を掻く。

呼び方とは、アテネの呼び方のことである。

公の場で自分の主を『アーたん』など呼んだ時は、どんな批評がアテネに降り注ぐかわかったものではない。

なので、六花に言われ直しているのだが、依然直らない。

「まあ、ゆっくり慣れていって下さいね♪」

「はい…」

流石に不甲斐ないと思っているのか、ハヤテの声は暗い。

「もう執事の仕事はなれましたか?」

そんなハヤテを見かねて、六花は別の話題を投げかける。

「はい!」

「ならよかったです♪」

先程までとは違い、笑顔になるハヤテ。それにつられ、六花も笑顔になった。






それから、時間が経ち、夕方。

夕食の準備をしていたハヤテはアテネに呼ばれ、アテネの部屋にいた。

「何の用事ですか?」

「はあ…」

開口一番ため息を吐くアテネ。

「何で溜息を吐くんですか!?」

「…り……なの……から」

どこか赤くなりながら呟くアテネ。

「え?」

「だ・か・ら!二人きりなのだから、敬語はよしなさいと言っているのです!!」

バン! 机を叩きながら、アテネは叫んだ。その顔は、赤く染まっていた。

「わ、わかったよ…」

渋々といった感じでハヤテは頷いた。

「コホン…。それで、ハヤテ」

「何?アーたん」

……何とも順応性が高いハヤテであった。

「あなた、学校はどうするのです?」

「え…?潮見高校に行ってるけど…」

「そこ、退学になってますわよ……」

「え……」

その言葉にハヤテの思考は止まった。

「な、何で!?何でなの、アーたん!」

「調べたところ…、あの父親がどうにかしたようですが…」

「そっかー…退学かー……仕方ないよねー…」

そう言って、どこか暗いオーラを放つハヤテ。

「それで、本題なのですが…」

「本題?」

「ええ、もしあなたがいいのなら…」

そこで、一旦言葉をアテネは切る。

「私が経営している白皇学院に入学しません?」

「………いいの?」

「私が経営してるのだから、どうにかなりますわ」

その発言は経営者としてどうなのだろうか。

「で、でも試験とかは…」

「それはやってもらいますわ」

「偏差値が65以上ですからね〜♪ハヤテ君の成績だと、ギリギリといった所ですね♪」

『……………』

「どうしました?」

『いつからそこに!?』

……そこには何故か、六花さんが立っていた。

「アテネ様がハヤテ君を白皇学院へ誘っていた所からです♪」

「気配すら感じませんでしたけど!?」

「消してたに決まってるじゃないですか♪」

「そこまでする必要はありますの!?」

「何となくです♪」

何を言っても無駄だと悟った二人はそこで追及をやめた。

「それで、試験日はいつにしますか、アテネ様♪」

「そうですわね…。三日後にでもしましょうか」

「わかりました。では、私はこれで」

六花は登場した時とは違い、今度は普通にドアから出て行った。

「全く、六花ったら…」

「あはは…」

「それで、ハヤテ」

「何?」

「……必ず合格しなさい」

「うん!」

アテネの応援に笑顔で応えるハヤテだった。







その三日後、ハヤテの編入試験は実施された。

その日はある教師が担当しようとしたが、理事長権限により六花が担当した。

そして、合格。新学期から白皇学院の生徒となることが決定した。

余談だが、その知らせを聞いてから数日間、アテネの機嫌は格段によかった。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


第六話終了!

次は、あの小動物さんを出そうか…。

下には六花さんのプロフィールを載せときます♪

興味があったらどうぞ♪

では、次回!





▼志姫 六花  (シキ リッカ)
性別:女
年齢:19歳
誕生日:4月6日
身長:165cm
体重:秘密です♪
家族構成:父、母、兄、妹
好きな事、物:アテネ、ハヤテ、自然を愛でる事、恋愛関係をいじる事
嫌いな事、物:アテネ、ハヤテに危害を加える者

〈詳細〉
容姿:栗色の髪色で、腰までのゆるい天然パーマ。
   瞳は赤色。
   スタイルはアテネよりいい。
その他:天皇州家に仕えるメイド。
    基本的にニコニコしていて、大抵の事では怒ったりはしない。
    ただし、怒った時は怖いと言われている。
    戦闘能力は高いともっぱらの噂。
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Re: 誰がため、何のため ( No.10 )
日時: 2012/04/29 17:01
名前: コサッキー

という訳で、第七話です♪

今更だけど本当に原作ブレイクしてるなぁ…

という訳でどうぞ♪



―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――



「そういえばハヤテ君。あなた、携帯電話持ってます?」

それは、六花から突然言われた。

「え?持ってませんけど…」

「そうですか、なら…」

確認をとると、六花はポケットから財布を取り出し、ハヤテに差し出した。

「無いと不便なので…、買ってきて下さい♪」

「え……いいんですか?」

「はい♪それと、買ったら今日は休んでいいですよ♪」

「い、いや駄目ですよ!」

「たまには休むことも大事ですから♪すぐに帰ってきたら怒りますからね♪」

「えぇ!?」

「という訳で行ってらっしゃい♪」

半ば無理やりに六花に送り出されたハヤテだった。






        第七話「昔の知り合いに会うとなんかこそばゆい」




携帯を買った後、ハヤテは暇を持て余していた。

(帰ったら怒られるって…。なんか新しい気がするなぁ……)

だが、言われたことを破り帰ろうと思ったが…、

(なんだか…やな予感がするんだよなぁ……)

という事だった。

「はあ……どうしよ」

空をハヤテは見上げる。雲一つ無い綺麗な青空だった。

そこで、ハヤテはふとあることを思い出した。

「折角だし……行ってみようかな、あそこに…」







          *   *   *







数十分後、ハヤテは潮見高校の前にいた。

「勢いで来ちゃったけど……。僕もうここの生徒じゃないだよなぁ…」

ハヤテが門の前で悩んでいると、突如後ろから声をかけられた。

「あの…」

「うひゃぁ、ごめんなさいごめんなさい!!決して怪しい者ではありませんー!」

「綾崎くんよね…?どうしたの、私服でこんなところに…」

「え…?」

不審に思い、後ろを向くと、

「に、西沢さん…」

本名、西沢歩。通称、ハムスターが立っていた。

「宗谷君達もみんな心配してたよ。学校に来ないもんだから…」

「色々あって…」

「色々…?」

怪訝そうにハムスターは訊いてくる。

「ちょっと、親に売られて…。なんだかんだで今、執事やってるんだ〜…」

「は…?」

……真実を言っただけなのに、ハヤテは可哀想な人を見る目で見られた。

「え?風邪で頭がおかしくなっちゃったのかな?」

「それだったら、どんなによかったことか…」

「でも、よかったよ♪ようやく今年初めて綾崎君の顔が見れて、本当に…嬉しいよ…」

「へ?」

「な、何でもないよ!特に深い意味は無いよ!」

赤い顔を隠すように歩は手を振ってごまかした。

「お前ら、何いちゃついてんだ」

「ふあ!?宗谷君!」

歩の後ろから、宗谷と呼ばれた少年が出てきた。

宗谷はハヤテを見つけるなり、ハヤテに気軽に声をかけてきた。

「つーか、ハヤテじゃん。お前、学校辞めたって噂が流れてけど?」

「いや、まあ…。その通りなんだけど…」

その言葉に全員が固まった。

『えぇええええええええええええええええええええええ!!!???』

「おまっ…なんでだよ!」

「いや、僕の親が勝手に…」

「そ、それなら教育委員会とかに言えば…」

「いえ、いいんです」

「で、でも綾崎君…」

「もう納得してますから…」

そう言うハヤテの表情はどこか悲しそうでもあった。

「それじゃ…」

そう言って、帰ろうと振り返った―――

「待って綾崎君!!」

「はい?」

名前を呼ばれ振り向くと、




「好きです綾崎君!」




突如そんなことを言われた。

「このままお別れなんて嫌です……だから、私と付き合ってくれません…?」

その時、無意識になぜかアテネのことが頭をよぎった。

それは、とても悲しそうな顔で。

悲しめたくない。

だから、答えを口にしようとした―――




その時、どこからか野球ボールとサッカーボールが同時にハヤテの顔面に当たった。




「ぐはぁ!?」

ぶつかったハヤテは、そのままの勢いで門の外まで飛んでいった。

更にそこへ、トラックが走って来た。

「えぇええええええ!?」

ドゴォ! 跳ね飛ばされ、ハヤテはまた吹っ飛んだ。

『……………』

その光景をただ、そこにいた者達は見ていた。

だが、歩だけはすぐに我に返った。

「告白の答えは…どうなったのかな?」

その質問には誰も答えを返してはくれなかった。






「た、ただいま帰りました…」

「ああ、お帰りなさい。って、どうしたらそんな怪我するんですか…」

ハヤテの格好は全身がボロボロで、怪我も多かった。

「自分でもわかりません…」

溜息を吐くことしか、ハヤテは出来なかった。



――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


第七話終了!

やっぱ、グダグダだなぁ…

ではまた、次回!
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Re: 誰がため、何のため ( No.11 )
日時: 2012/04/29 18:50
名前: キー

 キーといいます。
ハヤテは天皇州家に。それはまぁ良かったとして、六花さん怖すぎです。気配を消すとは。まるで三千院家の腹黒メイド…ではなく美人で優しいメイドさんみたいですね。そしてハヤテは白皇の試験でかつ…例の教師の邪魔が入らなくて良かった。ハヤテなら受かりますよね…邪魔がなければ。
 次回も楽しみにしています。
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Re: 誰がため、何のため ( No.12 )
日時: 2012/05/02 23:17
名前: コサッキー

むむっ!感想が来てる!

という訳でレス返し!


▼ キーさん

>キーといいます。

初めまして♪

ハヤテ「感想ありがとうございます♪」

>ハヤテは天皇州家に。それはまぁ良かったとして、六花さん怖すぎです。気配を消すとは。まるで三千院家の腹黒メイド…ではなく美人で優しいメイドさんみたいですね。

六花「いまどきのメイドなら必須スキルですよ?」

そんな訳無いよねぇ!?

マリア「誰が腹黒メイドですか★」

怖い!てか、なんで出してないのにいるの!?

>そしてハヤテは白皇の試験でかつ…例の教師の邪魔が入らなくて良かった。ハヤテなら受かりますよね…邪魔がなければ。

ふっ…。理事長権限でさぁ…。

アテネ「邪魔をさせる訳ありませんわ!」

ハヤテ「あはは…。でも、受かってよかったです…」

六花「受かってなかったらどうなったんでしょうね〜♪」

たぶん、六花さんにやられてるんだろうなぁ…。

ハヤテ「本当に受かってよかったです!!」

>次回も楽しみにしています。

ありがとうございます!

六花「キーさん感想ありがとうございました♪」

では、下から本編です♪



―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――




一月十五日。

午前七時、白皇学院内。

ハヤテは、朝早くからそこにいた。

「えへへ。えへへへへ〜」

……若干気持ちの悪い笑顔で。

「お嬢様、あれ僕の母校なんですよ♪」

その笑顔のまま、後ろに六花と共にいる筈の自分の主へと話しかける。

「………………」

だが、帰ってくるのは沈黙のみ。

しかし、そんな事も意に介さずハヤテは続ける。

「そして、お嬢様が経営してる学校でもあるんですよね〜♪やっぱり、お嬢様は凄いです♪」

「あの…、ハヤテ君?」

アテネの返答の代わりに六花が何か言っているが、今のハヤテの耳には届かない。

「それにしても、やる事がありませんね…。先生に挨拶しようにも肝心の先生がいませんし…」

「ですからハヤテ君…」

「お嬢様?何かいい案あります?」

そう言って、ハヤテが振り向くと。



眼前に箒があった。




               第八話「転校生って、色々めんどくさそうだよね」




スパーン!といい音をたて箒はハヤテの顔に直撃した。

「いたぁ!」

「全く……。落ち着きました?ハヤテ君」

「なんで僕箒で殴られたんですか!?」

「なぜ…?まだ、わかって無いんですか?」

そう言うと、六花は背負っている人物をハヤテに見せる。

「まだ、アテネ様が起きてないでしょう?だから、何を言っても無駄ですよ?」

「そういえば、お嬢様は朝が大の苦手でしたね……」

それを見て、やっとハヤテも理解したようであった。

「全く…」

「ごめんなさい…」

呆れた六花にハヤテが謝っていると、不意にハヤテの前を桜の花びらが通った。

「くくく……、あはははは…」

「!!」

声に驚き、ハヤテが振り向くと、

「早起きはしてみるものだね。面白い人に会える」

美形の男が立っていた。

「………(わっせわっせ)」

……その横に桜を投げている男の子も。

『…………』

その光景に何とも言えないハヤテと六花だった。

「ヒムロ、花……もういいかな?」

「ありがとう、タイガ坊ちゃん」

……どちらが主でどちらが執事かわからない様な光景だった。

「えっと…」

「その服、君も執事だね?」

「は、はい。天皇州家で執事をやってる―――」

ハヤテの言葉を聞いて、美形の男の目が興味の色に変わった気がハヤテはした。

「へえ…君が噂の…」

「噂…?」

噂、という言葉にハヤテは眉をひそめた。

「そう、この学校に二人の転校生が来るという噂さ」

「二人……って事は、僕以外にもう一人転校生が…?」

「もう一人は三千院家の執事だそうですよ、ハヤテ君」

今まで黙っていた六花が補足するように話しかけてくる。

「ふふ…楽しみにしているといい…。行きましょう、坊ちゃん」

「あ、うん!」

そういい残し、二人は去っていった。

「三千院家の執事…」

「因みに、同じクラスですからね♪」

「えぇ!?」

その情報にハヤテは驚いた。自分以外の転校生が同じクラスと言われればそうなるだろう。

「さ、ハヤテ君。アテネ様は私がどうにかしますから、教室に行ったらどうです?」

「え、もうそんな時間ですか!?」

「はい♪」

「じゃ、じゃあ行ってきます!」

「はーい、行ってらっしゃい♪」

六花に見送られ、ハヤテは走り出した。





              *   *   *




自分のクラスの前。そこにハヤテは立っていた。

これから転校生として、クラスに紹介される。

故にハヤテはかなり緊張していた。

(うわ〜…緊張するなぁ…)

そこまで考え、ハヤテは横を見る。そこには、自分と同じく執事服を着た少年がドアの近くの壁に寄りかかって立っていた。

(この人がもう一人の転校生なのかな…?)

ハヤテの様に緊張している様子は微塵も見えなかった。最も、俯いている為、表情は見えないが。

そんな事思っていると中から声が聞こえてきた。

『今日からこのクラスに、新しいお友達が二人も来ます!!』

その言葉に、教室内がざわめく。その音は、廊下にいるハヤテ達にも聞こえるほど。

『転校生なの!?桂ちゃん!!男!?女!?』

『どっちも男の子よ!』

クラス内の女子であろう声が更に大きくなる。

『はーい、桂ちゃん♪その男の子達はかっこいいですかー?』

(そんな事言われると緊張するな〜…)

そんなことを思っていると。

『因みに転校生達は物凄くかっこいいわ!!』

『キャァアアアアアアアアアアア!!!』

そんな声が聞こえてきた。それに比例する様に、女子の声が一際大きくなる。

(ちょっとーーーーーー!?)

勝手にハードルを上げられ、内心でハヤテは叫んだ。

その時、俯いていた少年が動いた。

『なんていうか―――』

そこまで言った所で少年は勢いよくドアを開けた。

『……………………』

いきなりの出来事に静まり返る教室。

「無駄にハードル上げてんじゃねえぞ、クソ教師が」

だが、そんな事はお構いなしと言わんばかりに少年は教壇の教師に向かって告げる。

「ちょ、ちょっと!何で勝手に入って来てんのよ、大神君!」

「てめえに任せてたら無駄にハードル上がりそうだったんでな。つーか」

そこまで言って、大神と呼ばれた少年はハヤテへ体ごと振り返る。

振り返った少年は、茶色の髪を首で適当にそろえていて、目の色は黒。更に、ハードルを上げられてもそれに応えられるような顔立ちをしていた。

「てめえも入って来いよ。転校生なんだろ?」

その言葉を受け、ハヤテは恐る恐る教室へと足を踏み入れた。

「あ、どうも…」

『…………………』

余程、先に入ってきた少年のインパクトが強かったのかほとんどのクラスメイトは固まっていて、ハヤテには少ししか視線は集まらなかった。

「別にいいでしょ!?入りやすい空気を作ろうと努力してたのよ!?」

「知るか。かえって入りにくい空気だったがな。つーわけで、」

少年は右手を教師に向かって上げる。

「ちょっと、何する気!?」

ハヤテからは体が影で何も見えないが、教師の言葉から察するに何か手に持っているのだろう。

「少し黙れ」

スパーン! と言い終わると同時に音がし、教師が倒れていった。

「桂ちゃん!?」「い、今何が起きた!?」「ちょっと、何やったの!!」「おい、先生大丈夫かよ!?」

悲鳴を上げる者、困惑する者、怒り掴みかかろうとする者。それらの影響で教室は騒然となった。

「黙れよ」

その声は決して大きくは無かった。だが、不思議と教室は静かになった。

それを確認し、その騒ぎを起こした張本人はチョークを取り、黒板に自分の名前を書いていった。

「三千院家執事、大神零司。よろしく」

そう言って、零司はクラスメイトをひと睨みすると適当な席へ歩を進めていった。

『………………………』

そしてまた、クラスは固まった。

「えーっと…」

あまりの事態についていけないハヤテ。自分も自己紹介した方がいいのか、それともこのまま待ったほうがいいのか。どちらの行動も取れず、ハヤテは困っていた。

「あなたも自己紹介したら?」

窓際から声がかかり、ハヤテはそちらを向く。そこには、この騒動にも慌てていない、一人の女生徒がいた。

「後々、聞かれると思うから今自己紹介したら?あと少しで一時間目だし」

「え、えっと…」

時間を見ると、確かにあと少しで一時間目になろうという時間だった。

困惑しながらもハヤテはチョークを取り、黒板に名前を書いた。

「天皇州家執事の綾崎ハヤテです。よろしくお願いします…」

その言葉に三人分くらいの拍手が起こった。

「ここ、空いてるわよ」

先程の窓際の女生徒が自分の隣を指す。よくわからないまま、ハヤテはその席に座った。

「えと…。ありがとうございました」

「気にしないで」

隣の女生徒は手を振って微笑んでくれた。

「私も自己紹介しとくわ。蓑実早 菊花(みのみはや きくか)よ。菊花でいいわよ」

自分を菊花と名乗った女生徒は、腰まで伸びている黒髪を三つ編みにし、顔には赤いふちの眼鏡といった容姿だった。

「よろしくお願いします、菊花さん」

「こちらこそよろしく、綾崎」

自分の隣が良さそうな人でよかった。と思うハヤテだった。

そんな事を思ってると、机の上に何かが落ちてきた。

「コイン…?」

それは身に覚えの無いコインだった。

(まさか…ね)

頭に浮かんだ事を頭から振り払い、ハヤテは鞄から自分の物を出し始めた。





「ところで…」

「何?」

「みんな、いつ動くんでしょうか…」

「……さあ?」

結局、担任の先生が来るまでそのままだったとか。







            *   *   *




そして時は過ぎ昼休み。

結局あの零司の挨拶のインパクトが凄かったのか、クラスのテンションはかなり低かったままであった。

そんな状態だからか、転校生のハヤテにも質問などはほとんど来なかった。

ただ例外として、クリスマスに助けたナギは動き始めると同時に、ハヤテにテンション高く質問をしてきたが。

それはさておき、ハヤテは六花に呼ばれ理事長室を目指していた。だが、

「ここ、どこだろう…」

見事に迷っていた。

「六花さんに案内してもらえばよかった…」

実は六花から案内しようか。という提案をハヤテは受けていた。だが、ハヤテはそれを断り自力で行って見せると言った。その結果がこれである。

「はあ……今からでも遅くないかな…?」

そう言って、携帯を取り出そうとした時、

「クス…。あなた転校生の綾崎君よね?」

そんな声が聞こえた。声が聞こえた後ろを向くが、誰もいない。

「上よ」

そう言って、上を見上げると、桃色の髪をした少女が木の上に立っていた。

「ええ、そうですけど……。………ところで、何で木の上に?」

「!!さ、流石天皇州家の執事ね…。核心を突いてくるわね…」

「白皇って木登りがブームなんですか?」

「そんな訳無いでしょ!?」

「じゃあ、何でですか?」

ハヤテのその質問に少女はしどろもどろになりながらも返す。

「こ、これはあれよ。ある事をしようと木に登ったらいつの間にか高いところに来てて…」

「要するに、登ったはいいけど高くて降りることが出来ない訳ですね?」

「そ、そんなはっきり言わなくてもいいじゃない!」

折角少女が遠まわしに言ってたことを、ストレートに言うハヤテだった。

「そ、それであなた天皇州家の執事なんでしょう?」

「え、まあ…」

「それで……頼みたいことがあるのだけど…」

「はい…?」

「あ、あの……受け止めてね?」

「は?」

ハヤテが意味を理解する前に、

「えいっ!!」

少女は跳んだ。

「え!?ちょ!!やっ!?」

そして、

「ん?」

ミシ、と音を立てながらハヤテの顔の上に着地した。

「…………」

ハヤテは音も無く倒れた。

「あ!!ご、ごめん!!だ!!だ!!大丈夫!?」

「ええ…まあ…」

顔を押さえながら、ハヤテはヨロヨロと立ち上がる。

「危ないじゃない。ちゃんと受け止めないと」

「それなら、飛ばないで下さいよ!!」

少女の物言いにハヤテは声を荒げる。

「ム…そんなに怒鳴らなくたっていいじゃない…。私、高所恐怖症だから、早く降りたかったし…」

シュン。とした少女の仕草にハヤテは怒る気力も無くなった。

「はあ…。なら、何であんな高いところに?」

「しょうがないじゃない。あの子が巣から落ちてたんだから」

溜息を吐きながら、少女は木の上を見る。その視線を追いハヤテも木の上を見ると、確かにそこにはヒナ鳥が巣で鳴いていた。

「いまどきそんな理由で…」

「な、何よ!!悪いわけ!?」

「いえ、とても感心しました。スイマセン、色々失礼な事を言ってしまって…」

「ん…いや、わかればいいのよ…」

「でもこれで、あのヒナも安心―――」

そう言って、巣を見上げたとき、一匹のカラスが巣のそばでヒナを見据えていた。

「………」

思わずハヤテは無言になった。

「わー!バカバカ!なんあのよあのカラス!!」

「ピンチですよ!!」

「こうなったら、石でも当てて―――」

「駄目ですよ!!ヒナに当たったらどうするんですか!!」

石を持った少女をハヤテが止めようとしたとき、

「ピーっ」

親鳥たちが駆けつけた。

だが、

「………(ジロリ)」

カラスの一睨みで親鳥たちは去っていった。

「だ……!ダメよそんなの!!親が子供を見捨てるなんて…そんなことしちゃ…!」

少女の目には涙が溜まっていた。それはまるで、自分に置き換えているような様子でもあった。

そして、カラスがニヤリと笑った。

「だ、だめぇ!!そんなのは絶対―――」

「どいてください」

「え…?」

刹那、カラスとヒナの間を石が勢いよく通り過ぎて行った。

カラスは今の光景を見て、汗を垂らしていた。

「カラスさん。その辺で引いてくれません?じゃないと次は…、当てないといけませんので」

ハヤテのその言葉を最後に、カラスは去って行った。

「私には投げるなって言っておいて自分では投げちゃうんだ…」

「僕はコントロールがいいので」

「それは私がノーコンってこと!?」

「いえ、そういう事じゃなくて…」

その後、少しの間口論は続いた。

「そういえば、名前言って無かったわね?」

「え?ああ、そういえば確かに…」

「ヒナギク。桂ヒナギクよ」

「いい名前ですね♪」

そこでふとハヤテは理事長室に呼ばれている事を思い出した。

「あの〜…桂さん?」

「何?」

「理事長室の場所…わかります?」

「ええ、わかるけど…。……わからないの?」

ハヤテはその質問に無言で返事をした。

ヒナギクはハヤテのそんな様子に溜息をついた。

「まあ、いいわ。案内してあげる。……………謝りたいこともあったし」

「?何か言いましたか?」

「何も!じゃ、行きましょうか♪」






数分後、理事長室前。

ノックをして、二人は理事長室に入った。

「ハヤテ、遅いですわよって、あなたは…」

「ハヤテ君って、あら?」

入った瞬間、ハヤテの隣にいる人物を見て、二人はそれぞれ違う反応をした。

「久しぶり……天皇州さん…」

「え?知り合いなんですか…?」

「ええ、ちょっと…」

そして、気まずい空気が流れる。

「……少し席を外しますね。行きましょう、ハヤテ君」

そんな空気を察してか、六花はハヤテを連れ出し、理事長室の外へ出た。

「あの…。六花さん…?」

ドアを閉めてから、ハヤテは六花へ質問する。

「どうしました?」

「なんで僕たちだけ外に…?」

全くあの空気に気づいていないハヤテであった。

「まあ…二人で話したい事というより……二人で話したほうがいい。って話がありそうでしたから」

「成る程…」

六花の説明にハヤテはようやく納得した。

「じゃあ、ハヤテ君。話が終わったらお昼にしましょうか♪」

「呼んだ理由ってそれだけですか…?」

「ええ♪」

なんだかドッと疲れが出た気がするハヤテであった。



―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――





第八話終了!

さて、次は…。

まあ、あれだよね。

という訳でまた次回!!
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Re: 誰がため、何のため ( No.13 )
日時: 2012/05/03 21:59
名前: 迅風

操咲「リクエストありがとうございます♪ 操咲ハヤテです♪」

暁文「…………瀬里沢暁文。指名ありがと……♪」

恭介「うぃす♪ 鍵森恭介だ。リクエストあんがとさん♪」

鉄虎「瀬川虎鉄だ。ご指名ありがとう♪」

九十九「白凱九十九だッ!!! いぇー筋肉筋肉ーっ!!!」

恭介「……というわけで主人公の主だった五名で来てみた。まぁ色々思うところはあるが――内容が多量だ!! さっそく感想行くぜお前らぁ!!」

操咲「第四話からやる気!? まぁいいですけど……!! ……ってこれはまた僕としては懐かしく嬉しくもある光景が……!!」

鉄虎「確かになー……、迅風もこの頃くらいに天王州理事と操咲の邂逅をやってたもんな。……そして操咲、その『もう戻らない過去の光景を懐かしむ』様な眼差しをやめろ!?」

暁文「…………襲われてるからなハヤテ。さて、こっちのハヤテと天王州は……うん両親の事で怒りを感じるのは当然だよな……売ったし」

九十九「ハヤテの方としては親父さんたちの裏切りはともかくとして天王州の方に対するすまねぇ気持ちでいっぱいだったわけだ……。だよな、その過去から筋肉育ててたもんな!!」

恭介「起承転結おかしくね!? まぁ体は鍛えてはいたが!! ……で、天王州の方もまぁ思うところはあったよな。過去からずっとあの日を後悔し続けてきたわけだし……。だがよかったじゃないか……ハヤテはしっかり気持ちに応えてくれてるのだから、な♪」

鉄虎「そして互いに許して、互いに分かり合えたか……ああ、本当に良かったなっ……♪」

操咲「僕もあの話のときは嬉しかったですからねー……♪ そしてあっちの僕は天王州家の執事に……!! がんばってくださいー……!!」

暁文「…………そっちはそっちでいいとして……、ディオを含めてこの三名は何をさらっと凄いことを……!! というかディオは何を思って行動してるんだろうなー……?」

恭介「何にせよハヤテの借金に関わる内容を完全消去ってべらぼうな事をやりやがるな……!! さて、屋敷に戻るが……ハヤテと天王州の前に現れたのはメイド……志姫さんか……メイド、だな」

操咲「……ええ、メイドですね」

暁文「…………メイドだ」

鉄虎「メイドだよな……!!」

九十九「お前ら全員、なんなんだよその畏怖するような視線は!? にしてもメイドかー。メイドってーと俺はやっぱり睡蓮の印象つえーな。腐れ縁だしよ」

恭介「……で、ハヤテの奴は見事に照れてるな」

操咲「ぶふぉお!? そうは言っても六花さん綺麗ですし……!! しかし借金帳消しどころの騒ぎじゃないですよね、これ……。僕はおじいちゃんが支払ってくれてますけど……」

暁文「…………そしてキリカさん逃げたのか」

九十九「キリカ理事さんが逃げたってなると俺、毎回捕獲に向かわせられるんだぜ……!! 君麿の奴にさ……!! そして日本へ来たわけだが……平和だぜぇ!!!!」

操咲「本当、平和ですよねー……僕も平穏がほしい……。で、呼び方に関しては早めに直さないとですよねー……主へ批評があるわけですし」

暁文「…………俺は問題ない」(←理由『調教されたから』)

鉄虎「俺はもっぱらお嬢だな」

九十九「君麿はなんであれ君麿だぜ!!」(←君麿『だから直しなさい!!』)

恭介「俺は本編でチビジョの呼び名以外言わない♪」(←ナギ『公もそれで呼ぶから私は困っているのだがなぁ!?』)

鉄虎「よく見たら周りが執事として問題だらけだと!? ……しかし天王州理事はあれだな……デッレデレだな……」

恭介「天王州だからな♪ さて親により金銭全部持ってかれた事により退学になってる件はいいとして……休みというか携帯ゲットのたびに出向いたハヤテの足が向かった先は……潮見高校か。そして現れたな……ピカ○ュウ!!」

操咲「ピ○チュウじゃなくてハムっ……西沢さんですよ!? そして……!!」

九十九「告白されたな!! で……吹っ飛んだぜ……!!!」

暁文「…………ああ、見事なバットタイミングだな。おかげで返答がものすごーく曖昧になってしまった……。その上トラックに撥ねられて……どうやったらちょっと出かけただけでその傷を負えるんだ?」

操咲「僕にもわかりませんよ……。あはは……。よく入院しないな僕も……」

鉄虎「そして日を跨いでいよいよ白皇学院の初日か……!! そしてうれしそっ!! めっちゃニヤニヤしてるなぁ!?」

操咲「だって嬉しかったですもん!! そしてお嬢様はやっぱり朝は弱いんですね……。ああ、けど僕のときは僕が背負ったんだっけ……。そんな六花さんたちの前に現れたのは……!!」

恭介「おお、懐かしい。冴木に大河内じゃないか。なんかすっかり懐かしい相手になっちまったなぁ……。俺たちとしては最近合ってなかったしよー♪ あっはっは♪」

鉄虎「まぁうん、出番が……な。しかし相変わらず桜の花びら舞ってるよなー……。大河内の方は……うん、頑張れ」

九十九「まぁそっちはいいんだけどよ……。転入生紹介で……ハヤテ以外もいんのか……!! 三千院家執事か!!」

恭介「いやぁー懐かしいな……!! なんか過去の自分を思い出すぜ……!! ……なぁ、ハヤテ。なんでお前、本名『綾崎覇王丸』じゃなかったんだ?」

操咲「それいまだに思ってたの恭介ぇ!? と、ともかくとして三千院家執事――って零司君だったんですか!?」

暁文「…………っていうか威圧的過ぎるだろ!? 教師も生徒もびびるくらいに威圧的なんだが……!! それとついでに雪路倒したし」

恭介「ついで扱いなんだな……。しかし大神は三千院の執事だったか……。……チビジョの真意が気になるとこだな、おい♪」

暁文「…………しかしさすがはハヤテ。さりげなく隣の席が女の子だ」

操咲「そう言われても!? 蓑実早さんって変わった苗字ですよねー……。そして落ちてきたコイン……うん、原因か……。しかし凄い初印象ですよねー……!!」

九十九「えげつねぇ感じにな……。で、昼休みにはハヤテは桂の奴に会ったんだな!!」

恭介「ヒナギクが木登りした理由は……あいつらしい理由なんだよなー。それで幾分かのアクシデントはあったがミッションクリア!! 無事、理事長室に着いたか♪」

鉄虎「それで――……天王州理事と桂が再会だな、今度は……」

操咲「理由は知ってますから……。……けど、うん……今のお嬢様なら大丈夫だと信じていますよ♪」

九十九「だな!! そんでメシだメシ――――ッ!! ヒャッハーッ!!!」

操咲「ごはんで上がるテンション相変わらず高いですねぇ!?」

暁文「…………その際は毎回、睡蓮さんが作るがな。…………ところで毒が入ってたりもするかもだから気をつけろよ?」

恭介「孤月海にお前はどんなメシを食わされたんだ……!? そしてハヤテは疲労感凄そうだなー……。まっ、頑張れやー♪」

操咲「ええー……!! ……それじゃあ次回も楽しみにしています♪」

鉄虎「それじゃあ次回もリクエストがあれば言ってくれ♪」

恭介「んじゃなっ♪」
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Re: 誰がため、何のため ( No.14 )
日時: 2012/05/05 14:35
名前: コサッキー

あ、感想来てる!という訳でレス返しじゃぁ!!

ハヤテ「一体そのテンションは!?」


▼ 迅風さん

>操咲「リクエストありがとうございます♪ 操咲ハヤテです♪」

>暁文「…………瀬里沢暁文。指名ありがと……♪」

>恭介「うぃす♪ 鍵森恭介だ。リクエストあんがとさん♪」

>鉄虎「瀬川虎鉄だ。ご指名ありがとう♪」

>九十九「白凱九十九だッ!!! いぇー筋肉筋肉ーっ!!!」

わぁあああああああああ!!!!!

ハヤテ「作者さんの目が凄くキラキラしてる!?」

だって、主人公だよ!?必然的にそうなるでしょ!!

零司「それは人それぞれだと思うがな」

六花「何はともあれ、感想ありがとうございます♪」

>恭介「……というわけで主人公の主だった五名で来てみた。まぁ色々思うところはあるが――内容が多量だ!! さっそく感想行くぜお前らぁ!!」

>操咲「第四話からやる気!? まぁいいですけど……!! ……ってこれはまた僕としては懐かしく嬉しくもある光景が……!!」

まさかの四話から!?

六花「結構量あるはずなんですけどね…」

流石主人公達…!

アテネ「関係無いと思いますわよ?」

というか、あっちのハヤテには懐かしい光景だろうねー。

>鉄虎「確かになー……、迅風もこの頃くらいに天王州理事と操咲の邂逅をやってたもんな。……そして操咲、その『もう戻らない過去の光景を懐かしむ』様な眼差しをやめろ!?」

>暁文「…………襲われてるからなハヤテ。さて、こっちのハヤテと天王州は……うん両親の事で怒りを感じるのは当然だよな……売ったし」

六花「まあ……、あっちのアテネ様は過激でしょうね…」

ハヤテ「襲われてますもんね…///」

こっちもやってみる?

アテネ「やめなさい!///」

まあ、売られたことに関しては…。

ハヤテ「感謝と怒りが半々ってとこですかね…」

>九十九「ハヤテの方としては親父さんたちの裏切りはともかくとして天王州の方に対するすまねぇ気持ちでいっぱいだったわけだ……。だよな、その過去から筋肉育ててたもんな!!」

>恭介「起承転結おかしくね!? まぁ体は鍛えてはいたが!! ……で、天王州の方もまぁ思うところはあったよな。過去からずっとあの日を後悔し続けてきたわけだし……。だがよかったじゃないか……ハヤテはしっかり気持ちに応えてくれてるのだから、な♪」

九十九は結局そこに直結するねぇ!!

ハヤテ「確かに鍛えてはいましたけどね!?」

アテネ「私もかなり後悔してましたもの…」

ま、ハヤテだからちゃんと応えてくれるんだよね、アテネ♪

アテネ「そ、それはまあ…そうですけど…」

>鉄虎「そして互いに許して、互いに分かり合えたか……ああ、本当に良かったなっ……♪」

>操咲「僕もあの話のときは嬉しかったですからねー……♪ そしてあっちの僕は天王州家の執事に……!! がんばってくださいー……!!」

結構グダグダだった感が拭えない…!

零司「おい」

ハヤテ「でも、許してもらえてよかったです…♪」

アテネ「私もですわ…♪」

……何か、ハヤテがハヤテを応援するって違和感しかないね。

ハヤテ「そんな事を言われても…。でも、頑張りますよ!だから、そっちの僕も頑張って…!」

六花「凄い違和感というか、なんと言うか…」

>暁文「…………そっちはそっちでいいとして……、ディオを含めてこの三名は何をさらっと凄いことを……!! というかディオは何を思って行動してるんだろうなー……?」

ディオ「まあ、適当に」

適当かい!!

ディオ「まあ、面白くなりそうなことには手を貸すがな♪」

オレンジ髪の少年「はあ…」

眼鏡の少年「まあ、相変わらずっすねー…」

>恭介「何にせよハヤテの借金に関わる内容を完全消去ってべらぼうな事をやりやがるな……!! さて、屋敷に戻るが……ハヤテと天王州の前に現れたのはメイド……志姫さんか……メイド、だな」

ディオ「色々助けてやったほうが便利じゃん?」

そんだけの理由!?

ディオ「別にいらなくね?あれはハヤテの両親が作った借金だし。ハヤテが背負う必要なんてどこにもない。だから俺は消した」←(真剣な表情)

……考えてたんだね。

ディオ「あたぼうよ♪じゃねえと色々大変な事になっちまう立場にいるんでな♪」

そして、屋敷では…!

六花「メイドの六花です♪六花で構いませんよ、鍵森君♪」

……怒らせないほうがいいメイドです。

>操咲「……ええ、メイドですね」

>暁文「…………メイドだ」

>鉄虎「メイドだよな……!!」

>九十九「お前ら全員、なんなんだよその畏怖するような視線は!? にしてもメイドかー。メイドってーと俺はやっぱり睡蓮の印象つえーな。腐れ縁だしよ」

やっぱみんな畏怖してるね…。

アテネ「メイドですからね…」

ハヤテ「でも、六花さんって強いんですか…?」

めっちゃ強いよ?ハヤテは瞬殺出来るね。

ハヤテ「えぇ!?」

にしても、九十九はやっぱり睡蓮さんの印象が強いようだね。

六花「まあ、腐れ縁というか幼馴染ですからね」

>恭介「……で、ハヤテの奴は見事に照れてるな」

>操咲「ぶふぉお!? そうは言っても六花さん綺麗ですし……!! しかし借金帳消しどころの騒ぎじゃないですよね、これ……。僕はおじいちゃんが支払ってくれてますけど……」

六花「ありがとうございます♪」

アテネ「全く、ハヤテったら…!」

ハヤテ「だから何でそこまで怒ってるの!?」←(やっぱり鈍感)

にしてもまあ……、物凄いよね、借金自体が無かったことになるって…。

六花「正直最初は私も驚きましたよ…」

ま、ハヤテにとっちゃ嬉しい報せだね♪

>暁文「…………そしてキリカさん逃げたのか」

>九十九「キリカ理事さんが逃げたってなると俺、毎回捕獲に向かわせられるんだぜ……!! 君麿の奴にさ……!! そして日本へ来たわけだが……平和だぜぇ!!!!」

やっぱり逃げるキリカさんです。

アテネ「おかげで私のほうに仕事が…」

六花「あの人には一度お灸を据えた方が良さそうですね♪」

怖い!!

ハヤテ「九十九さんも大変ですね…」

君麿さんならそういうだろうねぇ…。

そして、平和じゃぁ!!

>操咲「本当、平和ですよねー……僕も平穏がほしい……。で、呼び方に関しては早めに直さないとですよねー……主へ批評があるわけですし」

>暁文「…………俺は問題ない」(←理由『調教されたから』)

>鉄虎「俺はもっぱらお嬢だな」

>九十九「君麿はなんであれ君麿だぜ!!」(←君麿『だから直しなさい!!』)

>恭介「俺は本編でチビジョの呼び名以外言わない♪」(←ナギ『公もそれで呼ぶから私は困っているのだがなぁ!?』)

ハヤテ「あっちの僕にこの平穏を送ってあげたい…!」

無理だって。しかもあと少ししたらこっちのハヤテも平穏消えるし。

ハヤテ「えぇ!?」

六花「まあ、呼び方に関しては…、なんとか直ったから良しとします♪」

てか、暁文たちの呼び方アウトォ!!

アテネ「ダメダメですわね…」

ハヤテ「みなさんちゃんと呼びましょうよ!!」

執事としてアウト過ぎるわ!!

>鉄虎「よく見たら周りが執事として問題だらけだと!? ……しかし天王州理事はあれだな……デッレデレだな……」

>恭介「天王州だからな♪ さて親により金銭全部持ってかれた事により退学になってる件はいいとして……休みというか携帯ゲットのたびに出向いたハヤテの足が向かった先は……潮見高校か。そして現れたな……ピカ○ュウ!!」

>操咲「ピ○チュウじゃなくてハムっ……西沢さんですよ!? そして……!!」

アテネ「私だからデレデレってどういうことですの!?」

まあ、アテネだし。

んで、潮見高校では…、ピ○チュウのエンカウント!

歩「誰がピカ○ュウなのかな!?」

じゃあ、ハムスター?

歩「そう言う問題じゃないんじゃないかな!?というか、綾崎君何を言おうとしたのかな!?」

ハヤテも結構呼び方浸透したんだろうねぇ……ズゥ。←(茶を飲みながらしみじみと呟く)

>九十九「告白されたな!! で……吹っ飛んだぜ……!!!」

>暁文「…………ああ、見事なバットタイミングだな。おかげで返答がものすごーく曖昧になってしまった……。その上トラックに撥ねられて……どうやったらちょっと出かけただけでその傷を負えるんだ?」

>操咲「僕にもわかりませんよ……。あはは……。よく入院しないな僕も……」

ハヤテ「やっぱ不幸です…」

まあまあ、元気出して。

因みに返答させようかさせまいか悩んでます。

歩「どうする気なのかな?」

……さあ?

六花「にしても、どうやったらそんなにボロボロになれるんですか…」

ハヤテ「ごめんなさい…」

本当に頑丈だよね、ハヤテ…。

>鉄虎「そして日を跨いでいよいよ白皇学院の初日か……!! そしてうれしそっ!! めっちゃニヤニヤしてるなぁ!?」

>操咲「だって嬉しかったですもん!! そしてお嬢様はやっぱり朝は弱いんですね……。ああ、けど僕のときは僕が背負ったんだっけ……。そんな六花さんたちの前に現れたのは……!!」

めっちゃニヤニヤしてたってさ。

ハヤテ「だって物凄く嬉しかったんですもん!!」

ところで、ハヤテ!!背負った時のかんそうをば!!

アテネ「あなたは何を訊いてますの!?///」

気になるじゃん!

>恭介「おお、懐かしい。冴木に大河内じゃないか。なんかすっかり懐かしい相手になっちまったなぁ……。俺たちとしては最近会ってなかったしよー♪ あっはっは♪」

>鉄虎「まぁうん、出番が……な。しかし相変わらず桜の花びら舞ってるよなー……。大河内の方は……うん、頑張れ」

まあ、これ以降は出番なんて無いと思います。うん。

ハヤテ「えぇー…」

だって、命がけについてこれるとは思わない。

ハヤテ「命がけ!?」

>九十九「まぁそっちはいいんだけどよ……。転入生紹介で……ハヤテ以外もいんのか……!! 三千院家執事か!!」

>恭介「いやぁー懐かしいな……!! なんか過去の自分を思い出すぜ……!! ……なぁ、ハヤテ。なんでお前、本名『綾崎覇王丸』じゃなかったんだ?」

転校生紹介で、緊張しないってありえるかな…?

零司「知るか」

ハヤテ「というか、恭介さんはまだそれ引きずってたんですか!?」

>操咲「それいまだに思ってたの恭介ぇ!? と、ともかくとして三千院家執事――って零司君だったんですか!?」

>暁文「…………っていうか威圧的過ぎるだろ!? 教師も生徒もびびるくらいに威圧的なんだが……!! それとついでに雪路倒したし」

>恭介「ついで扱いなんだな……。しかし大神は三千院の執事だったか……。……チビジョの真意が気になるとこだな、おい♪」

零司「ま、よろしく」

心開いてない相手だとめっちゃ威圧的なキャラです。

零司「うるせえ、めんどくさい事は嫌いだ」

まあ、基本強いキャラでもありますし……、雪路倒すなんて朝飯前ですよ♪」

ナギ「それであいつを執事にしたのは…」

案外予想つくと思います…?

零司「疑問形かよ」

>暁文「…………しかしさすがはハヤテ。さりげなく隣の席が女の子だ」

>操咲「そう言われても!? 蓑実早さんって変わった苗字ですよねー……。そして落ちてきたコイン……うん、原因か……。しかし凄い初印象ですよねー……!!」

そこはハヤテですので。

ハヤテ「僕だからってどういう事ですか!?」

菊花「蓑実早菊花よ。よろしく」

何だかんだでチョコチョコ出るであろうキャラです。

菊花「ま、目的あるしね」

それで、コインは…、検討つくでしょう。うん。

菊花「結構凄い印象の二人だったわね」

まあそうだろうね…。

>九十九「えげつねぇ感じにな……。で、昼休みにはハヤテは桂の奴に会ったんだな!!」

>恭介「ヒナギクが木登りした理由は……あいつらしい理由なんだよなー。それで幾分かのアクシデントはあったがミッションクリア!! 無事、理事長室に着いたか♪」

迷うのはある意味ハヤテの特技!

ハヤテ「違います!!」

ヒナギク「まあ、色々あったのよね…。って、恭介君!私らしいってどういうこと!?」

>鉄虎「それで――……天王州理事と桂が再会だな、今度は……」

>操咲「理由は知ってますから……。……けど、うん……今のお嬢様なら大丈夫だと信じていますよ♪」

アテネ「ええ♪大丈夫ですわ♪」

ま、書かないけどね…。

六花「書けないの間違いでしょう?」

……その通りでございます。

>九十九「だな!! そんでメシだメシ――――ッ!! ヒャッハーッ!!!」

>操咲「ごはんで上がるテンション相変わらず高いですねぇ!?」

>暁文「…………その際は毎回、睡蓮さんが作るがな。…………ところで毒が入ってたりもするかもだから気をつけろよ?」

>恭介「孤月海にお前はどんなメシを食わされたんだ……!? そしてハヤテは疲労感凄そうだなー……。まっ、頑張れやー♪」

九十九は上がりすぎでしょ、テンション!

六花「まあ、お昼は嬉しいものですけどね♪」

ハヤテ「暁文君には一体何が…!?」

アテネ「六花は毒なんか入れませんわよ!?」

ハヤテ「ま、まあ……頑張りますよ…」

そんな疲労感たっぷりに言われても…。

>操咲「ええー……!! ……それじゃあ次回も楽しみにしています♪」

>鉄虎「それじゃあ次回もリクエストがあれば言ってくれ♪」

はい!ありがとうございます!!

それで、リクエストはナルシェテク、ユーク、フェリス、テミューでお願いしゃす!

ハヤテ「しゃす…?」

………お願いします!!←(単に噛んだ)

>恭介「んじゃなっ♪」

六花「迅風さん、感想ありがとうございました♪」




では下から本編、第九話!!

どうぞ!!


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――





二人の話が終わり、お昼ご飯を理事長室にいたメンバーで食べ終わった時、ヒナギクがハヤテに話しかけた。

「そうだハヤテ君」

「なんです?ヒナギクさん」

因みに先程、ヒナギクはハヤテに名前で呼ぶように言っていた。

「放課後って空いてる?」

「えっと…」

そこまで言ってハヤテはアテネを見る。自分は執事。主のアテネに用事があるなら自分もそれを手伝うためである。

だが、それは杞憂であった。

「私の事はかまいませんわ」

そう言ってアテネは首を振った。

「え、でも…」

「あなたが心配するような事はありませんわ。だから、放課後は好きにしなさい」

「わ、わかりました…」

ハヤテは渋々と頷いた。

それを確認してヒナギクは再びハヤテに言う。

「放課後に学校を案内してあげるわ。だから放課後勝手にどこかに行かないでよ?」

「わかりました」

ハヤテが了解したことを確認し、ヒナギクは満足した様に頷いた。

「二人とも、もう時間になりますよ?」

六花の言葉に時間を確認すると、確かに昼休みが終わる時間であった。

「じゃ、いこっかハヤテ君」

「はい、ヒナギクさん」

そして二人は自分の教室へ戻っていった。





       第九話「そうだ、剣道をしよう」





時は過ぎ、放課後。

お昼休みの告知通り、ヒナギクはハヤテの席に来ていた。

「あ、ヒナギクさん」

「お待たせ、ハヤテ君」

「それじゃ、行きます?」

「あ、ちょっと待ってね?ナギー?」

ヒナギクは、少し遠くにいたナギを呼ぶ。

「何だ?」

「ちょっと、大神君を借りていい?」

その言葉にナギは眉をひそめた。

「何故だ?」

「ちょっと、白皇を案内してあげようと思ったんだけど……ダメ?」

「むぅ……別にダメな訳ではないが…」

そう言うナギの言葉はどこか困っているという感じがした。

「そうだな…私がついて行けばなんとかなるか…?」

「ナギ?」

何かブツブツと言っているナギにヒナギクは声をかけるが、ナギには聞こえていないようであった。

だが、少しした後ナギは顔を勢いよく上げた。

「ヒナギク!私も一緒に行くがいいか!?」

「え、別にいいけど……ハヤテ君もいい?」

「僕も別に構いませんけど…」

「そうか!おーい、零司!」

訝しげな二人を無視して、ナギは机に突っ伏していた零司を大声で呼んだ。

その声を聞き、零司はのっそりと起き上がりこちらに歩いてきた。

「んだよ…」

「今から、学校を案内してやるぞ!」

笑顔で零司にナギは話しかける。だが、

「別にいい」

あっさりと断った。

「いいから行くぞ!」

「だからいいっつてんだろ…」

「零・司?」

「チッ…わかったよ」

やっと折れた零司にナギは満足した様に頷いた。

「じゃ、じゃあ行こうか…?」

「うむ!」「は、はい…」「………」

三者三様の言葉に、流石のヒナギクも頬が引き攣っていた。







       *   *   *


場所は変わり、剣道場前。

四人は剣道場に来ていた。

「えっとここは…」

「剣道場よ♪」

「剣道場ねぇ…」

「あら、零司君興味あるの?」

「別に…」

零司もなんだかんだ言って、ちゃんとついて来ていた。

「ふん……剣道か…」

「あらナギ?またやる気にでもなった?」

「だ、誰がなるか!!」

そんな様子のナギを見て、零司は口を開いた。

「どうせ、スポーツやろうとして剣道やったら色々重くて特注しなきゃ出来ないからやめた。みたいな経緯だろ?」

「何でお前はそこまでわかるのだ!?」

「勘」

『勘!?』

思わず零司の勘に驚く三人であった。

「まあ、とりあえず……見学していいか、ヒナギク?」

「ええ、構わないわよ」

「んじゃ、遠慮なくっと」

零司は剣道場へと入っていった。

「じゃあ、私たちも行きましょうか」






「へ〜。人意外に少ないんですね…」

それが剣道場に入ってすぐのハヤテの抱いた感想だった。

「ま、元々この学校じゃ人気の無い部活だからね」

と、道着に着替えてきたヒナギクは応える。

「あ、ヒナギクさん、道着似合いますね♪」

「あら、ありがと」

そのやり取りを聞き、剣道部部員に動揺が走る。

(今あいつ…)

(桂さんの事…)

(ヒナギクって!!)

「おーい、ヒナギクー。竹刀はどこな訳?」

更に零司の言葉を聞き、またもや動揺が走る。

(なんだあいつ!)

(桂さんになれなれしくしやがって!)

(しかもあいつも名前で!!)

「少し待ってね。みんなに紹介したら一緒にやろうかハヤテ君、零司君」

(((ハヤテ君!?零司君!?)))

ヒナギクが二人を名前で呼んだことにより、部員達の動揺は最高潮になった。

「あ、本当ですかヒナギクさん」

「んー」

やる気のハヤテとやる気があるのか無いのかわからない零司。なんとも対照的である。

「でもヒナギクさん防具は…」

「なしじゃダメ?」

「そんなヒナギクさん」

そんな仲のよい会話を聞いて、部員達は今すぐに怒りが噴出しそうであった。

「じゃあ、顧問の先生に…」

ヒナギクがそう言いかけた時、

「桂さん!!こんな奴…うちで剣道させる事なんてないですよ!!」

一人の少年の叫び声が聞こえた。

「は?」

「おい!!そこの執事!!」

「はい?」「あ?」

少年に呼ばれ、聞き返すハヤテと零司。

「僕と勝負だ!!僕が勝ったら…ここには二度と来るなよ!!」

そう言う少年の目は燃えていた。

「ちょっ…!東宮君あなた――――」

「ま、勝っても負けてもこないがな」

「もぉ!!コラ!!」

ハヤテは乗ろうか悩んでいた。その時、

「いいぜ」

「……え?」

「やろうか?坊ちゃん?」

零司が返事をし、東宮の前に立っていた。

「ふふふ…面白くなってきたね…」

その時、どこから声が聞こえてきた。

「は!!バラ吹雪!!」

バラ吹雪と共に。

「主の為に剣となる…いい心がけだ」

そこにいた全員が声を追うと、入り口に氷室が立っていた。

「はあ…、そんな訳じゃないんだがな」

「ほう?しかし、君は東宮の坊ちゃんにに勝てるのかな?」

「勝てるだろ、弱そうだし」

「なんだと!?」

「やってみるか?」

そうやって、零司が構えた瞬間、

『―――っ!?』

零司の纏う空気が変わった。

それは、対峙していないハヤテですら軽く恐怖を感じる気迫。

なら、対峙している東宮はどうなるか。答えはすぐに出た。

「はぁ…はぁ…」

東宮は息を荒くし、膝をついていた。

「終わりか?」

「クッ…!来い!野々原!」

その言葉に東宮は悔しそうにした後、指を鳴らし人物であろう名前を呼んだ。

「野々原?」

「うちの執事さ!お前の相手はうちの執事…野々原楓がしてやるぜ!」

その東宮の声に人影が現れた。

「あ、という事でどうも。野々原楓でございます。東宮の家で執事などをやってる者です」

それは笑顔の優しそうな人だった。

「………………」

零司は野々原を値踏みするように見ていた。

(あの人も執事…)

ハヤテに関しては、感心するように野々原を見ていた。

「さあ野々原あいつだ!!今すぐあいつをやっつけてくれ!!」

「かしこまりました。…が、その前に…」

命令する東宮。その命令に了解する野々原。が、

ドカッ!

『………』

突然野々原が東宮を蹴り上げた。その行動に押し黙る一同。

「野…!野々原!お前、何を…!」

蹴られた事に混乱してる様子の東宮。

「お坊ちゃま?私、教えませんでしたっけ?」

そんな東宮を無視し、野々原は静かな怒りを背負いながら東宮へ話しかける。

「男なら…かなわぬ敵にもひとまず当たれと……。それなのに、戦わずして人に頼り自分は何もしないなど、そんな軟弱な男に…、育てた覚えはないぞゴルァ!!」

「ギャーーーーーーーーーーーーーー!!!!」

響き渡るお仕置きの音と悲鳴。

「でも、いいんですか?執事なのに…、あんなの…」

その光景を見て、ハヤテは思わず呟いていた。

「ん?何を言ってるんだ君は。我々執事は主の道具ではないからね。言われた事をただやればいいというわけではないよ」

そんな呟きに氷室が反応する。

「え?」

「かつて執事は貴族の長男にしかなる事を許されなかった高貴な仕事だった。つまりそれだけ責任があったということさ。主を正しい方向に導く…、責任がね」

「………」

氷室の言葉に無言でハヤテは聞き入っていた。

執事。自分の仕事の意味を改めてハヤテは認識していた。

「ガハッ!」

その声にハヤテが振り向くと東宮が柱に叩きつけられたところであった。

「す!すまん野々原!!わかった!もうわかったから!!」

「いーえ、今日という今日は許しません」

東宮が謝っても、野々原は許す気はないようであった。

「その腐った根性を…骨の髄から…叩きなおしてあげます!!」

「ぬあーーーーーーー!!」

その叫び声と共に、殴られる音が―――

「あんまり剣道場で暴れないで下さる?野々原さん」

響かなかった。

ヒナギクが野々原の太刀筋に入り、防御したからである。

「これはうちの教育方針ですので、あまり干渉しないでもらえますか?」

「悪いけどそういうわけにはいかないのよ。私、生徒会長だから、目の前で困ってる生徒を助けない訳にはいかないのよ」

流石。というべき言葉であった。

「たとえ東宮君が貧弱で泣き虫で情けなくても…助けない訳にはいかないのよ」

その言葉に後ろの東宮は見えない何かが刺さり、倒れていた。

「あれ?東宮君?」

「流石生徒会長。相手の急所を的確に粉砕するみごとな攻撃…」

「わ、私…急所なんて攻撃してないわよ!!」

「無自覚かよ」

慌てるヒナギクにツッコミを零司は入れる。

「くく…わかった…わかったよ野々原。やはり弱いのはダメだ…」

「お坊ちゃま!?」

倒れた状態から東宮はゾンビのように起き上がった。

「やはり男は戦ってその道を切り開かねばならないのだな!!」

「おお、お坊ちゃま、わかっていたただけましたか!!」

「というわけで!―――――――勝負だ三千院!!」

そして東宮はビシッとナギを指差した。

『………』

意味の不明な行動にまたもや押し黙る一同。

「……理由は?」

こめかみを押さえながら零司。

「くく…。わかったんだ間違ってるって事が!!主と執事が戦うのはやっぱ変!!ならば主VS主、執事VS執事で戦うべきだって事が!!」

「おお!!お坊ちゃまさすがです!!ようやくその事に気づいていただけましたか!!」

「はあ…」

東宮の理論に零司はこめかみを押さえたまま、溜息を吐いた。

「という訳で三千院!勝―――」

「ド却下」

「は?」

東宮を止めたのは、

「だからド却下っつてんだろ」

零司だった。

「お前の理論じゃ執事VS主が変だってんだろ?」

「ああ、そうだ!だから―――」

「なら、執事VS執事&主は変じゃないんだろ?」

「あ…」

零司のその言葉に東宮は情けない声を上げた。

その東宮の様子を見て、零司は続ける。

「問題ないな?じゃあ、」

スッと構えを零司はとる。そして、

「二人ともかかってこいよ…♪」

少し笑いながらそう言った。





――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――




第九話終了!

次は零司の戦いじゃあ!

ハヤテ「テンションがわからない!!」

という訳で、次回!

[管理人へ通報]←短すぎる投稿、18禁な投稿、作者や読者を不快にする投稿を見つけたら通報してください
Re: 誰がため、何のため 5/5更新 ( No.15 )
日時: 2012/05/12 19:28
名前: コサッキー

という訳で十話目!!

どうぞぉ!

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――



「……本当にいいんですね?」

それは、野々原が零司に対して言った言葉である。

それに、零司は肩を竦めながら応える。

「いいっつてんだろ。てかさ、そっちこそ二人でかかってくるんだからさ、」そこで一旦零司は言葉を区切り、好戦的な笑みを浮かべ「俺をがっかりさせんなよ…?」と言った。

「……いいでしょう。行きますよ、お坊ちゃま!」

「ああ!!」

そして、三人は対峙した。





「本当に大丈夫なのかしら、零司君…」

ヒナギクはその様子を見て、呟いた。

「ええ…。幾らなんでも二人を相手にするのは…」

ハヤテも同じであり、心配そうに見ていた。

「大丈夫だよ」

だが、零司の主であるナギはちっともそんなそぶりを見せずにいた。

「……ナギ?あなたは零司君が心配じゃないの!?」

「ちっとも心配ではないな」

「どうして!?幾らなんでも二人を相手には出来ないでしょう!?」

そんなナギの様子に激昂するヒナギク。だが、それでもナギの態度は変わらない。

「っ!もういい!今からでも私が―――」

煮えきらない態度のナギにヒナギクは自分が零司に加勢しようとした。その時、

「来るなよ、ヒナギク。足手まといだ」

他でもない零司に止められた。

「足手まといって…!」

「実際、足手まといだよ」

今度は零司では無く、ナギの弁。

「でもナギ!」

「まあ、見てろ。零司は負けないよ。絶対に」

確信に満ちたナギのその言葉に、二人は結局見守ることにした。




        第十話「零司の実力」




『………………』

静寂が場を包んでいた。

東宮も、野々原も、その場で対峙していないハヤテ、ヒナギクでさえも、誰も一言も発さず動いてもいなかった。ただ、例外として零司とナギは普通に動いていたが。

「ふわぁ…。どうした?かかってこいよ」

欠伸をしながら零司は二人を挑発する。

『………』

だが、二人は動かない。

その様子に零司はつまらなさそうに首を曲げた。

だが実際は、(動けない…!いや、動いたらやられる…!)と、野々原は考えていた。

対峙したときから自分に降り注ぐ威圧。それは零司から出ていた。

これまでに感じたことの無い威圧感。それは、確実に野々原を蝕んでいた。

そして、その静寂は東宮によって破られた。

「ずああ!!」

叫びながら、零司へと竹刀を振り下ろす。

零司はそれを悠々と受け止める。

「まぁ……お坊ちゃまだとこんなもんだよな…?」

「何を言ってる大神!お前の実力はこんなものなのか!」

東宮は今、零司と鍔迫り合いをしているのが自分の実力だと思っているのか、そんな事を言う。

零司はそんな東宮の言葉を無視し、「ま、つまらんからこいつは叩きのめすか」と呟いてるが東宮の耳には入っていないようだった。

「よっと」

そして、零司は鍔迫り合いをしたまま一歩下がる。

「うわっ!?」

すると、東宮はバランスを崩し前につんのめった。それを零司は逃がさなかった。

「せいやー」

気の抜けた声と共に竹刀を振り下ろし、声とは裏腹にスパーン!!と大きい音が剣道場に響いた。

「さって、お次はあんただ」

倒れた東宮を無視し、零司は野々原へと向き直る。

「くっ…!」

「んじゃ、今度はこっちからな!」

その言葉と共に零司は野々原へと迫る。

「ふっ」

一息入れるように零司は竹刀を胴へ走らせる。

「はっ!」

だが、それを野々原は防御し、竹刀を弾く。そしてそのまま、面へと竹刀を振り下ろす。

「おぉっと」

それを零司は竹刀の柄で防ぎ、そのまま大きく一歩後ろへ下がる。

「中々やりますね…」

「まあな」

そう言う野々原には緊張が見られたが、零司には見えない。そこから、両者の余裕の違いが見えた。

「ほれほれ、もっと来いよ。何か隠し持ってて勝てると思ってんの?」

「ふっ…。そうですね…、私も本気を出さないと勝てないようですね…」

その言葉を聞き、零司は指を挑発するように二回曲げた。

「行きますよ!超爆裂炎冥斬!!」

野々原がその言葉と共に竹刀を振り下ろすと、炎の竜が零司に向かって飛んでいった。

「げ」

そして、零司のいた場所を炎の竜が包んだ。





「あの…今のはなんですか?」

今見た光景が信じられないのか、ヒナギクは氷室へ質問する。

「何ってそりゃ…超必殺技に決まってるじゃないですか…」

氷室は当たり前の事と言う様に応えた。

「一流の執事ともなれば超必殺技の一つや二つ……持ってて当然。いや、持ってなくてどうしますか」

(執事って…)

執事について疑問に思うヒナギクだった。





そして、場面は戻り零司と野々原の所へ。

煙の立ちこめる中、野々原は立っていた。

(ふう…やりましたか…?)

そうやって安堵の息をついた時、

「いやー、流石に驚いたわ」

煙の中から零司の声が聞こえた。

「まあ、別に無傷だけどな」

その言葉と同時に煙が晴れる。そこに立っていたのは、無傷の零司だった。

「な、なんですって…」

驚きが隠せない野々原。先程の技はかわせる距離ではなかった。なのに零司は無傷。それは、野々原には大層なおどろきだった。

「ま、あれ見てみ?」

そう言って零司は自分が先程立っていた場所を竹刀で指す。

そこには―――、

「お坊ちゃま!?」

気絶した東宮がいた。……若干焦げた状態で。

「悪いが盾にさせてもらった」

「くっ……。なら、もう一度です!」

「やってもいいけど…。もう見切れるよ?それ」

「超爆裂炎冥斬!!」

零司の忠告を無視し、野々原はまた炎の竜を打ち出す。だが、

「話は聞くもんだぜー」

軽い調子の言葉と共に、零司は炎の竜を横に跳び、避けた。

「なっ!?」

その光景に目を見開く野々原。

「それ、直進でしか打てねえだろ?なら簡単。竹刀をちゃんと見てれば軌道がわかって避けれるって事」

零司はさも簡単というように言っているが、実際には難しいだろう。竹刀を見て避けるということは、避ける挙動が一拍遅れるという事でもある。それを平然とやってのけるのは、零司の身体機能が高い事の証拠でもある。

「さって…」零司は首を鳴らしながら「もう終わらしていいか?あんたには飽きた」と告げる。

「そうはさせませんよ…」

そう言って野々原は構える。だが、震えているようにも見えた。

「超爆裂炎冥斬!」

三度炎の竜を打ち出す野々原。再び炎の竜が零司に向かおうとした時、





零司の姿が消えた。比喩ではなく実際に。





零司を探そうと首を巡らした時、

「後ろだよ」

背後から零司の声が聞こえた。

「!!」

「めーん」

振り向こうとした瞬間、竹刀が野々原の頭に振り下ろされていた。






        *    *    *


つまんない。

それが俺、大神零司が二人を倒した後の感想だった。

東宮は弱い。それは確かだ。

野々原さんは弱いって訳ではないだろう。でも、俺からしたら弱い。

周りを見ると俺を何か化け物の様に見る視線が多い。

そんな視線慣れてる。

ヒナギクは驚きの視線。

まあ、ゴチャゴチャ言ってたからな。勝って驚いた。ってとこだろ。

チビ嬢に関しては目が輝いてるし…。

ま、いっか。

と、そこまで考えていたら、今までの視線とは違う視線を感じた。

その視線を追うと、俺と同じもう一人の転校生、綾崎ハヤテだった。

その視線は違った。

周りの奴のように畏怖でもない。ヒナギクのように驚嘆でもない。チビ嬢のようにでもない。

畏怖。驚嘆。羨望。期待?そんな感情が混ざった瞳。

そして、纏う雰囲気が他の奴とは違った。

何かを乗り越えた。そんな感じの雰囲気だった。

「あの…、大神さん」

そんな事を考えてると、綾崎が俺に話しかけてきた。そして、

「僕とも、戦ってくれません?」

そんな提案をしてきた。





         *    *    *





「僕とも、戦ってくれません?」

ハヤテは気づけばそんな事を言っていた。

零司の戦いを見てから気分が高揚していたのも一つの要因だろう。

「……ああ、いいぜ」

零司はそんなハヤテの提案を受けてくれた。どこか人と壁を作ってるように思っていたハヤテは正直、少し嬉しかった。

「……ありがとうございます」

「ちょ、ちょっと待ってハヤテ君!」

ハヤテがお礼を言い、対峙しようとしたときヒナギクにハヤテは腕を掴まれた。

「さっきの見たでしょ!?怪我するわよ!?」

「……確かにそうかもしれませんね」

「だったら!」

「うぜーよ、ヒナギク」

止めようとするヒナギクは零司の言葉で動きを止めた。

「一々邪魔しようとするんじゃねぇよ」

「邪魔って何よ!」

「それが邪魔だ。これは綾崎が提案してきた事だ。だから、お前が口出すのはおかしいんだよ」

零司の言ってることは正論であろう。だがその言葉を聞いても、ヒナギクは引き下がろうとはしなかった。

「私はただ―――」

「うっせえっつってんだろ!」

「!!」

いきなりの零司の大声にヒナギクは全身を強張らせた。

「てめえが生徒会長だからって調子に乗ってんじゃねぇのか?いいから黙っとけ、いいな?」

「………!!」

ヒナギクはその言葉を聞き、俯いてしまった。

「じゃあ、やろうか?綾崎」

「……ええ」

ハヤテは零司の前へと移動する。

「……っ」

ハヤテはそれだけで実感してしまった。

(何ですか…!この気迫は…!)

目の前に立つだけでわかる、零司の気迫に。

でも、立っていても始まらない。

「行きますよ!」

そう言い、ハヤテは零司へ向かっていった。

「はぁあああああ!!!」

ハヤテは勢いよく竹刀を横に振るう。

「っ!」

でも、それは零司に難なく防がれた。

「はっ!!」

そしてそのまま受けた勢いを利用し回転、そして突きを零司は放つ。

それを何とか防ぎ、後方へハヤテは下がった。

『………』

そして二人はまた見つめあうように対峙する。

『………!』

そしてまた同時に駆け、そのまま数合打ち合う。

それを何回も続けた。

そして、何回かわからなくなった頃。

「はあ……はあ……」

「はっ……はっ……」

二人は互いに息切れしていた。

(やっぱり……思ったとおり…強い…)

「くくっ…」

ハヤテがそんな事を考えていると、零司がいきなり笑い出し「おもしれぇ…!」そして、笑いながらそんな事を言った。

その顔からは歓喜といった感情が見れた。

「いいぜ…!立てよ綾崎…!」

「ええ…!立ちますよ…!」

そうして、二人は同時に笑いながら立った。

「綾崎…。少し本気出すぞ…」

「本気…?」

「ああ、本気だ」

本気を全く出していない事に驚くハヤテ。

だが、零司はそんなハヤテを無視し、息を整える。

(来る…!)

その様子を見て、ハヤテが構えた瞬間、




零司がハヤテの視界から消えた。




「え…」

ハヤテはその事に呆然とした。

(消え…た…?)

人間が消えるなどありえない。だが、実際にハヤテの目の前で零司は消えた。

「くっ…!」

急いで周りをハヤテは見渡すが、零司の姿は見えなかった。

(一体どこに…!まさか、本当に消え―――)

そこまで考えた時、

ゾワッ!!

(―――!?)

ハヤテの背中を寒い物が通った。

それを振り払うように、ハヤテは竹刀を背後に振った。すると、

バシィン!!と竹刀の当たりあった大きな音がした。

「え…?」

ハヤテは音のした後ろへ振り返ると、そこには驚いた表情の零司がいた。

「マジかよ…!?」

すぐ近くの零司は驚いた声を上げ、その場に止まっていた。

(今だ!)

その隙をハヤテは逃がす事無く、攻勢へと出た。

「はぁあああああああ!!!」

「くそっ…!」

面、胴、小手それぞれへ竹刀を走らせていく。普通の人なら確実にたおされていただろう。だが、零司もそれを必死に防いでいく。それでも、そのときの勢いはハヤテにあった。

「はあっ!!」

「ちっ…!」

ハヤテの気合の一閃を防ぎ、零司は後ろへと下がった。

「……っ!」

そしてまた、ハヤテの視界から消えた。

(また…!)

ハヤテはさっきと同じく周りを見渡す。だがやはり零司の姿は見当たらなかった。

「一体どこに…!」

と、言ったとき。

ゾクゥ!!

先程と同じ寒気が今度は右腕を通った。

(また―――!?)

またそれを振り払うように右腕の方向へ竹刀を振る。

するとまた、パァン!と竹刀同士が当たり合う音が響き、竹刀の先には零司がいた。

「二度目…!?」

零司が驚いた声を出し、硬直した。

それをハヤテが逃がす訳も無く、また攻めへ転じた。

「やぁっ!」

零司の竹刀を横に弾く。それにより、零司はバランスを崩した。

「まずっ…!?」

零司が慌てた声を出すが、もうすでにハヤテは突きの構えをとっていた。

(これで、終わりだ!)

「はぁっ!!」

ハヤテが突きを零司に向かって、放つ。

「舐めん…な…!」

だが、バランスを崩した状態から、零司は上体を反らし避けた。

その時、零司の首から何かが飛び出し、ハヤテの竹刀の先に当たり、飛んでいった。

「っ!!?」

それを見た零司は顔色を変え、不安定な状態のまま飛び出した何かへ飛びついた。

「ちょっ、大神さん!?」

ハヤテが驚いた声を出すが、零司は空中で何かをキャッチし、そのまま壁へと突っ込んで行った。

「だ、大丈夫ですか!?」

そう言って零司へ駆け寄ろうとした時、零司はゆっくりと立ち上がった。

「……………」

零司は俯き、顔は見えなかった。

「大神さ―――」

ハヤテが声をかけようとした時、俯いた零司の眼がハヤテと合った。





その瞬間、ハヤテは膝から崩れ落ちていた。





(今……のは………一体…!?)

零司の眼。それは憎悪の混じった眼であった。それを見た瞬間、ハヤテは全身の力が抜ける感覚がした。

(それより、この、感、覚は?一、体、何が、起こって、る?)

倒れているハヤテが感じている感覚。それは、心臓を直接掴まれているような感覚であった。動いたら死ぬ。それを感じさせる程の感覚でもあった。

「はは…っ」

突如、そんな声が零司の方から聞こえてきた。

「やめだ、やめ。決着つかねぇや!」

その声はどこか嬉しそうであった。

その直後、ハヤテの方へ足音が近づいてきた。

「立てるか?」

そんな声と共に、ハヤテの前に手が差し出された。

「ええ、何とか…」

差し出された手を取り、ハヤテはフラフラと立ち上がった。

「楽しかったぜ♪」

「ええ…、僕もです…」

零司には疲労が見られず、笑顔。若干ハヤテは疲労が見られるが、楽しかったのは事実なのか笑顔であった。

「ま、これからもよろしくな、ハヤテ」

「はい!これからもお願いします、大神さん!」

「いや、零司でいいから」

そう言って、二人は握手を交わした。







その後。剣道場の前にて。

「んで、チビ嬢。どうだった?」

零司は傍らのナギへ感想を聞いていた。

「う、うむ……かっこいいとは…少し思ったが…」

「そりゃよかった」

その反応をみて満足する零司。

「じゃあ、やる気になった?」

少し期待したようにヒナギクがナギに聞く。

「いや、やらないけどな♪剣道の防具って凄く汗臭いし♪」

だが、ナギは満面の笑みでそう言った。

ピシッ!!とその言葉に剣道部員達が青筋を作る。

その微妙な空気に気づかずナギは続ける。

「大体よくこんなものつけて運動する気になるな…それに―――」

『剣道をバカにするなーーー!!!』

とうとう我慢の限界を迎えたのか、剣道部員達が一斉にナギへと怒鳴った。

「わーーーーーーーーー!?何をするのだ!!」

そして、そのままナギを囲ってしまい、中からはナギの叫び声だけが聞こえた。

「バカが…」

「あはは…」

それをハヤテは苦笑し、零司は呆れたように見ていた。







       *    *    *






その日の夜中、零司は仕事を終えた時の事。零司は帰路につきながら独り言を言っていた。

「あー…今日は楽しかったねぇ…♪」

その表情は笑顔であった。

「にしても…」そこまで言って首元からあるものを取り出し握り「まさか切れるとはな…」と言った。

その手の中にある物は星の形をしたネックレスであった。

「危うくキレそうになりそうだったしよぉ……俺が」

そう言う零司はその時の光景を思い出す。

ハヤテの突きを避けた時に飛んでいったネックレス。その時は頭が真っ白になった。

「ったく……でもま、ハヤテがあんなに強いとは思わなかったし……しゃーねーか♪」

油断していた自分が悪い。そう思って零司はネックレスを戻しまた笑った。

とその時、『コ……チ…エ…』と言う声が零司の頭に響いた。

「……っ」

その声を聞いた途端、片手で顔を覆い、零司はふらつき壁に手をついた。

「ちっ…」

だが、舌打ちをし、すぐにまた歩き始めた。

(あーあ……いつまでもつかね…?)

そう思いながら、零司は帰り道である公園に入った。

「さて、今日の晩飯は何やら。って、ん?」

そう言いながら公園の真ん中までに来た時に零司は足を止めた。

それと同時に何人かが公園のあらゆる所から出てき、零司を囲んだ。

「……あんたら、何?」

「へっへ、いやなに。ちょいと金貸してくれねぇかな?」

「やだよめんどい」

そう言って集団の中から出ようとする零司。

「待てよ、金くれって言ってるだけだろが。置いてかねぇと酷い目にあわせんぞ?あぁ?」

その零司の前に一人の男が立ち塞がり、零司に向かってナイフを突きつけた。

「うーわ、めんど」そう言って零司は額を押さえ「………ストレス発散になるか」と聞こえないように呟いた。

「何ブツブツ言ってやがる?」

「あー、何でもねぇよ。ところでよぉ…」前にいる男の腕をつかみ「嫌な事あったから、サンドバッグになれや…♪」迫力のある笑みでそう言った。







三分後、男達はぼろ雑巾の様に公園に突っ伏していた。

「やっべ、やりすぎた」

その真ん中で零司はそう言った。

ある者は血を流し、ある者は腕が変な方向を向いていたり。

「ひとまずあの人に電話するか…」

そう言って、携帯を取り出すとある番号へとかけた。

プルルル…。プルルル…。少しのコール音の後、ガチャ、と電話を取る音が聞こえた。

『もう向かわせたわよ?零司君♪』

「……まだ何も言ってません」

もしもし、と言う暇も無く相手は自分の頼もうとしていた事を言い当てた。

『ま、わかってたしね♪』

「それでも毎回毎回先に言うのはやめてもらえませんかねぇ!!」

『電話代の節約よ?』

「あんたそこまで金に困ってないよなぁ!?」

『まあ、単に反応を楽しみたいだけよ♪』

「だろうと思いましたよ!!」

『まあ、それはいいとして。零司君が八つ当たり何て珍しいわね』

「まあ…」

ふざけたテンションから真面目なテンションに変わった事に零司はついて行けず、曖昧に返事を返した。

『ま、程々にね?出来る限りフォローはするけど……限度超えたら、絶望させちゃうぞ♪』

「はい。絶対に程々にします」

電話の相手を知っている為、零司は若干怯えながら答えた。

『じゃあね、零司君♪おやすみ〜』

「……おやすみなさい」

その会話を最後に電話は切れた。

「………ま、後は任せて帰りますか」

そう言って零司は暗闇へと歩を進めていった。





――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


はい、第十話終了!

ハヤテ「零司さん強すぎませんか…?」

そう?これくらい普通じゃない?

零司「だよな」

ハヤテ「えぇ!?」

でもまあ……結論が零司は謎!だよね。

零司「そりゃそうだ」

でもまあ、追々明かすさ…。

何はともあれ次回!!ではまた!!
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Re: 誰がため、何のため 5/12更新 ( No.16 )
日時: 2012/05/19 17:01
名前: コサッキー

では、第十一話!

やっぱ駄文だね!

零司「今更だな」

ハヤテ「あはは…」

うるさいわ!では、どうぞ!



――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


ある日の休日。ハヤテは屋敷内で掃除をしていた。

「えっと……これはこれで、あれはそれで…」

掃除の用途によって道具も変え、手際もよいことからものの数分で掃除も終わった。

「ふう…次は隣の部屋を…」

そう言って、部屋のドアを開けたとき、

「……………(トテトテ)」

和服を着た少女がハヤテの前を通っていった。





     第十一話「執事のある休日」




「えぇええええええええええええ!!??」

その光景を見たハヤテは思わず叫んでしまっていた。

「どうかしたんですか?ハヤテ君」

その声を聞きつけ、どこからかともなく六花がやってきた。

「あ、六花さん!い、今知らない女の子が僕の目の前を…!」

「女の子?……どこにもいませんよ?」

「……へ?」

その言葉にハヤテは周りを見渡すが、確かに六花の言う通り、女の子なんてどこにもいなかった。

「……嘘ですか?」

「嘘なんかじゃないですって!今確かにいたんですよ!!」

「熱は…ありませんね」

「ですから!」

スパァン!と音と共に尚も食い下がるハヤテの頭に箒が当たった。

「いいから、掃除をしましょうね♪」

「は、はい…」

笑顔の六花から漏れるオーラが怖くて結局頷いてしまうハヤテであった。





      *    *    *





今度は庭をハヤテは掃除していた。

「はあ…」

溜息をつきながら、箒を動かす。

「六花さん怖かったなぁ…」

……呟きの内容は何とも情けない内容であったが。

「結局あの後話しても信じてもらえなかったし……僕って信用ないのかなぁ…?」

因みに、六花はハヤテの事をかなり信用している。今回はあまりにも突拍子な内容であった為、信じなかっただけである。

「はぁ…」

「溜息ばっかりついてると幸せが逃げますよ?」

「あ、六花さん」

最早何度目かわからない溜息をついた時、後ろから六花に声をかけられた。

「それで、幸せはどうするんです?元から不幸なのに手がつけられなくなりますよ?」

「ぐっ!」

六花の言葉に胸を押さえるハヤテ。わかっている事を言われるのはダメージが大きいのであろう。

「まあ、事実は置いといて…」

「事実って言わないで下さいよ!!」

ハヤテが怒鳴るが、六花はクスッと笑っただけだった。

「まあ、お昼ごはんにしましょうか♪」

「はい…」

そこまで言って二人が歩き出した瞬間、

「………(ふら〜)」

先程ハヤテが見た和服の少女が二人の目の前を通った。

「………あの、六花さん?」

「………えっと…とにかく…鷺ノ宮さん?」

「……?」

六花に鷺ノ宮と呼ばれた女の子はこちらへ振り向いた。

「あ…志姫さん……偶然ですね…」

「いえ、ここは天皇州の屋敷ですけど…」

「え…?」

少女は周りを一通り見渡すと、首を傾げた。

「何故私はここに…?」

「さあ…?」

「あの、六花さん…。一体この子は…?」

ああ、とハヤテの言葉に六花は気づいたように二人の間に立った。

「ハヤテ君、こちらは鷺ノ宮伊澄さん。鷺ノ宮さん、こちらは天皇州家執事の綾崎ハヤテ君です」

「あ、どうも…」

「こちらこそ…」

六花に互いに紹介され、二人はそれぞれ頭を下げた。

「ところで、何故鷺ノ宮さんはここに?」

「いえ…ナギの家に行こうと家を出たのですが…いつの間にかここに…」

「えっと…それって…?」

「まあ…平たく言うと、迷子ですね。それもかなりのレベルの」

「ひ、平たく言わないで下さい…!」

図星を言い当てられ、伊澄はパタパタと着物の袖を振って講義するも、その光景がかえってハヤテに信憑感を与えた。

「さて、鷺ノ宮さんの家の人に迎えに来てもらうか、ハヤテ君が送るか…」

「何で僕が送るのが選択肢に入ってるんですか!?」

「気分です♪」

「え、えっと…迷惑ですから、自分で行きます…」

「「無理です」」

二人同時に否定され、伊澄は俯いてしまった。

「まあ、結局ハヤテ君が送っていきましょうか…」

「だから何でそうなるんですか!?」

「まあまあ」

「だからですね!?」

「男の子がゴチャゴチャ言うもんじゃないですよ?」

その言葉と共に箒がハヤテの頭に当たり、ハヤテはそれ以上何も言わないことにした。

「しかたないですね…。選択肢をあげますからどちらかを選んでくださいね?鷺ノ宮さんもいいですか?」

六花の言葉に二人は同時に頷く。

「ではまず一つ目」そう言って六花は人差し指を立たせ「ハヤテ君が鷺ノ宮さんを三千院さんの屋敷まで送っていく」続けて中指を立たせ「二つ目。鷺ノ宮さんの家に迎えに来てもらい、そのまま行く」

「それなら、後者を―――」

選ぼうとしたハヤテの言葉を遮り、六花は続けた。

「ただしハヤテ君は鷺ノ宮さんを見送った後に、まだ寝ているアテネ様を起こしてもらいます。……先程見たらあられもない格好でしたけど」

「ぶほぉ!?」

あられもない格好というところに反応し、吹きだすハヤテ。

「あられもない格好とは…?」

それとは対照的にあられもない格好に疑問を持った伊澄。

「そうですね、説明すると―――」

「説明しなくてもいいですよ!?」

「じゃあ、ハヤテ君♪選んでくださいね♪」

「何でこの状況で!?」

「いいからいいから♪早くしないと後者に強制的にしちゃいますよ?」

「えぇええええええええ!?」

そして結局、

「僕が伊澄さんを送って行きます…」

ハヤテが折れることになった。

因みに、その時の六花は妙にいい笑顔だったとか。






       *    *    *

同時刻、鷺ノ宮家。

そこでは黒服たちが右往左往していた。

「伊澄お嬢様はどこだ!?」

「またいなくなったか…!」

「先日は北海道まで迷子になったというのに…!」

「とにかく探せ!!草の根を分けてでも探せ!!」

「もし、誘拐犯でもいたらそいつをボコボコにするんだ!!」







同じく同時刻、三千院家。

「なあ、チビ嬢」

「なんだ、零司?」

「鷺ノ宮遅くね?」

「どうせまた迷子にでもなっているのだろう…。このっ…!」

「またねぇ…。最早迷子がデフォルトだな、鷺ノ宮。これで終わりっと」

「あぁーーー!!」

叫ぶナギ。二人の前の画面には『2P WIN!』の文字が浮かび上がっていた。

「んじゃ、腕立て五回な」

「もう一回!もう一回だ零司!!」

「ド却下。さっさとやれ」

唸りながらも零司の言葉に従って、ナギは遅くも一回ずつ腕立てをこなしていった。

それを見ながら零司は思考を巡らせる。

(迷子ねぇ……。まあ、勘に従ってみますかね)

「あら?もう終わったんですか、零司君?」

その声に振り向くと、三千院家メイドのマリアがお茶を持って来ていた。

「ええ、まあ」

「今回も零司君の勝利ですか…。いつもごめんなさいね、ナギの相手をさせて」

「いえいえ、こっちも楽しいですから」

「それならいいんですけど…」

「終わった……ぞ…零司…」

マリアと話していると、ヘロヘロのナギがこちらに向かって歩いてきた。

「お疲れさま、ナギ」

そう言ってマリアはナギへお茶を渡す。

「本当に体力無いのな、チビ嬢」

「お前と違って、私は体力バカではないのだ」

「へーへー。あ、そうだマリアさん」

「はい?」

「ちょっと出てきていいですか?」

「何でですか?」

「ちと、鷺ノ宮探してきます。どうせ迷子でしょうから」

「ああ…」

その言葉に何となく納得してしまったマリアであった。

「じゃあ、ついでにお買い物もお願い出来ますか?」

「いいっすよ。ついでに行ってきます」





      *    *    *





ハヤテが伊澄と共に屋敷を出てから数十分が経ち、ハヤテたちは、

「あの…伊澄さん…」

「何でしょうか…?」

「三千院さんの家に向かう道って…こっちで合ってましたっけ…」

「……えっと…」

「……………」

迷っていた。それもかなり。

「………どうしましょうか」

「ど、どうしましょう…」

何も案が浮かばず途方に暮れるハヤテと伊澄。

(何かこれが必然な気がしてきた…)

ハヤテの考えることは最もであるかもしれない。不幸のハヤテと迷子になることに関してのスペシャリストである伊澄。その二人が一緒にいる時点で必然であろう。

(それに…)そこまで思って自分の右手に握っている布を見て(これは出したくないし…というか、銃刀法違反だし…)と思い溜息をついた。

そして、ハヤテの隣にいる伊澄に、

「と、とりあえず歩いてどこか見たことのある場所まで行ってみましょうか…」

「はい…」

そうやって歩くこと数分。

そのうちにハヤテ達は公園まで来ていた。

ここで一息つこうとハヤテが思った瞬間、

「いたぞーーー!あそこだーーー!」

大声が聞こえた。

「え?」

ハヤテが声に振り向くと、黒い服の男達がハヤテ達を囲んだ。

「見つけたぞ…!」

「さあ、その子をおとなしくこちらに渡してもらおうか!!」

その中から二人が出てきてそう言った。

その言葉を聞き、ハヤテは(なんだこの黒服の怪しい人達は…まさか誘拐犯か!?)と思い、
その一方で男達は、ハヤテを見て(なんだこの黒服の怪しい少年は…やはり…誘拐犯か!?)と思った。……はたから見れば両方とも怪しいだろう。

ハヤテが身構えると、男達はどこからか日本刀を取り出した。

「だったらこの…何でもよく斬れるこの日本刀で、叩き切ってやる!」

「それはどこから出したんですか!?というか銃刀法違反ですよね!?」

『やってしまえーーー!!』

ハヤテの言葉にも耳を貸さず、男達は日本刀を構え、ハヤテへと襲い掛かってきた。

「えぇ!?ちょ!?ああもぉ…!伊澄さんちゃんとつかまってて下さいね!」

ハヤテは伊澄を抱え、木々を飛んでいった。

「あ!!」

「逃げたぞ!!」

その言葉を背後に聞きながらハヤテはその場を逃げるように去った。






「くそっ!!追え!追うんだ!!」

逃げたハヤテを追おうとした男達。その前に一人の口に棒つき飴をくわえたフードをかぶった少女が立ち塞がった。

「何者だ!」

「……名乗る必要なんてないわよ。どうせ、すぐに意識失うんだし」

「お前…!まさか、さっきの男の仲間か!」

その言葉に少女は口にくわえていた棒つき飴を口から出し少し考えるそぶりを見せた。しかし、すぐに飴を口に戻し、「まあ…仲間じゃないわね」と答えた。

「だったらそこをどけ!!」

「え、嫌よ。だってさ…」太ももへ手を這わせ「私の目的今から果たすからさ♪」スカートを翻し、二丁の拳銃を取り出し男たちへと向けた。

「なっ!?」

「じゃ、ちょっと寝てなさい?」

驚く男達を尻目に少女は銃の引き金に指をかける。

そしてすぐに、ガガガガガガン!!と公園中に銃声が響いた。






「任務完了っと」

倒れ伏す男達を前に少女は伸びをしながら呟いた。

「んな訳無い無い」

「ん?」

背後からかけられた言葉に振り向くと、亜麻色の髪色をした黄色の目の青年が立っていた。

「なんだ、ネイファか」

「なんだじゃねえっつの。やりすぎだろうが、菊花」

「……まあ、そうかもね。てか、暑い…」

少女がそう言ってフードを取ると、その下から現れたのは、ハヤテの隣の席である蓑実早菊花その人であった。

「でも、いいでしょ?私は任務達成する為にやった訳だしさ」

「いやまあ…確かにそうだがな?お前なら別に銃使う必要なかったよな?」

ネイファの言葉に、菊花はこれ見よがしに溜息をついた。

「あのさぁ…私はあんた程接近戦に慣れてないわけ」まだしまっていない銃を掲げ「だから、こっちの方が楽なわけ。いい?」と言った。

「あー、わかったよ。だから仕舞えっつの」

多少不満な顔をしながらも菊花はその言葉に従い、スカートの中のホルスターへと銃を仕舞った。

「んで、なんであんたがここにいるのよ」

「そりゃ、お前を見かけたからだが?」

だから当然、といわんばかりの言い方に菊花は頭を抱えたくなった。

(いや、わかってたけどさぁ…。だからって、普通来る?)

「まあ、俺だし諦めろって♪」

「心を読むんじゃないわよ!!」

それもただ笑うだけでかわされ、菊花は先程よりも深く溜息をついた。

「ま、それは冗談じゃなく本気だが」

「お願いだから冗談にして…」

「無理無理♪ま、何か奢ってやるぜ?何がいい?」

「ケーキ一個と飴十五個」

「早いなおい!」

「別にいいでしょ。とっとと行くわよ」

引っ張るな!とそばで叫ぶネイファの言葉を無視して、菊花はネイファを引っ張りながら公園を出て行く。

公園から出て、道路に差し掛かった時、けたたましいクラクションが菊花の耳に聞こえてきた。

「……何あれ」

その音を辿った先には、こちらへ一直線に突っ込んでくる車があった。

「まあ、どう見たって銀行強盗だよな。後ろに縛られてる女の人いるし」

「見えないってば」

だんだん近づいてくる車をよく見ると、確かにネイファの言った通り、人質らしい女の人と覆面をかぶった男達が乗っていた。

スカートの上からホルスターにさわり、菊花は車を止める方法を思索し始める。

(車輪撃つのは…歩道に突っ込んだら危ないわね。運転手を直接狙うのは論外。電柱とか撃って障害物にするのは…まあ、ダメよね。電線危険だし。……あれ?何も出来なくない?私)

自分の今出来る選択肢にショックを受けていると、ネイファがいつの間にか菊花の前に立っていた。

「ま、俺がやるしかないよなー♪」

「………むかつくけどそのようね…」

「オッケーオッケー。んじゃ、ちょいと止めてくらぁ」

そう言うとネイファは向かってくる車へと向かっていった。

「さってさて、どうやって止めるべきか…」

ネイファが顎に手を当てて考えている間にも車との距離は縮まっていく。

「ま、普通にやっか」

その言葉を言い終わると共にネイファは車に向かって走り出した。

その行動に予想外という様に覆面の男達は目を見開いた。その間にも車との距離は近づく。

そして、車との距離が数メートルになった時、ネイファは跳躍した。

そして、空中で足を上に振り上げ、それを車のボンネットに向けて振り下ろした。

ゴシャァ!!と、音を立てて車は停止した。

「ま、こんなもんだろ」

前がひしゃげた車を見下ろして、ネイファはそう口にした。

「あんたの方がやりすぎよ…」

「まあまあ」

菊花がジト目で睨んでくるが、ネイファはそれを笑ってスルーした。

「ま、ひとまず人質救出」

車の後ろのドアを開け、ネイファは縛られてる女の人を車から出した。

「あ、あの…ありがとうございます…」

「いえいえ〜。まあ、他の奴は気絶してると思うんで警察に頼んでおけば大丈夫でしょうね♪あ、それと…」そして何か思い出したように、ネイファは女の人の唇に手を当て「俺らの事は秘密で♪」笑顔で言った。

「は、はい…」

その笑顔に女の人は頬を染めていたが、ネイファは気づかなかった。

「ありがとうございます♪それじゃ♪」

また笑顔を向け、ネイファは菊花と共に去っていった。





      *    *    *





そして、場面はハヤテ達へと戻る。

「はぁ……はぁ……」

商店街の手前でハヤテは息を整えていた。

「大丈夫…ですか…?伊澄さん…」

「え、ええ…大丈夫です…」

そう言う伊澄の顔は赤かったがハヤテは疲れたのだろうと勘違いして納得していた。実際は単に恥ずかしかっただけであるが。

「それにしても…いつになったら三千院さんの家に着くんだろうか…」

「まあ、お前らじゃなきゃさっさと着いてるだろうな」

「その言い方は…酷いです…」

「いやまあ、事実だけどな」

「だとしても言わないで下さいよ零司さん…………って、え?」

そこで違和感に気づき、横を見ると、

「よっ」

買い物袋を持った零司がいた。

「れ、零司さん!?いつからそこに!?」

「『それにしても〜』からだが?」

「全く気づかなかったんですけど…」

「まあ、気配消してたしな」

「何で僕の周りの人は気配を簡単に消せるんですか…」

「修行しろ、ハヤテ」

肩に手を置かれ、ハヤテは本気で修行しようか…と思った。

「んで、何で鷺ノ宮とハヤテがいる訳?」

「えっと…」

ハヤテがこれまでの経緯を説明した。それを聞きながら、零司は表情をだんだん呆れたものに変えていった。

「あのなぁ…最初から三千院家に電話すりゃいいだろうが…」

「「あ…」」

「今更気づいたのかよ!?」

その反応に零司は本気で呆れていた。

「まあ、俺に会えてよかったな。じゃなきゃ一生着かなかっただろうな…」

「う…。……ところで零司さんは何でここに?」

「ん?ああ、俺か?俺は鷺ノ宮探すついでに買い物頼まれた」

「私を探すのが主とはどういう事ですか…!」

伊澄が零司をペチペチと叩くが、零司はそれを気にもしてなかった。

「まあ、あと少しで買い物も終わるしさ。ついてきてくれや」

ほっといたら迷うであろう二人は素直に頷いた。

「んじゃ、薬局へGO?」




そして、薬局。

「ここでは何を…?」

「ああ、これは俺の買い物だけどさ。まあ、色々買うから時間かかるし…ブラブラしてていいぜ」

そういい残すと、零司は店の奥へと進んでいった。

「それじゃあ、伊澄さん。僕たちもそこらへんで―――」

ハヤテがそう言いかけた時、

「動くなガキ…」

背中に硬質な感じの物体が押し当てられた。

(あれ?デジャブ?)

以前似たような体験をしたおかげか、ハヤテは特に動じずにいた。

「ハヤテ様…あの…後ろの方は一体…」

「……誰なんでしょうか?」

何ともボケッとした会話である。

「動くなっつてんだろ!!」

怒声と共に背中に感じる感覚が鮮明になっていった。

(あー…やっぱこれ、銃かぁ…)

「あの、あなたは誰なんですか?」

「うるせぇ…うるせぇよ…いいから動くんじゃねぇよ…」

荒い吐息が耳に聞こえてきた為、不審に思って目だけで後ろを向いてみると、

「!?」

頭から血を流している男がいた。

(これって…僕、危ない?)

今更自分の立場がわかったようである。

(……どうしよう)

そう思った時、右手に握っていた布の感触を思い出した。

(やるしかないよなぁ…伊澄さんを危険にさらす訳には行かないし…)

覚悟を決め、ハヤテは後ろの男へ声をかける。右手のやっていることに気づかれないように。

「あの…何でこんな事するんですか?」

「あぁ!?仲間を助けるためだよ!俺はさっきまで気絶してた…!それで目覚めたときは警察に囲まれてた!それで、仲間が俺を逃がすために囮になって捕まったからだよ!!」

「そこまで僕聞いてませんよ!?」

「んだと!?」

男が怒り、ハヤテの頭に銃をつきつけようとした時、(今だ!)ハヤテはしゃがんだ。

そして、振り向きあらかじめ布から出していた日本刀を横なぎに振った。

「がぁっ!?」

脇腹へと当たり、男は悶絶しながらたおれた。

「ふう…」

ハヤテが額に滲んでいた汗を拭いていると、店の奥から零司が戻ってきた。

「お待たせー…って何これ?」

「えっと…何でしょうか?」

「は?」

疑問そうに首を傾げる零司であった。

「あれ?鷺ノ宮は?」

「え、伊澄さんならここに…」

隣を見ると、先程まで自分の隣にいた筈の伊澄がいなかった。

『…………』

少しの沈黙。

『えぇえええええええええ!?』





結局、伊澄が見つかったのは一時間後であった。

そして、三千院家につくころには夕方になっていた。

ハヤテが天皇州家に帰ると、六花から若干同情されたとか。




――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


第十一話終わり!

菊花「何で私出したのかしら…」

まあ、何となく?

菊花「……へぇ」

ゴメンナサイ。でも、後悔はしてない。

では次回!!

更新テストで遅れるだろうなぁ…。

ではまた!!
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Re: 誰がため、何のため 5/19更新 ( No.17 )
日時: 2012/06/02 20:29
名前: コサッキー

と言う訳で第十二話!!

零司「いや、どんな訳?」

知るかぁ!テンション上げてないと嫌なんだよぉ!

零司「………じゃあ、テストはどうだったんだ?」

………………聞かないで。

ハヤテ「……大丈夫なんですか?」

さあねー、でもまあ、何とかなるさ!!

零司「こういうとこだけポジティブだな…」

うっさい!ほっとけ!

まあ、更新遅れたわりに駄文ですが、どうぞ!!





――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――





休日のどたばたも終わり、週明けの昼休み。ハヤテと零司は中庭で昼食をとっていた。

「あー…。この間は疲れたよなぁ…」

箸を止め、零司はうめくように呟いた。

「あはは…。まあ、しょうがないですよ…」

その呟きにハヤテは苦笑いするしかなかった。

伊澄の最早特殊能力ともいえる迷子。それを見つけるためにこの間の休日は大変だったなのだから…。

「ってもよー…。鷺ノ宮の執事たちもちゃんと見とけって話だよなー…。……まあ、無理な気がするけどさ」

まあ、それは置いといて。と零司は止めていた箸を再び動かしながら、今度は呟きではなく、ハヤテへと質問をした。

「天皇州手伝わなくていいわけ?ハヤテ」

「ああ、その事ですか」

そりゃそうだ。と零司は口の中で呟いた。アテネはこの学校の理事長である。その執事のハヤテがこんな所で弁当を食べていていいわけが無い。

「この間六花さんに訊いたんですけど……昼休みは別に来なくていいって言われたんです…」

「ふーん。まあ、考えればそうなんかね」

「え?どういうことですか?」

だからー。と言いながら零司は箸をハヤテに向け、

「単に学校生活をエンジョイしてろって事だろ?ハヤテがここに入ったのもそういう事じゃねぇの?」

「…………あ」

「忘れんなよ…」

ある意味予想通りなハヤテの反応に零司は溜息をついた。

(まあ、もう一つ想像はできるんだけどな…そっちは言わないでいっか)

言ったらハヤテは落ち込む。その光景が簡単に思い浮かぶ零司だった。

弁当の中身である卵焼きをつまんで、零司はちらりとハヤテを見る。

何かブツブツと言いながら、弁当を食べ進めていた。それも妙に笑顔で。

呆れながら零司は自分の主の事を思い浮かべる。今頃は家で引きこもっているであろう主の事を。

(………あいつも酔狂だよなぁ…。俺を執事にするなんてさ)

そこまで思って執事という単語に反応し、零司は目の前の執事である男に再び目を向けた。

(………ハヤテは……どうやって執事になったんだ?)

ふとした小さな疑問。でもそれは一度気になってしまったら、大きくなっていく。だから、

「なあ、ハヤテ」

零司は訊く。疑問を解消する為に。そして、

「どうやってハヤテは執事になったんだ?」

先程から胸にある違和感を取り除く為に。





       第十二話「訊いていいこと、訊いてはいけないこと」





「いきなりどうしたんですか、零司さん?」

突然の質問にハヤテは驚いていた。

「いや何、少し疑問に思っただけだって。話しにくいなら別にいいぞ?」

「いや、別にいいんですけど…」困ったようにハヤテは頬を掻き「引かれないか心配なんですよ…」

「引く?何で?」

「いえ、だって……かなり非日常な感じですから…」

確かにハヤテの執事にどうやってなったかはかなり非日常的であるだろう。故にハヤテは引かれるだろうと判断した。しかし、

「いや、別にいいぞ?俺だって結構非日常は送ってるしさ」

零司は斜め上の回答を言ってのけた。

「なら、いいですね♪…………っていい訳あるかぁ!!」

あまりにも自然な流れで気づかなかったが、遅れて気づき、ハヤテは叫んだ。

「反応遅くねー?」

零司はそんなハヤテの反応を楽しんでいるのか、笑顔であった。

「そう言う問題ですか!?非日常を送ってるってどういう事ですか!?」

「そのままの意味だが?」

それが当たり前と言わんばかりに零司は冷静でいた。

「まあ、俺のことは置いといてさ。ハヤテのどうやってなったかを聞かせてくれよ」

「わかりましたよ…」

あまりにも冷静だったのでハヤテは諦めて、渋々話すことにした。

「えっと……あれはクリスマスの日の事でした…」

ハヤテは糸を手繰り寄せるように思い出しながら話を始めた。





数分後、零司はこめかみを押さえて若干後悔していた。

「あー……すまんハヤテ…」

「いえ、別に気にしてませんよ?」

「それでもこっちは良心が痛む…!」

零司は俯きながら、胸を押さえながら震えていた。

因みにハヤテの話は公園でナギを助けたところで零司が先程の状態になった為、止まっている。

(つか、ヘビーな話をさらっと話せるとかどんだけ精神強いんだよ!?)

ここまでの話を零司なりに解釈すると、ダメな両親に無理矢理借金を背負わされ、命からがら逃げた。といった感じであった。……自分の主のところは省略したようである。

「えっと…続き聞きます?」

「頼む。数秒待ってくれ」

そう言うと同時に、零司は目を閉じて深呼吸を一回した。

「……よし、来い」

そして再び目を開けた。その目は先程までとは違い、何か別のものが宿っていた。

「では…。三千院さんを助けた後すぐに追手が来たので、僕は三千院さんを置いて逃げました」

話しながらその時の光景をハヤテは思い出していた。

「公園を出た後も、追手の声が聞こえてきたので、僕はさらに逃げました」

街中を走る自分に向けられてくる怪訝そうな視線。それを意に介さずあの時のハヤテは走っていた。

もし、捕まったら。そのイメージがハヤテの頭を支配し、他のことを考えられなかった事もあるのだろう。

「そして、路地裏に逃げて」

そこで初めてハヤテの話を静かに聴いていた零司の体が少し震えたが、ハヤテはそれに気づかず続ける。

「そのまま走って逃げていたら、いきなり目の前に男の人が現れたんです」

「………で?」

「それで、男の人とぶつかる!って思った瞬間に空に打ち上げられてたんですよ…。そして、受身も取れず落下して気を失いました」

「マジか…」

「ええ、マジです」

ハヤテが零司を見ると、零司は汗を額にびっしりと掻いていた。

「あの…零司さん?さっきから汗を掻いてますけど、大丈夫ですか?」

「ああ、大丈夫だ。少し放っておいてくれ…」

そう言うと零司は少し離れ、何かを呟き始めたので、ハヤテは疑問に思いながらも、残りの弁当を食べることにした。

(ひとまず、お弁当を食べちゃおう…)

そして、おかずの肉じゃがを口に含んだと同時に、

「否定要素見つかんねぇええええええええええええええええ!!!!」

「むぐっ!?」

零司が大声で叫び、肉じゃがを喉に詰まらせた。

急いで胸を叩き、どうにか喉から先に通し、咳き込みながら頭をブンブン振っている零司を見やる。

「零司さん!?いきなり叫ばないで下さいよ!!」

ハヤテが叫んでも、零司には聞こえていないらしく頭を振っていた。

「零司さーん!!」

再度叫ぶと今度は聞こえたらしく、零司はハヤテを見ると走ってやってきた。

「あ、零司さーーー」

その零司にハヤテが声をかけようと―――

「すいませんでしたぁあああああああああああああああ!!!!」

した瞬間、零司はハヤテに土下座をしていた。

「えぇえええええええ!?ちょ、ちょっと零司さん!?」

零司の突然の奇行にハヤテは狼狽した。

まあ、いきなり知人が土下座をした時の反応としては当然ではあるだろうが…。

それはともかく、ハヤテとしては零司に土下座される理由なんて微塵もあるはずがなかった。

それを説明すると、零司はすぐにいつもの態度に戻ってくれた。

「すまん…色々と気が動転してた…」

「いえ、別に構わないんですけどね?何でいきなり謝ったかだけ教えてくれませんか?」

「何かハヤテ怒ってねぇか…?」

「いえ別に、喉に詰まって苦しかったなんて微塵も思ってませんよ?」

「思ってるし怒ってるよなぁ!?」

「いいから、話してください。話さないほうが怒りますよ」

静かに話すハヤテに気圧され、零司も観念したのか理由を話した。

「まぁ、何か言いにくいんだがよぉ…」あからさまにハヤテから目を逸らしながら「クリスマスの日、ハヤテを打ち上げたのは俺なんだよ…」

「……………はい?」

想像だにしてなかった理由にハヤテは目を点にしていた。

「あの時、僕の目の前に現れたのが零司さん?」

「はい」

「そして、僕を打ち上げたのも零司さん」

「そうです」

「……………………えぇえええええええええええええええええええ!!??」

脳がやっと理解したとき、ハヤテは思わず叫んでいた。

「いや、そんなに叫ばんでも…」

「いえだって、えぇ!?」

今度は逆になってしまったハヤテと零司であった。

「んで、もう一度謝っておこう。すまん」

そう言うと、零司は座ったまま深々と頭を下げた。

「いえ、もう別に気にしてませんから…頭を上げてください」

「うー…本人が気にしてないって言っても加害者は気になるもんなんだよなー…」

そう言いながらも零司は頭を上げた。

「でも、あの男の人が零司さんだったのは驚きましたよ…」

「まあ、俺も家に帰ろうと急いで近道してたからなぁ…」

「それで僕がいきなり走ってきて…」

「反射的に俺は打ち上げちゃったってわけだ」

「……………」

「ん?どうしたハヤテ?俺をいきなりじっと見て」

反射的だったから手加減できなかっただろうとはいえあそこまで自分を打ち上げる零司の力が気になったハヤテだった。

そうハヤテが考えていると、零司はどこからかコインを取り出し、指で上に弾いた。

「……そういえば零司さんってよくコイン弾きますよね?」

「ん?まあ、癖みたいなもんだよ…」

そう言っているうちにコインは落下してき、それを零司は左手の手の甲に乗せ、その上に右手を乗せた。

「さて、ハヤテ」零司は手をハヤテに突き出し「表が希望。裏が絶望だ。そしてこのコイン、表と裏どっちだと思う?」と悪戯っぽい笑顔で言った。

「えぇー…、何ですかその質問の仕方…」

「まあまあ、ともかく選んでくれよ」

「………そりゃ表ですよ」

だよなぁ。と零司が言いながら右手をどけるとコインは表であった。

それを見てハヤテは安堵の息を何故か漏らしていた。

「くっくっく…。やけに真剣だな♪」

「ここで外したらそうなる気がしましたから…」

「ま、ハヤテ不幸だしなー♪結果はなんにしたってさ♪」

「傷つくからそういうのは言わないで下さいよ!!」

「わりーわりー。じゃあま、お詫びに俺が執事になったエピソード語ってやるよ♪」

「いいんですか?」

「別にお前みたいに重いわけでもないしなー。別に構わないって♪」

そう言うと零司は軽い調子で話し始めた。




      *    *    *





それはクリスマスの時の話。

零司は大通りを歩きながら先程の事を考えていた。

(んー…。さっきの奴思わず打ち上げちまったけど……、大丈夫かね?)

さっきの奴とは路地裏を歩いていたら、ぶつかりそうになった少年のことである。つまりはハヤテのことだが、この時の零司はまだ知らない。

(まあ、何か面倒ごとに巻き込まれてたら色々手を回すかー)

かなり楽観的な結論を出し、零司は別のことを考え始めた。

(クリスマス…ねぇ…)

周りを見渡すだけで、楽しそうに話す男女、子供を連れた親子、数人の同性で固まっているグループ、店の前でトナカイやサンタの格好をして呼び子をしている従業員などが見える。そしてその人らに共通するもの。それは、

(楽しい、嬉しい、面白い。つまりは『希望』に満ちてんな…)

それを見て零司は軽く舌打ちをした。

(………希望に満ちた奴らは苦手だ)

さっさと帰る。そう決めた零司は歩調を速めた。

そして、横断歩道を渡っていた途中に、悲鳴のような声が聞こえた。

零司を含め、横断歩道を渡っていた者達が声の上がった方へと視線を向けた。そして、その視線の先にあったのは、



赤信号を無視し、こちらへと猛スピードで走ってくる車であった。



「うわ、何だあれ…」「こっちに向かってきてね?」「てか、今赤信号無視したんだけど…」「嘘!?逃げなきゃ!!」

誰かが言った言葉を皮切りにそこにいた人々はパニックになった。

皆、慌てて歩道へと戻っていく。慌てはしなかったが、零司も例外ではなかった。だが、

(ん…?)

零司は見つけてしまった。人ごみにもまれ、転んでしまった子供を。

(ちっ…)

あのままでは下手したら踏みつけられるかもしれない。そう考えた零司は素早く子供のそばへと駆け寄った。

「おいガキ、大丈夫か?」

「お兄ちゃん誰…?」

「俺のことはどうでもいい。お前の母ちゃんか父ちゃんは?」

「わかんない…。誰かに押されて、繋いでた手離しちゃったから…」

そう言うと子供は涙目になり始めた。

「あぁもう、泣くな!後で探してやるから、俺に掴まってろ!」

「うん…」

零司が子供を抱え上げた時、

「あ、あぶなーい!!」

誰かが叫ぶ声と共に、車がすぐ手前に迫っていた。






「ア、 アニキ!人轢いちまったぜ!?」

「うるせぇ!少し黙ってろ!!」

アニキと呼ばれた男は助手席に座っている男を一喝し、ワイパーを入れた。

ワイパーはフロントガラスについた赤い液体をどんどん拭き取っていく。

「おい…お前達!人を轢いといてその態度は一体何なのだ!」

その行動を見て、後ろにいた金髪ツンテールの女の子が叫んだ。

「うるせぇ!!てめぇは黙ってろ!おい、そいつのうるせえ口どうにかしろ!」

「へい!」

助手席の男が女の子を縛ろうとした時、



ガゴン!と音と共に手が車の屋根から出てきた。



「ひっ!?」

そのいきなり起こったことに男は後ろに下がった。

『おいおい、その反応は結構傷つくって』

出ている手によって、屋根がはがされていき、その声が次第に鮮明になっていく。

「しかも、人を轢いといた奴の言い方でもないよな?」

「でも、お兄ちゃん普通に車に飛び乗ってたよね…」

「ま、気にすんなって」

屋根が完全にはがされ、零司は背中にくっついている子供と共に車内へと降り立った。

「さーて…。車、止めてくれるな?」





数分後、少女を誘拐した犯人達は逮捕された。

その光景を少し離れた所で子供と零司が見ていると、後ろから声をかけられた。

「零司君お疲れ様」

「どもっす」

挨拶を返しながら振り返ると、若干年を取った男が立っていた。

「相変わらずの手際だね。でも…」

「やりすぎ。っすか?錠立さん」

その言葉に錠立と呼ばれた男は苦笑した。

「こっちとしては助かってるんだけどね……、毎回処理する子達はぼやいてるからさ…」

「あー…。でも、これが俺のやり方っすから…」

別にいいんだけどね。と錠立は言うと、零司のズボンの裾につかまっている子供に視線を向けた。

「単にこいつは巻き込んじまっただけですからね?」

「その言い方だと僕が何か言うように聞こえるねぇ」

「先手は打っておくものです」

「まあ、そうだね。打っておくに越したことは無いね」

そこで、錠立は少し離れた所で不機嫌そうに立っている金髪ツインテールの少女を視線で示した。

「あの子、三千院家の子だそうだよ?」

「ふーん……、何で誘拐されるような事になったんですか?」

「まあ、単にパーティが嫌になったとかじゃないかな?あ、飴食べる?」

錠立が飴を少年に飴を渡してる様子を見ながら、零司はその三千院家の少女を見る。

(……ま、不機嫌そうな顔からよくわかるわな)

そんな事を考えていると、視線が合い、こちらに向かって歩いてきた。

「…お前が私を助けてくれた奴か?」

「別にそう言うわけじゃないんだがな」

「そうか…だが、ありがとうな♪」

「………けっ」

笑顔を向けられ、零司は目を背けた。

「………なあ」

「んぁ?」

「私の…執事をやってくれないか?」

突然の提案に零司は、

「やだよ」

即効で断った。

「な!?何故だ!?」

「めんどい。それだけだって」

「それだけの理由だと!?」

「うるせえ。とっとと帰れクソガキ。ガキはもう寝る時間だぜー」

「誰がガキだ!!お前私が誰だかわかっているのか!」

「三千院家の奴。だろ?」

「そうだ!だから―――」

「それがどうしたって?」

そう言う零司の目はどこか冷たかった。さらに零司は続ける。

「三千院家が何だってんだ?生憎俺はそんなことじゃ揺らぎやしねぇよ。もし俺を無理矢理にでも執事にしようとしたら」中指を少女の額に当て「潰してやるからな?お前の全てを」と言葉の端々に威圧感を含ませながら言った。

そして少女は震え始めた。どこか虚ろな目で。

それを確認すると、零司は錠立の方へと体を向けた。

「んじゃ、俺はこいつの親を探しに行くんで、後はよろしくです」

「わかったよ。いつも通りでいいんだね?」

「ええ。んじゃいくぞ坊主―」

「うん!」

零司と子供が遠さがっていったのを確認し、少女をまた見ると、まだ震えていた。

「うーん……零司君も回りくどい事するねぇ」

その声は誰の耳にも届くことはなかった。





       *    *    *





「……零司さんも凄いですねぇ!?」

零司の話を途中まで聞き終わると、ハヤテは溜まっていたものを吐き出すように叫んだ。

「いや、お前ほどじゃないからな?」

「どっちもどっちだと思いますけど!?」

「まあ、それでいいや。んで、俺が執事にいつなったかというと…」

「いうと?」

「その次の日なんだよなー」

ズデッ。ハヤテは思わずずっこけていた。

「よっし、予想通り!」

その反応を見て零司は力強くガッツポーズをする。

「予想通り!じゃないですよ!!威圧した翌日に執事になるなんて可笑しくないですか!?」

「いや、おかしくねえよ?あれはテストだったし」

「………テスト?」

「そ、テスト」

その言葉の意味がわからないのか、ハヤテは頭の上に大量の?マークが浮かんでいた。

「ま、簡単に説明するとだな。どこぞの知らない奴を執事にするなんて普通はありえねぇ。どうせ、強さを見て決めた。みたいな感じだろ?」

「……まぁ…」

「だから俺は一回テストをした。結構本気で威圧して、それに恐れたなら執事には絶対ならないって。たとえ恐れなかったとしても、自分で来なきゃ同様にって、俺は決めてた」

「………零司さん厳しすぎません?」

そう言うハヤテは、先日零司から受けた威圧感を思い出し震えていた。

「どこぞの奴を執事にするんだからそれくらいはやってもらわなきゃこっちが困る」そしてまたコインを弾き「それに、あんま苦手な『希望』に関わりたくはないしな…」と呟いた。

「『希望』?」

「おおっと、何でもねぇよ」

両手を振り、落ちてきたコインを零司は右手で取り、零司は弁当を片付け始めた。

「てか、早く食べないと時間なくなるぜ?」

ほら。と零司から差し出された時計を見ると、昼休み終了の十分前だった。

ハヤテの手元には全く食べ終わっていない弁当。

「わーーーーーーーーーーー!!!」

「くくくっ♪先戻ってるぜー♪」

零司は笑いながらハヤテへと背を向けた。

「あ、零司さん!」

「んー?」

ハヤテはそんな零司へ声をかけ、零司は歩調を緩めながら応対する。



「零司さんが『希望』が苦手なのって、昔に何かあったからですか?」



「………………おい、ハヤテ」

言葉と共にピリッとした何かが零司から漏れ出る。

だが、ハヤテは気づいてはいない様子だった。

「はい?なんで―――」

そして、ハヤテが返事をしようとした時、



爆音と共にハヤテの近くの地面が弾けた。



「―――!?」

弾けた土がハヤテを襲い、ハヤテは横に転ばされた。そしてそのまま少し転がされ、やっと止まることが出来た。

「つっ…」

痛みに顔をしかめながら顔を上げると、土が降る先の方に零司が右手だけこちらに向けて立っていた。

「おい、ハヤテ」

静かな声。だが、どこか零司の声には怒りのようなものが含まれているようにハヤテは思えた。

「一つだけ教えてやるよ」

零司は振り向かない。だが、その背中には何かが渦巻いているようにハヤテには見えた。

「人の過去は訊くもんじゃないぜ?」

そう言って振り向いた零司の背中には、形状しがたい、何かを纏っているように見えた。

そして、零司が去っていった後、散らばった弁当の中身である肉じゃがだけが転がっていた。





       *    *    *





零司は人のいない道で立ち止まり、コインを弾いていた。

その目は険しく、睨んでいるような目であった。

「………」

落ちてくるコイン無表情で見つめ、落ちてきたところを左手の手の甲に乗せ、右手で隠す。

「………表が希望、裏が絶望。あなたはどっち?」

呟きながら内心で裏と答え、右手をどける。

そこにあったのは、

「……裏、絶望」

いつも裏しか出ない。

それはいつからだったからだろうか。

あの絶望を知った日からだっただろうか。

「……クソッ」

はき捨てるように呟き、胸にあるペンダントをそっと握る。

それは零司にとって一番ぬくもりが感じられるもの。

そして、一種の楔でもあるもの。

しばらくペンダントを握った後、零司は教室へと歩き出した。

歩き出したその目はいつもの零司だった。





――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――



はい、十二話終わり!

という訳で一話でハヤテとぶつかりそうになった少年は零司でした!

ハヤテ「本当に驚きですねぇ!?」

だよね!ま、零司が執事になるまでを書きたかっただけさ!

零司「実も蓋もない事ありがとよ」

ちょうどいいから言っておきますが…オリキャラの多勢に過去を訊くのはタブー!よってハヤテはしょっちゅう危険にさらされる!!

ハヤテ「えぇ!?」

ま、それは置いといて…。

次のお話であいましょ〜。下は零司のプロフィールです。

では!!



▼ 大神 零司 (おおがみ れいじ)
性別:男
年齢:16歳
誕生日:五月六日
身長:182cm
体重:68kg
家族構成:不明
好きな事・物:甘いもの、静かな場所、暇、自分が認めた者
嫌いな事・物:辛いもの、面倒くさいこと、自分自身、希望(嫌いというか苦手意識の方が強い)

〈詳細〉
〈容姿〉
執事なので基本執事服。茶色の髪色で邪魔にならない程度の長さ。本人曰く、くせっ毛なので髪が多少はねているらしいが、凝視しなければわからない。(頭頂部に固まっているので見えるとアホ毛の様に見える)
顔立ちは整っており、格好いいといえる。目は黒色で、少し鋭い目の形。 首に星のネックレスと、文中記載していないが帝からもらった王玉をさげている。
〈その他〉
三千院家の執事であるが、一応バイトらしい。
性格は、自分が心を開いた者、自分が認めた者には優しく、そして明るく接するが、どちらでもない場合は辛辣で威圧的な態度をとる。しかし、なんだかんだ言ってもちゃんと接したりはする。尚、結構面倒くさがりだったりする。
年下には敬語なんて使わない。それが自分の主であっても。その代わり、年上には敬語を使い、ちゃんとした態度で接する。(ただし例外あり)
一人称は「俺」。
いつの間にか周りに溶け込んでいる事が多かったりする。
家事スキル、運動能力は高く、容姿の事もあってかなり学院の女子から好意を寄せられてたりする。だからと言って、男子生徒からの人気も低い訳でなく、逆に高い。
首につけているネックレスには並々ならぬ思い入れがあるようである。
昔の話になるとかなり不機嫌になり、殺気と同様の威圧感を周りに振りまく。
何か色々と秘密を持っているようである。
国内、国外に色々とパイプを持っている。
国内に一人、国外に数人の子にかなりの好意を持たれていたりする。
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Re: 誰がため、何のため 6/2更新 ( No.18 )
日時: 2012/06/03 17:38
名前: キー

 キーです。久しぶり・・・ですかね。忘れたころにやって・・・・ではありません。
 ハヤテを打ち上げたひとは零司でしたか。気になっていたんですよ。でも・・・・・・零司君怖い。ハヤテはやっぱり「太●の達人」ならぬ「地雷起爆の達人」ですね。ぶつかりそう・・・ではなくぶつかっているきが・・・

 次回も楽しみにしています。
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Re: 誰がため、何のため 6/2更新 ( No.19 )
日時: 2012/06/03 23:05
名前: 匿名

始めまして、コサッキーさん。匿名と言います♪
最近読んだのですが、凄く面白く見入ってしまいました♪
感想です♪
ハヤテを吹っ飛ばしたのは大神さんでしたか。とっさに投げるって凄くないですか?
それに、ハヤテの危機感知能力も結構高いはずなのに・・・。
あ、でもそのおかげでヤクザに捕まりアテネがいる場所の近くまで行けたし結果オーライ♪
転んでもただじゃ起きない。さすがハヤテ。
そしてまたハヤテの悪いくせが発動しましたね〜。人の過去にズカズカ踏み入るという。
ハヤテ〜、気をつけた方がいいぞ〜。大神さんも怖いし。
最後になりますが!これからもコサッキーさんの作品は読み続けます!
匿名でした♪
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Re: 誰がため、何のため 6/2更新 ( No.20 )
日時: 2012/06/06 00:47
名前: 迅風

ナルシェテク「てなわけで、若干ぶりになったが、リクエストお答えして、ナルシェテク=カミューケオスっ!! お招き感謝するよっ!!」(←背負ったものは大きいが潰れずに生き抜く精神の天使)

ユーク「下界では歌手として活動中のユークェル=イクシスハートだ♪ リクエストありがとう!!」(←アイドルとかと仲がいい。後は天界の歌手とかね……)

フェリス「はいはーいっ♪ 感情を司る神のフェリスティ=アグナアザスティルムよっ♪ リクエストありがとうねっ♪」(←服装が一目を引き、容姿が美少女なので天界でその実、めっちゃモテる女神)

テミュー「……面子が濃いですねー。あ、テミュニア=ヴィスティーディクアです♪ リクエストありがとうございます♪」(←天界の数ある王族の一角であるお姫様♪ ……うん、天界で求婚されるの多いんだよね)

ナルシェテク「さて、と。それじゃあ早速感想に入るんだけど……ああ、この前の鷺ノ宮の捜索で、昼食時の二人は疲れてるね〜。けどまぁ、惑星を超えてどっかに行くっていうか何処に行ったかわからないリスよりはマシだし♪」

ユーク「ああ、お前のペットな……。また何処かへ消えたか……。しょうがない事ではあるんだがな。……ふむ、そうして成る程。この時間は綾崎君は学生として楽しみなさい、という具合になっているわけか♪」

フェリス「そこ肝心だからね♪ 学生として楽しまないと♪ ……まぁ、もう一つ理由ある様子だけど、そこは置いといて……、大神君は綾崎君がいかにして、執事になったのかを訊いたわけねー」

テミュー「……綾崎君に引かれないかと考えたのに対して非日常だからという、まさかの解答でしたけどね!? そして訊いたら訊いたで、見事に撃沈状態ですね……」

ナルシェテク「まぁ良心の呵責があったんだろうねー。こういったのは内容次第で聞いた側として申し訳なくもなるからねぇ……」

フェリス「加えて、クリスマスの日に綾崎君、打ち上げたの大神君本人だったという真相なわけだしねー……。加害者になってしまう大神君としては何とも言えない心境よね……。……そして、あれが運命の分岐点だったわね、色々な意味で」

テミュー「……しかし、大神君、良くコイン弾いているわけですが……表が希望で裏が絶望ですか……。それならば表を選びますよね普通は……」

ユーク「だな。好き好んで絶望を求めるのは、どうしようもない場合か、酔狂な結果かはたまた別の理由か……だな」

ナルシェテク「ま、絶望も希望も得てして得難いですがね。……ま、俺は絶望をこよなく好む奴を知っていますがね♪」

テミュー「……笑顔で語る事!? そして次は、大神君が執事となった経緯ですか……。希望に満ちた奴らは苦手なんですか……」

フェリス「まぁ、そこは人其々になってしまうかしらね。何も大神君だけじゃないでしょう、希望に満ちたものを苦手と意識するのは。で、迷子の子供を手助けしたところで……轢かれたわねぇ!?」

ユーク「轢かれた割には何事も無かったようにぴんぴんして、誘拐犯たちを捕まえてしまったがな。……この時点で大神は一般より特殊というわけだ。さて、警察の錠立氏は人柄のよさそうな方だな♪ ……こっちの下界の警察はなぜああ、個性が……」

ナルシェテク「色々ありますからねー。それで、三千院に執事になってくれないか、と問われた際には一度突っぱねてるんだな。……まぁ、事情ありき綾崎と比べて無理になる必要性もなかったしな……。……執事ねぇ」(←基本、万能な彼が実に性に合わない職業『執事』)

フェリス「というか即座ねぇ!? あんだけ突っぱねた感じだったのに、翌日になってるんだ!? まぁ、とにかく自分でやってきた三千院さんに感心を抱くとしましょう……」

ユーク「……そしてここで見事に、地雷を踏んだな。綾崎君、希望を苦手意識と感じる程の状況ならば過去が凄絶というのは可能性高いわけだから……そんな軽口で訊くような事は考えてから発言するようにしておこうか?」

フェリス「まぁ、綾崎君に比があるわよねー。誰だって訊かれたくない過去の一つや二つはあるわけだから。……ただ、突発的暴力行為も感心は、しないわね。過去が大変そうなのは予想付くから何とも形容しがたいんだけどね……」

テミュー「……そして大神君はいつも裏面――絶望しか出ない、ですか」

ナルシェテク「絶望を知った日から、裏面しか出なくなった――か。それはまた精神的にくるものがあるね。……となると、大神の心境は……」(←希望を信じぬくのが信条の一つでもあるから真逆の位置か……)

ユーク「……ふむ、さて、それでは次回も楽しみにしている♪」

フェリス「リクエストがあったら言ってね♪」

テミュー「……それでは♪」
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Re: 誰がため、何のため 6/2更新 ( No.21 )
日時: 2012/06/08 21:34
名前: コサッキー

〈レス返し〉

▼ キーさん

>キーです。

六花「感想ありがとうございます♪」

>久しぶり・・・ですかね。

そだっけ?

零司「覚えとけよ」

何にしても感想ありがとうございますー♪

>忘れたころにやって・・・・ではありません。

まず私は忘れてすらおりません。

ハヤテ「そんな問題じゃないですよね!?」

>ハヤテを打ち上げたひとは零司でしたか。気になっていたんですよ

まあ、全く細かく記載してませんでしたしね。

零司「だからといって、気にするほどのものでもないがな」

ハヤテ「いえ、僕としては気になると思いますけどねぇ!?」

>でも・・・・・・零司君怖い。

だってさ零司。

零司「ま、怖いイメージでいいさ。別にどーでもいいし」

ハヤテ「えぇ!?それで零司さんはいいんですか!?」

実際他の人の評判なんて気にしないしねー。

>ハヤテはやっぱり「太●の達人」ならぬ「地雷起爆の達人」ですね。

はい、やっぱそうです。

ハヤテ「違いますよ!?」

ほー。あの零司の態度見てそう言えると?

ハヤテ「ぐっ…!あ、あれはたまたまです!!」

零司「………ほー」←(冷ややかな目)

ハヤテ「………………」←(冷や汗ダラッダラ)

>ぶつかりそう・・・ではなくぶつかっているきが・・・

………あ。

零司「おい」

そこは各々の解釈という事で…。

六花「アホですか?」

>次回も楽しみにしています。

ありがとうございます!

六花「キーさん感想ありがとうございました♪」



▼ 匿名さん

>始めまして、コサッキーさん。匿名と言います♪

初めましてー♪

アテネ「感想ありがとうございますわ♪」

>最近読んだのですが、凄く面白く見入ってしまいました♪

ダウト!

ハヤテ「いい加減普通に喜びません!?」

やだよ!

ハヤテ「何で!?」

零司「単に照れてるだけだろ」

六花「褒められなれてませんもんね〜♪」

ばらすのやめてぇえええええええええ!?///

>感想です♪

>ハヤテを吹っ飛ばしたのは大神さんでしたか。とっさに投げるって凄くないですか?

零司「結構あって慣れてるだけだ」

ハヤテ「結構あるってどういう事ですか!?」

うんまあ…実際結構あるしね。

零司「本当やだねぇ…」←(実は巻き込まれ体質)

>それに、ハヤテの危機感知能力も結構高いはずなのに・・・。

あの状況じゃ働かないと思います。

ハヤテ「ある意味死と隣り合わせですしね…」

アテネ「当の本人が冷静なのはどうなのかしら…」

>あ、でもそのおかげでヤクザに捕まりアテネがいる場所の近くまで行けたし結果オーライ♪

>転んでもただじゃ起きない。さすがハヤテ。

YES♪結果オーライ♪

ハヤテ「そんな訳ありませんからね!?」

えー。じゃあ、アテネに会えたのも否定する訳?

ハヤテ「そ、それは……嬉しかったですけど…///」

アテネ「ハヤテ…///」

六花「あらあら♪」

>そしてまたハヤテの悪いくせが発動しましたね〜。人の過去にズカズカ踏み入るという。

全くですよ。

零司「書いたのお前だがな」

うん、そう言うメタ発言やめようか?

そして、ハヤテのその悪い癖はこの作品ではかなり危険…!!

ハヤテ「えぇ!?」

零司「どんな感じで?」

最悪死ぬ。

ハヤテ「死ぬ!?」

一番よくて怪我。

ハヤテ「無事なのはないんですか!?」

んなもんあるわけないじゃん。

ハヤテ「えぇー…」

>ハヤテ〜、気をつけた方がいいぞ〜。大神さんも怖いし。

ハヤテ「気をつけます…!」

さて、どうなるやら…。

六花「というか、大神君の認識は怖いでいいんですか?」

基本オッケー。

零司「ま、どーでもいいがな。あと、零司でいいぜー」

まあ、ダークヒーローみたいに思ってる人もいるしね。

>最後になりますが!これからもコサッキーさんの作品は読み続けます!

マジですか!?こんな駄文を!?

零司「つまんないとか思ったら見限って良いですからねー」

>匿名でした♪

六花「匿名さん感想ありがとうございました♪」



▼ 迅風さん

>ナルシェテク「てなわけで、若干ぶりになったが、リクエストお答えして、ナルシェテク=カミューケオスっ!! お招き感謝するよっ!!」(←背負ったものは大きいが潰れずに生き抜く精神の天使)

零司「その精神分けてくれ」

いきなりだねぇ!?

>ユーク「下界では歌手として活動中のユークェル=イクシスハートだ♪ リクエストありがとう!!」(←アイドルとかと仲がいい。後は天界の歌手とかね……)

うん、見るたび思うけど本当に神?

ハヤテ「もう歌手にしか見えなくなってきてますしね…」

>フェリス「はいはーいっ♪ 感情を司る神のフェリスティ=アグナアザスティルムよっ♪ リクエストありがとうねっ♪」(←服装が一目を引き、容姿が美少女なので天界でその実、めっちゃモテる女神)

私の中で一番好きだったりするんだよねー……フェリス。

六花「それは何故また?」

んー……わかんね☆でも、好きなのは好きだからしょうがない!!

零司「何となくむかつく」←(そして、私のオリキャラの中で一番お気に入りのキャラ)

>テミュー「……面子が濃いですねー。あ、テミュニア=ヴィスティーディクアです♪ リクエストありがとうございます♪」(←天界の数ある王族の一角であるお姫様♪ ……うん、天界で求婚されるの多いんだよね)

確かに濃いね!!

ハヤテ「かなり今更感がありますけどね…」

んで、求婚されるんだね…。

零司「ま、テミューにも色々あるんだろうさ。相手も金づるとかそういう事考えてる奴もいるだろ」

うん、なんで君はそう言う見方をするんだろうねぇ!?

零司「性格故に」←(外国でかなり好かれてたり求婚されてたりする)

アテネ「何にしても感想ありがとうございますわ♪」

>ナルシェテク「さて、と。それじゃあ早速感想に入るんだけど……ああ、この前の鷺ノ宮の捜索で、昼食時の二人は疲れてるね〜。けどまぁ、惑星を超えてどっかに行くっていうか何処に行ったかわからないリスよりはマシだし♪」

零司「マジで鷺ノ宮どうにかしてくれ…」

無理じゃない?

ハヤテ「えぇー…」

六花「というか、惑星を超えるリスって一体…」

最早リスではないね。

零司「確かにそのリスと比べたら鷺ノ宮はマシだな…」←(でも、疲れた表情)

>ユーク「ああ、お前のペットな……。また何処かへ消えたか……。しょうがない事ではあるんだがな。……ふむ、そうして成る程。この時間は綾崎君は学生として楽しみなさい、という具合になっているわけか♪」

>フェリス「そこ肝心だからね♪ 学生として楽しまないと♪ ……まぁ、もう一つ理由ある様子だけど、そこは置いといて……、大神君は綾崎君がいかにして、執事になったのかを訊いたわけねー」

消えたって何さ!?

アテネ「鷺ノ宮さんと同じ感じなのかしら…」

それでまあ、学校の時間中は基本的に執事ではなく単なる高校生ですよ。ハヤテ。

六花「ちゃんと満喫して欲しいですしね♪ね、アテネ様♪」

アテネ「はぇ!?え、えぇまぁ…///」

んで、もう一つの理由は…。

零司「不幸とかでかえって作業進まないんじゃないかなーって…」

ハヤテ「ぐっ!」

>テミュー「……綾崎君に引かれないかと考えたのに対して非日常だからという、まさかの解答でしたけどね!? そして訊いたら訊いたで、見事に撃沈状態ですね……」

>ナルシェテク「まぁ良心の呵責があったんだろうねー。こういったのは内容次第で聞いた側として申し訳なくもなるからねぇ……」

零司「まあ、かなり俺は非日常に慣れてるしなー…」

うん、悲しいことにね…。

ハヤテ「というか、あれそんなに重かったですか?」

零司「重すぎるわ!良心が痛くて痛くて仕方ねえよ!!」

>フェリス「加えて、クリスマスの日に綾崎君、打ち上げたの大神君本人だったという真相なわけだしねー……。加害者になってしまう大神君としては何とも言えない心境よね……。……そして、あれが運命の分岐点だったわね、色々な意味で」

ハヤテ「その事実には本当驚きましたよ…。ところで、どうやってあそこまで打ち上げたんですか?」

零司「企業秘密。ほんとに悪かったな…」←(深々と頭をハヤテに下げる)

ハヤテ「いえ、もういいですからね!?」

そしてもし、ああじゃなかったらハヤテはあのまま逃げて、一生アテネには会えずじまいでした。

ハヤテ「本当に複雑な心境ですよ…」

>テミュー「……しかし、大神君、良くコイン弾いているわけですが……表が希望で裏が絶望ですか……。それならば表を選びますよね普通は……」

零司「そりゃそうだ。普通の奴は表を選ぶさ」

でも、絶望を選ぶ奴もこの小説出るんだけどね…。

>ユーク「だな。好き好んで絶望を求めるのは、どうしようもない場合か、酔狂な結果かはたまた別の理由か……だな」

>ナルシェテク「ま、絶望も希望も得てして得難いですがね。……ま、俺は絶望をこよなく好む奴を知っていますがね♪」

因みに零司はどうしようもない場合だったりします。

零司「……こればっかりはどうしようもないからな」

理由としても結構別の理由が沢山ありますしね。

六花「絶望と希望…。どっちも表裏一体でどっちも儚く、どっちも得難いもの…」←(六花さんもそう言う経験あります)

ハヤテ「というか、絶望を好む人なんているんですねぇ!?」

>テミュー「……笑顔で語る事!? そして次は、大神君が執事となった経緯ですか……。希望に満ちた奴らは苦手なんですか……」

>フェリス「まぁ、そこは人其々になってしまうかしらね。何も大神君だけじゃないでしょう、希望に満ちたものを苦手と意識するのは。で、迷子の子供を手助けしたところで……轢かれたわねぇ!?」

零司「………まぁな」

零司は結構特殊ですけどね…。

ハヤテ「でも、普通は希望が好きな人が多いですよね…?」

そりゃそうだ。でも、フェリスの言う通りだと思うよ。

そして…。

零司「轢かれちまったぜ」

ハヤテ「軽いですねぇ!?」

>ユーク「轢かれた割には何事も無かったようにぴんぴんして、誘拐犯たちを捕まえてしまったがな。……この時点で大神は一般より特殊というわけだ。さて、警察の錠立氏は人柄のよさそうな方だな♪ ……こっちの下界の警察はなぜああ、個性が……」

零司「正直右手しか怪我してないですしねー…」

赤い液体もケチャップだしね。

六花「にしても、どうやって避けたんですか…」

零司「車のバンパーに右手乗っけてそこを支点にして転がっただけですよ?」

ハヤテ「………出来ませんからね!?」

まあ、零司はかなり特殊だけどさ…。

そして、新キャラ錠立さんです。読み方はじょうりつ。

錠立「あははー。どうもー♪」←(かなりのんびりした人です)

……出番作るか。

錠立「いいわけ?」

さあ?

錠立「無計画だねー…。それで、そっちの警察は中々個性的だけど、僕はそういうのもいいと思うよ?」

>ナルシェテク「色々ありますからねー。それで、三千院に執事になってくれないか、と問われた際には一度突っぱねてるんだな。……まぁ、事情ありき綾崎と比べて無理になる必要性もなかったしな……。……執事ねぇ」(←基本、万能な彼が実に性に合わない職業『執事』)

零司「まぁね…。正直一回見ておきたかったんだよ、自分の主にふさわしいかをな。……………あと、あんま情はかけたくないしな」←(後半だけボソッと呟く)

てか、ナルっち執事合わないんだね…。

六花「自分の主そっちのけで人助けとかに行っちゃうんでしょうか?」

>フェリス「というか即座ねぇ!? あんだけ突っぱねた感じだったのに、翌日になってるんだ!? まぁ、とにかく自分でやってきた三千院さんに感心を抱くとしましょう……」

零司「ま、まぁちゃんと来てくれたからな…」

ナギ「全く本当に自分で行ってよかった…」

マリア「あの子がいきなり外に出るって行ったときは驚きましたよ…」

>ユーク「……そしてここで見事に、地雷を踏んだな。綾崎君、希望を苦手意識と感じる程の状況ならば過去が凄絶というのは可能性高いわけだから……そんな軽口で訊くような事は考えてから発言するようにしておこうか?」

>フェリス「まぁ、綾崎君に比があるわよねー。誰だって訊かれたくない過去の一つや二つはあるわけだから。……ただ、突発的暴力行為も感心は、しないわね。過去が大変そうなのは予想付くから何とも形容しがたいんだけどね……」

ハヤテ「……はい」

零司「……………」

本当に零司の過去は訊かない方がいいからね?ハヤテさんや。

ハヤテ「肝に銘じときます…」

そして、零司の突発的暴力は…。

零司「……すいません」

ああいう話題は零司異常に沸点低いからなぁ…。仕方ないといえば仕方ないんですよ…。

>テミュー「……そして大神君はいつも裏面――絶望しか出ない、ですか」

>ナルシェテク「絶望を知った日から、裏面しか出なくなった――か。それはまた精神的にくるものがあるね。……となると、大神の心境は……」(←希望を信じぬくのが信条の一つでもあるから真逆の位置か……)

零司「あの日から裏しか、絶望しか出ない」←(虚ろな表情)

…………やばい、零司が壊れた…。

ハヤテ「ちょっと!?」

ま、まあ…、零司の心境はかなり複雑なんだよね…。

>ユーク「……ふむ、さて、それでは次回も楽しみにしている♪」

>フェリス「リクエストがあったら言ってね♪」

>テミュー「……それでは♪」

ありがとうございますー♪

六花「リクエストは暮れ色の紅翼の皆さんで♪人数はお任せします♪」

ハヤテ「迅風さん感想ありがとうございました♪」




さーて、十三話目―。

零司「いつもより低いテンションだな」

いや、毎回高いテンションな訳無いからね!?

ハヤテ「じゃあ、今までのテンションは一体…」

気分じゃぁ!

零司「うっざ」

酷いねぇ!?まぁ、それともかく十三話目どうぞ!



――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――



前回の話の日の夜、天皇州家でのこと。

ハヤテは自室で溜息をついて机に突っ伏していた。

「はぁ……」

溜息の原因はたった一つ。昼休み終了間際の零司についての事である。

あの質問が零司の何かに触れた事は流石のハヤテでもわかっていた。

あの後、教室での零司の様子はいつもと同じであったが、それがハヤテにとっては逆に重圧であった。

そして、放課後は謝る暇も無く零司はいなくなってしまった。

結果が今のハヤテである。

「はぁ…」

また溜息をついた時、部屋のドアがノックされた。

『ハヤテ君?六花です、入っていいですか?』

「どうぞー…」

返事をすると、六花がいつも通りのメイド服で入ってきた。

「どうしたんですか、六花さん…」

机から顔を上げながら声をかけると、六花は呆れた表情をしていた。

「はぁ…。ハヤテ君?なんでそんなに暗い表情をしてるんですか?」

「いえ、単なる自己嫌悪ですから…」

「それはそれでアウトだと思いますけどね?」

「何とか立ち直ると思いますから…」

その言葉に六花は溜息をついた。

「はぁ…。それならいいんですけど…。それとハヤテ君」

「はい?」

「ちょっと、白皇まで行ってくれません?」

「……何でですか?」

ハヤテが訊くと、六花はメイド服のポケットから封筒を取り出した。

「ちょっとこれを宿直の先生に届けて欲しいんですよ」

言いながら六花は封筒をハヤテへと渡す。

「はぁ…。中身は一体?」

「単なる脅迫状ですから♪」

「笑顔で言う事じゃないですよねぇ!?」

ハヤテの言葉は笑顔でスルーされた。

「まあ、ともかく行って来てくれます?先生が先生なので…」

「誰なんですか?」

「桂先生ですよ?」

その言葉にハヤテはあぁ…と、理解した。何日も見ていればわかる結果を元にすればそうなるだろうが。

「わかりました。それじゃ、行ってきますね」

「行くなら日本刀持っていって下さいね?」

「銃刀法違反ですけど!?」

「不幸に遭った際にはあった方がいいでしょう?」

六花の言葉にハヤテは反論できなかった。といっても反論できるはずもないが。

結局、日本刀は布に包んで持っていくことになったとか。





       第十三話「夜の校舎は怖いものたくさん」





白皇学院前。

ハヤテはそこで悩んでいた。

(来たのはいいけど……どうやって入ったらいいんだろう…)

壁をよじのぼって侵入するわけにはいかない。

だが、正門は閉まっていて入ることは出来ない。

そうやって、ハヤテが唸っていると、ポケットの携帯が振動を伝えた。

着信のようで、名前は、

「六花さん?」

通話ボタンを押し電話に出ると、いつもの六花の声が聞こえてきた。

『もしもし、ハヤテ君?正門前にいますか?』

「はい、いますけど?」

『それなら今開けますね〜』

「え?開けるってどういう―――」

訊きかえそうとした時、重い音を響かせながら正門が開いた。

「……………」

『それじゃ、ハヤテ君お願いしますね♪』

ツーツーツーと電話が切れた音だけがハヤテの耳に届いていた。

(……つっこむのはよそう)

そう思い、ハヤテは白皇の中へと進んでいった。





そして、宿直室前。

「あれ、綾崎君?どうしたの?忘れ物でもした訳?」

ハヤテは雪路に運よく会えていた。

「いえ、六花さんからこれを渡すように言われて…」

そう言うと、ハヤテは六花から預かっていた封筒を雪路へと手渡した。

「ふーん…。中身の事なんか言ってた?」

「中身…」

その言葉で連想されるのは、『単なる脅迫状ですから♪』と言っていた六花の姿。

「(……言わないほうがいいよね…)……いえ、何も言ってませんでしたよ?」

ぎこちない笑顔であったので騙せたかどうかハヤテは不安であったが、幸い雪路はそれに気づくことはなかった。

「ま、いいわ。それより綾崎君、ちょっと頼まれてくれない?」

「はい?何をですか?」

「んー、綾崎君が来る前に来た大神君なんだけどねー」

零司の名前が出た瞬間、ハヤテの脳裏には昼休みのことが思い出されていた。

「ナギちゃんのノートを取りに来たって言ってたから教室の鍵渡したのよ。それで、かなり時間たったんだけど帰ってこないからちょっと見てきて欲しいのよ。いい?」

「わかりました!今すぐに行って来ます!!」

「あ、ちょっと綾崎君!?」

雪路の制止も聞かずハヤテは教室へと走り出した。

「……あっちは旧校舎だったと思うんだけどな…」

雪路の呟きはハヤテに聞こえずに消えていった。





       *    *    *





「はぁ……はぁ……さて…」

息を整え、ハヤテは目の前にある建物を見上げる。

校舎のような外観だが、ところどころ窓が割れていたり壁にひびが入っていたりしており、建物の周りをカラスが大量に飛んでいた。

これらを踏まえて考えると、

「ここはどこですか…!!」

校舎ではないどこかであることだけがハヤテにわかった。

「戻って今度こそ校舎を目指そうかな…」

そう言って帰ろうとした時、

『キャァアアーーーー』

誰かの悲鳴じみた声が聞こえてきた。

「っ!」

その声が耳に入った瞬間ハヤテは建物の中を走っていた。

(あの声は、ヒナギクさん!!)

知人の悲鳴が聞こえ、それでも帰るほどハヤテは図太くは出来ていなかった。

そして、数秒全力で走っていると、壁に寄りかかっているヒナギクとヒナギクを襲っている何かが見えた。

その光景を見た瞬間、ハヤテの中の何かが急速に冷えていった。

左手に握っている布を解き、右手で硬質の感触がする物を掴む。

「誰か……!!誰か助けてーーーー!!」

そして、ヒナギクの悲鳴と共に踏み込み、右手を振り抜いた。

右手から何かを斬り進む感触がハヤテに伝わってくる。

やや堅いが、そんなことは気にせずハヤテは何かを斬った。

「大丈夫ですかヒナギクさ―――」

無事を確かめようと振り向いた時、

「ん?」

腹の辺りに柔らかい感触があった。

その柔らかい感触がヒナギクに抱きつかれていると認識するのにそんなに時間はかからなかった。

「え…え?あ…ヒ…ヒナギク…さん?」

「助けてくれてありがとう…だけど…」

抱きついたまま顔を上げたヒナギクは涙目だった。

「こんな怖いところに迷い込むなー!!」

頬を叩いたような乾いた音が声に遅れて夜の旧校舎に響いた。





       *    *    *





「ん…」

零司は遠くから聞こえてきた声で目を覚ました。

「あー……いって…」

節々が痛む体を無理矢理動かしながら、零司は立ち上がる。

「にしても、古過ぎんだろここ…」

周りに散らばる木片を見て、それから上にある大きな穴を見て溜息をついた。

(考え事してたといえ、落ちるとは思ってなかったなぁ…)

ナギに頼まれ、ノートを取りにいったはいいが、その帰りに考え事をしていてここに迷い込み、床が抜け落ちそのまま気絶…。普段の零司からは考えられないような一連の行動であった。

(ま、いいや。とにかく出口探すか)

そう言って歩き出したとき、「ん…?」この建物にいる人らに気づいた。

(一人、二人、三人……結構いるな。でも、なんで?)

零司はわかっていないが、ここは旧校舎。普通は人が寄り付かない場所である。なのに、人が数人以上いる。それは異常であった。

(んー…。邪魔ならどうにかするけど……ここからじゃわっかんね。移動するか)

音速の数分の一のスピードで零司は旧校舎内を走り出した。

そして数秒後、零司は知り合いに遭遇した。

「鷺ノ宮?」

「……零司様?」

それは鷺ノ宮伊澄とお供の人々だった。

「お前何やってんの?」

「いえ……悪霊退治をば…」

「悪霊退治?ここで?」

伊澄はその問いに無言で頷いた。

「ふーん…。んじゃ、何でここにいるわけ?ここに悪霊いるわけじゃないだろ?」

「ええ、そうなのですが…。あれを…」

伊澄が指した方向をそっと覗き見ると、



『あの…やっぱり帰りませんか?』

『ダメよ!!絶対正体つかんでみせるんだから』



「何やってんのあいつら…」

「さぁ…?」

いや、お前はわかっとけよ、と言いかけて零司は口を噤んだ。

「んで、結局あいつらがいるから鷺ノ宮としても出来ないと」

「はい…」

「なら、俺が追い出せばいいか?」

「……いいのですか?」

恐る恐るといった感じで伊澄は零司に尋ねるが、零司は「気にするな」とひらひらと手を振って了承した。

「んじゃ、適当なタイミングで出るからここで見とけ」

「はい…」

伊澄が頷くのを見て、零司は袖からコインを取り出し、右手に持った。

(んで、気配消してっと…)

そして、そのまま零司はタイミングを計る。

そして、ヒナギクがハヤテの後ろの裾を掴んだ瞬間、

(今だ!)

右手に持っていたコインをヒナギクの足を掠めるように撃った。

『痛っ!?えっ、ちょっと、何で!?』

『ちょ、ちょっとヒナギクさん!?』

その結果、ヒナギクがハヤテを後ろから押し倒すような格好になった。

その光景に零司は心の中でガッツポーズをして、その格好の二人に近づいていった。





ハヤテは突然の事態に困惑していた。

ヒナギクの立ち振る舞いに対して注意していたら、いきなりヒナギクが後ろから押し倒してきた。

そして、下敷きになったハヤテは顔をこれでもかといわんばかりに赤くしていた。

「ちょ、ちょっとヒナギクさん!?いきなり何してるんですか!?」

「そんなのこっちが聞きたいわよ!!」

「えぇ!?と、ともかく僕の上からどいてくれませんか!?」

「そ、それが体動かないのよ…!?」

実際、先程からヒナギクはどこうとしていた。しかし、何故か手や足が動かなかった。

「ま、まさか……悪霊の仕業だったりして…」

「ちょ、怖いこと言わないでよ!!」

「でも、そうしたら体が動かないのはどうやって説明するんですか…」

「そ、それは…」

ヒナギクが言いよどんだと同時、



コツ……コツ……。と硬質な音がどこからかした。



「「―――!?」」

その音に二人は固まった。

音は近づいてくるが、二人は恐怖で動くことも声を出すことすら出来なかった。

そして、硬質な音が止まり―――

「………お前ら何やってんの?」

零司の声が聞こえた。

「「………零司さん(君)?」」

「いや、他に誰がいるとでも?」

「いや、知りませんけど…」

「ともかく起きろよ」

「あの……起きれないから起こしてくれない…?」

その発言に溜息をつきながらも、零司はヒナギクの手を取って立たした。

それに遅れて、ハヤテも立ち上がった。

「んで、何?ここで記載できないようなことでもやろうとしてた訳?」

「「そんな訳ない(です)からね!?」」

割と本気だったのか、零司はその反応に舌打ちをした。

「んじゃ、何で居たわけ?」

「私は零司君を探しに来たのよ」

「僕もです」

ふーん。と言うと、零司は二人の間を通って歩き出した。

「ちょっと零司君?どこ行く気?」

「どこって帰るだけだが?二人も用事終わったなら帰ろうぜー」

そう言うと零司はさらに先に向かって歩いていった。

「あ、ちょっと待ってくださいよ零司さん!」

それにハヤテが続き、「ちょっと!?私を置いていかないでよー!?」と叫んでヒナギクが二人の後を追って走っていった。





       *    *    *





そして、宿直室で零司が鍵を返し、残るヒナギクと別れ、ハヤテと零司の帰り道。

「あの……零司さん…」

ハヤテは隣を歩いている零司へ声をかけた。

「んー?」

「あの……昼休みの事なんですけど…」

昼休みの単語を聞いた瞬間、零司から威圧感が出てきたが、それを我慢しながらハヤテは続けた。

「あの時……訊いてはいけない事を訊いてすいませんでした!!」

「……………」

道の途中で頭を下げるハヤテを見る零司の目はどこか冷ややかであったが、やがて溜息を一つついた。

「ふぅ…。顔上げな、ハヤテ」

殴られるのではないか、と考えながらハヤテは顔を恐る恐る顔を上げた。

「ま、俺としてはあんま訊いてほしくない所だからな。別にここで殴ってもいいんだが…」

「……はい」

「これから先、絶対に訊かないって約束するなら許す。……んで、お前の答えを聞こうか」

「……絶対に!もう!訊きません!」

「よしっ♪」

その返事を聞き、零司は笑顔になり、それにつられてハヤテも笑顔になった。

「んじゃ、帰るか」

「はい♪」

そして、再び歩き出したとき、



ドガッ。と音をたてて矢がハヤテの目の前の地面に突き刺さった。



「「―――っ!!」」

突如飛来した矢に二人は身を強張らせた。

だが、すぐに先程までの体勢に戻り、ハヤテは布に包まれたままの日本刀で、零司はコインで、再び飛来してきた矢を弾いた。

そして、零司は空を見上げ、「そこにいる奴…!正体見せろ!!」と叫んだ。

ハヤテが零司の目線を追うと、電柱の上に黒ローブを着た者が立っていた。

「……………」

だが、黒フードは零司の怒声にも応じず、電柱の上に佇んでいた。

「……何も答えねぇつもりか?それならこっちから行くぜ…!」

零司が力を溜めるように身をかがめ、ハヤテが布の中の日本刀を取り出そうとした瞬間、黒ローブの者が黒ローブを翻し、黒ローブの中から大量の矢が二人に向かって放たれた。

「またかよ…!」

「くっ…!」

いきなり起きたことに二人は戸惑いながらも向かってくる矢をそれぞれ叩き落した。

そして、それを全て叩き落し、再び電柱を見上げたときにはもう黒ローブはそこにいなかった。

「何なんですかあの人は…」

「さあな。もしかしたら俺らを殺す為に雇われた殺し屋かもな♪」

「楽しそうに言う事じゃないですよねそれ!?」

「まあな。でも、気をつけとけよ?ああゆう奴しょっちゅう襲ってくるから」

「えぇ!?」

「ま、帰ろうぜ」

「……凄く気になる事を言われましたがそうしましょうか…」

さっきまであった襲撃をなかったかのように二人は帰路についた。



――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――



というわけで、十三話終わり!

今回はハヤテに反省してもらう為の話です!!

ハヤテ「ただ、それだけの為!?」

いや、それだけって言い切れる問題じゃないからね?

零司「ま、そうだな。俺とかさ」

ハヤテ「うぐっ…」

まあ、これからそういう人が何人も出るからさ。

ハヤテ「えー…」

気にするな。

そして、最後に参照が千を超えました。

ハヤテ「これもこの小説を読んでくださってる皆さんのおかげです」

零司「まだまだ至らぬところもある稚拙な文ですが」

アテネ「読んでくださる皆さんがいる限り、書き続けますので」

六花「これからもよろしくお願いします♪」

では!!
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Re: 誰がため、何のため 6/8更新 ( No.22 )
日時: 2012/06/08 22:32
名前: 匿名

こんにちはコサッキーさん♪匿名です♪
「こんにちはコサッキーさん♪木崎輝雪です♪
「和也です」
・・・は?
「じゃ、早速感想行きましょ♪」
いやいやいや、何ついてきてんの!?
「え?だってこっちにも来ていらしてるし大丈夫でしょ、て感じで」
やめい!!
「どうせ来たんだし感想行きます」
帰ろうぜ!?
「宿直室・・・ふむ、やはりあの先生か」
「書類の内容ってなんなのかしら?六花さんの言葉が頭から離れない」
聞けーー!!
「そして旧校舎」
「日本刀あって良かったわね・・・でも本当に必要になるとは」
いやだから俺のはn
「・・・押し倒した?」
「おしいわねヒナギク、そのまま既成事実を作ればよかったのに」(←まだ惚れてない」
セリフの途中で区切るn
「大神は鷺ノ宮を助けると」
「帰る途中で黒ローブの人影ね・・・ていうかコインで弾くなんて超電◯砲?」
・・・違うだろ。
「これからも黒ローブの動向に注目だな」
「そうね♪」
そうだね。
「そろそろ終わります」
「ばいば〜い♪」
さよならですコサッキーさん♪
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Re: 誰がため、何のため 6/8更新 ( No.23 )
日時: 2012/06/09 21:35
名前: RIDE

はじめまして。
RIDEと申すものです。

小説読ませていただきました。
感想書きますね。

アテネの執事になったらと言うifもの。
結構よくありそうなものですが、それでもいいと思うのは、キャラがよく立っているからです。
皆独自に持っている性格が表れていて面白いです。

ただ、零司が少し際立ち過ぎているような気がします。
これは彼のバックホーンに関わることかもしれませんので批判しませんが、何があるのでしょうか。

そして、気になる存在がやはりディオ。
ディオといえば、ジョジョが連想されますが、関係があるのでしょうか。
一体何者か、明かされる日を楽しみにしています。

更新頑張ってください。
それでは。


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Re: 誰がため、何のため 6/8更新 ( No.24 )
日時: 2012/06/15 19:22
名前: コサッキー

<レス返し>

▼ 匿名さん

>こんにちはコサッキーさん♪匿名です♪

どもですー♪

零司「感想ありがとうです」

>「こんにちはコサッキーさん♪木崎輝雪です♪

>「和也です」

>・・・は?

……あり?

ハヤテ「何だか来てしまったようですね…」

そのようだねー。

>「じゃ、早速感想行きましょ♪」

>いやいやいや、何ついてきてんの!?

うん、完璧に知らないようだね。

六花「今のご時勢特に珍しい事ではないですけどね〜♪」

>「え?だってこっちにも来ていらしてるし大丈夫でしょ、て感じで」

>やめい!!

いや、別に構わないんですけどね?

アテネ「あなたはむしろウェルカムなところがありますものね…」

まね☆

>「どうせ来たんだし感想行きます」

>帰ろうぜ!?

よっし来いやぁ!

零司「うっぜぇテンション…」

>「宿直室・・・ふむ、やはりあの先生か」

>「書類の内容ってなんなのかしら?六花さんの言葉が頭から離れない」

>聞けーー!!

まあ、宿直室といったら雪路ですよ。

零司「というか、それ以外いないだろ?」

六花「書類の内容は単なる脅迫状ですよ♪」

……どんな文面?

六花「『ちゃんと仕事してないと消しちゃいますからね♪』」

ハヤテ「…………え」

アテネ「というか匿名さんが無視されてますわね…」

>「そして旧校舎」

>「日本刀あって良かったわね・・・でも本当に必要になるとは」

>いやだから俺のはn

ハヤテ「本当に必要になるとは思ってもいませんでしたよ…」

零司「まあ、銃刀法違反だけどさ」

>「・・・押し倒した?」

>「おしいわねヒナギク、そのまま既成事実を作ればよかったのに」(←まだ惚れてない」

>セリフの途中で区切るn

正確には零司がそうさせたんですけどね。

零司「ま、やり方なんぞ沢山あるしな」

ヒナギク「というか、既成事実って何よ!?///」

まあ、まだヒナ祭り祭りいってないしね…。

六花「そして、まだという事は…♪」

うん、やめようか六花さん。

ハヤテ「というか、匿名さん完璧にキャラに無視されてますけど!?」

……私もそうなる気がするよ…。

零司「安心しろ、そうはしねぇ」

………!←(パァアアと嬉しそうな顔)

零司「気絶させて文面にすら出ないようにしてやる」

ひっどぉい!?

>「大神は鷺ノ宮を助けると」

零司「まぁな。気になってたし」

>「帰る途中で黒ローブの人影ね・・・ていうかコインで弾くなんて超電◯砲?」

>・・・違うだろ。

あの黒ローブは後少しの間結構出ます。

ハヤテ「えぇ!?」

狙いはハヤテ。

零司「おぉ、マジか」

マジマジ。大マジ。

零司「つか、普通に指で弾いただけだ」

零司のコイン弾きはかなりの威力ですよー。人一人くらいなら完璧に気絶させられるね。

ハヤテ「あぁ…」←(転入初日を思い出しながら)

>「これからも黒ローブの動向に注目だな」

>「そうね♪」

>そうだね。

まあ、ちょっかいしょっちゅう出してくるしね♪

ハヤテ「どうすればいいんですか…」

まあ、時間が解決するさ。

>「そろそろ終わります」

>「ばいば〜い♪」

>さよならですコサッキーさん♪

さよなら〜♪

六花「匿名さん感想ありがとうございました♪」



▼ RIDEさん

>はじめまして。

>RIDEと申すものです。

初めまして♪

ハヤテ「感想ありがとうございます♪」

>小説読ませていただきました。

>感想書きますね。

ありがとうございます!!

>アテネの執事になったらと言うifもの。

>結構よくありそうなものですが、それでもいいと思うのは、キャラがよく立っているからです。

確かにこれはifだね。

零司「今更かよ」

そしてキャラ立ってる?

六花「自分からはよくわからないものですからね〜」

>皆独自に持っている性格が表れていて面白いです。

そこは……まあ、キャラ自体濃いかな?

零司「何故に疑問形」←(かなり怖いキャラ。性格は優しかったり怖かったりと曖昧だったりする)

六花「本当ですね〜♪」←(反対の優しいキャラ。性格もかなり優しい)

>ただ、零司が少し際立ち過ぎているような気がします。

>これは彼のバックホーンに関わることかもしれませんので批判しませんが、何があるのでしょうか。

そんな事はないです。零司はこれでいいんです。

ハヤテ「そうなんですか?」

うん。だって零司は善も悪も目立つ様に作ったキャラだしね。

ハヤテ「……悪?」←(そこはまぁ……秘密)

というか、元々零司は際立たせて置こうと思ったキャラです。

主にハヤテの戒めとして。

ハヤテ「うっ…」

だからこれでいいんです。

零司「んでまあ、俺のバックボーンは…」

ひとまず、過酷とだけ。

>そして、気になる存在がやはりディオ。

>ディオといえば、ジョジョが連想されますが、関係があるのでしょうか。

>一体何者か、明かされる日を楽しみにしています。

ディオ「呼んだかー?」

言っておきますが、ジョジョは一切関係ありません。

ディオ「ま、気長に待っててくれや♪」

ま、かなり後だしさ…。

>更新頑張ってください。

>それでは。

ありがとうございます!!

アテネ「RIDEさん感想ありがとうございました♪」





さぁ、第十四話!

あの大会が幕を開ける!!

では、どうぞ!



――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――



放課後の理事長室。

「ふぅ…」

アテネは机の上に置かれた紙を見て、溜息をついていた。

「どうしました、お嬢様?」

それに反応したハヤテは紅茶を置きながら尋ねた。

「あぁ、ハヤテ…。少し困ったことがありまして…」

「困ったこと?」

ハヤテの疑問に答えるようにアテネは机の上にあった紙をハヤテへと渡した。

その紙には、『マラソン大会』と書いてあった。

「………これのどこが困ったことなんですか?」

「一番下を見なさい…」

疑問に思いながらもハヤテは一番下を見た。そこには、

「『マラソン自由形』?」

ハヤテが聞いたことの無いような単語が書いてあった。

「白皇の伝統行事の一つですよ、ハヤテ君」

「へー…。でも、どんなのなんですか?」

「まぁ……危険なものですわ」

「危険!?」

マラソン大会で普通は使わない危険という言葉にハヤテは愕然とした。

「それで、アテネ様。実行されるのですか?」

「えぇ、困ったことにね…。開催日が二月一日ですし、ここまで進められてるとなると…」

「開催される他にないと」

確認するような六花の言葉にアテネは首を縦に振って答えた。

「それじゃあ、どうするんですか?お嬢様」

「勿論開催しますわ。だから二人とも、この件を学生みんなに伝える準備を」

「「はい」」





       第十四話「マラソン自由形。それぞれの気構え」





そして、あっという間に日は流れて、マラソン前日。

ハヤテ、アテネ、六花の三人は理事長室でマラソン大会の最終確認をしていた。

「これとこれはよし……ハヤテ?そっちはどう?」

「えーっと……うん、大丈夫だよ」

そう答えたハヤテの頭に箒がヒットする。

「だから言葉遣い戻ってますよ」

「すいません…」

頭をさすりながらもハヤテは書類のチェックは止めず、次々と目を通していった。

そして、それから数分たった後。

「ハヤテ君、ちょっと頼まれてくれます?」

六花が急にそんな事を言ってきた。

「別にいいですけど…。何ですか?」

「ちょっと、これを桂さんに渡してきてくれますか?」

そう言うとあらかじめ用意してあったのか、書類の入ったであろう封筒を渡してきた。

「はい、では行ってきます!!」

受け取ると同時にハヤテは走って理事長室を出て行った。

「ゆっくりでいいですからね〜」

勿論のこと、六花の言葉がハヤテに届くはずもなかった。





       *    *    *





そして、時計塔内の生徒会室。

「あら、ハヤテ君。どうしたの?」

ヒナギクは案の定生徒会の仕事をしていた。

「ちょっと、六花さんからヒナギクさんに渡して欲しいものがあるってことで、お使いです」

「あら、そう。お疲れ様ね。お茶でも飲んでいく?」

いえ、別にいいですからね?と断るハヤテを無視し、ヒナギクはお茶を淹れ始めた。

「それで?ハヤテ君はマラソン大会はどうするのかしら?」

訊きながらヒナギクは淹れた紅茶をハヤテの分と自分の分をテーブルに置いた。

「あんま考えてないんですよねー…」

「ふーん。零司君は出るって言ってたけど?」

内心でその事に驚きながら、ハヤテはヒナギクに淹れてもらった紅茶に口をつけた。

「でも、何で知ってるんですか?」

「さっき私に聞きにきたからよ?」

「何でですか?」

「うーん……ナギに勝たせたいからじゃない?何だかわけありだったみたいだし」

首を傾げながらハヤテはまた紅茶を口に運ぶ。

「それで、ヒナギクさんはどのコースに出るんですか?」

「勿論全部よ♪」

その答えに何となく納得してしまったハヤテであった。

「ハヤテ君も何かに出ない?」

「でも、何に出たらいいのか…」

「なら、これに出てみたら?」

そう言うとヒナギクはハヤテに一枚の紙を差し出した。

「『マラソン自由形』…。……思ってたんですけど、自由形って何ですか?」

「いや、それを私に聞かれても困るんだけど…」

因みに、と指を立てヒナギクは続ける。

「この五つの伝統行事は、優勝するとそれぞれ賞金が出るらしいわよ?」

「へー」

気の抜けた返事にヒナギクは倒れそうになった。

「いや、ハヤテ君なんでそんな感じなの?お姉ちゃんなんか目の色変えてたのに…」

「いや〜…、あんまり実感わかなくて…」

まあ確かにそうだろう。もし、今のハヤテに借金があったのなら目の色を変えていただろう。だが、今のハヤテには借金が無い。正確には消えてしまっただが。

「ふーん…。でも、考えておいたら?零司君とナギが出るならこれだろうし」

「まあ……考えておきます」

その後、紅茶を飲みながら話をして、ハヤテは生徒会室を去った。





       *    *    *





「『マラソン自由形』か…」

ハヤテは先程ヒナギクに貰った紙を見ながら呟いた。

『マラソン自由形』。参加人数は二人一組。参加は自由。

「んー…。出るかもっていってた零司さんの様子でも見て決めようかな…」



そして、運動場にて。

ハヤテは運動しているナギと、それを見ている零司を見つけた。

「えーっと…。あれは声をかけてもいいのかな…」

その視線の先には、



「……おい、チビ嬢」

「これ……以上は……無理……」

倒れ伏しているナギと、それをそばで呆然と見ている零司がいた。



「……もう少し様子を見よう」



「……いや、まだ七十五mしか走ってねぇよ…」

「うるさい!!人間はチーターとは違う!!走るようになど出来てないのだ!!」

「いや、知ってるよ」

あまりのナギの様子に零司も呆れていた。

「なのに、いきなりこんな長距離を走るなんて……死んでしまうではないか!!」

七十五メートルは長距離じゃねーよ。心の中でツッコム零司であった。

「とにかく、今日は終わりだ!!こういうのはヒナギクみたいな奴がやればいいのだ!!」

「あ、おい、チビ嬢」

終わろうとするナギを零司が止めようとした時、

「やれやれ……ふがいない執事っぷりですな」

背後から老年であろう声が聞こえた。その声に振り返ると、

「……クラウスさん」

「クラウス!」

零司と同じく三千院家執事のクラウスが立っていた。

「全く…。この一ヶ月君の仕事っぷりを見せてもらいましたが……主を導くどころか、堕落させる一方だな」

ドゴッ。と殴る音が響いた。

「誰が堕落する一方だって?」

殴ったのはナギであった。普段からは考えられないような腕力であったが。

「お嬢様は元気ハツラツですな」

「どっちですか」

クラウスの言葉に思わず零司はつっこんでいた。

「零司はよくやっていてくれてる!ちゃんと私を守ってくれているではないか!!口出しするな!」

「守るだけならSPだって出来ます!主をよい方向へ導いてこそ執事というものです!態度だってアレです!!」

「痛いとこついてきますね、クラウスさん」

「ならば、零司が一流だという事の証明に、今度のマラソン大会で……一位をとる!!」

「ちょ、チビ嬢さん!?」

売り言葉に買い言葉とはこの事だろう。

「良いのですか?そんな約束をして…もしダメなら少年には執事をやめてもらいますよ」

「で……出来るよな?零司…?な?」

クラウスの言葉に先程までの勢いはどこに行ったのか、若干ナギは自信無さ気であった。

「わかりました。では大会を楽しみにしています」

そう言うと、クラウスは去っていった。

(……なんか物凄い事が進行してね?)

一位にならなければクビ。そんな事を零司本人の了承を得ずに決められたことに零司はひっそりと溜息をついた。

「なあ、零司…」

「……なんだ、チビ嬢」

「ドーピングコンソメスープって作れるかなぁ…」

「……無理だろ」



「……何だかサポートした方がよさそうだな。おせっかいかもしれないけど…」

零司をサポートする事にし、ハヤテは隠れていたところから抜け出し、理事長室に戻ることにした。

そこでどうやってか零司をサポートするための算段をたてる為に。





       *    *    *





「というわけで、僕と一緒に出てくださいお嬢様!!」

「なにがというわけなんですの!?」

理事長室に戻ってきた早々ハヤテに土下座され、アテネは思わず叫んでしまった。

「というか、ハヤテ君。一体何があったんですか」

三人の中で唯一冷静であった六花がハヤテに尋ねると、ハヤテもすぐに落ち着いた。

「すいません…。ちょっと気が動転してました…」

「いえ、動転してた訳ではないと思いますわよ?」

アテネの言葉にハヤテは首を傾げた。

「まあ、それはいいとして。もう一度聞きますわよ?帰って来るまでに何があったんですの?」

「えっと…」

ハヤテは言葉につっかえながらも、何とか先程までの事を説明した。

「という事なんです…」

「事情はわかりましたわ…。でも、ハヤテ。それは大神さんに頼まれたわけではないのでしょう?」

「ええ、まぁそうなんですけど…」

困ったようにハヤテは頬をかく。

「でも、ハヤテ君は大神君の手助けをしたいと」

「はい」

ハヤテの返事を聞くと、六花は顎に手を当て考え始めた。

「それで……なぜハヤテ君は大神君の手助けをしたいんですか?大神君からしたら迷惑かもしれませんよ?」

確かに六花の言う通りであった。ハヤテにとっては善意からの行動でも、零司にとっては悪意にとられてしまうかもしれない。

「それでも構いません」

だが、ハヤテはそれでも構わない。だってハヤテは、困っている人に手を差し伸べるから。例えその人が望んでいなくても、手を差し伸べ、いい方向へ連れて行く。

その答えを聞くと、六花は深い溜息をついた。

「ハヤテ君の決意は固いようですが……どうしますか?アテネ様」

「どうするもこうするも……例え止めたって無理矢理出るでしょうから、出るしかないでしょう…」

「まあ、そうなりますよね〜…」

最早二人は諦めムードであり、ハヤテは申し訳ない気持ちで一杯であった。

「それでハヤテ、確認しますけど…。まず第一に、目的は優勝ではなく、大神さんのサポートである」

その条件にハヤテは頷く。さらにアテネは続ける。

「そして第二に、サポートなので、出来るだけ他の人の邪魔をする。これもこの競技だから出来ることですわね…」

それにもハヤテは頷いた。

「そして最後に、出来るだけ、大神さんには気づかれないようにサポートすると」

「はい」

「では六花、登録をしておいてちょうだい」

「了解しました」

礼をし、六花が部屋を出て行ったのを確認すると、ハヤテはアテネに向き直った。

「あの……個人的なことにつき合わせてごめん、アーたん…」

そして、アテネに向かって頭を下げた。

「それは今さらですし……別に私が決めたことですから気にしてませんわ」

「でも…」

「私が気にしてないと言っているのだから、そうしておきなさい」

「……はい!」

そして、夜は更けていく。





       *    *    *





そして、マラソン大会当日。

この日、様々な者が様々な思惑を持っていた。

例えば、

「くふ……くふふふふ…」

競技前、一人の女性が不気味に笑い、本を見ながら歩いていた。手に持っている本のタイトルは『世界の名酒』。

「くふふふふ〜」

また不気味な笑いを発し、周りの生徒は怯えた表情でその女性、桂雪路を見た。

だが、当の本人は周りの視線に気づかず、別のことを考えていた。

(賞金総額一億五千万円。それだけあれば憧れのドンペリだって飲み放題…。こんな…!こんなチャンスを待っていたんだ!勝て雪路!この勝負に―――。雪路!お前は勝てる人なんだ!!)

……相変わらずの思考であった。

「勝つぞーーーー!!」





そしてまた、別の人は。

「なんなのアレ?」

「桂ちゃんは今日も絶好調だね♪」

雪路の事を少し離れていた所で見ていた、花菱美希と瀬川泉はそれぞれの感想を口にした。

「しかし、賞金が出るからってマラソンなんかよくやるわね」

どうでもいいとばかり美希がぼやく。

「あは、私一応五百メートルのに出たよ♪でも美希ちゃん運動嫌いだもんね」

「マラソンなんて適当に棄権しとけばいいのに…。特に自由形なんて出る人の気が…」

「あー、いたいた。おーい美希ー」

聞き覚えのある声に美希は振り返る。振り返った先にはヒナギクと朝風理沙が立っていた。

「お、これはこれは一年女子のコース全勝された生徒会長様じゃありませんか」

「ヒナちゃんおめでとー」

「あら、ありがと」

美希と泉の賞賛をヒナギクは笑って受けた。

「これでラストのマラソン自由形も制すれば全種目制覇ね。ま、頑張ってくださいな」

そう言うと、美希は立ち去ろうとした。

「何言ってるの?あなたも出るのよ♪」

だが、ヒナギクにいわれた言葉を聞いた瞬間、固まった。

「は!?」

「大丈夫。もうエントリーはしてきたから」

「いやそうじゃなくて…!!」

ヒナギクの言ってる事が全く美希には理解できなかった。

「だって生徒会の人であなただけ何も出てないじゃない。だから最後ぐらい出なさいね。私が必ず完走させてあげるから」

「は!!」

そこまで言われて美希は思い出した。こちらをニヤニヤした視線で見ている泉と理紗はちゃんと五百メートルに出ていることに。

そして、二人はこれを見越して五百メートルに出ていたことに気づいた。

「ちなみにコースは白皇の敷地一周だからかなり長いけど」

「くじけず頑張れよ♪」

そこに二人からの援護射撃。

「いやーーーーー!!」

白皇に美希の悲鳴がこだました。





そして、この競技にクビがかかっている零司とナギ。

「いやー…。思った以上に参加者いやがんなー…」

零司は全く緊張した様子なく、周りの参加者を見ていた。

「こりゃ、結構大変かもなチビ嬢。……チビ嬢?」

零司の問いかけにも反応がないことを不審に思った零司がナギを見ると、ナギは考え込んでいる様子だった。

(私が負けたら零司がクビになってしまう…。私が気に入った奴を失いたくない……だが、もし負けたら…)

零司がもしクビになったら。そんな想像が働き、どんどん思考がネガティブになってるようであった。

「……バーカ」

そんなナギを見て、零司は軽く罵倒しながらナギの頭に手を乗せた。

「零司…?」

「期間は短かったかもしれないが、お前はちゃんと頑張って練習したろ?今は俺の事なんか考えなくていい。ただお前は練習の成果を発揮することだけを考えとけって。お前の足りないところは俺がちゃんと補ってやるからさ」

「零司…」

ナギを元気付ける零司の顔は微笑んでいた。その微笑にナギの緊張もほぐれていくようだった。

「お前なら大丈夫だって♪」

「あのー…」

「はい?」

突如聞こえてきた声に振り返ると、係員であろう人が立っていた。

「大丈夫ならスタートしてもらえませんか?」

その言葉に零司は嫌な予感がし、恐る恐る周りを見渡す。

その予感は当たっており、零司とナギの周りには参加者たちが全くいなかった。

「ちょ!?いつの間に!?」

「あなたが励まし始めたあたりですけど…」

「と……ともかく急ぐぞ零司!」

「わかってるよ!」

慌てて零司とナギは走り出した。





「……あれではサポートした方がよさそうですわね…」

「……うん」

その様子をスタート地点から少し離れて所から見ていたアテネとハヤテ。

二人が一位でゴールできるか不安になる二人だった。



――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――



はい、十四話終わり!

はたしてどうなるのか…。

ハヤテ「物凄い不安なスタートですね…」

零司「……なんも言い返せねぇ…」

そして、ハヤテはちゃんとサポート出来るのか!

ハヤテ「物凄く不安になる言い方やめてくれません!?」

まあまあ。では、次の話でお会いしましょう!!

では!!
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Re: 誰がため、何のため 6/15更新 ( No.25 )
日時: 2012/06/15 20:16
名前: 匿名

こんに「こんにちは〜♪木崎輝雪です♪」被る「木崎和也です」被るなーー!!
ふぅ、てことで匿名です♪「現実より二次元が好きで人間より動物が好きな匿名です♪」
・・・おい。
「否定要素でも?」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
「(無しか)感想行きます」
「にしても雪路は暴走してるわね」
「こっちではまともなのにね」
ていうか、雪路関連の事件ってどこも酷くない?僕はそうゆうのがめんどいからまともにしたけど・・・。
「それにしても大神くんは大変ね。ナギちゃんはやればできるけどやらせる段階まで行かせるのが大変だから」
「やる気、か〜」
とにかくファイッ!
「バトルか?」
ちげーよ!ファ・イ・ト!応援だよ!
「そしてハヤテくんはサポートするのね・・・。ばれたら即死ね」
弁明の余地もないの!?
「すぐかどうかは知らんが酷い目には合うだろうな。・・・精神的にも身体的にも」
まあ、ハヤテ。ファイト。
「セイッ!!」(渾身のハイキック)
ぐは!?
「あ、ゴメン。ファイトって聞こえたから」
「(締まらないな〜)次回も楽しみにしてます」
「バイバイ〜イ♪」
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Re: 誰がため、何のため 6/15更新 ( No.26 )
日時: 2012/06/15 20:54
名前: RIDE

どうも、RIDEです。

今回も感想書きますね。

ついに始まったマラソン大会。
あらためて見るとマラソンというよりはサバイバルレースみたいですよね。
生きるか死ぬか、こんなことやっていいんでしょうか?

ナギは相変わらずですね。
零司との特訓でもあんまし体力ついてないみたいですし。
そんな状況の中で、このマラソン大会で零司の首がかかることに。
ハヤテのサポートも付いているから、大丈夫だとは思いますけど。

そういえば原作ではハヤテは賞金が目当てだったんですよね。
ここじゃ考えられないけど。

それぞれも独自の目的があってマラソン大会に参加。
果たして一位になるのは誰でしょうか。
これだけのメンツだと、予想が難しいです。

続き、楽しみです。

更新、頑張ってください。
それでは。

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Re: 誰がため、何のため 6/15更新 ( No.27 )
日時: 2012/06/16 16:07
名前: キー

 キーでし。忘れたころに・・・では(ry。(2度目)
まぁそれはいいとして、・・・ここはノリで忘れたって言いましょうよ。何かっていうと前回の同じくだりです。・・・まぁ、感想行きましょう。

 ナオ「どうも、ナオっちでし。・・・零司君はしっかりしていると思ったのに…まさか出遅れるとは・・・というよりハヤテくん、零司君に始まったっていえばいいのに。それぐらいで気づかれるならハヤテくんがよっぽどわかりやすいか、零司君がよっぽど鋭いかだからサポートはむりよ。」

 サラ「サラです。・・・零司さんならクラウスさんなんて怖くもなんともないのでは?なんておもいました。」

 ナオ「でも・・・これって零司君には被害ばっかりで1位になっても零司君にとって利益がないんだよね。クラウスさんもこんなことを言うなんて・・・ボケましたか?」

 調「作者代理の調です。(賞金総額一億五千万円。それだけあってもドンペリに使うなよ…。こんな…!こんなチャンスは要らない!負けろ雪路!この勝負に―――。雪路!お前は負ける人なんだ!!)・・・雪路の心の声を同じように批判してみました。」

・・・こいつ等・・・これは感想ではなくてただの悪口だぁぁぁぁぁぁ。


 さて、次回も楽しみにしています。ではまた次回か忘れたころに。
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Re: 誰がため、何のため 6/15更新 ( No.28 )
日時: 2012/06/21 19:59
名前: コサッキー

<レス返し>

▼匿名さん

>こんに「こんにちは〜♪木崎輝雪です♪」被る「木崎和也です」被るなーー!!

>ふぅ、てことで匿名です♪「現実より二次元が好きで人間より動物が好きな匿名です♪」

感想ありがとですー♪

ハヤテ「何だか匿名さんの扱いが凄く雑ですね…」

作者の運命さ…。

零司「あそ。てか匿名はそうなのか」

えぇ!?違いますよね、匿名さん!!

>・・・おい。

>「否定要素でも?」

否定要素を…!否定要素を出すんだ匿名さぁああああああああん!!!

六花「若干うるさいですよ〜」

>・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

ちょっくぬぇいさぁん!?

アテネ「名前が原形とどめてませんわよ…」

>「(無しか)感想行きます」

>「にしても雪路は暴走してるわね」

>「こっちではまともなのにね」

零司「匿名のイメージが確定しちまったな…」

うん、そのイメージさっさと捨てようか?失礼だしね。

まあ、それはそれとして…。

雪路が暴走するって普通じゃね?

ハヤテ「何ですかその認識は!?」

いやだってまぁ…。ねぇ?

六花「あっちのまともな桂先生が羨ましいですね…」←(いつも制裁をくわえる人)

>ていうか、雪路関連の事件ってどこも酷くない?僕はそうゆうのがめんどいからまともにしたけど・・・。

原作通りにしただけですけどね。

アテネ「それならまぁ…。普通ですわね…」

いいか悪いかわかんないけどさ…。

>「それにしても大神くんは大変ね。ナギちゃんはやればできるけどやらせる段階まで行かせるのが大変だから」

>「やる気、か〜」

零司「そうなんだよなぁ…。やる気になればいいだけどさぁ…。非人道的なことはやりたくないし」

ナギ「あれの方法だけはやめろ!!」

ハヤテ「一体どんな方法!?」

ま、やる気なんて人それぞれの出し方があるしね♪

>とにかくファイッ!

よし、ハヤテと零司。合図かかったぞ。

零司「いよーっし、いっちょ戦いますかね」←(腕をぐるぐる回して戦闘準備を始める)

ハヤテ「絶対に意味違いますよね!?」

>「バトルか?」

>ちげーよ!ファ・イ・ト!応援だよ!

零司「ちっ」

ハヤテ「零司さん戦いたかったんですか!?」

まあ、若干戦闘狂っぽいしさ…。

>「そしてハヤテくんはサポートするのね・・・。ばれたら即死ね」

>弁明の余地もないの!?

>「すぐかどうかは知らんが酷い目には合うだろうな。・・・精神的にも身体的にも」

大丈夫です。ハヤテは死にはしません。

ハヤテ「死にはしないって…」

零司「てか、酷い目にも合わす気無いけどさ」←(手助けとかはわりと素直に受け取ったりする)

でも身体的には酷い目にあってもらう。

アテネ「結局ですの!?」

まあ、零司じゃないけどさ…。

>まあ、ハヤテ。ファイト。

>「セイッ!!」(渾身のハイキック)

>ぐは!?

だってさハヤテ

ハヤテ「頑張りますよ…!」

って、いきなり何やってんのさ輝雪さんやぁ!

零司「中々いいキックだが、インパクトの瞬間にもう少し体重を移動させると尚いいな」

零司も冷静に判断してんじゃないよ!!

>「あ、ゴメン。ファイトって聞こえたから」

>「(締まらないな〜)次回も楽しみにしてます」

>「バイバイ〜イ♪」

うん、匿名さんは早く輝雪をハヤテに落とさせるべきだ。

ハヤテ「落としませんからね!?」

零司「天然ジゴロは黙ってろって」

ハヤテ「えぇ!?」

六花「何はともあれ匿名さん感想ありがとうございました〜♪」



▼ RIDEさん

>どうも、RIDEです。

>今回も感想書きますね。

ありがとうございますー♪

ハヤテ「感想ありがとうございます♪」

>ついに始まったマラソン大会。

>あらためて見るとマラソンというよりはサバイバルレースみたいですよね。

>生きるか死ぬか、こんなことやっていいんでしょうか?

マラソン大会……開催だぁ!!

零司「テンションうっざ!」

ひでぇ!?

六花「というか、本当にこの行事どうにかしません?」

アテネ「……真面目に検討した方がいいですわね」

うん、もうさぁ…。死ぬか生きるかの競技なんてなんであるんだろうか…?

零司「謎だな」

>ナギは相変わらずですね。

>零司との特訓でもあんまし体力ついてないみたいですし。

ナギ「ふん!運動なんてしなくてよいではないか!!」

零司「へぇ…?じゃあ、このゲームは壊していいよなぁ?」←(手にはミシミシと音をたてるゲームディスク)

ナギ「やめろぉおおおおおおおおおお!?」

零司「まあ、真面目に言うと一朝一夕で体力はつくものでもないけどさ」

それでも若干はついてるけどね。原作と比べると。

>そんな状況の中で、このマラソン大会で零司の首がかかることに。

>ハヤテのサポートも付いているから、大丈夫だとは思いますけど。

零司「なんか本当にさ、何で?っていいたい状況だよ…」

ナギ「うぐ…」

そしてハヤテのサポートに関しては…。まぁ…。

ハヤテ「その言い方は不安になるんでやめてもらえません!?」

>そういえば原作ではハヤテは賞金が目当てだったんですよね。

>ここじゃ考えられないけど。

そういえば原作じゃあそうでしたね。

六花「でもこっちのハヤテ君は借金自体ないんですよね〜…」

でもそれはいいことだよね♪

>それぞれも独自の目的があってマラソン大会に参加。

>果たして一位になるのは誰でしょうか。

>これだけのメンツだと、予想が難しいです。

……誰を優勝させるべきか…。

零司「考えてない訳…!?」

うんまぁ…。どうにかなるさ!

>続き、楽しみです。

ありがとうございます!

>更新、頑張ってください。

>それでは。

零司「RIDEさん感想ありがとうございましたー」

無愛想!



▼ キーさん

>キーでし。忘れたころに・・・では(ry。(2度目)

まず私は(ry

>まぁそれはいいとして、・・・ここはノリで忘れたって言いましょうよ。何かっていうと前回の同じくだりです。・・・まぁ、感想行きましょう。

だが断る!

ハヤテ「乗ってあげましょうよ!」

私はあえてノラない!!

アテネ「あ、感想ありがとうございます♪」

> ナオ「どうも、ナオっちでし。・・・零司君はしっかりしていると思ったのに…まさか出遅れるとは・・・というよりハヤテくん、零司君に始まったっていえばいいのに。それぐらいで気づかれるならハヤテくんがよっぽどわかりやすいか、零司君がよっぽど鋭いかだからサポートはむりよ。」

あ、オリキャラ。

零司「そだな。てか、てめぇが勝手に決めつけんじゃねぇ」←(すぐ不機嫌に)

落ち着こうか零司!?

ハヤテ「いや、零司さんだから気づいているのかと…」

まあ、零司も人間だしね。

因みにこの場合は両方ともあてまはります。

零司「……俺そんなに鋭くはないぞ?」

どこがさ!

> サラ「サラです。・・・零司さんならクラウスさんなんて怖くもなんともないのでは?なんておもいました。」

また増えた!?

零司「まあ、確かに怖くはないな。だが、年上は敬わなきゃな」←(年上で怖いと思う人は数人)

クラウス「む…」

> ナオ「でも・・・これって零司君には被害ばっかりで1位になっても零司君にとって利益がないんだよね。クラウスさんもこんなことを言うなんて・・・ボケましたか?」

零司「本当にな…。でもまあ、楽しいからよし!」

うん、ポジティブだね!

零司「人生は楽しんだもの勝ちって言ってた奴もいるしな」

君の性格がわからないよ!?

零司「曖昧な性格だしな」

> 調「作者代理の調です。(賞金総額一億五千万円。それだけあってもドンペリに使うなよ…。こんな…!こんなチャンスは要らない!負けろ雪路!この勝負に―――。雪路!お前は負ける人なんだ!!)・・・雪路の心の声を同じように批判してみました。」

よっし、ナイスだ調!

雪路「なんでよ!?普通それだけあったらドンペリに使うでしょ!?」

六花「使いません」

アテネ「使いませんわね」

ハヤテ「普通使いませんよね…」

雪路「みんなおかしいわよ!?」

零司「てめえが一番おかしいっての、クソ教師」←(雪路には絶対敬語を使わない)

>・・・こいつ等・・・これは感想ではなくてただの悪口だぁぁぁぁぁぁ。

……うんまあ、確かにね。

> さて、次回も楽しみにしています。ではまた次回か忘れたころに。

なら忘れないでいてやる!!

ハヤテ「変な意地張らないでくださいよ!!」

アテネ「なにはともあれ、キーさん感想ありがとうございました♪」



というわけでマラソン大会第二回目!

ハヤテ「テンション高いですねー」

さて、今回は…。

零司「今回は?」

……では、どうぞ!

ハヤテ「逃げましたね…」←(特に思いつかなかったんだい!)

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――



[さあ始まりました、『マラソン自由形』!伝統のコースを制して賞金を手にするのは誰か!?]

スタートがかかると同時に、アナウンスが白皇中に響いた。

[なおここからは各所に点在するモニターを元に生徒会放送局がゲストと共に解説を行っていきます]

そのアナウンスの声の主は瀬川泉であった。

[ではゲストのサキさん、よろしくお願いします]

[よ……よろしく…]

泉の横のゲスト席に座っていたサキがガチガチの声で返す。

(わ…若にお弁当を届けに来ただけだというのに……何故……とにかく若のメイドとして恥ずかしくない解説をしなければ…)

かなり立派な心がけであるが、緊張した様子ではまともな解説は出来ないと思う。

[で?サキさんはぶっちゃけ誰が優勝するとお思いで?]

[え!?あ…えーっと…そ…そうですねぇ…]

突然話を振られ、サキはわかりやすいくらいに動揺し始めた。

[い…一位の人が優勝すると思います!]

[…………]

サキとしては必死に搾り出した答えなのだろうが、それは当たり前の答えであり、泉も何も返すことが出来なかった。

[なるほど…なら二位の人が準優勝ですね…]

[へ!?あっ!!やっ!!ちが…!それは…!]

泉の言葉にようやくサキも気づき、動揺をあらわにした。

[それでは橘ワタル君のメイドのサキさんありがとうございました]

[いやっ、だからその…!]



(サキの奴…)

周りからの恥ずかしい視線に顔を赤く染めながら、ワタルは後でなにか仕返すと心に決めていた。





       *    *    *





そして場面は変わり、マラソン会場にて。

「一位をとれば優勝ーーー!!力こそパワーーー!!」

当たり前の事を叫びながら雪路は走っていた。

「うはははーーー!!どけどけザコ共ーーー!!賞金は私のものだーーー!!」

金の亡者そのものを表すような言葉を叫びながら、周りの生徒をなぎ倒していた。

……正直教師として疑問を持つような行動であった。




そして、零司たちに場面は変わる。

「ありゃま。先頭から結構離されたなぁ…」

零司はそばにあるモニターを見ながらそう呟いた。

「んで、チビ嬢。まだ走れるか?」

「…………」

ナギはそこらで拾ったであろう木の棒を支えに、プルプルと震えながら立っていた。

「……うん、走れるわけないな」

零司は若干悲しくもあったが、そんな事を今は気にしていられない。

「んじゃ、作戦開始といきますか」

「作戦?しばらく私は走れないぞ」

ナギの情けない発言に零司は心配するなという風に手を振って見せた。

「まあまあ。んで、レースの説明書をざっくりと訳すと……チェックポイントだけ通ればなんでもありだってさ」

「随分省略したな」

「要所だけ読み取れれば問題ない。まあ、それはそれとして、俺がお前を抱えて走っていけばOKだ」

「え?やっ!!ばか!!ちょ…!ちょっと待て!!」

零司の提案にナギは慌てたような声を出す。しかし零司はそれを読み違えていた。

「まあ、確かに危険だな。勇気あるものだけ行けって書いてあるしな」

「いやそうではなくて……抱えるって事はお前…今、体操服だし…それに走って汗かいたし…だから…その…」

顔を赤く染めながらナギは身を捩じらす。だが零司はそんなナギの様子を見て零司は呆れたようにため息をついた。

「あのさぁ……そんな事言ってたら優勝なんか出来ないぜ?俺は気にしないからさ」

「私は気にするわ!!」

「あーもう!がたがたうっせぇ!!」

煮えきらない様子のナギに腹が立ち、零司は無理矢理ナギを抱えて森の中へ走っていった。





「なんだか大神さんもかなり強引ですわね…」

「まあ、クビがかかってるしね…」

零司達が走り去った後、アテネとハヤテは隠れていた茂みから出てきた。

「という訳でお嬢様。僕たちも行きましょうか」

「……待ちなさいハヤテ」

「待ってたら二人を見失っちゃいますよ」

「ハヤテ!?走れるから降ろしなさい!!」

「それじゃ、いきますよお嬢様!!」

叫ぶアテネを無視し、ハヤテはアテネを抱え上げ、零司達を追うべく走り去った。





また場面は変わりヒナギクと美希のペア。

「あの長ったらしい長さのコースを走る気はないけど……ここ本当に学校の敷地内よね?」

「すごいとこよね〜」

二人は最早森とはいえない場所を走っていた。……いや、日本であるかすら怪しいが…。

「というか本当に大丈夫なのかここは!?」

「大丈夫なんじゃない?一応学校の中だし」

説得力のまったくないヒナギクの言葉であった。一応という事は別の可能性もあるのだろう。

「大体……なんで二人組みで参加なのよ」

「ああ、それ?一人遭難しても、もう一人が助けを呼びにいけるようにって…」

「メチャクチャ危険じゃないかぁ―――!!」

ヒナギクの答えに美希は大声で叫んでいた。

それは、遭難してしまう程白皇の敷地が広いことはよくわかった発言だった。

「もし危ない何かがあったら―――」

「大丈夫よ」

批判しようとした美希の言葉を遮るヒナギク。

「その時は、私があなたを守るから♪」

「…………」

ヒナギクの笑顔に、美希は押し黙ってしまった。

「あ、一つ目のチェックポイントよ」

ヒナギクの指した先には確かにテントがあった。

「お疲れ様。今何位ですか?」

「そうですね〜六組ほど抜けていったから……大体七位ですね」

「七位!?」

もっと上の順位だと思っていたのか、ヒナギクは驚いた。

「ところでこのバラの花は?」

美希がテントの隅にあったバラを指しながら言う。

「ああ、ちゃんと胸につけてくださいね。ここから先、勝つために相手の邪魔をする人も出てきて危険ですから……その胸のバラを散らされた方が負けになります」

「どこの少女革命よ…」

「とにかく急ぐわよ!七位だなんて…!」

「あ、はい!!」





「いやーーー、一気に五位かー。作戦成功だなチビ嬢って、どした?」

走りながら、抱えているナギを零司が見ると、顔を真っ赤にしていた。

「いっそ殺してくれ…」

「いやいや、そんなこと言わないでとっとと優勝―――」

「それはどうかな?」

「―――っ!」

突然上からかけられた声に零司は反射的にその場を飛びのいていた。

それと同時に、零司がいた場所に何かが勢いよく突き刺さっていった。

「バラの花…」

「そう簡単に優勝はさせないよ」

「……やっぱあんたかよ」

再び上からかかってきた声に零司は確信した。

「氷室…」

そして、木の上にいるその姿を確認すると、零司はいつもと違う雰囲気を纏い始めた。

「ふふ……相変わらず怖いね…」

「るっせ。んで?お前は賞金目当てなわけ?」

「まぁね。お金が僕は大好きだからね」

「そんなもの別の方法で稼げっての。まあそれで、俺らを潰しておこうってか」

「そのとおりだよ……というわけで、ここで潰さしてもらうよ!」

叫ぶと同時にバラの花が零司達に襲い掛かる。

「チビ嬢、ちゃんとつかまってろよ!」

「え!?うわっ!?」

それを零司はナギを抱えたままかわしていく。

だが、零司を知っているものならわかるほど、そのスピードは遅かった。

「動きが鈍いね。体を痛めてるのかい?」

「うっわ、即効でばれたよ…」

零司が体を痛めている理由。それは先日クルーザーの爆発事故に巻き込まれてたからである。

(にしても、ハンデが大きすぎるな、おい)

バラを避けることに関しては、今の零司でもなんとかなる。だが、そこからが一番問題だった。

(反撃できなきゃ意味ねー…)

ナギを抱えているため、両手は使えない。使うにはナギをおろすしかない。だが、ナギをおろせば絶好の的である。

(……やべ、どうしよ)

零司が本気で困った時、



「「お待ちなさい!!」」



どこからか声が聞こえた。

「弱きを助け強気をくじく!我ら正義の味方!メイドブラックマックスハート!」

「お、同じくメイドホワイトマックスハート…」

『…………』

その二人を見た瞬間、その場にいた全員は言葉を失った。

(……つっこむべきかつっこまざるべきか…)

……零司だけはそんな事を考えていたが。

「あ、あの…」

零司が珍しく恐る恐る声をかけたが、、

「マックスハートです!!」

「二人でキュアキュアなんです!!」

「あ、なんかすいません…」

何かを隠すように二人に叫ばれ、すごすごとすぐに引き下がった。

「とにかくここは私達に任せて、あなた方は先に行って下さい!」

「……じゃあ、任せました!」

若干零司としては心苦しかったが、目的を果たす為に、零司はナギを抱え再び走り出した。

(……ま、近くにクラウスさんっぽい人いたし大丈夫だろ)

……相変わらず鋭い零司だった。





[さぁいよいよレースも終盤戦!!現在七組がトップグループを形成しています!]

再び白皇中に泉のアナウンスが響く。

[因みにレースをコース通り走ってる生徒は、すでに「しんどいからやってられねー」の一言でほとんどリタイアされてますが、この状況をどう思いますか?ワタル君]

[名門ですからね。体力ないですね]

サキのかわりに泉の隣に座ってるワタルがさらっと酷いことを答えたが、何気に当たってるので何も言えない。

[ん〜…。少し体育の授業を厳しくした方がいいかもですね〜]

[……天皇州家メイドの六花さん?いつからそこに?]

[たった今ですよ?]

[あ、そうですか…]

明らかに気配が感じられなかったが、それを指摘する勇気は泉にはなかった。

[あ、桂先生が崖に落ちた…]

[まあ、あの人なら大丈夫ですよ♪]

六花さんの言葉が妙に納得できる周りの人々だった。





雪路が谷底へと落ちた時間と同時刻。

ナギたち二人は野々原達と少し開けた場所で戦っていた。

「はぁっ!」

気合と共に野々原が竹刀を振り下ろす。

「ぐっ!」

それを零司はなんとか受け止める。そして、そのまま鍔迫り合いの状況になる。

「どうしました?この前より動きが鈍いですよ?」

「こちとら怪我してるんでね…。てか、あんたは出てると思ったけども……何でいるんだかね…」

「ええ、私は賞金には興味がありませんが……若に厳しい試練を乗り越えて、立派な紳士になってもらいたいと思っているのです」

「零司!」

「だから!!」

(重―――!?)

鍔迫り合いの状態から野々原が零司に押し勝ち、零司が後方に吹き飛ばされる。

「今日は手加減しません」

「……あの時は手加減してたってのかよ…」

手に持ってた竹刀を支えにしながら、零司はヨロヨロと立ち上がる。

その息はかなり荒れていた。

(やっべぇ…!全身の筋肉が悲鳴上げちまってる…!このままだとまともに走ることすら出来なくなっちまう…)

それは零司にとってかなりマズイ状況だった。

今は野々原一人と戦っているから、まだこの状況で済んでいるといえる。

だが、野々原一人でなくなったら。例えば後ろで竹刀を構えてる東宮が加わったとしたら。

(…………下手したら勝てないな)

「はぁ…」

その溜息は二対一の戦いにではない。東宮の強さに対しての溜息だった。

もし、以前剣道場で戦ったままの強さであったならば、今の状況でも零司はなんとかなった。

そう、今までの東宮だったならば。

(あーあ……こんなめんどい事になるってわかってたら、絶対に相談なんかに乗らなかったし、相手にもならなかったのにな…)

実は東宮は強くなっている。それもかなり。

それでも、ヒナギクやハヤテには敵わない強さでもあるが、強くなったのは紛れもない真実だ。

その原因は零司にすべてあった。

剣道場で戦った数日した後、東宮が突然帰ろうとしていた零司を訪ねてきたのだ。

その内容は、『強くなるにどうしたらいいか』という事だった。

それを零司は口調が乱暴ながらも、真剣に対応した。

その答えてもらった内容を東宮は実行し、偶に零司に挑んでくるほどになったらしい。

その強さは、剣道場での東宮が嘘に思えるくらいだったとか。

「はぁ…」

また溜息を零司はつく。

「……ま、少し頑張りますかね」

竹刀を握りなおし、零司は二人へと駆けていった。





それと同時刻、ハヤテ達は…。

「……迷いましたわね」

迷っていた。それもかなり。

速いスピードで走る零司を見失い、当てずっぽうに走った結果、恐らくモニタ出来ないほどの奥まで来ていた。

それも、ハヤテの不幸スキルゆえのことだろう。

「……それで、どうしましょうか…」

「適当な方向へ行くしかないでしょう…」

「そうですよね……あはは…」

そう言って笑うハヤテはどこか虚ろな表情だった。

「とにかく行きますわよ」

一歩を踏み出すアテネ。



その足の先に矢が勢いよく突き刺さった。



「きゃっ!」

突然の飛来物に、アテネは尻餅をついてしまった。

「お嬢様!」

「私は大丈夫ですわ……ハヤテ!」

地面に尻餅をついたまま、アテネがハヤテの後方を指差した。その指差した先には、

「…………」

この前ハヤテを襲った黒フードが木の上にいた。

「あなたでしたか…!」

その姿を確認すると、ハヤテは日本刀を布から取り出し始める。

「…………」

その事にも、全く動じない黒ローブ。

そして、突然ローブを翻しあの夜やってきたように矢を放ってきた。

「くっ…!」

その矢をハヤテはどんどん弾いていくが、対応しきれなくなったのか、段々後ろに後ろに下がっていく。

(このままじゃお嬢様に当たってしまう…!)

その事を認識し始めたハヤテは、ある事を決め始める。

「ハヤテ…!」

「……お嬢様」

背後にいたアテネの心配そうな声を聞いたとき、ハヤテは考えていたことを実行することに決めた。

「……しっかりつかまってて下さい!」

背後のアテネを抱え、黒ローブへと背中を向けて走り出した。

「…………」

突然の行動に反応できなかったのか、黒ローブは矢を放ってこなかった。

そして、ハヤテはそのまま森の中を走り続けた。





二人が走り去った後、

「……普通、こんな所来ないはずなんだがなぁ…」

黒ローブは呆れたような声で呟いていた。

「こんなところじゃ、まともな傷与えにくいから適当に追い払ったが……ちゃんと元の道に戻ったよな?」

心配するようなそぶりをすると、

「……ま、追いかければわかるか」

そう言い、同じ方向へと走っていった。



????????????????????????????―??????―?―???



というわけで、マラソン自由形二回目終わり!

零司「俺、次どうなる訳?」

さぁね〜?

零司「……殺していいか?」

ハヤテ「いいわけないですからね!?」

……うんまあ、次で!!

では!!
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Re: 誰がため、何のため 6/21更新 ( No.29 )
日時: 2012/06/21 21:18
名前: 匿名

どうも〜♪匿名っす♪
「輝雪です♪」
「和也」
感想に来ました♪
「では、感想です♪」
「・・・東宮はそこそこ強くなったか。ついにナギと肩を並べる程の雑魚はいなくなったか」
そうだね〜。似たり寄ったりのステータスがまさかの零司の手によって強化されてたもんね。
「事実上の白皇一弱い人物はナギちゃんで決定ね。残念だけど」
「もはや体質に近いからなあのひ弱さは。鍛えても無いないんじゃないか?」
もう手遅れって状況に使う言葉だな。
「お前もそうじゃないか」
へ?何が?
「前回の感想♪」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
「長い」
「最後の方では黒ローブが現れたわね。腕がなるわ♪」(←生ヲ断ツ影と忍ビ寄ル死を構える)
戦っちゃダメだからね!?キーパーソンっぽいし!?
「やめとけ」
「・・・ちぇ」(←武器を影の中にしまう)
「ふう、マラソン大会も大詰めだな」
次回からの展開が楽しみです♪
「それではそろそろ終わりたいと思います♪」
匿名でした♪
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Re: 誰がため、何のため 6/21更新 ( No.30 )
日時: 2012/07/04 17:35
名前: キー

 ふっ、キーです。忘れたころに・・・・(ry

 調「どうも、作者代理の鍵音調だ。・・・おい、キー、また忘れてないってかえされる
ぞ。」

 はっはっは。そうならないための策として・・・

 キーです。忘れられる前にやってきました。

 調「いや、2つ言っても多分うまく流されて終わるとおもうぞ。」

 キー「なに、・・・・・クッ。」

 リン「はい、バカなことやってないで感想。あ、リンです。」

 調「黒のフード、何者なんだ?」

 リン「いや、黒のローブだし。」

 調「でもさ、強くなったら・・・東宮ではないよな。…ヘタレこそが東宮だし。」

 リン「まぁ、零司に原因があるのよね。まぁ、野々原が居なければすでに零司によって気
絶していただろうけど。」

 調「マラソンも大詰め。零司、雪路だけは殺し・・・気絶させておいた方がいいとおもう
よ。金の亡者だし。あとは、ハヤテの不幸より今回はただの不注意だとおもうのだがな。」


 リン「さて、原作とどこがどう違うのか、楽しみね。」


 ではまた。
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Re: 誰がため、何のため 6/21更新 ( No.31 )
日時: 2012/07/07 21:56
名前: コサッキー

<レス返し>

▼匿名さん

>どうも〜♪匿名っす♪

>「輝雪です♪」

>「和也」

どもで〜す♪

零司「感想どもー」

無愛想!!

>感想に来ました♪

>「では、感想です♪」

よっし、かかってこいやぁ!

ハヤテ「だからなんで、そんなにケンカ腰なんですか!?」←(私の性格故にね!)

>「・・・東宮はそこそこ強くなったか。ついにナギと肩を並べる程の雑魚はいなくなったか」

>そうだね〜。似たり寄ったりのステータスがまさかの零司の手によって強化されてたもんね。

東宮強化!

零司「おかげで大変なんだけどさぁ!?」

東宮「……いや、相談に乗ってくれたの大神だけど?」

零司って本当に困ってる人ほっておけないよね…。

零司「るっせぇ!!」←(過去にかなりそういう経験あり)

野々原「ですが、坊ちゃんを鍛えてくださったことには感謝しております」

零司「……そりゃども」←(微妙な心境)

まぁ、そのおかげでただいま大変なんだよねー…。

零司「後悔とかはしてないんだが……今の状況を鑑みると辛いものがあるな…」

>「事実上の白皇一弱い人物はナギちゃんで決定ね。残念だけど」

>「もはや体質に近いからなあのひ弱さは。鍛えても無いないんじゃないか?」

零司「当たり前だろ?」

ナギ「零司!?フォローしてくれてもいいだろう!?」

零司「……すまん、無理」

ナギ「うぉい!」

零司「まぁ……体力は鍛えてりゃなんとかなるんだろうけどさ。それでも弱いのは決定事項だろうな」

ハヤテ「……零司さんって、なんだかすごすぎません?」

まぁね。実体験に基づいた事もあるしさ。

>もう手遅れって状況に使う言葉だな。

>「お前もそうじゃないか」

零司「……実際手遅れだしな」

マリア「えぇ…」

六花「匿名さんも手遅れな部分ありますよね〜」

……あったっけ?

>へ?何が?

>「前回の感想♪」

零司「あぁ、あれね」

>・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

>「長い」

ハヤテ「……人って自分が窮地に陥ると黙りますよね…」

まあ、それが自己防衛なんだろうね…。

>「最後の方では黒ローブが現れたわね。腕がなるわ♪」(←生ヲ断ツ影と忍ビ寄ル死を構える)

黒ローブ「……かかってこいよ…」←(威圧感に近いものを放出し始める)

うん、やめようかぁ!?

零司「おぉ……中々の殺気…!」

ハヤテ「零司さんも冷静に判断しないで下さい!」

零司(あれとハヤテ戦ったら……十中八九負けるだろうなぁ…)

(……シビアな事は考えないようにしようか?)

零司(安心しろ。思うだけにして言いはしないからさ)

(ならいいけどさ…)

ハヤテ「あの……何をコソコソ話してるんですか?」

零司「なんでもないなんでもない」

>戦っちゃダメだからね!?キーパーソンっぽいし!?

>「やめとけ」

まあ、確かにキーパーソンですね!

黒ローブ「……ま、あんまり戦いたくはないがな。目的は輝雪じゃないし」

>「・・・ちぇ」(←武器を影の中にしまう)

黒ローブ「……なんで残念そうなんだよ」

戦闘狂?

零司「さぁな」

黒ローブ「……というか、負けないと思うがな」

まぁねぇ…。実際強いしさ…。

>「ふう、マラソン大会も大詰めだな」

>次回からの展開が楽しみです♪

ありがとですー♪

>「それではそろそろ終わりたいと思います♪」

>匿名でした♪

アテネ「匿名さん感想ありがとうございました♪」



▼キーさん

>ふっ、キーです。忘れたころに・・・・(ry

まず私は…(ry

零司「その返しやめね?」

>調「どうも、作者代理の鍵音調だ。・・・おい、キー、また忘れてないってかえされる
ぞ。」

>はっはっは。そうならないための策として・・・

>キーです。忘れられる前にやってきました。

ハヤテ「確かに返しましたね、うちの作者さん…」

まぁね!!

そして、私は感想くれた人の事を忘れる訳がない!!

>調「いや、2つ言っても多分うまく流されて終わるとおもうぞ。」

>キー「なに、・・・・・クッ。」

六花「まあ、上手く流したかどうかはわかrませんけどね〜♪」

うんまあ、そりゃね…。

> リン「はい、バカなことやってないで感想。あ、リンです。」

アテネ「感想ありがとうございます♪」

>調「黒のフード、何者なんだ?」

>リン「いや、黒のローブだし。」

一言で言い表すなら、敵。

ハヤテ「敵なんですか…」

うん、敵。ハヤテが勝てる確率が十パーセント未満な敵。

ハヤテ「僕が戦うんですか!?」

あったりめーよ!!←(まあ、それはもう少し後ですけどね!!)

>調「でもさ、強くなったら・・・東宮ではないよな。…ヘタレこそが東宮だし。」

>リン「まぁ、零司に原因があるのよね。まぁ、野々原が居なければすでに零司によって気
絶していただろうけど。」

私も書いてて『あれ?誰だこいつ?』みたいになりましたね…。

零司「まあ、原作のイメージ強いしな」

あと、零司って自分に襲い掛かってくる者は返り討ちにしますけど、それ以外は完璧にスルーなんですよね。

零司「まあ、あのまま構えてただけならほっといて先に行ったんだがな…」

東宮「ちょうどいい機会だったからな…」

零司「マジでめんど…」

>調「マラソンも大詰め。零司、雪路だけは殺し・・・気絶させておいた方がいいとおもう
よ。金の亡者だし。あとは、ハヤテの不幸より今回はただの不注意だとおもうのだがな。」

零司「……雪路って落ちたよな?」

ハヤテ「落ちましたけど…」

………まあねぇ…。

>リン「さて、原作とどこがどう違うのか、楽しみね。」

>ではまた。

どーこが違うっかなー?

零司「歌うなよ…」

六花「キーさん感想ありがとうございました♪」





テストって嫌だよね。

ハヤテ「いきなりなんですか!?」

テストのせいで更新遅れたわ!

零司「知るかっての」

まあそれは置いといて…。

さて、十六話目。この話でマラソン大会は終わる!

零司「マジかい」

マジマジ。

そして、零司の強さがまた一つ明らかに…!

零司「ならねぇよ」

ハヤテ「ならないんですか!?」

……ま、そこは置いとくか。では、どうぞ!





――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――





森の中では竹刀のぶつかり合う音が響いていた。

「っだらぁ!」

零司が大声と共に東宮が振り下ろした竹刀を横に弾く。

「うわっ!」

弾いた東宮の声が零司の耳に届いてくるが、今の零司にそんなことを気にする余裕は無い。

竹刀を弾いた勢いのまま、零司は野々原へと駆ける。

その行動に野々原は竹刀を構えた。

「ふっ!」

零司が右から斬り込むと、それを野々原は悠々と受け止める。

その事に零司は内心で舌打ちする。

(チッ!俺の力が落ちてきてやがる!)

「やぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

「っ!」

背後から聞こえてきた声に、零司は野々原に受け止められている竹刀を自分の手元に急いで引き戻す。

そして、すぐにその場から右に飛んだ。

その直後、東宮の竹刀がいた場所を通った。

その光景を横目に見ながら、零司はナギの横へ着地する。

「零司、大丈夫か?」

「ああ、かすってもいねーよ」

心配そうに駆け寄ってきたナギを落ち着かせながら、零司は今の状況を分析し始めた。

(今の俺は怪我の体を無理矢理動かしてる感じだ。そして、一対二の状況。あっちのやり方は特には決まってない。が、打ち合って勝つってのは無理そうだな)

「さって、どうすっかねぇ…」

痛み始めてきた右腕を押さえながら零司はさらに考え続ける。

(勝つ方法が無いわけでもない。無いわけでもないんだが……あれらはあんま使いたくない技だしなぁ…)

そこまで考えた結果、結局はさっきまでの方法でやるしかないと零司は結論付ける。

「ふーーー…」

大きく息を吐き、零司は竹刀を握る力を強くした。





       第十六話「マラソン自由形決着」





(まずは、位置を変えておくか…)

「おい、チビ嬢。俺が合図したら俺に向かって走って来い」

「え?お、おい零司?」

「いいな?」

少し声を荒げると、ナギは頷いた。

それを確認すると、零司は再び二人へと走った。だが、どちらかへ明確に走るのではなく、二人の真ん中を狙ってだが。それを見て、二人も構える。

(まずは東宮…!)

後数歩というところで、細かく体を動かしフェイントをかけ、どちらも一瞬身を強張らせた瞬間、零司は竹刀ごと東宮へ体当たりをかました。

「ぐっ…!」

その行動に東宮は反応できず、少しよろめいた。

体当たりする前に勢いを少し殺してしまったので、威力はあんまりなかった。だが、東宮はよろめいた。零司にはそれで十分だった。

東宮がよろめいたのを確認すると、零司はすぐに振り向きながら、竹刀を振った。

勿論、背後には野々原がいたので、それは簡単に防御された。

だが、零司はそれを読んでいたかのように笑った。

(よし…!ここまでは順調……後は、今の体で上手くできるかだ!)

左手を離し右手だけで竹刀を握る。そして、左手を野々原からは見えない位置へともっていき、左手に握っていたものを野々原へと打ち出した。

「なっ!?」

射出された物体は野々原の顎に当たり、そのまま野々原を後ろへよろめかせた。

その間に零司は後ろへと目をやり、東宮が自分を見ていることを確認した。

(よし、距離はオッケー!)

距離感を確認すると、零司はまだ若干ふらついている野々原の背後へと一瞬で移動した。

零司がいきなり自分の目の前からいなくなったことで、東宮は仰天していた。

だが、零司にとってはそれは好都合だった。

(チビ嬢の方向は……あっちか)

そして、自分の主のいる方向、右斜め方向を横目で確認し、零司は野々原へ体当たりした。

「ぐっ…!?」

突然の衝撃に野々原は踏ん張ることが出来ず、東宮のいる方向へ歩くようによろめいた。

「野々原!?」

東宮が自分へと向かってくる野々原に近づいた時、零司は、今度はちょうど二人の中間あたりの場所へ一瞬で移動した。

「っ!?」

いきなり現れた零司に東宮が目を見張るが、それはもう遅かった。

「だらぁ!」

叫び声と共に、東宮と野々原を竹刀で上に打ち上げる。

そして、零司もすぐに飛び上がり、二人をナギのいる方向の少し後ろへと殴り飛ばした。

「チビ嬢!」

「!!」

ナギはいきなり自分が呼ばれたことに身を飛び上がらせたが、すぐに零司に向かって走って来た。

「チビ嬢、大丈夫か?」

「あ、ああ。なんともないぞ。というか零司!やりすぎではないのか!?」

「やりぎじゃねぇよ、手加減したしな。それに…」

零司が二人を飛ばした方向へと目を向けたので、ナギも目を向ける。その先には、

「なっ!?」

二人が土埃の中から歩いて出てきた光景があった。

「……ったく、殴り飛ばされる直前に竹刀を間に入れてましたか」

「えぇ。そうでなければ私達は今頃ダウンしていたでしょうね」

「個人的にはそっちの方が助かったんですけどね…」

予想通りであったかのように言う零司であったが、内心ではかなり驚いていた。

野々原がそうやって防御することは何となく零司にも予想は出来ていた。それ程の技量があるであろうと零司は見抜いていたからだ。

だが、東宮に関してはそう出来るとは全く思っていなかった。

(こりゃ、ちと鍛えすぎたかねぇ…?)

それが零司との特訓の成果といえば嘘ではないだろうが、実際的には東宮がそう出来る可能性があったから出来たことである。

(だーから、潜在能力ってのは嫌いなんだよ…)

つまり、零司との特訓で(傍目から見ると、ただの一方的な打ち合いだったが)東宮の潜在能力が若干開花したということであると零司は結論付けた。

(ま、無駄に開花しないで人生終えるよりよっぽどいいけどさ)

二人がまた構えたのを見て、零司も構える。

(さて、二度も同じ手が通じるとは思えないな…。どうするべきか…)

ナギを後ろにやりながら、次の方法を考え始めた瞬間。



ドクン。と心臓が大きく跳ねた。



「がぁっ!?」

その瞬間、零司は胸を押さえて蹲った。

(なんで…!なんでこんな事で高ぶるんだよ!!)

「零司!?一体どうしたのだ!?」

零司の耳に届いているはずのナギの声が零司には遠く聞こえた。

(こんなお遊びみたいな戦いで高ぶるわけねぇだろうが!!)

『……戦いは戦いだろ?』

零司の頭の中に声が響く。その声はこの場にいる誰のものでもない、別の誰かの声だった。

(くっそ…!)

今、零司の心臓は普段では考えられないようなスピードで脈動していた。

『さぁ、さっさと委ねちまえよ…』

(絶対に断る…!)

『くくっ、そんなこと言っても、いや、思っても体は正直だなぁ?』

(るっせぇ…!)

零司は体自体が熱であるかのように感じていた。少しでも気を抜くと、意識がもっていかれる程、体の熱は熱かった。

『さぁ、まずは思考からか?それとも体かぁ?』

頭に響く声に反応できない程の熱が零司を襲う。

(やっべ……もう……ダメ……だ…)

その熱に耐え切れなくなり、意識を手放しそうになった瞬間、

「零司!!」

自分の主の声が今度はしっかりと聞こえた。

(っ!!)

その声に零司は手放しそうになった意識を取り戻した。

『ちっ…』

それと同時に声と熱が引いていった。

「…………っはぁ!」

詰まっていた息を吐き出し、零司は勢いよく立ち上がった。

「零司!大丈夫なのか!?」

「………あぁ、気にすんな」

若干涙目であったナギを安心させるように、零司は微笑みながらナギの頭を撫でた。

撫でられているナギは、若干落ち着かないようで、そわそわとしていた。

その様子を見て、零司は自分の中のある事に気づいた。

(あぁ……そういう事ね…)

「……チビ嬢」

「……どうした零司?まさか、体がどうかしたのか?」

「いや、そういうんじゃなくて…。後ろの方に先に行っててくれね?」

「いや、でももし…」

「安心しろよ。この周りにはだーれもいないからさ♪」

零司が心配であったためか、すぐには動こうとしなかったが、すぐにナギは折れた。

「わかった……だが、すぐに来いよ!!」

「ん」

そうしてナギは、森の奥へと一人で走っていった。





「…さて、待たして悪かったですね」

「いえいえ」

ナギが見えなくなったのを確認すると、零司は謝罪と共に二人へと向き直った。

「ところで、大神。本当に大丈夫なのか?」

「はっ。敵の心配するとはお前もまだまだだな、東宮」

「なっ!僕はお前を心配―――」

「知ってるよ。ま、大丈夫だから心配すんな」

そう言って笑う零司を見て東宮は何も言えなくなった。

「心配してもらっといて悪いんだが……あんたらにはとっとと負けてもらわなきゃいけないんだよ」

「ほう…。その体でですか?」

「別に体は関係ないけどさ。この状態でも二人には勝てるし」

「先程までは苦戦していたのにか」

東宮の言葉に零司は肩を竦めた。

「まぁ確かに、さっきまでは苦戦してたさ」

「だったら―――」

「でもな?今は苦戦する材料なんかこれっぽっちもないんだよ」

零司のその言葉に二人は眉をひそめるが、零司は続ける。

「さっきまでの俺は頭の中に何かが引っかかっていた。なんで俺はこんなに一生懸命にやっているんだろうなってさ。だって俺はめんどくさがりだから。基本的に何事も適当にやるしな。でも、俺は必死になってた。これがなんでかわかるか?」

零司の質問に二人は無言で答える。

「答えは簡単。単にこの繋がりを失いたくないからだよ」

呆れたように零司は両手を広げ、続ける。

「なんでかさ、俺の中でチビ嬢の存在がかなり大きくなっちまってた。執事としてチビ嬢と接してるうちにさ。だから、俺はこの繋がりを失いたくなんか無い。だから、それを繋いでおくためなら負けは無い」

「……それだけで強くなるっていうのか?」

「ま、お前にもわかる日が来るんじゃないか?それじゃ、とっとと倒させてもらうぜ?」

そう言うと、零司は先程よりも強い威圧感を発した。

「「っ!!」」

零司から発されてくる、先程までとは違う威圧感に、二人は反射的に構えた。

それを見て、零司も構える。

しかし、それは剣道のような構えではない。

普通に竹刀を握り、その柄を右目の前に持ち、右から左に斜めになるように構えた。

「時間もあまり無いんでとっとと終わらしてもらうぜ?」

その自身に溢れた言葉に二人はさらに気を引き締める。だが、それは零司にとっては意味の無いこと。

「……我流剣術、剣舞『嵐』」





       *    *    *





零司に言われ、ナギは森の中を一人で走っていた。

だが、スピードはかなり遅く、しきりに後ろを見ていた。

「本当に零司は大丈夫なのか…?」

別れてから一分も経っていないが、ナギはかなり心配していた。

勿論、零司の強さをナギは知っている。だから心配する必要はない。

そう頭ではわかっていても、やはりナギは心配であった。

(やはり……心配だ…)

遅くても進んでいた足が止まる。

(……戻ろう。たとえ、零司に何を言われても私は零司が心配だ!)

そう決意し、体を反転した。

その刹那、突風がナギへ襲い掛かった。

「わっ!?」

突然の突風にナギは目を反射的に瞑った。

その突風は数秒続いた後、止まった。

(今の突風……まさか…!)

そして、ナギの脳裏に先日剣道場で見た野々原の必殺技がよぎった。

もしかしたらそれに零司がやられたのではないかという悪い想像がナギの頭の中を駆け巡る。

「零司…!」

来た道を戻ろうとした時――

「呼んだ?」

その目的の人物が、目の前にいた。

「零司!無事だったか!!」

「当たり前だっての」

そう言うと、零司はナギの頭を少し乱暴に撫でた。

「まぁ、それはそれとして……一つ問題点があるんだよな…」

「問題点?」

ナギの質問に零司は無言で進むべき先を指差す。

その先には、

「やっぱり来たわね零司君!ここから先は通す訳にはいかないわ!!」

ヒナギクと、へばった美希がいた。

「ヒナ……私も……走れな……水…」

「あ、はいこれ水…」

「……明らかなる人選ミスだな」

「うるさいわね!!」

(思ったことを言っただけなのになぁ…)と思いながら、零司は身構える。

「ところで零司君、あなたこのマラソン……ずっとナギを抱えて走ってるの?」

「……大体はな」

「それじゃあ……ナギはなんでこのマラソンに参加したのかしら?」

「っ!」

その言葉に零司は固まった。

元々、零司はこのマラソン大会にはナギの運動嫌いを少しでもなくす為に参加した。

(なのに、これじゃ意味がねぇな…!どんだけ俺はこいつの執事でいたいんだろうなぁ…!!)

「だ…!だが走れないものは走れないのだ!!みんながヒナギクのように完璧にはなれないのだ!!」

「それでも……苦しくて……辛くて……死んでしまいそうな思いのその先に……なにものにも換え難い本当の喜びがあったりするのよ…」

「…………」

そのヒナギクの言葉は、ナギの心の中に浸透していった。だが、

「……俺はそうは思わないがな」

零司にはそうはならなかった。

「そういう考え方が出来るのは、成功したからだろうが…。……成功してない奴に同じ事が言えると思ってんのか?」

その言葉はどこか悲しげであった。まるで、それを経験しているかのようであり…。

「で、でも、その時は成功しなかったとしても、次が―――」

「次…?次なんてねぇよ…!次なんてあると思ってんのはどこかお前が別の奴を見下してるからだ!!」

「な!?何よその言い方は!!私は他の人を見下したりしてないわよ!!」

「そういう奴ほど人を心のどこかで見下してんだよ!!人に次なんてねえ!!チャンスなんて生きてく中でたった一回きりだ!!」

「そんなはず無い!!チャンスはいくらでもあるはずよ!!」

「っざっけんな…!なら、そのたった一度の失敗で絶望した奴に同じ言葉が言えんのかよ!!」

「っ!?」

「言えるわけねぇよなぁ!お前は成功してるから失敗した奴の気持ちなんてわかるはずないよなぁ!!」

「ち、違う…!私は…!」

零司の声が木霊する中、ヒナギクは蹲って頭を抱えた。

「……行くぞチビ嬢」

零司はそんなヒナギクを見やると、感情の無い声でナギを促した。

「え…?だ、だが…」

「行くぞ」

零司が歩きだそうとした時、

「おい、零司君」

へばっていた美希に声をかけられた。

「君はなにがしたいんだ?ヒナの心を折ろうとして楽しいのか!?」

「……あぁ、楽しいね。何もわかってない奴の心を折るのは楽しいね…。知ったかぶりしてる奴の心を折るのは楽しいね!」

「君という奴は…!」

悔しそうな美希の声に零司は笑いを漏らす。

「くはっ。俺が許せないか?それならどうするってんだ?俺を殴るか?それとも殺すか?」

ヒナギクの心を言葉だけで折りかけてた零司に敵わないことは自明の理であり、その事実がわかっている美希は歯噛みするしかなかった。

「別に許さなくてもいいぜ?俺は元々許されない奴だしな♪社会的にでも殺してみろっての♪」

妙に楽しげな口調で言い、零司はナギを連れてその場を去った。





ヒナギクがいた場所から、数百メートル離れた所で。

「おい、チビ嬢」

「!!な、なんだ零司?」

「……そんなにビクビクすんなって…。傷つくからさ…」

人の心を折りかけておいて、怖がるなという方が無理であろうが…。

「まぁいいや。とにかく、ここからはお前一人で行け。ここからゴールは遠くないしな」

「……は!?何故だ!?私一人では無理に決まっているだろうが!!」

どこまでも後ろ向きな発言に、零司は盛大な溜息をついた。

「あのなぁ…。無理だ無理だ言ってたら本当に無理になっちまうぞ?それにさ…」ナギの頭に手を置き「お前なら出来るっての。な?」そう言い、微笑んだ。

「……分かった。なら、私の雄姿をよく見ておけよ!」

「んー」

適当な返事をし、ナギが走っていくのを零司は見送った。

そして、ナギの姿が見えなくなったのを確認すると、

「…も、限界…」

零司はその場に倒れた。

(いやー……騙し騙しでなんとかやってきたけど、流石に限界だわー…)

零司が思っている通り、零司の体はもう限界であった。

(『嵐』なんて使うんじゃなかったわー…。おかげで右腕と左足の筋肉が断裂しちまってるしよぉ…)

零司が自分で編み出した剣術である我流剣術。

その中でも奥義のようなものである、剣舞。それは自分の体をかなり酷使する技である。

(しかも『嵐』だしな…。スピード重視だったから使ったけど、今の体にはキツイな…。てか、眠い…)

倒れた体をどうにか動かそうとするが、眠気の方が勝っているのか体は全く動かなかった。

(悪い、チビ嬢…。お前の……雄姿……見………れ…)

そこで零司の意識は途切れた。後には、ただ規則正しい寝息が聞こえてきただけだった。





      *    *    *





『さーーーー!!いよいよトップがゴールに来ました!トップはなんと三千院ナギ!!誰がこの結末を予想したでしょうか!!』

大歓声とアナウンスが響く中をナギはたった一人で走っていた。

(さっきまであんなに苦しかったのに…呼吸が段々楽になってきた…足も…さっきより軽い…)

『苦しくてもその先に本当の喜びがあるのよ』

(これが…ヒナの言ってたことか…)

『さぁゴールまであと五メートル!!』

(なるほど…零司…スポーツも意外と悪くないかも―――)

そう思い、ゴールテープを切ろうと―――





「一等賞―――――――!!!」





『……………』

会場の全員はその光景に何もいえなくなった。

「うおおおおーーーーー勝ったどーーーーー!!」

こうして…、

「あ、あれ?私勝ったのよね?」

『(大人気ない…)』

三千院家執事のクビが決定したという…。





       *    *   *





そしてその頃、ハヤテとアテネは…。

「「…………」」

……相変わらず迷っていた。

「……いつになったらここから出られるんだろうね…」

「……知りませんわ…」

黒ローブに追われ逃げた結果、さらに迷ってしまい、今に至る。

歩いても歩いても周りの景色は変わる気配がなく、今どこにいるのかすらも二人には全く検討もつかなかった。

ひとまず、かなり遠くの方から声が聞こえるので、そちらに向かって歩いているのだが、一向に近づく気配がない。

「はぁ…」

その事にハヤテが溜息をつくと、アテネがハヤテの肩を小突いた。

「そんなに溜息ばっかついてると幸運が逃げますわよ?」

「……そうだね」

「そうですわよ。ただでさえあなたは幸運が少ないのだから…」

「酷いね!?」

「事実でしょう?」

「確かにそうだけどね!?」

そんな漫才のようなやり取りをしている内に、視界が開けた。

「って、ヒナギクさんに花菱さん…?」

「ああ、ハヤ太君に理事長か…」

だが、そこには頭を抱えたヒナギクと、疲れた様子の美希がいた。

「どうかしましたの?何だか身体的と精神的に疲れたように見えますけど…?」

「まあ、少しあって…。それよりもハヤ太君。ヒナを頼んでいいか?私じゃどうにもならなくてな…」

「あ、はい」

そう言い、ハヤテがヒナギクに近寄ろうとした時、

(―――っ!?)

ハヤテの左腕辺りを、何かが通っていった感覚がした。

それを振り払うように、ハヤテは右手に握っていた刀を、振り向きながら振りぬいた。

ギギンッ!と音がハヤテの目の前でした。

(この感触…)

以前にも斬ったことがあるような感触に、ハヤテは今斬ったであろう物を見る。

「やっぱりですか…」

それを見ると、ハヤテは確信したようにそれが飛んできたであろう方向を睨んだ。

その先には、最早馴染みになってきた黒ローブが立っていた。

「あなたは一体何が目的なんですか…!」

アテネ達を庇うように前に出ながら、ハヤテは問いかける。

「……話す義務はない」

そう答えると同時に、今までと同じように矢を黒ローブは放つ。

「もう!慣れました!ね!」

だが、流石に襲われ慣れており、ハヤテは全ての矢を弾いた。

「ちっ…」

舌打ちを一つ鳴らす黒ローブ。そして、再び矢を放った。

そして、ハヤテが弾こうと構えた瞬間。

「っ!!」

黒ローブを翻し、第二波を放ってきた。

(マズイ…!?)

急いで第一波を全て弾き、第二波を弾こうとするが、

(弾ききれない…!)

そんな事を思っていたのが仇となったのか、ハヤテの横を一本の矢が通り抜けた。

「しまっ…!」

そしてその矢が向かう先は…。

「ヒナギクさん!!」

まだ頭を抱えていたヒナギクであった。

「はぁ!」

それは反射的行動であった。

ハヤテはヒナギクに向かって飛ぶ矢に向かって、刀を投げた。

刀は矢に当たり、ヒナギクに当たらずに済んだが、

「つっ…!」

自分の身を守る方法が無くなったハヤテに対しては刺さった。

右腕、左腕、右肩、右もも、左脇腹など、体の様々な部分に次々と、そして深々と刺さった。

「はぁ……はぁ…」

全身から垂れる血で地面に赤い染みを作りながらも、ハヤテは目の前にいる、黒ローブを睨みつける。

例え、また黒ローブが矢を放ってこようと、ハヤテは倒れないという意思表示である。

「……成る程…な…」

ハヤテの視線を受け、黒ローブは何かを呟くと、何かをハヤテの目の前に投げた。

「…これは…?」

「今回の褒美ってところだな……大切に持ってろよ…」

黒ローブはそう言うと、森の奥へと消えていった。

「一体何なんですか…」

「ハヤテ!!傷は大丈夫ですの!?」

「あ、大丈夫ですって♪これよりも酷い怪我をしょっちゅうしてましたから♪」

相変わらずサラッとヘビーなことを言うハヤテであった。

「ところで、何を貰いましたの?」

「えっと……石?」

ハヤテが拾ったのは、パッと見飛○石のような石であった。

「王玉…!?」

「え?この石のこと知ってるんですか、お嬢様?」

「……一体何故…」

ハヤテの問いかけにもアテネは答えず、何事かをただブツブツ言っていた。




その後、六花にハヤテが連絡をし、迎えに来てもらい、様々なことがあったマラソン大会は終了した。

余談だが、零司は数時間後に起き、普通に帰ったとか。



――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


はい、マラソン大会終わり!!

ハヤテ「零司さんの謎増えましたねー…」

本当にねー。

零司「うっわ、めんど」

まあ、零司は謎が多いキャラという結論で!

零司「まあ、色々明かせないけどさ…」

因みに零司がヒナギクに言ったことに関しては全部本心からの言葉だったりします。

零司「まあ、色々そういった奴ら知ってるしな…」←(知人関係が広すぎるので…)

そして、我流剣術については後々に…。ついでに黒ローブも。

黒ローブ「ついでかよ…」

後一回出たら当分は出ないはず!

ハヤテ「適当!?」

では、今回はこの辺で!!

では!!
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Re: 誰がため、何のため 7/7更新 ( No.32 )
日時: 2012/07/07 23:30
名前: 匿名

どうも〜♪コサッキーさん、匿名っす♪
「お久しぶりです♪木崎輝雪です♪覚えてくれてたら嬉しいな♪」
「和也。感想に来ました」
いや〜、東宮強くなってるね。
「でもあんた、『東宮は強くても余り違和感ない』って言ってたわよね。何で?」
ああ、それは原作の方でも今以外と頑張ってるからさ。漫画を。
「まあ、根は努力家よね。多分だけど」
「こっちの方では友人だしな」
潜在濃緑。つまりこれから東宮超パワーアップ!?
「さあ?でも強くはなるわよね」
「そして剣舞、嵐か」
「強力ね。あれでスピードタイプなんて・・・一番高い威力の技だとどれだけのダメージが?」
こっちはもっと強いね。そしてこのネタ通じるかわからないけど、零司がテイ◯ズのエ◯ルに見えたよ。
「正確にはラタト◯ク」
「通じるか、そのネタ?」
そしてヒナギクは・・・残念だけど僕も零司の意見に賛成。次があっても今とは違う状況だし、ヒナギクの考えだと少し違うかもしれないけどヒナギクが高い場所に何度も行けば高所恐怖症が治るって言ってるようなもんだし。実際はそんなことないよ。怖いものは怖い。できないことはできない。
「そうね・・・それに私やお兄ちゃんの状況だってそうだもの。もし鬼に殺されてしまったら。次があれば勝てるかもしれない。でも無理よね。死んでしまったら何もできないもの」
「要するに、生徒会長の言う事には矛盾があるってことだ。人は誰しも越えられない壁がある」
何か暗いな。こういう時は憂さ晴らし!
「そうね!雪路をヤるか」
「大神はビックリだろうね。勝ったと思ってたら負けてたんだし」
ていうか、確かこのマラソンって零司のクビがかかってたよね。
「「・・・・・・・・・・・」」
零司、普通に帰ってたよね。
「「・・・・・・・・・・・」」
・・・次回はどうなる!今からワクワクドキドキっす!!
「そうね!とりあえず雪路は」
「「断罪」」
「イコール死刑で。・・・よくも感動のシーンを。許さない!」(←地面から影。凄い殺気)
ききき、輝雪が怖いのでこれぐらいで!
「それでは」
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Re: 誰がため、何のため 7/7更新 ( No.33 )
日時: 2012/07/08 16:54
名前: キー

 どうも、キーです。

 調「『忘れたころに…(ry』はやらないのか?」

 うん、飽きた。というわけで…
 言ったよねぇ、零司君。雪路は殺s……消した方がいいって。

 調「というより…ハヤテは零司に何を助けたかなぁ?道に迷って、黒フードと戦って、ヒ
ナギクを助けて…うん、零司に何をしてあげたか言ってみようか。」

 リン「いや、だから黒『ローブ』だって。」

 サラ「というより筋肉を断裂して数時間で普通に帰るって零司さんは何者ですか?」

 リン「別にふつうじゃない?」←半分人間ではない

 調「いや、普通ではないぞ。」

 リン「あなたならどうにかできるじゃない?おそらく六花さん辺りならできそうだけど。
某メイド神さんもできるだろうし。」

 サラ「そして……王玉ですか。絶対厄介ごとの元ですよね。ハヤテくんのことだし。」

 リン「そして……チャンスは1回…ね。同感ね。ただし…寿命という不平等な制限時間の
中での『人生』というチャンス。ま、失敗しようが成功しようが他人には関係ないわ。その
関係のないことにヒナギクは首を突っ込むべきではない。そういった『関係のないこと』に
『生徒会長だから』と言ってズカズカと踏み込む辺りはハヤテと一緒ね。」

 サラ「なんか若干難しくてわからない。」

 リン「ま、簡単に言う……説教する前に自分の立場をわきまえる。『生徒会長』だったら
なおさら生徒の事を考えて関わらないということを覚えなさい。」

 サラ「なんか『モブキャラ』に睨まれてますよ。」

 リン「へ〜〜♪たかが『モブキャラ』ごときに私をどうこうできないし…放っておく
わ。」


 さて、マラソンも終わって……次は…アレですか。

 頑張ってください。
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Re: 誰がため、何のため 7/7更新 ( No.34 )
日時: 2012/07/10 00:05
名前: 迅風

オヴィエラ「ハロー♪ リクエストありがとねん♪ 暮れ色の部隊長を務める『針究使』ことオヴィエラ=M=ニールトルメイクスよんっ♪」

イシュリナ「イェー☆ 天使で学者なイシュリナ=ヘズ=ガーデンベルトぉ☆ 今回はよろしくねん☆ そして天龍寺君、離れすぎだよん☆」

秘扉「……わかってないな、ガーデンベルト。俺に近づきすぎるな……。呪われるぞ……くっ、左腕が疼く、な……」(←ギチっと左腕を右手で押さえつけながら)

リザルト「大丈夫か天龍寺ぃいいいいい!!? そして俺の登場!! リザルト=ウェンハム!! よろしくなっ!!」

オヴィエラ「ふむ……これはまた一癖も二癖もありそうな面子が揃ったものね!!」(←ゼフィア※めんどくさい。サーヤミナ※寝てる。カストレア※仕事中。ルーシャ※子猫たちのお世話中)

ネアチル「ええ……。ええ……そりゃもうすっごい色濃い面子が集まってますよね!!」

イシュリナ「ツッコミ要素の塊でありながらツッコミご苦労様だよ、ネアチル君やー☆」

ネアチル「余計なお世話です!! ともかく今回はこの面子で感想させていただきます!! よろしくお願いしますよ皆さん!!」

秘扉「愚かな……」

ネアチル「何が!? 何か今、凄く関係性皆無で何となく言っただけの発言ありませんでした!? 突っ込んでると長いので省きますが!! えー……初めは東宮さん、野々原さん対大神さんですか……」

リザルト「バトってる……。バトってやがる……。いいねぇ、いいねぇ、燃える!! 滾る!! やっぱ、こういうのは男の魂揺さぶり滾るってなもんだぜぇえええええええええええええええええええええええええ!!!!」

イシュリナ「わーい☆ あつーい☆ うざーい☆ まぁ、ウェンハム君が何か滾るぜぇ、とか叫んでるのは放っておくとして――いやはや中々どうして感心だねん☆ 東宮君が潜在能力開花途中ってな様子だよん☆」

秘扉「……このエナジー……!! ……ふっ、そうか、そういう事か……こいつに宿って傷ついたその身を回復しようと潜んでいたわけか……やってくれるな、大魔王アッポンデリング……!!」

オヴィエラ「何かしらねその珍妙な大魔王……。でもまぁ確かに頑張ってるわねん♪ 偉い偉い♪」(←なーでなーでとあずみゅーの頭を撫でる天使。……うん、何か年上お姉さんな面があってね!! 20代だし!!)

イシュリナ「……ま、こっちの東宮君も色々楽しそうってのが私の見解ですしね☆ ……それで大神君しんぞーほっさー☆」

ネアチル「何その軽いノリ!? まったく軽そうじゃない内容なんですけど!? 何か脳内に危なげな声が響いてるっぽいんですけど!?」

秘扉「大神……!! お前も……!? ……ぐぁあああああ……っ!! くっ、共鳴でもしたというのか……!? 感化でもされたというのか……!? 静まれ……もう、壊したくないんだぁあああああああああああああああああああああああああ!!!!」(←左手を抑えながら凄く苦しげに咆哮)

リザルト「てっ、天龍寺ぃいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!」

ネアチル「カオスっ!!! すっごいどうでもいいカオスッ!!!」

オヴィエラ「いやー、それにしても大神君はどんな状況下にあるのかしらねー……。戦いに身を委ねてしまえ、と語りかける声はいったい……謎が多いわねん」

秘扉「誰だっているのさ……もう一人の自分って奴が……凶悪な自分って奴が……な」

オヴィエラ「ややこしくなるから黙ってましょうねー天龍寺君。しかし、そっか……大神君は執事としての三千院さんとの繋がりを大事に思っているのねん♪」

イシュリナ「成る程感心だねん☆ 大神君にとっては特にそういった想いが強いのかな☆ ちなみにこっちの執事五人に同じ質問したら『繋がりを大切に思ってる何ていったら貞操がアウトになっちゃいますよ……ハハハ……』『チビジョとの繋がりねぇ……そうだな、からかってると面白いよなチビジョ……♪ 今日はどうやってからかおうか、とか毎日楽しみで仕方ないよな……♪』『…………繋がりを大事に思ってるなんて言ったら首輪が繋がれる……!!』『そりゃつまりアレだ。……筋肉、ってやつだな……。それだけは確かだ……』『まぁ、妹だしさ。執事としても兄貴としても大事に思ってるさ♪』との返答が来たねん☆」

ネアチル「カオスだぁああああああああああああああああああああああああ!!!?」

リザルト「我流剣術――剣舞!! 嵐ぃっ!!!」

秘扉「天を焦がす男神の雷(ショッキングボルト)!!」

ネアチル「もうヤダ自由奔放過ぎる!! リザルトさんは何か感化されてて、秘扉さんは充電パック上に投げて避雷針掲げてるし!!」

オヴィエラ「ツッコミご苦労様ネア君♪ そのまま頑張ってね〜♪ ……で、野々原君達を退けたと思ったら、次いで桂ちゃんと花菱ちゃん現れたわねん♪」

リザルト「ここは通さない……言ってみてぇ……。言ってみてぇよ、そのセリフ……!! しかし、桂の方はいいんだが、花菱という奴は見事にへばってんな……体力ありそうでもないし、まぁそうなるか……」

秘扉「……!! ……可哀そうに……あんな若さで、あの呪いを受けたのか……」

ネアチル「もうツッコミが追い付かないですね天龍寺さんに関しては!! それでまぁ……確かに三千院さんのスポーツ嫌いを無くす為に参加したのに本末転倒状態、と言えばそうですね……」

イシュリナ「三千院さんの発言も真実だねん☆ みんなが完璧にはなれない――。それに対する桂さんの発言、死んでしまいそうな想いの先に替え難い喜びがある――これもまた理想的な発言だねん☆」

オヴィエラ「そうねー。完璧超人になれるのなんて一握り。それは事実。達成感というものを得る成功者。それも当然事実。実際、些細な事でも完走しきったという喜びはマラソンとか出てる人は大概抱くものでしょうしね♪」

イシュリナ「それでチャンスは一度か否か、かー。ん、ん――――。これはイシュリナさんどっちも肯定しちゃうなぁー☆ 否定も肯定もしちゃうかなん――☆」(←ちょっぴり眉をしかめて邪悪な微笑み)

リザルト「何か邪悪な笑みなんだけどガーデンベルト!? それで……三千院は大神の声援を受けて単独独走だな……!!」

秘扉「そして大神は全身全霊の力を使い切り、その場に倒れた、か。奥義剣舞……やはり莫大な労力を使う様だな……俺の奥義『天地新生の大洪水(ブロークン・ダム)』も使えば俺もただでは済まないから納得だ……」

ネアチル「何か反応しづらい!! まぁ、僕も必殺技の『消し飛べ糞兄貴(ナルクラッシュ)』を使うと相当テレズマ消費するからなぁ……」

オヴィエラ「その技名にツッコミ入れたいわよん!? そして誰もが予想しえなかった結末ねん、まさしく……。トップの三千院ナギを見事に予想しえない結末が追い抜いていったわねん……。……大人げないわねぇ……」

リザルト「んで、その頃綾崎と天王州は桂たちの場所までやってきたか……そこへ現れた黒ローブぅうううううううううううううううううううう!!!!! 黒ローブってだけでこう熱くなってくんぜえええええええええええええええええ!!!!」

秘扉「やれやれ……。よもや組織がここまで動いていようとは、な……」

ネアチル「とりあえずお二人の反応にツッコミ疲れました……!! 桂さんが精神的に幾分か食らっているわけですから守りながら、になってしまいましたが……どうにか撤退してもらえましたね……」

イシュリナ「そこで渡されたのは王玉かー☆ こっちでは時計盤の一角って設定になってるけど……こっちではどう展開していくのか楽しみだねん☆ そしてクローブが何故に王玉を渡したのか……うんうん、興味深いねん☆」

オヴィエラ「さらっと黒ローブにクローブなんて綽名つけてるわね、ガーデンベルト……貴女らしいけれど……。次回からも楽しみねん♪」

秘扉「さぁ問おう。汝が求める者たちの真名を……告げるがいい!!」

ネアチル「何ですか、その妙に尊大なリクエストよろしくはぁ!! ともかく……それじゃあ、これで♪ 次回も楽しみにしていますよー♪」
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Re: 誰がため、何のため 7/7更新 ( No.35 )
日時: 2012/07/11 18:10
名前: コサッキー

<レス返し>

▼匿名さん

>どうも〜♪コサッキーさん、匿名っす♪

>「お久しぶりです♪木崎輝雪です♪覚えてくれてたら嬉しいな♪」

>「和也。感想に来ました」

どうもですー♪

ハヤテ「感想ありがとうございますね♪」

そして私は忘れない。

六花「当たり前ですよね〜♪」

>いや〜、東宮強くなってるね。

零司「……潜在能力って怖いな…」

あのさぁ…。

>「でもあんた、『東宮は強くても余り違和感ない』って言ってたわよね。何で?」

>ああ、それは原作の方でも今以外と頑張ってるからさ。漫画を。

正直若干違和感あるけれど、あまり違和感を感じない。

アテネ「ややこしいですわね…」

そして原作を三十巻から買えてない…!

零司「……おい」

金無いんだもん!!

零司「知るか!!」

>「まあ、根は努力家よね。多分だけど」

>「こっちの方では友人だしな」

零司「努力家だからああやって強くなったんだろうな」

だろうね。そしてこちらでの関係は…。

東宮「大神は友人だし、目標でもあるんだよな…」

零司「はっ。お前が俺を超えるなんて出来ねぇよ」

東宮「絶対に追いついてやる…!」

……とゆう風な関係です。

ハヤテ「でも、零司さん友人ってとこは否定しないんですね」

まあ、そう言う奴だしさ。

>潜在濃緑。つまりこれから東宮超パワーアップ!?

>「さあ?でも強くはなるわよね」

超パワーアップはしませんけどね。

零司「でも、ああやって地道に努力していけば結構な所まで強くはなれるけどな」

>「そして剣舞、嵐か」

>「強力ね。あれでスピードタイプなんて・・・一番高い威力の技だとどれだけのダメージが?」

剣舞『嵐』。それは諸刃の剣。

零司「俺の剣術ってほとんどがそうだしなぁ…」

ハヤテ「でも、スピードタイプってことは、他のタイプもあるってことですか?」

零司「ああ。パワーとスピード。それとテクニックって感じか?」

ハヤテ「零司さんって器用ですね…」

全部努力の結晶だけどさ。

零司「んで、一番高い威力の剣舞は…」

パワータイプで、そこらの枝でも人が死にます。

ハヤテ「予想以上!?」

零司「ただし、腕が確実に吹き飛ぶ」

ハヤテ「リスクも大きい!?」

というか、零司って本当に器用なんだよね…。

零司「それが俺の長所だからな」←(かなり技を持ってますから…)

>こっちはもっと強いね。そしてこのネタ通じるかわからないけど、零司がテイ◯ズのエ◯ルに見えたよ。

>「正確にはラタト◯ク」

>「通じるか、そのネタ?」

零司「……輝雪と和也のコンビと戦ってみてぇ…!」

やめようかぁ!?

ハヤテ「零司さんって性格どうなってんですか…?」

ごっちゃごっちゃ。

ハヤテ「はい!?」

それで、すいませんがテイ○ズのネタはわかりませんね…。

>そしてヒナギクは・・・残念だけど僕も零司の意見に賛成。次があっても今とは違う状況だし、ヒナギクの考えだと少し違うかもしれないけどヒナギクが高い場所に何度も行けば高所恐怖症が治るって言ってるようなもんだし。実際はそんなことないよ。怖いものは怖い。できないことはできない。

ヒナギク「う…」

零司「わかったかよ。ったくこれだから希望が嫌いなんだよ…!!」

(やっべ、零司がキレそ♪)

ハヤテ「(えぇ!?)」

零司「希望に恵まれてる奴ほど絶望の中にいる奴を見下して、馬鹿にして、傷つけて…!!」

(あっはっは♪零司止めらんね♪)

ハヤテ「ちょっとー!?」←(友人にそういう人多いからねー…)

>「そうね・・・それに私やお兄ちゃんの状況だってそうだもの。もし鬼に殺されてしまったら。次があれば勝てるかもしれない。でも無理よね。死んでしまったら何もできないもの」

>「要するに、生徒会長の言う事には矛盾があるってことだ。人は誰しも越えられない壁がある」

零司「よくわかってくれて嬉しいな…」

まあつまり零司が言いたい事は、『チャンスなんて一度しかない。次があるなんて言ってる奴は成功者で、失敗してる奴を心の中で笑ってるんだ』ってことです。

ハヤテ「本当に零司さんって何者…!?」

自分の考えで動く奴?

零司「まぁ、どこぞの貧乳会長の言ってることも間違いじゃないけどさ。でも、矛盾があるって事だよ、結局」

>何か暗いな。こういう時は憂さ晴らし!

>「そうね!雪路をヤるか」

>「大神はビックリだろうね。勝ったと思ってたら負けてたんだし」

そうだ、憂さ晴らしをしよう!!

ハヤテ「何を言ってるんですかね!?」

零司「てか、本当に驚いたなぁ〜♪」←(手にはどこから出したのかわからない日本刀)

雪路「ちょっと!?何する気よ!?」

零司「こ・ろ・す♪」

>ていうか、確かこのマラソンって零司のクビがかかってたよね。

>「「・・・・・・・・・・・」」

零司「だよなー…」

>零司、普通に帰ってたよね。

>「「・・・・・・・・・・・」」

零司「……一位だったと思ってたからな」

>・・・次回はどうなる!今からワクワクドキドキっす!!

>「そうね!とりあえず雪路は」

>「「断罪」」

今回はハヤテの場面で進める!!

ハヤテ「僕ですか!?零司さんじゃなくて!?」

うん。前回あんまりでてなかったからね。

零司「さってさて。断罪の始まりだ♪」

怖い!!

>「イコール死刑で。・・・よくも感動のシーンを。許さない!」(←地面から影。凄い殺気)

>ききき、輝雪が怖いのでこれぐらいで!

>「それでは」

どぞどぞー。←(縛られた雪路を贈呈)

ハヤテ「……どうなるんでしょうか…」

アテネ「さぁ…」

六花「少しは反省してもらいたいですね♪匿名さん感想ありがとうございました♪」



▼ キーさん

>どうも、キーです。

どうもですー♪

六花「感想ありがとうございますね♪」

>調「『忘れたころに…(ry』はやらないのか?」

>うん、飽きた。というわけで…

飽きたんかい!!

ハヤテ「大声でツッコム事!?」

何となくね!!

>言ったよねぇ、零司君。雪路は殺s……消した方がいいって

零司「……闇討ちしとけばよかったよ…」

闇討ち。別名、暗殺。

ハヤテ「えぇ!?」

>調「というより…ハヤテは零司に何を助けたかなぁ?道に迷って、黒フードと戦って、ヒ
ナギクを助けて…うん、零司に何をしてあげたか言ってみようか。」

>リン「いや、だから黒『ローブ』だって。」

ハヤテさーん?

ハヤテ「え、えっと…」

アテネ「……何もしてませんわね…」

これらは全て、ハヤテの不幸スキルがもたらしたものよ…!

ハヤテ「もういやだぁ…」

黒ローブ「というか、フードとローブを間違えるなって…」

>サラ「というより筋肉を断裂して数時間で普通に帰るって零司さんは何者ですか?」

>リン「別にふつうじゃない?」←半分人間ではない

零司「……人間ですが何か?」

ハヤテ「……本当ですか?」

零司「ちょっと!?ハヤテが言うなよ!?」

ハヤテ「僕は普通ですからね!?」

どこが!?

ハヤテ「何でそこまで驚くんですかね!?」←(普通に化け物じゃない?)

零司「つーか、半分人間じゃないって事は…」

半分が別の何かってことだよねぇ…。

>調「いや、普通ではないぞ。」

>リン「あなたならどうにかできるじゃない?おそらく六花さん辺りならできそうだけど。
某メイド神さんもできるだろうし。」

零司「えー。普通だってばー」

違うってば…。

ハヤテ「というか、六花さん出来るんですか…?」

六花「はい♪出来ますよ♪」

ハヤテ「……はい?」

六花「でもあのやり方は好きではないんですけどね〜…」

ハヤテ「え?え?」

アテネ「ハヤテ?メイドは基本そういう事が出来ますのよ?」

某メイド神さんもね…。

>サラ「そして……王玉ですか。絶対厄介ごとの元ですよね。ハヤテくんのことだし。」

はい♪

ハヤテ「笑顔で言わないで下さいよ!!」

え?やだよ。

ハヤテ「真顔!?」←(いや、だってねぇ…)

>リン「そして……チャンスは1回…ね。同感ね。ただし…寿命という不平等な制限時間の
中での『人生』というチャンス。ま、失敗しようが成功しようが他人には関係ないわ。その
関係のないことにヒナギクは首を突っ込むべきではない。そういった『関係のないこと』に
『生徒会長だから』と言ってズカズカと踏み込む辺りはハヤテと一緒ね。」

因みにあの言葉。私が始めて原作読んだときに若干イラっときた。

零司「……おい」

しゃーないじゃん。

私の意見は零司と同じですね。

零司「んで、俺は他人にズカズカ踏み込む所は嫌いだな」

零司は過去とか知人でそういう奴嫌いだもんね…。

>サラ「なんか若干難しくてわからない。」

>リン「ま、簡単に言う……説教する前に自分の立場をわきまえる。『生徒会長』だったら
なおさら生徒の事を考えて関わらないということを覚えなさい。」

ヒナギク「わ、わかったわよ…!」

睨むな睨むな。

>サラ「なんか『モブキャラ』に睨まれてますよ。」

>リン「へ〜〜♪たかが『モブキャラ』ごときに私をどうこうできないし…放っておく
わ。」

ヒナギク「うるさいわよ…!」

モブキャラ『桂さんになんて事を…!!』

零司「……一回あいつらに同じ台詞言えるか試したいな」

うん、やめようねぇ!?

>さて、マラソンも終わって……次は…アレですか。

>頑張ってください。

アレと言われても正直どれだか分からない。

ハヤテ「えー…」

まぁ、今回はあまり原作関係ないんですけどね…。

零司「今回はハヤテ中心だしな」

まぁね。そして、ありがとうございます!!頑張ります!

零司「キーさん感想ありがとうございましたー!」



▼ 迅風さん

>オヴィエラ「ハロー♪ リクエストありがとねん♪ 暮れ色の部隊長を務める『針究使』ことオヴィエラ=M=ニールトルメイクスよんっ♪」

>イシュリナ「イェー☆ 天使で学者なイシュリナ=ヘズ=ガーデンベルトぉ☆ 今回はよろしくねん☆ そして天龍寺君、離れすぎだよん☆」

>秘扉「……わかってないな、ガーデンベルト。俺に近づきすぎるな……。呪われるぞ……くっ、左腕が疼く、な……」(←ギチっと左腕を右手で押さえつけながら)

>リザルト「大丈夫か天龍寺ぃいいいいい!!? そして俺の登場!! リザルト=ウェンハム!! よろしくなっ!!」

キャラ濃い!?

六花「いや〜、もう今更感ありますよね〜」

零司「ですよねー。つーか、天龍寺はもうかなり重度だなおい」

ねー。

ハヤテ「リザルトさんは物凄く熱い人ですね…」

結構そういうキャラ好きだけどねー♪

>オヴィエラ「ふむ……これはまた一癖も二癖もありそうな面子が揃ったものね!!」(←ゼフィア※めんどくさい。サーヤミナ※寝てる。カストレア※仕事中。ルーシャ※子猫たちのお世話中)

なんかもう色々不安だねぇ!?

アテネ「そんなメンバーで大丈夫かしら…?」

大丈夫だろうね。……たぶん。

零司「多分っておい」

>ネアチル「ええ……。ええ……そりゃもうすっごい色濃い面子が集まってますよね!!」

>イシュリナ「ツッコミ要素の塊でありながらツッコミご苦労様だよ、ネアチル君やー☆」

あ、ネアチル。

ハヤテ「大変ですよね、ネアチルさんも…」

零司「性別を変えるだけってのもある意味面白いがな」

この中では唯一のツッコミ要因だよね☆

>ネアチル「余計なお世話です!! ともかく今回はこの面子で感想させていただきます!! よろしくお願いしますよ皆さん!!」

六花「それはそれとして、感想ありがとうございます♪」

>秘扉「愚かな……」

>ネアチル「何が!? 何か今、凄く関係性皆無で何となく言っただけの発言ありませんでした!? 突っ込んでると長いので省きますが!! えー……初めは東宮さん、野々原さん対大神さんですか……」

零司「何が愚かなのやら…」

つっこんでやんなよ…。

ハヤテ「長くなりそうだからやめません?」

ですよねー。

そして、始まりは零司の戦い!

零司「本当にめんどくさかった」←(君が悪いんだけどね?)

>リザルト「バトってる……。バトってやがる……。いいねぇ、いいねぇ、燃える!! 滾る!! やっぱ、こういうのは男の魂揺さぶり滾るってなもんだぜぇえええええええええええええええええええええええええ!!!!」

>イシュリナ「わーい☆ あつーい☆ うざーい☆ まぁ、ウェンハム君が何か滾るぜぇ、とか叫んでるのは放っておくとして――いやはや中々どうして感心だねん☆ 東宮君が潜在能力開花途中ってな様子だよん☆」

零司「うっぜー」

いや、そういう事言っちゃダメでしょ!?

零司「実際うざくね?」

いや、知らんけども!!

六花「いいから、ちゃんとレス返ししましょうか?」←(何故か妙に笑顔)

イェッサー…。

こほん。零司は潜在能力開花させるの上手いんですよね。

零司「腐らせてもいい奴と悪い奴の見分けはするがな、最低限」←(昔、開花させて悪に走った人がいましたもので…)

>秘扉「……このエナジー……!! ……ふっ、そうか、そういう事か……こいつに宿って傷ついたその身を回復しようと潜んでいたわけか……やってくれるな、大魔王アッポンデリング……!!」

>オヴィエラ「何かしらねその珍妙な大魔王……。でもまぁ確かに頑張ってるわねん♪ 偉い偉い♪」(←なーでなーでとあずみゅーの頭を撫でる天使。……うん、何か年上お姉さんな面があってね!! 20代だし!!)

ハヤテ「何となくポンデリングが思いついたんですけど…」

同感だよ…。碌なものないね……秘扉の言う神って…。

零司「な…。ところであっちで東宮が撫でられてて面白いんだが」

東宮「面白がるなよぉ!?うぅぅぅ…///」←(顔真っ赤―♪)

>イシュリナ「……ま、こっちの東宮君も色々楽しそうってのが私の見解ですしね☆ ……それで大神君しんぞーほっさー☆」

>ネアチル「何その軽いノリ!? まったく軽そうじゃない内容なんですけど!? 何か脳内に危なげな声が響いてるっぽいんですけど!?」

零司「頼むから軽く言わないでくんねぇ!?」

あれはかなりキツイもんねー…。

零司「あぁ…。因みに胸押さえたのは、心臓が予想以上に跳ねたからだけどな」

そして脳内の声…。あれもかなり後にはちゃんと出す予定です。

零司「正直出しては欲しくはないんだがな…」

無理だってば…。

零司「はぁ…」←(まぁ、しょうがないんでけどね…。かなりやばいので…)

>秘扉「大神……!! お前も……!? ……ぐぁあああああ……っ!! くっ、共鳴でもしたというのか……!? 感化でもされたというのか……!? 静まれ……もう、壊したくないんだぁあああああああああああああああああああああああああ!!!!」(←左手を抑えながら凄く苦しげに咆哮)

>リザルト「てっ、天龍寺ぃいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!」

>ネアチル「カオスっ!!! すっごいどうでもいいカオスッ!!!」

零司「はっはっは♪すんげぇ殺したくなったなぁ!!!」←(真剣抜刀)

零司ストーップ!!

ハヤテ「あれって真剣ですよね!?」

うん!零司が怒ったぞー!!みんな逃げろー!!

ハヤテ「えぇえええええええええ!??!」←(怒った零司は危険なんだよ!!)

六花「あっちはどうでもいいカオスでも、こっちが物凄い危険になりましたね…」

>オヴィエラ「いやー、それにしても大神君はどんな状況下にあるのかしらねー……。戦いに身を委ねてしまえ、と語りかける声はいったい……謎が多いわねん」

零司「あいつは嫌いだ…!」

零司を語る上での重要なキーの一つです。

電話の女『そうよねー…。でも正直、零司君というより―――』

チョイ待ち!?何でいる訳!?

電話の女『クスクス…』

こっわぁ!?

>秘扉「誰だっているのさ……もう一人の自分って奴が……凶悪な自分って奴が……な」

零司「お前もう黙って?」

零司さーん?怒らないでー?

>オヴィエラ「ややこしくなるから黙ってましょうねー天龍寺君。しかし、そっか……大神君は執事としての三千院さんとの繋がりを大事に思っているのねん♪」

零司「まぁ、ね…。結構『俺』が出せるしさ…」

うん、そういうこと言うのやめてね?

>イシュリナ「成る程感心だねん☆ 大神君にとっては特にそういった想いが強いのかな☆ ちなみにこっちの執事五人に同じ質問したら『繋がりを大切に思ってる何ていったら貞操がアウトになっちゃいますよ……ハハハ……』『チビジョとの繋がりねぇ……そうだな、からかってると面白いよなチビジョ……♪ 今日はどうやってからかおうか、とか毎日楽しみで仕方ないよな……♪』『…………繋がりを大事に思ってるなんて言ったら首輪が繋がれる……!!』『そりゃつまりアレだ。……筋肉、ってやつだな……。それだけは確かだ……』『まぁ、妹だしさ。執事としても兄貴としても大事に思ってるさ♪』との返答が来たねん☆」

>ネアチル「カオスだぁああああああああああああああああああああああああ!!!?」

零司「まぁ、俺はそういうの繋がりを守りたいしさ♪」

繋がり意識するのはかなり強いですよー♪

ハヤテ「……あっちの僕が不憫ですねぇ…」

(……ハヤテに対してドロデレ出そうと思ってるんだけどな〜…)

六花「というか、カオス過ぎますね〜…」

まともなのが虎鉄くらいかなぁ…?

>リザルト「我流剣術――剣舞!! 嵐ぃっ!!!」

>秘扉「天を焦がす男神の雷(ショッキングボルト)!!」

>ネアチル「もうヤダ自由奔放過ぎる!! リザルトさんは何か感化されてて、秘扉さんは充電パック上に投げて避雷針掲げてるし!!」

零司「あれって、まだ疲れないほうなんだよなぁ…」

ハヤテ「えぇー…」

まぁねー…。最高スピードは音速だしねぇ…。

ハヤテ「速い!?」

零司「まぁ、その分リスクが高いんだけどな…」←(下手したら、体の一部分無くなりますしね♪)

というか、フリーダム!!

ハヤテ「ネアチルさん大変ですねー…」

>オヴィエラ「ツッコミご苦労様ネア君♪ そのまま頑張ってね〜♪ ……で、野々原君達を退けたと思ったら、次いで桂ちゃんと花菱ちゃん現れたわねん♪」

>リザルト「ここは通さない……言ってみてぇ……。言ってみてぇよ、そのセリフ……!! しかし、桂の方はいいんだが、花菱という奴は見事にへばってんな……体力ありそうでもないし、まぁそうなるか……」

零司とヒナギクってどう足掻いても、零司が勝つんだよね。

零司「あんな奴に負けてたまるか」

ヒナギク「あんな奴って何よ!?」

零司「そのまんまの意味。つーか、花菱は体力無さ過ぎだろ…」

美希「う、うるさい…」

>秘扉「……!! ……可哀そうに……あんな若さで、あの呪いを受けたのか……」

>ネアチル「もうツッコミが追い付かないですね天龍寺さんに関しては!! それでまぁ……確かに三千院さんのスポーツ嫌いを無くす為に参加したのに本末転倒状態、と言えばそうですね……」

美希「呪いってなんだ!?私は普通だぞ!?」

いやー、もうツッコミ追いつかねー♪

ハヤテ「ですね…」

零司「というか、正直その目的忘れてた…」

……うぉーい。

>イシュリナ「三千院さんの発言も真実だねん☆ みんなが完璧にはなれない――。それに対する桂さんの発言、死んでしまいそうな想いの先に替え難い喜びがある――これもまた理想的な発言だねん☆」

零司「だよなー。理想的過ぎて反吐が出るぜ☆」

……零司キレ気味?

>オヴィエラ「そうねー。完璧超人になれるのなんて一握り。それは事実。達成感というものを得る成功者。それも当然事実。実際、些細な事でも完走しきったという喜びはマラソンとか出てる人は大概抱くものでしょうしね♪」

>イシュリナ「それでチャンスは一度か否か、かー。ん、ん――――。これはイシュリナさんどっちも肯定しちゃうなぁー☆ 否定も肯定もしちゃうかなん――☆」(←ちょっぴり眉をしかめて邪悪な微笑み)

正直ここは賛否両論だと思いますけどね…。

零司「まぁ、別に俺も完璧にそうは思ってねぇよ。ただ、そう言う奴をかなり見てきたってだけだ」

本当に過酷だよねぇ…。

零司「なー…」

>リザルト「何か邪悪な笑みなんだけどガーデンベルト!? それで……三千院は大神の声援を受けて単独独走だな……!!」

>秘扉「そして大神は全身全霊の力を使い切り、その場に倒れた、か。奥義剣舞……やはり莫大な労力を使う様だな……俺の奥義『天地新生の大洪水(ブロークン・ダム)』も使えば俺もただでは済まないから納得だ……」

>ネアチル「何か反応しづらい!! まぁ、僕も必殺技の『消し飛べ糞兄貴(ナルクラッシュ)』を使うと相当テレズマ消費するからなぁ……」

ナギ「うむ!零司に言われたから出来るのではと思ったのだ!」

零司「まぁ、実際出来はしたしな」

二人ともお互いを変えてきてるねぇ…。←(まあ、それが零司にとっては後々重要なんですけどね♪)

零司「つーか、『嵐』は万全なら二、三回は連続で使えるんだけどさ…」

怪我してたもんねー…。

零司「あぁ…」

ハヤテ「というか、お二人の必殺技にツッコミを入れたいんですけど!?」

>オヴィエラ「その技名にツッコミ入れたいわよん!? そして誰もが予想しえなかった結末ねん、まさしく……。トップの三千院ナギを見事に予想しえない結末が追い抜いていったわねん……。……大人げないわねぇ……」

大人気ないよねぇ…。

生徒大半『大人気ないよねぇ…』

零司「あっはっは♪あいつ殺していーい?」

うん、ダメ。

零司「ちっ」

>リザルト「んで、その頃綾崎と天王州は桂たちの場所までやってきたか……そこへ現れた黒ローブぅうううううううううううううううううううう!!!!! 黒ローブってだけでこう熱くなってくんぜえええええええええええええええええ!!!!」

>秘扉「やれやれ……。よもや組織がここまで動いていようとは、な……」

黒ローブ「いやー…。そこまで熱くなられても困るんだが…。後、組織って何?」

ツッコムだけ無駄だってば。

>ネアチル「とりあえずお二人の反応にツッコミ疲れました……!! 桂さんが精神的に幾分か食らっているわけですから守りながら、になってしまいましたが……どうにか撤退してもらえましたね……」

あの時のヒナギクは零司にかなり心を折られてましたからー♪

ハヤテ「軽く言う事!?」

まぁ、それはともかく。黒ローブは今回出たら少しは出ないと思われますー。

ハヤテ「それは正直助かりますよ…」

まぁ、最終的には戦ってもらうけどさ♪

ハヤテ「はい!?」

>イシュリナ「そこで渡されたのは王玉かー☆ こっちでは時計盤の一角って設定になってるけど……こっちではどう展開していくのか楽しみだねん☆ そしてクローブが何故に王玉を渡したのか……うんうん、興味深いねん☆」

>オヴィエラ「さらっと黒ローブにクローブなんて綽名つけてるわね、ガーデンベルト……貴女らしいけれど……。次回からも楽しみねん♪」

クローブ「目的の一つだしな。って名前まで……別にいいけど」

いいんかい。

まぁ、王玉に関しては…。

零司も関わってくるし…。

零司「え?俺も?」

君も持ってるでしょ?恐らく普通の展開でしょうかね…?

ハヤテ「疑問形なんですか…」

そして、今回はクローブVSハヤテ(第一回戦)って感じですね。第二回戦で終わるけど。

ハヤテ「それなら第一回戦はいらないと思いますけど!?」

>秘扉「さぁ問おう。汝が求める者たちの真名を……告げるがいい!!」

>ネアチル「何ですか、その妙に尊大なリクエストよろしくはぁ!! ともかく……それじゃあ、これで♪ 次回も楽しみにしていますよー♪」

秘扉言い方分かりずらっ!!

まぁ、それはいいとして。

じゃあ、ハヤテからパッと思いついたキャラ言っていってー。

ハヤテ「ちょ、えぇ!?じゃ、じゃあ……恭介さん」

アテネ「私もですの!?……ハヤテ」

六花「歌詠さんで♪」

零司「東雲」

錠立「あれ?僕も?じゃぁ、ミラちゃんで♪」

というわけで、恭介、ハヤテ、歌詠、十六夜、ミラに鈴音でお願いします♪

アテネ「迅風さん、感想ありがとうございました♪」





というわけで第十七話目!

前回ハヤテがあまり出なかったから、今回はハヤテサイド!!

零司「そりゃ助かる」

まぁ、前回は零司のターンだったしさ。

ハヤテ「それで、僕のターンというわけですか…」

YES♪

では、どうぞ!!



―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――



マラソン大会が終わり、一日が経った。

ハヤテ達は理事長室で珍しく、まったりとしていた。

「ふう…」

「はぁ…」

ハヤテとアテネはリラックスした様子でお茶を飲み、六花はそんな二人を笑顔で見ていた。

「ほう…」

「ふう…」

「流石に二人とも疲れたようですね〜♪」

「それは当たり前ですわ…」

何故か妙に楽しそうな六花の言葉に、アテネはぐったりとして答える。

でもそれは当たり前の反応でもあろう。

ハヤテに頼まれ、マラソン自由形に参加したはいいが、あくまでも目的は零司のサポート。

にもかかわらず、その目的は全く果たすことが出来ず、マラソン自由形は終わってしまった。

だが、それだけならまだよかったのかもしれない。

ハヤテの特徴。それはありえないほどの不幸体質。

それによってなのか、以前旧校舎に行った時から襲ってくる黒ローブに遭遇し、襲われた。

それにより、ハヤテが負傷。後味の悪い終わり方となってしまった。

「それで、六花さん。あの人……黒ローブの人の事、何かわかりました?」

カップを机に置きながら、ハヤテが六花に向かって問いかける。服の所々から包帯が見えるのは、黒ローブに襲われた時の怪我であろう。

六花はその包帯を気にしながら、ハヤテの問いかけにどこからか紙を取り出し、答えた。

「正直言って、ほとんど何もわかりませんでしたね…。せいぜいわかったのが、靴のサイズ、大体の身長体重ぐらいですね…」

「そうですか…」

「そしてわかったのはもう一つ」

明らかに肩を落としたハヤテに、いや、この部屋にいるアテネにも言う様に、六花は声を大きくし、その事を言った。

「ハヤテ君を襲った黒ローブの人物。それは、この白皇学院の者ということです」

「「っ!?」」

その事に、二人は思わず立ち上がってしまった。

それは考えれば分かることであるかもしれない。

まず、白皇学院は金持ちが通う名門校である。金持ちの子息、子女が通うということは、外部から不審者が入らないようにセキュリティもしっかりしている。

そのセキュリティを突破するのは至難の業であり、それを突破するにしても、かなりの労力と金を必要とする。故に、突破し、金持ちを誘拐したとしても割に合わない可能性があるのだ。

それを考えの中に入れて考察すると、白皇学園の者が犯人の可能性が一番高いのである。

(とはいっても、この学院って実力者が多いんですよね〜…)

金持ちが多いということは、ボディガードが多いということでもある。

ボディガードが多いとはいえ、実質執事のほうが強い場合が多いが…。例えば零司など。

まぁ、そんな事もあり、容疑者は絞り込めないのである。

『はぁ…』

ハヤテとアテネも同じ事を思っていたようで、三人は同時に溜息をついた。

「まぁ、この件は私の知り合いにも相談しますから、置いといて…」

「あぁ、あの人たちですのね…」

(誰…?)

二人が知っていて、自分だけが知らない人たちが気になったハヤテであった。

「それで、次にマラソン大会の結果ですが…」六花はまた新しく紙を出しながら「まぁ、これも後味悪い結果なんですよね〜…」と告げた。

「後味悪い結果ですか…?」

「えぇ…」

六花は呆れた様に溜息をつきながら、ハヤテに紙を渡した。

ハヤテがその紙を一通り見ると…。

「成る程…」

六花と同じように溜息をついた。

その紙にはこう書いてあった。



『    マラソン自由形結果

   一位:桂雪路

   二位:三千院ナギ

   三位以下:リタイアの為、無し  
以上』



……相変わらず嫌な結果である。

因みに、下のほうにはアンケートも載っており、大半が雪路への批判の感想で溢れかえっていた。

そして、その中でも一際目立っているのが、『コロス』という感想であり、何故かそれだけそのまま書いてあった。

(これ絶対零司さんだろうなぁ…)

妙に恨んでいるような字体に、濃く書かれたであろう色。それらから完璧に零司が怒っている事が伺えた。

「まぁ、桂先生の賞金に関しては借金を返したので殆ど無いですけどね♪」

「自業自得ですわね」

もし、借金が無かったとしても、殆どが雪路の手には入らなかった気もするが……それはそれとしておこう。

「因みに二枚目もありますよ?」

「「二枚目!?」」

雪路への批判は思った以上にあるようだった。

「それで、こっちが被害の方です」

「被害?」

首を傾げながらも、ハヤテはそれに目を通していった。



『     マラソン自由形被害。

   薫京ノ介:崖から落ち、若干の打撲。

   野々原楓:右腕を全治三日の怪我。全身を軽い打撲。

   東宮康太郎:右足を全治一週間の怪我。全身を軽い打撲。

   桂ヒナギク:何故か心が傷ついた様子。リハビリで治ると思われる。

   大神零司:右腕と左腕の筋肉が断裂……していた筈だが、かなり治っている様子。原因は不明。

   綾崎ハヤテ:不審者に全身を矢で刺され、重症。だが、元々の頑丈さもあってか、軽症。
                                                            以上』



「……僕も載ってるんですね…」

「あなたも怪我したでしょう?」

「……確かにそうですけど…」

自分も怪我したが、なんとも言えない気持ちのハヤテであった。

(というか、ヒナギクさん…)ヒナギクの場所にもう一度目を落とし(心が傷つくって……なんで?)

それは零司によってなのだが……そんな事は、ハヤテが知っている訳もない。

「まぁ、今回のマラソン自由形に関してはこんなところですね…」

「結構被害が出た上に、不審者まで…」

「一度この競技を見直したほうがいいかもしれませんね…」

「そうですわね…。今度理事会でかけあってみますわ。ところで六花…」

アテネと六花が二人で話し始めたのを見て、ハヤテは今回のマラソン自由形を振り返った。

(というか、零司さんの事全くサポート出来なかったなぁ…)

改めてその事実を思い出すとげんなりとしてしまうが、事実なのでしょうがない。

(そういえば零司さん、本当にクビになったのかなぁ…?)

ハヤテがそんな事を思っていると、内ポケットから振動が伝わってきた。

(メール?誰からだろう…)

不思議に思いながら、メールを見るべく、ハヤテは携帯を開く。

その差出人は、

「零司さん?」

先程ハヤテが思い浮かべていた零司であった。

それを確認し、ハヤテは文面へと目を通していった。

そして、文を読み終えると、

「零司さん……そこまで切羽詰ってるんですか…」

と溜息混じりに呟いた。





       第十七話「マラソン大会のその後」





「?どうしたんですか、ハヤテ君?」

先程から独り言を呟いているハヤテが気になったのか、六花がハヤテを問いかけてくる。

「えっと…。零司さんからメールが来まして…」

「メールですの?」

「はい…」

言いながらハヤテは携帯を二人に見せる。

「「あぁ…」」

それを見て、二人は同時に納得した。

零司からのメールにはただ一文、『タスケテ』とだけ書いてあった。……これだけだと何を言いたいのかわかったものではない。

そんな事を三人が考えていると、携帯が振動した。

「また、大神君ですね…」

「今度はなんて書いてあったんですか?」

ハヤテのその問いに、六花は微妙な顔をしながらハヤテに携帯を返す。

その行動に内心で首を傾げながらハヤテは携帯を覗き込む。

そこには、『ヘルプ』だけと書かれており、他の言葉は一切書いてなかった。

「……なんなんですか、これ…」

「「……さぁ?」」

意味の全く分からないメールに三人が謎を感じていると、今度は電話がかかってきた。ディスプレイに書かれた相手は勿論、零司だった。

「……もしもし?零司さん?」

『メール見た?』

「いや、見ましたけど…」

『まぁ、あれは冗談だし。でも、助けて欲しいのは本当だけださ…』

「まず、何があったか説明してくださいよ…」

『んまぁ…。長くなるかもしれないんだがな…』

それからハヤテが聞いたことを噛み砕いて説明すると…。

一位ではなく二位だった為、執事をクビになったこと。

だが、チャンスとして、『執事とらのあな』という所で修行を積むことになったこと。

そしてなんやかんやあり、執事クエストというのに挑むことになったこと。

『んで、それをハヤテに手伝ってもらいたいんだが……頼めるか?』

「えーっと……少し待っててもらえます?」

おーう。と了承の声を聞きながら、ハヤテは二人へと向き直った。

「というわけなんですが…」

あらかじめスピーカー状態にしていたので、二人は大体の状況は分かっている。

少し考えた後、六花が口を開いた。

「まぁ……いいんじゃないですか?マラソンでは全く何も出来なかった訳ですし…」

「ぐっ…」

痛いところをつかれ、ハヤテは呻く。

「でも、一つ問題点があるんですよねぇ…」

「問題点?なんですの?」

「とはいっても、アテネ様がハヤテ君について行けばいい事なんですけどね〜」

「つまりは、あなたが所用でいなくなり、私が一人になるといいたいんですのね?」

えぇ。と六花は頷く。

「それなら、私がハヤテについて行けばいいだけですわね」

『いや、結構危険らしいけど?』

こちらの会話を聞いていたようで、零司が反応する。

「だからといって、私の方に来る方ががもっと危険なんですけどね〜…」

「…?」

「まぁともかく、私はハヤテの方についてきますわ」

『あっそ。まあ、ハヤテが守ればいい話だがな』

さりげなくプレッシャーをかける零司だった。

『じゃぁ、アレキサンマルコ教会に出来れば来てくれ。一応先に入っておくから、追いついてきてくれー。繰り返すが、出来ればでいいからな?』

「大丈夫ですって」

念を押してくる零司に返事をし、ハヤテは電話を切った。

「さて、じゃあ行きましょうかお嬢様」

「ちゃんと守ってくださいよ?ハヤテ君」

「はい!」





       *    *    *





そして数十分後、ハヤテ達二人は目的地であるアレキサンマルコ教会の前にいた。

「ここの地下に零司さんがいるダンジョンが…」

「それなら、さっさと行きますわよ」

「はい」

そう言いつつ、ハヤテが一歩を踏み出す。



瞬間、ハヤテの眼球の前を一本の矢が通った。



「「っ!!」」

その光景を目の前で見たハヤテは勿論、すぐ後ろにいたアテネもその場からすぐに跳び下がった。

その衝撃のせいか、切られていたのであろう、ハヤテの執事服の第一ボタンの辺りが取れ、首に提げていた王玉が露出した。

そしてその矢が落ちてきたであろう上を二人揃って見ると―――

「やっぱりあなたですか…!」

「…………」

入り口の屋根の上に、再三に渡ってハヤテを襲ってきた黒ローブが、ハヤテ達を見下ろしていた。

「……王玉はしっかりとつけてたか…」

黒ローブは、ハヤテの開いた胸元から覗く王玉を見て満足したような声で呟くと、その場から飛び降りた。

その光景を見ながら、ハヤテは日本刀を構え、アテネを庇うように立った。

「…………」

そうするハヤテを見やり、黒ローブはローブの中から手を出した。

(…………ナイフ?)

初めて黒ローブが手を出したことにもハヤテは内心驚いたが、心はそっちではなく黒ローブの持っているナイフへと向いていた。

今までハヤテと対峙する際は、ローブの中にあるであろう矢でしか攻撃してこなかった。だが、今回初めて近距離で使うであろう武器を見て、ハヤテはさらに警戒心を強め、一挙一動を見逃さないようにと目の前の敵を睨んだ。

そしてそのハヤテの警戒心は当たった。だが、少し違う方法で。

「………!」

今までのように矢を放たず、黒ローブはいきなりこちらに接近してきた。

その行動にハヤテの行動が遅れるが、それは原因の一つでしかない。

(予想以上に速い!)

もう一つの理由。それは、黒ローブのスピードが、ハヤテが想像していたよりも数倍速かったのだ。

それは足が速いと自負できるハヤテの数倍といえるほどのスピードであった。

そのスピードで黒ローブはハヤテに迫る。

だが、ハヤテもさるものであり、構えをすぐに直し黒ローブが近づいた瞬間に、袈裟懸けに刀を振った。

その攻撃を黒ローブはナイフで流すように受け流す。

攻撃をいなされたハヤテは、咄嗟に刀を百八十度ひっくり返し、逆袈裟を放った。

「……っ」

その行動が予想外だったのか、黒ローブは急減速し、後ろに無理矢理飛んだ。

その行動にハヤテが心の中で一息ついた瞬間、

「っ!」

黒ローブがナイフを投擲した。

「なっ!?」

その行動に気を一瞬でも気を抜いていたハヤテが反応できるはずも無く、そのナイフはハヤテの右腕に刺さった。

「ぐっ!」

「ハヤテ!」

ナイフが刺さったを見て、アテネが駆け寄ってこようとするのを手で制しながら、ハヤテは刺さったナイフを抜く。幸いナイフは深くは刺さってなく、出血も少量であった。

そしてハヤテは、自分に刺さっていたナイフを見ながら目の前の相手のイメージを固め始めていた。

最初に会ったときから全て遠距離で攻撃しており、今回もナイフを確実に当てるためにわざと接近してきた。

よって、相手は完璧に遠距離に頼る者だと、ハヤテは黒ローブを認識し始めた。

そしてそのハヤテの認識は当たっていた。

黒ローブにとって、相手を倒す方法は遠くからあまり体力を消耗しないで済む遠距離である。

故に、黒ローブにとっては全てが飛び道具である。それがたとえそこらに転がっているような石であっても、近距離で戦う為に創られた刀であっても、全てが飛び道具であった。

(正直……初見だったらやられてましたね…)

相手のイメージを固めたところで、再びハヤテは構える。

それを見た黒ローブは、今度はナイフを三本、指の間に挟んだまま出した。

そしてまた、ハヤテに向かって疾駆した。

二度目という事もあり、今度はハヤテの反応もそれについていった。

刀が当たる範囲内に入った瞬間、ハヤテはすぐに手元に戻せる速度で刀を横に凪ぐ。

(遅…)

それを黒ローブは悠々としゃがんでかわす。その際に手のナイフを一本ハヤテに向かって飛ばす。

「―――っ!」

そのナイフをすぐに刀を手元に戻し、弾く。

「はっ!」

そして弾いた瞬間、ハヤテは突きを繰り出した。狙いは右手、つまりはナイフを握らせないようにしようという魂胆である。

「……はっ」

だが、それが来るであろう事が分かっていたかのように黒ローブは嗤った。

突きを、自身を回転させながらかわし、一回転したところでナイフを二本共投擲した。それぞれの狙いは違い、一本は心臓。一本はハヤテの頭に。

(な―――)

自分の行動が予測されていたかのように攻撃をかわされ、ハヤテは心の中で驚く。が、そんな感情もすぐに追い出し、眼前に迫るナイフへと意識を集中させた。

(下のナイフ―――かわせない!)

即刻に決断し、ハヤテは心臓に迫るナイフに対して、左腕を盾にして心臓を守った。

(上のナイフ―――かわせる!)

そして、続いて頭に迫り来るナイフは首を傾けた。それにより、ナイフはハヤテの頬を掠めるだけに終わり、後方へ飛んでいった。

?――が、それが黒ローブにとっての本当の狙いだった。

ハヤテの後方には、守るべき存在。つまりは―――



天皇州アテネがいた。



「しまっ―――!」

ハヤテがその事に気づくが、もう遅い。

もう矢は、ハヤテがどうにか出来ないところまでアテネに迫っていた。

もうダメだ。ハヤテがそう思った時、

「ふっ!」

アテネが手に握っていた何かで矢を弾いた。

それは、ハヤテの刀の鞘だった。

実は、ハヤテが刀を抜いた時に捨てていた鞘をアテネが拾っていたのだ。

それにより、アテネは矢を弾くことが出来たのだ。

「ちっ」

舌打ちをしながら、黒ローブは再び距離をとった。

ハヤテも、アテネとの距離が無意識に開いていたので後ろに下がる。

アテネはそれを確認し、口を開いた。

「ちょうどいいから訊いときますわ。あなたは、何が目的なのかしら?」

その言葉に黒ローブの肩が震えたが、二人は気づきはしなかった。

数秒の沈黙が続いた後、黒ローブは声を発した。

「…いいだろう。教えてやるよ、俺の目的を…」

それは、ハヤテにとって怒りを覚える目的で、アテネにとっては恐怖の目的であった。



「俺の目的、それは…」指でアテネを指し「天皇州アテネ。お前を殺すことだ」




―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――



……はーい、第十七話おっわりー。

ハヤテ「テンション低いですね…」

ハヤテもね…。というわけで、今回は黒ローブの目的が明かされましたー…。

これによって黒ローブがたびたびハヤテを襲ってきたことにも説明がつくねー…。

ハヤテ「……あれ?じゃあなんで最初は…?」

まぁ、それは後々ね…。

では、今回はここで!次回仮で『守るから強くなる』でお会いしましょう。

では!!

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Re: 誰がため、何のため 7/11更新 ( No.36 )
日時: 2012/07/11 19:06
名前: 匿名

どうも〜♪匿名っす♪で、ハヤテは何をやってるのかな〜★
「木崎輝雪です♪全く、前だけじゃなくて後ろ、いや、全方位に気をつけなさいよ」
「木崎和也。全くだ。自分の守りたいものぐらい守ってみせろ」
本当にな。いくら今回で相手の目的がアテネの命ってわかったからといって、もう少しで死んでたよ。
「流石はハヤテくんのお師匠さんね♪もう十年ほど前だけど」
「ま、そろそろ感想に行くか」
そうだね。
「みんなが雪路にたいして批判してたわね」
俺たちもするか。
「じゃあシンプルに・・・死ネ」
「地獄に堕ちろ」
消えろ。
「さあ、次行きましょうか♪」
「急だな。被害に関しては予想通り・・・というか見てて、当然だなっと思ったのでスルー。
大神からのメールか。・・・切実だな」
教会ってことは・・・あいつ来るかね?ショタコン。
「誰そいつ?」
まあ、気にしなくていいやつ。とにかく!黒ローブとの対戦はどうなるか!大神のクビはどうなるのか!
「次回も楽しみです♪」
「ではまた」
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Re: 誰がため、何のため 7/11更新 ( No.37 )
日時: 2012/07/14 18:50
名前: コサッキー

<レス返し>

▼匿名さん

>どうも〜♪匿名っす♪で、ハヤテは何をやってるのかな〜★

どうもですー♪

ハヤテ「早速言われた!?」

いや、そりゃそうでしょ…。

>「木崎輝雪です♪全く、前だけじゃなくて後ろ、いや、全方位に気をつけなさいよ」

ハヤテ「(ザッグン!)」

あ、何か刺さった。

零司「心抉られたなー…」

>「木崎和也。全くだ。自分の守りたいものぐらい守ってみせろ」

ハヤテ「(ドグッシャァ!)」

零司「心を抉られた音じゃねぇ!?」

……ハヤテ再起不能かなぁ…。

>本当にな。いくら今回で相手の目的がアテネの命ってわかったからといって、もう少しで死んでたよ。

>「流石はハヤテくんのお師匠さんね♪もう十年ほど前だけど」

ですよねー。

ハヤテ「(ドガガガガガガガッ!!)」

零司「……ありゃダメだ」

……うん。

んで、目的は言ったとおりアテネの命ですねー。

アテネ「軽く言われるとムカつきますわね…」

>「ま、そろそろ感想に行くか」

>そうだね。

六花「いつも感想ありがとうございます♪」

>「みんなが雪路にたいして批判してたわね」

そりゃしますって♪

六花「正直クビが妥当ですよね〜」

雪路「やめてぇえええええええええ!!?」

まぁ、そこの処遇は置いとくか…。

>俺たちもするか。

>「じゃあシンプルに・・・死ネ」

>「地獄に堕ちろ」

>消えろ。

いぇーい、罵詈雑言の嵐―♪

ハヤテ「軽くいう事じゃないですよね!?」

まーねー。でも、いいんだよ!!

>「さあ、次行きましょうか♪」

>「急だな。被害に関しては予想通り・・・というか見てて、当然だなっと思ったのでスルー。大神からのメールか。・・・切実だな」

まぁ、被害に関しては少ないですけどねー。

零司「というか、俺は切実になって普通じゃね?」

まぁ、執事続けてたいしねー…。

>教会ってことは・・・あいつ来るかね?ショタコン。

>「誰そいつ?」

誰やねん。大体予想つくけど!

零司「まぁ、出ないだろ」

>まあ、気にしなくていいやつ。とにかく!黒ローブとの対戦はどうなるか!大神のクビはどうなるのか!

クビに関してはさせてたまるかぁ!

零司「なってたまるかぁ!」

アテネ「必死ですわね…」

クローブさんに関しては……………。

ハヤテ「その長い無言は何!?」

…………今回をご覧下さい♪

六花「不安過ぎますね〜…」

>「次回も楽しみです♪」

>「ではまた」

零司「匿名さん感想どもでしたー」



はーい。というわけで今回はVS黒ローブ!

零司「……ハヤテ勝てんの?」

……さあ?

ハヤテ「何故作者さんが疑問形!?」

いや、実際結構強いんだよね、黒ローブ。

零司「まぁ、ハヤテが初見だったら負けてた奴だしな」

うん。でも実はあの時は零司がいたからさっさと退いたんだよねー。

ハヤテ「……もしも零司さんがいなかったら?」

その場でハヤテを殺してたかもね…。

二人「「…………」」

はい、二人が恐ろしい想像をしてるのは放っておいてどうぞ♪



――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――





黒ローブの『アテネを殺す』という発言を聞いたとき、ハヤテは一瞬その意味を理解できなかった。

(ころ…す…?)

だが、ハヤテの思考はすぐに戻った。

ハヤテの手に、アテネの手が触れてきたからである。

アテネの手は震えており、ハヤテはその手を元気付けるようにギュッと握る。すると、アテネの手の震えも段々収まっていった。

それを確認すると、ハヤテは目の前の敵を睨んだ。

黒ローブも、ハヤテの睨みを受け、再びローブの中からナイフを持った手を出す。





       第十八話「守りたいから強くなろうと思う」





そしてそのまま、睨み合いが数秒間の間続いた。

いや、黒ローブにとっては数秒だったが、ハヤテにとっては数秒ではなく、それ以上の時間に感じられた。

何故なら、目の前にいる黒ローブからの威圧感―――いや、殺気というべきものに完璧にのまれていたからである。

先程目的を口にするまでは全くといっていいほど感じられなかった殺気。それが今は感じられていた。

その大きさは、以前零司に野暮な事を聞いてしまったときに感じられた殺気と同レベル、いや、それ以上とも感じられるものであった。

その殺気に飲まれてしまったハヤテは、蛇に睨まれた蛙のごとく怯えていた。

自分は殺される。という想像がハヤテの頭の中を駆け巡る。

膝ががくがくと震え始め、息も荒くなり、気を抜けば倒れてしまいそうになる。

だが、ハヤテだけであったらそうだったであろう。

今この状況にはハヤテだけが黒ローブに対峙している訳ではない。ハヤテと、守るべき主のアテネがいる。

守るべき存在が後ろにいる。その事がハヤテを殺気に対して奮い立たしていた。

そして殺気に耐えている理由はそれ一つではない。

それには零司が深く関わっていた。

理由としては簡単で、零司から過去二回にわたり、今受けている殺気に近いものを受けているからであった。

勿論零司が放っていたのは威圧感に近いものであって殺気とはいいがたいものだが、そのようなものを受け慣れていないハヤテにとっては殺気とほぼ同義であった。

ともかくそんなこともあり、ハヤテは黒ローブから放たれている殺気に耐えることが出来ているのであった。

閑話休題。

そして、その静寂を破ったのは―――意外にもハヤテだった。

「はぁああああああっ!!」

大声を上げながら黒ローブに向かってハヤテは突貫する。

その行動に黒ローブは腰を落とし、右手の指の間に挟んでいるナイフを構えなおす。

そしてハヤテは刀が当たる範囲内に入ると、刀を振るった。

(さっきより速い―――!)

先程までの速さだろうと高をくくっていた黒ローブは、その速さに驚きながらも後ろに飛びながらかわす。

そして同じようにナイフをハヤテに向かって三本とも投げる。

狙いは三本ともハヤテの腕。刀を握らせないためである。

だが、ハヤテはそんな矢を悠々と弾く。

「なっ!?」

その光景に今まで出したことの無い声を黒ローブは出した。

(いつの間に手元に戻してた!?)

そう。黒ローブは全てが当たらないとは思っていたが、一本も当たらないという事に驚いていた。

さっきまでのハヤテなら、すぐに刀を手元に戻せず矢の一本は当たっていただろう。

だが、今のハヤテは黒ローブが気づかない内に刀を手元に戻し、矢を弾いた。

それは黒ローブの心に動揺を走らせた。

「くっそ…!」

急いでローブの中に手を突っ込み、代わりのナイフを取り出そうとするも、

「っ!」

ハヤテの先程よりも速い突きにより、取り出そうとしていたナイフを取り落としながら後方へ再び跳んだ。

そんな黒ローブをハヤテは冷たい瞳で見やる。

その瞳は普段のハヤテなら絶対にしない瞳であったが、今はそんな冷たい瞳をしていた。

「…………」

そんなハヤテ自身も内心では驚いていた。

自分が自分らしくないことが分かっている。それでも今の状況ではありがたくもあったので放っておいているのだが。

こんな気持ちになったのは実は初めてではない。

最初にこんな冷たい気持ちになったのは、旧校舎の時である。

ヒナギクが何かに襲われていると分かった瞬間、ハヤテの中にある何かが急速に冷えていったのであった。

あの時はすぐに何かを倒したのでこの感情もすぐに収まった。

だが、今はすぐに倒せる相手ではない。

そして、相手の目的が自分の大切な人を害することだという事。

それらはハヤテの感情を冷徹にするには十分な要素であった。

一方、先程までは優勢に立っていた黒ローブは。

(……目的がはっきりした事で気持ちが固まったか…)

今の状況を冷静に分析していた。

もしも黒ローブが目的を言わずにいたとしたら、ハヤテは全く太刀打ち出来なかっただろう。

だが、目的を話してしまったことによりハヤテの気持ちが固まり、太刀打ちできるほどの実力までに力を上げた。

もしも今のハヤテを零司が見たとしたら、『ハヤテの潜在能力が若干開花した』というだろう。

実際、先程まで全く歯が立たなかった相手を焦らせることが出来たのはその部分が大きい。

だが、それは自己暗示にも近い開花の仕方であった。

ハヤテは、自分が倒れてしまったらアテネが死ぬ。つまりは自分は負けることが出来ない。そう自分に言い聞かせるようにする事で、ハヤテは自分の潜在能力を開花させたのだ。

しかし、この方法には若干のリスクが存在する。

まず一つ目は、あくまで『若干』だという事である。

割合で言うならば一割から三割程度の力の上乗せ。それで目の前の敵に勝てるとは限らない。

そして二つ目。それは自己の軽視化である。

『自分が負ける訳には行かない』それは言い換えると、『刺し違えてでも負ける訳には行かない』ということである。

つまり極論を言ってしまえば、引き分けにもっていけばいいのである。

引き分け。それはハヤテと黒ローブ、両者の死である。

そんな事は誰もが望まないことではあるが、自己暗示がもたらすメリットとデメリットはそんな事はお構いなしに来る。

そして最後である三つ目。実はこれが一番深刻なのかもしれない。

それは、その自己暗示が堅く、脆いことである。

一見矛盾しているように思えるが、そうではない。

ハヤテが己にかけた自己暗示は、大雑把に言えば『己の身は関係なく、主を守ることだけ』である。

それ即ち、自分が無事で、主が少しでも傷ついてしまったら?

そうなったら瞬く間にハヤテの自己暗示は解け、アテネを守ることなど出来ずに終わってしまうだろう。

ここまでの説明は『脆さ』についてである。

では、逆の『堅さ』はどうか?

それは、『堅すぎる』自己暗示であることが問題なのである。

それはつまり、先程の状況以外の状況では全く考えが変わらないという事である。

即ち、考えが一辺倒になり、他の考えが頭の中からはじき出されるということである。

この場合で考えると…。

敵はアテネを殺しに来た。それを退けても、再び襲ってくるだろう。なら、ここで決着をつける。

という流れになり、敵を倒すことだけに意識が向いてしまい、逃げることや助けてもらうといった選択肢が頭に浮かびすらしなくなるのだ。

それは非常に不味いことだ。

柔軟に思考を巡らせ、最善の状況を作ることが今のハヤテに求められていることである。

例えば、ハヤテが時間を稼いでいる間に逃げてもらうなど。

だが、自己暗示を堅く自身にかけてしまったハヤテにそんな事は考えられず、ハヤテは主を危険にさらすという最悪の状況を作ってしまったのだ。

そしてそのハヤテの事を黒ローブは大体見抜いていた。

(……ま、いきなり戦闘力が上がるなんて普通はありえないしな。そしたら、自己暗示とか薬とかそういう方法が妥当だろ)

そう考えながら黒ローブはナイフを一本だけ出し、右手で逆手に持つ。

(……頭に血が上ってるのを利用させて貰う…)

そして今度は黒ローブからハヤテに向かって走り出した。

ハヤテはそれを構えて迎え撃とうとする。

だが、黒ローブにとってはハヤテなど気にかけていない。

気にかけているのはたった二つ。ハヤテの持つ日本刀の太刀筋とその後ろにいるアテネだけだった。

強く地面を踏み、黒ローブはハヤテの刀の範囲内にわざと入る。

それを見たハヤテは何も考えずに袈裟懸けに刀を振るった。

(かかった)

自分の考えていた通りに事が進んだことに黒ローブは内心で笑う。

そして、黒ローブに向かってくるハヤテの刀を、ナイフを巧みに使い、後ろの方へ受け流す。

それにより、ハヤテは前のめりのような体勢になってしまう。

そうなるように誘導した黒ローブは、すぐにハヤテの脇をくぐるように通りつつ、すれ違いざまにナイフをハヤテの脇腹に突き立てる。

「くっ…!」

その痛みに声を出すが、ハヤテはすでに体勢を立て直していた。

(全体的に速くなってる…!?)

それが再び黒ローブの心を動揺させた。

「やぁっ!」

そんな黒ローブの心境なんてお構いなしにハヤテは振り向きながら刀を振りぬく。

だが、その攻撃は当たる事はなかった。なぜなら―――



その振り向きざまに振った刀の上に黒ローブが足をかけ、振り抜かれるその力を利用し、後ろに飛んだためである。



「な―――」

その曲芸のような行動にハヤテは驚き、体の動きを止めてしまった。

その間に黒ローブは着地し、アテネに向かって走り出した。

「お嬢様!」

その光景を見て、やっとハヤテは我に返った。

そして悟る。自分がアテネから離れすぎていたことを。

今のハヤテの位置は最初に黒ローブがいた、教会の扉の前である。

それに対し、アテネの位置は教会の扉から十メートルも離れてはいない場所ではある。

が、今はその十メートルにも離れていない距離が問題なのであった。

ここからハヤテがアテネの元に戻るとしたら、三秒もあれば戻れるであろう。

だがしかし、ハヤテとアテネの真ん中の位置にいるのはハヤテよりも速い黒ローブである。

黒ローブがその気になれば、ハヤテが追いつくよりも前にアテネを殺すことが出来る。

(それでも……諦めない…!)

それでも、ハヤテは諦めようとしない。

実際、アテネも鞘を持っており、黒ローブの攻撃をアテネが少しの間持ちこたえることが出来れば、どうにかなるだろう。

元々ハヤテに剣を教えたのはアテネであり、実力はアテネの方が高いかもしれない。

それを心のどこかで踏まえ、ハヤテはアテネが持ちこたえることを信じているのかもしれない。

それはともかく、ハヤテもすぐにアテネの元に駆けつけようと足に力を込める―――

が、足に力が入らなかった。

その理由は、簡単であり、ハヤテの足の筋肉に沿うように矢が突き刺さっていたのである。

(いつ……の間に…?)

それは黒ローブがハヤテの刀に乗り、後ろに飛んだ際である。

あの時実は、ローブの中から矢を足に向かって射出していたのであった。

そして、ハヤテが矢が刺さったことに気づかなかったのは、ナイフがあったからである。

あのナイフは毒が塗ってあったのだ。毒の種類としては神経毒が。

神経毒の一般的な効果は麻痺であり、その効果によりハヤテの痛覚が麻痺し、痛みを感じなかったのだ。

話を戻すと、それらによりハヤテの足の筋肉は走ることが出来ないようになっていた。

(それでも…!)

走ることが出来ないのなら、歩けばいい。

そう思い、ハヤテは遅くても歩き始めた。少しでもアテネを守る為に。



そして、ハヤテが歩き始めた頃、アテネは。

「くっ…!」

「…………」

黒ローブと対峙していた。

だが、状況はアテネが不利だった。

アテネの武器は鞘一本。それに対し、黒ローブの武器は有限ではあるであろうが、いつ尽きるか分からない無限の矢やナイフ。

それを分かっていながらも、なんとか捌けているアテネは流石である。

(ハヤテ……早く…!)

だが、アテネの心は徐々に磨り減っていた。

自分の死という現実が目の前にある以上仕方の無いことではあるが…。

それ以上にハヤテが近くにいないという事がアテネの心を磨り減らしていたのである。

ハヤテが遠くからこちらに向かってきてくれている事が今のアテネをなんとか持たしていた。



そして、その紙一重の攻防は、すぐに終わりを告げた。



(……もういいか)

黒ローブは後方をチラリと見やる。

後方には、焦った表情でこちらに歩いてくるハヤテが見えた。

距離は大体五メートル弱。

それを確認すると、黒ローブは決着をつけることにした。

アテネの懐にまずは飛び込む。

「―――くっ!」

それをアテネは上手く鞘を使って迎撃しようとする。

それを見た黒ローブはナイフを一本鞘に向かって飛ばす。

そのナイフはあっさりアテネによって弾かれる。

それを黒ローブは確認すると、アテネの鞘を握っている手首を強打した。

「うっ!」

その痛みにアテネは鞘を落とさないまでも、握る力を弱めてしまった。

そして、その鞘を黒ローブは上に蹴飛ばす。

「あっ!!」

アテネがしまったといわんばかりに声を上げる。

その鞘を黒ローブは飛び上がり、教会に向けてさらに高く蹴飛ばした。

「あ…」

鞘に向かってアテネは手を伸ばすも、届くはずも無く、その手は宙をきる。

そして、力が抜けアテネはその場に座ってしまう。

そのアテネに、影が差した。

その影は、ただ冷たくアテネを見下ろしていた。

そしてその影は、命を散らすべく、手を振り上げた―――



ハヤテはその光景を離れていたところで見ていた。

(何で―――)

(何で僕には力が無い―――?)

(また、あの日のように失うのか―――?)

ドクン。ハヤテの心臓が大きく跳ねた。

(欲しい―――)

(彼女を、大切な人を守る力が―――!)

『……なら、イメージしろ』

(え―――?)

『お前の心が主を守る力になるから…』

『あとはイメージするだけ…』

『それを具現化する力を…』

『お前はもう持ってるだろ?』

(僕の……心…)

それはもう決まっている。

(守りたいんだ……いや、守るんだ……誰よりも速く…)

(誰よりも速く……君を守る為に…)

(君の隣に駆けつけるために!)

それは文字通り―――





「疾風のごとく!!」





そして、ハヤテは一陣の風となった―――

「!!」

その行動に黒ローブが反応できるはずもなく、

「がぁ…!」

黒ローブは横の森へと吹き飛ばされた。

「はぁ……はぁ…」

「ハヤテ…」

心配そうに話しかけてくるアテネにハヤテは微笑むだけで返事を返した。

(今度こそ……守れた…)

そう思い、ハヤテは安心した気持ちになるのだった。





       *    *    *





そして、ハヤテに吹き飛ばされた黒ローブはというと、

「ごほっ…!」

生きてはいたものの、全身に怪我を負っていた。

(何だよ……アレは…!)

アレとは、ハヤテの必殺技ともいえる疾風のごとくのことである。

(なんで、ボロボロの状態であんな事が出来るんだよ…!)

疾風を呪いながら、黒ローブは立とうとする。だが、

「くっそ…」

全身の筋肉が悲鳴を上げ、立つこともままならなかった。

(いってぇ…)

そして、そのまま倒れてしまう。

(やべぇ……眠く…なってきた…)

全身が眠りを望み、瞼が重くなってくる。

(くっそ……ふざ……けん……な…)

そうして、眠りに就こうとしたとき、どこからか鐘の音が聞こえてきた。

「…………っ」

その音に眠りに就こうとした黒ローブの体が少し跳ねた。

因みにこの鐘の音はアレキサンマルコの鐘の音であり、先程黒ローブがアテネの鞘を蹴飛ばした際に当たり、音が鳴ったのである。

(鐘の音…)

鐘の音は続き響き渡る。

その鐘の音に呼応するように黒ローブの体は跳ね上がる。

(そうだ…)

そして、黒ローブの指先が地面を削る。

(俺は……殺すんだ…)

肘と膝を立て、四つんばいの格好になる。

(誰を…?天皇州アテネを…)

片膝を立て、手を近くの木の幹に爪を立てるように添える。

(そして…)

全身の痛みを歯を食いしばって耐える。

(綾崎……ハヤテを…!)

そして、黒ローブは、立ち上がった。

「あぁあああああああああああああああああ!!!!」





       *    *    *





『あぁあああああああああああああああああ!!!!』

「「っ!?」」

ハヤテとアテネの二人は、突如聞こえてきた獣のような声に体を震わせた。

「い、今のは…?」

「……まさか…」

そして、その声の主が森の中から、ゆっくりと出てきた。

「……す」

呟くような声。だが、その声にかなりの殺気が込められているのに気づいたハヤテは、すぐに戦闘体勢をとる。

「……す。…ろす。コロス。殺す!」

「!!お嬢様、下がって!」

ハヤテがアテネを後ろに下がらせたと同時、黒ローブが獣のように襲い掛かってきた。

「あぁああああああああーーー!!」

(さっきまでと全然違う…!?)

火花を散らせながらナイフと刀は交錯する。

普通なら、刀が勝つ。筈だが―――

「あぁあああああああああーーー!!」

(なっ!?押し負ける―――!)

「がぁっ!」

鍔迫り合いの際にハヤテが押し負け、後ろにさがってしまう。

そして休む暇は与えないといわんばかりに黒ローブはハヤテに襲い掛かる。

(どこにこんな力が…!)

再び刀とナイフが交錯する中、ハヤテはそう思う。

実際、ハヤテが押され始めていた。それもナイフ一本で。

(だけど…!)

「負ける……わけにはいかないんだぁーーー!!」

「くっ…!」

交錯した瞬間に力任せに刀を振り、黒ローブを弾き飛ばす。

その際にナイフも折れ、黒ローブは膝をついた。

「はぁ……はぁ…。いい加減に……諦めたらどうですか…!」

息も絶え絶えの状態でハヤテは黒ローブへと言葉をなげかける。

「……なんで…」

だが黒ローブは、その言葉には答えず、何かを呟いた。

「なんで……そこまで、強くなるんだよ!!」

それは疑問。ハヤテの強さが理解できない黒ローブの。

「……決まってますよ」

そしてそんな黒ローブの質問に対するハヤテの答えは決まっている。

「大切な人を……守りたいから強くなるんですよ!!」

「っ!!」

ハヤテの答えに黒ローブは全身を震わせ、俯いた。

それを見て、ハヤテは(……なんとかなったのかな?)など、気楽なことを考えていた。

だが、そのハヤテの考えは甘い。甘すぎた。

「……っけんな」

今、前にいるのは敵。

「……っけんな!」

そして、ハヤテとは相容れない考えを持つ存在。

「ふざっけんなぁ!!」

そして―――





「それだけの理由……守りたいだけで強くなれるなら、この世に絶望なんて生まれねぇよ!!」

零司と同じく、心に大きな傷を持ち、悪に染まった存在。





そんな存在には、ハヤテの答えはかえって怒りを覚える。

勿論ハヤテが悪いわけではない。

ただ、相手が悪かっただけ。ただ、それだけなのだ。

「もういい…。もういい…!」

そしてハヤテは初めて何かを呟く黒ローブの瞳を見た。

緑色の、人形にはめ込まれているような透き通った瞳。

だが、その瞳は、憎悪ただ一色に染められていた。

「……っ」

その瞳を見てしまった瞬間、ハヤテは無意識に一歩さがってしまった。

「お前ら二人とも……殺す!」

「「っ!!」」

そう言われた瞬間、二人は構える。

黒ローブは今までのように何かは出さず、ただその場に立ち尽くす。

そして、二人が瞬きをして、再び目を見開いた瞬間、視界に入ったのは、



そこに黒ローブはおらず、石畳が砕け、石が宙に舞っていた光景だった。



「え…」

その光景に思わずハヤテはそう漏らしていた。

そして、顎に衝撃が走り、体が宙に浮いた。

「がっ…!」

宙に浮いたまま下に視線を向けると、黒ローブが手を振りぬいたのが見えた。

だが、ハヤテにはどうすることも出来ない。

何故なら、ハヤテが何かするよりも速く、黒ローブがハヤテの腹を手刀で貫いたからである。

「ごほっ…」

その行動により、ハヤテの口内に血が押し寄せてくる。

「……キヒッ」

黒ローブは笑い、ハヤテの腹から手を引き抜き、ハヤテを蹴飛ばす。

ハヤテはろくに抵抗も出来ずにそのまま吹き飛ばされ、壁に当たり、そのまま倒れ伏した。

「ハヤ―――」

アテネがハヤテが吹き飛ばされた事に声を上げようとするが、

「キヒッ!」

黒ローブがアテネの側頭部を蹴り、その場で半回転させた。

「―――」

一瞬で世界が反転したのと、脳震盪でアテネは一言も発せずに、

「キヒャッ」

黒ローブに蹴飛ばされ、ハヤテが当たった壁に当たり、ハヤテに覆いかぶさるように倒れた。

「キヒッ、キヒヒヒヒヒヒヒヒヒッ!!」

ハヤテとアテネが重なっている光景を黒ローブは笑うと、そのままどこかへ消えていった。





その後、教会を壊しながら出てきた零司達がハヤテ達を発見し、ハヤテ達は病院に運ばれた。




――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


……はーい、第十八話終わりー…。

零司「…………うわー…」

……ハハハ……笑えねー…?

零司「いや、これは笑えない…」

だよねー…。はぁ…。

零司「勝ったと思いきや、一転して負けとか…。お前どんだけだよ…」

……いや、ハヤテって明確な負けなかったじゃん?零司の場合は引き分けに近いし。

零司「いや、だからってさぁ…」

まぁまぁ…。あと黒ローブに対する苦情は一切書かないで下さいね…?

零司「……何故?」

……理由はあるんだけどさ…。今は言えない…。

零司「…?」

まぁ、兎も角今回はここで終わりです…。

次回、仮タイトル「心折れて」でお会いしましょう…。

零司「おい、タイトル…」

ではー…。
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Re: 誰がため、何のため 7/14更新 ( No.38 )
日時: 2012/07/14 20:44
名前: 匿名

どうも〜♪匿名っす♪
「和也だ。気分を変えて輝雪はいない」
ふと思ったんだけど、他のとこの感想で起こった事情を引っ張る必要あるかな?
「そう思うなら最初から輝雪を連れて来い。感想だ」
ハヤテはあれだね、半ば本能で動いてるね。アテネにも気を使おうよ。
「でも以外とあるぞ。何かがきっかけで自分の中の“何か”が外れて戦闘力は上がるが周りが意識に入らないみたいな」
お前が言うと説得力があるな・・・。
「いつ出るかもわからないネタをここで出すな。で、一時的にだが倒すことができたな」
あくまで、一時的に、だけど。
「こいつの執念は凄いな。あまり褒められたものではないが」
なぜアテネを狙うのか。あまりの執念深さに最後は大逆転。死ななくてよかったな、二人とも。
「で、ハヤテも殺しの対象となったか。今更だが・・・」
ハヤテとアテネは何しに教会に来たんだっけ?
「助けを求められた相手に助けられてどうする」
まあ、とりあえず零司〜、教会前で二人を見つけた時の心境を教えて下さい♪(←マイクを渡す)
「とにかく、ハヤテ、強くなれよ」
それでは、次回も楽しみです♪匿名でした♪
[管理人へ通報]←短すぎる投稿、18禁な投稿、作者や読者を不快にする投稿を見つけたら通報してください
Re: 誰がため、何のため 7/14更新 ( No.39 )
日時: 2012/07/20 18:49
名前: コサッキー

<レス返し>

※今回のレス返しにハヤテは出ません

▼ 匿名さん

>どうも〜♪匿名っす♪

>「和也だ。気分を変えて輝雪はいない」

どもですー♪

零司「何か珍しい感覚だな」

六花「ですよね〜♪」

>ふと思ったんだけど、他のとこの感想で起こった事情を引っ張る必要あるかな?

>「そう思うなら最初から輝雪を連れて来い。感想だ」

零司「普通に考えて無いな」

ズバッと言うね…。

零司「当たり前だ。というか、他人は他人。分別をつけろ」

六花「何はともあれ感想ありがとうございますね〜♪」

>ハヤテはあれだね、半ば本能で動いてるね。アテネにも気を使おうよ。

ぶっちゃけ、必死だったんですよねー…。

零司「まぁ、目の前であんな事言われたらなぁ…」

というか、人間って大半が本能で動いてません?

零司「まぁ、寝る、食べる、後は性とかは本能だよな」

>「でも以外とあるぞ。何かがきっかけで自分の中の“何か”が外れて戦闘力は上がるが周りが意識に入らないみたいな」

六花「それに関しては大体同感ですね〜」

意外な人からきたぁ!?

六花「意外って何ですか意外って♪」

ゴメンナサイ。←(土下座)

零司「キャラに負ける作者って…。まぁ、それはともかく。確かに和也の言ってることはよくあるな」

六花「ですよね〜。まぁ、何事もリスクがあるんですよ♪」

零司「同感っす」

>お前が言うと説得力があるな・・・。

こっちの二人も説得力ありありですよ…。

零司「ぶっちゃけそういう奴見てきただけだがな」

六花「私は知り合いにいますしね〜♪」

>「いつ出るかもわからないネタをここで出すな。で、一時的にだが倒すことができたな」

>あくまで、一時的に、だけど。

まぁ、一時的にですけどね。

零司「何度も繰り返すなって…。……確かに一時的にだったが…」

>「こいつの執念は凄いな。あまり褒められたものではないが」

執念とは少し違うんですけどね…。

零司「何かが琴線に触れた……ってとこか?」

うん。

六花「ヒントとしては……戦った場所。ですかね?」

……これ以上はやめてね?ネタバレだから?

黒ローブ「つーか、何事も違う奴から見れば大体が褒められねえだろうが…」

>なぜアテネを狙うのか。あまりの執念深さに最後は大逆転。死ななくてよかったな、二人とも。

アテネを狙った理由は、もう一度戦った時ですかねー。

零司「いや、次で最後だろ?」

まぁそうだけど!!

因みにハヤテ、零司、黒ローブの強さをわかりやすく説明すると…


零司>>>黒ローブ>>>>>ハヤテ


ですね♪

零司「ハヤテが弱いな、おい!!」

まぁまぁ、んで、今回一時的に…


零司>>>黒ローブ>ハヤテ


になったのさ!

零司「……超してないからダメじゃね?」

……言うなって。

アテネ「ひとまず死ななくてよかったですわ…」

>「で、ハヤテも殺しの対象となったか。今更だが・・・」

優先順位としてはハヤテが上だけどね♪

零司「何で標的より上になるんだよ!!」

理由が色々さ!!←(いやー、ほんとに色々なんですよねー♪)

>ハヤテとアテネは何しに教会に来たんだっけ?

>「助けを求められた相手に助けられてどうする」

零司「……何でだっけ?」

零司が忘れてどうするん!?

零司「………………………あぁ、俺が助けてもらおうとしたんだっけ」

……マジで忘れてたんだね…。

>まあ、とりあえず零司〜、教会前で二人を見つけた時の心境を教えて下さい♪(←マイクを渡す)

零司「いや、正直びっくりしたとしか…」

正直零司は何か急な用事が入って来られなかったんだろうな。って思ってましたからね…。

零司「いやー……あれは本当にびびった…」

>「とにかく、ハヤテ、強くなれよ」

……強くなれるかなぁ…?

零司「……これに関しては俺も何も言えねぇなぁ…」

六花「……こればっかりはハヤテ君次第ですからね〜…」

>それでは、次回も楽しみです♪匿名でした♪

どうもでしたー♪

六花「匿名さん感想ありがとうございました♪」



はい、というわけで送る今回の話は!!

零司「とっとと進めろっての」

ノリわりー。

零司「るっせぇ。てか、何でハヤテいない訳?」

あー…。

零司「…?」

まぁ、今回でね?

零司「は?」

では、どうぞ。



――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――



ハヤテとアテネ、二人が黒ローブに襲撃された翌日。

ハヤテは天皇州家の自分にあてがわれた部屋のベッドの上にいた。

「…………」

ハヤテはベッドから見える天皇州家の庭を見ていた。

「…………」

ただ、その目は生気がなく、虚ろではあったが…。

そんな様子のハヤテを見て、同僚の志姫六花はそっと溜息をつく。

六花が入ってきた三十分前ごろから。いや、もしかしたらそれ以前からハヤテはこんなだったのかしれない。

その事に六花は困っていた。

この原因は六花にはわかっている。だが、わかっているだけだ。

治す方法が全く見えてこない。その事に六花は困っていた。

ハヤテがまるで死を宣告された患者のようになっている理由。それは怪我である。

勿論身体的な怪我もあるが、それは今は一切関係ない。

つまり、精神的な怪我である。

身体的な怪我に関しては、元々の頑丈さに加え、あの後教会を出てきた零司により適切な応急処置のおかげで、腹を貫かれたにも関わらず軽症で済んだので問題は無い。

しかし、精神的な怪我に関してはそうはいかなかった。

自分の目の前で主を傷つけられ、守れなかったという事実はハヤテの心に思いのほか深く傷をつけてしまったのだ。

(……でも、ハヤテ君はこれくらいではここまでならないと思っていたんですけどね…?)

六花の思っていることは正しい。

実際今までのハヤテならこんな事は気にしないとまでは言わなくても、立ち直りはするはずである。

だが、ハヤテは黒ローブと対峙し、見て、感じてしまったのである。

純粋なまでの殺意を。

目的にかける執念を。

自分とは正反対の考えを。

そして、自分がどれほど恵まれていたかを。

それを見て、感じてしまったハヤテは、心が壊されかけてしまったのだ。

そんなハヤテに六花は様々な方法を試した。が、ハヤテ自身が心を閉ざしているのか、全く反応は返ってこなかった。

そんな事があり、今に至る。

「……ハヤテ君。一度失礼しますね?何か様があったら呼んでくださいね?」

「…………」

返事が返ってこなかった事に少し顔を曇らせながら、六花は部屋を出た。

「ふぅ…」

部屋を出た瞬間、胸の中にある何かを吐き出すように六花は溜息をつく。

「どうしましょうかねぇ…」

それは普段の六花からは考えられない弱音だった。





       第十九話「風凪ぎて、花は心配し、零は考える」





『……い!な……!?』

『……さ…』

『……邪…』

『………、大……声…叫……さっ……と出………?』

六花がハヤテの部屋から出てくると同時に、廊下にそんな声が響く。

『にゃーーーーー!!!』

そして突如三部屋隣の部屋の扉が開き、三人が出てきた。

……いや、一人は引きずられていたが。

「はーなーせー!!」

「少し黙れ」

「……迷惑だからな?」

「しーるーかー!!」

その三人を見て、六花は頭が痛くなるように思えた。

何故なら、その三人は自分が呼んだ者達だったからである。

「全く…」

こめかみを押さえながら六花はその三人に近づいていく。

「いいじゃんべっつにー」

「いや、お前がやると洒落にならない」

「……つか、お前本当に女だよな?」

「失礼な!」

「……何やってるんですか三人とも…」

『あ、六花さん』

六花が声をかけると三人ともが声を揃えて返す。

「……何を騒いでるんでしょうね〜♪」

……声こそ楽しそうではあったが、雰囲気に関してはそうではなく、逆に物凄く怖かった。

「えー?いや、アテネの着替え手伝おうとしただけですよ?」

だが、その三人はそれを感じ取っているだろうが、それを全く平気そうに六花に返す。

「……それで?」

「それで、脱がそうとしたらいきなり三人に追い出されたんですよー」

「……いや、俺らのこと考えろよ」

「え?いや、目の保養になるかなって思ってさ♪」

「…………」

女性を掴んでいた男性が女性の頭に拳骨を降らす。

「痛いぃいいいいいいいいい!!??」

その痛さに女性は廊下を転げ回る。

「自業自得だ。それで六花さん、どうかしましたか?」

女性を殴った男性が六花に問いかける。

今更だが、三人は男性が二人、女性が一人である。

服装は執事服とメイド服。

「いえ、少し出てきますから少しの間お願いしますね♪」

「……了解です」

「では、お願いしますね〜♪」

そう言うと、六花はその場を後にした。



「……………」

六花は庭に来ていた。

ただし庭といっても表の方の庭ではなく、裏のほうの庭であり、それもまだ花など咲いてなく、雑草ばかり茂っている場所である。

そして六花は雑草の茂る中を迷わず歩いていく。

その目は何を見ているのか。それは六花自身にもわからないだろう。

それはともかく、六花は雑草の茂る場所の真ん中辺りに着くと、そこで立ち止まった。

「ふう…」

そこで一息つき、六花は目を瞑る。

(今回…)そのまま思考の海に沈み(もしも、大神君の要請を断り、二人にはその場にいてもらったら安心だった?)

浮かんだ考えを頭を振って打ち消す。

(いや……二人が一緒にいれば結果は変わらなかったと思う…。たとえそこが白皇だったとしても、SPを掻い潜って黒ローブはやってくる)

考え付いた結果に六花は歯噛みする。

(結局……私が離れなければよかったってことですか…)

「ふー…」

一息つき、目をゆっくりと開く。

そして目を完全に開いた瞬間、



周りの雑草、そこら中にいた虫、そして雑草が生えていた地面が一瞬で消えた。



「……ひとまず、黒ローブさんには覚悟を決めてもらうことにしましょうか♪」

楽しそうな声、いつもの優しそうな笑顔。

だが、わかる人にはわかる。

今の六花は、殺意を含んだ声、笑顔だがその目は殺意しか含んでいないという事を。

「さて、戻りますか♪」



天皇州家のメイドは怖い。

そんな噂が白皇のどこかで流れているようであった。

……今の光景はまさにそれを裏付けるような光景だっただろう。





       *    *    *





「なぁ、零司。見舞いの品は持っていかなくていいのか?」

「ん?いいんじゃね?別に大怪我で入院とかしてるわけじゃないし」

そういうものか?と首を傾げながらもナギは前を向いて再び歩き始める。

今、零司とナギは昨日怪我をしたというハヤテとアテネの見舞いに向かっているところであった。

昨日自分が迷惑をかけたと思い、零司がナギに休みを貰える様に頼んだのだが、

『私も行くぞ!!』

と、言ってついてこようとしたので、連れてきたのだ。

零司にとってはナギが自ら進んで外に出ようとするのは喜ばしい事なので、断る理由もなかったのだが。

(にしても……何があったのやらね…)

零司は歩きながらそう思う。

何故なら、昨日救援要請をして、その後何故か教会の入り口近くで二人ともが倒れていた。

……正直何故こうなったのか、零司の鋭すぎる勘でも全く予想が立てられなかったのだ。

故に、この見舞いは、教会の前で何があったのかを聞く。という目的もひそかに入ってたりする。

(……まぁ、見舞いがメインだけどな)

当たり前だ。

(……頼むから地の文がつっこまないでくれるか?収集つけられなくなる)

……こほん。何はともあれ、零司達は天皇州家に向かって歩いていた。



「……でけー…」

零司は目の前にある天皇州家を見上げ、そう呟いた。

「?うちと同じくらいではないか」

零司に対し、これが普通だとでもいうような態度のナギ。

「いや、正直慣れたつもりだったんだがな…」

零司もナギの屋敷を毎日のように見ていたので慣れたつもりであったが、流石に家というより屋敷といった方がしっくり来るサイズの家には流石に何度見ても慣れないようである。

(結構見てきたはずなんだがなぁ…)

若干自分に失望のようなものをしながら零司は玄関という名の門についているインターホンを押した。

ピンポーン、と外見とは裏腹に普通の音が鳴る。

「…………」  「…………」

……そしてそのまま数秒が過ぎるも、誰かが出てくるような気配も全く無かった。

「…?」

その事を不審に思いながら零司はもう一度インターホンを押す。

ピンポーン、とまた音が鳴る。

「…………」  「…………」

そして再び誰も出てくるような気配すら見せずに数秒が過ぎた。

「…………」

再三インターホンを零司は押す。

「…………」  「…………」

そしてやはり誰も出てこず、数秒が過ぎ行く。

「……♪」

「おぉい!?刀なんて出してどうする気だというかどこから出した!?」

誰も出てこないことに怒ったのか、零司はどこからか刀を出し門を斬ろうとし、それをナギが懸命に止めていた。

「止めるな、チビ嬢…!誰も出てこないなら無理矢理にでも入ったらぁ!!」

「それは不法侵入だからな!?」

「知るかぁ!!」

ナギの制止を振り切り、零司は門をぶった切ろうとする。……正直この光景だけで犯罪になりそうな気もするが。主に銃刀法違反で。

「もう一度だけ!もう一度だけ押すのだ零司!!」

「じゃあ、もう一回押して反応無かったら斬っていいんだな!?」

「いいわけないだろう!?」

何はともあれ、その条件で零司は落ち着いたようだ。

そして四度目のチャレンジ。

「……チャレンジって何だろうな…」

インターホンを勢いよく零司は押す。

ピンポーン、と最早聴きなれた音が響く。

そして、数秒間静寂が続き、零司が刀に手をかけた時、

『はいはい、どちら様―!?』

と、零司とナギのどちらも聞いたことの無い声が聞こえてきた。

「あ、えっと…」

突然の事に柄にも無く零司は狼狽してしまう。

それ程誰も出てこないと思っていたのだろう。六花さんとかからすれば迷惑な話ではあるが。

『はい?』

「あっと……綾崎ハヤテと天皇州アテネの見舞いに来たんですが…」

『あー、アテネたちのお見舞いね。オッケオッケ、門開けるから勝手に入ってきていいって痛い!?』

なんとも軽い調子で対応してくる人だなと二人が思ってると、突如殴ったような音が聞こえてくる。

『……いいわけないからさっさと行けよ』

『えー?めんどうじゃん』

(めんどい!?めんどいってなんだ!?)

自分の面倒くさがりを棚に上げて零司は心の中につっこむ。

『いいから行け』

ゴスッ。と殴った音がインターホン越しに零司達に聞こえる。

『だから痛いよ!?』

『行かないのが悪いんでしょ…』

『えー。だって来てくれるならいひゃいいひゃい!!ほっへふねらひゃいひぇ!?』

(……何このカオス)

(……私にもわからないからな?)

そしてこの寸劇のようなものは、数分後に六花さんが対応してくれるまで続いた。





       *    *    *





「ごめんなさいね、大神君と三千院さん」

「いや、別にいいんですけど…」

「うむ…」

「どうかしましたか?」

「いや、何というか…」

そこまで言って零司は床に視線を落とす。

そこには、メイド服を着た女性が床にのびていた。

因みに、今いる場所は玄関である。

(……というか、さっきの声は四人いたよな?)

なのに、今のびているのはたった一人。

「…?」

その事に零司は首を傾げる。

「あぁ、この人たちは私の知人でして、少し手伝ってもらってるんですよ♪」

「へ、へぇ…」

手伝ってもらってるという所に何故か若干の恐怖を感じ、零司は頬を若干引き攣らせる。

「ほら、起きて下さい」

六花はのびている女性をペチペチと、どこからか出した箒で叩く。

「ふぁい…?」

「ほら、早く」

六花に更に促され、女性はもぞもぞと芋虫のように起き上がった。

(……うわぁー…)

その起き上がり方に問題があったのか、女性の着ているメイド服が乱れてしまっていたので、零司は顔を背ける。

「な、な、な…」

それと違いナギは、その女性を凝視する。主に胸の部分を。

実はそれが零司が目を背けた理由でもある。

零司は別に服が乱れたくらいで視線を背ける程情緒は低くない。

だがそれは、相手が傷つかないと零司が判断した時だけである。

つまりは、今の女性はそんな状況だという事である。

「おい、チビ嬢。自分に無い部分が羨ましいからってそんなに凝視すんな」

「凝視なんてしとらんわ!!」

「嘘付け。完璧に見てたっつの。そうなりたいなら今の生活を改善しな」

「お前もはっきり見てるではないかぁ!!」

「まぁ、男だしな」

ここで反論しないのは零司らしいといえるだろう。

「ほら、早く直して」

「はいー…」

ナギと零司がそんなやりとりをしている間に女性も服を直したようであった。

ただし、まだ寝ぼけてはいそうだったが。

「それでは、行きましょうか♪」





       *    *    *





そして、零司はハヤテの部屋に来ていた。

ナギにはアテネの部屋に六花さんと女性とお見舞いに行かせ、零司一人でハヤテの部屋に来たという事である。

「お邪魔しまーすっと…」

何故か恐る恐るドアを開けて零司は部屋へ入る。

(いやー……こういうの初めてなんだよな…)

実は同性の友達の部屋に入るのは初めてだったりする零司であった。

「おーい、ハヤテ大丈夫か」軽い調子でハヤテに話しかけながら零司はハヤテに近づき「って、おいおい…」そしてハヤテを見た瞬間に眉をひそめた。

「いくらなんでもこうは予想できなかったぜ…」

そう言い、零司は空を仰ぐ。といっても見えるのは天井だが。

「まさか、身体的な怪我じゃなくて精神的な怪我だったとはなー…」

予想外すぎるっての。と心の中で呟き、もう一度ハヤテを見る。

ベッドに腰掛け、無感情な瞳で窓の外の光景を見ている。だが、その瞳には何かが映っているようには思えない。

(……こりゃ結構重症だな)

過去の経験から零司は今のハヤテの状況を簡単に結論付ける。

「んーと…」

そして、どうすればいいのかわからず、零司は考え始めた。

「まずは……殴ってみるか」

何故か、暴力的な考えが浮かんだので、実行に移そうと拳を振り上げた―――

「というか、やったら怒りますからね?」

「すいません!!」

瞬間、背後から六花の声が聞こえたので、神速で気をつけの体勢に零司はなった。

「全く…。あなたはショック療法でも試す気だったんですか♪」

「い、イェス…」

「……死にます?」

「ゴメンナサイ!!」

六花から放たれている並ならぬ殺気に零司は土下座をする。……はたから見るとかなり情けないことだろう。

「まぁ、それで戻るなら世話無いんですけどね…」

そう言う六花の顔は零司にはどこか悲しげに見えた。

「……それで?何があったんですか一体」

重い雰囲気を消し飛ばすべく、零司はわざと大声で六花に話しかける。

「そういえば、大神君には説明してませんでしたね…」

「はい。ってなわけで、説明してくださいよ。教会の前で何があったのかを」



「……なんだそりゃ」

六花から事のあらましをすべて聞いた後、思わず零司はそう呟いた。

(初めて見たときには確かにハヤテには勝てないって思ったけどさ……ハヤテがボロボロになるほどそこまで強さは離れて無かったと思ったんだがな…?)

それは幾多の命を懸けた戦闘を勝ち抜いてきた零司の経験から算出されたことであった。

だが、零司の相手の強さを大体読み取ることに関しては自分自身も信頼していたし、あまり露骨に外れることは今までなかった。

故に、今回のハヤテと黒ローブの戦闘は零司にとってはおかしいことだらけであった。

(俺の勘が単に鈍っただけか…?……いや、鈍ってはないはずだ。だとしたら…?)

零司でも計り知れないことがあった。という事になるのだろう。

(だとしたら……俺と同類の奴か?それなら結構辻褄は合うんだがな…)

「まぁ、情報が少ないんでわかんないんだけどさ…」

「何の情報か知りませんが、今はハヤテ君の方に頭を働かしてくださいね?」

了解。と生返事を返しながらも、零司はその事を考え始める。

(んー…。心が壊れた奴の対処法は…)

昔の記憶を頭の中から零司は引っ張り出してみる。

(……碌な直し方ないな、オイ)

どれも酷い方法だったようで、がっくりと肩を落とす。

(まぁ……ハヤテの折れた原因によっては直るだろうけどさぁ……場合によっては直らなくなるんですけど…)

……どんな方法があったのか。それは零司のみが知る。

(まぁ、提案するだけしてみるか)

「はい、六花さん」

「なんです、大神君」

「……お勧めできない方法ならありますよ?」

「……聴くだけ聴きましょう」



「―――という方法ですけど…」

「…………はぁ…」

零司のお勧めできないという方法を聞いた六花はその方法に頭が痛くなった。

「いくらなんでもそれは…」

「ですよねー…」

最初から賛同をもらえると思っていなかったのか、零司も諦めたような様子であった。だが、

「……アテネ様に相談してみて、了解をもらえたらそれを実行しましょうか」

六花は意外な事を言ってきた。

「……あの、俺が言うのもなんなんですが……正気ですか?」

「正気ですよ…。でも、短期間で立ち直らせるにはそれしかないでしょう?」

「いや確かにそうですけど…」

零司が話した方法。それは話した零司自身がもっとも躊躇する方法であり、一番お勧めが出来ない方法であった。

しかし、その代わり期間は一時間程度で済むという方法でもある。

(つってもよぉ……これって、苦労するのは俺だよな…?)

……結局はめんどくさがっているだけであったが。

「……まぁ、俺としてはどっちでもいいんですけどね」

「なら、後々連絡をしますので……今日は悪いですけど、帰ってもらえますか?」

「りょーかいです…」

こうして零司の提案は相談をする、という形で仮採用された。

だが、零司はこれが確実に採用されるという予感がしていた。

(……口上手そうだもんなぁ、六花さん…)





       *    *    *





そして、翌日の白皇にて。

授業と授業の間の休み時間。それは次の授業の準備をする為の時間でもあり、友達と喋ることもある時間。その中で―――

「はぁ…」

零司は自分の机に突っ伏していた。

その手には開いた携帯が握られており、その画面はメールの画面が映っていた。

「……信じてたのによぉ…」

心底残念だとでもいうように零司は誰に聞こえるようにでもなく呟く。

「あー……覚悟決めるか…」

そう呻くように呟きつつ、のそのそと顔を上げ、人形の様に座っているハヤテを見る。

「……はぁ…」

昨日見たときと全く変わっていない事に溜息が零司の口から漏れる。

(……つっても、昨日よりは回復はしてるんだがな)

昨日、お見舞いに行ったときには何をやっても反応すら返すことはなかったが、今日学校に来たことが作用したのか、話しかけられれば一言二言を返すようにはなっていた。

とはいえ、それ以外は席に座ったまま中空を見つめ続けているのだが。

(このまま年単位でだったら自然に回復するんだろうが……それじゃぁ、遅いだろうな。色々と)

故に、零司の案を六花は呑んだのだろう。

(切羽詰ってるのはわかってるけどさ……天皇州が了承したのも気になる…)

正直なところ、零司はこの案をハヤテの主であるアテネが了承するとは思っていなかった部分があった。

何故なら、この案には多大な危険が伴うからだ。

(まぁ、六花さんが言いくるめたって可能性もあるけどさ…)

だとしても、零司としてはハヤテが危険にさらされる方法には賛成しかねるのだ。

それがたとえ自分自身が提案した案だとしても。

とはいえ、この案が一番早いのも事実であり、早くハヤテに立ち直って欲しい零司としてはこの案を押したい気持ちもある。

結局は、零司の気持ちはこの案をしたくない気持ちとこの案で早く立ち直って欲しい気持ちとで、どちらともいえない中途半端な気持ちになっているのだった。

(……あー……気持ちわりー…)

そして、零司はそんな自分自身を嫌っている。

もしこれが赤の他人だったのなら、別に気にもせずこの案を採用しただろう。

だが、知人や友達の場合はそうはいかない。危険にあわせたくないという気持ちが出てしまうのだ。

それ故に、中途半端な気持ちになってしまう。

(……だけど、今回だけはそうも言ってられない、か…)

しかし、今回だけは零司はその気持ちを無理矢理押しとどめる。

(……ま、ハヤテだしなんとかなるだろ)

無理矢理そう自分を納得させ、零司は席を立った。

「む?零司、どこへ行く気だ?もう授業が始まるぞ?」

「知ってる。ちっとサボるわ」

「何!?」

「じゃあなー」

「ちょっと待て、零司!?零司―――!!」

ナギの叫びを背に受けながら、零司は教室を後にした。





       *    *    *





そして時は流れ、昼休み。

ハヤテは相変わらず、人形のように席に座ったまま中空を見つめ続けていた。

その光景は異様であり、同じクラスの人たちは声をかけようにもかけられなかった。

『あ、あー…。マイクテストー』

そんな時、スピーカーからこのクラスにとっては最早聞きなれた声が聞こえてきた。

『これ入ってるか?入ってたら誰か返事してくれー。って、こっちに聞こえるわけ無いか…』

「零司…?」

その声に主のナギが名前を呟くように呼ぶ。

『まぁ、いいや。えっと、綾崎ハヤテは至急剣道場までに来ることー。ただし、一人でだ。繰り返す、綾崎ハヤテは至急剣道場までに来い。ただし一人でだ。誰かがついてきてたとわかった瞬間、そいつはどうなるか知らん』

『どういうことだよ!!』

放送される零司の声にクラスほぼ全員が声を揃えてツッコム。

『まぁ、具体的には六花さんが関係してるとまでしか言えないな』

『………………』

続いて聞こえてきた言葉に、クラスの全員が黙る。

余程六花が怖いのだろう。

『んじゃ、以上。とっとと来いよー。あ、因みに設置させられてたカメラの類は全部壊しといたからな』

「「何ぃーーーーー!!??」」

美希と理紗の絶叫じみた声が響く中、ハヤテは初めて自分の足で立ち、剣道場に向かって歩き始めた。



「…………」

剣道場についたハヤテは、無言で剣道場の扉を開いた。

「……?」

だが、剣道場には誰もおらず、ガランとしていた。

その事にハヤテが首を傾げていると、

「お?やっと来たか」

「…………零司さん」

背後から零司か現れた。

「やっぱり、話すことぐらいは出来たんだな…」

「……いつから気づいてたんですか」

「最初からだっての」

「……そうですか」

もう慣れたのか、ハヤテの反応は淡白であった。

その反応を見て、零司は決意を新たにする。

「……おい、ハヤテ」

「……何ですか?」

「……構えろ」

言いながら、零司は木刀を投げてきた。

それをハヤテは反射的に受け取ってしまう。

「……何でですか」

ハヤテが質問を投げかけるが、零司は答えてはくれなかった。ただ、自然体のまま立っていた。

「……構えろ」

二回目の同じ言葉。

だが、その言葉の真意がわからないハヤテは、その場に突っ立ってるだけであった。

「……構えないってんなら…」

その言葉と共にハヤテの目の前から零司は消えた。

それを認識するよりも早く―――ハヤテは吹き飛んでいた。

「―――!?」

二、三度跳ねて、ハヤテは壁に勢いよく叩きつけられた。

「かはっ…」

肺の空気が一瞬で吐き出され、ハヤテは勢いよく咳き込んだ。

「ごほっ…!……何……してるんですか…」

「ただ殴っただけだが?」

「何で……ですか…」

「……分かってない訳?」

「……分かるわけ……無いですよ…」

その答えに、零司は深い溜息をつく。

「分かってないならそれでいいよ」手にした木刀を手首を使って一回転させ「分かってないまま……死ね」



――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――



はい、十九話終わり!

零司「急展開過ぎんだろ!?」

……いや、君の案だからね?

六花「正直あまりしたくない方法でしたけどね〜…」

……やるしかないんだよね。

では、次の話で!

零司「んじゃな」
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Re: 誰がため、何のため 7/20更新 ( No.40 )
日時: 2012/07/20 19:54
名前: 匿名

どうも〜♪匿名っす♪
「他作品で実力を上げてきている輝雪です♪」
「大空ルナです♪」
感想に来ました♪
「今回はお兄ちゃんいないのね」
気分を変えて♪あとルナを連れて来たかったてのもあるし、和也がいると使いもんにならん。
「ひゃぁぁ//////」
「というか、あなたこそ大丈夫なの?
何が?
「六花さん」
・・・・・・・・・・・・・ダイジョウブダヨ?(ガタガタガタガタガタガタ)
「・・・ダメっぽいですね」
「・・・そうね」
ダイジョウブダヨ?リッカサンハトッテモヤサ、ヤサ、ヤサヤサヤサヤサイヤダイヤダイヤダギャーーーーーーーーーーーーーーー!!!
「「壊れた!?」」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
「・・・感想、行きましょうか」
「・・・はい」
「ハヤテくんは精神に大ダメージか。自分の命と同じぐらい大切な人を守れなかったからね」
「それだけじゃありません。どんなに不幸でも自分の周りには沢山の人がいて、幸せな日常を暮らして、自分がどれだけ幸福なのか、そして相手の不幸を垣間見てしまったから、優しいハヤテさんは傷ついてしまったんです」
「零司くんはお見舞いに来たわね。・・・痺れを切らして突入しかけたけど」
「結局どの位待ったのでしょうか?」
「さあ?でも六花さんのお知り合いはとても個性的なようで」(←苦笑)
「・・・・・・・・・・」(←自分とあのメイドさんを見比べて絶望の表情)
「えーと(どうしましょうか、この状況)」
「れ、零司さんは一体どんな方法を提案したのでしょうか?」(←声が震え、目には雫が溜まる)
「そうねー。最後の部分を見るとずいぶん荒っぽい方法としか分からないわね」(←込み上げる衝動を抑える)
「ハヤテさんには、戻って欲しいです」
「零司くんの方法が上手くいく事を願うしかないわね」
「では次回も楽しみにして・・・」
「どうしたの?」
「楽しみにするのは不謹慎かと思い。えーと」
「次回はどうなるか気になります。て感じでいいのよ」
「あ、はい!気になります!」
「それでは♪」
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Re: 誰がため、何のため 7/20更新 ( No.41 )
日時: 2012/07/22 22:07
名前: コサッキー

<レス返し>

▼ 匿名さん

>どうも〜♪匿名っす♪

>「他作品で実力を上げてきている輝雪です♪」

>「大空ルナです♪」

どうもですー♪

零司「というか、輝雪は自分の作品で実力上げろっつの…」

呆れるポイントそこ?

六花「ルナさんはこちらでは初めましてですね〜♪」

>感想に来ました♪

>「今回はお兄ちゃんいないのね」

>気分を変えて♪あとルナを連れて来たかったてのもあるし、和也がいると使いもんにならん。

前回は輝雪がいなかったと思うけど…。

零司「まぁ、新鮮だよな」

だよねー。それでルナは…。

>「ひゃぁぁ//////」

六花「好きすぎて意識しすぎてますね♪」

零司「そうっすねー…」

……零司にもそういう子は出てもらうからね?

零司「それって、あいつだよなぁ…」←(まぁ、まだ後のほうなんですけどねー)

>「というか、あなたこそ大丈夫なの?

>何が?

>「六花さん」

……あっちの感想で凄いことしちゃったんだよね☆

ハヤテ「何をあっけらかんと言ってるんですか!!」

零司「つか、なんでハヤテが普通にレス返ししてんだよ!?」←(作者権限でね!)

まぁまぁ。んで、六花さんに関しては…。

六花「うふふ…」

……訊かないほうがいいね♪

アテネ「ですわね…」←(六花さんの実力を知ってるんで♪)

>・・・・・・・・・・・・・ダイジョウブダヨ?(ガタガタガタガタガタガタ)

>「・・・ダメっぽいですね」

>「・・・そうね」

ダメだね…。

ハヤテ「ダメですね…」

アテネ「ダメですわね…」

零司「ありゃダメだ…」

六花「あらあら♪一体匿名さんはどうしたんでしょうね♪」

>ダイジョウブダヨ?リッカサンハトッテモヤサ、ヤサ、ヤサヤサヤサヤサイヤダイヤダイヤダギャーーーーーーーーーーーーーーー!!!

>「「壊れた!?」」

殆どのキャラ『壊れたぁ!?』

六花「あらあら★」

星黒いよ、六花さん!?

>・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

>「・・・感想、行きましょうか」

>「・・・はい」

……匿名さんの犠牲は無駄にしない…!

零司「いや、それは一体何の役に立つんだ?」

ハヤテ「あはは…。ともかく、感想ありがとうございます♪」

>「ハヤテくんは精神に大ダメージか。自分の命と同じぐらい大切な人を守れなかったからね」

>「それだけじゃありません。どんなに不幸でも自分の周りには沢山の人がいて、幸せな日常を暮らして、自分がどれだけ幸福なのか、そして相手の不幸を垣間見てしまったから、優しいハヤテさんは傷ついてしまったんです」

…………考えていたことを全て言われただと…!?

零司「おい!?」

……まぁ、若干言われてないけどさ。

零司「は?」

後もう一つあってね?自分の実力に絶望したんだよねー…。

六花「……まぁ、それだから大神君の案を呑んだんですけどね…」

零司「つっても、一朝一夕につくもんでもなんだけどな、実力ってのは…」

……ま、ね。

>「零司くんはお見舞いに来たわね。・・・痺れを切らして突入しかけたけど」

>「結局どの位待ったのでしょうか?」

ナギ「大体七分くらいだったか…?」

零司「結構長いんだけどな、それ」

ナギ「というか、お前はあの刀をどこから出したのだ!?」

零司「はっはっは。秘密に決まってんだろ」

>「さあ?でも六花さんのお知り合いはとても個性的なようで」(←苦笑)

女性1「あはははは☆どもどもー♪」

男性1「落ち着けって」

男性2「……無理じゃね?」

女性2「そうよね…」

六花「……本当に濃いですね…」

……まぁねー…。

>「・・・・・・・・・・」(←自分とあのメイドさんを見比べて絶望の表情)

女性1「ん?どしたどしたー?」←(ぷるん。という擬音が似合う胸。サイズはアテネくらい?)

ナギ「……わ、私だって…!」

零司「……まぁ、頑張れ」

>「えーと(どうしましょうか、この状況)」

女性1「さぁね。胸でも揉んだら?」

男性1「セクハラまがいの解決法を提案すな」←(再び拳骨)

女性1「いったぁあああああああああああ!!?」

>「れ、零司さんは一体どんな方法を提案したのでしょうか?」(←声が震え、目には雫が溜まる)

>「そうねー。最後の部分を見るとずいぶん荒っぽい方法としか分からないわね」(←込み上げる衝動を抑える)

女性1「言っとくけど、胸なんて邪魔なだけよ?」

いや、そこじゃないと思うんだけど!?

男性2「……諦めろって」

えー…。

零司「いや、今は感想返せよ。まぁ、それで……俺の方法に関しては…」

六花「とてつもなく危険としか…」

……下手したら死ぬしね。

ハヤテ「死!?」

>「ハヤテさんには、戻って欲しいです」

>「零司くんの方法が上手くいく事を願うしかないわね」

零司「俺もそれを切に願ってるよ…」

……まぁねぇ…。

六花「……上手くいくんでしょうかね…」

……それはハヤテ次第さ…。

>「では次回も楽しみにして・・・」

>「どうしたの?」

>「楽しみにするのは不謹慎かと思い。えーと」

……確かに今回は楽しみにしてはもらいたくないね…。

零司「まぁな…」

>「次回はどうなるか気になります。て感じでいいのよ」

>「あ、はい!気になります!」

>「それでは♪」

うん、その言い方はちょうどいいですね♪

零司「そだな。んで、今回はなぁ…」

まぁ、一言で言うなら途中は無双だよね。

アテネ「無双…?」

六花「匿名さん感想ありがとうございました♪」



というわけで、二十話目!

零司「何がというわけなのやら…」

うん、ツッコムのやめてね?

まあ、それは置いといて…。

今回でハヤテは立ち直るか、それとも……折れるか!?

ハヤテ「不吉な事いわないで下さい!」

零司「つか、ハヤテの今の状況説明しろよ!!」

やだよ。

零司「はぁ!?」←(単に話中の設定無視しただけですけどね)

ではどうぞ!!



――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――



「なんで……殺されなきゃいけないんですか…」

ハヤテの言葉には零司は無視し、倒れてるハヤテへゆっくりと歩いてくる。

「なんで……何も話してくれないんですか…」

その言葉にすら零司は無視を決め込む。

その事にハヤテは少し、ショックを受けた。

ハヤテとしては、零司の事はかなり信頼していた。

そんな零司が何の理由も話さずに自分を殺そうとする事は、ハヤテの心にチクリとした痛みを伝えた。

そんな事を考えていると、ハヤテに零司の影が濃く差した。

「……こうなる理由すらわかってないな?」

「わかる……わけないですよ…」

零司からかけてきた言葉にはハヤテは一切見当なんてつかない。

零司が自分をいきなり殺そうとする理由なんて。

「そっか…」

その言葉に零司は心底残念だというようなトーンで呟いた。

「なら…」再び拳を振り上げ「死んどけ」と言った。





       第二十話「無から零?無から一?それは風が選ぶ事」





ゴッシャァ!という破砕音が剣道場の中全体に響く。

その音と共に剣道場を構築していた木片が木屑となり、あたりに飛び散る。

「っち…」

そんな中、零司は一つ舌打ちをした。

「外したか…」

今の一撃は、零司がハヤテのいた場所に零司の拳が当たり、剣道場が破壊された音である。

つまり―――

「はぁっ、はぁっ!」

ハヤテは今の攻撃を避けたという事である。

(今の攻撃……本気で殺す気だった…!)

「おいおい、逃げるなよ…」

慌てたような心境のハヤテに、落ち着き払った零司が声をかけるが、ハヤテはそんな声に答える事が出来ないほどに慌てていた。

(どうして?何で?何で殺される?そんな事をしたか?)

そんな事を考えても、ハヤテには心当たりなんてあるはずも無く、どんどん答えのない思考の迷路に迷い込んでいく。

「…………」

そんなハヤテを、零司は顔には出さないが、喜んではいた。

(そうだ……もっと考えろ…!)

そして、それは一段階目を達成したということと同義である。

「……どうした、ハヤテ」

そして第二段階目を達成させる為に零司は言葉を投げかける。

「やられっぱなしか?それなら、あの黒ローブに負けて当然だよなぁ」

「……っ」

「ただやられてるだけで、反撃も何もしないような奴なら負けるに決まってるよなぁ!!」

心の底から馬鹿にしたような声でハヤテに向かって零司は暴言を吐く。

それにハヤテは握っている木刀を握る力を強くする。

「何々?何も言い返せないわけ?はっ、そんな奴が執事やってるなんて同じ執事として恥ずかしいなぁ、おい」

「………れ」

「こんな奴が執事なんて天皇州の奴も馬鹿だな!こんな一回負けただけで心を閉ざすような奴を執事にしてるから自分も傷つくのによぉ!!」

「…………黙れ」

「たった一回の失敗でこんな風になる奴より、別の方がふさわしいんじゃねぇか!?」

「黙れぇえええええええええええ!!!!!」

零司の口から立て続けに放たれる暴言に、とうとうハヤテは我慢できなくなり、零司に向かって獣のように疾駆した。

「……はっ」

そんな様子になったハヤテを零司は笑う。

「反撃しようとしてそれが確実に通るとは限らないよなぁ!!」

「はぁああああああああ!!!」

ハヤテの振りかぶった木刀を紙一重でかわし、がら空きになった腹へと零司は拳を叩き込む。

「ごぼっ…!?」

その攻撃にハヤテは再び壁へと叩きつけられる。

「くははははは!!ざまぁねぇなぁ、ハヤテ!!」

そんなハヤテの醜態を目にし、零司は大笑いする。

「そんなんだから、お前は天皇州すらも守れないんだよ!!」

「―――っ!!」

腹を押さえ、苦しそうにしていたハヤテの動きがその言葉で止まる。

「…………」

そして、フラフラと力なく立ち上がる。

その目はさっきまでのように虚ろな瞳ではなく、力が入ったいつものハヤテの目であった。

しかし、その目には零司への怒りがこもっていたが。

その目を見て、零司は第二段階が成功した事に心の中で安堵の息をつく。

それと、これからする事に対しての覚悟を再び決める。

「さぁ…、やろうか…!」

零司は楽しそうな声音で言うと、ハヤテは無言で構える。

それを確認すると、零司は木刀を両手で握り、両手を右目のあたりにまで上げ、剣先を左先に向けるように構える。

それは、マラソン自由形での構えと同じ構え。

それ即ち―――

「我流剣術、速式剣舞『嵐』」

その言葉を紡ぐと同時に零司はハヤテの視界から消える。

それ自体は慣れたもので、もうハヤテも驚くことはなく、零司を探そうとする。

―――が、それは叶わなかった。

「くっ…!?」

何故なら、零司が消えた瞬間に右腕に鈍い痛みが走った。

そしてそれをハヤテが脳で理解した瞬間―――

「がっ!?」

今度は左足に鈍い痛みが走る。

そしてそれを認識すると、今度は腹に痛みが走る。

「ごっ…!?」

さらにその痛みを認識するよりも早く、頭を殴られたように頭が下がった。

続き、顎を打ち抜かれ頭が上がる。

「く……は……っ」

そのまま、ハヤテは無様にその場に倒れこむ。

「はっ、なっさけねぇなぁ、ハヤテよぉ」

「な……ん…」

「おいおい、喋れもしねぇのかぁ?」

まともに喋れないハヤテの腹を零司は蹴る。

「ごほっ…!」

腹への痛みに思わずハヤテは咳き込むが、連続して蹴られているため、それすらも叶わない。

「ほらよぉ!」

「がぁっ!?」

止めとでもいうような零司の渾身の蹴りが腹へと突き刺さり、苦悶の声をハヤテは上げる。

それが楽しいとでもいう様に零司は笑みを浮かべる。

「ほらほら、立てっつの!」

倒れているハヤテの襟を掴み、無理矢理零司はハヤテを立たせる。

「…くっ……そ…」

「ほら、距離を取んなきゃなぁ!!」

うめくハヤテを無視し、零司はハヤテを壁に向かって投げつける。

勿論それにハヤテが反応できる訳も無く、そのまま壁に叩きつけられ、壁を背に座り込むような体勢になる。

「……なっさけねー…」

そんなハヤテを零司は心底蔑んだ目で見つめる。

その視線を感じながらも、ハヤテはそれを睨み返すような体力ももうないのか、力なく俯いていた。

「っち…」

そんなハヤテに零司は舌打ちを一つし、再び歩いて近づいていく。

(……敵うはずが……無い…)

近づく足音を聞きながら、ハヤテはそんな事を思う。

だが実際、ハヤテと零司の力の差は離れすぎている。

黒ローブとハヤテの力の差などがちっぽけに思えるほど。

(だから……もう、終わりなんだ…)

そう結論付け、ハヤテは目を瞑る。

死を待つ罪人のように。

そして、零司の足音が不意に止まる。

「……抵抗をしようと思う気力もない、か…」

呆れたような声。

その声はハヤテに聞こえても、諦めたハヤテにはもう意味の無い言葉。

「……ハヤテ」何かを振り上げ、空気を切り裂く音がハヤテの耳に届き「これで、サヨナラだ」

その言葉と共にハヤテは意識を手放した。





       *    *    *





突如聞こえてきた爆音のような音に、剣道場から少し離れたところにいた天皇州アテネは体を震わせた。

「な、なんですの!?」

その言葉と共に視線を剣道場のほうへ向けると、ちょうど剣道場の一角が崩れていた場面であった。

「…………」

その光景をアテネは呆然と見ていたが、そのそばに控えている六花はその光景を冷ややかに見ていた。

それが起こることを知っていたかのように―――

「ハヤテ…。ハヤテ…!」

そして、アテネが剣道場に走り出そうとする。

が、その手を六花が掴み、アテネの動きを阻害する。

「……離して、六花」

「……ダメです」

「……いいから離して」

「ダメです」

「……離しなさい!!」

「……ダメです、離しません」

いくらアテネが頼んでも、強い口調で命令しても、六花はその手を離そうとしない。

「……どうして…」

「……アテネ様が行ってどうなるというのです」

アテネに六花は冷たい言葉だけをかける。

「……あなたは…。あなたは……ハヤテが死んでもいいというの!?」

アテネは錯乱したように六花に叫ぶ。

「……ええ」

そして、それに返ってくる答えは簡潔で、酷く冷酷な言葉のみ。

さらに続けて六花はアテネに向かって言葉を発する。

「……あれくらいの挫折で折れる人なら、アテネ様を守れないでしょう。だから、死んでもらっても構いません」

「――――――」

その六花の言葉に、アテネは言葉を失った。

六花の言葉は、ハヤテがアテネの前からいなくなることを暗に示しているのだ。それは、アテネの心を深く抉った。

「……なんで…」

それでもアテネは言葉を紡ぐ。今行けばハヤテが助かるかもしれないから。

でも、

「決まってるでしょう。そんな中途半端、生きてて欲しくないですから」

それを六花はさせようとはせず、さらにアテネの心を抉った。

「……っ!」

そして、ハヤテに死んで欲しいと言った六花をアテネが叩こうと振り返るが―――

パァン!!

「っ!!」

「ふざけないで下さい」

六花にアテネの平手ではなく、六花の平手がアテネの頬に当たった。

その衝撃にアテネは地面に倒れこむように座り込んでしまう。

「あなたはたった一人の男のために何をしようとしてるんですか?あんなあなたを守れなかった男のために」

さらに六花は言葉を浴びせる。その表情はいつものような笑顔ではなく、冷たさしか感じない無表情だった。

「あんな男より強い男なんてこの世には沢山いますよ」

「……それでも、私には…!」

「ハヤテ君しかいない。ですか?あなた、甘ったれてんですか?」

甘ったれてなんかいない。そう言おうとしたが、何故かアテネの喉からその言葉は出てくれない。

その間にも六花の言葉は続く。

「いいえ、甘ったれてますね。好きな男と運命的な再会をして甘ったれてますね。そんな事で天皇州家の当主が務まるとでも?勤まる訳ありませんよね?それでもハヤテ君が心配なら、天皇州家なんて捨ててハヤテ君とどっか消えて下さい」

立て続けに言われる言葉に、アテネは反論すら出来ない。

そして、六花の辛辣な言葉は続く。

「それが嫌なら、どちらかを選んでください。ハヤテ君を捨てるか、それとも天皇州家を捨てるか」

そんな事、アテネには選べるはずが無い。

「……選びなさい、天皇州アテネ!!」

突然の怒声にアテネは肩を震わせるが、答えられず、震えているだけだった。

「…………」

六花はそんなアテネを冷ややかに見下ろすだけだった。



今の六花は、天皇州家のメイドではなく、志姫六花という一人の人として話している。

だから、アテネに対してもこんな言葉がしゃべれるのである。

そして、今言った言葉は全て六花の本心である。

つまり、ハヤテを心配する反面、ハヤテにイラついていたのだ。……いや、今回はイラつきの方が大きかった。

だが、六花はそのイラつきを押さえ込んでいた。

しかし零司の案を呑み、今の状況になりアテネが走り出そうとした瞬間にそのイラつきは押さえることが不可能になってしまったのだ。

そして、人間という生き物は一度押さえつけていたものが溢れると押さえがきかなくなってしまう。

故に、今の状況になってしまったという事だ。

そしてもう一人―――





       *    *    *





今のハヤテにイラつきを感じている人物はいた。

その人物―――大神零司は、煙が立ち込める中、立っていた。

視線は先程踵落としを落とした場所に固定されている。

瞳の中に映る感情は何もなく、ただそこを見ているだけだった。

そして、やがて煙が晴れていき―――零司に木刀で殴られた後以外は、無傷のハヤテがその中から出てきた。

それはつまり、零司が踵落としを外したという事である。

零司は無言で気絶しているハヤテを掴み、

「……いい加減に目ぇ覚ませやぁああああああああああああ!!!!!」

思い切り、頬を殴った。

抵抗できるはずも無いハヤテはその力を受け、痛みと共に目を覚ました。

零司はそれを確認することなく、ハヤテを殴り続ける。

「てめぇは!自分が!恵まれすぎ!って!思ったなぁ!!」

一撃一撃に自分の思いを籠めて。

「それが!どうした!お前は!その幸福を!手放そうと!するのか!!」

殴られながら、ハヤテはやっと気づく。

零司は本当に自分を殺そうなんてしてないという事に。

「その幸福を!手に入れる!事が!出来ない奴!だって!いるのに!」

そして、これは自分を立ち直らせようとする事に。

それに気づいたハヤテは、痛みも忘れ零司の言葉に意識を傾けていく。

「お前は!それを!自ら!手放そうとする!」

そう、結局零司や六花はそれが許せなかったのだ。

自分が享受している幸せを、自ら手放そうとするハヤテが。

「お前は!まだ!失って!なんか!いないだろうが!!」

零司も六花も、どちらも大切なものを失っている。

それだから、ハヤテが羨ましく、同時に妬ましかった。

「だから!お前は!まだ!折れるには!早いんだよぉおおおおお!!!」

叫びと共に、渾身の力でハヤテを殴りつける。

「がはっ!」

その一撃に、ハヤテは口の中に血が広がるのが感じる。

だが、今のハヤテにはそんな事は些細だった。

「はぁ……はぁ…」

息を荒げながら、零司はハヤテの襟から手を離す。それにより、ハヤテは床に座り込む。

「起きてんだろ……ハヤテ…」

「……はい」

返事をしながらハヤテは零司の前に立つように立ち上がる。

「あの……零司さん…」

「……礼とかなら別にいい」

言いながら零司はハヤテに背を向ける。

「……俺の本心は言ったとおりだ。だからお前は…」

失うなよ。そう言って零司は剣道場を出て行った。

「……はい」

零司の消え行く後姿に返事をし、

「もう……失わない…」

ハヤテは決意をする。今度こそは守り通すことを。

たとえ、どんな人が自分の目の前に立とうとも。





       *    *    *





零司が剣道場を去ってから、数分後。

零司は白皇の森の奥深くにいた。

「うぇ…!」

そして今、零司は腹の底からこみ上げてくるものを必死に堪えていた。

「うっ!」

それでも、堪えきれずに腹の中のものを戻してしまう。

「うぇっ、おぇ…」

口から伸びる糸を切り、零司は近くにある木に力なく座った。

(全身が……だりぃ…)

腹のものを戻した理由は分かっている。

それは拭い去ることなんて出来るない記憶。

紅い記憶。

         紅い                刀               母さん?
 アレは何?          アレは誰?          出てるのは何?       
              気持ち悪い             嫌だ     
憎い          誰がやったの?                              落ちてるのはなに?
         怖い                    楽しい        苦しい もっと


「うっ!」

その記憶を思い出してしまった瞬間、再び胃の中のものをそこらにぶちまける。

「はぁっ!はぁっ!」

全身が紅く見える。手が腕が顔が体が足が。

笑ってる。口が膝が肘が頭が脳が神経が骨が。

気持ち悪い。全部が全部が全部が全部が全部が全部が。

消えろ。消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ。

死ね。死ね死ね死ね死ね死ね?――!

「あぁぁぁ…!」

呻きながら地面に顔をこすり付ける。

紅いものを落とす為に。でも。落ちない。

「あぁああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!」

その事に絶望し、歓喜し、失望する。

自分がわからない。わからないわからないわからないワカラナイワカラナイワカラナイ―――!!

「黙れ!黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れーーー!!」

叫び続ける。でも、拭い去れない。

憎い。妬ましい。苦しい。楽しい。哀しい。感情がグチャグチャニナッテイク。

「嫌だ、嫌だ嫌だイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダーーー!!」

誰にも理解されない。理解して欲しい。理解して欲しくない。

感情がせめぎあう。感情がオカシクナル。

自分がワカラナイ。誰?ダレダレダレダレダレダレダレダレダレダレダレダレダレダレダレダレダレ

「あはっ、あはははははははははは!」

オカシクナッタ。アノヒカラ。ゼンブガ。

ナニモカモガドウデモイイ。ソウオモウホドニ。

コワレタモノハ、モドラナイ―――。



――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


よし、第二十話終わり!

ハヤテ「いや、最後のなんですかねぇ!?」

……企業秘密に決まってるだろうがバカもんがぁ!!

ハヤテ「えぇ!?」

いや、マジで教えられないからね?

零司「…………………………はぁ…」

…………さ、この話題は終わりにして…。

ハヤテ復活!

六花「よかったですね〜♪」

うん、一番切り替え速いよね!六花さんは!!

アテネ「ですわね…」

というわけで、ハヤテはこれから大変になるでしょう!

ハヤテ「決定事項!?」

少なくても黒ローブとは戦ってもらうからね?

ハヤテ「それは……別に構いませんけど…」

よし、言質はとった。

ハヤテ「しまった!?」

まぁ、それは置いといて。

えー。この小説、私が合宿とか旅行とかで、七月中には更新できないでしょう。ご了承ください。

……とはいえ、読んでるかどうかすら怪しいけどね!

ハヤテ「ネガティブな発言!?」

まぁね!では、今度はいつになるかわかりませんが…。

六花「さよなら〜♪」
[管理人へ通報]←短すぎる投稿、18禁な投稿、作者や読者を不快にする投稿を見つけたら通報してください
Re: 誰がため、何のため 7/20更新 ( No.42 )
日時: 2012/07/22 22:08
名前: コサッキー

<レス返し>

▼ 匿名さん

>どうも〜♪匿名っす♪

>「他作品で実力を上げてきている輝雪です♪」

>「大空ルナです♪」

どうもですー♪

零司「というか、輝雪は自分の作品で実力上げろっつの…」

呆れるポイントそこ?

六花「ルナさんはこちらでは初めましてですね〜♪」

>感想に来ました♪

>「今回はお兄ちゃんいないのね」

>気分を変えて♪あとルナを連れて来たかったてのもあるし、和也がいると使いもんにならん。

前回は輝雪がいなかったと思うけど…。

零司「まぁ、新鮮だよな」

だよねー。それでルナは…。

>「ひゃぁぁ//////」

六花「好きすぎて意識しすぎてますね♪」

零司「そうっすねー…」

……零司にもそういう子は出てもらうからね?

零司「それって、あいつだよなぁ…」←(まぁ、まだ後のほうなんですけどねー)

>「というか、あなたこそ大丈夫なの?

>何が?

>「六花さん」

……あっちの感想で凄いことしちゃったんだよね☆

ハヤテ「何をあっけらかんと言ってるんですか!!」

零司「つか、なんでハヤテが普通にレス返ししてんだよ!?」←(作者権限でね!)

まぁまぁ。んで、六花さんに関しては…。

六花「うふふ…」

……訊かないほうがいいね♪

アテネ「ですわね…」←(六花さんの実力を知ってるんで♪)

>・・・・・・・・・・・・・ダイジョウブダヨ?(ガタガタガタガタガタガタ)

>「・・・ダメっぽいですね」

>「・・・そうね」

ダメだね…。

ハヤテ「ダメですね…」

アテネ「ダメですわね…」

零司「ありゃダメだ…」

六花「あらあら♪一体匿名さんはどうしたんでしょうね♪」

>ダイジョウブダヨ?リッカサンハトッテモヤサ、ヤサ、ヤサヤサヤサヤサイヤダイヤダイヤダギャーーーーーーーーーーーーーーー!!!

>「「壊れた!?」」

殆どのキャラ『壊れたぁ!?』

六花「あらあら★」

星黒いよ、六花さん!?

>・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

>「・・・感想、行きましょうか」

>「・・・はい」

……匿名さんの犠牲は無駄にしない…!

零司「いや、それは一体何の役に立つんだ?」

ハヤテ「あはは…。ともかく、感想ありがとうございます♪」

>「ハヤテくんは精神に大ダメージか。自分の命と同じぐらい大切な人を守れなかったからね」

>「それだけじゃありません。どんなに不幸でも自分の周りには沢山の人がいて、幸せな日常を暮らして、自分がどれだけ幸福なのか、そして相手の不幸を垣間見てしまったから、優しいハヤテさんは傷ついてしまったんです」

…………考えていたことを全て言われただと…!?

零司「おい!?」

……まぁ、若干言われてないけどさ。

零司「は?」

後もう一つあってね?自分の実力に絶望したんだよねー…。

六花「……まぁ、それだから大神君の案を呑んだんですけどね…」

零司「つっても、一朝一夕につくもんでもなんだけどな、実力ってのは…」

……ま、ね。

>「零司くんはお見舞いに来たわね。・・・痺れを切らして突入しかけたけど」

>「結局どの位待ったのでしょうか?」

ナギ「大体七分くらいだったか…?」

零司「結構長いんだけどな、それ」

ナギ「というか、お前はあの刀をどこから出したのだ!?」

零司「はっはっは。秘密に決まってんだろ」

>「さあ?でも六花さんのお知り合いはとても個性的なようで」(←苦笑)

女性1「あはははは☆どもどもー♪」

男性1「落ち着けって」

男性2「……無理じゃね?」

女性2「そうよね…」

六花「……本当に濃いですね…」

……まぁねー…。

>「・・・・・・・・・・」(←自分とあのメイドさんを見比べて絶望の表情)

女性1「ん?どしたどしたー?」←(ぷるん。という擬音が似合う胸。サイズはアテネくらい?)

ナギ「……わ、私だって…!」

零司「……まぁ、頑張れ」

>「えーと(どうしましょうか、この状況)」

女性1「さぁね。胸でも揉んだら?」

男性1「セクハラまがいの解決法を提案すな」←(再び拳骨)

女性1「いったぁあああああああああああ!!?」

>「れ、零司さんは一体どんな方法を提案したのでしょうか?」(←声が震え、目には雫が溜まる)

>「そうねー。最後の部分を見るとずいぶん荒っぽい方法としか分からないわね」(←込み上げる衝動を抑える)

女性1「言っとくけど、胸なんて邪魔なだけよ?」

いや、そこじゃないと思うんだけど!?

男性2「……諦めろって」

えー…。

零司「いや、今は感想返せよ。まぁ、それで……俺の方法に関しては…」

六花「とてつもなく危険としか…」

……下手したら死ぬしね。

ハヤテ「死!?」

>「ハヤテさんには、戻って欲しいです」

>「零司くんの方法が上手くいく事を願うしかないわね」

零司「俺もそれを切に願ってるよ…」

……まぁねぇ…。

六花「……上手くいくんでしょうかね…」

……それはハヤテ次第さ…。

>「では次回も楽しみにして・・・」

>「どうしたの?」

>「楽しみにするのは不謹慎かと思い。えーと」

……確かに今回は楽しみにしてはもらいたくないね…。

零司「まぁな…」

>「次回はどうなるか気になります。て感じでいいのよ」

>「あ、はい!気になります!」

>「それでは♪」

うん、その言い方はちょうどいいですね♪

零司「そだな。んで、今回はなぁ…」

まぁ、一言で言うなら途中は無双だよね。

アテネ「無双…?」

六花「匿名さん感想ありがとうございました♪」



というわけで、二十話目!

零司「何がというわけなのやら…」

うん、ツッコムのやめてね?

まあ、それは置いといて…。

今回でハヤテは立ち直るか、それとも……折れるか!?

ハヤテ「不吉な事いわないで下さい!」

零司「つか、ハヤテの今の状況説明しろよ!!」

やだよ。

零司「はぁ!?」←(単に話中の設定無視しただけですけどね)

ではどうぞ!!



――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――



「なんで……殺されなきゃいけないんですか…」

ハヤテの言葉には零司は無視し、倒れてるハヤテへゆっくりと歩いてくる。

「なんで……何も話してくれないんですか…」

その言葉にすら零司は無視を決め込む。

その事にハヤテは少し、ショックを受けた。

ハヤテとしては、零司の事はかなり信頼していた。

そんな零司が何の理由も話さずに自分を殺そうとする事は、ハヤテの心にチクリとした痛みを伝えた。

そんな事を考えていると、ハヤテに零司の影が濃く差した。

「……こうなる理由すらわかってないな?」

「わかる……わけないですよ…」

零司からかけてきた言葉にはハヤテは一切見当なんてつかない。

零司が自分をいきなり殺そうとする理由なんて。

「そっか…」

その言葉に零司は心底残念だというようなトーンで呟いた。

「なら…」再び拳を振り上げ「死んどけ」と言った。





       第二十話「無から零?無から一?それは風が選ぶ事」





ゴッシャァ!という破砕音が剣道場の中全体に響く。

その音と共に剣道場を構築していた木片が木屑となり、あたりに飛び散る。

「っち…」

そんな中、零司は一つ舌打ちをした。

「外したか…」

今の一撃は、零司がハヤテのいた場所に零司の拳が当たり、剣道場が破壊された音である。

つまり―――

「はぁっ、はぁっ!」

ハヤテは今の攻撃を避けたという事である。

(今の攻撃……本気で殺す気だった…!)

「おいおい、逃げるなよ…」

慌てたような心境のハヤテに、落ち着き払った零司が声をかけるが、ハヤテはそんな声に答える事が出来ないほどに慌てていた。

(どうして?何で?何で殺される?そんな事をしたか?)

そんな事を考えても、ハヤテには心当たりなんてあるはずも無く、どんどん答えのない思考の迷路に迷い込んでいく。

「…………」

そんなハヤテを、零司は顔には出さないが、喜んではいた。

(そうだ……もっと考えろ…!)

そして、それは一段階目を達成したということと同義である。

「……どうした、ハヤテ」

そして第二段階目を達成させる為に零司は言葉を投げかける。

「やられっぱなしか?それなら、あの黒ローブに負けて当然だよなぁ」

「……っ」

「ただやられてるだけで、反撃も何もしないような奴なら負けるに決まってるよなぁ!!」

心の底から馬鹿にしたような声でハヤテに向かって零司は暴言を吐く。

それにハヤテは握っている木刀を握る力を強くする。

「何々?何も言い返せないわけ?はっ、そんな奴が執事やってるなんて同じ執事として恥ずかしいなぁ、おい」

「………れ」

「こんな奴が執事なんて天皇州の奴も馬鹿だな!こんな一回負けただけで心を閉ざすような奴を執事にしてるから自分も傷つくのによぉ!!」

「…………黙れ」

「たった一回の失敗でこんな風になる奴より、別の方がふさわしいんじゃねぇか!?」

「黙れぇえええええええええええ!!!!!」

零司の口から立て続けに放たれる暴言に、とうとうハヤテは我慢できなくなり、零司に向かって獣のように疾駆した。

「……はっ」

そんな様子になったハヤテを零司は笑う。

「反撃しようとしてそれが確実に通るとは限らないよなぁ!!」

「はぁああああああああ!!!」

ハヤテの振りかぶった木刀を紙一重でかわし、がら空きになった腹へと零司は拳を叩き込む。

「ごぼっ…!?」

その攻撃にハヤテは再び壁へと叩きつけられる。

「くははははは!!ざまぁねぇなぁ、ハヤテ!!」

そんなハヤテの醜態を目にし、零司は大笑いする。

「そんなんだから、お前は天皇州すらも守れないんだよ!!」

「―――っ!!」

腹を押さえ、苦しそうにしていたハヤテの動きがその言葉で止まる。

「…………」

そして、フラフラと力なく立ち上がる。

その目はさっきまでのように虚ろな瞳ではなく、力が入ったいつものハヤテの目であった。

しかし、その目には零司への怒りがこもっていたが。

その目を見て、零司は第二段階が成功した事に心の中で安堵の息をつく。

それと、これからする事に対しての覚悟を再び決める。

「さぁ…、やろうか…!」

零司は楽しそうな声音で言うと、ハヤテは無言で構える。

それを確認すると、零司は木刀を両手で握り、両手を右目のあたりにまで上げ、剣先を左先に向けるように構える。

それは、マラソン自由形での構えと同じ構え。

それ即ち―――

「我流剣術、速式剣舞『嵐』」

その言葉を紡ぐと同時に零司はハヤテの視界から消える。

それ自体は慣れたもので、もうハヤテも驚くことはなく、零司を探そうとする。

―――が、それは叶わなかった。

「くっ…!?」

何故なら、零司が消えた瞬間に右腕に鈍い痛みが走った。

そしてそれをハヤテが脳で理解した瞬間―――

「がっ!?」

今度は左足に鈍い痛みが走る。

そしてそれを認識すると、今度は腹に痛みが走る。

「ごっ…!?」

さらにその痛みを認識するよりも早く、頭を殴られたように頭が下がった。

続き、顎を打ち抜かれ頭が上がる。

「く……は……っ」

そのまま、ハヤテは無様にその場に倒れこむ。

「はっ、なっさけねぇなぁ、ハヤテよぉ」

「な……ん…」

「おいおい、喋れもしねぇのかぁ?」

まともに喋れないハヤテの腹を零司は蹴る。

「ごほっ…!」

腹への痛みに思わずハヤテは咳き込むが、連続して蹴られているため、それすらも叶わない。

「ほらよぉ!」

「がぁっ!?」

止めとでもいうような零司の渾身の蹴りが腹へと突き刺さり、苦悶の声をハヤテは上げる。

それが楽しいとでもいう様に零司は笑みを浮かべる。

「ほらほら、立てっつの!」

倒れているハヤテの襟を掴み、無理矢理零司はハヤテを立たせる。

「…くっ……そ…」

「ほら、距離を取んなきゃなぁ!!」

うめくハヤテを無視し、零司はハヤテを壁に向かって投げつける。

勿論それにハヤテが反応できる訳も無く、そのまま壁に叩きつけられ、壁を背に座り込むような体勢になる。

「……なっさけねー…」

そんなハヤテを零司は心底蔑んだ目で見つめる。

その視線を感じながらも、ハヤテはそれを睨み返すような体力ももうないのか、力なく俯いていた。

「っち…」

そんなハヤテに零司は舌打ちを一つし、再び歩いて近づいていく。

(……敵うはずが……無い…)

近づく足音を聞きながら、ハヤテはそんな事を思う。

だが実際、ハヤテと零司の力の差は離れすぎている。

黒ローブとハヤテの力の差などがちっぽけに思えるほど。

(だから……もう、終わりなんだ…)

そう結論付け、ハヤテは目を瞑る。

死を待つ罪人のように。

そして、零司の足音が不意に止まる。

「……抵抗をしようと思う気力もない、か…」

呆れたような声。

その声はハヤテに聞こえても、諦めたハヤテにはもう意味の無い言葉。

「……ハヤテ」何かを振り上げ、空気を切り裂く音がハヤテの耳に届き「これで、サヨナラだ」

その言葉と共にハヤテは意識を手放した。





       *    *    *





突如聞こえてきた爆音のような音に、剣道場から少し離れたところにいた天皇州アテネは体を震わせた。

「な、なんですの!?」

その言葉と共に視線を剣道場のほうへ向けると、ちょうど剣道場の一角が崩れていた場面であった。

「…………」

その光景をアテネは呆然と見ていたが、そのそばに控えている六花はその光景を冷ややかに見ていた。

それが起こることを知っていたかのように―――

「ハヤテ…。ハヤテ…!」

そして、アテネが剣道場に走り出そうとする。

が、その手を六花が掴み、アテネの動きを阻害する。

「……離して、六花」

「……ダメです」

「……いいから離して」

「ダメです」

「……離しなさい!!」

「……ダメです、離しません」

いくらアテネが頼んでも、強い口調で命令しても、六花はその手を離そうとしない。

「……どうして…」

「……アテネ様が行ってどうなるというのです」

アテネに六花は冷たい言葉だけをかける。

「……あなたは…。あなたは……ハヤテが死んでもいいというの!?」

アテネは錯乱したように六花に叫ぶ。

「……ええ」

そして、それに返ってくる答えは簡潔で、酷く冷酷な言葉のみ。

さらに続けて六花はアテネに向かって言葉を発する。

「……あれくらいの挫折で折れる人なら、アテネ様を守れないでしょう。だから、死んでもらっても構いません」

「――――――」

その六花の言葉に、アテネは言葉を失った。

六花の言葉は、ハヤテがアテネの前からいなくなることを暗に示しているのだ。それは、アテネの心を深く抉った。

「……なんで…」

それでもアテネは言葉を紡ぐ。今行けばハヤテが助かるかもしれないから。

でも、

「決まってるでしょう。そんな中途半端、生きてて欲しくないですから」

それを六花はさせようとはせず、さらにアテネの心を抉った。

「……っ!」

そして、ハヤテに死んで欲しいと言った六花をアテネが叩こうと振り返るが―――

パァン!!

「っ!!」

「ふざけないで下さい」

六花にアテネの平手ではなく、六花の平手がアテネの頬に当たった。

その衝撃にアテネは地面に倒れこむように座り込んでしまう。

「あなたはたった一人の男のために何をしようとしてるんですか?あんなあなたを守れなかった男のために」

さらに六花は言葉を浴びせる。その表情はいつものような笑顔ではなく、冷たさしか感じない無表情だった。

「あんな男より強い男なんてこの世には沢山いますよ」

「……それでも、私には…!」

「ハヤテ君しかいない。ですか?あなた、甘ったれてんですか?」

甘ったれてなんかいない。そう言おうとしたが、何故かアテネの喉からその言葉は出てくれない。

その間にも六花の言葉は続く。

「いいえ、甘ったれてますね。好きな男と運命的な再会をして甘ったれてますね。そんな事で天皇州家の当主が務まるとでも?勤まる訳ありませんよね?それでもハヤテ君が心配なら、天皇州家なんて捨ててハヤテ君とどっか消えて下さい」

立て続けに言われる言葉に、アテネは反論すら出来ない。

そして、六花の辛辣な言葉は続く。

「それが嫌なら、どちらかを選んでください。ハヤテ君を捨てるか、それとも天皇州家を捨てるか」

そんな事、アテネには選べるはずが無い。

「……選びなさい、天皇州アテネ!!」

突然の怒声にアテネは肩を震わせるが、答えられず、震えているだけだった。

「…………」

六花はそんなアテネを冷ややかに見下ろすだけだった。



今の六花は、天皇州家のメイドではなく、志姫六花という一人の人として話している。

だから、アテネに対してもこんな言葉がしゃべれるのである。

そして、今言った言葉は全て六花の本心である。

つまり、ハヤテを心配する反面、ハヤテにイラついていたのだ。……いや、今回はイラつきの方が大きかった。

だが、六花はそのイラつきを押さえ込んでいた。

しかし零司の案を呑み、今の状況になりアテネが走り出そうとした瞬間にそのイラつきは押さえることが不可能になってしまったのだ。

そして、人間という生き物は一度押さえつけていたものが溢れると押さえがきかなくなってしまう。

故に、今の状況になってしまったという事だ。

そしてもう一人―――





       *    *    *





今のハヤテにイラつきを感じている人物はいた。

その人物―――大神零司は、煙が立ち込める中、立っていた。

視線は先程踵落としを落とした場所に固定されている。

瞳の中に映る感情は何もなく、ただそこを見ているだけだった。

そして、やがて煙が晴れていき―――零司に木刀で殴られた後以外は、無傷のハヤテがその中から出てきた。

それはつまり、零司が踵落としを外したという事である。

零司は無言で気絶しているハヤテを掴み、

「……いい加減に目ぇ覚ませやぁああああああああああああ!!!!!」

思い切り、頬を殴った。

抵抗できるはずも無いハヤテはその力を受け、痛みと共に目を覚ました。

零司はそれを確認することなく、ハヤテを殴り続ける。

「てめぇは!自分が!恵まれすぎ!って!思ったなぁ!!」

一撃一撃に自分の思いを籠めて。

「それが!どうした!お前は!その幸福を!手放そうと!するのか!!」

殴られながら、ハヤテはやっと気づく。

零司は本当に自分を殺そうなんてしてないという事に。

「その幸福を!手に入れる!事が!出来ない奴!だって!いるのに!」

そして、これは自分を立ち直らせようとする事に。

それに気づいたハヤテは、痛みも忘れ零司の言葉に意識を傾けていく。

「お前は!それを!自ら!手放そうとする!」

そう、結局零司や六花はそれが許せなかったのだ。

自分が享受している幸せを、自ら手放そうとするハヤテが。

「お前は!まだ!失って!なんか!いないだろうが!!」

零司も六花も、どちらも大切なものを失っている。

それだから、ハヤテが羨ましく、同時に妬ましかった。

「だから!お前は!まだ!折れるには!早いんだよぉおおおおお!!!」

叫びと共に、渾身の力でハヤテを殴りつける。

「がはっ!」

その一撃に、ハヤテは口の中に血が広がるのが感じる。

だが、今のハヤテにはそんな事は些細だった。

「はぁ……はぁ…」

息を荒げながら、零司はハヤテの襟から手を離す。それにより、ハヤテは床に座り込む。

「起きてんだろ……ハヤテ…」

「……はい」

返事をしながらハヤテは零司の前に立つように立ち上がる。

「あの……零司さん…」

「……礼とかなら別にいい」

言いながら零司はハヤテに背を向ける。

「……俺の本心は言ったとおりだ。だからお前は…」

失うなよ。そう言って零司は剣道場を出て行った。

「……はい」

零司の消え行く後姿に返事をし、

「もう……失わない…」

ハヤテは決意をする。今度こそは守り通すことを。

たとえ、どんな人が自分の目の前に立とうとも。





       *    *    *





零司が剣道場を去ってから、数分後。

零司は白皇の森の奥深くにいた。

「うぇ…!」

そして今、零司は腹の底からこみ上げてくるものを必死に堪えていた。

「うっ!」

それでも、堪えきれずに腹の中のものを戻してしまう。

「うぇっ、おぇ…」

口から伸びる糸を切り、零司は近くにある木に力なく座った。

(全身が……だりぃ…)

腹のものを戻した理由は分かっている。

それは拭い去ることなんて出来るない記憶。

紅い記憶。

         紅い                 刀               母さん?
 アレは何?             アレは誰?              出てるのは何?       
              気持ち悪い             嫌だ     
憎い         誰がやったの?                              落ちてるのはなに?
         怖い                    楽しい       もっと


「うっ!」

その記憶を思い出してしまった瞬間、再び胃の中のものをそこらにぶちまける。

「はぁっ!はぁっ!」

全身が紅く見える。手が腕が顔が体が足が。

笑ってる。口が膝が肘が頭が脳が神経が骨が。

気持ち悪い。全部が全部が全部が全部が全部が全部が。

消えろ。消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ。

死ね。死ね死ね死ね死ね死ね?――!

「あぁぁぁ…!」

呻きながら地面に顔をこすり付ける。

紅いものを落とす為に。でも。落ちない。

「あぁああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!」

その事に絶望し、歓喜し、失望する。

自分がわからない。わからないわからないわからないワカラナイワカラナイワカラナイ―――!!

「黙れ!黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れーーー!!」

叫び続ける。でも、拭い去れない。

憎い。妬ましい。苦しい。楽しい。哀しい。感情がグチャグチャニナッテイク。

「嫌だ、嫌だ嫌だイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダーーー!!」

誰にも理解されない。理解して欲しい。理解して欲しくない。

感情がせめぎあう。感情がオカシクナル。

自分がワカラナイ。誰?ダレダレダレダレダレダレダレダレダレダレダレダレダレダレダレダレダレ

「あはっ、あはははははははははは!」

オカシクナッタ。アノヒカラ。ゼンブガ。

ナニモカモガドウデモイイ。ソウオモウホドニ。

コワレタモノハ、モドラナイ―――。



――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


よし、第二十話終わり!

ハヤテ「いや、最後のなんですかねぇ!?」

……企業秘密に決まってるだろうがバカもんがぁ!!

ハヤテ「えぇ!?」

いや、マジで教えられないからね?

零司「…………………………はぁ…」

…………さ、この話題は終わりにして…。

ハヤテ復活!

六花「よかったですね〜♪」

うん、一番切り替え速いよね!六花さんは!!

アテネ「ですわね…」

というわけで、ハヤテはこれから大変になるでしょう!

ハヤテ「決定事項!?」

少なくても黒ローブとは戦ってもらうからね?

ハヤテ「それは……別に構いませんけど…」

よし、言質はとった。

ハヤテ「しまった!?」

まぁ、それは置いといて。

えー。この小説、私が合宿とか旅行とかで、七月中には更新できないでしょう。ご了承ください。

……とはいえ、読んでるかどうかすら怪しいけどね!

ハヤテ「ネガティブな発言!?」

まぁね!では、今度はいつになるかわかりませんが…。

六花「さよなら〜♪」
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Re: 誰がため、何のため 7/22更新 ( No.43 )
日時: 2012/07/22 23:10
名前: 匿名

和也「なぜか輝雪と匿名に二人でいって来いと言われた和也だ」
ルナ「ひゃぁぁ////////。ルナですけど・・・無理ですぅぅぅ///////////////」
和也「ルナがこんな状態だからすぐ感想だ。(なぜこうなってるんだろう?)」
ルナ「すぅー、はぁー、すぅー、はぁー、はい。大丈夫です!」
和也「そ、そうか(女ってのはわからん)」
ルナ「今回は零司さんお荒療治ですね。これでダメならハヤテさんは見限られるところでした」
和也「今回はハヤテだけでなく、天皇州も決断を迫られたな」
ルナ「あのー、もう少し優しい方法は無かったのでしょうか?」
和也「無い」(←零司とハモる)
ルナ「ひゃう!」
和也「ハヤテは優しすぎる。だが、その優しさは周りを不快にさせる事もある。今回のようにな」
ルナ「え、えーと??」
和也「つまり、優しすぎるがゆえにハヤテは傷つき全てを失う・・・いや、捨てるところだった。まだ何も失っていないのに。生きているのに。強くなれるのに。その行動が大切な“何か”を失った人には冒涜とも言えるだろう」
ルナ「それが零司さんと六花さん」
和也「六花さんについてはそんな影があるとも気づかなかったがな。そういうことだ。・・・まあ、あっちと同じ考えかは知らんが」
ルナ「でも、零司さんのおかげでハヤテさんは元に戻りました♪」
和也「その裏では零司が壊れた・・・のか?」
ルナ「何か・・・怖い、です」
和也「結局のところ、全てが明かされるのを待つしか無いか」
ルナ「じ、次回はどうなるのでしょうか!?」
和也「落ち着け。まあ、そういうことで、気になります」
ルナ「それでは!」
和也「だから落ち着けって」
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Re: 誰がため、何のため 7/22更新 ( No.44 )
日時: 2012/07/29 18:39
名前: 疾球



初めまして
疾球と申す者です。
読んでみたらアテネの名前が出ていたために感想を
書かせていただきます。


零司さんかなり強いですね
しかも的確にハヤテのあごを狙うとは・・・
まあ普通の人間は顎をやられると動けませんけどね・・・


六花さんは優しくも厳しいお方ですね
まさか当主にもあんな事を言うとは・・・


ではでは
次回も楽しみにしてますよ
ではまた〜


P,S不快ならシカトしてもかまいませんので




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Re: 誰がため、何のため 7/22更新 ( No.45 )
日時: 2012/08/04 18:53
名前: コサッキー

<レス返し>

▼匿名さん

>和也「なぜか輝雪と匿名に二人でいって来いと言われた和也だ」

>ルナ「ひゃぁぁ////////。ルナですけど・・・無料ですぅぅぅ///////////////」

感想ありがとうございますー♪

ハヤテ「ところで何でルナさんはあんなに顔を真っ赤にしてるんでしょうか…?」

零司「気づけ、フラグメイカー」

ハヤテ「誰がフラグメイカーですか!?」←(いや、君しかいないって…)

>和也「ルナがこんな状態だからすぐ感想だ。(なぜこうなってるんだろう?)」

>ルナ「すぅー、はぁー、すぅー、はぁー、はい。大丈夫です!」

零司「ひとまずお前も気づけよこのド鈍感が!」

零司怒ってるねー…。

零司「あのまんまじゃ報われそうに無いからさ……そういうのは辛いだろうからさ…」

(………………何も言えない…)

>和也「そ、そうか(女ってのはわからん)」

六花「まず先に女心を理解することから始めましょうか、和也君?」

>ルナ「今回は零司さんお荒療治ですね。これでダメならハヤテさんは見限られるところでした」

>和也「今回はハヤテだけでなく、天皇州も決断を迫られたな」

今回言いたかったのは、ハヤテは恵まれている。ってことが一つと、

零司「俺とかの気持ちを理解してもらうことがもう一つだな」

六花「正直殺したかったですけどね〜★」

……星黒い!

零司「まぁ、俺も同感だけどさ…!」←(尋常じゃない殺気を放ち始める)

だから怖いってばぁ!?

>ルナ「あのー、もう少し優しい方法は無かったのでしょうか?」

零司「ん?そうだなー…」

あったの…?

零司「でも、やっぱなぁ…」

>和也「無い」(←零司とハモる)

零司「無い」←(和也とハモる)

アテネ「なかったんですの!?」

六花「そのようですね〜★」

だから六花さん、さっきから星が黒いよ!?

>ルナ「ひゃう!」

>和也「ハヤテは優しすぎる。だが、その優しさは周りを不快にさせる事もある。今回のようにな」

>ルナ「え、えーと??」

零司「全く…」

例えるなら、薔薇ですかね…?

ハヤテ「薔薇…?」

六花「その綺麗さに心は癒える時もあるけど、その棘で怪我をさせ、不快にさせる場合もある……といったところでしょうかね?作者さん?」

まぁ、大体そんな感じですね。

零司「大体のものは癒すと傷つける。それらを両方とも持ってるんだよ」

>和也「つまり、優しすぎるがゆえにハヤテは傷つき全てを失う・・・いや、捨てるところだった。まだ何も失っていないのに。生きているのに。強くなれるのに。その行動が大切な“何か”を失った人には冒涜とも言えるだろう」

零司「かんっぺきに俺はムカついたがな!!」

だから殺気は抑えてくれる!?

でも、まだハヤテは失ってなかったんですよねー……本当は失ってたはずなんですけどね。

アテネ「あの黒ローブが私を見逃したから……というわけですわね?」

そうそう。それをハヤテは捨てようとした。

六花「その行為は私達に対する侮辱ですから」

零司「俺らは怒った。ってとこだな」

零司に関してだけ言えばハヤテは殺されても文句は言えなかったんですけどね…。

零司「まぁなぁ…」←(恐らくかなり重い過去を持っているので…)

>ルナ「それが零司さんと六花さん」

>和也「六花さんについてはそんな影があるとも気づかなかったがな。そういうことだ。・・・まあ、あっちと同じ考えかは知らんが」

零司「俺の過去は……聞いた奴は殺す。それが俺より強い奴ならそいつの大切な奴を殺す」

……マジだ。マジの目だ…!

六花「でも、私は少し違うんですよね…」

正確には失ったには失ったんだけど、まだ失ってないという…。

アテネ「どっちですの…?」←(どっちもなんだけどね…)

>ルナ「でも、零司さんのおかげでハヤテさんは元に戻りました♪」

ハヤテ「本当に感謝してます♪」

零司「次があったら殺すからな?」

ハヤテ「…………そうならないように頑張ります…!」

冗談じゃない分性質悪いなぁ…。

>和也「その裏では零司が壊れた・・・のか?」

>ルナ「何か・・・怖い、です」

まぁ、壊れましたね。

ハヤテ「そんな軽くいう事じゃないですよね!?」

零司「まぁな…」

ハヤテ「零司さんは平気そうだし!」

実際平気なんだけどね…。

零司「幼少の頃はかなりあったしな」

ハヤテ「えぇー…」

んで、怖いというかなんというか…。

零司「そこは人それぞれだな」

>和也「結局のところ、全てが明かされるのを待つしか無いか」

……随分後なんですけどね♪

ハヤテ「えぇ!?」

だって零司ってさぁ…。

零司「……なんだよ」

……白か黒かで言ったら灰色なんだよね。

ハヤテ「……答えになってませんよ?」

今のが一番の答えなんだけどね…。←(零司って曖昧なキャラですから…)

>ルナ「じ、次回はどうなるのでしょうか!?」

>和也「落ち着け。まあ、そういうことで、気になります」

零司「ルナは落ち着けー…」

>ルナ「それでは!」

>和也「だから落ち着けって」

うん、ルナは落ち着いて!?

あ、出来ればソルの方で来てください♪出来ればでいいので♪

六花「匿名さん感想ありがとうございました♪」


▼ 疾球さん

>初めまして

>疾球と申す者です。

初めましてー♪

アテネ「感想ありがとうございますわ♪」

>読んでみたらアテネの名前が出ていたために感想を書かせていただきます。

それはそれは……ありがとうございます!!

>零司さんかなり強いですね

>しかも的確にハヤテのあごを狙うとは・・・

>まあ普通の人間は顎をやられると動けませんけどね・・・

零司はかなり強く設定してますよー。

零司「本来はハヤテ如き瞬殺出来るけどさ」

ハヤテ「……強くなって見せる…!」

……追いつくのに多大な時間が必要だけどね…。

そして、『嵐』くらいのスピードならあごを狙うくらい零司は楽勝ですよ♪

零司「『嵐』なら人体急所を狙うのも簡単だな」

ハヤテ「えぇ!?」

スピードは音速の五分の一くらいだしね…。

ハヤテ「というか、『嵐』ってどんな技なんですか…」

んー…。もう一度出ると思うからその時ね。

零司「てか、何でお前は顎打ったのに動けるんだよ…」

ハヤテだから。としかいえないんだよねぇ…。

>六花さんは優しくも厳しいお方ですね

>まさか当主にもあんな事を言うとは・・・

まぁ、逆に言えば当主だから、ともいえますね。

六花「一人の男の存在で天皇州家が無くなった。なんてお笑い種は勘弁ですから」

アテネ「うぅ…」

六花「まぁ、今回はハヤテ君も無事でしたからよかったですけど…」

無事じゃなかったら…?

六花「……うふふっ」

こっわぁあああああああああああああああああああああ!!?

>ではでは

>次回も楽しみにしてますよ

>ではまた〜

六花「疾球さん感想ありがとうございました♪」




というわけで第二十一話―!!

ハヤテ「テンション高い!?」

旅行から帰ってきたからね!

零司「理由にはなってねぇよ!」

……細かいことは気にするな。

前回まで妙にシリアスだったので今回はコメディよりとかで行きたい!

零司「お前にそんな技量ないだろ?」

……痛いとこつくね…。

まぁ、どうぞ!



――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――



前回から時は過ぎ、二月十三日。つまりはバレンタイン前日。

だがしかし、時計を見ると、もう二月十三日ではなく二月十四日になっていた。

そして改めて今の日にちと時刻を説明すると、二月十四日、バレンタインデー当日。時刻は0時を回ったところ。

そんな時間に、屋敷の主―――天皇州アテネは台所に、彼女は普段はつけないであろうエプロンをつけて立っていた。

手にはお菓子の作り方がびっしりと書かれた本を持って。

これらの装備(?)からアテネがやろうとしている事は容易に想像できるだろう。

そう、今からアテネはチョコを作ろうとしているのだ。

誰に。というのはわかりきったことであろう。

「まずは湯煎でチョコを溶かして…」

本を広げながらアテネは本の通りにチョコを作っていく。

因みに何故アテネがこんな時間にチョコを作っているかというと、理由は簡単である。

昼間だとハヤテが起きているからである。

ハヤテが起きていると、作っている最中にタイミングよく来て、デリカシーの無いハヤテの事なので、チョコを何故作っているのか訊いて来るであろうからである。

なので、今日は六花に頼んでハヤテはさっさと就寝させたのだ。

そのおかげでアテネは今堂々とチョコを作っているのである。

因みにハヤテを無理矢理に近い方法で寝かしつけた六花はというと…。

(うふふ…)

台所の入り口のあたりで気配を消してアテネを見守っていた。

(明日……いえ、今日はバレンタインデーですもんね♪アテネ様としても手作りチョコをハヤテ君に渡したいんでしょうね〜♪)

そこまで考えたところでふと六花はある事に気づいた。

(そういえば私は作ってませんね…)顎に手をあて少し考えた後(まぁ、後で作ればいいですね。今回は戒めの意味も含めたチョコを作りましょうかね…♪)

少し怖い笑顔を浮かべながら、六花はそのままアテネがチョコを作り終えるまで見守っていた。





       第二十一話「バレンタインデー それは乙女にとっては重要な日である」





「ん…」

窓から微かに差し込んでくる光を受け、ハヤテは目覚めた。

時刻は午前四時。まだ大体の者は活動を始めない時刻であろう。

だが、ハヤテは執事。それ故に早く起きるのだ。

「よく寝たなぁ…」

いつもより長く寝た反動からか、こみ上げてくる欠伸をかみ殺しつつハヤテは執事服に着替え、部屋の外に出る。

「さって……今日も頑張るか…」

ひとつ伸びをして、ハヤテは自分の仕事をするべく、屋敷の廊下を歩き出した。



「六花さん、おはようございます」

「おはようございます、ハヤテ君♪」

ハヤテが最初の仕事―――自分達の朝ごはんを作るべく台所に行くと、同僚である志姫六花がすでに立って自分達の朝食を作っていた。

「相変わらず早いですね、六花さん…」

「いえいえ♪別に早くなんて無いですよ?」

「……じゃあ、いつから朝ごはん作ってました?」

ハヤテのその質問に、朝食を作る手は止めずに六花は考え「十五分くらい……前ですかね?」と答えた。

その早いとも言えない微妙な時間にハヤテは「そうですか…」と返すくらいしかできなかった。

そんな言葉を交わした後、ハヤテも六花に並び、朝食の手伝いを開始する。

そのまましばらく包丁が野菜を切る音と、鍋のグツグツと煮立つ音だけが台所中に響く。

別に気まずいという訳ではなく、毎朝繰り広げられている光景なので今更ハヤテと六花は気にすること無く、朝食を次々と完成させていく。

その十分後、テーブルの上に朝食は並べられ、ハヤテと六花は向かい合って座る。

「「いただきます」」

手を合わせ、そう言い二人は朝食に手をつけ始める。

因みに今朝のメニューはというと、焼き魚に味噌汁、おひたし、それとご飯という典型的な和食である。

(六花さんって和食を作るのが多いよなぁ……いや、別に美味しいからいいんですけど…)

そんなハヤテは目の前の魚に箸をつけながら心の中でそう思う。

実際ハヤテがこの屋敷に来てから、和食は七割を超える割合で出てきている。

そして残りの三割はパンなどの洋食である。

これには六花のある思いがあってなのだが……そんな事はハヤテが知る訳もない。そして今語ることでもない。

そしてそのままカチャカチャと食器同士が擦りあう音だけが二人の間に支配する。

それが数分続いた後、

「ところで、ハヤテ君」

六花がその沈黙を破り、話しかけてきた。

「どうかしましたか、六花さん?」

「今日は何の日か……わかりますか?」

そう言って六花は笑顔を見せる。だが、その笑顔はハヤテには何かを探っているかのように見えた。

だが、何を探ろうとしているのか、ハヤテにわかるはずも無い。

「そうですね………………誰かの誕生日でしたっけ?」

ズルッ。その回答に六花は椅子の上から落ちそうになる。

(予想していたとはいえ……ここまでだったんですか…)

内心で六花は呆れる。

勿論、今日はバレンタインデー。普通ならハヤテほどの年ならチョコの一つや二つを期待し、この日を覚えているものだが…。

(……最早鈍いとかいうレベルを超えて、枯れてるんじゃないでしょうかね…?)

若干失礼なことを考えながらも、それを否定することが出来ない六花であった。

「はぁ…」

「あ、あの……何で溜息をつかれるんでしょうか…」

「いえ……少しハヤテ君の印象を少し変える必要がありそうな事に呆れているんです…」

「何故!?」

六花の発言にハヤテは驚くが、そんな事を無視して六花は残っている朝食を食べ進めていく。

「うぅ…」

いきなり自分の評価を下げられることにショックを受けたハヤテであったが、六花がまた食べ進めるのを見て自身も再び食べ始める。

そして、そのまま食べ終わるまで二人の中に話が生まれることは無かった。



「「ふぅ…」」

数分後、朝食を食べ終わった後、二人はいつものように食後のお茶を飲んで落ち着いていた。

その光景ははたから見ると老人のような行動にも見えるが…。二人にとってはこれはかなり落ち着く時間である為、そんな事は微塵も思っていなかった。

因みに今の時刻は午前四時三十分。

時間にはかなり余裕がある。

そうしてしばらくの間、二人がまったりしていると何かを六花は思い至ったようで、冷蔵庫の方に向かって歩いていった。

そして、冷蔵庫の中から何かを取り出し、ハヤテの前にその取り出したものを置いた。

「えっと……六花さん、一体これは…?」

いきなり自分の前に置かれた、包装された物にハヤテは戸惑う。

「まぁ、開けてみてください♪」

「はぁ…」

不審に思いながらも、ハヤテはその包装を解き、蓋を開けると…。

「……チョコ?」

そこには綺麗に整えられた三個のチョコがあった。

「これで気づくんじゃないですか?」

その六花の言葉に、やっとハヤテは今日が何の日かわかった。

「今日は二月十四日……つまりは、バレンタイン…」

「はい、正解です♪」

その答えに、六花はこっそり出して後ろに隠していた箒を床に立てかける。

「というわけで、それは私からのチョコです♪」

「あ、ありがとうございます…」

突然渡されたチョコに戸惑うハヤテ。

「じゃあ、私はもう行きますけど……ちゃんと食べてくださいね?」

そう言うと、六花は台所を出て行った。

そうして残されるはハヤテのみ。

「じゃ、じゃぁ…。食べてみようかな…」

何故かハヤテの本能が警鐘を鳴らしているが、人に好意で貰ったものをハヤテが無下にできるはずも無い。

震える指先で、右のチョコをつまみ口へと入れる。

それは口に入れた瞬間に溶け、ほどよい甘さがハヤテの口の中へと広がる。

「あ、おいしい…」

ハヤテは思わずそう呟いた。

甘すぎず、かといって苦すぎることもない程の味。そして後味も悪くなく、スッキリするような感覚がする。

その味に少し気分が湧き、次のチョコに指を伸ばしかけた瞬間、

「!?す、すっぱぁあああああああああああ!!?」

ハヤテの口内を強烈なすっぱさが襲った。

急いでハヤテが水を飲むと、そのすっぱさはすぐに消えた。

「な、なんで…!?」

そしてハヤテは落ち着くと同時に驚愕した。

普通後味に強烈なすっぱさを残すことは出来ない。なのに今食べたチョコからはその味がした。

メカニズムすらわからないチョコに、ハヤテは心底戦慄した。

そして一つのチョコでこのような事が起きるという事は…。

「………………」

その可能性に、ハヤテの伸ばしかけていた手が止まる。

そして、細かく震え始めた。



その数分後、ハヤテの「にっがぁああああああああああ!!!」という叫び声が屋敷中に響いた。

因みに、真ん中のチョコだけは普通の美味しいチョコだったそうである。





       *    *    *





あれから時間は過ぎ、HRが始まるまでかなり余裕がある時間。

「朝から酷い目にあった…」

ハヤテは机に突っ伏していた。

無論、原因は六花から貰ったチョコのせいである。

後味がすっぱいのと苦いの。そして、普通に美味しいチョコ。

何らかの飴と鞭なのだろう。そう思う事にハヤテはしていた。

というより、そう思わないとやってられないだけであるが。

「というかあのチョコ……最初が美味しいだけに性質が悪い…!」

まぁ、実際そうなのだろう。

なんせ最初がかなり美味しい為、後に来る味で天国から地獄へと突き落とされるような感覚があった。

普通の男子なら落ち込んで、心が折れるのかもしれない。

しかし、白皇の男子なら『チョコがもらえた』という事実だけでそんな事はお構いなしで食べそうではある。

「はぁ…」

ハヤテのついた溜息はまだ誰も来ていない教室に空しく響いた。



それから数分が経った。

「早く……来すぎた…」

そしてハヤテは今日の自分の行動を呪った。

いや、正確に言うなら六花に言われ、その通りに行動した自分を、だが。

勿論、六花がハヤテに早く行くように言ったのは理由がある。

それは白皇男子にあまり攻撃されないように。という理由である。

白皇でのハヤテの人気はかなり高い。

その人気は、男子に人気の高い生徒会長であるヒナギクや、男子と女子の両方から人気のある零司とも同じくらいである。

とはいっても、少し人気の層は違ったりするのだが。

ヒナギクは男子全般に人気があるが、零司は部活動をしている男子に人気があったりする。

零司の人気の理由としては、部活動の生徒に個人的にアドバイスをしているからである。例としては東宮が上げられる。

そして女子からの人気は、初等部や中等部。つまりは年下からの人気が高かったりする。

勿論、同年代や年上からの人気もそこそこある。

だがやはり、零司の女子の人気は年下からが一番多い。何故なら、零司は意外と年下には甘かったりする。

とはいっても、厳しい部分のほうが多かったりするが…。

それでも、かなり助けてもらっている者がいる為に人気は高い。

まぁともかく、ハヤテも白皇で人気がある事は確かである。……そのハヤテ自身は全く気づいていないが。

そんなハヤテが普通に登校したら、女子からチョコを貰う確立が高く、それを見た男子が嫉妬に駆られハヤテを攻撃するであろう。と六花は考え、ハヤテをかなり早く登校させたのだ。

……まぁ、暇つぶしの何かを考えていれば完璧だったに違いない。

「はぁ…」

そしてハヤテがもう一度溜息をついた時、

「うーっす」

ガラガラと扉を開ける音が教室内に響いた。

そしてその人物は―――

「零司さん…?」

「あれ?ハヤテ?」

三千院家執事である、大神零司がきょとんとした表情で立っていた。



「なんでお前こんなに早いわけ?」

自分の机に鞄を置き、ハヤテの前の席に座りながら零司が訊く。

一応言っておくが、零司が今座っている席は零司の席ではない。

「いや、六花さんに言われて…」

「あぁ…」

何故かその一言だけで零司は理解したようであった。

「零司さんは何故こんなに早くに学校に?」

「あー……一応お前と同じ理由なんだが…」

そこで言葉を区切り、零司ハヤテの目を見る。

その行動にハヤテは慌てたものの、意図が読めずにきょとんとするだけだった。

「……まぁ、理解出来る訳ないだろうから喋らん」

「えぇ!?」

「つか、お前は周りの視線を理解できるようになったらわかることだからな?」

「?視線を…?」

「ダメだこりゃ…」

全くわかってない様子のハヤテに、零司はただ肩を竦めるしか出来なかった。

「ところでハヤテ」

「何ですか?」

「今日が何の日か……わかってるよな?」

「……馬鹿にしてます?」

あまりにも馬鹿にしたような発言に、流石のハヤテも怒りのオーラを発する。

「いや、別に馬鹿にしてるわけじゃねぇよ!?」

その普段見ないオーラに零司はたじろぐ。

「じゃあ、その質問の意図は一体何なんですか?零司さん?」

「だから完璧に怒ってんだろ!!」

「だから怒ってませんって♪」

「嘘だ!今のお前からは六花さんと同じくらいのオーラを感じる!」

「気のせいですって♪」

口調は六花のように優しいものだが、纏うオーラは先日六花が怒った時と同じレベルであった。

「だぁー!落ち着けっての!」

そう叫ぶと、零司は右手から何かを弾いた。

それは高速でハヤテの額にいい音をたてクリーンヒットした。

「いったぁああああああああ!!?」

その痛みにハヤテは椅子から転げ落ち、床を転げまわる。

「よし、落ち着いたか」

「いや、落ち着いてませんからね!?というか、今何をしたんですか!?」

額を押さえながら、ハヤテは床の上で叫ぶ。

この際、あまりにも頑丈すぎるというツッコミはスルーしてもらう方向で。

「ん?単に弾いただけだが?」

何を、とハヤテが言おうとした瞬間に、目の前に何かが落ちてきた。

「……コイン?」

それは、ゲーセンなどで見かけるような、ごく普通のコインだった。

表裏を注意深く見ても、何も変わったところは無い。

「ま、単に指の力で弾いただけだ」

「そのただ弾いただけが凄い威力だったんですが…」

「まぁ……人一人は簡単に気絶させられるほどの威力だったしなぁ…」

「実験済み!?」

「あぁ、雪路で」

「あー…」

零司の言葉に転校初日の光景がハヤテの脳裏に鮮明に浮かぶ。

(あの時も僕の目の前にコインが落ちてきましたもんね…)

「ま、気にすんなって」

「いやいや…」

その後も、零司と適当な話題で盛り上がり、ハヤテは暇を潰すことが出来たそうである。





       *    *    *





そして、放課後。

時計台の生徒会室にて。

「バレンタインって、女の子が男の子にチョコを渡すイベントじゃなかったっけ?」

「な…何よ……私だってそれくらい知ってるわよ…」

ヒナギクはそう言いながらチョコを齧る。

そしてヒナギクの机の上にはチョコが山のように積まれている。

「しかしヒナ……毎年毎年すごいわね」

「なぜかしら、年々量が多くなってるんだけど…」

「ヒナは男子よりかっこいいからモテるのよ」

確かに下手な男子よりはかっこいいだろう。

「でもおかしいわ。ていうか陰謀よ。私、こんなに女の子らしくしてるのに…」

「確かに昔に比べたら多少は…」

そう言う美希の頭には三人の男の子を圧倒するヒナギクの図が浮かぶ。

「やめてよ、一応、反省はしてるんだから…」

そしてヒナギクもその事を思い出したのか、顔を赤くしていた。

「でもこんなに食べたら太るわよ?」

「わかってるけど…捨てられないじゃない……一つ一つ…女の子の想いがこもったものなんだし…」

「……そっか…」

ヒナギクの言葉に、空気がしんみりとなる。



「おーおー、随分と律儀なこって」

そしてその瞬間、テラスのほうから声が響いた。



「誰っ!」

「そこまで警戒することも無いと思うんだけどな…」

ヒナギクの言葉に呼応するように現れたのは…。

「……零司君?」

「よっ」

零司であった。……何か妙にデジャブを感じないでもないが、気のせいだろう。

「何でここにいるのかしら?ここは生徒会の者しか入ってはいけないんだけど」

「別にいいんじゃね?そんな事を気にする奴もいなさそうだしさ」

「そういう問題じゃないんだけど……ていうか、どうやって入ったわけ?」

「ん?簡単な方法だぜ?」テラスの方を指差し「ただ駆け上ってきただけだが?」とのたまった。

「「………………」」

その方法に二人は言葉が出なくなった。

普通はありえない方法だからであろう。といっても、できる人なら白皇を探せばかなり出てくるだろうが…。

「ま、今回だけ許してくれや」

そう言うと零司はソファーに腰掛け、どこからかチョコを取り出し、齧った。

「そのチョコは?」

「今日が何の日かわかってんだろ、花菱…」

「や、一応訊いとくべきかなと思って」

「そんな気遣いはいらねぇ…」

美希と話してるうちに、零司はチョコを食べ終わり、また別のチョコをどこからか取り出した。

「まだあるのね…」

「かなり貰ったからなぁ…」

疲れた表情で零司はそう言う。

普段こんな表情をしない零司がこんな表情をするという事は、かなり貰ったのだろう。

「ま、貰える物は貰っとく主義なんで」

「そんな言い方は無いんじゃないかしら…」

「知るか。あっちが勝手にくれるだけだっつの」

ブツブツ言いながら零司は次々とチョコを食し、消費していく。

「というか…」新たにくわえたいたチョコを口で割り「ヒナギクも結構貰ってるよな」

「ヒナは男子よりかっこいいから…」

「あぁ、やっぱり?」

「やっぱりって何よ、大神君!」

「だって……なぁ?」

同意を求めるように零司が美希を見ると、美希も無言で頷く。

「美希まで…!」

「男子よりもかっこいい奴が悪い」

「私だって女の子らしくしてるわよ!」

「運動神経抜群、容姿端麗、成績抜群。これに加え、下手な男子より男子っぽい。……否定要素あるならどうぞ?」

「くっ…」

無いのかよ…。と零司は溜息混じりに呟くと、不器用ながらにラッピングされた箱を取り出す。

「手作りかっと…」

ラッピングを解き、蓋を開けると焦げた跡のあるクッキーらしきものが入っていた。

「……それも食べるの?」

「当たり前。貰ったものは全部たべるっつの」

焦げたクッキーを口へと運び、咀嚼する。

「ん…。焦げてるけども……まぁ、美味い」

「……本当に?」

「本当本当」

話しながら次々と零司はクッキーを口の中にほおりこんで行く。

「あ、そうだ。言っておくけどさ…」

そして最後の一個を食べようとした所で、二人に視線だけを寄越し、言葉を投げかける。

「好意とかはさ、貰える時に全部貰っとけよ?」

そう言うと、零司はクッキーと口の中に入れた。

「「……?」」

その言葉の意味がわからず、二人は首を傾げるだけであった。





       *    *    *





「ス…スイマセン……ヒナギクさん…」

「……何をいきなり謝ってるのハヤテ君」

そして零司が生徒会室に来てから数十分後、ハヤテは生徒会室にて開口一番ヒナギクに謝っていた。

「いや、わかりませんけど、また僕が怒らせるようなことをしたんじゃないかと…」

「なんだかバカにされてる気分だわ。それよりもあっちの部屋でお客様がお待ちよ」

ハヤテをどこか怒ったようにヒナギクは見つめる。

「あの……やっぱ何か怒って…」

「うるさい!!つべこべ言わず行きなさい!!」

渋る様子のハヤテを、ヒナギクは一喝し無理矢理隣の部屋に押し込む。

『あ……西沢さん…』

『ハヤテ…君…』

「…………。聞いちゃ悪いし…下に行ってよ…」

扉から聞こえてくる声にヒナギクは気をきかせ、下に行こうとエレベーターを呼ぶ。

エレベーターを待ってる最中に、ヒナギクはポケットから一つの包みを出した。

「女の子が…男の子にチョコを渡すイベント…か」

そう呟いた瞬間、勢いよく扉が開き、歩がエレベーターに駆け込んだ。

「………どうしたの?」

「へ?いや…別に何もないって言うか…義理チョコ貰っちゃいました」

「…?義理?」

「はい。ずっと友達でいようって…。そんな気をつかわなくてもいいのに…」

そのハヤテの言葉でヒナギクは全てを悟った。

(なるほど…そういう事ね…)

「今すぐ追いかけて、交換してもらいなさい」

「へ?」

「つべこべ言わず追いかけなさーーーい!」

「は!?はいーーー!!」

ヒナギクの一喝に、ハヤテは逃げるように下に下りていった。

「全く…」

そんな鈍感すぎるハヤテにヒナギクが溜息をついていると、

「本当に鈍感だよなー」

すぐ後ろから声がかかった。

「……大神君?帰ったんじゃなかったの?」

ヒナギクは振り返らずに質問を問いかける。

「何か面白そうな事が起こるかなと思って残ってた」

「はぁ…」

存外どうでもいい理由にヒナギクの口から溜息が漏れる。

「ま、でも残ってなきゃよかったかもな」

「……どういう事?」

だってさ、と零司は前置き、



「あんな茶番劇聞く位なら帰ってチビ嬢の相手してる方がマシだったし」



「っ!?」

零司の言葉にヒナギクは肩を震わす。

その事に気づいているのかいないのか、零司は続ける。

「出てった奴……西沢だったっけ?あいつも諦め悪いなー。ほとんど脈無いのもわかってるんじゃないか?いや、単にハヤテが鈍感―――」

零司の言葉はそれ以上続くことは無かった。

何故なら―――ヒナギクが正宗を零司に向かって振りぬいたからである。

「……何するわけ?」

それを零司は平然と横に一歩動き、避けていた。

「あなたに…」

「あ?」

「あなたに何があの子の何がわかるの!?」

「…………は?」

いきなりの事に零司は間抜けな声を出した。

(え?何これ?何でヒナギクが怒ってる訳!?)

「あの子が一生懸命にやった事を……あなたは否定するというの!?」

(あー、そういう事ね)

そして零司は全てを理解した。

(うん……めんど)

そしてその一言で、全てを切り捨てた。

(まぁ、適当にごまかしますかね)

「……そうだけど?」

心中では誤魔化そうと決めたが、口から出たのはそれとは正反対の言葉だった。

だが、零司はその事に驚きはしたが、そのまま続けた。

「どんなに努力したとしても、それが実らなきゃ意味無いだろ?」

「だからって…!」

「お前学習って知ってる?前もこんな事言ったと思うんだけど?」

首を回しながら零司は続ける。

「チャンスは一度きり。それを逃がしてもまだ実るとか思ってる奴は成功者だって」

「―――っ!」

その言葉はマラソン大会の時に零司が言った言葉。

「これは恋愛も同じだと思うんだがな。一度告白して、それで一度断られてその後付き合うことになるってのは、結局最初から好きだったって事なんだよ」けど、と零司は呟き「西沢にその可能性があるとは思えないね」

「…………」

「否定も出来ない訳?ま、そうだろうな。ハヤテを見ててわかったろ?あいつの目には、西沢は単なる『お友達』にしか映ってねぇよ」

「……それでも…」

「まだ言う訳?じゃあ、言ってやろうか?ハヤテの目には―――」

「やめて!」

零司が言葉を紡ごうとした時、ヒナギクは叫んでその先を止めた。

その先を聞いてしまえば何かが、大事な何かが壊れてしまう。そんな気がヒナギクにしたのだ。

「…………あっそ。ま、俺らがあれこれ言う問題でもないしな」

そう言うと、零司はヒナギクの隣を通り、エレベーターに乗った。

「最後に一つ」

閉まり行く扉の中、零司がヒナギクに向かって言葉を投げる。

「希望と―――」

だが、その言葉は最後までヒナギクに聞こえる前に、エレベーターの扉が閉まった為、聞こえることはなかった。





       *    *    *





そして時間は放課後から夜へ。

「はぁ……どうしよ…」

ハヤテは掃除をしながら放課後の事を思い出し、溜息をついていた。

あの後、本命チョコを貰ったものの、返事はしなくていいと言われたのである。

それはハヤテ本人としては、物凄く困るのであった。

かといって、返事をするとなると…。

「何て言えばいいのだろうか…」

このように出来ないので、結局困るのであった。

「はぁ…」

「ハヤテ君も大変ですね〜」

「……一応訊きますけど、いつからいました?」

「返事を困ってるところからですね♪」

「殆ど最初からですよねぇ!?」

「まあまあ♪それよりもアテネ様が部屋に来いと♪」

「え?部屋に?」



「お嬢様?」

ドアをノックして返事を待つが、返事は返ってこなかった。

「…?入りますよー?」

その事をハヤテは不審に思い、一応断り扉を開ける。

その先にあった光景は―――

「すぅ…」

月光が降り注ぐ中、アテネが机に突っ伏して寝ている光景であった。

「……えーっと…?」

その光景にハヤテは戸惑った。

(ひとまず整理すると……お嬢様が僕を部屋に呼んで、それで僕が来たらお嬢様が机に突っ伏して寝てた…)

「……どうしろと…」

状況を把握すると、ハヤテは困ったように頭を抱えた。

だが、ハヤテは執事。ひとまず毛布をかけようと、アテネへと近づいていく。

「風邪を引きます……よ?」

そして、毛布をかけようと後ろに回った時、ハヤテの目に一つの物体が飛び込んできた。

「何だこれ…?」

その四角い箱を持ち上げ、ハヤテは呟く。

上から見ても下から見ても、どこも変わったところの無い四角い箱。

しかし、その蓋の部分から甘い匂いが漂ってくる。

「開けるべき……なのかな?」

口では疑問を口にしていても、手は口とは裏腹に蓋に手をかけている。

そして、蓋を開けると、その中には今日ならではの物が入っていた。

「チョコ…」

それは幾ら鈍感なハヤテでも今日だけはわかった。

これは自分に渡す予定だったものだと。

「あははっ…」

そして自分の手元にあるチョコを見てハヤテの口から苦笑のようなものが漏れる。

「自分が寝不足になるなら別に作らなくてもよかったのに…」

言葉とは違い、ハヤテの心は嬉しさで一杯になっていく。

「いただきます…」

寝ている主に向かって言うと、一つ、口へと運ぶ。

「……うん、おいしいよ、アーたん…」

聞こえるはずの無い言葉をハヤテは呟く。

それが聞こえたのか、アテネの寝顔は気持ち良さそうであった。



こうして、バレンタインデーは終わった。



――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――



……っはい!第二十一話終わりだぁあああああああああああ!!!

ハヤテ「何故いきなりの叫び!?」

零司「単に発狂しただけじゃね?」

発狂してないからね!?

零司「じゃあ、何故に」

……何故か、日常的なもの書こうとしたら、途中にシリアスっぽいものが入ったことだよ!!

ハヤテ「あぁー…」

零司「……俺のせいにするわけ?」

いや、そう言うわけじゃないんだけどね…?零司が出てくると何故かシリアスが入るんだよ…!

零司「人をシリアスの塊みたいに言うんじゃねぇ!!」

ハヤテ「まあまあ…」

にしても、今回は迷走したね…。……いや、いつもだけど。

ハヤテ「それを自分で自覚してるってどうなんでしょうか…」

うっさい!!そしてここで大問題発生。

零司「は…?」

……次の話どうしよ☆

零司「おぉおおおおおおおおおおおおい!!?」

やー……本当にどうしよっ☆

ハヤテ「困ってる風には全く見えないんですけど!?」

いや、困ってるからね!?……本当にどうしよ…。

というわけで誰かネタ下さい。

零司「ドアホか!?」

半分冗談。

ハヤテ「半分!?」

まぁ、どうにかしてみせる…!

というわけで、次回遅れるかもしれませんが……では!!

零司「不安要素しかねー…」

ハヤテ「本当ですよ…」
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Re: 誰がため、何のため 8/4更新 ( No.46 )
日時: 2012/08/04 20:30
名前: 匿名

ソル「どうも♪匿名が作者権限を行使して人格を強制的に入れ替えられたソルだ♪」
和也「(何故また二人?)和也だ」
ソル「感想に来たぜ♪」
和也「バレンタインか。思い出すな〜、もらったチョコ全部食ってたら胸焼け起こしてそれ以来、食べれないわけではないけど苦手になったという」
ソル「大変だったな」
和也「決定的なのはあれだな。学校中の男子に追いかけられて軽く巻いたはいいが家まで押しかけて嫌がらせしてきてな。対したことではなかったが、さすがに三年間も続くと苦手意識が」
ソル「そ、そうか。にしてもハヤテさんはこういう日も忘れるんだな」
和也「俺は忘れたくても忘れられない」
ソル「ヒナギクさんはそこらの男子よりモテるな♪」
和也「で、大神は時計塔を登ったと」
ソル「カズ兄はできないのか?」
和也「別に俺は身体能力は化け物ではないからな?鬼と戦う時は影で強化してるけど普段はそこまでじゃないからな?」
ソル「え?でもカズ兄普通に学校の屋上から飛び降りても無傷だったよな」
和也「ちゃんと受け身とったからな」
ソル「そういう問題か?まあ、いいや。で、零司さんはきつい言葉を浴びせると。でも、恋愛に関しては意中の人が誰とも付き合ってない限りチャンスはあると思うぜ。一回失敗したら終わりのものと期限付きのものが私はあると思うが」
和也「そこは考え方の相違というものだ。お前がそう思っても大神はそう思ってない。人の考えはそう簡単には変えられない。だからと言ってそれにしたがう必要も無い。俺から言えることは生徒会長は己の信念を貫けばいい。人に言われて納得するような信念なら最初から持つな」
ソル「人は同じ存在にはなれないからな。とりあえず頑張れ」
和也「で、天王州のところにハヤテは向かうと」
ソル「そこにはチョコがあったな」
和也「流石に気付いたか」
ソル「カズ兄も気づいてくれないかな。いっそ言っちゃったら楽になるのかな?」(←小声)
和也「どうした?」
ソル「おわ!?ななな何でもない///」
和也「そうか(やはりわからん)」
ソル「じゃ、次回も楽しみにしてるぜ♪///」
和也「それでは」
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Re: 誰がため、何のため 8/4更新 ( No.47 )
日時: 2012/08/05 15:05
名前: キー

 忘れた頃に………のキーです。

 調「久々に使いやがった。」

 あぁ、これは、『しばらく書けなくてすみません』という謝罪が6割と、………………

 調「…と?……」

 開き直りが94割だね。

 調「開き直りの方がでかい……というより全部で10割超えてるというか、100割だ。
これはどちらかというとパーセンテージだからな!?」

 さて、……感想…

 調「無視するなぁぁぁぁぁぁ。」

 椿「↑でソル姉が真っ赤だね。……前も行ったと思うけど、言っちゃった方がいいね。」

 調「本編関係ねぇぇぇぇ。感想をしろぉぉぉぉぉ。」

 『希望と……』この続きが気になるねぇ。僕だったら…

 調「キーだったら?」

 やっぱやめた。当たりそうな気がするから。

 調「ここまできて?…ほかのとこで散々やってるのに?」

 …………………何故なんだ!?

 調「急にどうした?」

 なんか、最近の零司の言うことに妙に共感できてしまう。『チャンスは1回』辺りから。

 調「おいおい。」

 六花さんには突っ込まんぞ。突っ込んだら負けだからな。

 リン「気配を消すなんて簡単よ。」

 ダメだ。リンってなんなんだ。

 リン「情報屋 兼 教師 兼 『厄災の番人』討伐チーム総司令係」

 調「肩書全部言いやがった。」



 『ちょっとした雑談コーナー』

 ネタ…ねぇ。

 調「あとがきの話題を…」

 やっぱり、変換ミスとか、同じ漢字で違う読み方の熟語を並べる:簡単に言えば『文でし
かわからない文字のコント』的なのは楽だし、応用自在じゃないですかねぇ?

 調「『バナナの皮で滑って転ぶ』的な古典的なネタは?」

 あれって、実際に気づかずに滑って転んだことあるけど……あれは痛いよ。リアルでやる
と地味に痛いんだよ。……しかも笑われたよ。

 調「…いるんだな。本当に転ぶ奴って。」

 一つ言っておく。

 調「また無視しやがったぁぁぁぁ亜ぁぁぁぁぁ。」

 ストーリーを最後まで考えてから書こうよ。途中で思いついたら加えればいいだけだよ。
ストーリーを『すべて』考えて書かないから、途中で終わる小説が多いんだよ。

 調「この場で言うことじゃねぇぇぇぇぇぇぇ。」


 椿「ってことで場居場居。」

 調「…………椿って、何しに来たんだ?」
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Re: 誰がため、何のため 8/4更新 ( No.48 )
日時: 2012/08/10 19:50
名前: コサッキー

<レス返し>

▼ 匿名さん

>ソル「どうも♪匿名が作者権限を行使して人格を強制的に入れ替えられたソルだ♪」

>和也「(何故また二人?)和也だ」

よし、ソルだ。

ハヤテ「何がしたいんですか…」

零司「比較じゃね?」

うん。ソルはルナほど赤くはならないか…………チッ。

ハヤテ「チッって何!?」

零司「そして和也はいい加減に気づけ!!」

アテネ「無理でしょうね…」

>ソル「感想に来たぜ♪」

六花「感想ありがとうございます♪」

>和也「バレンタインか。思い出すな〜、もらったチョコ全部食ってたら胸焼け起こしてそれ以来、食べれないわけではないけど苦手になったという」

>ソル「大変だったな」

零司「へー」←(甘党なのでそんな経験無し)

ハヤテ「零司さん甘党だったんですね…」

うん、その代わり辛いものは一切ダメだけどね。

零司「うっせ…」←(カレーですら中辛が限界ですからね…)

>和也「決定的なのはあれだな。学校中の男子に追いかけられて軽く巻いたはいいが家まで押しかけて嫌がらせしてきてな。対したことではなかったが、さすがに三年間も続くと苦手意識が」

零司「そんな時はぶちのめすのが一番!」

ハヤテ「もっと穏便に行きましょうよ!」

零司の性格上無理だって…。

>ソル「そ、そうか。にしてもハヤテさんはこういう日も忘れるんだな」

>和也「俺は忘れたくても忘れられない」

ハヤテ「素で忘れてました…」

ハヤテらしいー。

六花「普通は期待する日なんでしょうけどね…」

ハヤテ「というか、六花さん。あのチョコどうやって作ったんですか…!?」

六花「秘密です♪」

>ソル「ヒナギクさんはそこらの男子よりモテるな♪」

美希「ヒナはそこらへんの男子よりかっこいいからね」

零司「女としての評価じゃないよな、それ」

>和也「で、大神は時計塔を登ったと」

ハヤテ「どうやって登ったんです?」

零司「出っ張ってるとこ探してそこを足場にして、跳躍を繰り返しただけだが?」

ハヤテ「……出来ませんよ?」

零司「努力しろ」

ハヤテ「無理ですってばぁ!?」

>ソル「カズ兄はできないのか?」

>和也「別に俺は身体能力は化け物ではないからな?鬼と戦う時は影で強化してるけど普段はそこまでじゃないからな?」

零司は身体能力化け物級ですけどね。

零司「努力の賜物だ」

ハヤテ「努力してそこまで出来るんですか!?」

小さい頃からやってればそうなるだろうね。

零司「まぁ、ハヤテなら出来る気もするがな…」

……確かに。

>ソル「え?でもカズ兄普通に学校の屋上から飛び降りても無傷だったよな」

>和也「ちゃんと受け身とったからな」

ハヤテ「受身とかそういう問題ですか!?」

零司「知らねって…」

>ソル「そういう問題か?まあ、いいや。で、零司さんはきつい言葉を浴びせると。でも、恋愛に関しては意中の人が誰とも付き合ってない限りチャンスはあると思うぜ。一回失敗したら終わりのものと期限付きのものが私はあると思うが」

零司「ま、そう言う考え方もあるがな。……でもなぁ……やっぱ一回で成功しなかったら気まずくね?」

ハヤテ「そこ!?」

>和也「そこは考え方の相違というものだ。お前がそう思っても大神はそう思ってない。人の考えはそう簡単には変えられない。だからと言ってそれにしたがう必要も無い。俺から言えることはヒナギクは己の信念を貫けばいい。人に言われて納得するような信念なら最初から持つな」

>ソル「人は同じ存在にはなれないからな。とりあえず頑張れ」

零司「だってさ、ヒナギク」

ヒナギク「うん…」

零司って本当にどっちやねん。

零司「どっちって何が?」

心折るのか、後押しするのか。

零司「状況次第」

>和也「で、天王州のところにハヤテは向かうと」

>ソル「そこにはチョコがあったな」

>和也「流石に気付いたか」

ハヤテ「流石に気づきますから…」

六花さんに朝のうちに言われなきゃ気づかなかったくせにー。

ハヤテ「う…」

>ソル「カズ兄も気づいてくれないかな。いっそ言っちゃったら楽になるのかな?」(←小声)

零司「言った方が気は楽だろうな。ただ…」

ハヤテ「ただ?」

零司「場合によっちゃ取り返しのつかない事になるだろうけどな…」

最悪、死?

零司「まぁ、あいつらならそうなるだろうな…」

>和也「どうした?」

>ソル「おわ!?ななな何でもない///」

>和也「そうか(やはりわからん)」

零司「いい加減に気づいてやれー!!」

怒ってるねぇ…。

>ソル「じゃ、次回も楽しみにしてるぜ♪///」

>和也「それでは」

匿名さんありがとうございましたー♪



▼ キーさん

> 忘れた頃に………のキーです。

>調「久々に使いやがった。」

だから私は………のコサッキーです。

零司「張り合うな」

> あぁ、これは、『しばらく書けなくてすみません』という謝罪が6割と、………………

いえ、別に気にしてませんからね?

>調「…と?……」

>開き直りが94割だね。

全キャラ『多いわ!』

> 調「開き直りの方がでかい……というより全部で10割超えてるというか、100割だ。
これはどちらかというとパーセンテージだからな!?」

調っていつもつっこんでるよねー。

零司「そういうキャラなんだろうな…」

六花「悲しいですね…」

> さて、……感想…

>調「無視するなぁぁぁぁぁぁ。」

確信した。いじられキャラだっ!!!

ハヤテ「そんな失礼なキャラ確定しないで下さい!!」

>椿「↑でソル姉が真っ赤だね。……前も行ったと思うけど、言っちゃった方がいいね。」

>調「本編関係ねぇぇぇぇ。感想をしろぉぉぉぉぉ。」

零司「一切関係ねぇだろうがぁああああああああああああああああああ!!!!!」

かつて無いほど叫んだ!?

>『希望と……』この続きが気になるねぇ。僕だったら…

キーさんだったら…?

>調「キーだったら?」

>やっぱやめた。当たりそうな気がするから。

えー!?当ててくださいよー!

零司「そんな事をいう奴がいるか!」

ここにいる!!

零司「威張ることでもねぇ!」

> 調「ここまできて?…ほかのとこで散々やってるのに?」

えー!?尚更やってください!

零司「アホか!?」

> …………………何故なんだ!?

>調「急にどうした?」

どうしましたー?

>なんか、最近の零司の言うことに妙に共感できてしまう。『チャンスは1回』辺りから。

>調「おいおい。」

あらま。

零司「別にどうでもいいけどな」

実際そんな感じはするけどね。

>六花さんには突っ込まんぞ。突っ込んだら負けだからな。

ええ。突っ込んだら負けです…!

六花「私はどんな存在なんですか…」←(メイド?)

> リン「気配を消すなんて簡単よ。」

>ダメだ。リンってなんなんだ。

零司「簡単だけどさ。お前はなんなんだよ、リン」

>リン「情報屋 兼 教師 兼 『厄災の番人』討伐チーム総司令係」

>調「肩書全部言いやがった。」

零司「肩書き多っ!?」

多すぎるねぇ…。

あ、あと雑談の部分に関しては、正確には繋ぎの話が思いつかないんです。

ハヤテ「繋ぎの話…ですか」

うん…。大体の流れは出来てるんだけどさ…。

六花「その流れを繋ぐ為の話が浮かばないと…」

そうなんです…。

まぁ、一応今回は思いついたけど。

零司「キャラ少ないとそういった場面で苦労するな…」

あと少しでもう少し出るけどね。

>椿「ってことで場居場居。」

>調「…………椿って、何しに来たんだ?」

零司「本当に何しに来たんだろうか…」

ハヤテ「キーさん感想ありがとうございました♪」




というわけで、繋ぎの話の回!

零司「実も蓋もないこと言ってんじゃねぇぞ!」

えー…。

ハヤテ「えー…。じゃないですから…」

しょうがないなぁ…。

零司「呆れたような声で言うな…」

まぁまぁ。では、どうぞ!



――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――



放課後、夕暮れに染まる教室。

ハヤテは一人、窓の外を眺めていた。

「ふぅ…」

溜息を一つつく姿一つ取っても、今のハヤテは絵になる程のかっこよさがあった。

ここに女子生徒一人でもいれば、間違いなく惚れていたであろう。

だが勿論女子生徒がいるはずも無く、教室内にはハヤテ一人しかいない。

なら、何故ハヤテはここにいるのか?

これから女子生徒の一人に告白される訳では無い。

そして、誰かと帰ろうと待っているわけでもない。

ハヤテがここにいる理由。それは―――

「また追い出された…」

単に理事長室を追い出されただけである。





       第二十二話「強くなる為に必要なこと。それは捨てること」





時間は放課後になってからすぐに遡る。

この日もハヤテは、理事長室に放課後すぐに向かっていた。

そして、特に何かが起こるでもなく理事長室でアテネの補佐をし始めた。

それから数分後から、事件は起こった。

たとえば―――



「ハヤテ、そちらの書類を取って」

アテネがハヤテに書類を取るように頼めば、

「えっと、これだね?」

離れていたところで別の書類に目を通していたハヤテが書類を持って立ち上がり、アテネの机に近づく。

その時に、

「いたっ!?」

机の角に足をぶつけて、転ぶ。

そしてそのままの勢いで転がり、アテネの机にぶつかる。

「あっ!」

その衝撃でアテネの机に積まれていた書類の束がばらまかれる。

「うわわわ!す、すぐに拾います!」

それをハヤテは反射的に拾おうとする。

そしてここで、ハヤテの不幸体質が発揮される。

地面に落ちた一枚の紙をハヤテが拾おうと手を伸ばした瞬間、

「えぇ!?ちょ、ちょっと待ってー!!」

何故か開いていた窓から突風が吹き入り、ばらまかれていた書類が一つ残さず風に乗って外へとばらまかれていった。

勿論、ハヤテはそれを探しにいったが、回収できたのは少なかった。



そしてまた別の時は―――



「お嬢様、紅茶です…」

意気消沈しながらハヤテはアテネの机に紅茶の入ったカップを置く。

「ハヤテ、そこまで落ち込まなくいいですわよ…。書類ならもう一度印刷すればいいだけですから」

アテネが落ち込むハヤテにフォローを入れても、ハヤテは落ち込んだまま自分の持ち場へ戻った。

その様子を見ながら、アテネは紅茶を飲む。

(いつもの事といえばいつもの事ですが……そう言うわけには行きませんね…)

どうにか元気付けようと考えていると、すぐにカップは空になった。

「あ、お代わりですね、お嬢様…」

その様子を目ざとく見つけ、ハヤテが紅茶の入ったポットを持って立ち上がる。

そしてまたここでハヤテの不幸体質が発揮された。

二の舞は踏まないように、机を大きく迂回したハヤテだったが、

「うわっ!?」

自分の足に躓き、ハヤテは前のめりになってしまった。

それごときでハヤテが転ぶはずも無く、ハヤテはすぐに体勢を整えたが…。

「あれ?ポットはどこに…」

自分の手に持っていたはずのポットが見当たらず、首を振って探すハヤテ。

そして、すぐにポットは見つかった。

「…………ハヤテ?」

アテネの机の上にポットはあった。

ポットはあった。それは確かだ。しかし、ポットの中身はそこには無く、アテネとアテネの机の上を水浸しにしていた。

「…………えっと……なんでしょうか、お嬢様?」

アテネから漏れる怒気に、震えながらハヤテは答える。

「少し…」

髪から水滴を滴らせ、アテネはハヤテの前に立つ。

そして、握った拳を振り上げ、

「出てなさい!」

その拳でハヤテを理事長室から叩き出した。





       *    *    *





と、いう事でハヤテは今の状況になったのである。

「うぅぅぅぅ…」

そしてハヤテに関しては自己嫌悪に陥っていた。

このような事は珍しい事ではないのだが、今回のように複数回不幸を起こす事は珍しいのだ。

……とはいっても、十回に一回の確率だが。

「どうしよう……お嬢様、怒ってたよね…」

そう言いながら、ハヤテは自分の席で頭を抱える。

ハヤテ自身が不幸になるのは慣れているからもういい。しかし、他の人を巻き込んだことが今のハヤテにダメージを与えていたのだ。

「うぅぅぅぅぅ…!」

『……ぁ!』

「……ん?」

どうにかアテネに謝る方法を考えていると、窓の外から聞いた事のある声が聞こえてきた。

「こんな時間に…?一体誰だろう…?」

時間帯は、もう夜の方が近い時間であり、部活をやっているものでさえ、帰っているであろう時間だ。

首を傾げながら、ハヤテは窓の外を見てみる。

「あれは……東宮さん?」

そこには、何かに竹刀を振っている東宮がいた。

「他に誰かいるのかな…?」

木に隠れてハヤテからは見えないが、東宮が偶に竹刀で叩かれているので誰かいるのだろうとハヤテは解釈した。

「にしても…」窓に手をつき「東宮さん、結構強くなったなぁ…」

先程から何回ほど叩かれても、すぐに起き上がり何者かに向かっていく。しかもその時に突き出される竹刀を数度防いでいた。

そのまま数分見ていると、竹刀で叩かれ東宮は倒れた。

「あ、倒れちゃった…」

ハヤテがそう呟いた瞬間

「―――っ!」

冷たい何かがハヤテの右顔を駆け抜けた。

奇妙なその感覚に、ハヤテが右顔を覆い体を左に傾けた刹那、



何かがハヤテの目の前の窓ガラスを割った。



「なっ!?」

体自体を左に傾けていた為、ハヤテは無事だった。

が、窓ガラスを割ったその物体が問題だった。

ちょうどハヤテの前の机に落ちた物体、それは、

「コイン…」

ゲーセンで見るようなコインだった。

そして、そのコインを撃ち出せる人物はハヤテが知る中で一人しかいない。

『おい、大神!お前いきなり何をやってるんだよ!』

『いや、視線感じたもんで…』

『お前は視線感じたら窓ガラスを割るような何かするのか!?』

『いや、悪かったからそこまで怒鳴らないでくんね?おーい、そこにいた奴大丈夫かー?』

「…………」

窓の外から聞こえてきた東宮の零司を怒る声と、零司の暢気な声にハヤテは呆れ、零司の元に向かうことにした。

行く途中で六花に窓ガラスを直してもらうように電話しながら。





       *    *    *





「あれ?ハヤテ?」

零司が現れたハヤテに言った言葉はそれだった。

その言葉にハヤテの額に青筋が浮かんだ。

「何でお前ここにいるわけ?」

「……文句を言いに来たんですよ?」

「文句?」

ハヤテの言う文句に零司は覚えが無いらしく、首を傾げる。

その行動にさらにハヤテの額に青筋が立つ。

「お、おい大神…」

それを東宮は察知したのか、零司の肩を叩くが、零司は全くそんな事には気づいていない様子だった。

「文句文句…」

「わからないようですねぇ…!」

「うん、わからん」

その言葉にとうとうハヤテも我慢の限界が訪れ、キレた。

「あんたを……怒りに来たんですよぉー!!」

声と共に拳を零司に向けて放つ。

「何故にっ!?」

だが、その拳は驚きながらも身体能力が健在な零司に止められる。

「何で俺はいきなり殴られなきゃいけないわけ!?」

「さっきの事をもう零司さんは忘れたんですかぁ!?」

「……あ」

さっきの事と言う言葉で思い出したのか、零司の表情がポカンとしたものになる。

「やっと思い出しましたか…!」

「いやなんで思い出したのに力は収まらない訳!?」

「何ででしょうねぇ…!」

一発殴りたいハヤテと、殴られたくは無い零司の押し合いはその後数分続き、結果は両方が疲れた為にドローとなった。

「はぁ……はぁ…」

「はぁ…。…それで……零司さんたちは一体こんな時間に何をしてたんですか…」

「えっと…?……なんでだっけ?」

「おい!?」

ど忘れした零司に代わって説明してくれた東宮によると、東宮の剣道部の練習後に零司と打ち合っていたそうであった。

「へー…。お二人はいつもこんな事を?」

「いや、いつもはしてないな」

「ああ。大神の方も執事としての仕事があるからな。だから、週に二、三回って所だな」

「そうそう。週に二、三回俺が一方的に東宮をボコボコにしてるだけだって」

「次は絶対に一本取ってやるからな!」

「十年早いっつの」

……打ち合いといっても零司が一方的に打っているだけのようだが、二人がやっている事はハヤテに伝わってきた。

「それで、何で零司さんは僕に向かってコインを撃ってきたのか理由を教えてくれますか?」

「それは簡単な理由なんだがな…。俺が単にいつも感じない視線を感じなかったから、つい癖で撃っちまっただけだ♪」

『癖!?』

「戦争じゃ必須のスキルだったからな…」

「戦争!?零司さんって一体何をしてきたんですか!?」

「え?そりゃぁ…」指を一本自分の目の前に立たせ「秘密に決まってるっての♪」

『えー…』

幾らなんでも納得できない声と共にハヤテと東宮は同じ意味の視線を送る。

「いや、そんな恨みがましい目で見られても…」

その視線に流石の零司もたじろいだ。

「別に教えてくれたっていいじゃないか、大神」

「いや、教えるほどの内容でもないからな!?」

「十分気になってますから…」

「あーもうわかったよ!」

二人の視線に耐えられなかったのか、零司は突然叫んだ。

「教えてやるよ、めんどくせえ!」

「本当か!」

「ああ、本当だよ」ただし、と言って零司は二人に指をつきつけ「お前ら二人のどっちかが俺に一本でも取ったらな!」

『なっ!?』

その条件は二人にとって鬼門とも言える条件だった。

東宮はともかく、ハヤテですら一切相手になるなずのない零司から一本を取るなんて不可能に近い。

だがしかし―――

「……やりますよ、その条件で!」

「あぁ、やってやる!」

好奇心のほうが勝った二人はその条件で了承してしまった。

「ほう?後悔するなよ?」

「後悔するのはお前だ、大神!」

「絶対に一本取ってみせますからね、零司さん!!」

零司はその言葉に答えることなく、ただニヤリと笑った。



「よっし、準備はいいかー?」

「いいですよー」

それから数分後、零司とハヤテ達二人は五メートルほどの距離で立っていた。

「んじゃ、スタートー」

零司がそう言うと共に消える。

ハヤテはその行動はもう見慣れたもので慌てることなく、周りを警戒する。

対して東宮は少し慌てたが、すぐにハヤテと同じように周りを警戒し始める。

その様子を、零司は少し離れた木の上で見ていた。

(ま、流石にこの方法があの二人に通用するとは思ってねぇよ…)

溜息をつきながら、零司は袖の中から出したコインを握る。

(二人には悪いんだが…)唇を舌で舐め(遊ばしてもらうか♪)

そう思い、零司は枝を蹴って飛び出した。

「っ!来た!」

ハヤテは真正面から現れた零司に対して油断無く構える。

距離は五メートルほど離れている。それ故に、攻撃は来ないと思っていた。

そしてその決め付けが命取りになるとも知らず。

「さぁ、行こうか二人ともぉ!」

暗闇の中叫んだ零司の元で一瞬だけ、光が光った。

その瞬間―――音も無く、東宮が後ろにのぞけった。

「―――――!」

突然のことに、東宮は声も出せずにそのまま倒れた。

「東宮さん!」

「余所見とは余裕だなぁ、ハヤテェ!」

「っ!」

ハヤテが東宮の方を向いた一瞬で、零司はハヤテの目の前にいた。

「ほらほらほらぁ!」

闇の中、風を切る音が三度響く。

「つっ…!」

頭、右腕、左足に一発ずつ零司の攻撃が当たる。

「……はぁっ!」

だが、それくらいの痛み。ハヤテは軽度の痛みを我慢し、反撃の一撃を放つ。

しかし、右足を狙ったその一撃は零司の跳躍によってかわされた。

「よっとぉ!」

さらにその際、零司の右足による蹴りがハヤテに向かってくる。

「くっ!」

その一撃を、ハヤテは右腕でどうにか防御する。

(重っ…!)

だがその一撃は思いのほか重く、ハヤテは横に少し吹き飛ばされた。

すぐに地面を足でこすり、勢いを止める。

吹き飛ばされた時にできた一メートルほどの距離。それを詰められる前に、ハヤテは体勢を立て直そうとする。

が、零司がそんな事を許すわけが無い。

「しっ!」

零司がまだ空中に浮かんでいる途中で、再び一瞬だけ光が光った。

それをハヤテが認識した刹那、ハヤテの眉間に痛みが走った。

「がっ…!?」

(一体……何が!?)

その衝撃に、ハヤテが立て直した体勢が軽く崩れる。

「よいっと!」

ハヤテが体勢を崩している最中に、零司は両手で地面に着地し、着地した両手で空中に再び跳んだ。

跳んだ方向は今体勢を直したばっかのハヤテの方向であり、ハヤテは零司を迎え撃とうと突きの構えを取る。

「はっ!いいねいいねぇ!」

ハヤテの取った構えに零司は歓喜の叫びを発し、空中で右腕を少し後ろにずらし突きのような構えを取る。

そして、距離が縮まっていき最初に動いたのは―――

「…はぁっ!」

ハヤテだった。

後手に回っては勝ち目が無いと悟り、先手必勝に走った。

そしてその行動は当たりであり、現に零司も目を見開いて迫る竹刀を見ていた。

それを見てハヤテが「勝った」と思ったが―――



ハヤテの竹刀が零司に当たることは無く、零司の竹刀がハヤテの胸に当たっていた。



「がはっ!?」

吹き飛ばされ、木に叩きつけられ、肺の中の空気が全て吐き出される。

「ごほっごほっ!」

「いやー、あぶねあっぶねー」

咳き込むハヤテと、全く危なくなさそうな声音の零司。

そんな零司の背後に、最初に倒れた東宮が息を殺し近づく。

「にしても、予想外だったなー。ま、まだまだ甘いけどな!」

零司はハヤテに向かって話しかけていて、背後の東宮に気づいた様子はない。

(今だ!)

近づいた東宮が竹刀を振り上げた、その時、

「だから甘いつってんだろ!」

零司が東宮の方を振り向いた。

「なっ!」

「ほら、スピード遅くなってんぞ!」

予想外の出来事に、東宮の竹刀のスピードが遅くなってしまい、零司はそれを左手で悠々と弾いた。

「ほっと!」

そして、右手で東宮の顎を叩き、後ろの方へ吹き飛ばす。

「うぐ…」

吹き飛ばされた先で東宮は倒れて、動かなくなった。恐らく気絶したのだろう。

「さってさて、ハヤテも動けるよなー?」

零司は後ろに向かって言葉を投げる。

返事は無く、代わりにハヤテの立ち上がるような気配だけが零司に伝わってくる。

「さあ来いよ。俺から一本取るんだろ?」

両手を広げ、隙だらけのように零司は振舞うが、その筋の人間から見たらわかるように隙は一切無かった。

「…………」

それを気にせず、ハヤテは竹刀を握り、足に力を込める。

(ん…?ハヤテの様子がいつもと違うな…)

ハヤテの様子に、零司は眉をひそめ警戒し始める。

「疾風の…」

(ハヤテ?自分の名前?)

「ごとく!」

「なっ!」

先日ハヤテが編み出した技である『疾風のごとく』。その今まで見たことの無い加速に、零司は対処すら出来なく、今度こそ、一本取ったとハヤテは確信した。

だが―――

「我流剣術、瞬閃!」

そのハヤテの確信を破り、ハヤテのスピードよりも速い何かがハヤテを吹き飛ばした。

「がぁっ…!」

先程も感じた痛みと同じだが、先程よりも強い痛みを受けながら、ハヤテは地面を転がっていく。

「ったく……二回も使うとは思わなかったなぁ、おい…」

それが、意識を手放す前に聞こえた最後の言葉だった。



「起きろっての」

「わぷっ!?」

顔に突如伝わってきた冷たさに、ハヤテの眠っていた意識は急激に覚醒した。

「もいっちょー」

その言葉と共に再び冷たさがハヤテを襲う。

「つめたっ!」

「お、起きたか?」

「ばっちりですよ!」

そっかー。と興味ないように零司は呟き、手に持っていたバケツを遠くへと投げ捨てた。

「えっと…」

それを見ている間に、ハヤテは今の状況を把握しようと周りを見渡す。

光一筋も無く周りは暗闇に包まれており、一寸先すら見えない。

「えっと…?」

「あ、お前が気絶してから結構時間経ってるからな?」

「えぇ!?」

零司の言葉に、ハヤテは慌てて携帯を開く。

待ち受けの時計に映っている時間は、八時三十二分。

ハヤテが教室で黄昏ていた時間は、四時五十三分。

つまり―――大量に時間が経ってしまっているのだ。戻るべき時間すら大幅に過ぎて。

「…………」

その事に気づいてしまったハヤテは、大量に冷や汗を流し始めた。

「おい、ハヤテ…。汗凄いぞ…?」

零司の指摘も無視して、ハヤテは携帯の中にある六花のアドレスを探し出し、すぐさま電話をかけた。

六花が電話に出るまでのたった数回のコール音が、ハヤテにとっては恐ろしいものに聞こえた。

『はい、もしも―――』

「あ、六花さんですか!?」

『あら?ハヤテ君?どうかし―――』

「すいません、今まで気絶してて!それでまだ理事長室にいますか!?」

『いいえ、もうお屋敷ですけど…。ところでハヤ―――』

「わぁあああ!!すいません、今すぐ帰りますから!」

『いい加減に話を聞きなさい!!』

「すいません!」

電話越しの六花の怒声に、ハヤテは咄嗟にその場で正座した。

『はぁ…。ひとまず全部わかってますから、そこにいる大神君から聞いて、学んで帰ってきてください』

「へ?学ぶ?」

何を?と言う質問をハヤテがするよりも早く、電話は切れた。

「ん?話し終わった?」

「え、えぇ。一応…」

「よし、じゃぁまずは座れ。話はそこからだ」

納得できないながらも、零司に従ってハヤテは零司の前に座る。

「ん。じゃ、まずは質問形式で行こうか?」

「じゃぁ……東宮さんは?」

「あぁ、東宮ならさっき来た野々原さんに渡したが?」

「じゃぁ……さっきまでの僕の状況は?」

「俺に気絶させられた」

簡単な答えだった。

「えっと……質問はこれくらいでしょうか」

「オッケ。んじゃ、次は俺が説明する番だな」

そう言うと、零司はハヤテが起きるまでの経緯をし始めた。

まずは、零司の一撃でハヤテが気絶してしまったこと。

そしてその気絶が長そうだったので、先に六花に説明しておいたこと。

最後に、その際に六花からある事を頼まれたこと。

「ある事…?」

「そ、ある事。それを今から説明するから、よく聞いとけよー」

「はぁ…」

納得半分といったハヤテが頷くのを見て、零司も頷き、零司も話し始めた。



「ハヤテー、お前弱くなったろ。転校初日よりも」



「……へ?」

いきなり言われたその言葉をハヤテはすぐには理解できなかった。いや、理解しようとしなかった。

だが、嫌でもその言葉はすぐにハヤテの頭は理解し、怒りが湧き上がってきた。

「別に怒ってもいいけどさ……俺は事実言ってるだけだから八つ当たりになるだけだぞ?」

「そうだとしても……弱くなったってなんですか!」

「実際弱くなったからなー、お前」

だってさ、と一呼吸置いて零司は続ける。

「お前の攻撃って全部が全部何も篭ってないんだよ」

「何が篭ってないって言うんですか…!」

「まー、平たく言うならば……覚悟だな」

「覚悟…」

覚悟。その言葉はハヤテには縁遠い言葉の筈だった。

だけど―――

「今のお前にはその覚悟が無い。だからこそ、弱くなったって俺は言ってるんだ」

今のハヤテには、身近な言葉になっている。そう、ハヤテは直感で悟った。

「覚悟の無い奴なんて、そこらへんにいる奴と同じだ。お前はそれでいいのか?」

いいはずがない。その言葉すら、ハヤテには言えない。

「いいはずが無いだろ?なのに、今のお前はどうだ。以前あった気構えはなくなって、しかも一時は心が折れてた。それでお前は天皇州を守れるのか?」

守れるはずがない。それは今のハヤテには言えない。

「結局、お前には覚悟が足らないんだよ」

吐き捨てるように、零司はそう締めくくる。

その言葉を聞き、「それなら……覚悟ってなんですか…」ハヤテは拳を握り締め「覚悟って何ですか!」何かを吐き出すように叫んだ。

「……それを知ってどうするわけ?」

叫ぶハヤテを冷ややかに見つめる零司。

「どうするもこうするも…」

「―――覚悟ってのは、人から聞いたところでどうにかなるわけじゃねぇぞ」

ハヤテの言葉を遮るように、零司は続ける。

「覚悟ってのは、人から聞いてそれで出来るものじゃねぇ。自分で決めることだ。それでも訊く訳?」

その零司の質問にはハヤテは無言で答えた。

それを零司は肯定と取ったのか溜息をつき、話し始めた。

「俺達……誰かを守る必要がある奴らに必要な覚悟ってのは…」まぁ、俺の考えなんだがと前置き「誰かの意味を否定する事なんじゃねぇの?」

「ひ……てい…?」

そ、否定。と零司は興味がないように続ける。

「別に誰かを傷つける覚悟ってのも別に不正解ってわけじゃねぇ。むしろそっちの方が正解に近いのかも知れねぇ。けどな?」指をハヤテに突きつけ「お前みたいなタイプはそんな覚悟が出来るか?」

「で、出来ますよ!!」

零司の言葉にハヤテは叫ぶ。

「ふーん…」

そのハヤテの反応に、零司は見定めるようにハヤテを見つめる。

「はぁ…」そして、一つのため息の後「瞬閃」三度ハヤテを何かで吹き飛ばした。

「ぐっ…!?」

その吹き飛ばされたハヤテは、まともに反応すら出来ず木にぶち当たる。

「がはっ…!」

背中を強かに打ち、呼吸が乱れる。

「ダーメだ、こりゃ」

そんなハヤテを見て、零司は頭を掻きながらハヤテの目の前に立つ。

「わかったか、ハヤテ?」

「何……が……ですか…!」

痛む肺を無理矢理動かしながら、ハヤテは何とかそれだけの言葉を搾り出す。

「何がってお前……俺とお前の違いだけど?」

「ちが……い…?」

「そ、違い。俺とお前の決定的な違い」

それは?とハヤテが口に出そうとする前に、零司は答える。

「躊躇があるか無いかの違い」

「…っ」

決定的な言葉に、ハヤテは唇を強く噛む。

「ま、ぶっちゃけるとさ?ハヤテとかってさ、俺から見たら敵なんだよね。主に恵まれてるとかの部分で。だから、俺は今躊躇なく攻撃したわけ。今までのむかつきを込めて」でもさ、と零司は呟く「お前は、躊躇がある。それも、あの黒ローブに関してもだ」

「…………」

思い当たる節があるのか、ハヤテは俯き黙る。

「話聞く限りじゃ、お前は決定的な部分で甘いんだよ。教会の時だって、あの技でどこか斬っとけばあの後の悲劇は一切起こらなかった筈だ」

「くっ…」

あの教会の襲撃の時……疾風のごとくで体当たりするのではなく、手に持った刀でどこかを斬っていたのなら、あの後の悲劇が起こることはなかっただろう。

だが、ハヤテはそれをせずにただ体当たりをしただけだった。

それは単に、ハヤテが優しかった……いや、優しすぎるからであった。

「恐らくお前は、当たるとどこかで確信した瞬間……傷つけたくないって気持ちが出てきたはずだ」

零司の言う通り、ハヤテには、敵である黒ローブを傷つけたくないという気持ちがあった。

「そこら辺から考えると、お前は甘いんだよ。甘すぎるんだよ、誰にでもな。そんな奴が、誰かを傷つけられるわけねぇんだよ!」

「っ!」

「だから…!」

零司は俯いているハヤテの襟を掴み、自分の目の高さに無理矢理合わせる。

「まだ誰かを守りたいなら、その甘さを捨てろ!それが出来ないのなら、せめて、明確な『敵』にはその甘さを持つな!それすら出来ないなら、今すぐ執事をやめろ!!」

その叫びの後、しばらく静寂が続いた。

「いいかハヤテ…」

その静寂を破り、零司はハヤテに向かって話す。

「次に黒ローブと対峙したなら、甘えは捨てろ…!それが出来なきゃ、今度こそお前は何もかも失う…!どっちを捨てるかは、お前が決めろ!」

そう叫ぶと、零司はハヤテの襟を放した。

「ごほっ…」

「……じゃな」

咳き込むハヤテを一瞥すると、零司は背を向け暗闇へと消えていった。





       *    *    *





(甘えは捨てろ……か…)

屋敷に帰ったハヤテは、先程零司に言われた事を頭の中で反芻していた。

「簡単に……出来る事じゃないですよ…」

甘えを捨てろ。それは、極端に言えば今までの自分を否定しろと言っているようなものだ。

それでも―――

「やらなきゃ、いけないんですよね…」

アテネを守る為なら、やるしか無いのかも知れない。

「はぁ…」

「あら、ハヤテ君。もう帰ってたんですか?」

「六花さん…」

溜息をついていると、突如六花がハヤテの目の前にいた。

「……その様子だと、随分と言われたようですね」

「えぇ、まぁ…」

「ふむ…。それなら、今日はもう仕事せずに休んでください♪」

「じゃあ、お言葉に甘えます…」

六花に後の仕事を任せるのは、ハヤテとしては心苦しかったが、疲れていたのでその言葉に甘えることにした。

「それじゃ、お風呂入らせてもらいますね…」

そう言うと、ハヤテは返事も聞かずに風呂場へと走り出した。

「えっ!?ハヤテ君、待ってください!!」

六花が止めようと声をかけるが、その時にはハヤテは視界にすらいなかった。

「今、アテネ様が入っているんですが…」

その声は、誰にも届かずに空しく廊下に響くのだった。



その数分後、一つの悲鳴が屋敷中に響いた。



――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――



はいっ、第二十二話終わり。

というわけで、今回はきっかけ回でしたー。

零司「きっかけって……あれで?」

うん。いずれね。

ハヤテ「はぁ…」

ま、嫌でも捨ててもらうけどね♪

ハヤテ「ちょっと!?」

零司「まぁ……持ってて良い事なんてないしな…」

そだよ。では、ここら辺で!

ハヤテ「それでは♪」
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Re: 誰がため、何のため 8/10更新 ( No.49 )
日時: 2012/08/10 20:49
名前: 匿名

どうも〜♪匿名っす♪
和也「和也だ」
感想に来ました♪
和也「・・・なぜ二人?」
ふっふっふ。気づいたんだよね俺。
和也「何をだ?」
感想の場で一人増えるか増えないかで書く量が全然違うことに!
和也「・・・・・・・・」
二人の時と三人の時とで全然違うんだよ量!マジで!
和也「要するに、めんどくさかった、と」
・・・・・・・感想です♪
和也「(ギャグ狙い何だが本音何だが・・・両方か)」
ハヤテは不幸だね♪いつもの事だけど♪
和也「ああ、いつもの事だ」
そして零司は癖でコイン撃っちゃうんだね♪そこら辺どうよ、毎夜戦闘の人。
和也「いいんじゃないか。俺が口出す事じゃない」
ふと思ったんだけど、和也と零司ってどっちが強いのかね?
和也「大神」
めんどくさがってるねー!・・・実際和也って肉体のスペックはハヤテと同等だからね。気配察知も気配を消すことも超凄いし。
和也「やる気出せばな」
ハヤテと東宮は零司にボコられると。
和也「ハヤテにアドバイスしとくと、戦闘中はどんな状況でも勝ちを確信しない方がいい。わざと攻撃を誘ってくる敵の戦略の時に反応出来ないし、零司みたいなかなり高い身体能力の持ち主なら寸前でかわされてカウンターの隙になる」
ハヤテと零司の初めての勝負を思い出した。剣道場での。あの時のハヤテは凄かったな。零司の攻撃全部に反応してんの。
和也「大神は手加減してたが・・・今回はどうだろうな?ハヤテが弱くなってるというのも。あと、零司の言うことは個人的には同意だな」
たしかにお前は常にギリギリを渡ってるからな。輝雪とソルナも。相手がどんなに弱くても殺し合いじゃ絶対はないしね。
和也「そうだな。そして屋敷に帰ったらハヤテは天皇州の風呂に対面」
最後まで締まらないなー!
和也「ま、次回も頑張れよ」
きっかけという事はこれを機に何かがハヤテの中で変わるということでしょうか。そういう部分も合わせてこれからも楽しみです♪匿名でした♪
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Re: 誰がため、何のため 8/10更新 ( No.50 )
日時: 2012/08/19 17:44
名前: コサッキー

<レス返し>

▼ 匿名さん

>どうも〜♪匿名っす♪

>和也「和也だ」

>感想に来ました♪

感想ありがとうございますー♪

>和也「・・・なぜ二人?」

零司「輝雪とかソルナがいないのは何か新鮮だな」

ハヤテ「そうですね〜」

>ふっふっふ。気づいたんだよね俺。

>和也「何をだ?」

>感想の場で一人増えるか増えないかで書く量が全然違うことに!

確かに結構人が多いと量が凄いことになる…!

零司「だろうなぁ…」

>和也「・・・・・・・・」

>二人の時と三人の時とで全然違うんだよ量!マジで!

私は三人以上がデフォかなぁ…?

零司「まぁ、なぁ…」

>和也「要するに、めんどくさかった、と」

>・・・・・・・感想です♪

>和也「(ギャグ狙い何だが本音何だが・・・両方か)」

零司「……ちょっくら斬り捨ててくるわ」

待てーい!!

零司「めんどくさがれちゃ、しょうがないだろ?」

ハヤテ「それだから斬っていいなんて道理はないですけど!?」

零司「えー…。わかったよ、六花さんにお願いするよ…」

もっと事態は深刻になるよ!!

>ハヤテは不幸だね♪いつもの事だけど♪

>和也「ああ、いつもの事だ」

いつもの事ですよね♪

零司「いつもの事だな」

アテネ「いつもの事ですわね」

六花「いつもの事ですね♪」

ハヤテ「」←(あまりの認識の酷さに閉口)

>そして零司は癖でコイン撃っちゃうんだね♪そこら辺どうよ、毎夜戦闘の人。

>和也「いいんじゃないか。俺が口出す事じゃない」

零司の癖って特殊だよね…。

零司「うっせぇ。というか、染み込んだ習慣なだけだがな」

ハヤテ「それもどうなんでしょうか…」

というか、零司は誰に何を言われようが自分の何かを変えることってあんま無いんですよねー…。

零司「自分の意見を曲げるのはめんどいからな」

>ふと思ったんだけど、和也と零司ってどっちが強いのかね?

>和也「大神」

ハヤテ「和也さん、絶対にめんどくさがってますよね!?」

そうだね…。……でも実際、零司の方が強いと思うよ?

アテネ「それは何でですの?」

理由は簡単で、単に零司が本気を出してないだけなんだよねー。

零司「いや、本気出す意味すら見当たらないし」

それって、弱いって遠まわしに言ってるよね…。

零司「実際そう俺は感じるがな」

ハヤテ「うぐ…」

というか、零司が本気出すと一時間で都道府県のどっかは無くなるよ?

ハヤテ「どんな強さですか!?」

>めんどくさがってるねー!・・・実際和也って肉体のスペックはハヤテと同等だからね。気配察知も気配を消すことも超凄いし。

>和也「やる気出せばな」

零司「いやー、俺の苦手分野―…」

まぁ、零司は肉体のスペックがハヤテ以上だけど…。

零司「ハヤテのほうがスピードは速いんだよなぁ…」

どちらかと言えば、零司はテクニックって感じだからね。

零司「正確にはテクニックのパワー寄りって感じだがな」

ハヤテ「道理であんなに一撃が重かったんですか…」

>ハヤテと東宮は零司にボコられると。

ハヤテが十人いてやっと零司に勝てるといった計算ですから…。

ハヤテ「だから、どんな強さですか!?」

>和也「ハヤテにアドバイスしとくと、戦闘中はどんな状況でも勝ちを確信しない方がいい。わざと攻撃を誘ってくる敵の戦略の時に反応出来ないし、零司みたいなかなり高い身体能力の持ち主なら寸前でかわされてカウンターの隙になる」

ハヤテ「肝に銘じときます…」

零司「ま、一直線な攻撃だったから対処が簡単だったんだがな」

後は瞬閃のおかげだよねー。

零司「まぁな」

>ハヤテと零司の初めての勝負を思い出した。剣道場での。あの時のハヤテは凄かったな。零司の攻撃全部に反応してんの。

>和也「大神は手加減してたが・・・今回はどうだろうな?ハヤテが弱くなってるというのも。あと、零司の言うことは個人的には同意だな」

ハヤテのあの行動には理由があるんですが……まぁ、それは追々。

ハヤテ「はぁ…」

零司「因みに今回の方が少し手加減してないからな」

まぁ、二対一だしねー。

零司「まぁなー」

>たしかにお前は常にギリギリを渡ってるからな。輝雪とソルナも。相手がどんなに弱くても殺し合いじゃ絶対はないしね。

零司「ま、手加減いらずの勝負なんて俺にはあんま無いけどな」

手加減しなかったら、死ぬからね相手…。

ハヤテ「えー…」

零司「まぁ、ハヤテの甘さは人間だからってのもあるのかもな。異形とか人間じゃないものだったら普通に甘えは捨てられると思うぞ」

>和也「そうだな。そして屋敷に帰ったらハヤテは天皇州の風呂に対面」

>最後まで締まらないなー!

シリアスで締めたくは無い!

ハヤテ「だからって、あんな終わり方は無いでしょう!?///」

アテネ「うぅ…///」

直接描写してないだけいいじゃん…。

ハヤテ「そう言う問題じゃないです!!///」

>和也「ま、次回も頑張れよ」

>きっかけという事はこれを機に何かがハヤテの中で変わるということでしょうか。そういう部分も合わせてこれからも楽しみです♪匿名でした♪

きっかけがあるので、ハヤテも色々な意味で変わっていきますよー。

ハヤテ「色々な意味ってなんですか!?」

それは……零司ならわかってくれると思う。

零司「……ちょっと待て、もしかしたらアレか?」

今は明言しないでね?

零司「マジかよ…」

六花「匿名さん感想ありがとうございました♪」




そして二十三話目!

さて、いい加減に大事な場面が近づいてきたぞ。

零司「レス返しでああいう事を言うからな…」

ハヤテ「え?何かあるんですか?」

今のハヤテにはわからない場面。

ハヤテ「はぁ…?」

まぁ、ここで話してもしょうがない!

では、どうぞ!



――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――



前回の話の翌日。

天皇州家のある一室にて、ハヤテは何故か正座していた。

「えーっと…?」

その様子を見た六花は困惑する。

まぁ、六花が入ってきた瞬間からこうだったのでしょうがないが。

「一応訊きますけど……ハヤテ君?何で正座してるんですか?」

「いや、今から怒られるかと思いまして…」

「はぁ…」

何となくその言葉を予想していたのか、六花は溜息をつく。

「違いますから…」

「じゃあ、なんでしょうか…」

「ひとまず正座を崩してください」

六花に言われ、ハヤテは正座を崩す。

「まず、ハヤテ君。昨日アテネ様の裸を見ましたね?」

「あぅ…」

六花の言葉で昨日のことを思い出し、ハヤテの顔が一瞬で真っ赤に染まる。

「その反応から察しますね。そしてまぁ……見られたアテネ様が当分ハヤテ君の顔を見れないでしょうから…」

「から…?」

「当分の間、どこか別の所で泊まってもらえます?」





       第二十三話「ハヤテ放浪、菊花監視」





「まさか追い出されるとは…」

人がひしめく中、ハヤテはそうポツリと呟く。

事の顛末はこうだ。

六花曰く、ハヤテがいるとアテネの精神が大変なことになるそうなので、数日間ハヤテをアテネから遠ざけて、どうにかしようという事らしい。

大体期間は三日ほどで済むらしく、ハヤテもそれを了承したのだが…。

「それでも……一体幾ら渡すんですか、六花さんは…」

コートの中にある二百万円を思い出し、ひっそりとハヤテは溜息をつく。

「ま、まぁ、何とかなるか♪」

いかにもな楽観的な思考で結論を出し、ハヤテは目的も無くただぶらぶらと歩き出す。





そんなハヤテの様子を、人がひしめく道路に隣接するビルの上から見下ろす女性が一人。

「…………はぁ」

腰まで伸びた燃え盛る炎のような紅い髪を風になびかせ、赤い瞳で歩き始めたハヤテを女性は見て、溜息を一つ。

「なーんで、屋敷から出るのかしらね…」

呆れたというように呟き、女性は口に含んでいた棒を取り出す。

「食べ終わっちゃったか……いや、舐め終わっただけど」

自分で言った言葉に突っ込みながら、女性は持っていた棒を消滅させ、ポケットから新たな飴を取り出して口に含む。

「ま、任務だししょうがないか」

というか、私しか出来る子いなかったし…。などと呟きながら、飴を出したポケットとは違うポケットから眼鏡を取り出してかけ、手首に巻いていたヘアゴムで紙を束ねてポニーテールにする。

「蓑実早菊花の変装バージョン……ってことでいいかしらね」

そう呟いた時には、髪と瞳は黒色に変わっており、女性はハヤテの隣の席の『蓑実早菊花』へと変わっていた。

「さて……追いましょうか」





       *    *    *





「にしても……やること無いな…」

十数分後、ハヤテは公園のベンチに座ってそう呟く。

あれからずっと歩いていたが、誰かに会うことも無く、ただぶらぶらしただけだった。

「本当……どうしようかなぁ…」

ボソッと呟き、ハヤテは空を見上げる。

「何が?」

「うわぁ!?」

見上げた直後に突然声をかけられ、ハヤテは椅子から転げ落ちた。

「……何やってんだか」

「れ、零司さんがいきなり声をかけるからですよ…」

あっそ。とハヤテに声をかけた人物―――零司は呟く。

「んで?何で私服でこんなところにいるわけ?」

「それは…」

こうなった経緯をハヤテは説明する。

「ふむ…」その経緯を聞いた零司は顎に手を当て「大変だな」

「物凄くあっさりとした感想!?」

「いや、俺にはそうとしか言えん」

「確かにそうですけど!?」

「どうしろってんだよ…」

「えっと…?」

「お前が困るな!!」

ともかくだ、と零司は話の路線を変えるように言い、

「ひとまずお前はホテルにすぐに入って数日間じっとしてろ」

「えー…」

「えー…。じゃねえよ。そうじゃないと、金が消える」

「消え………………ないと…………思いたいです…」

「自覚あんじゃねえか…」

段々小さくなっていくハヤテの反論に、零司も呆れた声を出す。

「まぁ、とっととホテル行っとけ」

「そうします…」

「じゃな」

そう言うと、零司は公園から出て行った。

「僕もさっさと行こう…」

それを見送ると、ハヤテも公園を後にするべく歩き始める。

「おっと…」

が、その瞬間、老人とぶつかってしまう。

「あ、すいません」

「いやいや。いいんじゃよ。それより…」

老人は周りをキョロキョロし始める。

「あの、どうかしたんですか?」

「いや、持ってた本がどっか行ってしまってのう…」

「本…?」

老人の言葉にハヤテも周りを探し始める。

「あ!」

そして、公園から出た道路に本が転がっているのをハヤテは見つける。

ハヤテの性格からしてそれを取りにいくのは当然である。

ハヤテが取りに行こうと足を一歩踏み出す。



その瞬間、ハヤテを囲うように円形に地面が爆ぜた。



「っ!?」

突如起こった不可解な現象に、ハヤテの足が止まる。

(いきなり何!?)

自分を囲うように出来た円。それはまるでハヤテのいるべき場所を示しているかのようにハヤテには思えた。

そんな事を考えつつも、ハヤテは本を取りにいくべく、再び本のある場所まで歩いていこうとする。

だが、再び一歩を踏み出し公園を出て、本を手に取り公園へと戻ろうと振り返る。

瞬間、トラックが数メートルの位置まで迫っていた。

「―――え?」

その事がハヤテには一切理解できなかった。

いきなり目の前に現れたトラック。その事に脳の処理が追いつかなかった。

そして脳の理解が追いつき、轢かれると認識した瞬間―――ハヤテは吹き飛ばされていた。





「ったく……周りくらい見なさいっての」

電柱の上で蓑実早菊花はそう呟く。

覗いていたスコープから目を外し、肉眼で遠くで尻餅をついているハヤテを見る。

「ま、無事なら方法は問わなくていいって指示だし……べつにいいよね?」

誰かに聞こえるわけ無い独り言を呟きながら、手に持っているライフルを見やる。

「……『クローズ』」

その言葉を呟くと同時に、手に持っていたライフルが消える。

「はぁ……疲れた…」

そう呟くと、菊花は先程の事を思い出した。



「…………」

数分前、菊花は今と同じ電柱の上からハヤテをスコープ越しに監視していた。

今、スコープ越しに見ているハヤテは道路の本を発見したようで、そちらに意識を向けたところだった。

「…………」

菊花は無言でハヤテからスコープを外し、本がある道路の先を見る。

「……ちっ」

その先に見えたものに対して菊花は舌打ちを一つ。

(居眠り運転のトラックとか洒落になんないわよ……しかも絶対に不幸な綾崎の事だから絶対に撥ねられるわね…)

そう判断した菊花は、再びスコープをハヤテへと戻す。

(これで止まってくれれば御の字よ…っ!)

そしてハヤテが一歩を踏み出した瞬間、引き金を引いた。たった一回ではなく、およそ十回の回数を一秒足らずで。

(着弾確認っと…。これで止まらなかったら……その時はその時ね)

楽観的ともとれる結論を出し、スコープから目を外す。

(トラックは……止まるわけないか。というか、むしろスピード速くなってるし)

「はぁ…」

これから起こる事を容易に予測できた事に菊花は溜息を一つつく。

(ま、やるしかないんだけどさ…。……あいつに会ったら色々奢ってもらお)

決意を固め、三度スコープを覗き込み照準をハヤテに合わせる。

その時のハヤテはトラックの前に躍り出ていた。

(ほんっとに不幸よねっ!)

そう内心で文句を言いながら引き金を絞る。

放たれた銃弾は照準通り飛んでいく。

(もう一発よっ!)

それがハヤテに当たる前に照準を公園内の時計のポールに変え、引き金を引く。この間実に一秒未満の出来事。

そして先に撃った銃弾はハヤテの右肩に当たり、ハヤテは反時計回りに半回転させられる。

そして直後、二発目の銃弾がポールに当たり軌道を変え、半回転したハヤテの後頭部に当たり、ハヤテは向かい側の道路へと吹き飛ばされた。

「……ま、助けた訳だしこれでいいわよね?」



「にしても疲れた…」

ポケットから出した飴を口に含みながら、遠くのハヤテを見る。

そのハヤテは先程の老人に本を渡しているところだった。

「……まぁ、いっか」

そう言うと、菊花は電柱から飛び降りた。





       *    *    *





「いたた…」

公園で続けざまに不可解な出来事が起こった数十分後、ハヤテは住宅街を歩いていた。

(にしても……何でいきなり後頭部に衝撃が…?)

痛む後頭部をさすりながらハヤテは考える。

といっても、心当たりがある様な人物がいるわけでもない。

(……いや、零司さんなら出来る気がする…)

いや、一人だけいた。

だが(でも、零司さんとは違う出口での事だったし…。それに、零司さんがいなくなった後の事だったし…)

という事は、零司は除外される。

そうした場合、ハヤテの知り合いにあんな不可解な事が出来る人物はいない。

「うーん…」

それが納得できず、ハヤテは悩みながら歩き続ける。

すると突如、

「おらおら!病気の娘の治療費なんて知らねーんだよ!とっとと金返しな!」

という、叫び声が聞こえてきた。

その声が聞こえてきた場所を見ると、見覚えのあるヤクザが玄関の扉を蹴っていた。

(えー…)

その光景にハヤテも内心呆れる。無論、この光景とこんな場面に出会った自分に対してである。

「でもこの七十万円を持っていかれたら娘の命は…!

「だから知らねーって言ってんだろ!」

玄関先で言い合う二人を見て、ハヤテのお人よしが発動する。

「あの…」

「あぁ?」

突如かけられた第三者の言葉に、ヤクザがハヤテへと向く。

「七十万円なら僕が貸しますけど…」

「ほ…!本当ですか!?」

「ええ…」

その後、ヤクザに金をハヤテは払う。

「お前……人の借金を払うなんてお人よし過ぎるんじゃないか?」

「あはは……性分ですから…」

「損するだけだぜ、そんな性分」

去っていくヤクザが言った言葉が、妙に心に残ったハヤテだった。



「本当にお人よしね……私も人の事言えないけど」



「後百三十万……うん、零司さんの言う通りにホテルにさっさと行って篭っていよう…」

そう決意し、後ろを振り向く。

ガチャン。

「……え?」

それと同時に下のほうから聞こえてきた音に、呆けた声を出すハヤテ。

そしてその音の方を辿ると、何かの破片と涙目の男の子がいた。

「お兄ちゃんが急に振り向くから…ママに買って来いって言われた大事な壺が…!」

「ああ!ご!ごめん!!」

「百三十万もする壺がぁぁぁ…」

(お母さん!初めてのおつかいにしてはレベルが高すぎやしませんか!?)



「今度は不幸か……不幸ってレベル超えてるわね…」





こうして、一日で二百万円を失ったハヤテは雪の降る中、負け犬公園にいた。

一日で二百万円を失ったことを六花に言えるわけが無く、ハヤテはただじっとして空を見上げる。

(なんか、クリスマスのあの時に似てるな〜……あのクリスマスの夜に…)

「はぁ……これからどうしよう…」

これからの事を考え、溜息が口から漏れた。

その時、傘がハヤテの上に差された。

「こんな所で何をしてるのハヤテ君…」

「……ヒナギクさん…」

「こんな所で話もなんだし……とりあえず寒いから……ウチ来る?」

「へ?」





       *    *    *





その数十分後。

「あら?もうお風呂上がったの?少しは温まった?」

「え、ええ…」

ハヤテは何故かヒナギクの家で風呂に入らせてもらい、上がったところだった。

(何でこんな事に…?)

「あ、綾崎君お風呂上がった?」

「あ、はい…」

未だ状況が飲み込めず、ヒナギクの母に話しかけられてもハヤテは上の空だった。

そんなハヤテをほっておいて、ヒナギク母はヒナギクと話し始める。

「いや〜それにしてもこの子可愛いわね〜♪」

「何、年甲斐も無くトキメいてんの?」

「やっぱヒナちゃんの彼氏じゃないの?」

「違うから!」

「?」

話の内容が聞こえなかったハヤテは、ヒナギクの突然の大声に首を傾げる。





「……寒い」

桂家を遠くから見ている菊花はそう思わず呟く。

雪の降る中、身じろぎもせずにハヤテを見ているので仕方ないと言えば仕方ないのだが。

「……にしても、勘違い……じゃないか、あれは」

その目に飛び込んでくる光景に、ツッコミを入れる。

今見える光景は、離れでヒナギクが出て行ったところである。

「まぁ、学力は上げといた方がいい気もするけどね」

ショックを受けながらも、勉強を始めるハヤテを見てそう菊花は呟く。

「にしても、本当に寒い…」

かじかんだ手に息を吐きかける。

「一々使うのもめんどくさいし…。ほんと、あいつがいたらなぁ…」

「あいつって誰のこと?」

「それはネイファの事……って何でいるのよ」

自分以外の声に気づき、菊花が背後を振り向くと、そこには一人の青年がいた。

「よっ」

その青年は菊花が自分の方が向いたとわかると片手を上げる。

「なんであんたがここにいるのよ…」

「そりゃねぎらいに来たに決まってるだろ?」

「ねぎらい…?」

そ。と言うとネイファは手に持っていたビニール袋を菊花へと差し出す。

「何よ…」

不審に思いながらも、その袋を受け取り、開くと。

「ホットコーヒーに肉まんに飴数個…」

が入っていた。

「……ありがと」

「気にすんなって」

お礼の言葉を言っても手をひらひらと振ってごまかすネイファに、菊花の顔が自然と笑顔を作る。

「あっそ」

その笑顔を見られたくなくて、菊花は横を向き、袋の中の肉まんに手を伸ばした。



「んで」

「?」

菊花が肉まんを食べ終わると同時に、ネイファが口を開いた。

「どーよ、調子は」

「一番答えにくい質問の仕方ね…」

ネイファの言葉に呆れながらも、あらかじめ予想してあったのか、菊花の口は考えるそぶりすら見せずすぐに動いた。

「別に普通よ」

「そっか」

ネイファの方も菊花の言う事を予想していたのか、そっけない返事を返すのみ。

そのまま無言が二人の間を支配する。

だけど気まずい感じはなく、菊花にとっては心地よい感覚だった。

それはネイファも同じだろうと菊花は思う。

それは安い予想や自惚れなんかではない。

ある時からずっと一緒にいて、どんな事も一緒に過ごして、乗り越えてきた。そんな経験から出した、確信にも近い信頼。

「〜〜〜♪」

その心地よい空間にいたからか、菊花はいつの間にか鼻唄を口ずさんでいた。

その事にネイファは気づくが気づかないふりをして、その鼻唄に耳を傾ける。

(ははっ。こいつのこんな姿久々だな)

歌を聴きながら、ネイファはそんなことを思う。

(しばらく聞いていたいが……今回はそんな目的で来たんじゃないしな…)

今度もう一回来よう。と妙な決意をし、ネイファは内心惜しみながら菊花へと話しかける。

「なあ、菊花」

「〜〜〜♪……ん?何?」

特に不機嫌になる事もなく、菊花はネイファに向き直る。

「お前……どう思う?」

その言葉を聞くなり、菊花の表情が引き締まる。

「どう思う……って訊き方はどう取ればいいのかしら?」

菊花が質問するも、ネイファは質問には答えずただじっと菊花の目を見るだけだった。

(そういう意味ね…)

その目から訊きたい意味を汲み取り、口を開く。

「そうね……正直に言っていい?」

ネイファはただ黙って頷く。

「綾崎ハヤテが『崖』。大神零司が『メビウスの輪』って感じかしらね」

「なるほどな…」

ネイファはそれを聞き、頷く。

「随分とめんどくせえなぁ…」

「そうね…」

「「はぁ…」」

菊花とネイファは同時に溜息をつく。

「なんであの人はこういう事するかねえ…」

「気まぐれがこうなっただけでしょ…」

そうだけどさー…。と唸り、ネイファは後ろへと大の字になる。

「それでも限度ってもんがあるだろうよ…」

「それをほいほいと受けたのは誰かしらね?」

「ぐ…」

心当たりのあるネイファは菊花の言葉に唸る。

(ま、別にいいんだけどさ…)

「じゃ、もうひとつ質問」

「はいはい」

「お前、どう思う?」

先程と同じ質問。

だが、菊花はその質問の意味を的確に汲み取り、答える。

「死ぬんじゃない?」

「やっぱり?」

残酷な事を言うが、ネイファはあっさりと受けとめる。

「なら聞かないでくれる?」

「いや、お前の予想も聞いときたくて」

「あっそ」

ネイファの性格を知っている菊花はそれ以上聞かずに、口を噤む。

「ま、俺らからすりゃ同じ考えか。どうやってもさ」

「あの子達も同じ答え出すでしょ」

「あぁ、確かに…」

「あのね…」

自分たちにとっては当たり前の事を失念しているネイファに、菊花は何度目かの溜息をつく。

「つっても、俺らの仕事には関係ない話だけどさ」

「黙れお人よし」

「お前にだけは言われたかねえよ!?」

「……うっさい」

「おい」

ネイファのじとっとした視線から逃れるように、菊花は目をそらす。

その目の先には、見えないけど、ハヤテがいる方向。

「はぁ…」

また溜息をひとつ。

「じゃあ、最後の質問。原因は?」

三度目の質問。

「知らないから」

それに菊花は即答する。

「その心は?」

「無知は罪。知らぬは死への一方通行」

「ほうほう」

菊花の言葉にネイファはしきりに頷く。

納得しているのか、納得しようとしているのか。

(まあ、納得してるんでしょうね…)

「相変わらずお前の意見は勉強になるなぁ…」

「あんたの方がこっち的には勉強になるんだけどね…」

「そうでもねえよ」

それで?とネイファは菊花に聞き返す。

「まあ、大神とかも言ってたんだけど……綾崎は甘えが捨てきれない。それに関してはどうにかなると思う」

「それでも、知らないことは知らない。か…」

「そ。あいつは完璧に理解もしてないし知ってない。『恐怖』をね」

『恐怖』。

菊花が言っている恐怖とは、二つ。死ぬ恐怖と失う恐怖。

「確かにそうかもなー。知る機会が無かったのは単なる言い訳だしな」

「別にそれならそれで良かったんだけどね」

「でも、そういう機会が回って来ちまったしな」

「無視は出来ないわよ」

「そうだな」

「一回擬似的に体験したようだけど…」

「それ以上だしな、あれ」

「軽く言うな」

悪い悪い。と菊花の言葉に軽く笑うネイファ。

「ま、それこそ俺らには関係ないよな?『菊葉』?」

「そうね。『フィオン』」

「例え、どんな運命が待っていても、俺らには関係ない」

「私らがやる事は、ただ予想外から守るだけ」

「それ以外に関しちゃ」

「自分で切り開けばいい」



そして夜は明ける。

世界が変わる一日が始まる―――



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はーい、二十三話目おっしまい!

菊花「そのテンションは何なのかしらね…」

気にするな!

というわけで、今回はハヤテ追い出されるでした!

ネイファ「いや、その描写あんまりなくね?」

……それを言うなよ。

というか、今回は色々やっときたかったんだよね。

菊花「それが私ってわけね…」

そうそう。後々重要なキャラだし。

ネイファ「そうだな」

君もだってば…。

では、ここらへんで終わります!

菊花「では」
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Re: 誰がため、何のため 8/19更新 ( No.51 )
日時: 2012/08/19 18:59
名前: 匿名

輝雪「どうも♪輝雪でーす♪本当はソルナも来るはず何だけど、どこにいるのかしら?」
ルナ「ゆ、ユキ姉」
輝雪「ん?あ!ルナ〜、早くこっちに来てよ〜」
ルナ「で、でも」
ソル「早く行くぞ」
ルナ「あ、ちょっと引っ張らないでよソル」
輝雪「タンマ。何が起きてるの?」
ソルナ「「?」」
輝雪「だから、何で身長が半分程度になって二人に分離してるのかって聞いてるの!」
ルナ「ああ、それは前回の事で二人以下の人数で送るのが怖くなって作者権限で」
輝雪「(あいつも自由ね〜)」だき
ソル「なあ、ユキ姉」
輝雪「何?」
ソル「何故抱きしめる?」
輝雪「可愛くてつい」
ソル「離してくんね?」
輝雪「はいはい、先に感想よ」ナデナデ
ソル「撫でるなーーーーーーーーーー!!!///」
ルナ「ははは、ハヤテさんは早くも追い出されましたね。あれ?でも原作で十年前では結構普通に?」
輝雪「バスタオル巻いてたし、羞恥心がまだなかったのよ」スリスリ
ソル「頬ずりやめろ!///」
ルナ「追い出されちゃいました・・・」
輝雪「行く先々で不幸・・・こういう時は前向きに考えましょう!手持ちで間に合って良かったと考えましょう!」だき!
ソル「力を強めるな!///」
ルナ「監視・・・ハヤテさんは一体どうなるのでしょう?」
輝雪「というより、菊花さん何者?というよりネイファ?フィオン?何か前にも出てきましたよって感じの登場してるけど、いたかしら?」ふにゅふにゅ
ソル「ほっふぇをふにるな!///」
ルナ「前にもいたら完全に匿名さんの確認ミスですね。そして謎の言葉。ハヤテさんは崖、大神さんはメビウスの輪」
輝雪「どんな意味か気になるわね。そして死。ハヤテくんは一体この先どうなるのかしら?零司くんも。このじ二人が死ぬかもしれない状況って一体?」ペタペタ
ソル「ちょ!?///あちこち触るな!///」
ルナ「気になりますね」
輝雪「そうね〜。でも、今回私が一番気になったのは!」何かもう、いろいろ
ソル「にゃーーーーーーーーーー!!!///////」
ルナ「(ごめんソル。助けたら私の方に来そうだから)気になったのは?」
輝雪「菊花ちゃんとネイファさんって付き合ってるのかしら?」継続
ソル「//////////」
ルナ「そこ!?そこですかユキ姉!?」
輝雪「まあね♪では今回はこれにて♪」やっとか離す
ソル「ふにゅあ〜//////」
ルナ「(ソルがここまで弱ったのって初めて見た)で、では」
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Re: 誰がため、何のため 8/19更新 ( No.52 )
日時: 2012/09/01 22:45
名前: コサッキー

<レス返し>

の前に、さて…。

ハヤテ「どうしたんですか?」

通報された感想をレス返しします。

零司「ふむ。んで?」

ひとまず匿名さんに注意しておきます。

六花「して、その内容は?」

ゴホン。単刀直入に言います。

イチャイチャの方が感想より多くないですか?

アテネ「あぁ…」

いや別にイチャイチャが悪いわけじゃないですよ?でも、限度があると思うんです。

感想なら感想の方を多くして下さい。

零司「ふむ…」

……つってもまあ、受け売りだけどさ。

ハヤテ「えぇ!?」

ま、特に気にする必要もないと思います!私が言えることでも無い気がするけど!

零司「説得力皆無!?」

それじゃ、今度こそレス返し!

>輝雪「どうも♪輝雪でーす♪本当はソルナも来るはず何だけど、どこにいるのかしら?」

感想ありがとですー♪

ハヤテ「ソルナさんたちもいるようですけど…?」

>ルナ「ゆ、ユキ姉」

>輝雪「ん?あ!ルナ〜、早くこっちに来てよ〜」

零司「何やってんだか」

>ルナ「で、でも」

>ソル「早く行くぞ」

>ルナ「あ、ちょっと引っ張らないでよソル」

……!?

ハヤテ「えぇ!?」

>輝雪「タンマ。何が起きてるの?」

>ソルナ「「?」」

何アレ。

六花「何でしょうか…」

アテネ「謎ですわね…」

>輝雪「だから、何で身長が半分程度になって二人に分離してるのかって聞いてるの!」

>ルナ「ああ、それは前回の事で二人以下の人数で送るのが怖くなって作者権限で」

すんげえ、小さい!?

零司「うーん…」

ハヤテ「匿名さんのせいらしいですけど…」

零司のせいだねぇ、明らかに!?

零司「本心言わなきゃ別に何もしなかったんだけどさ」

>輝雪「(あいつも自由ね〜)」だき

>ソル「なあ、ユキ姉」

>輝雪「何?」

>ソル「何故抱きしめる?」

自由ですねぇ…。

零司「お前はそういう事しねえよな」

うん、めんどい。

アテネ「単純な理由ですわね…」

>輝雪「可愛くてつい」

>ソル「離してくんね?」

>輝雪「はいはい、先に感想よ」ナデナデ

>ソル「撫でるなーーーーーーーーーー!!!///」

なるほど、ソルは撫でられるのが弱いのか!

零司「厳密には違うと思うぞ?」

今度和也にやってもらおう!

六花「いっぺん死んできます?」

>ルナ「ははは、ハヤテさんは早くも追い出されましたね。あれ?でも原作で十年前では結構普通に?」

>輝雪「バスタオル巻いてたし、羞恥心がまだなかったのよ」スリスリ

>ソル「頬ずりやめろ!///」

いや、あったと思うんだけどね…。

零司「子供だからじゃね?」

六花「でも、今は…」

ハヤテ「うぅぅ…///」

アテネ「……///」

……ああなるわけだね。

>ルナ「追い出されちゃいました・・・」

>輝雪「行く先々で不幸・・・こういう時は前向きに考えましょう!手持ちで間に合って良かったと考えましょう!」だき!

>ソル「力を強めるな!///」

不幸はハヤテのアイデンティティ!

ハヤテ「そんなアイデンティティいりません!」

零司「にしても不幸すぎるんだけどな…」

>ルナ「監視・・・ハヤテさんは一体どうなるのでしょう?」

>輝雪「というより、菊花さん何者?というよりネイファ?フィオン?何か前にも出てきましたよって感じの登場してるけど、いたかしら?」ふにゅふにゅ

>ソル「ほっふぇをふにるな!///」

菊花「別に何もしないわよ?」

ただ監視してるだけだしね。

菊花「めんどくさいんだけどね…」

ネイファ「しゃーないっつの」

菊花「はぁ…」

後、ネイファは普通に以前一回出てました。

ネイファ「んで、『フィオン』ってのは…」

菊花「本名ね。ネイファは偽名」

ネイファ「ま、そういう事」

>ルナ「前にもいたら完全に匿名さんの確認ミスですね。そして謎の言葉。ハヤテさんは崖、大神さんはメビウスの輪」

>輝雪「どんな意味か気になるわね。そして死。ハヤテくんは一体この先どうなるのかしら?零司くんも。このじ二人が死ぬかもしれない状況って一体?」ペタペタ

>ソル「ちょ!?///あちこち触るな!///」

まぁ、匿名さんの確認ミスですね。

零司「だな」

ハヤテの『崖』に関しては危なっかしい。って意味ですね、主に。

零司「危なっかしいって意味超えてね?」

まぁ、そうなんだろうけど…。

六花「それで『メビウスの輪』の意味は?」

それに関しては……まぁ……今は明かせませんね。

菊花「といっても、少ししか見てないから違う場合はあるんだけどね。それで、言い方がどうにも悪かったようね…」

あれはハヤテは死ぬかもって意味ですね。

ハヤテ「僕だけ!?」

現時点死ぬ確率一番高いからね。次にアテネ。

零司「だろーなー」←(まぁ、ハヤテ死んだら次にアテネ死にますからね……今の状況…)

>ルナ「気になりますね」

>輝雪「そうね〜。でも、今回私が一番気になったのは!」何かもう、いろいろ

>ソル「にゃーーーーーーーーーー!!!///////」

気になったのは!?

菊花「……なんか嫌な予感しかしないんだけど」

ネイファ「奇遇だな。同感だよ」

>ルナ「(ごめんソル。助けたら私の方に来そうだから)気になったのは?」

ルナさーーーーーーーーん!?

零司「懸命な判断だな…。……でも、元は同一人物だよな?」

>輝雪「菊花ちゃんとネイファさんって付き合ってるのかしら?」継続

>ソル「//////////」

そこかよ!?

二人『いや、付き合ってない』

そして二人は息ピッタリだねぇ!?

菊花「そりゃそうよ」

ネイファ「んで、感覚としては家族だな」

>ルナ「そこ!?そこですかユキ姉!?」

>輝雪「まあね♪では今回はこれにて♪」やっとか離す

>ソル「ふにゅあ〜//////」

>ルナ「(ソルがここまで弱ったのって初めて見た)で、では」

ソル頑張ったね…。

アテネ「ですわね…」

六花「匿名さん感想ありがとうございました♪」




というわけで、二十四話目!

零司「微妙な数字だな」

だね。

そして今回新キャラ登場!

ハヤテ「誰ですか?」

同じクラスなんだけどね、一応。

ハヤテ「?」

わかってないねぇ…。

では、どうぞ!


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



菊花とネイファがハヤテを監視している同時刻。

夜の闇と同化しているように見える少年がいた。

「…………」

少年は闇に包まれた道をゆらゆらと体を揺らしながら歩く。

あてもなく、ただゆらゆらと。

そしてY字路にたどり着くと、少年は止まった。

ちょうど交差するところに立ち、どこからかカードの束を取り出す。

少年はカードを扇状に広げる。

「…………」

何十枚にも重なるカードの中から数枚を抜き取り、抜き取っていないカードをどこかへしまう。

そして少年は、抜き取ったカードを宙へと投げた。

宙に舞う数枚のカード。その中で少年は自分の目の前に落ちてきたカードを取る。

そのカードを見ると、少年はすぐに興味がなくなったようにカードを捨てる。

そして少年は右の道へと歩き出す。

やがてその姿は夜と同化していき、後にはすべて同じ柄のカードだけが残った。

二つの道の描かれた絵の上に、『The branch road of fate』と書かれたカードだけが―――





       第二十四話「信じるか、信じないはその人次第。」





数々の問題から少女の心境は複雑だった。

「…………」

その少女―――桂ヒナギクはベッドに寝ながら、頭の中を駆け巡る様々な感情を持て余していた。

当然、その感情の先にいるのは、今は家の離れにいる少年の事が殆どだ。

(私には……何にも関係ないんだから……なんとも思ってないんだし…)



で、少女を悶々とさせた当人は。



「ヒナギクさんの作る朝ごはん、おいしいですね〜」

緩んだ笑顔で朝ごはんを食べていた。

(なぜかしら?あの緩んだ笑顔を見てると、軽く殺意がわいてくるのは…。全く……人の気も知らないで…)

「えっと……ヒナギクさん?僕、何か不味いことでも…?」

そんなヒナギクの心を読んだのか、ハヤテは恐る恐ると言った様子で口を開く。

「別に何でもないわよ」

何でもないわけではないが、そんな事を言う勇気はハヤテにはなかった。

「ところで綾崎君。今晩はどうするの?行くとこないならまた泊めてあげるけど?あっちの人も泊まって欲しいようだし」

ヒナギクはそう言い、お玉で首を振り続けている母親をさす。

「あ……ご迷惑でないなら……その…」

「それで?学校はどうするの?」

「………あ」

ヒナギクの言葉に、ハヤテはピシリと固まった。

「……どうしたの?」

「服……どうしましょう」

「流石に私服は不味いわよ?」

「そうですよね…」

はぁ…。と溜息をつき、ハヤテが頭を抱えた時―――ピンポーン。とチャイムが鳴った。

「ちょっと出てくるから待っててね、ハヤテ君」

「はい…」

ヒナギクが居間から出て行くのも見ずに、ハヤテは考え続ける。

(一応、制服の予備は理事長室にある…。だけど…!何故かそこに今日行ったら、死ぬ気がする…!)

何故かは知らないが、ハヤテの本能がそう囁く。

それは確信に似たものであり、ハヤテも自然とそれに沿おうとして、別の案を考えてるのだが…。

(思いつかない…)

「うぅ…」

どうしようかと危機感を持ち始めるハヤテ。

「ハヤテくーん!!」

そんな時、玄関に行ったヒナギクの声が家中に響いた。

「六花さんが来てるわよー!!」

「へ…?六花さん…?」

予想外の人物の訪問に、ハヤテは呆けた声を出すのだった。



そしてハヤテが玄関に向かうと、いつもと同じように笑顔の六花が玄関先に立っていた。

「おはようございます♪ハヤテ君♪」

「おはようございます、六花さん…」

「制服を届けに来ただけですよ?」

「僕、何も言ってませんよね!?」

「単に先読みしただけです♪」

因みに、ハヤテは「何でここに来たんですか?」と言おうとしていた。

大体の質問される事が予想できるだろうとはいえ、すぐに言ってきたあたり、流石と言うべきだろう。

「それはともかく、必要でしょう?」

「え、えぇそうですけど…」

「それでは、やる事はやりましたし、帰りますね」

「ありがとうございました、六花さん」

「いえいえ♪ちゃんと学校には来てくださいね〜♪」

そう言うと、六花は去っていった。

「……ところでハヤテ君」

「なんですか、ヒナギクさん?」

「六花さん……なんでハヤテ君がここにいるってわかったのかしら?」

「…………六花さんだから。としか言いようがないです…」





       *    *    *





「―――という状況なんですけど、零司さんどう思います?」

「……いや、昼休み始まって開口一番がそれってどうよ」

時は過ぎて、昼休み。机を挟んで零司と向かい合ったハヤテの最初の言葉はそれだった。

そして零司の返答に、ハヤテは身を乗り出す。

「でも、元は零司さんのせいでもあるんじゃないですか!?」

「ちょっと待て、どうなったらそうなるんだ!?」

「あの日、零司さんが気絶させなかったらこうはならなかったんだと思います!!」

「それって結果論じゃね!?つか、落ち着けっての!」

身を乗り出しすぎて、距離が近かったので、零司はハヤテの顔を持って押し戻す。

「ともかくだ」

ハヤテが椅子に戻ったのを見て、零司は箸を突きつける。

「今の状況になったのは俺のせいじゃない。というか、それを言ってみたかっただけじゃないのか?」

「あ、ばれました?」

そう言ってハヤテは笑う。

その時開いた口に、零司はハヤテの弁当に入っていた唐揚げを喉の奥深くまで突っ込んだ。この間わずか二秒。因みにハヤテの弁当は朝、六花さんが制服と一緒に届けに来たものである。

「むぐが!?」

その行動にハヤテは喉を詰まらせ、喉の異物を胃へ押し出そうと喉の辺りを叩き続ける。

その様子を見ながら、零司は普通に弁当を食べ進める。

「……っは!ちょっとれい―――」

喉の唐揚げが取れ、文句を言おうと口を開いた瞬間―――

「もいっちょぉ!」

「ごむがろ!?」

再び零司によって、今度はご飯の塊を喉に突っ込まれる。

ハヤテも二度目を予想しているわけなく、そのままご飯の塊を気管に詰まらせる。

その慌てふためく姿を零司は「うん、楽しいねぇ♪」と若干邪悪な笑顔で見ていたのだった。

そしてその後もハヤテは口を開く度に弁当の何かを喉に突っ込まれたのだった。



十分後―――

「はぁ……はぁ…」

疲れきり、ハヤテは机に突っ伏していた。

「お疲れだな、ハヤテ」

「誰のせいですか…!」

ハヤテの睨むような視線を、零司はお茶を飲みながらかわす。

「んで…」零司はお茶を机に置き「話……なんだっけ?」

「……なんでしたっけ?」

ハヤテが首をかしげた瞬間、零司はお茶でハヤテを殴っていた。

「……体が勝手に動いたんだ」

「信じられないんですけど!?」

「信じろよー」

「いや、無理ですからね!?」

「ちっ」

「今舌打ちしましたよね!?」

「気のせいだって」と言いながら、零司はお茶を振り上げるのを見て、ハヤテも納得できないながらも引き下がった。

「それで零司さん…」

「んー?」

「僕、どうしたらいいんですか…?」

切実なハヤテの問いに、零司の表情も引き締まる。

「そうだな…」

腕を組み、零司は教室の天井を仰ぎ見る。

(……ハヤテが言ってることは二つ…。一つはあの日の事だろ?んでもう一つの方は今の状況の事…)

その事を考えるが、答えはすぐに出た。そして、表には出さずに内心で叫ぶ。

(どうしろってんだよこんにゃろぉおおおおおおおおおおおおお!!!)

正直な話、このハヤテの相談。零司には解決できない類のものだ。というか、解決できるものではない。いや、解決できない。

元々、ハヤテの覚悟に関してはハヤテ自身で解決するものだし、零司はそれを後押しするにしても、結局はハヤテ自身がどうにかすることになる。

そして次に、現状をどうにかするという事は無理である。

アテネがハヤテの顔を見れないというのだから、それが無くなるまで会わないようにすればいいのだ。その事がわからないハヤテを零司は(余裕ないなぁ…)と判断する。

(色々あって疲れてるんだろうなぁ…)

だからといって、こんな質問をされても零司は困るわけで…。

(………あ)

そんな時、この状況をどうにか出来るとまでは言わないが、改善出来る……かもしれない人物の事が零司の頭に思い浮かんだ。

(あいつなら何とかなるか……多分)

「なぁ、ハヤテ」

そう思い、零司はハヤテに話しかける。

「放課後……時間あるか?」





       *    *     *





そして放課後、ハヤテは零司に連れられ校舎のある一角に来ていた。

「……あの、零司さん?」

「んー?」

「ここは……一体…?」

ハヤテはそう言って、目の前の扉をもう一度見る。

明らかに年季が入っていて、ボロボロの扉。扉に取り付けられているガラスもところどころにひびが入り、今に割れそうである。

更にハヤテが驚いた場所は教室の外見である。

最早校舎になぜあるのかが疑問に思えるほどに教室の外見はひび割れ、ところどころが剥がれ落ちていた。

「何って……教室だけど?」

「いやいや!?僕、こんなボロボロの教室、ここで見たことありませんよ!?」

「そりゃ、ここの教室って目立たないし、誰も使ってないからな」

「白皇広すぎません…?」

今更だろ。そう言うと、零司はボロボロの扉をノックのように叩いた。

「おーい、いるかー?」

『…………』

零司の呼びかけに対する中からの返事はなく、沈黙が続く。

「あっれ…?いないのか?おーいー!」

だがその沈黙を不審に思い、零司は先程よりも声を荒げ、扉を叩き続ける。

「ちょ、ちょっと零司さん…。これだけ呼びかけても反応が無いんですから、いないんじゃないですか?」

「いーや、いるはずだ。今日はここにいるってあいつ言ってたし」

「あれ?知り合いなんですか?」

「おう。ってか、同じクラスだぞ?あいつ」

「え?」

同じクラスの人?そうハヤテが思い、クラスの人を思い出そうとした瞬間―――



「……何やってんだ、零司。キヒヒッ」



―――背後から、声をかけられた。

「お?おぉ、伊吹」

その声に零司は声をかけながら振り向き、ハヤテも遅れて振り向く。

「えっと…」

その伊吹と呼ばれた人の容姿を見た瞬間、ハヤテからは疑問のような声が出た。

背はハヤテが少し高いくらいの身長。

だが、ハヤテが驚いたのはそこではない。

闇のような黒い黒髪が顔の半分を隠すように伸びていて、目の辺りが見えないのだ。

正直言って、不気味な印象をハヤテは抱いた。

「ん…?」

そんな感想をハヤテが抱いていると、伊吹と呼ばれた少年の顔がハヤテを向く。

「…っ」

その向けられた目の見えない顔を、不気味と思ってしまい、ハヤテは一歩後ろに下がる。

「……キヒヒッ」

その行動を髪の下で見た上でか、伊吹は笑った。

「ま、ともかく」そして扉に手をかけ「入れよ。話はそれからだ」



教室の中は外の外見と同じく、置いてある机や椅子、果ては教壇までボロボロだった。

「相変わらずな場所だなー…」

「キヒヒ……うるせえ」

入り口で中の様子を見て驚いたハヤテとは対照的に、零司ともう一人は悠々と中へと進んでいく。

その様子に、慌ててハヤテも二人の後を追う。

「……んで?」椅子に乱雑に座り「今日は何なの?キヒヒッ」

「ここに来た時点で決まってんだろ…」

それに続き、零司も適当な椅子へと腰を下ろす。

「キヒヒ……それもそうか…」

「……わざと言ってんだろ、お前」

「あの…」

その雰囲気から外れているハヤテは恐る恐る、発言する。

「ん?どした?ハヤテ」

「えっと……この方は?」

そう言ってハヤテは名も知らぬ人を指す。

「あれ?面識無い?」

「ありませんけど…」

あっれ、おっかしいな…?と髪をかきながら、零司は立ち上がり、その少年の傍に立つ。

「ま、それなら紹介するだけだ。ほい、どうぞ」

「結局俺がやるのかよ……キヒヒッ」

「普通じゃね?」

「あっそ。んで、俺の名前は、月乃伊吹。綾崎と零司のクラスメイト」

「……クラスメイトだったんですか!?」

伊吹の自己紹介に、ハヤテは驚く。何故なら、ハヤテの記憶には、伊吹がクラスにいた記憶が無かったのだ。

「キヒヒ……ま、俺は影薄いしな」

「いや、単にお前が目立たないようにしてるだけだろ…」

「そうともいうかもな……キヒヒッ」

そうとしかいわねえよ。と言い、零司は先程座っていた椅子へと戻る。

「……ところで零司さん」

「何―?」

「何でここに来たんですか?」

「……あ、忘れてた」

えぇ!?と驚くハヤテを無視し、零司は伊吹へと話しかける。

「つーわけで、後頼むわ」

「キヒヒ……りょーかい」

「え?え?」

「さ、俺の前にどーぞ。キヒヒッ」

「は、はぁ…」

釈然としないながらも、ハヤテは言われたとおりに伊吹の前に座る。

「キヒヒ……それで、占ってもらいたいことは?」

「え?占い……ですか?」

「……ん?」

何だか微妙に噛み合ってない会話に、伊吹は首をかしげ、顔を零司へと向ける。

「おい、零司…」

「〜〜〜♪」

その視線の先の零司は、あからさまに目を背け、口笛を吹いていた。

「はぁ…」その様子を見た伊吹は溜息をつき「全部説明するのかよ……キヒヒッ」と呆れているのか、笑っているのかわからない口調で言った。

「キヒヒ……まぁ、簡単に言うと……ここの教室は俺が勝手に使ってる占い部屋なんだよ」

「占い部屋…」

そ、と肯定するように伊吹は人差し指を机に立てる。

「あんまり目立ちたくないから勝手に使ってるんだが……何でだか、ちらほら誰かが来るんだ……キヒヒッ」

「自分の占い考えてから言えっての」

途中、茶々を入れた零司に「うるせぇ」と言いながらも、伊吹は説明を続ける。

「キヒヒ……まぁ、そこはどうでもいいんだが…。それで、本題はここからだ」

「………(ゴクリ)」

伊吹の雰囲気が違ったものになり、ハヤテは思わず唾を飲み込む。

「自慢じゃないんだが、俺の占いはかなり当たる。恐らく、その噂を聞きつけた奴がこの教室にやって来るんだと思う。そして、俺はいつからか生徒……または先生までに占いをやるようになっていた。主に悩みがある奴らをな……キヒヒッ」

「それじゃぁ…」

「キヒヒ……そう、綾崎」ビシッと伊吹はハヤテに指を突きつけ「お前も悩みがあるんだろ?それで零司に連れてこられたわけだ」

「つまり……ここで占ってもらえば、僕の悩みが解決するんですか?」

だが、伊吹は静かに首を振ってそれを否定した。

「正確には、解決するわけじゃないんだなこれが……キヒヒッ」

そう言うと、伊吹は一枚のトランプにも見えるカードを取り出した。

「キヒヒ……俺の占いは、シンプルな占いでな?単にカードをめくってもらうだけなんだよ」

そう言うと、伊吹は手に持っていたカードを弾く。

そのカードには赤いラインで大きい丸の絵の上に、『Correct answer』と文字が書かれていた。

「そして俺は、ただ結果を言うだけ。だから一番正確な言い方は、その悩みに一番『正解』が近い解決までのルートを占うだけ……キヒヒッ」

つまり、伊吹の占いは『正解までの道のり』を占うのだ。

「キヒヒ……まぁ、別にそれ以外の占いも出来るがな…」

「例えば…?」

ハヤテの言葉には答えず、伊吹はただカードをハヤテの前に出し続ける。

『Past』、『Future』、『Mistake』、『End』……ただ、淡々と出す。

「大体こんな感じのもんをな……キヒヒッ」

「すごいですね…」

「キヒヒ……別に凄くはないがな…。それで?」

「え?」

「占うか?占わないか?」

そう言って、伊吹は顔の向きをハヤテに固定する。

髪の下にあるであろう視線を受け、ハヤテは「……占ってください」と言った。

その言葉に、伊吹はかろうじて見える口をニィィ♪と歪まして「ちょっと待ってろ……キヒヒッ♪」と言って教室を出て行った。



「あの……零司さん?」

伊吹が出て行ってすぐ。ハヤテは教室の隅で今まで黙っていた零司へと話しかけた。

「大体聞きたい事はわかってるが……何?」

「月乃君って…」

「変わった奴だよ?」

当たり前だとでも言うように、零司は言う。

「変わった奴だけど……まぁ、占いはほぼ百発百中だし、基本人畜無害な奴だから、悪い奴ではないな」

「へー…」

そんな話をしていると、教室の扉が勢いよく開いた。

「キヒヒ……待たせたな……さぁ、占うぞ…♪」

口元が思い切り笑っているのは……正直言って、怖かった。と後にハヤテは語った。



「んで…」

机を挟んで座ったところで伊吹が話し始める。

「一体どういう悩みなんだ?キヒヒッ」

「えっと…」

ハヤテは、数度目になる自分のおかれた状況を話した。

その話を聞いた伊吹は「……特殊すぎる…」と若干悩む風に頭を抱えた。

「まぁ……ひとまず占ってみるか…」

そう言うと、伊吹は机の上に置かれた数個のカードの束の内、一個を取りシャッフルし始める。

そしてある程度シャッフルした所で、別の束に取り替えてシャッフルしていく。

そうして全部の束をシャッフルし終わると、伊吹は最初の束を持ち扇状に広げた。

「……これとこれとこれ」

そしてその中から数枚抜き、机の上に置くとその作業を、束が無くなるまで続ける。

そうして残ったカードの数は十二枚。

その十二枚を伊吹はシャッフルし、時計のように並べる。

「キヒヒ……それじゃ、この中から二枚選んでくれ…」

「はい。えっとじゃぁ……これとこれで」

ハヤテが選んだのは、時計で言う一時と九時の場所のカード。

そして、そのカードに書かれていたのは―――

「『Continuation』、『Several days after』……だとよ」

「えっと…?」

英語の意味がわからず、ハヤテは首を傾げる。

「……因みに、意味は順番で継続、数日後だからな?ハヤテ」

「あ、ありがとうございます、零司さん…」

「意味がわかった所で結論言うが……まぁ、このままでいいってさ。キヒヒッ」

「はぁ…」

釈然としない様子のハヤテ。

「ま、よかったんじゃないか?数日で終わるんならさ」

「えぇ、まぁいいんですけど……何だか、あっさりしてる感じで拍子抜けですよ…」

「キヒヒ……結局そんなもんだよ」

カードを纏めながら言う伊吹の言葉に妙な説得力を感じ、ハヤテは「はぁ…」と気の抜けた返事を返す。

「今日はありがとうございました、月乃君」

突如、ハヤテが立ち上がってそんな事を言う。

「気にするな……キヒヒッ」

「あれ?帰るわけ?ハヤテ」

「えぇ、ただお世話になるわけにも行きませんから」

「殊勝なこって」

「それでは!」

そう言うと、ハヤテは廊下を駆けていった。

「……歩けよ」

「キヒヒ……校則違反ってか?」

その行動を見て、ツッコム二人であった。

「……………」

「……………」

そして、二人の間を静寂が支配する。

どちらも音を発する事無く、だからといって何をするでもなく、二人はそのまま座っている。

どこからも、何の音も聞こえない空間。それが今のこの教室。

「―――それで?」

そして、その静寂を破られる。この教室の主によって。

「本当の用事を聞こうか?零司」

「ん…」

伊吹の言葉を受け、零司は伊吹の前の席まで移動する。

それを確認すると、伊吹は無言でカードを切り始める。

「といっても……お前わかってるんじゃないか?」

「キヒヒ……大体はな…」

そう言ってる間に伊吹はカードを扇状にし、その中から十二枚を選び、時計のように設置する。

「四枚」

「ん」

言葉に従い、零司は四枚のカード―――場所は時計でいう三時、六時、九時、十二時―――を表にする。

「……なんじゃこりゃ」

そして表になったカードを見て、零司は思わずそう漏らした。

それぞれカードには、十二時『The branch road of fate』、三時『Slight』、六時『Serious』、九時『Hell』とそれぞれを示すような絵とともに描いてあった。それらは全て、タロットで言う正位置。

そして、その結果を見た瞬間、伊吹は口を開いた。

「―――ある時から運命が分かれる―――」

「―――それは、軽くか重いだけの違い―――」

「―――結末は、どちらも同じ―――」

「……って事だろうな。キヒヒッ」

「そうかい…」

突然変わった伊吹の口調に苦笑いし、零司は今言われたことを頭の中で繰り返す。

(軽いか重いかの違いだけ……結果は同じ、か…)

目線を最後のカードに零司は移す。目の中に入ってくる、おどろおどろしい絵。そしてその上に書かれた文字は、

(『Hell』……あいつも難儀な人生だねぇ…)

「はぁ…」

「キヒヒ……少しの出来事で人生の流れが変わるわけないだろ…」

「確かにそうだけどよ…」

それだからと言ってこの結果ってのは…。と思い、「はぁ…」もう一つ、溜息。

「にしても…」カードを一枚つまみ「零司がこんな事を言うとはね……キヒヒッ」零司に向かって弾く。

「ま、こっちの事情でな…」

そして零司は、目の前に落ちてきたカードを見る。

大きな目がこちらを見ているように見える絵。その上には『Interest』と書かれている。

「出鱈目過ぎるほどの当たり様だな…」

呆れたような零司の声に、「キヒヒッ」と笑うだけで伊吹は答える。

「んじゃ、俺も行くわ。いい加減に行かないとチビ嬢に怒られるんでね」

そう言って立ち上がった零司に伊吹は「行って来い……キヒヒッ」と言って見送る。

そして、零司が扉に手をかけた、その時、



「―――負の連鎖―――」



背後から伊吹の声が聞こえ、零司の動きが止まった。

それを知っているのか、知っていないのか、伊吹は続ける。

「―――重ね、重ね。留まることを知らぬかのように重ねる―――」

「―――そして、やっと止まった時にはもう遅く―――」

「―――もう、戻れない。だから―――」

「―――更に、沈みゆく―――」

「……キヒヒッ」

声が聞こえなくなると同時に伊吹の笑い声が零司の鼓膜に届く。

だが、その聞き慣れ、親しんできたはずの声は―――今の零司には、とても不快だった。

「おい、伊吹…」

扉にかけていた手を放し、零司はゆっくりと振り返る。

「キヒヒ……どーした?」

「殺すぞ」

その言葉と共に、以前ハヤテ達にぶつけた以上の殺気を発する。が、

「おーこわっ。キヒヒッ」

伊吹は、わざと驚いたような声でそう言っただけだった。

「…………ちっ」

その様子を見て、零司は一つ舌打ちをする。

決して零司が今放った殺気が低いわけではない。むしろ、ハヤテのように耐性があったとしても怯んでしまうほどの殺気だった。

だが、そんな殺気を受けたというのに、伊吹は平然としていた。

(わかってたはずなんだけどな…)

内心で溜息をつき、零司は伊吹を見据える。

「……実力行使をお望みかい?伊吹さんや」

「キヒヒ……やれるもんならやってみろっての」

そう言った伊吹の言葉がスイッチとなり、零司は自然体になる。

「…………」

「…………」

そして、再び静寂が教室を支配する。

ただ先程と違うのは、教室中に殺気が満ち溢れていることだけだろう。

そうして、暫し睨みあった後。

「はぁ…」

一つの溜息と共に、零司が殺気を収めた。

「お前とやっても意味ないしな…」

本心をわざと隠し、零司はそう言う。

「キヒヒ……そういう事にしておくよ」

「ったく…」

これ以上伊吹といると、心の中まで見透かされているような気がして、零司は伊吹に背を向け扉に再び手をかける。

「んじゃ、また後でな」

そう言って、零司が廊下に出―――ようとしたところで、再び零司の足が止まった。

「……おい」

その原因は、目の前に三枚のカードが刺さったからである。勿論、刺さらしたのは一人しかいない。

「それがお前の未来だよ……キヒヒッ」

「いらねっての…」

そう言いつつも、折角なので、零司は刺さったカードに目を移す。

そのカードは上から、正位置の『Resumption』、逆位置の『Resumption』、正位置の『Hatred』とそれぞれ書かれてあった。

カードを見た零司はそのまま何も言わずに教室を後にする。

「……?」

そして三千院家に向かう間、カードの意味がわからず、首を傾げる零司だった。



イレギュラーともいえる存在がいなくなった教室で、この部屋の主ともいえる伊吹は、何をするわけでもなくただじっととしていた。

「……………」

机の上に乱雑に散らばっているカードをただじっと見つめる。

何もしない時間がただ過ぎ行く。

それが、伊吹には心地よい時間であり、不快な時間でもあった。

今の感情は、半々の感情。

心地よいと感じる感情と、不快な感情。どちらもが均衡を崩そうと、伊吹の中で攻めあう。

そしてやがて、不快な感情の方が勝り、伊吹は動き始める。

ゆっくりと手を伸ばし、机の上のカードを適当に一枚めくる。

「『Labyrinth』…」

カードに今の心を映されたようで、伊吹は自嘲気味に笑う。

伊吹自分に対してする占いは、好きでない。

伊吹自身の占いはよく当たる。いや、よく当たりすぎる。

(気分悪…)

カードを机に投げ、背もたれに体重をかける。

そして、伊吹は自分の占いについて考え始める。

占い。

それは伊吹にとっては無くてはならないもの。もしこれが無くなれば、伊吹はおかしくなる自信がある。

そして、伊吹はこの占いが嫌いでもある。

ただカードをめくり繋げるだけで、正確無比な未来を予知し、一番正解である道のりを出してしまう。

それだけならまだしも、人の過去をも正確に暴いてしまうし、今置かれている状況でさえ出してしまう。

そこまで正確な占いなんていらない。

それでも、やっていなければ壊れる。比喩的な表現ではなく、現実に。

嫌いなのに、やらなければいけない、相反にも似た感情。

元々、伊吹は占いは全く当たっていなかったのだ。

その時は、占いなんてただの遊びで、単なる気分転換で、意味の無い自己暗示でもあった。

なのに。いつの間にか、当たるようになってしまった。残酷なまでに。

「…………キヒッ」

意味無く笑い、机の上の、しかも隅の方にあるカードをめくる。

「………………」

そのカードの絵柄を見て、伊吹はカードを片付けずに、席を立つ。

そしてそのまま、教室を出る。更に、廊下を走る。走る。走る。一心不乱に。

まるで、カードの事なんてなかったかのように。





       *    *    *





数日後。ハヤテは天皇洲家執事に復帰していた。

いや、正確には、六花からの通達により、今日から執事に復帰なのだが。

それはともかく、今ハヤテは理事長室に向かっていた。

執事に復帰してから最初の仕事ということもあり、ハヤテの足は軽い。

因みに、本来ならば放課後からではなく、屋敷に帰ってきて復帰なのだが、六花からのメールに『急遽用事が出来てしまったので、放課後から復帰してください』と書いてあっており、今の状況になる。

(月乃君の占いの通りだったなぁ…)

内心で伊吹の占いの精度に感心している間に、ハヤテは理事長室の前に立っていた。

「すー……はー…」

数日間離れていたことから、若干の緊張がハヤテを襲い、ハヤテは数度深呼吸をする。

「……よしっ」

数度繰り返してるうちに、緊張はどこかへ吹き飛んでおり、ハヤテは取っ手を掴む。

そして、勢いよく扉を開く。その瞬間、眩しいほどの光がハヤテの目を襲い、目を反射的に瞑ってしまう。

「……なっ!?」

そしてそれが、ハヤテが部屋の光景を見た時の第一声だった。

まず目に入ってきたのは、辺りに散らばる書類。

常に机に積まれているはずのそれは、綺麗に宙を舞っており、紙吹雪を連想させた。

その次に目に入ってきたのは、倒れた棚に、所々に転がっている椅子や机。

綺麗に整えられていたはずのそれは、常人には理解も出来ないようなオブジェに見える。

そして最後に目に入ってきて、一番驚いたのは―――



―――アテネを肩に担いだ、黒ローブだった。



「あなたは…!」

その姿を視界に入れた瞬間、ハヤテは怒りのような感情が満ちていくのがわかった。

それほど、今のハヤテには怒りの対象なのだろう。

「…………」

その視線を受けても、黒ローブは自然体で立っていた。

だが、すぐに窓の方へ体を向け、窓を突き破って外に逃げ出した。

「ま、待てっ!!」

その後を追って、ハヤテもすぐに外へと追って行った。



鬼ごっこの始まり―――。


????????????????????????????????????????



はいっ!二十四話しゅーりょー!

零司「そのテンションは一体どこから出てくるんだろうな?」

ハヤテ「さぁ…」

うっさいなぁ…。

零司「うるさいのはお前だがな…」

さて、今回は新キャラ!月乃伊吹の登場!

伊吹「キヒヒ……ま、よろしく」

特徴ありすぎる口癖と、占いが得意というキャラ!うん、謎!

ハヤテ「作者さん自信が!?」

……結構謎なんだよ、伊吹。

伊吹「それでいいがな……キヒヒッ」

そして、対黒ローブ!因みに最後。

ハヤテ「いきなりすぎるんですけど!?」

言うな!自分でもわかってらぁ!!

零司「空しいな…」

……うん。

では、次回は鬼ごっこが多少です!!

ハヤテ「鬼ごっこ!?」

では!!


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Re: 誰がため、何のため 9/1更新 ( No.53 )
日時: 2012/09/01 23:53
名前: 匿名

どうも♪匿名っす♪
輝雪「輝雪です♪」
和也「和也だ」
感想に来ました♪の、前に。
この度は感想なのに感想とも呼べないものを書いてしまい真に申し訳ありませんでした。これからは言葉を選びつつ迷惑にならぬようより一層気をつけていきたいと思います本当にすいませんでした。
輝雪「!!」
和也「真面目・・・だと?」
酷い!俺だって失礼の無いように気をつけようと思ってるよ!というか、思わなければそいつはただのダメ人間だからね!
輝雪「冗談よ。私もふざけすぎたし・・・。ごめんなさい」
!!
和也「輝雪があや」
輝雪「もうそのネタいいから。感想にいきましょ」
ええと、原作だと八巻あたりだね。
輝雪「ヒナギク・・・どうして素直になれないのかしら?」
和也「皆が皆、お前みたいに仮面を作れるわけじゃない」
輝雪「まあ、そうだけど・・・」
で、そこに六花サンガ現レタネ。サスガ六花サン。
輝雪「・・・こいつはいつ治るのかしら?」
和也「もう手遅れじゃないか?」
ハハハハハハハハハハハハハHAHAHAHAHAHAHAHAHA
輝雪「・・・零司くんはハヤテくんに責任を押し付けられてるわね」
和也「責任が無い、とは言えないが、流石にちょっと・・・なー?」
輝雪「まあ、ハヤテくんも言ってみたかっただけっぽいし?いいのかな?」
和也「大神はハヤテが口を開けるごとに食べ物を突っ込むか。苦痛すぎる」
輝雪「ハハハ。で、ハヤテくんは昼食を食べたにも関わらず疲れたと」
和也「ハヤテは大神に相談したようだな。だが」
輝雪「まあ、無理よね」
和也「そこで頼ったのは月乃という奴か。謎だな」
輝雪「ええ。全く謎ね。とりあえず占いできるらしいけど」
和也「当たり過ぎるのはやってる本人からしたらどうなんだろうな。俺では理解できそうにないな」
輝雪「まあ、人の気持ちを完全に理解するなんて無理だと思うけどね。でも、自分に置き換えて考えても実感湧かないわね。実際どうなのかしら?」
和也「最後の方を見る限り好きではなさそうだが、必要・・・わからん」
輝雪「まあまあ。それが普通だって。で、ハヤテくんは見事アドバイスGET!」
和也「零司の方はあまりいいことではなさそうだな」
輝雪「お兄ちゃんはどうしてそう平然としていられるのかしら!?」(←殺気にあてられた)
和也「知るか」
輝雪「自分の事なのに!?」
和也「で、最後は六花さんに呼ばれて行ったら・・・」
輝雪「また黒ローブ!」
和也「鬼ごっこか。どうなるかな」
輝雪「ま、それは次回に持ち越しって事で」
和也「今回はこれにて」
輝雪それでは♪」
和也「・・・匿名。まだ壊れてるのか?」
輝雪「・・・あ」
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Re: 誰がため、何のため 9/1更新 ( No.54 )
日時: 2012/09/02 10:14
名前: キー

 χ「どーも。忘(以下略)」

 調「そこまで略すと何言ってるかわからんぞ。」

 χ「わかる人にはわかる。」

 調「まぁいい。……六花さんには何言っても無駄だからスルー・・・」

 リン「そればかりで六花さんをスルーした事しかないじゃない。」

 χ「伊吹か。」

 リン「・・・・・・・・・・・・」

 調「あの占いって、」

 χ「ほぼ的中だったら占いじゃない気がするのは僕だけか?」

 調「だな。」

 リン「・・・・・・・・・・・・」

 χ「この新キャラは一心不乱に走って何処へ行くつもりかね。」

 調「知らん。ま、後々何かあるんだろ。」

 リン「・・・・・・・・・・・・」

 χ「こいつはいつまでこうしているんだ?」

 調「……しょうがないね。…六花さんには……何か特殊なスキルでもあるんだろ。それか
発信機とか。」

 χ「そうだな。……リンはどう思う?………って居ないし。アイツ何しに来たんだよ。」

 調「僕的には六花さんはリン以上に読めないキャラだな。」

 χ「てことで六花さんはするー…」

 リン「・・・・・・・・・・・・」

 χ・調「なんでいるの?」

 リン「・・・・・・・・・・・・」

 χ「……わかったよ。……まぁ、考えていることを読むスキルはリンにもあるし、六花さ
んにはむしろあって普通みたいな?」

 リン「まぁ、私は考えていることを勘で予想するだけだけどね。…いつも当たるけど。」

 χ・調(リンがしゃべった。)

 リン「何か問題でも?」

 χ・調「いや、……まぁ、また次回もこれたら来ます。…来れなかったらまた次に来ると
きにお約束のをやるんで。…まぁ、キャラのリクとかあったらどうぞ。」
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Re: 誰がため、何のため 9/1更新 ( No.55 )
日時: 2012/09/03 19:24
名前: 迅風

恭介「やっはー久々の感想だぜ、いぇーい!! 鍵森恭介いぇーいっ!!」

ハヤテ「恭介、テンションで感想空いた事を誤魔化すの常套になってませんか何か!?」

歌詠「でも空いたわよねー。芙蓉鴇歌詠ー。リクエスト感謝するわねーっ♪」

十六夜「東雲十六夜だ。リクエスト感謝するよ」

ミラ「竜」

鈴音「……み、ミラちゃん? 相変わらずだけど最後まで言い切ろうね……? あ、えっと鍵森鈴音です♪ それとクラスメイトの竜胆ミラちゃんです♪ リクエストありがとうございますね♪」

ハヤテ「それで一番初めは……ヒナギクさんが何か悶々としてる様子ですけど、大丈夫でしょうかねー?」

歌詠「操咲さんが言いますかー……。って言ってもこっちではヒロイン違いだし、当然ではあるかー……。……それで、相変わらず綾崎さんはほにゃっとした笑顔ねー……」

十六夜「……先輩に女心を理解しろ、という事自体が酷な話だよ……はっ」

ハヤテ「失礼ですね、東雲さん。僕はこう見えてちゃんと女性の心を理解していますよ。恋愛ごとには鋭敏ですからねっ!!」(←胸を張ってえっへん、と)

恭介「衣類に困った瞬間に即座に六花さん登場か……「……あれ? 反応無いのは何でですか……?」流石だな♪ そんで確かに理事長室に行ったらアウトだわなー」

鈴音「そうだね、お兄ちゃん……!! 私だってあんなことあったら恥ずかしいですし……もし虎鉄さんに見られたらと思うと(安心しろ、殺すから♪by恭介)……!!」

ミラ「裸くらい」

鈴音「ミラちゃん……『裸くらいで何でそんなに慌てるのかまったくわからないな。ミラはハヤにーさまに見られても平気だな』発言は止めようね……!!」

ハヤテ「そこ訳さないで欲しかったです!! って言うか皆、反応無かったのは何で!? 絶対女心、理解してますもん……くすん。……にしても六花さん凄いですよね本当……。そして元凶の零司さん登場です」

恭介「ははは……。まぁそこは冗談として……唐揚げが迫ってきたな」

歌詠「どういう状況ですか、この仕返しはー……。そして滅茶苦茶突っ込んでくるし!! 良く窒息死しなかったわね、綾崎さんー!? 私なんてうどんで窒息死しかけたのに……巻き付いてくるもんね、うどんー」

十六夜「いや、それは芙蓉鴇さんが特殊なだけだと考えるが……。そして話題忘れたか。うん、まぁ無理はないかもな、一応になるが」

鈴音「いっぱい咽てましたもんねー……。それで相談したわけですが、大神さんから言ってしまえば解決難しい、と……」

ミラ「ミラは慣れればいいと思うぞ」(←さも名案の様に)

恭介「なるほど、天王州が恥ずかしがらない様にいっそ見まくれ……と。死ぬな、どっちかが。……で、診断の結果、占ってまえーっという話に落ち着いたか」

歌詠「凄いボロボロの部屋ねー……こういうのもあったか、白皇学院ー……」

恭介「いやいや、白皇学院広すぎるからなぁ……。俺も散策してみたんだが、どうにも広すぎて散策しきれないって事実にぶち当たったし……そもそも地下がなぁ……」

ハヤテ「……地下……!? それで現れたのは月乃さんですかー」(←外見でびびらなくなってきた執事君、だって周囲が何か特殊だしさ!!)

十六夜「それにしても同クラスで気付かない、か……。そして月乃氏は占いが良く当たる、という事で一部に有名なのか……」

恭介「ほとんど未来予測だな。まぁつってもこの世に未来予知は無いか……。……で、月乃の占いの前に――月乃自身は人畜無害なのか……。そして状況は特殊過ぎる、と。……うんまぁそうだわな……」

鈴音「でも良かったですね♪ 占いの結果、数日経てば大丈夫って結果でしたし♪」

ミラ「よくわからないが良かったなハヤにーさま♪」

恭介「本当に良かったじゃないか♪ 状況悪化にはならなくてよ♪ ……と、言いたいところなんだが、もう一方の結果はこりゃまた厄介な……結末は変わらない、かよ……」

ハヤテ「hellって……向こうの僕も大変そうなものを……!!」

歌詠「綾崎さんの相当重いけどさー……大神さんのも何と言うべきか……」

ミラ「豆腐の連鎖……」

恭介「いや、意味がわからないぞ、ミラ!? 豆邪魔!! 豆いらないから!! どっから食い物出てきた!! ……にしても本当、大神は大変そうだわなー……そして殺気ぶつけられても平気そうな顔してる月乃やりやがる……」

ハヤテ「……と言うか意味された三枚の意味が僕は気になりますよ……。……それにしても月乃君、占いに対してすっごい複雑な心境なんですねー……」

鈴音「何か皆さん、大変そうですよねー……心配です……」

十六夜「比喩ではなく現実に壊れるの意味は果たして……。当たり過ぎる占いというのは考え物だな。……それで最後……うん、窮地だな」

ミラ「誘拐」

ハヤテ「本当にね!! めっちゃ攫われてるし!? 向こうの僕頑張らないとだよ!!? ……そして何でこんなにお嬢様狙うんだろう本当……!!」

歌詠「それで鬼ごっこの始まりかー……次回の展開が気になるわねーっ」

恭介「というわけで次回は鬼ごっこ!! んじゃ、次回もリクエストがあれば言ってくれ!!」

鈴音「それでは、またです♪」
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Re: 誰がため、何のため 9/1更新 ( No.56 )
日時: 2012/09/08 22:37
名前: コサッキー

<レス返し>

▼ 匿名さん

>どうも♪匿名っす♪

>輝雪「輝雪です♪」

>和也「和也だ」

ハヤテ「感想ありがとうございます♪」

>感想に来ました♪の、前に。

なんだろう。って、一つしかないか。

零司「間違いなくアレだろ」

>この度は感想なのに感想とも呼べないものを書いてしまい真に申し訳ありませんでした。これからは言葉を選びつつ迷惑にならぬようより一層気をつけていきたいと思います本当にすいませんでした。

>輝雪「!!」

>和也「真面目・・・だと?」

いえいえ全く気にしてませんー♪

伊吹「キヒヒ……まぁ作者は貰えるだけで嬉しいからな」

うっさいよ!?

零司「というか、何で二人は驚いてるのか…」

>酷い!俺だって失礼の無いように気をつけようと思ってるよ!というか、思わなければそいつはただのダメ人間だからね!

六花「それが普通だと思いますしね〜♪」

零司「……謝んなかったら六花さん向かってたな」

……うん。絶対にね。

>輝雪「冗談よ。私もふざけすぎたし・・・。ごめんなさい」

>!!

>和也「輝雪があや」

>輝雪「もうそのネタいいから。感想にいきましょ」

まさか輝雪までとは…。

ハヤテ「でも、輝雪さんもやってましたからね…」

>ええと、原作だと八巻あたりだね。

>輝雪「ヒナギク・・・どうして素直になれないのかしら?」

ツンデレだからじゃね?

ヒナギク「違うわよ!!」

零司「こういうタイプって自覚しないとめんどいよな」

君もツンデレだよね。

零司「よし、殺す」←(いつの間にか手に刀)

冗談だから待って!?

>和也「皆が皆、お前みたいに仮面を作れるわけじゃない」

>輝雪「まあ、そうだけど・・・」

ハヤテ「仮面作ってるんですか!?」

零司も作ってるけどね。

零司「ま、本音とかだけな…」←(仮面被らないと大変ですからね…)

>で、そこに六花サンガ現レタネ。サスガ六花サン。

>輝雪「・・・こいつはいつ治るのかしら?」

>和也「もう手遅れじゃないか?」

>ハハハハハハハハハハハハハHAHAHAHAHAHAHAHAHA

六花「お褒めに預かり光栄ですね♪」

というか、匿名さんがまた壊れとる…。

零司「何やったんだろうなぁ…」

六花「色々ですよ♪」←(その色々が怖いんだけど!?)

>輝雪「・・・零司くんはハヤテくんに責任を押し付けられてるわね」

>和也「責任が無い、とは言えないが、流石にちょっと・・・なー?」

>輝雪「まあ、ハヤテくんも言ってみたかっただけっぽいし?いいのかな?」

零司「まぁ、若干の責任はあるけど……普通はずっと考えず、暇なときに考えろ」

ハヤテ「うっ……すいません…」

まぁ、ハヤテも言って若干気を楽にしたかっただけだしね。

>和也「大神はハヤテが口を開けるごとに食べ物を突っ込むか。苦痛すぎる」

>輝雪「ハハハ。で、ハヤテくんは昼食を食べたにも関わらず疲れたと」

零司「はっはっは。つい魔が差して♪」

ハヤテ「魔が差したぐらいでやらないで下さいよ!?かなり辛かったんですけど!?」

零司「手加減はしたんだしいいじゃねーか」

ハヤテ「よくありませんよ!?」

>和也「ハヤテは大神に相談したようだな。だが」

>輝雪「まあ、無理よね」

零司「無理に決まってんだろうがぁーーーー!!」

叫んだ!?

六花「でもまぁ……普通じゃない相談事ですしね〜…」

>和也「そこで頼ったのは月乃という奴か。謎だな」

>輝雪「ええ。全く謎ね。とりあえず占いできるらしいけど」

今は謎キャラの伊吹です。特技は占い。

伊吹「ま、よろしく。キヒヒッ」

……うん、変わってるなぁ…。

零司「今更だけどな」

>和也「当たり過ぎるのはやってる本人からしたらどうなんだろうな。俺では理解できそうにないな」

>輝雪「まあ、人の気持ちを完全に理解するなんて無理だと思うけどね。でも、自分に置き換えて考えても実感湧かないわね。実際どうなのかしら?」

実際キツイと思う。

伊吹「キヒヒ……まぁ、気持ち悪くなって来るんだよな…」

因みに未来の占いの的中率98%。

零司「高いよなぁ…」

でも、人とかなり違う部分持ってるのってかなり辛いと思うよ?

零司「だな。人とは違う部分ってのは人それぞれで傷も少ないだろうが…」

伊吹「人と違いすぎる事は苦痛にしかならないな……キヒヒッ」

それでそっちの二人の場合は鬼狩りだよね。

零司「普通の奴に言ったら気味悪がれる場合もあるからな」

>和也「最後の方を見る限り好きではなさそうだが、必要・・・わからん」

そこはかなり矛盾した感情なんだよね。

零司「にしても結構意味不明だがな…」

うーん…。まぁ、占いってのは伊吹にとっては自分の一部分と同じって事だよ。

>輝雪「まあまあ。それが普通だって。で、ハヤテくんは見事アドバイスGET!」

>和也「零司の方はあまりいいことではなさそうだな」

まぁ、ハヤテの知らない所で不穏な事言われてますけどね。

零司「『Hell』はないだろ…」

いやー…、こっから先がねえ…。

伊吹「キヒヒ……ま、零司のは過去の事を断片的に言っただけだがな」

いやいや…。それが零司にとってはダメだってば…。

>輝雪「お兄ちゃんはどうしてそう平然としていられるのかしら!?」(←殺気にあてられた)

>和也「知るか」

>輝雪「自分の事なのに!?」

零司の殺気。あれって心臓弱い人は死んでるけどね。

ハヤテ「かなり危険!?」

零司「訓練すれば誰でも出来る」

伊吹「出来る奴とできない奴がいるだろ……キヒヒッ」

>和也「で、最後は六花さんに呼ばれて行ったら・・・」

>輝雪「また黒ローブ!」

実は黒ローブって六花さんいない所狙ってるんですよね。

ハヤテ「あ、そういえば確かに…」

まぁ、六花さんいたら襲えないってのが理由だけど。

ハヤテ「身も蓋も無い答え!?」

>和也「鬼ごっこか。どうなるかな」

>輝雪「ま、それは次回に持ち越しって事で」

結構逃げますよ?

ハヤテ「本当に鬼ごっこですね…」

>和也「今回はこれにて」

>輝雪それでは♪」

六花「感想ありがとうございました♪」

>和也「・・・匿名。まだ壊れてるのか?」

>輝雪「・・・あ」

……どうやったら治るかな?

零司「高確率で無理」



▼ キーさん

>χ「どーも。忘(以下略)」

調「そこまで略すと何言ってるかわからんぞ。」

だから私(以下略)

零司「本当にわからねえ…」

>χ「わかる人にはわかる。」

だよ、零司!

零司「知るかよ!?」

>調「まぁいい。……六花さんには何言っても無駄だからスルー・・・」

>リン「そればかりで六花さんをスルーした事しかないじゃない。」

六花さんは何を言っても意味ないさ…。だって基本なんでも出来るからね!!

六花「その言い方は弊害があるんですけどね〜…」

アテネ「だけど六花は大体の事はできますわね」

>χ「伊吹か。」

>リン「・・・・・・・・・・・・」

伊吹「月乃伊吹……よろしく。キヒヒッ」

ふっ。←(やっかいなキャラを生み出しちまったなぁ…)

零司「だから今更だっての」

>調「あの占いって、」

>χ「ほぼ的中だったら占いじゃない気がするのは僕だけか?」

>調「だな。」

何を言いますのやら。

伊吹「キヒヒ……百%だったら占いじゃないかもな…」

でも、伊吹の占いは九十八%!だからまだ占い!!

ハヤテ「それでも凄い事には変わりありませんけどねぇ!?」

>リン「・・・・・・・・・・・・」

>χ「この新キャラは一心不乱に走って何処へ行くつもりかね。」

>調「知らん。ま、後々何かあるんだろ。」

うん、走ったのは…。

伊吹「…………ノーコメ」

言えないよねぇ…。

>リン「・・・・・・・・・・・・」

>χ「こいつはいつまでこうしているんだ?」

……ところで何でさっきからリンは黙ってるの?

零司「そいつなりの理由があるんだろうさ」

>調「……しょうがないね。…六花さんには……何か特殊なスキルでもあるんだろ。それか
発信機とか。」

>χ「そうだな。……リンはどう思う?………って居ないし。アイツ何しに来たんだよ。」

いや、六花さんには特殊なスキルなんてあるけど無いですよ?

零司「いや、どっちだよ!?」

六花「まぁ、ありますけど、心を読むほどのスキルは無いですね〜♪」

単に情報網使っただけ。

ハヤテ「何のですか!?」

秘密。

>調「僕的には六花さんはリン以上に読めないキャラだな。」

>χ「てことで六花さんはするー…」

確かに六花さん読めねえや。

六花「作者さん自信がそうなんですか…」

>リン「・・・・・・・・・・・・」

>χ・調「なんでいるの?」

>リン「・・・・・・・・・・・・」

零司「喋れや!」

>χ「……わかったよ。……まぁ、考えていることを読むスキルはリンにもあるし、六花さ
んにはむしろあって普通みたいな?」

>リン「まぁ、私は考えていることを勘で予想するだけだけどね。…いつも当たるけど。」

六花「いや、無いんですけど…」

単に会話の流れから読んだだけだしね。

>χ・調(リンがしゃべった。)

>リン「何か問題でも?」

>χ・調「いや、……まぁ、また次回もこれたら来ます。…来れなかったらまた次に来ると
きにお約束のをやるんで。…まぁ、キャラのリクとかあったらどうぞ。」

零司「いや、もっと喋れや」

まぁまぁ。それじゃキャラのリクは……お任せにします!

ハヤテ「キーさん感想ありがとうございました♪」



▼ 迅風さん

>恭介「やっはー久々の感想だぜ、いぇーい!! 鍵森恭介いぇーいっ!!」

>ハヤテ「恭介、テンションで感想空いた事を誤魔化すの常套になってませんか何か!?」

いやっはー!!

零司「お前も上げなくていいからな!?」

嬉しいから上げてるだけですが!?

零司「限度を考えろ!」

伊吹「キヒヒ……ま、感想ありがとうな」

>歌詠「でも空いたわよねー。芙蓉鴇歌詠ー。リクエスト感謝するわねーっ♪」

>十六夜「東雲十六夜だ。リクエスト感謝するよ」

観測者とハヤテに惚れてる人―♪

六花「一回十六夜さんに切り刻まれてきたらどうです?」

>ミラ「竜」

>鈴音「……み、ミラちゃん? 相変わらずだけど最後まで言い切ろうね……? あ、えっと鍵森鈴音です♪ それとクラスメイトの竜胆ミラちゃんです♪ リクエストありがとうございますね♪」

はっはっは。個性豊かだよね、迅風さんの所のキャラって。

零司「絶対こっちにも濃い奴いるからな?」

>ハヤテ「それで一番初めは……ヒナギクさんが何か悶々としてる様子ですけど、大丈夫でしょうかねー?」

ハヤテが言うかー…。

零司「ハヤテが言っちまうかー…」

ハヤテ「何で二人ともそんな目で僕を見るんですか!?」

>歌詠「操咲さんが言いますかー……。って言ってもこっちではヒロイン違いだし、当然ではあるかー……。……それで、相変わらず綾崎さんはほにゃっとした笑顔ねー……」

>十六夜「……先輩に女心を理解しろ、という事自体が酷な話だよ……はっ」

あっちじゃ恭介のヒロインだものね。

零司「こっちは?」

……さあ?

零司「おい」

にしてもハヤテが女心を理解するには…。

六花「するには?」

……一回死のうか、ハヤテ。

ハヤテ「絶対にお断りですけど!?」

>ハヤテ「失礼ですね、東雲さん。僕はこう見えてちゃんと女性の心を理解していますよ。恋愛ごとには鋭敏ですからねっ!!」(←胸を張ってえっへん、と)

ダウト!

零司「ダウトォ!」

ハヤテ「何でですか!?」

>恭介「衣類に困った瞬間に即座に六花さん登場か……「……あれ? 反応無いのは何でですか……?」流石だな♪ そんで確かに理事長室に行ったらアウトだわなー」

>鈴音「そうだね、お兄ちゃん……!! 私だってあんなことあったら恥ずかしいですし……もし虎鉄さんに見られたらと思うと(安心しろ、殺すから♪by恭介)……!!」

六花「ありがとうございますね、鍵森君♪」

見つけた方法はまだ秘密。

ハヤテ「というかあっちの僕の発言がスルーされてるんですが…」

というか虎鉄の恋が険しすぎる…!←(ハヤテ「あれ!?僕もスルーですか!?」

零司「単に恭介が邪魔してるだけだと思うけどな…」

>ミラ「裸くらい」

>鈴音「ミラちゃん……『裸くらいで何でそんなに慌てるのかまったくわからないな。ミラはハヤにーさまに見られても平気だな』発言は止めようね……!!」

零司「うっわ大胆」

ミラだしねぇ…。でもやめようかぁ!?

アテネ「うぅぅ…///」

六花「こちらはこちらで照れてますけどね…♪」

うん六花さん。嗜虐的な笑みを浮かべるのをやめようか。

>ハヤテ「そこ訳さないで欲しかったです!! って言うか皆、反応無かったのは何で!? 絶対女心、理解してますもん……くすん。……にしても六花さん凄いですよね本当……。そして元凶の零司さん登場です」

いやーハヤテが女心を理解する日なんて来ないよ…。

ハヤテ「いや、ちゃんと理解してますからね!?」

零司「どの口が言うわけ?」

六花「あちらのハヤテ君も絶対に理解してませんもんね〜…。それはそれとしてありがとうございますね、ハヤテ君♪」

零司「ってか、誰が元凶だぁ!?」←(いや、元々は君が原因だけど!?)

>恭介「ははは……。まぁそこは冗談として……唐揚げが迫ってきたな」

>歌詠「どういう状況ですか、この仕返しはー……。そして滅茶苦茶突っ込んでくるし!! 良く窒息死しなかったわね、綾崎さんー!? 私なんてうどんで窒息死しかけたのに……巻き付いてくるもんね、うどんー」

ハヤテ「真面目に苦しかったです…」

零司「手加減はした。死なない程度に」

仕返しにしては酷い分類だよ…。

ハヤテ「本当に窒息しなかったのが不思議ですよ…」

手加減はちゃんとしたんだよ。二度目だけど言うの。

零司「というか、歌詠はなんで麺類が巻きつくんだ…?」

なんでだろうか…。

>十六夜「いや、それは芙蓉鴇さんが特殊なだけだと考えるが……。そして話題忘れたか。うん、まぁ無理はないかもな、一応になるが」

>鈴音「いっぱい咽てましたもんねー……。それで相談したわけですが、大神さんから言ってしまえば解決難しい、と……」

零司「いやー……楽しかったなぁ…♪」

ハヤテ「楽しかったってなんですか!?こっちは死ぬかと思ったんですけど!?」

そのおかげで話題忘れるし…。アホか!?

零司「違うけど!?んでま、俺がどうにかできる範囲を遥かに超えてるしなー…」

特殊すぎるもんね…。

>ミラ「ミラは慣れればいいと思うぞ」(←さも名案の様に)

二人『やめてぇええええええええええ!!?///』

死ぬなぁ…。

六花「ですねぇ…」

>恭介「なるほど、天王州が恥ずかしがらない様にいっそ見まくれ……と。死ぬな、どっちかが。……で、診断の結果、占ってまえーっという話に落ち着いたか」

確実にハヤテの方が先に死ぬと思う…。

六花「どっちもどっちだと思いますけどね…。結局羞恥な訳ですし…」

ハヤテ「あうぅぅ…///」

アテネ「うぅぅぅ…///」

………うん、確実に死ぬね。

>歌詠「凄いボロボロの部屋ねー……こういうのもあったか、白皇学院ー……」

>恭介「いやいや、白皇学院広すぎるからなぁ……。俺も散策してみたんだが、どうにも広すぎて散策しきれないって事実にぶち当たったし……そもそも地下がなぁ……」

場所は白皇の端っこ。

伊吹「キヒヒ……人なんて皆無だから楽なんだよな」

零司「お前本当に人来ない所好きだよな」

というか地下…!?

六花「……あったんですね」

謎過ぎる…!

>ハヤテ「……地下……!? それで現れたのは月乃さんですかー」(←外見でびびらなくなってきた執事君、だって周囲が何か特殊だしさ!!)

伊吹「月乃伊吹。よろしく。キヒヒッ」

結構不気味なキャラです。そんでもって謎。

零司「確かに謎っちゃ謎だよな」

>十六夜「それにしても同クラスで気付かない、か……。そして月乃氏は占いが良く当たる、という事で一部に有名なのか……」

>恭介「ほとんど未来予測だな。まぁつってもこの世に未来予知は無いか……。……で、月乃の占いの前に――月乃自身は人畜無害なのか……。そして状況は特殊過ぎる、と。……うんまぁそうだわな……」

意図的に影薄くしてますからね。

ハヤテ「どうやって!?」

伊吹「キヒヒ……一体化的な感じで」

ハヤテ「どうやるんですか!?」

んでもって有名なのは……うん、占い好きの人だよね。

伊吹「ま、同じ穴のムジナって事だしな……キヒヒッ」

零司「しかも的中率98%……何でさ」

伊吹「キヒヒ……知るかよ。んでま、あんな状況にぶち当たった事ねえよ!?」

ハヤテ「すいません!」

>鈴音「でも良かったですね♪ 占いの結果、数日経てば大丈夫って結果でしたし♪」

>ミラ「よくわからないが良かったなハヤにーさま♪」

ハヤテ「はい♪ありがとうございますね♪」

まぁ、平和なのはここまでだし…。

ハヤテ「今なんて言いました!?」

>恭介「本当に良かったじゃないか♪ 状況悪化にはならなくてよ♪ ……と、言いたいところなんだが、もう一方の結果はこりゃまた厄介な……結末は変わらない、かよ……」

>ハヤテ「hellって……向こうの僕も大変そうなものを……!!」

軽度か重度か……結局は地獄だけどね!!

ハヤテ「何で変わんないんですか!?」

零司「ハヤテだからじゃね?」

ハヤテ「僕だからって可笑しくありません!?」

ま、結局は最悪な未来が待ってるんじゃないかと…。

>歌詠「綾崎さんの相当重いけどさー……大神さんのも何と言うべきか……」

零司の場合は未来じゃなくて過去…。

零司「じゃなくて現在が一番しっくりくるな、あれ」

……………やっべ、マジ過酷。

零司「だな…」

>ミラ「豆腐の連鎖……」

零司「崩れるけど!?」

いや、ツッコミ合って無くない!?

六花「……ともかく豆が無くなって腐が普通になればいいですね…」

>恭介「いや、意味がわからないぞ、ミラ!? 豆邪魔!! 豆いらないから!! どっから食い物出てきた!! ……にしても本当、大神は大変そうだわなー……そして殺気ぶつけられても平気そうな顔してる月乃やりやがる……」

零司「ああ、大変だな」

何でケロッと言えるのかなぁ!?

零司「え、慣れ?」

えー…。

零司「というか、何で伊吹は普通なんだ?」

伊吹「慣れ。キヒヒッ」

>ハヤテ「……と言うか意味された三枚の意味が僕は気になりますよ……。……それにしても月乃君、占いに対してすっごい複雑な心境なんですねー……」

あれって正位置がいい意味で逆位置が悪い意味なんですよねー。いや、勝手に決めたけども!

零司「……というか、憎悪に良いも悪いもねえと思うんだけど?」

…………ノーコメント☆

伊吹「キヒヒ……それで占いに関する思いは…」

……すんげえ複雑なんですよー…。

零司「やりたくないのにやらなければ壊れる……複雑だなぁ…」

>鈴音「何か皆さん、大変そうですよねー……心配です……」

>十六夜「比喩ではなく現実に壊れるの意味は果たして……。当たり過ぎる占いというのは考え物だな。……それで最後……うん、窮地だな」

現実に壊れるその意味は…!

伊吹「精神的、肉体的、人間的に壊れるって事だな。キヒヒッ」

ハヤテ「当たりすぎるってのも嫌ですねー…」

そして最後。

零司「……何でああなった?」

……さあ?

>ミラ「誘拐」

>ハヤテ「本当にね!! めっちゃ攫われてるし!? 向こうの僕頑張らないとだよ!!? ……そして何でこんなにお嬢様狙うんだろう本当……!!」

ザ・誘拐!

ハヤテ「かっこよく言うことでもないですからね!?」

でも事実だしー。

ハヤテ「そうですけどね!?そしてあっちの僕ごめんなさい!!」

零司「奇妙な光景だなぁ!?」

ねー。そしてアテネを狙う理由は……アレだ、一番楽だからだ、出すのに。

零司「…?出す…?」←(出番の意味じゃないです)

>歌詠「それで鬼ごっこの始まりかー……次回の展開が気になるわねーっ」

>恭介「というわけで次回は鬼ごっこ!! んじゃ、次回もリクエストがあれば言ってくれ!!」

>鈴音「それでは、またです♪」

今回は短めになった!

零司「何で!?」

鬼ごっこでそんな書けない!!

ハヤテ「身も蓋も無い事を!?」

それでリクエストは……よし、迅風さん、銀次郎さんに睡蓮さんにファルガンにユークにルーシャにイシュリナでお願いします!

零司「選抜理由は?」

作者さんと人間、神、天使を適当に!!

六花「迅風さん感想ありがとうございました♪」



さてさて、二十五話目。

零司「今回は鬼ごっこか…」

ま、ハヤテメインだから他の人はあまり出ないしね。

零司「そりゃ俺がしゃしゃり出るような問題でもないし……そもそもクローブが天皇洲狙ってるんだしな」

まぁね。というそのあだ名……つっこまなくていいや。

それでは、どうぞ!



――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――



黒ローブが理事長室から逃げ出し、二、三分後。

場所は零司とナギの所になる。

二人は並んで下校していた。

「くぁ……ねみぃ…」

「何だ、零司。寝不足か?」

「いや、そういう訳じゃないんだが…」

零司はそこで言葉を切り、並んで歩くナギを見る。

対するナギは「?」と首を傾げるだけ。

「……いや、やっぱり寝不足だな。主にチビ嬢のせいで」

「何故私のせいなのだ!?」

「記憶無いお前のほうが驚きだよこんちくしょう…」

その零司の言葉に対し反論するナギの言葉を聞き流しながら、零司はこの寝不足のようなものの原因を考え始める。

(んー…?あれ?全く心当たりねぇな…?)

実際的にはナギのゲームに付き合ってるという事もあるのだが……その程度は基本、零司には関係が無い。事実、過去には三日間寝ずに行動した事がある。

それはさておき、実際の原因は先日の事が関係していたりする。

先日、白皇の端の教室で伊吹に言われた言葉……過去と、未来の事である。

といっても、零司自身はそんな事は気づいていないので、意味は無いのだが。

ともかく、そんな事があって夢見が悪く、寝た気にならないのである。

……まぁ、特に零司が生活するのに問題は無いので特に零司も気にしてないのだが。

「おい、聞いているのか零司!」

と、零司が考えていると、ナギの声で思考を遮断される。

そして勿論聞いているわけも無く、「悪い、聞いてなかった」という他無い。

「なんだと!?」

そしてその言葉に更にナギはヒートアップする。

その言葉さえ、零司は聞き流し、今度は屋敷での仕事を頭に思い浮かべ始める。

その瞬間―――



ゴゥ!と突風が零司達の前を通った。



「わぷっ!?」

「っ!」

いきなりの事にナギは目を瞑り、零司は目は瞑らなかったが手で風を防ぐ。

さらに一拍後、先程よりも強い風が零司達を襲った。

「ちっ!」

その先程よりも強い風に、零司は咄嗟にナギをかばった。

そして、その時零司の目に映ったのは―――

(黒ローブに、ハヤテ……つまりはそういう事か)

普通の人なら見えないほどの速度だったが、零司にはまだ見えるスピードだった為、捉える事ができた。

だが、捉えられた事をこの時ばかりは零司は後悔した。

「なんだよ…」

「本当になんだったのだろうな、今の風は…」

自分とは違う意味のナギの言葉が、少し零司には痛かった。





       第二十五話「鬼ごっこ」





「くっ…」

木々が生い茂る中を全力疾走しながら、ハヤテは苦悶の声を出した。

そして、遥か遠くとはいえないほどの距離だが、一瞬では追いつけないほどの距離にいる黒ローブをハヤテは睨む。

先程―――理事長室で逃げられた頃から、ハヤテは全力で黒ローブを追いかけているのだが、全く追いつく気配が無かった。

(どれだけの速さなんですか…!)

ハヤテは自分の足の速さに、多少の自身はある。

だが、その自身を打ち砕くかのように、黒ローブの速さはそれ以上だった。しかも、アテネを担いだ状態でだ。

そんな事を考えていると、光が溢れた。

それが、森を抜けたのだと脳が認識すると同時に、ハヤテの目に建造物が入ってきた。

(時計塔…!?)

「まさか…!?」

そうハヤテが呟くのと同時、黒ローブがアテネを担いでいる方とは逆の手に握っている物を時計塔に投げつけた。

それはナイフだった。数は数本だったが、それは時計塔に刺さっていく。幅は一本ごとに二〜三メートル。

それを、黒ローブは足場とする。

一本目のナイフを踏み、飛ぶ。体重に耐え切れず、ナイフは折れるが黒ローブはそんな事は気にしてもいなかった。

更に、二本目のナイフを足場にし、更に飛ぶ。三本目、四本目、五本目……と、黒ローブは時計塔に刺した全てのナイフを使い、時計塔のテラスよりも上の場所に立った。

「な…」

その様子を見て、ハヤテからこぼれた言葉はそれだけだった。

そして思った事はたった一つ。



あまりにも自分との差がありすぎる。



もしハヤテが同じことをやろうとしたら、ロープが必要になるだろう。

だが、黒ローブはそんな物を使わず、上りきった。

残酷なまでの差を見せ付けられ、ハヤテの心は折れかけた。完璧に折れなかったのはアテネと言う存在がいたからだろう。

そして、心が折れかけていたからだろうか。ハヤテは自分に迫る物に気づく事が出来なかったのは。

「―――がっ!?」

そしてハヤテがその飛来物に気づいたのは、自分に矢が刺さった痛みを脳が認識したときだった。

その痛みに、ハヤテの意識は引き戻され、すぐさま自分の体を確認する。

刺さった矢は一本だけで、それも左腕だった。

刺さった事は不幸だったが、幸いだったのは浅く刺さった事だろう。遠いところからの攻撃で速度が落ちたのだろう。

「…………」

黒ローブはそれを見たのかどうかはローブに隠れてわからなかったが、ハヤテに背を向け時計塔から飛び降り、森の中へと消えた。

「待て!」

そして、それを追ってハヤテも森へと入っていった。





       *    *    *





ハヤテが黒ローブを追って森に入ったのと同時刻。

校舎の屋上から一人の女性がハヤテ達の動向をレンズ越しに監視していた。

「ふぅ…」

その女性はハヤテが森に入ったのを確認すると、覗いていた物から目をはずす。

「疲れたわ…」

そう言いつつ目を揉むのは、ハヤテの隣の席である蓑実早菊花であった。

「流石に森の中までは見れないのよね…」

別に見る事もできるんだけど……あれはなぁ…。と呟きながら、菊花は両手に持っていたライフルを地面に下ろす。

「あー……肩こるー…」

そう言って肩をぐるりと回した時、制服のポケットの中から振動が伝わってきた。

「あれ…?何かあったっけ…?」

首を傾げながらも菊花は携帯を取り出し、そのディスプレイの人物に少しの驚きを覚えた。

「意外ね…」

そう言うと、通話ボタンを押し、耳に当てた。するとすぐに聞き覚えのある声が聞こえてきた。

『もしもし?』

「もしもし」

『繋がってる?』

「ええ、繋がってるから安心して話していいわよ」

よかったー?と特徴ある声に菊花の頬が自然と緩んだ。

(数ヶ月程度離れてただけだというのにね…)

「それでどうしたの?」

『何も無いよ?ただお話したかっただけ?』

その言葉を聞いた瞬間、菊花の中に充足感に似た物が満ちていく。

「それは嬉しいわね」

『だってもう何ヶ月もお話してない?』

「まぁ、確かにそうだけど……でも、寂しくは無いはずだけど?」

菊花がそう言うと、電話越しの相手は『ううん…?寂しかったよ…?』と沈んだ声で返してきた。

「そうなの?」

『そうだよー…?』

(まぁ、私も結構寂しかった感じはあるけども…)とは内心では思いつつも、口には出さずに「ふーん…」と返しておく。

『ところで任務は順調?』

「唐突過ぎるわよ」

唐突過ぎる話の変更を菊花がツッコムと、電話の相手は『うー…?』と唸っていた。

「ま、順調も何もただ監視するだけだからね。順調も何も無いわよ」

『そうなんだ?』

「えぇ。だって今だって森の中入っていったから追えないし」

菊花の返しに『え?』と相手は不思議そうな声を出した。

『でも、見る方法はあるよね…?』

「いやいや……流石にそれやったら駄目だからね?」

『そっかー?』と相手の納得した声音に、菊花はこめかみの辺りを叩く。

(相変わらず若干ずれた価値観ね…)

「ま、今日で任務終わる場合もあるかもね」

『そうなの?』

「ええ」だって、と菊花は一拍置き、「今日で死ぬかもしれないしね、綾崎ハヤテ」





       *    *    *





そして再び場面はハヤテに戻る。

ハヤテは先程とは違い、木の枝を足場にして黒ローブを追っていた。

「はぁ……はぁ…」

息を荒げながら、ハヤテは必死に黒ローブを追う。

だが、その距離は先程よりも離れていた。下手したら見失ってしまうくらいにまで。

(せめて下が普通の地面だったなら…!)

ハヤテには珍しく、恨むように自分の中で呟き、一瞬だけ下へと視線を移す。

一瞬だけ見えた光景。それは草で覆われた光景。

これだけならまだ普通の地面があると思うだろう。

だが、その草に覆われた下。そこは地面など無かった。

(さっきは落ちるかと思いましたよ…!)

実は黒ローブを追って草を踏んだ瞬間、ハヤテは落ちかけていた。

だが、今も手に持っている日本刀を刺し、助かったのである。

(それにしても、この刀って結構頑丈だよな…)

枝を飛び移りながらハヤテは不意にそんな事を思った。

アテネで出会った青年、ディオに貰った日本刀。

今まで何となしに使ってきたが、一向に切れ味が落ちる事がない刀。

別にハヤテが手入れしているわけではない。というより、手入れの仕方がわからない。

それだというのに、今までハヤテの手に伝わってきた斬れた感触は、全てが同じだった。

いつかまた出会ったのならお礼を言おうと、決意したハヤテ。

その瞬間、ゾワッ!!と全身に得体の知れない感覚が走った。

「っ!?」

関係ないことを考え、集中を切らしていたからか、ハヤテはその感覚を感じると同時に、枝から足を滑らしていた。

「くっ!!」

枝を蹴って飛び移ろうとした瞬間に足を滑らしたので、ハヤテは枝と枝の間に浮くという中途半端な空間に投げ出された。

咄嗟に手を伸ばす。が、次の枝に指先がかするだけで届かず、そのままハヤテの体が落下しようとする。

「―――!」

それを本能のようなもので理解したハヤテ。そしてハヤテは刀を握っていた右手を突きのように突き出していた。

脳が命令して起こした行動なんかではない。ただ、直感的にそうしただけだ。

結果、その行動は吉と出た。突き出した刀が深々と木に刺さり、ハヤテの体は落下をせずに済んだ。

「ふう…」

助かった事に安堵の息をハヤテはつく。

そして、木を上ろうと上を向く。



刹那、ドガガガガガガガッ!!という音が連続した。



「……なっ…」

音が鳴り止んだ後、見えた光景にハヤテは思わずそう漏らした。

ハヤテの目に映る光景。

それは、数え切れない程の矢が隙間無く周りの木々に刺さっていた光景だ。

しかも、つい数秒前までハヤテが飛び移ろうとしていた枝を中心にして、刺さっていた。

どう考えても、ハヤテを殺す為に設置された罠だろう。

しかも事前に設置された類の。とハヤテは判断する。

「……本気のようですね」

改めて、相手の本気を目の当たりにし、先程までのハヤテとは違った雰囲気が漏れ出す。

「……ふー…」

一度深く息を吐き、ハヤテは気持ちを落ち着ける。

そして、零司に言われた事を思い出す。

『まだ誰かを守りたいなら、その甘さを捨てろ!』

(今なら、零司さんの言う事がわかる…)

人は何かを犠牲にしてでしか、何かを手に入れることなんて出来ない。

何も犠牲にせず、手に入れることなんておこがましい。

零司はそう言いたかったのだと、ハヤテは理解した。

「…………」

無言でハヤテは木を登り、見失った黒ローブの消えた方向を見据える。

その目はもう、いつものハヤテの目ではなかった。





       *    *    *





そして、数分後。

ハヤテは見失っていた黒ローブを見つけていた。

「……いた」

地面に伏せ、草むらのかげから見つめながらハヤテは呟く。

今、黒ローブはアテネを下ろしており、自身は立って軽く背を伸ばしてたりしていた。

奇襲にはもってこいの状況だった。

因みに、今ハヤテ達がいるのは森の中でも、円形にぽっかりと開いた空間である。

半径およそ三メートル前後。

ハヤテならすぐに詰められる距離である。

だからと言って、ハヤテは油断なんかしない。

たった一回の敗戦から、ハヤテは黒ローブには最新の注意を払っていた。

次は負けないように。守れるようにと。

さらに、零司にかけられた言葉。

それらの要因から、ハヤテは黒ローブに対しては慢心などしない。

「ふー…」

息を吐き、気取られないようにゆっくりとハヤテは立つ。

チャンスは一回きり。失敗したらどうなるかわからない。

その緊張感が、ハヤテに圧し掛かる。

(失敗は終わり…。一度で終わらせる覚悟を…。いや…)

いや、それは自分を偽る言葉である。本心は―――

(もう、甘えなんて持たない…!)

そう決意新たにすると同時、黒ローブがハヤテのいる方から背を向けた。

それを、ハヤテが見逃すはずが無い。

(『疾風のごとく』!!)

草むらから風のように、いや、最早弾丸のようにハヤテは飛び出した。

「…っ!?」

そして、もう当たるかというところで黒ローブはハヤテの接近に気づいた。

「はぁああああああ!!」

ハヤテの声に、黒ローブはどうにかよけようとするが、もう遅かった。

「ぐがっ…!」

ハヤテの体当たりにも似た攻撃がもろに当たり、さらに離れ際に刀で斬られ、少量の赤と多量の黒が舞った。

ローブごと斬られた黒ローブは真後ろに飛ばされ、ローブを飛ばされながら木に激突した。

「ぐっ…」

木に当たった事で黒ローブは呻くが、すぐに立ち上がった。

そして、情けと言わんばかりに残っていたフード部分を鬱陶しげに脱ぎ捨てた。



その下から現れた人物。

「そんな…」

それは想像すらしていなかった人物。

「何で…」

闇のような黒い髪色。それが顔を覆っている髪型。それが不気味な印象を与えてくる。

「何で君が…!」

そして、ハヤテはその名を告げた。



「『月乃君』!!」



――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――



はいっ!二十五話目おっしまい!

零司「正体わかったなぁ…」

わかったねぇ…。

ハヤテ「いやいやいや!?何でそんなに落ち着いてるんですか!?」

いや、私作者。

零司「俺、見えた」

ハヤテ「だからって落ち着き過ぎですからね!?」

まぁまぁ。そして黒ローブの正体は月乃伊吹でしたー♪拍手―♪

零司「イェー♪(パチパチパチ)」

ハヤテ「拍手する必要ないですからね!?」

零司「だなー。でもま、いいんじゃね?」

そだねー。

それじゃ、次はVS伊吹かな?

それでは!!

ハヤテ「まだ納得いかないんですけど!?」

零司「んじゃなー♪」

ハヤテ「ちょっと!?」
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Re: 誰がため、何のため 9/8更新 ( No.57 )
日時: 2012/09/09 00:31
名前: 匿名

どうも♪匿名です♪
ルナ「ルナです♪」
和也「和也だ」
感想に来ました♪
ルナ「それにしても、最初から大変なことが起きてますね」
もはや普通の人では視認できない早さだしね。零司は見えたみたいだけど。
和也「ハヤテの速度でも追随できないとは、なかなかの速さだな」
でもまあ、ひなゆめだと、ハヤテより速い奴なんていくらでもいるけどな。
ルナ「ははは。そして、黒ローブの人はハヤテさんでは簡単にはできないことをやってのけますね」
和也「?できないのか?」
できるの!?
和也「輝雪が短刀三本持ってること忘れたか」
ルナ「そういう風にも使うんですか!?」
和也「そうだが」
二人「「・・・・・・・・・・」」(←唖然)
和也「何に驚いてるかは知らんが、黒ローブは矢でハヤテに攻撃しながら移動してるのか」
ハヤテは左肩にくらったね。浅いみたいだけど。
ルナ「ディオさんからもらった刀が役立ちましたね」
和也「それにしても、斬れ味が落ちないとは・・・どういう刀だ」
ふっしぎ〜。
ルナ「呑気!?ちょっと、ハヤテさんが死ぬかもしれないんですよ!?」
大丈夫だろ。
ルナ「どうしてですか!?」
主人公だもん。
ルナ「・・・元も子もないこと言いますね」
和也「そして最後には黒ローブの正体が・・・奴の占いと関係あるのか?」
ルナ「でも、どうして?」
次を待つしか無いな。
和也「そういうことだ。それじゃ、今回はこれにて」
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Re: 誰がため、何のため 9/8更新 ( No.58 )
日時: 2012/09/09 09:00
名前: キー

 調「ど〜も。…調だが、………」

 セレン「セレンと申します。以後お見知りおきを…ですが……」

 2人「黒ローブ(月乃君)速すぎる。」

 調「何故ハヤテは一撃で決めなかったんだ?」

 セレン「それはまぁ、黒ローブの正体に興味があったからかと。」

 調「…ハヤテはまだ甘い気がする。……相手の正体を知る前に相手を気絶か縛りで、最悪
の場合殺してでも戦闘不能にすべきなんだが。」

 セレン「まぁ、もう少し速ければ頭を殴るだけで簡単に気絶に追い込めるからな。」

 調「こっちのハヤテは……捕獲が苦手だがな。」

 セレン「『誰、何』のハヤテくんよりスピードはあるけど……『自分の技術が相手の弱点
を確実について確実に殺す』ような属性ですし。」

 調「零司の言ったことだが、…問題は犠牲にする物と手にするものの対価だな。」

 セレン「月乃君の立場って、結構難しいのですよね。…能力的にハヤテが勝てない相手で
はないかと思います。無傷は無理でしょうけど。」

 調「此処でも『何を犠牲にして勝つか』だな。…勝ちを犠牲にすることがないことを祈っ
てこの感想を終わる。」

 セレン「さて、リクエストとかあればどうぞ。」
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Re: 誰がため、何のため 9/8更新 ( No.59 )
日時: 2012/09/17 15:30
名前: コサッキー

<レス返し>

▼ 匿名さん

>どうも♪匿名です♪

>ルナ「ルナです♪」

>和也「和也だ」

>感想に来ました♪

感想ありがとうございますー♪

零司「にしてもソルナって結構特殊だよな……今更だが」

そだねー…。二重人格者……まぁ、なってみない事にはわからないね。

>ルナ「それにしても、最初から大変なことが起きてますね」

>もはや普通の人では視認できない早さだしね。零司は見えたみたいだけど。

鬼ごっこー♪

ハヤテ「楽しそうに言う事ではないですけどね!?」

零司「というか、視認するのも辛い速さだったんだよなぁ…」

……よく見えたね。

零司「そこは慣れだ」

>和也「ハヤテの速度でも追随できないとは、なかなかの速さだな」

>でもまあ、ひなゆめだと、ハヤテより速い奴なんていくらでもいるけどな。

因みに速さはハヤテの数倍以上。

零司「速っ!?」

しかもアテネ担いだ状態でだから……最高速ってどんくらいだろうね…。

ハヤテ「というか、ついて行くので精一杯でした…」

零司「よく追い縋れたな…」←(零司だと確実に離されてますからねー…)

というか、ひなゆめだからは…。

零司「まぁ、当たり前だよな」

>ルナ「ははは。そして、黒ローブの人はハヤテさんでは簡単にはできないことをやってのけますね」

黒ローブ改め伊吹「キヒヒ……簡単ではないがな…」

だねー。ナイフなかったら出来なかったし。

>和也「?できないのか?」

>できるの!?

零司「俺も和也と同じ事言うけど……できないわけ?」

そうだったよ!この人出来たよ!

>和也「輝雪が短刀三本持ってること忘れたか」

>ルナ「そういう風にも使うんですか!?」

>和也「そうだが」

あっちもよく出来るねえ!?

零司「なー」

というか、君は何も使ってないけどさぁ!

>二人「「・・・・・・・・・・」」(←唖然)

ほぼ全員『……………』←(唖然)

零司「……何故にそんな視線でも見られる?」

>和也「何に驚いてるかは知らんが、黒ローブは矢でハヤテに攻撃しながら移動してるのか」

>ハヤテは左肩にくらったね。浅いみたいだけど。

いや別に移動はしてませんけど…?

伊吹「それと場所は左腕だしな。キヒヒッ」

>ルナ「ディオさんからもらった刀が役立ちましたね」

>和也「それにしても、斬れ味が落ちないとは・・・どういう刀だ」

>ふっしぎ〜。

ハヤテ「本当に何でなんですか…」

ディオ「……さぁ?」

ハヤテ「ディオさん自身がわかってない!?」

にしても、頑丈って域を軽く超えてるね。

ディオ「まぁ、そういうもんだしな」

>ルナ「呑気!?ちょっと、ハヤテさんが死ぬかもしれないんですよ!?」

>大丈夫だろ。

>ルナ「どうしてですか!?」

>主人公だもん。

>ルナ「・・・元も子もないこと言いますね」

その通り!死んでもらったら困る!

ハヤテ「その理由がどうなんでしょうねぇ!?」

大丈夫、今後はわからない。

ハヤテ「えぇええええええええええええええええええええええ!!?」

>和也「そして最後には黒ローブの正体が・・・奴の占いと関係あるのか?」

>ルナ「でも、どうして?」

>次を待つしか無いな。

占いは一切関係ありませんねー。

伊吹「キヒヒ……というよりも、俺自身に関する占いは三十%くらいしか当たらないし……そもそも俺は自分を占ってすらない」

零司「というか、理由がまるで想像できないんだが…」

うんまぁ……理由かぁ…。

それは今回で……出来るわけあるかぁ!!

ハヤテ「えぇ!?」

>和也「そういうことだ。それじゃ、今回はこれにて」

六花「匿名さん感想ありがとうございましたー♪」



▼ キーさん

>調「ど〜も。…調だが、………」

>セレン「セレンと申します。以後お見知りおきを…ですが……」

零司「感想ありがとな」

セレンさんは初めてかな?

それでどうしました?

>2人「黒ローブ(月乃君)速すぎる。」

伊吹「キヒヒッ」

それはどんな意味の笑い声なのかな!?

ハヤテ「実際速かったんですけど…」

零司「だなぁ…」

>調「何故ハヤテは一撃で決めなかったんだ?」

>セレン「それはまぁ、黒ローブの正体に興味があったからかと。」

いやいや違うんです。

零司「は?」

文中記載出来なかったんで、ここで言いますが…。

決めなかったのではなく、決められなかったのです。

ハヤテ「どういう事ですか?」

うんまぁ……実は当たる刹那、少しだけ伊吹は後ろに飛んでたんですよね…。

といっても、当たった事には変わりませんし。

でも、クリーンヒットだけは避けたので決められなかったんです。

零司「あいつの運動能力どうなったんだよ…」

凄いよ…。

零司「というか、倒した後にでも顔は確認できるしな」

>調「…ハヤテはまだ甘い気がする。……相手の正体を知る前に相手を気絶か縛りで、最悪
の場合殺してでも戦闘不能にすべきなんだが。」

まぁ、当たってれば気絶くらいは確実だったんですけどね。

零司「後ろに飛んで少しの衝撃を逃がされた……だから気絶はしなかったって事か」

そういう事。というか、あの時のハヤテは手加減なんてする気なかったですよ?

ハヤテ「刀振りぬきましたもんねー…」

>セレン「まぁ、もう少し速ければ頭を殴るだけで簡単に気絶に追い込めるからな。」

速さが足りなかったってのは事実かな?

ハヤテ「うぐっ…」

>調「こっちのハヤテは……捕獲が苦手だがな。」

>セレン「『誰、何』のハヤテくんよりスピードはあるけど……『自分の技術が相手の弱点
を確実について確実に殺す』ような属性ですし。」

零司「捕獲しろよ!?」

難しいんだけどね、捕獲って!?

零司「いやそうだけども!捕獲したら色々やれるだろ!!」

その色々って何さ!?

零司「え?聞きたい?」

あ、遠慮しときます…。

>調「零司の言ったことだが、…問題は犠牲にする物と手にするものの対価だな。」

零司「そうだなぁ…。必ずしも対等とは限らないわけだし…」

難しい問題だね…。

零司「まぁ、敵に対する甘さと、命じゃどっちに傾くかわかりやすいと思うぜ?」

>セレン「月乃君の立場って、結構難しいのですよね。…能力的にハヤテが勝てない相手で
はないかと思います。無傷は無理でしょうけど。」

伊吹の立場どうなるかなぁ…。

伊吹「ま、どうでもいいけどな。キヒヒッ」

ハヤテ「それで、僕が勝てますかね?」

無理。

ハヤテ「即答!?何でですか!?」

勝てない決定的な原因がある。いや、そうとも言えないんだけど…。

零司「どっちだよ」

まぁ、勝つにしても重症は確実だよね!!

ハヤテ「えぇ!?」

>調「此処でも『何を犠牲にして勝つか』だな。…勝ちを犠牲にすることがないことを祈っ
てこの感想を終わる。」

さて、何を犠牲にするのかな…。

ハヤテ「勝ちだけは犠牲にしたくないですけど…」

>セレン「さて、リクエストとかあればどうぞ。」

では、奏と桜姉妹で!

零司「適当だろ」

……さあ?

零司「お前が疑問でどうする!?」

キーさん感想ありがとうございました♪




さってさて、第二十六話。

零司「いやー、ハヤテからすれば意味不明な事だろうなー」

だろうねー。

零司「さて、ハヤテはどうなることやら…」

では、どうぞ!!



――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

「『月乃君』!!」

「……キヒッ」

名前を呼ばれ、伊吹は軽く笑う。

だが、内心は少し驚きがあった。

(まっさか、一撃入れられるとはね…)

とはいっても、その一撃は伊吹にとってはたいした一撃ではなかった。

被害はローブを斬られ、その下の素肌を若干切っただけだ。その傷は一切伊吹にとって、何の障害にもならない。

(ま、目的とやる事は大して変わらないしな……ただ)頭の中で目的を思い浮かべながら(順番が多少変わっただけだよっ!!)

「キヒッ!」

短く叫び、伊吹はハヤテへと疾駆する。

ただ、目的を達成するために。





       第二十六話「『甘っちょろいんだよ!』by伊吹」





「キヒッ!」

「っ…!?」

ハヤテは自身に向かって走ってくる伊吹を見て、混乱に陥っていた頭を無理やり戻す。

が、向かってくる伊吹を見た瞬間に、折角戻した思考が再び混乱する。

なんで君が?どうして?今までやってたのも君なんですか?

そんな疑問が頭の中をグルグルと駆け巡り、まともな思考すら出来ない。

そんなハヤテはお構いなしに、伊吹は迫る。

その伊吹の姿に、捨てたはずの甘えが戻ってくる。

(出来ない…!斬る事なんて…っ!)

そしてその甘えが、ハヤテの優しさを誘発させ、戦意をガリガリと確実に削っていく。

そして―――

「あぐっ!」

眼前に迫った伊吹をどうする事も出来ず、ハヤテは伊吹の蹴りをもろに食らった。

ミシッ…。 自分の体の内部から嫌な音が聞こえた気がする。

しかし、そんな音を聞いてる暇なんてハヤテにはなかった。

伊吹の攻撃は一発では終わらず、腹に蹴りを食らったと思えば、瞬時に側頭部に痛みが走り、さらには左足、右腕、と痛みを認識したそばから次の痛みがハヤテを襲う。

「ごっ…!」

そして、二度目の腹への蹴りを食らい、ハヤテは吹き飛ばされた。

勢いは背後にあった木にぶつかるまで止まる事はなかった。

「げほっ!」

機にぶつかった瞬間、肺から空気が押し出され呼吸が一瞬止まる。

さらには、今頃になって全身から痛みが押し寄せてくる。

「が、ぁっ…」

息苦しさと猛烈な痛み。それらが一緒に押し寄せ、ハヤテの意識は朦朧としてくる。

「キヒヒ……随分と無様だなぁ…?」

朦朧とした意識の中、伊吹の声だけがかろうじて聞こえてくる。

「それで、よくも誰かを守るって言ったよなぁ……キヒヒッ」

「……ぅ」

「キヒヒ……何言ってるんだかな。聞こえねえよ」

言葉と共に、側頭部に痛みが走る。

その事が、頭を蹴られたと気づくまでに、数瞬かかる。

「……それで終わりかよ。キヒヒッ」

言葉が終わると共に、伊吹の気配がハヤテから遠のいていくのが何となくわかる。

どこに行ったのかを追おうと、ほとんど動かない首を動かし、ぼやける視界で伊吹を探す。

ぼやける視界の中、伊吹はハヤテとは反対側の方向へと歩いていた。

(何……で…?)

疑問に思いながらも、そのまま行動を見ていると、ある地点でしゃがんだ。

そこに何があるのか、今のぼやけた視界じゃわからない。が、色だけは判別できた。

圧倒的にまで自分を主張するような金色が―――

「―――っ!」

瞬間、ハヤテの意識が鮮明過ぎるほどに覚醒した。

そして気づいたときには、伊吹が何をやろうとしているのかすら考える事無く、ハヤテの体は動いていた。

「うぉおおおおおおおおおおおおおおおお!!」

最早意識すらせずに、『疾風のごとく』を繰り出す。

ゴッ!!! しかも、今まででは出来る事なかったスピードで、ハヤテは伊吹に向かって突撃する。

未だ手に握っている刀の存在すら忘れ、ハヤテは風となる。

「……キヒッ」

だが、その行動を読んでたように、伊吹は『疾風のごとく』を高く飛び回避する。

「くっ…」

避けられたことに歯噛みしながらも、ハヤテは木に足を引っ掛け、『疾風のごとく』の勢いを消す。

「キヒヒ……よく復活したなぁ?」

「そうですね…!」

伊吹の言葉を適当に返しつつ、ハヤテは今も気絶しているアテネの様子を見る。

幸い、特に目立った外傷も無く、ハヤテは小さく安堵の息を漏らす。

「別に何もしてねぇっての。キヒヒッ!」

「最早信用が出来ませんよ…!」

そして、やっとハヤテは伊吹を真正面に見据え刀を構えた。

その伊吹を見据える目には、先程の黒ローブに向けていた目と同じであり、覚悟の決まった目であった。

その視線を受け、伊吹は「キヒヒッ♪」笑い、どこからかナイフを取り出し、逆手に持って構える。

そのまま、両者がにらみ合う。

ここで、ハヤテが先程までは戸惑っていたのに対し、今は伊吹を敵と見ている理由を説明しておこう。

先程までのハヤテは、黒ローブに対して敵意を抱いており、その正体は自分の知っている者ではないと勝手に決め付けていた。

故に、黒ローブの正体が伊吹だと知った瞬間、心のバランスが崩れてしまったのだ。

そして、知人を傷つけたくは無いという、零司からしたら甘い思いが顕著になり、先程のように碌な反撃もせずにされるがままになっていたのだ。

だが、ついさっき伊吹がアテネに近づいた瞬間、ハヤテの中で、『アテネを傷つけられる』と勘違いした。

そこから、アテネを守る。というハヤテの誓いにも似た物が作用し、伊吹はアテネを傷つける者と認識して、敵と見なしたのだ。

閑話休題。

そして、場面は再び二人のにらみ合いに戻る。

片や、刀を正眼に構え、片や、ナイフを逆手に持ってごく自然体な構え。

その状態での睨み合いは一体どれほど経ったのか、それすらも麻痺する空気が森を支配する。

体感時間すら意味を成さない空間の中、ついに。

『―――っ!!』

両者は同じタイミングで動き出し、激突した。





       *    *    *





「おっ、始まった始まった♪」

そして同時刻。二人が激突したのを一人の男と二人の女性が少し遠くから見ていた。

「いやー♪あれはもう、どっちかが死ぬまで終わんない雰囲気だよねー♪」

枝に腰掛けながら足を振る、髪色が晴天のように妙に明るい女性は、物騒な事を明るく言う。

「……死んだらまずいだろ」

木に背を預けながら、髪色が灰色を更に濃くした色の男性は、さもかったるそうに女性を諌める。

「一応言われてる事だしね」

しっかりと両の足で枝に立つ、髪色は薄い桃色の少女は、女性だけでなく男性までに向けて、言葉を発する。

「別にいいじゃん死んだってー」

『いいわけないから』

つまらなさそうに女性が呟いた言葉を、二人が同時にツッコム。

「ちぇー…」

綺麗に揃えられた声に、女性はかなり残念そうに口を尖らす。

「……そんな残念そうにしても答えは変わらないからな」

「一々言わないでよー。八つ当たりしちゃうわよ?」

勘弁。と言いながら男性は両手を上げて降参のポーズを取る。

それを予想していたのか、女性は特に興味すら示さずに視線を前に向ける。

「というか、勝ち目ってあるわけ?」

それと同時に、女性は口を開く。答えを知ってるのに、わざと知らない振りをしているかのような口調で。

「わかってて言ってるなら流石に趣味が悪いと言わざるを得ないけど?」

「ですよねー」

その答えも女性には分かりきってた事であり、女性は自分でした筈の質問を適当に流す。

「ま、当たり前の事を言っても何の意味も無いか…」

「……まず、質問にすらなってないからな…」

やっぱり?と、とぼける女性も、分かっている事。でも、暇なのでしたくなっただけ、という理由なのだ。仕方ないのだ。

「さてさて、ミラクル起こる確率なんて一パーセント以下。それでも諦めなきゃどうにかなると思ってる、あの馬鹿にはどんな未来が待ってるのかなー♪」





       *     *     *





戦いが始まってから数分間が経過した。

たった数分間の間に、戦況は誰の目から見ても明らかに変化していた。

「キヒヒッ!」

「ぐっ…!?」

伊吹の蹴りを、ハヤテは両手をクロスさせ、ガードする。それでも、勢いを殺しきれずに後ろに無理やり下がらせられる。

「痛っ…」

腕全体に痛みが走り、顔を顰めるハヤテ。

痺れの残る腕を動かし、大丈夫だと判断すると、再びハヤテは伊吹に向かっていく。

ここで今の戦況を端的に言うと、ハヤテは防戦一方だった。

戦闘を開始した時から、一方的に攻められているのだ。

理由としては、一つが上げられる。

(変則的過ぎる…!)

そう。伊吹の戦闘スタイルとでもいう物が、変則的なのだ。

先程から、ハヤテの攻撃が当たった試しなんて一切無かった。

真正面にいたと思ったら、瞬きした瞬間には右にいたり。

さらには、刀を振るうと、刀すれすれにかわし、ハヤテに攻撃を与えたり。

さらにさらには、ハヤテの腕に足で絡みつき、腕を捻り上げて体のどこかを蹴ったり。

兎に角、行動パターン、攻撃の仕方、さらには攻撃のリズム。それら全てが一切読めないのだ。

今だってそうである。

「キヒッ」

(右っ!)

伊吹がハヤテの右側面に回り、ハヤテがそれに反応し刀を振るうが、

「キヒヒッ♪」

振るった瞬間には、もう反対側の左側にいるのだ。

「っ!」

だが、それに気づいた時にはもう遅い。刀を振りぬいた後であり、バランスは明らかに崩れている。その状態で、これから来る攻撃を避けろという方が酷というものだ。

それでも、ハヤテは無理やりに体を反転するように動かし、伊吹の攻撃へと備えようとする。

「キヒヒッ!」

何回食らったか、もう数えるのすら億劫な蹴りが唸りを上げてハヤテに迫る。

「ぐ、がっ…!」

それを右腕一本で受けたのがいけなかった。腕の中から、ミシッ…。骨の軋む音が響いた。

それでも、この距離はチャンスでもある。

ハヤテは手に持っていた刀を離し、伊吹の足を掴む。

「…!」

その様子に、伊吹も驚いた様子を見せた。

だが、ハヤテにそんな事を気にしてる暇など無い。

拳を握り締め、伊吹へと殴りかかる。

「うぁああああああああああ!!」

この距離でなら当たる。そう確信をハヤテはする。

「キヒッ」

だが、その確信を嘲笑うかのように伊吹は笑った。

そして―――

「がっ!?」

ハヤテの拳は当たる事は無く、さらにハヤテは地面に叩きつけられた。

(何……が…!?)

受身もまともに取る事も出来ず、肺の中だけでは飽き足らず、血液中の酸素までが刈り取られたかのように、ハヤテの体の筋肉は硬直した。

因みに、ハヤテは理解できてないが、単に伊吹が体重を後ろに傾け、足を支点にしてハヤテを叩きつけただけである。

「キヒッ!」

そこへ追撃といわんばかりに、伊吹はナイフを振り上げる。

「っ!!!」

その挙動を見た瞬間、ハヤテは横に転がろうとする。

「っ!?」

が、脳が命令しても体は一切動こうとはしなかった。筋肉が完璧に硬直していた。

その間にも、ナイフはハヤテを殺すべく迫る。

(死、ぬ…!)

ハヤテがそう思った直後、ガキィィィィン! 音が響いた。

「っざけんな…!」

音が聞こえなくなった瞬間、伊吹が恨みがましくそう漏らす。

「……っはぁ!」

対照的に、ハヤテは止まっていた筋肉を動かし、息を大きく吸い込んだ。

そしてすぐに、自分に覆いかぶさるような体勢の伊吹を蹴り飛ばす。

(た、助かったぁ…!)

立ち上がりながら、ハヤテは大きな息をつく。

実際、死んでもおかしくない状況だったのだ。だが、助かった。

原因はわからない。

ハヤテは筋肉が完全に硬直していて、指一本すら動かせなかった。故に、死ぬと思った。

のだが、伊吹の振り下ろしたナイフは、ハヤテの首すれすれを通り地面に刺さった。その精度は紙一重とでもいうもので、もう少し横に刺さっていたのなら、確実に絶命していた。

まさに幸運。不幸がデフォルトのハヤテには出来すぎたような幸福だった。

だが、起きた事に感謝し続けてもしょうがない。

これから先、今のように悪運が続く事など確立してるわけでない。

だから、ハヤテは次はこのような事が起きないようにと、努力する事を決意する。

そして、蹴り飛ばされた伊吹はというと、

「……っざけんな…!」

蹴り飛ばされ、倒れたまま怨嗟の声を呟いていた。

その言葉は離れていたはずのハヤテの耳にもしっかりと届いた。

そして、顔半分を隠している髪をさらに垂らすように俯きながら、立ち上がる。

「……っ」

何故かハヤテには、その動作すら恐怖に感じた。

「……す」

ポツリ、と伊吹が何かを呟く。

「……殺す」

今度は聞こえた。途轍もなく物騒な言葉が。

「……殺す、殺す、殺す!!」

三度目の言葉には、これ程かと言うほどまでに殺気が込められていた。

「っ!!」

ゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾッッッ!!その言葉を認識した瞬間、ハヤテの全身が震えた。本能的に、人間的に、生物的に、ハヤテは伊吹を、確実に恐れた。

そんなハヤテをお構いない無しに、伊吹は服のポケットに手を突っ込み、ある物を取り出した。

(……カード?)

それは、つい先日校舎の端っこの教室で占ってもらった時に見た、カードだった。

もしかしてカードで戦うのか?とハヤテは思う。

そして伊吹はハヤテの思ったとおりになのか、そのカードをハヤテに向かって投げた。

決して速いわけでもなく、遅いわけでないスピードでそのカードはハヤテに迫る。

だが、その迫るカードを見た瞬間、ゾワワッ!! 今までに感じた事の無い悪寒がハヤテを襲った。

本能がけたたましい音を立てて、警告する。

これはヤバイ。絶対に当たってはいけないと。

「―――っ!!」

その本能の警告に従い、ハヤテが足の筋肉に力を入れた瞬間。

カッ―――――――――。

カードが光を放った。





       *    *    *





「うっひゃー♪めッちゃ派手―♪」

枝に腰掛けたまま、女性はパチパチと楽しそうに手を鳴らす。

今しがた起こったことに歓喜してるようで、そのテンションは先程よりも確実に高まっていた。

「……派手過ぎるだろ…」

「そうよね…」

それとは対照的に、男性と少女は耳を押さえながら呟く。

「えー?あれくらい派手な方が楽しーじゃん♪」

「正直な話、楽しさを求められても困るんだけど?」

少女の言った言葉に、女性は「暇なんだもん…」と残念そうに呟く。

「……我慢してろよ」

「無―理―!!」

続いて男性も女性を諌めるが、女性は手足をジタバタさせて駄々っ子のように反対する。

「……あーもう…」

その反応に、男性は鈍色の髪をイラついた様にかきあげる。

「だったら適当に囲んだら?このままじゃ誰か駆け寄ってきて死人が出るし」

「あ、そうしよっかー♪それなら誰の邪魔なんて入んないし、あっちも十分に殺しあえるしね♪」

後ろで「……殺し合わせるなよ…」と男性が言ってるのを無視し、女性は指をパチンと鳴らす。



瞬間―――『正常な世界』が『異常な世界』へと変わった。



とはいっても、集中しなければわからないレベルの変質だったが。

何が?と問われれば、世界が。としか言いようの無い変質。

そして、その変質を確かに感じ取ったのは、傍らの二人だけだろう。

距離を隔てながらも二人が感じ取ったかもしれないが、恐らく感じ取ってはいないだろう。

この変質を感じ取るには、慣れ。もしくは集中がいる。

戦闘に集中しているのに、別の事にまで集中する暇など無い。

故に、あの二人は変質を感じ取れてはいないだろう。

「ま、どうでもいいんだけど」

だが、そんな事は女性にとっては関係ない。

「ぶっちゃけ言いつけをあんまり守る気なんて一切と言って程ないしー」

「……ま、確かにな」

「それは同感なんだけどね……流石に破ったら死ぬでしょ?」

少女の言葉に、その場の空気が固まる。

「……い、いや、守るよ?でもね?やっぱりさー」

女性はそこで一度言葉を切り、前方に見える円形の空間を視界に入れる。

「不幸だ不幸だって言ってる割に、何だかんだで幸福を享受してる奴をさ」

「……守る気なんて起きないし、守りたいとも思わない」

「というよりも、殺したい」

三人で言葉を繋げていく。殺意を含んだ言葉を。

「ま、言いつけを守るけど、死ぬギリギリまで無視するけどね」

『異議なし』

二人の言葉に、満足したように女性は頷く。

「さて、死ぬ確率がさらに高まっちゃったけど……絶望確定ルートから這い上がる事はでっきるかなー?」





       *    *    *





「はっ、はっ…」

ハヤテは木をかき分けながら走っていた。

「くっ…!」

走ってる最中に焼けるような痛みが腕から伝わってくるが、そんな事には一切構わずにハヤテは森の中を走る。

はっきり言って、今の状況は最悪の一言に尽きる。

左腕は軽く焼け、体の所々からは出血が見られる。軽い満身創痍といった所だろうか。

兎も角、こんな事になったのは、数分前のことだった。





伊吹から投げられたカードが光った瞬間。ハヤテを爆音と光と熱と風が襲った。

けたたましい音がハヤテを襲ったのだろうが、生憎ハヤテには最初に聞こえてきた爆音で耳をやられ、ほとんど聞こえてなかった。

そして、近くで光ったからか、目をやられないよう左腕で目を保護する。そこへ、圧倒的な熱が襲い掛かってきた。

「あ、つ……っ!」

圧倒的な熱量に、口内の水分さえ無くなったような感覚に陥り、声すらまともに出ない。

さらにそこに追い討ちをかける様に、突風がハヤテを襲う。

熱を持った突風は、ハヤテの体を焼きつつ、ハヤテを軽々と吹き飛ばした。

空中に投げ出されたハヤテは、そのままどうする事も出来ずに地面に投げ出される。

「あ……ぐっ…」

体が焼け、地面で擦られる。そんな痛みに、ハヤテの脳は考える事をやめかける。

だが、脳が活動を一瞬停止するよりも先に、ハヤテの目は人影を捉えた。

(月乃君…っ!)

一枚のカードを手に持った伊吹である。

そして伊吹は手に持ったカードを投げた。

その動作に、ハヤテの脳裏に先程の光景が思い出される。

光、熱、爆音、風。それらの混ざった光景を。

(逃げ…!)

それから逃げるために、ハヤテは体を転がそうと横に体重をかける。

しかし、それよりも早くに雨が降った。

「……っ!」

一瞬、何が起こったのかハヤテには理解できなかった。

だが、じわじわと押し寄せてきた痛みと共に、今起きた事を次第に理解していく。

「あ、ぁああああああああああっ!!?」

理解したと同時、ハヤテは痛みに耐え切れずに叫んだ。

全神経から押し寄せる痛みの信号が、脳に一気に押し寄せる。その信号を処理しきれなくなり、脳が正常から離れていく。

視界が歪み、聴覚はほとんど無くなり、自分が今倒れてるのか起きているのか、それすらもわからない。口の中に何か入ってる気がするが、それすらもわからない。

「が……ぁ…っ!」

それでも、ハヤテは自分を正常に保とうとする。

負けられないから、大切な人を守るために。

(とにかく、一旦体勢を立て直さないと…!)

「ぐ、あぁあああああああああああああ!!」

痛みを訴え続ける体を無理やり動かし、ハヤテは森の中へと逃げた。

「キヒッ!!」

それを見た伊吹も、ハヤテを追って森の中へと入っていく。

これが、数分前の事のあらましだ。





(一体何なんですか、あのカードは…!)

先程の記憶を顧みてみて、ハヤテが思った事がそれである。

カードを使った攻撃、とはかけ離れていたが、カードが投げられてから何かしらが起こっているのは確かである。

一回目のカードは爆発。そして二度目に投げられたカードは…。

「つっ…!」

それを思い出したと同時に、全身を鋭い痛みが駆け抜けた。

「どうやったんですか…!」

呟き、ハヤテは所々に刺さっている物体を見る。

二度目に投げられたカード。それは大量の矢だった。

それが上から雨のように降り注ぎ、ハヤテの体に刺さった。

邪魔にならないよう折ってはいるが、所々に刺さっているからか、血がとめどなく流れる。

(このままじゃ、失血死ですよ…っ)

血が流れ続ければ、体内の血が無くなっていき、死に至る。

そんな事はハヤテにもわかっている。わかっているが、どうする事もできない。

この出血を止める術などハヤテは持ってない。だから、一刻も早く医者にでも掛からなければいけないのだが…。

(そう簡単にいくわけありませんよね…)

理屈不明の攻撃をどうにかして伊吹を倒す。もしくは、伊吹から見つからないようにアテネを連れて逃げるか。結局のところハヤテはどっちかしか選べない。

しかし、後者はの方法は無理としかいえない方法だ。

伊吹のスピードは明らかにハヤテ以上。それも、アテネを担いだ状態でだ。もし誰も担いでいない状態だったら?その答えは分かりきってる事であろう。

そして前者の方法。こっちもこっちで不可能に限りなく近い。

まず、伊吹に勝てる気がハヤテはしない。自分と伊吹の差を目の前で見せられ、自信というのがごっそり削られた。それに足して、あの意味不明なカード。それをどうにかしなければいけない。

(……何でこんなに大変な状況に縁があるんだろうなぁ…)

ハヤテは現実逃避をするように、自分の不幸さ加減を呪う。最早、不幸というレベルを遥かに超えてる気もするが。

「…っ」

と、そこでハヤテは急に止まった。嫌な予感が急にしたからだ。

止まった直後、上から何かが降ってきた。

降ってきた物体は、勢いよく地面に刺さった。

「え…?」

そして、その物体を見た瞬間、ハヤテは呆けた声を出していた。

それもそのはず。降ってきた物体は、ハヤテの日本刀だったからだ。

「何で…?」

刀を抜きながら、ハヤテは呟く。

そもそも、この刀は先程の場所に置いてきたままだったはずなのだ。

それがこの場にあると言う事は、もしかしたら伊吹が寄越したのかもしれない。

「……それは無いか」

だが、その浮かんだ考えをハヤテはすぐに否定する。殺そうとしている相手に武器を与える意味が全くわからない。もっとも、伊吹がどんな事を考えてるかすらわからないのだが。

兎も角、武器が手に戻ってきた事にハヤテは心の中で歓喜する。

だが、喜んでばかりもいられない。すぐに伊吹を倒す方法を走りながら考えようと、一歩を踏み出した。



瞬間、地面が爆発した。



「―――――」

突然の事に声すら出なかった。

爆風に体が宙に浮く。

痛みなんて殆ど無かった。ただ、熱かった。

「がっ…」

浮遊感もそこそこに、地面に叩きつけられる。

だが、何回か叩きつけられた時よりも軽い衝撃。故に、ハヤテのダメージは少なくて済んでいた。そうして安堵するハヤテ。

―――刹那、ハヤテの体をぬるりとした感覚が覆った。

「―――っ!!」

その感覚がした瞬間、ハヤテは咄嗟に横に転がる。

もう何回も訪れた感覚。これが来た直後の事は、ハヤテはもう理解している。

つまり―――

(不幸が訪れる…っ!)

全力で横へ転がる。それが功を奏した。



直後、伊吹がハヤテのいた場所に刀を刺したのだから。



「ちっ!」

外したと言うように、舌打ちをひとつすると、伊吹は一飛びで森の中へと消えていった。

「奇襲ですか…」

起き上がりながら、ハヤテは呟く。

予測できた事ではあった。だが、かなり意外な奇襲だったのも事実。

「……気をつけなけなきゃいけないようですね…」

そう呟くと、ハヤテは再び森の中へと走っていった。





だがしかし、気をつけてどうにかなる問題でもなかった。

バシュッ!!と音が響けば、どこからか矢が飛んできて。

「わわわっ!!」

その度にハヤテは矢をどうにか避ける。

さらには―――

バキバキ…。と音がすれば。

「なっ…!?」

木を倒しながら大きな鉄球が迫ってきたり。

その度に、ハヤテは全力で鉄球から逃げる。





「はーっ、はーっ…」

そして気づけば、ハヤテは最初の場所へと戻ってきていた。

「キヒヒ……随分とお疲れのようだなぁ?」

「月乃君…」

そして、伊吹が森の奥から現れる。その手に一枚のカードを持って。

「さて、いい加減に終わりにするか?キヒヒッ」

かなり気楽そうに言う伊吹。その言動から自信が見え隠れしていた。

「……終わりって何でしょうね」

それとは反対に、ハヤテは苦虫を潰したような顔で、苦しそうに言う。

その顔は、本当は終わりが何なのか分かってると語っていた。

「キヒヒ……さぁねっ♪」

明らかにふざけてる言葉遣い。だが、確かな殺意があるのをハヤテは感じる。

それを見て、ハヤテも心を固めた。

例え、どんな結果になろうとも、後悔はしない。と。

つまり、ハヤテはある決意をした。

『殺す』決意を。

「ふぅ…」

小さく息を吐き、ハヤテは刀を構える。先程と同じように、正眼に構える。

「……キヒ」

その様子を見て、伊吹はさっきまでのハヤテとは違う事を悟る。

先程までとは違い、落ち着いた雰囲気。目の中にある、確かな決意。そして、明らかな殺意。

「キヒッ♪」

それを伊吹は喜ぶ。

ただ、殺されるだけの相手はつまらない。もっと貪欲に、もっと積極的に、生きようとする相手。それを叩き潰す。

もしかしたら、という『希望』を『絶望』に変える。それが、伊吹の目的。

「……………」

静かに伊吹も構える。カードを持った手を前にして、腰を落とす。

「さぁ、始めるようか!!」

大声で、その中に喜びの感情を込めて伊吹は叫ぶ。

「…!」

その声に、さらにハヤテは警戒を強めた。直後、背中に冷たい感覚が駆け抜ける。

感覚を受け取ったハヤテは、反射的に後ろを振り向く。

それに遅れ一秒後、背後の森から大量の矢がハヤテめがけ放たれた。

原理など不明。いつ仕掛けたのか、どうやって仕掛けたのか、どこにそんな数を持っていたのか。

疑問は尽きない。が、ハヤテはそんな疑問を頭から排除し、矢へ向かって走る。

(これだけの数をどうにか出来る訳無い…。なら、最小限の矢を退けて突破する!!)

「はぁああああああああああ!!」

迫り来る矢を斬る、弾く、いなす、かわす。多少掠る事はあれども、当たる事は無く矢の雨をハヤテは突破する。

「……キヒヒッ♪」

その様子を、伊吹は楽しそうにしていた。

先程との明らかな違いを分かる事が出来、嬉しそうに、楽しそうに、面白そうに。そんな風に口を歪めていた。

(そうこなっくっちゃねぇ…!)

そしてカードをハヤテの上に向かって放り投げる。

自然、ハヤテの目線はカードに向かう。その隙に、伊吹はハヤテに向かって足を動かした。

その事に、一瞬遅れてハヤテも反応する。しかし、反応したときにはもう伊吹は懐に入っていた。

「っ!」

すぐさま、ハヤテは足で蹴ろうとする。

「キヒヒッ!」

だが、伊吹の行動は攻撃のための行動なんかではなかった。

その証拠に、伊吹はすぐにハヤテの懐から後ろに下がった。

その行動に、ハヤテは不審に思う。そして、頭のてっぺんに何かが通った気がした。

その感覚に、ハヤテもすぐに後ろに飛んだ。

ハヤテが飛んだ直後―――上から鎌が落ちてきた。それも明らかに刃がハヤテの頭に刺さる軌道で。

(危な…っ!)

滞空しながら、ハヤテはそんな事を思う。

だがすぐに、後悔した。

落ちた鎌の柄を、伊吹が掴んだのだ。

(しまっ…!)

その動作に、ハヤテは先程飛んだ事を失敗したと悟った。

そして伊吹は、刃を中心に回るように自分を動かし、鎌をハヤテに向かって投げた。

迫り来る鎌に対し、ハヤテは何も考えずに動いた。

「はっ!!」

地面に刀を思い切り刺し、そこを支点に、軽業師のように体を逆さにして上にした。

直後、鎌が刀とぶつかった。その衝撃で、刀は地面から外れ、ハヤテはその勢いを利用して着地と同時に、伊吹に向かって走る。

「ちっ…」

自分の行動が上手くいかなかった事に、舌打ちをしながら、伊吹は一枚のカードを取り出す。

「させません…っ!」

それを見たハヤテは、即座に伊吹に斬りかかった。

「くそっ…!」

刀を後ろに下がって伊吹はかわす。が、その時にカードは切られてしまった。

「まだっ…」

それを好機とハヤテは見て、更に追撃を始める。

「ぐっ…!」

そこで初めて伊吹が劣勢に陥った。

「はぁあああああああああああ!!」

「く、そが…っ!」

袈裟懸け、逆袈裟、刺突と次々と攻撃を加えるハヤテ。

それを避けるのが精一杯といった風の様子の伊吹。

だが、それも長くは続かなかった。

攻撃を避け続けるうちに、伊吹はいつの間にか木を後ろにしていた。

逃げ場の無くなった伊吹に、一撃を加えようとハヤテが袈裟懸けに刀を振る。

「なめんなっ…!」

それを伊吹は木を使い、三角飛びでハヤテの頭上を越え、かわした。

「なっ!?」

予想外の行動に、ハヤテは反応が若干遅れた。

その間に、伊吹は別の木の後ろに手を差し込んだ。

そして、後ろに隠してあった物を取り出した。

「そんな物まであったんですか…!」

「備えあれば憂い無し、ってね!」

取り出した物のエンジンを伊吹は勢いよく入れる。

ドルゥン! あまりにも聞き覚えの無い音に、ハヤテは萎縮する。

いや、ハヤテが萎縮したのは音だけではない。その音を発した物体、つまりはチェーンソーに対しても萎縮したのだ。

(そんな簡単に扱える物でしたっけ…!?)

ハヤテは目の前で軽々とチェーンソーを扱う伊吹に驚愕するも、それは表には極力出さないよう努力する。

だがやはり、チェーンソーを見ると萎縮する。

そしてそれを伊吹は見逃さなかった。

重量が中々あるチェーンソーを横に構え、先程と変わらないスピードでハヤテへと肉薄していく。

「キヒッ!!」

そして、チェーンソーを横に薙ぐように振る。

エンジン音を響かせながら迫るチェーンソーを、ハヤテは後ろに飛んで避ける。

そして後ろに着地したハヤテの背中に、硬い感触が伝わってくる。

「キヒヒッ!」

更に伊吹は追撃するように、再びチェーンソーを横に薙ぐ。今度はハヤテの胴を両断するコースで。

再び後ろに飛んで避けようとハヤテは重心を後ろに傾けるが―――

「っ!」

背中に当たってる物がその動きをさせない。

咄嗟に地面と同一するかのように伏せ、回避する。

その行動に、チェーンソーはハヤテの背後の物―――木に、刺さる。

「抜けねっ…!」

そのチェーンソーは深く刺さったのか、抜ける様子は無かった。

それを見逃さず、ハヤテはすぐに伏せた状態で刀を横に振るった。

「って…!」

チェーンソーに意識が行ってた伊吹は、ハヤテの行動に対する反応が遅れ、その足に傷を負った。

といっても反応はされていて、せいぜい薄皮を切った程度だが。

兎も角、足を軽く斬られた伊吹はチェーンソーから手を離し、大幅に後ろに飛ぶ。

「ちっ…」

最早何回目になるかわからない舌打ちを伊吹はし、再び一枚のカードを取り出す。

「……なんでこんな事するんですか」

その行動を見た瞬間、ハヤテの口は動いていた。

「は?」

「何で……こんな事をしたのかって訊いたんですよ」

「……訊いてどうするわけ?何かが変わるわけ?」

変わらないから黙れ。そう伊吹は暗に告げる。

だが、ハヤテはその言動を無視して再び伊吹に問う。

「何でなんですか…!」

「……あのさぁ」

カードを下ろし、伊吹は呆れたようにハヤテに言葉を投げる。

「本当に、甘いわ。甘すぎる。というか、舐めてるだろ」

「何を舐めてるって言うんですか…」

何も舐めてない。だから心外だ、とでも言いたそうなハヤテ。

「全部。お前は全部を舐めてるよ…っ!」

ハヤテの言動に苛立ったような声を伊吹は出す。

「…?」

それと同時に、ハヤテは伊吹から黒い何かが出たように見えた。

(気のせい……だよね?)

「兎も角、俺は何も話さないし、話す気なんて一切無い。俺がどんな理由でやろうと、一切関係ない…!」

そう言って、伊吹はハヤテに向かって駆ける。その手には、いつ握ったのかわからない日本刀があった。

「くっ…」

それを迎え撃つべく、ハヤテも構える。

そして直後、辺りに甲高い音が響き渡る。

「死、ね…!」

「お断り、します…!」

続けて、ギリギリギリ…!と鍔迫り合いの音が響く。

力は意外に拮抗し、どちらも決定的に押す事は出来ない。

だが、徐々にその均衡も崩れていった。

「…っ!」

「ぐっ…!?」

小さく、だが大きく、段々ハヤテが押していく。

(足の傷が痛ぇ…!)

原因は、ついさっきにハヤテが伊吹に与えた傷。その傷が何故か妙に痛むのだ。

怪我に関してはハヤテの方が圧倒的に多いのだが、ハヤテは完全にその事を忘れていた。単に、戦闘による高揚で痛みをあまり感じないだけかもしれないが。

そして遂に―――

「はぁっ!」

「がっ!?」

均衡が崩れた。

刀を折り、その勢いでハヤテは伊吹を斬りつけた。

その刀は、伊吹の体を斜めに斬った。その傷は決して浅くなく、多量の血を伊吹に流さした。

「ごふっ…!」

傷が深かったのか、口からも伊吹は血を流した。

それを確認すると、伊吹はハヤテを蹴って自身も後ろに下がった。

だが、後ろに飛んだ伊吹は、着地と同時に膝をついた。

「はぁ、はぁ…」

胴から血を流す伊吹の息は、伊吹自身考えていたよりも荒かった。

(この傷も、妙に痛む…!)

普通に斬られたよりも、鋭い痛み。それが伊吹を蝕むようだった。

(くそっ…!)

傷がズキズキと痛み、その痛みが訪れる度に、メッキしていた何かが壊れていく。

ズキン。

(違う…)

ズキン。

(こんな事…)

ズキン。

(やりたくない…)

ズキン。

(何で俺は…)

ズキン。

(こんな事を…)

ズキン。

(こんな事……やりたくない…!)

伊吹がそう思った時―――何かが決壊した。

「…?月乃君…?」

膝をついたまま動かなくなった伊吹を不審に思い、ハヤテは一歩を踏み出す。

「…………けんな」

「え?」

「ふざけんな…」

ポツリと呟き、伊吹はゆっくりと両足で立った。

「お前に何がわかるんだよ…」

ゆっくりと顔を上げる。殆どが髪に覆われた顔を。

「大切な人がいるお前に…」

ゆっくりと言葉を紡ぐ。

「何がわかるんってだぁあああああああああああああああああああああああああああああ!!」

伊吹が叫ぶと同時―――伊吹の体から黒が溢れた。

「っ!?」

「あぁああああああああああああああああああああああああ!!!」

その黒は、伊吹の体からとめどなく溢れ、やがて体に沿うように薄く伊吹の体を覆っていった。

そして、体を黒が覆う頃には、黒は『闇』と表せるほどの色へと変貌していた。

どこまでも暗く、底の見えない色。

まるで奈落をそのまま持ってきたかのような色を見た瞬間、ハヤテは恐怖した。

いきなり起きた事に対する驚愕、困惑の感情なんぞ消えうせ、ハヤテの全身を恐怖だけが包んだ。

怖い。怖い。怖い。ただひたすらに怖い。

動物として、人間として、生物としての生存本能がアラートを鳴らし続ける。

見てはいけない。関わってはいけない。立ち向かってはいけない。逃げろと。

だが、ハヤテの体は動かなかった。いや、動けなかった。

まるでそこに縫い付けられたかのように、ハヤテの足は動かない。

動けと脳が命令しても、神経がその命令を拒否する。

「はぁ…っ!」

息を一つするのも辛い。肺が動こうとすらしない。

ギョロッ!

「ひっ…!」

『闇』がこちらを向く。髪に隠れていたはずの左目が見えた。緑色をした目は、今は濁っていた。

だが、その目がハヤテには恐怖だった。

ゆっくりと、カードを持った手を伊吹は上げる。

「―――――」

何かを呟くように口を動かす。

そして、ハヤテは確かにそれを見た。



カードから、日本刀が出たのを。



「なっ…」

あり得ない光景に、ハヤテは目を見開く。

余りにも不可思議な現象が目の前で起こった。その事にハヤテは驚きを隠せないでいた。

説明など出来ないような現象。小説でしかあり得ない様な現象。現実には起こりえないと思ってた現象。

それが、今目の前で起きた。

その事に、ハヤテの頭はついていけない。

(一体どうやってるんですか…!?)

そんな混乱のハヤテを無視し、伊吹はさらにもう一枚のカードを出す。そして、投げた。

ゆっくりとした速さでこちらに迫るカード。それにすら、ハヤテの本能は警告を発した。

(逃げ―――)

だが、それよりも速く、攻撃はされた。

カードが薄く光ったと思った瞬間―――大量の矢が存在していた。

「―――!」

それに驚くよりも速く、矢は行動を開始した。

カードが進んでいた速さよりも速く、ハヤテに殺到する。

ハヤテはまともに反応すら出来ず、矢が刺さるのを強制的に受け入れさせられた。

ありとあらゆる場所に刺さり、痛みで一瞬息が止まった。

さらに、それだけにとどまるわけが無く。

「―――っ!」

ハヤテは反射的に、後ろへと刀を振る。

直後、キィン! 金属と金属が擦りあったような音が響いた。

音を聞いたハヤテは、さらに力を入れて振り返る。

「…………ちっ」

声が聞こえると同時に、軽くなる。

「っとと!」

そのおかげで危うくバランスを崩しかけるが、必死に止まる。

そして、間髪いれずに上段に振る。

再び、金属音が響く。

「………っ!」

ギリギリギリ!と火花を散らしながら、ハヤテは伊吹と鍔迫り合う。

間近で見る闇は、遠目で見るよりも深くて怖く、一瞬でも気を抜けば引き込まれる。そんな感じがした。

「綺麗事ばっか言いやがって…!」

ポツリ、伊吹が呟いた。

「甘い環境ばっかで育って……辛い事からはまるで無縁な生活を送ってきた奴…!」

言葉と共に、伊吹の纏っている闇がざわめいた。

「失う意味も知らない奴…!」

「ぐっ…!?」

闇がざわめくと同時に、伊吹の力が強くなり、ハヤテは押し込まれていく。

「お前は!!」

「あっ!」

そして、刀を上に弾かれる。刀は上空に飛んでいく。

「甘っちょろいんだよ!!」

叫びと共に、体内から、ゴキリ。嫌な音が響いてきた。

「が、ぁっ…!」

それが、胴を蹴られ骨が折れたのだと認識する。

それと同時に、蹴られた勢いのまま横へと飛ばされる。

赤い糸を引きながら、ハヤテは仰向けで地面を進む。

地面を擦りながら、(止まった)そうハヤテが思った瞬間。

ゾブリ。

「え…」

腹に異物が生えていた。

「ごほっ…」

異物が目に入ると同時にこみ上げて来る物を耐え切れずに吐き出す。

赤い軌跡を描き、吐いた物は腹の異物に付着した。

「何……で…?」

腹から、血が滲み出てくる。

(ま、ずい)

このままでは死ぬ。そう判断したハヤテは、異物を抜こうと手を異物に添えるが、力が入らず抜く事ができない。

「……キヒッ」

笑う声が聞こえ、そちらを向くと、伊吹がアテネのそばに立っていた。

「待……て…」

起きる事を想像し、止めようとハヤテは手を伸ばす。が、届くわけも無く、その手は宙を切っただけだった。

「く、そ…!」

視界がぼやけ始め、徐々に暗くなっていく。

それでも、ハヤテは諦めようとせず、手を伸ばし続ける。

(嫌、だ…)

ハヤテの中に、後悔の感情の火が灯る。

(もう、一回も失わない、って、決めたはず、なのに)

その火は、徐々に火力を強くしていく。

(許さ、ない)

やがて火は別の感情の火をつける。

(許さない)

怒り、恨み、憎しみ。

(許さない)

嫉妬、自己嫌悪、悲しみ。

(許さない。許さない。許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない―――っ!!)

ゼッタイニ、ユルサナイ。

そう思った瞬間―――ハヤテの中にあった、何かが開いた。

「あ、あぁあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああっっっっっっ!!!」

そして、ハヤテから闇が溢れた。



それは、開けてはいけないパンドラの箱。

開けたら最後、ただ失っていく。

いらない物も、大切なものも、全てを黒く染めて消していく。

後に残るは、ただ純然たる闇のみ。

中に希望など無く―――ただ絶望だけが詰まった、最悪の箱。




――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――



はいっ、二十六話おしまい!

色々とグダグダだなぁ…。

零司「お前からしたら最長の長さだからな……多分」

だよねー…。おかげでグダル事…。

零司「というか、何故ここに俺しかいない?」

いや、君しか出来ないんだ…。ここにいるの。

零司「あっそ。んで、今言えることってあるの?」

……正直何を言えばいいのか状態ですよ。

零司「おいおい」

というわけで、今回はここで終わります!!次回は恐らく短いでしょう!!

零司「あらま」

では!!

零司「んじゃ」

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Re: 誰がため、何のため 9/17更新 ( No.60 )
日時: 2012/09/17 16:31
名前: 匿名

ハヤテに何があったーーーーーーーーーー!?!?!?
輝雪「どうも♪輝雪です♪」
和也「見事なスルーだな。和也だ」
輝雪「感想に来ました♪」
月乃強!?はっきり言って予想外ですよ!?ここまで戦えるの!?占い師だよね!?
和也「戦いにそんなもの関係無い。占いに関しても月乃はあまり好んで無い」
輝雪「そうねー。で、ハヤテくんも黒ローブ→月乃という事実に驚き、戦意が削がれると」
和也「戦闘には意識の切り替えも大事な要素の一つなのだがな。これができないと死ぬ」
お前らが言うと説得力あるね。だけど、ハヤテも少しずつ戦闘モードに意識を切り替え・・
木崎「「遅い」」
手厳しいね〜。月乃はカードからいろんなもの出すね。
輝雪「どうやって出しているのかしら?」
和也「戦闘が進むに連れ、ハヤテも相手を殺す覚悟ができたな」
月乃に一撃いれた!
輝雪「でもねー。相手の戦う理由は聞いちゃダメよ。殺すなら、聞く前に首跳ねなきゃ」
聞けないよ!?首を斬ったら聞けないよ!?
和也「戦闘中に相手の戦う理由を聞くなど、愚行に等しい行為だぞ」
輝雪「そうそう。聞いてどうすんの?助けんの?無理無理。どうせ殺す相手なら聞かずに殺す方が幸せよ?」
何か辛いよ!?言ってる事がヘビーだよ!?
和也「月乃もハヤテの優しさ、いや甘さにキレて、何か黒いオーラが・・・」
あれ、何?
輝雪「わからないわ。でも、一気に戦闘力が増したわねー」
和也「ハヤテは動けなくなったな」
ちょー!?大丈夫なの!?というか輝雪も心配しろよ!初恋の相手だろ!
輝雪「な!///何言ってんのよこの馬鹿!///戦いにそんなの関係無いでしょ!///」
和也「こいつらは・・・。月乃は天王州に近づいていったな」
輝雪「ふぅー。で、ハヤテくんもいろんな感情、主に負の感情が体中を駆け回り黒いオーラが・・・」
次回はいったいどうなる?
和也「待つしかないな」
輝雪「それでは、次回も頑張って下さい♪それでは♪」
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Re: 誰がため、何のため 9/17更新 ( No.61 )
日時: 2012/09/24 19:05
名前: コサッキー

<レス返し>

▼ 匿名さん

>ハヤテに何があったーーーーーーーーーー!?!?!?

早速だねー。

零司「だなー」

ハヤテ「何でそんなに落ち着いてるんですか!?」

いや、作者。

零司「色々知ってる」

ハヤテ「知ってるって!?」←(そりゃまぁねぇ…)

>輝雪「どうも♪輝雪です♪」

>和也「見事なスルーだな。和也だ」

>輝雪「感想に来ました♪」

零司「感想サンキュー♪」

六花「見事なスルーですね♪」

>月乃強!?はっきり言って予想外ですよ!?ここまで戦えるの!?占い師だよね!?

ふっ、ハヤテ以上の強さですよ!伊吹は!!

ハヤテ「何でそんなに強いんですか!?」

伊吹「キヒヒ……裏に結構関わってきたからな…」

ハヤテ「裏!?」←(伊吹って結構アレな人生送ってますからねー…)

>和也「戦いにそんなもの関係無い。占いに関しても月乃はあまり好んで無い」

まぁ、元々運動能力が異常ですし……後は鍛えればかなりの強さまでになるんですよ。

伊吹「んで、占いは……まぁ、ノーコメで。キヒヒッ」

複雑だもんねぇ…。

>輝雪「そうねー。で、ハヤテくんも黒ローブ→月乃という事実に驚き、戦意が削がれると」

>和也「戦闘には意識の切り替えも大事な要素の一つなのだがな。これができないと死ぬ」

ハヤテ「いや、本当に驚きましたよ…」

一応笑い声で気づくかなー?って思ってたんだけどね…。

零司「見事に気づかなかったな。にしても、戦意削がれちゃ駄目だろ」

ハヤテ「うっ…」

零司「あっちも言ってるけど、最悪死ぬからな?」

ハヤテ「うぅぅ…」

>お前らが言うと説得力あるね。だけど、ハヤテも少しずつ戦闘モードに意識を切り替え・・

>木崎「「遅い」」

零司「まぁ、初めてにしちゃ上出来だがな」

知人が敵になって、それで尚戦意を失わないってのは…。

零司「中々難しいだろうな。それが数日前に会った、記憶に強く残ってる奴なら尚更な」

>手厳しいね〜。月乃はカードからいろんなもの出すね。

>輝雪「どうやって出しているのかしら?」

まぁ、あれだ。企業秘密だ。

伊吹「キヒヒ……お前が言うなって話だがな」

まぁまぁ。

>和也「戦闘が進むに連れ、ハヤテも相手を殺す覚悟ができたな」

じゃないと、死にますからね。冗談抜きで。

零司「生存本能が発揮した感じだな」

ハヤテ「結構無意識だったんですけど…」

>月乃に一撃いれた!

>輝雪「でもねー。相手の戦う理由は聞いちゃダメよ。殺すなら、聞く前に首跳ねなきゃ」

>聞けないよ!?首を斬ったら聞けないよ!?

伊吹「……あの刀何?キヒヒッ」

ハヤテ「さぁ…?」

あれも伏線なのかなぁ…?

零司「作者自身がそれでどうする…」

というか、ハヤテ殺す覚悟は出来てても、根っこは変わらないんですよね。

零司「だろうなぁ…」

>和也「戦闘中に相手の戦う理由を聞くなど、愚行に等しい行為だぞ」

>輝雪「そうそう。聞いてどうすんの?助けんの?無理無理。どうせ殺す相手なら聞かずに殺す方が幸せよ?」

聞いたところで助ける事なんて不可能ですけどね、確かに。

伊吹「もう戻れないところまで来ちまってるからな。キヒヒッ」

というか、あそこで殺さなかった時点でハヤテの運命決まったんですよね。

ハヤテ「え!?」

殺してたら絶望ルートは回避できてた。でも殺さなかったから…。

零司「絶望ルート突入ってか…」

……まぁ、殺したら殺したらで地獄は見るけどね。軽いからなんとかなるけど。

>何か辛いよ!?言ってる事がヘビーだよ!?

零司「は?普通じゃね?」

伊吹「キヒヒ……だな」

ハヤテ「明らかにお二人の価値観が違う!?」

零司「え?だって死にゆく者の言葉聞いてどうすんの?何かためになるか?ならないだろ?」

伊吹「それだったら、聞かずにさっさと殺しとけ。キヒヒッ!」

ハヤテ「……交わらない価値観ですね、普通とは」

>和也「月乃もハヤテの優しさ、いや甘さにキレて、何か黒いオーラが・・・」

>あれ、何?

零司&伊吹『闇』

簡潔だねぇ……いや、それ以外の表しよう無いけど。

>輝雪「わからないわ。でも、一気に戦闘力が増したわねー」

数値にして、約一.五倍。

零司「結構微妙なのな」

そこまで都合よくないさ。

結局はハヤテを打倒出来るし…。

>和也「ハヤテは動けなくなったな」

弾かれた刀がブスリと。

ハヤテ「…………」

零司「……落ち込むな」

一応は背骨には刺さってないけど、結局重症なのは変わりない!!

>ちょー!?大丈夫なの!?というか輝雪も心配しろよ!初恋の相手だろ!

>輝雪「な!///何言ってんのよこの馬鹿!///戦いにそんなの関係無いでしょ!///」

よし、デレろ!!

零司「殺されるぞ…」

そうなったら零司に守ってもらうさ!!

零司「はいはい…」←(人間じゃ勝てないんじゃない?ってレベルの強さですからねー)

>和也「こいつらは・・・。月乃は天王州に近づいていったな」

>輝雪「ふぅー。で、ハヤテくんもいろんな感情、主に負の感情が体中を駆け回り黒いオーラが・・・」

とうとうパンドラの箱を開けてしまった…。

零司「絶望の始まり……だな」

ハヤテ「……物凄く不安になるんですけど!?」

伊吹「殆どが絶望ルートだけどな……キヒヒッ♪」

>次回はいったいどうなる?

>和也「待つしかないな」

>輝雪「それでは、次回も頑張って下さい♪それでは♪」

今回は『覚醒』!!

零司「覚醒かぁ……嫌だねぇ…」

零司関係無くね?

零司「そうだけどな。ま、友人がそうなるのはちょっとな…」

六花「兎も角匿名さん感想ありがとうございました〜♪」




さて、今回でやっと出来る…。

伊吹「仲間入りってか……キヒヒッ♪」

零司「明らかに嬉しがる内容でもねえだろ…」

ハヤテ「……一体何が起こるんですか…!?」

……では、どうぞ!

ハヤテ「答えてください!!」



――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――



「あははははははっ!!」

ハヤテから闇が溢れた同時刻、少し離れた森の中に笑い声が響いていた。

「ちょ、まっ、お腹、お腹痛い…!あははははははははっ!!」

先程から見ていた女性は腹を抱え、枝の上で転がっていた。

「な、何よあれっ…!相手じゃなくて自分とか……あはははははははっ!!!」

込み上げて来る笑いは止められず、女性は笑い続ける。

「……笑いすぎだろ」

「そうよね…」

それを傍らの男性と少女は冷ややかに見ていた。

男性も先程まで若干笑っていたのだが、女性の笑っている姿に笑えなくなったのだ。

対して、少女は一切笑っておらず、それよりも冷ややかな目でハヤテのいる方角を見ていた。

「ひぃー…。苦しー…」

「笑い過ぎよ」

「えー。だって笑っちゃったんだからしょうがないじゃん…」

「確かにそうだけど…」

でもさ、そう言って女性はハヤテのいる方角に目を向ける。

「『覚醒』でも、普通じゃなくて歪んでるからさ、更なる絶望ルートになっちゃったわよねー♪壊れなきゃいいけどさ♪」

満面の笑みの中に殺気を含ませ、女性はそう言った。





       第二十七話「『覚醒』」





「あああああああああああああああああああああああああああああああああああああっっっっっっ!!!」

叫びと共に、闇がハヤテの体から爆発的に放出される。

放出した闇は大気に散らばり、消えてゆく。だが、次々と闇は供給されていき徐々に大気は闇に染まっていく。

「あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」

叫びが喉から出るたび、ハヤテの思考は段々黒へと染まっていく。

ただ一つの事意外考えられず、思考が染まり、侵食されていく。

そして、とうとう思考は侵食されつくし、ハヤテの意識は途絶える。

だが、脳は意識を手放しても、体は動いた。

「…………」

腹に刺さっていた刀が、弾かれるように体から抜け、遠くの木に刺さる。

押さえつけていた物が無くなり、ハヤテは幽鬼のようにゆらりと立ち上がる。

そして光の無くなった目を伊吹へと向ける。

「……キヒッ…」

その目を向けられた伊吹は、その場を動かずにただ笑う。

それは、嘲笑の笑い。

ハヤテが、『覚醒』してしまった事に対する嘲笑の笑い。

(……予想外っちゃ、予想外だがな…)

だが、実際は焦ってもいた。

本来の目的とは違った現象が起きたことに対して、若干の焦りを伊吹は表には見せないながらも見せる。

(……軌道修正はまだ出来る範囲……なら、もっと―――)

そこで、思考は中断された。

パァン! 風船が破裂した音がしたと同時に、伊吹は吹き飛ばされた。

「ごっ…!?」

腹の辺りに衝撃を受け、胃液が逆流する。

しかし吐き出される事は無かった。それよりも先に、木に激突する。

「っ…!」

数メートルの距離をバウンドすらせずに、木に激突した衝撃から、一瞬硬直する。

だが、硬直した体を無理やり動かし、伊吹はその場に這うように伏せる。

直後、背後の木が風切り音とすると共に削られた。

削られた事により、木屑が舞う。その中を、木屑を肌に刺さらせながら伊吹は横に転がり、そのまま起き上がる。

(今のはなんだよ…っ!)

そして、地面を砕く勢いで円形の空間を疾走しつつ、伊吹はハヤテのほうに顔を向ける。

「…………」

ハヤテは光の無い目で伊吹を追いつつ、ただ手をこちらに向けているだけだった。見た感じ何もおかしなところは何も無い。

だが、伊吹はそうは思わない。

(あれはどうゆう能力だ…!)

自分も同じ穴のムジナだからわかる。

先程自分が吹き飛ばされたのは、『異能』のせいだと。

ただし、異能のせいだとわかっていても、伊吹に対処のしようは無かった。

(明らかに俺と違うタイプの異能…!)

そう。伊吹の異能とは百八十度ほど違った異能。

もしも自分に似た異能だった場合なら未だ対処のしようもあった。

だが、誰の目から見ても違うタイプの異能。自分と同じタイプの異能ならさも知らず、違うタイプの異能なんて想像すら出来る筈が無い。

「っ!」

思考を打ち切り、伊吹は前へと転がる。

刹那、伊吹のいた場所が吹き飛んだ。

弾丸のように飛び散る土を、伊吹は転がりながら避け続ける。

だがしかし、

「が…っ!」

土の中、衝撃が再び伊吹を襲った。

今度はわき腹に当たり、転がっていた軌道を強制的に変えられ、森の中へと転がっていく。

そのまま転がり続け、やっと止まったと思うと同時に、今度は口の中に鉄の味が広がった。

「げほっ…!」

その味に耐え切れず、伊吹は口を開けてその味を吐き出す。

ビチャビチャと音を立て、血が地面に色をつけていく。

「はぁっ!はぁっ!」

わき腹をやられた痛みと、血を吐いた事で、息が乱れる。

そして、息を整えながら伊吹はあることを確信した。

(あ、あいつ…!完璧に暴走してやがる…っ!)

「くそがっ…!」

怒りを隠そうともせず、伊吹は恨み言を呟く。

それと同時に、伊吹の纏う闇がさらに濃くなった。

ズキリ。と痛みが頭に走るが、伊吹はそんな痛みなど無視する。いや、感じていないのだろう。

「殺す…」

ポツリ、と伊吹は何度も言った言葉を呟く。

「絶対に殺す…」

カードを取り出し、力強く握る。

「絶対に…!」

そして、伊吹の体から闇が爆発的に漏れた。





「…………」

ハヤテは何も考えず、その場に立っていた。ただ、何をするでもなく棒立ちで。

感情の無い目で、先程伊吹を吹き飛ばした方向を見ている。

そこで突然、ハヤテが右手を突き出した。

直後、森の中から大量の矢が射出されてきた。その矢は、当然のことながら全てがハヤテに刺さる軌道だった。

「…………」

それに慌てる素振りすら見せず、ハヤテは手を下に動かす。

その動きに呼応するように、矢が全てその場で弾かれ、下へ次々と落ちていく。

「…………」

それも、ハヤテは感情の無い目で見ているだけだった。

が、突如ハヤテの周りが暗くなった。

「……?」

不審の色を目に含みながら、ハヤテが上を向くと―――伊吹がカードを投げた姿が映った。

「…………」

再びハヤテが手を突き出そうと動く。が、それよりも速くにカードが薄く光り、数十本の矢が現れた。

現れた矢はハヤテが突き出そうとした手よりも速く、ハヤテへと殺到した。

その殺到する矢を、ハヤテは何の行動もせずにただ見つめる。

(何だよ、その行動は…)

それを上空の伊吹は不審に思う。

そして、殺到した矢は―――全て、ハヤテに当たる事はなかった。

「っ!?」

それを伊吹は最初信じられなかった。

(何だよ今の…っ!)歯軋りをしながら(まるで、『見えない壁に阻まれた様』な弾き方は…!)

そう。伊吹の放った矢はハヤテに届く事無く弾かれた。

それはまるで、『見えない壁がハヤテを囲ってる』かのように。

「くそっ…!」

伊吹が悔しそうに呟いた時、ハヤテが左手を上空の伊吹へと向けた。

ハヤテの体から闇が再度溢れ、まるで闇を纏うかのように左手へと集まっていく。

(っ!しまった…!)

その事に、伊吹は気づくが遅かった。

「―――――」

ハヤテの口が動いた気がした。

直後、闇の塊が伊吹目掛け放たれた。

咄嗟に伊吹は腕を交差させ、防御しようとした。だが、

「ごっ…!」

交差した腕に当たった闇は思っていた以上の威力であり、上にしていた右腕から何かが砕ける音が連続して息吹に聞こえてきた。

(骨、完全に…っ!)

折れた。そう思う前に、闇の塊が弾けた。

軽い破裂音と共に、伊吹の全身を衝撃が駆け抜ける。

「ぎっ…!?」

ある場所は貫かれるような鋭い痛み、またある場所は殴られるような鈍い痛み。更にある場所は斬り裂かれたような痛みが走る。

そして、全ての痛みが収まったとき、とどめといわんばかりに顎に鋭い衝撃が伊吹を襲った。

「ご、がっ…」

瞼の裏に光が走ったような気がした後、伊吹の意識は急速に暗くなっていった。

ドサッ。と音を立て、伊吹は地面へと落下しそのまま動かなくなった。

「…………」

それを冷たい目でハヤテは見た後、糸の切れた人形のようにその場に崩れ落ち、そのまま動かなくなった。





二人が倒れ、円形の空間に静寂が訪れた。その数分後。

「いやー、結構派手だったなー」

一人の女性が、虚空から現れた。

「……ま、そんなもんだろ」

「能力者同士だったしね」

続き、男性と少女が、また虚空から現れる。

「にしてもさー」

女性はハヤテに近づき、その顔を見る。

「んー…。こんなお人よしがねー…」

ハヤテの髪やら鼻やらを触りながら、そう呟く。

「……人それぞれだしな。これ」

「まぁ、そうだけどー」

興味が無くなった様にハヤテから離れ、女性は男性と少女へと向き直る。

「それじゃ、アテネと能力者と歪んだ能力者達をさっさと運ぼうか♪」




――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――



はい、二十七話おしまーい。

零司「やる気ねぇ!?」

うん…。文化祭とか色々重なっててね…。

おかげで、短いわグダグダだわ置いてけぼりだわで、色々嫌だよ!!

零司「いや、知らねえけど!?」

まぁ、ともかくこれでプロローグは終わった感じかな?

零司「プロローグかぁ…」

そ、プロローグ。こっから色々と大変だからね。

零司「お断りしたいわぁ…」

無理無理。というわけで、次回は説明かな!

零司「んじゃ、終わるか」

それでは!
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Re: 誰がため、何のため 9/17更新 ( No.62 )
日時: 2012/09/24 19:28
名前: 匿名

どうも♪匿名です♪
輝雪「輝雪です♪」
ルナ「ルナです♪」
感想に来ました♪
輝雪「うーん、ハヤテくんが闇に飲まれた」
ルナ「こ、これは凄いけど・・・怖いです」
異能・・・ということは、これって月乃もハヤテとはタイプが違うけど持ってるってこと?
輝雪「というか、覚醒してからハヤテくん超強いんだけど・・・」
ルナ「カズ兄勝てますかね?」
どうなんだろう?まずハヤテの能力がわかんないし。でも、何となくいた状態のハヤテには負けそうだな。
輝雪「何で?」
攻撃しても怯まなそうだし。和也の周囲同化の弱点は“攻撃した瞬間”何だよね。場所がバレる。
ルナ「月乃さんも闇が増しましたけど、辛そうです」
輝雪「矢とか大量に出したけど全部防がれたのよね。・・・本当にどんな能力?」
いずれわかるでしょ。にしても、これでプロローグですか。つまり、次回からは本番?
輝雪「さーて、どんな展開が待っているのかしらね?」
ルナ「ハヤテさんは大丈夫でしょうか?月乃さんも心配です」
月乃も気にかけるところ、ルナは優しい・お人好し・おせっかいのどれだ?
輝雪「さあ?まあ、次回もいったいどんな展開があるのか楽しみね♪」
ルナ「天王州さんも気になりますし・・・」(ブツブツ)
ルナはいつまで迷ってんだよ。それでは♪
[管理人へ通報]←短すぎる投稿、18禁な投稿、作者や読者を不快にする投稿を見つけたら通報してください
Re: 誰がため、何のため 9/24更新 ( No.63 )
日時: 2012/10/06 19:01
名前: コサッキー

<レス返し>

▼ 匿名さん

>どうも♪匿名です♪

>輝雪「輝雪です♪」

>ルナ「ルナです♪」

>感想に来ました♪

六花「感想ありがとうございますね♪」

思ったけどあんまソルが表人格になる時ってないよねー。

零司「基本、社交的なルナが表人格の方が都合いいからじゃねえの?」

>輝雪「うーん、ハヤテくんが闇に飲まれた」

>ルナ「こ、これは凄いけど・・・怖いです」

まぁ、普通に生活してたらこうはならなかったけどね。

ハヤテ「なら、なんでこうなったんですか!?」

零司「……まぁ、不幸だからじゃね?」

ハヤテ「かはっ」←(胸に何か刺さった様子)

伊吹「キヒヒ……しょうがないけどな、あの状況じゃ」

零司「ま、確かにあの状況ならなる確率は高かったな。後、怖いのはしょうがないさ、ルナ」

>異能・・・ということは、これって月乃もハヤテとはタイプが違うけど持ってるってこと?

持ってますぜー。

伊吹「シンプルじゃないけどな……キヒヒッ」

ハヤテ、零司が物凄くシンプルなのに対して伊吹は結構特殊だからねえ…。

零司「だが、特殊な分嵌ったら強いだろ」

>輝雪「というか、覚醒してからハヤテくん超強いんだけど・・・」

明らかにリミッターが外れてますからね…。

零司「つっても、時間制限付きで尚且つ一度きりなやり方ではあるがな」

伊吹「キヒヒ……あれは正直反則だろ…」

そういうもんだけどね…。

ハヤテ「え?え?僕、何したんですか?」←(因みにあの時の記憶なんて微塵も持ってませんねー♪)

>ルナ「カズ兄勝てますかね?」

>どうなんだろう?まずハヤテの能力がわかんないし。でも、何となくいた状態のハヤテには負けそうだな。

ハヤテの能力は物凄くシンプルです。

伊吹「見えない攻撃って事は……数個までは想像できるな。キヒヒッ」

それの中で一番シンプルな物が多分該当するさ。

零司「というか、和也の弱点って何だ?」

>輝雪「何で?」

>攻撃しても怯まなそうだし。和也の周囲同化の弱点は“攻撃した瞬間”何だよね。場所がバレる。

和也の弱点って明らかにハヤテの得意分野だよね…。

ハヤテ「そうなんですか?」

うん、あの奇妙な感覚で一瞬早く感知して、反応できるからね。

零司「その分時間的余裕が出来るってわけか」

そういう事。逆に零司は相性が悪いね。

伊吹「キヒヒ……明らかに見てから動くタイプだからな…」

零司「一応弱点克服のやり方はあるんだが……あれはちょっと使い辛いんだよなぁ…」

>ルナ「月乃さんも闇が増しましたけど、辛そうです」

>輝雪「矢とか大量に出したけど全部防がれたのよね。・・・本当にどんな能力?」

結構諸刃の剣だよねー。

零司「そういう能力だから。だけじゃ片付けられないけどな。というか、あんな痛みなくね?」

……ノーコメ☆

伊吹「んで、俺の能力は…」

……まぁ、便利っちゃ便利だよね。

>いずれわかるでしょ。にしても、これでプロローグですか。つまり、次回からは本番?

>輝雪「さーて、どんな展開が待っているのかしらね?」

大体本番に差し掛かってくるって感じかなー?

零司「アバウト過ぎね!?」

いや、結構この物語自体曖昧だけど…?

そして、展開は……まぁ、いつか死ぬかもね。

三人『はぁっ!?』

……伊吹まで反応するとは思って無かったよ。でも、事実なりー。

>ルナ「ハヤテさんは大丈夫でしょうか?月乃さんも心配です」

>月乃も気にかけるところ、ルナは優しい・お人好し・おせっかいのどれだ?

伊吹「お人よしが」

ズッパリ言ったねぇ!?

零司「隠してもしゃーないけどな」

因みにハヤテが、腹から大量に出血していてそれで更に全身から血を流してる。

ハヤテ「かなりの重傷!?」

零司「何で死なないの、お前!?」

伊吹は、右腕を骨折。因みに複雑骨折。

伊吹「……痛かったってレベルを明らかに超えてたぞ……キヒヒッ…」

>輝雪「さあ?まあ、次回もいったいどんな展開があるのか楽しみね♪」

今回は説明がメインかなー?

零司「まぁ、ビギナーにはそれが一番だろ」

ハヤテ「何で零司さんは教えられるんですか!?」

零司「そりゃまぁ……秘密だよ」

>ルナ「天王州さんも気になりますし・・・」(ブツブツ)

>ルナはいつまで迷ってんだよ。それでは♪

伊吹「キヒヒ……本当にお人よしだな」

だねー。

零司「ま、匿名感想サンキュー♪よかったら次回もよろしくな♪」




さて、今回はなんだろなー。

伊吹「キヒヒ……明らかにわかって言ってるだろ…」

零司「まぁ、結構酷な内容ではあるがな」

ハヤテ「……一体どんな内容なんですかね…」

……大丈夫だよ、多分。

ハヤテ「物凄く不安なんですが!?」

では、どうぞ!!



――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――



ハヤテが伊吹と戦った翌日。

東京都内にある、天皇洲系列の病院。

その中にある客間にて、四人の男女がそれぞれ座って向かい合っていた。

その場は静寂が支配していた。

「……それで?」

ポツリ。と一人の男がその静寂を静かに破る。

「俺らを呼び出した用件を聞きましょうかね?六花さん」

男性―――零司は、正面に座っているメイド服の女性、六花に向かって話しかける。

その言葉を受け、六花は「……わかってるんじゃないですか?大神君」と静かに言う。

「……ま、大体はわかってますよ。昨日こいつを見ただけで結構想像できた事ですし」

そう言うと、零司は隣に座っている、伊吹の頭をグシャグシャと撫で回す。

「……腕に響くからやめろ、零司」

伊吹の言葉に、悪い。と言って零司は頭から手をどける。

それを確認すると、伊吹は自分の真正面にいる、アテネに顔を向ける。

「キヒヒ……どうせお前が何を訊きたいから、集められたって事だろ」

「えぇ、そうですわ」

伊吹の言葉を、アテネは肯定する。

「昨日、あなたが私を気絶させた後の顛末を聞きたいのですわ」

真剣な瞳で、しかしその中に怒りの色を多量に含んで、アテネは伊吹を睨むように見据える。

その視線を伊吹は気にしてないようにかわし、考えるように手を組んだ。

「まー……別にいいんだがー…」

「何故渋るんですの?」

不審な態度の伊吹に、今にも詰めかかりそうな勢いでアテネは詰問する。

アテネの言葉を受けた伊吹は、困ったように隣に座ってる零司を見る。

その視線をヘルプと零司は取り、助け舟を出すべく口を開いた。

「天皇洲」

「何ですの?」

零司が話し始めたことにより、アテネの視線が零司に向く。

「こいつの話を聞くならある程度の覚悟をしとけ」

「……覚悟…?」

そ、覚悟。と言い零司は言葉を続ける。

「こっから先、どんな事があってもハヤテを排除したり排斥したりしないって覚悟」

「そんな事しませんわ!!」

失礼だと言わんばかりに、声を荒げてアテネは零司を睨む。

だが、その視線を零司は無視して反論する。

「いやいや。最初はそう言ってても、後々そうする事はあるだろ」

「しません!何故、私がハヤテに…!」

「悪いが」

アテネの言葉を途中で切り、零司は言葉の端々を強くしながら、言葉を紡ぐ。

「俺は過去、お前と同じ事を言ってきた奴を大量に見てきた」

「っ…」

「それで、その結果は……わかるな?」

今度は零司が睨む番だった。

その睨みと言葉の意味に、アテネは威圧されたように体を引く。

『………』

それを伊吹、六花の両名は口を挟まずにただ黙っていた。

口を挟まない理由はいたって簡単であり、ただ零司の言葉の意味を知っているからである。

伊吹は体験し、六花は間接的にそれを見てきた。

故に、この場でただ一人知らないアテネを弁護も何もしようとしないのだ。

「……それでも」

突如アテネは消えそうな声で呟く。

「それでも……私は、絶対にしませんわ」

キッパリとアテネは言い切る。その目は、確かな覚悟が見えた。

(……ったく、この主従は…)

内心で、零司は軽く笑った。

「……オーケー。伊吹、話してやれ」

「りょーかい。キヒヒッ」





       第二十八話「『さぁ、勉強の時間だビギナー』by零司」





「いたた…」

アテネ達が客間で話している同時刻、ハヤテはあてがわれた個室でうめき声を漏らしていた。

「ちょっと動いただけでこれだもんなぁ…」

そう言い、ハヤテは自分の腹をめくり上げて見る。

その腹は、包帯の白色が支配しており、肌色など一切見えなかった。

「はぁ…」

変わらない事実に、思わず溜息が漏れる。

「変わらないのはわかってても……やっぱり夢であって欲しいと思うよなぁ…」

上を仰ぎ見ながらそんな事をハヤテは呟く。

それは、数時間前に遡る。





数時間前―――痛みによって、ハヤテの意識は覚醒した。

「……っ……たぁ…!」

起きたばかりにも関わらず、苦痛にハヤテは顔を歪める。

痛みの源泉は、腹。そこから鈍い痛みが伝わってくる。

「っ…!」

痛みの場所がどうなっているのか見ようと首を動かすだけで、痛みが倍増して襲い掛かってくる。

それでも痛みを我慢して、ハヤテは怪我をしたであろう場所を首を動かして見る。

だが、必死に動かして見たものは腹に巻かれた包帯だった。

「っはぁ…」

その事に、ハヤテはがっかりしたように息を吐き、ベッドに倒れこむ。その衝撃で、また痛みを感じながら。

「……ここ、どこだろ?」

そして倒れた事で、幾分か頭が冷静になりそんな事を考え始める。

周りは清潔感溢れる白い壁が囲っており、部屋の中にはそれ以外の物は一切無い。

そこから弾き出したハヤテの考えは(……病院……ですよね?)だった。

というか、実際病院なのだが、何故かこの部屋にはベッド以外の物が無かった。

サイドテーブルはおろか、見舞い客の座るであろう椅子も無かった。

あるといえるのは、窓にかかってるカーテンくらいな物だった。

これだけなら、精神病院に見えないことも無い。もしくは監獄か。

それは兎も角、ハヤテの冷静になったはずの頭は目に見えて暴走し始め、明らかにおかしい方向に思考が進んでいた。

(え?え?何でこんな病室なんですか?というか、本当にここ病室なんですか?実は死んだ後の世界とかじゃないですよね?)

正常な思考を打ち出す事すら出来ず、ハヤテの思考は混乱の一途を辿っていく。

(もしかしたらここ、監獄とかですか?そしたら逃げなきゃ。逃げなきゃ!!)

そしてとうとう、おかしな結論にハヤテは辿りつき、体のことを忘れ立ち上がろうとした時。

『おーい、起きてっかー…?』

物凄く気だるそうな声が扉から聞こえた。

「……はっ!?」

その声に、ハヤテは正気を取り戻す。

『あー…?起きてねえのかー……くっそかったりぃ…』

その正気を取り戻した際の声が聞こえなかったようで、続けて気だるそうな声がハヤテの耳に届く。

『あー…。しゃーねー……適当に見て適当に診察結果でも書いとくとしますかね……でも、それすらかったりぃ…』

(……何なんですか、扉の向こうにいる人…)

聞こえてくる内容に、ハヤテは呆れた。

病院にいる時点で医者、看護師、見舞い客のどれかに分類されるだろう。

しかも、診察結果と聞こえてきたのだから医者か看護師のどちらかに必然的に絞られるのだが…。

(……どっちもやって欲しくない様な内容でしたけどねぇ…!?)

医者と看護師。どちらも命を預かる職業だ。

それなのに(かったるいは言っちゃいけないんじゃ…!?)と言う事だ。

『まーいっか…。死なない程度に薬品注入すりゃいいか…』

(いいわけあるかぁああああああああああああああああああああああああああああ!!!)

幾らなんでも看過できる内容ではなく、ハヤテは大声で、ただし内心で盛大にツッコム。

『……さぁーて、いい加減にツッコミっぽい音が立ってたから起きてんだろ。つーわけで、入るぞクソガキ』

「え?」

何か信じられない言葉を言われた気がするが、それに言い返す前に扉が開いた。

「おー……やっぱ起きてたかー…。かったりぃ…」

開いた扉から出てきたのは、ぼっさぼさの黒髪でよれよれで皺だらけの白衣を着た人だった。

その人はハヤテを見ると「はぁー…」かったるそうに、溜息をついた。

「ちょ、何で人の顔を見るなり溜息ついてるんですか!?」

「あー…?んなもん、相変わらず不幸そうな顔つきしてんなー、って思っただけだよかったりぃ…」

「相変わらず!?相変わらずって何ですか!?」

「うっせぇ、耳に響く…」

ハヤテの大声によるツッコミに、男性は耳を押さえて顔をしかめる。

「というか、あなたは誰なんですか…」

「あー…?あー……、自己紹介してなかったけか、かったりぃ…」

「その『かったりぃ』をやめてもらえませんか?物凄く不愉快です」

勝手になってろクソガキー。と適当にハヤテをあしらい、男性はよれよれの白衣の内ポケットを探るように手を動かす。

「あらー…?名札どこいったけかなぁ…?かったりぃなもう…」

だが、探し物は見つからなかったようで、若干イラっとしたように手を白衣の内側から出す。

「あー…。名札ねぇから、口頭で説明する。一回しか言わないからちゃんと聞いとけよー…」かったるそうに髪をかき「俺の名前は治水幹也(ちすい みきや)。一応この病院の院長だ」

「……院長?」

信じられないといった感じで、ハヤテは目の前の男を見る。

だがやはり、目に映るのはぼさぼさの髪とよれよれで皺だらけの白衣を着た男性だ。

……院長のイメージ、いや医者のイメージとはかなりかけ離れているだろう。

「……え?あなたが……この病院の院長?」

「一回しか言わねぇって言ったはずだぞクソガキ」

「えぇー…」

「露骨そうに嫌な顔すんな。点滴の中に毒入れて殺すぞ」

「……冗談……ですよね?」

さあな。と幹也は言って、白衣の内ポケットから注射器を取り出した。

それを見てハヤテは理解した。

あぁ、この人ならやりかねないと。

「つーわけで、腕出せ」

「それなら注射器回さないで下さい。物凄く不安です」

かったりぃ…。など言いながらも、幹也は注射器を回すのをやめ、改めて「おら、腕出せ」と言う。

今度はハヤテも素直に従い、左腕を上げようとした。

「……あれ?」

しかし、左腕が動かない。

どんなに力を入れても、ピクリとも動こうとしてくれない。

「……あ?何やってるわけ?」

「いや、あの……腕が動かないんですけど…」

「はぁ?」

ハヤテの言葉に怪訝な表情を幹也は浮かべる。

だが、その表情をすぐに引っ込め、真剣な表情でハヤテの左腕を触り始めた。

「んー…。後遺症……とかじゃぁ、絶対にねぇな。となると…」

左腕を持ち上げ、手を離して落とす。

落ちた拍子にベッドのスプリングが鳴る。

「んで?痛んだりは?」

「いえ、しませんけど…」

「じゃぁ、単に麻酔続いてるだけだわ」

「麻酔ですかー…」

実に覚えの無い感覚が麻酔によるものだと知り、妙な気分にハヤテはなる。

確かに麻酔を普通は受けないので、それが普通の反応なのかもしれないが。

「ま、看護婦が手術の際に若干量をミスっただけだ。気にするな、かったりぃ」

「それ、下手したら別の薬品でもミスった事になるじゃないですかね!?」

「まぁ、そうなったらそうなったらで……ドンマイだよ」

「それで済むはず無いですけど!?」

別に何も無かったんだからよくね?と話しながら幹也は白衣のポケットから一つのケースを取り出した。

そのケースを開き、ガーゼを取り出しハヤテの左腕の一部分を拭く。

「ゴミ箱……ねぇか。かったりぃ…」

そう言うと、皮膚を拭いたばかりのガーゼをケースを出した場所とは逆のポケットに突っ込んだ。

「さて、ブスリと突き刺しますかね」

「不安な言い方やめてくれません!?」

却下。とにべも無く否定され、ハヤテは戦慄する。

だが、逃げようにも麻酔がまだ効いてるので逃げる事などできない。

「動くなよー。動くと変なところ刺すからなー」

一応の忠告とも取れる言葉を言いながら、幹也は注射器を左腕、正確には血管に突き刺す。

それと同時に、注射器の中に腕から血がどんどん注射器に注がれていく。

(あぁ……採血でしたか…)

その光景を見て、ハヤテはホッと胸を撫で下ろす。

「よし、採血終了」

その声と共に、注射器を血管から引き抜き、新しいガーゼをケースの中から採血した場所へと押し付ける。

そして注射器を置こうとして、それをやめる。

「あー…。誰か連れてこりゃよかった…」

また、かったりぃ…。と頭を抱える幹也。だが、すぐにそれをやめ、ベッドに取り付けられていたとあるボタンを押した。

『はい、どうしましたか?』

ボタンを押したとほぼ同時に声が聞こえてくる。押したのは恐らくナースコールだったのだろう。

「あー。これ聞いた奴ここに来い。血を検査に回しとけ」

「って、使い方明らかに違いません!?」

ハヤテのツッコミを無視するように『はい、わかりました』と声が聞こえる。

「えぇー…」

「まぁ、俺がこうするのは多いからこんな反応なんだよ」

「それなら最初から誰か連れてきましょうよ」

かったりぃから嫌だ。と言ってる間に扉が開き、一人のナースが部屋に入ってきた。

「じゃ、これ頼むわ」

入ってきたナースに注射器を渡すと、ナースはすぐに受け取って出て行った。本当に取りに来ただけなのだろう。

「さて、と」

ナースが出て行ったのを見計らったかのように、幹也は口を開いた。

「いい加減、お前の今の状況を教えとくかね」





「……はぁ…」

そこまで思い出したところで、また溜息が出る。

その後に教えられた自分の状況は散々だった。

まず第一に、腹から背中にかけての貫通した傷。

それが一番の重傷だったようで、あと少し運ばれるのが遅れていたら死んでいたとか。

しかも、その貫通した傷は内臓をかなり傷つけていたようであり、何だかんだで危険だったとか。

ただ幸いだったのは、背骨には接触しておらずに無事だった事だ。もし背骨に当たっていたとしたら、大変な事になっていただろう。

次に、全身にある切り裂かれたような傷。

これに関してはあまり危険な物が無く、自然に回復するとの幹也の話し。

最後に、腕にある火傷。

これに関しても余り心配する事は無いようであった。ただ、少し跡が残るくらいのようである。

「はぁ…」

そしてまた溜息が出る。

自分の置かれている状況を思い出すだけで出てしまうのだ。ある意味しょうがないのだろう。

「暇だなぁ…」

溜息の次にそんな言葉が口から漏れる。

腹の傷の事もあり、絶対安静を言い渡されてるので何もすることが無く、暇だった。

もしここにテレビでもあればいいのだが、生憎となかった。

それも、幹也がハヤテの不幸体質を聞いての処置なのだが、そんな事はハヤテは知らない。

「はぁぁぁぁぁぁ…」

今までで一番深い溜息をつき、ハヤテはベッドに寝転がる。

やる事がないなら寝ようと思っての行動だった。

(寝れるわけないんだろうけど…)

この数分後、ナギやヒナギク、更には生徒会三人組が来て、ハヤテは物凄く喜ぶのであった。





       *    *    *





ハヤテが暇を持て余してる時間とほぼ同時刻。

零司と伊吹は病院の廊下を歩いていた。

「さってと。次はお見舞いに行くとしますか」

「キヒヒ……俺は行きたくない感じだがな…」

知るか。と伊吹を一蹴し、零司は手を頭の後ろで歩きながら組む。

「にしても…」

「ん?」

「天皇洲の事だよ」

その言葉に、あぁ。と伊吹は納得する。

「まぁ、予想通りといえば予想通りの反応してくれたがな。キヒヒッ」

「だよなー」

適当に返事をしながら、零司は先程説明をした時のアテネの顔を脳裏に思い浮かべる。

(そりゃ、思い人が凄い事になってりゃ驚くか…)

説明し終わったときのアテネの顔は呆然とした顔だった。

それに対して、隣に座っていた六花に関しては平然としており、勝手に知っていたのだろうと零司は推測する。

「というか、正直天皇洲はどーでもいいんだわ」

「キヒヒ……問題は当の本人だからな…」

そうそう。と相槌を打ちつつ、零司はこの騒動ともいえるものの中心人物であるハヤテの顔を思い浮かべる。

「さってさて、どう説明したもんかね…」

「ありのままを説明するしかないけどな。キヒヒッ」

「だからといって口頭だけで説明するのはめんどくさいんだが…」

どうするもんかな。と零司は天井を仰ぐ。

その時、零司の視界の端にある物が映った。

「ん…?」

それが気になってそれを視界の真ん中に入れると、零司は口の端を歪めて笑った。

「ちょーっくら、とってくるわ」

「……どう考えても嫌な言い方にしか聞こえねぇなぁ…」

一応の制止とも取れる伊吹の言葉を無視し、零司は行動を開始した。





「ふぅ…」

場面は変わり、再びハヤテの病室。

つい数分前にお見舞いに来てくれたナギ達は帰り、再びハヤテ一人になったのだ。

「みんな心配してくれたんだなぁ…」

自然に言葉が口から発せられる。

それと同時に先程言われた心配の言葉がうっすらと思い出される。

皆、多少は違えど大体は同じ意味であり、それら全てが心配の言葉と早く戻って来て欲しいとの旨だった。

それを聴いた瞬間、ハヤテは泣きそうになったとか。

ともかく、みんながいなくなった事によって再び静寂が訪れる。

「……やっぱ寂しいな…」

また、口から自然と言葉が漏れ出る。今度は違う言葉だったが。

寂しさを紛らすようにハヤテはゆっくり目を閉じる。

目を閉じた瞬間、様々な人の姿が思い浮かぶ。

思えば、両親に売られた時が始まりだったのかもしれない。

売られた先でアテネと出会い、執事に再びなった。

日本に戻ってきたら戻ってきたで、様々な人との出会いがあった。

(……不幸な事もあったけど、今は幸せだなぁ…)

そうしんみりした気分になった。その時―――

「見舞いに来たぞハヤテェ!」

「色々と台無しですよ!!」

勢いよく扉が開き、お見舞いのテンションではないテンションで零司が飛び込んできた。何はともあれ、色々と台無しなのは間違いないだろう。

「え?何が台無しだって?」

「あ、零司さんに説明しても無駄なんでいいです」

ひでぇ!?と叫ぶ零司を無視して、ハヤテはこっそりと溜息をつく。

「だから言ったのによ……キヒヒッ」

「っ!」

その声を聴いた瞬間、ハヤテに緊張が走った。

「キヒヒ……よっ」

その声と共に、扉の影から伊吹が顔だけを出して挨拶する。

「……どうも」

それに対し、ハヤテの言葉はたったそれだけだった。

「冷たいねぇ……まぁ、わかってたことだけど。キヒヒッ」

「……わかってるならいいじゃないですか」

敵意を隠そうともせず、ハヤテは言葉を返す。

「まあまあ」

それを見た零司は諌めるようにハヤテを手で押さえる。

「ま、一応役割はあるんだから許せって」

「……零司さんが連れてきたんですか?」

「うん」

敵意の視線を向けられても、零司は怯む事無くあっさりと答える。

「よし、伊吹入れ」

「了解。キヒヒッ」

零司に促され、伊吹は顔だけでなく全身を見せた。

その全身は、特に変わったところは無かったが、ただ一つ異色を放っていた物があった。

「つ、月乃君……それは…」

「あぁ、これ?」

ハヤテに質問され、伊吹は指されたもの―――右腕についているギプスを軽くあげる。

「キヒヒ……これはお前にやられた傷なんだがな…」

「え…」

その言葉にハヤテは愕然とした。

それもそうである。その伊吹につけたという傷。それはハヤテの記憶に全く無かった。

「ま、それも含めて説明するから待ってろ」

「…………」

零司の言葉に、ハヤテは何も言わずにただ頷いた。

「あ、伊吹―。ついでにホワイトボードも持って来てくれ」

「マジで使うのかよ…」

零司の言葉に呆れながらも、伊吹は一度廊下に引っ込み、再び出てきたときには左手で会議に使うようなホワイトボードを持って入ってきた。

「……これ、どこから持って来たんです?」

明らかに普通に持ってくることすら容易では無いホワイトボードに、ハヤテは質問する。

「んー?簡単だよ」ホワイトボードの位置を微調整しながら「単にナースステーションから盗ってきただけだよ」軽々と言ってのけた。

「……………」

その言葉にハヤテの思考が停止した。

「……キヒッ」

そして伊吹が笑った。同時に、

「えぇえええええええええええええええええええええええええ!!???」

病室にハヤテの大声が響いた。

「よく響くなぁ…」

「……お前が悪いんだがな」

そしてその二人は耳を塞いで平然と会話を交わしていた。

「と、盗ったって零司さん…!?」

「別によくね?使ってなかったっぽいから持ってきたまでだし」

「いやいや!?持ってきたなんて言い方してませんよね!?」

「じゃあ、言い換える。持ってきた」

「遅いですから!」

ちっ。と舌打ちをしたところを見るに、全く反省した様子は零司にはなかった。

「まぁ、少し借りてるだけだし?後で返せば何とかなるだろ」

「ならない気もするんですけど…」

気にすんな。手を軽く振りながら言う零司に、ハヤテは毒気を抜かれたように黙りこくった。

「さぁお勉強の時間だぜ、ビギナー」

ビギナー…?と首を傾げるハヤテを無視し、零司は備え付けられている黒ペンの蓋を取り、ホワイトボードに文字を書き始めた。

大きく『異能』と書くと、零司はハヤテに向き直る。

「さて、この字を見るとお前はどう思う?」

コツコツとボードを叩きながら、零司はハヤテに問う。

「『異能』……ですか」

パッと脳裏に浮かぶのは、「小説やアニメとかでよくあるアレ……でしょうか」

まぁ、そうだろうな。と零司はハヤテの言葉に納得する。

ボードの反対側に立つ伊吹もウンウンと頷く。

「それで、ハヤテの言い分だとこれは現実にはあり得ないと」

「それはそうですよ。もし、そんな物があったら世界は滅茶苦茶になるじゃないですか」

「確かにそうだ」だが、と零司は言葉を一度区切り「これ……『異能』は存在する」

「……はぁ」

存在する。何て言われてもピンと来ないのか、ハヤテは呆けたような返事を返す。

「ま、そんな事言われてもピンと来ないだろうからな。ちょいと手を前に伸ばしてみ?」

言われた通りに、ハヤテはどうにか動く左手を前に伸ばす。

「次に、手のひらから塊を集めるイメージを頭に思い浮かべろ」

目を閉じ、ハヤテは言われたとおりにイメージする。

「んで、最後にそれを前方に放出するイメージを思い浮かべてみろ」

それも言われた通りに、頭の中でイメージした。



ゴゥッ!!瞬間、病室の中に小規模な突風が起きた。



「おおっ!?」

「キヒッ!?」

「うわぁ!?」

突如病室の中に起きた突風に、三者三様の声を上げた。

といっても、皆驚きの感情が篭っていたが。

ともかく、突風はすぐに止んだ。

「さて」風が治まったのを確認し「これでわかったか?」

「……もしかして、僕が…?」

「それしかねえよ。俺らは何も動いてないわけだし」

零司の言葉を聞き、ハヤテは自分の左手を見る。

今、自分のこの手から何かが放出された。その事がとても信じられなかった。

現実ではあり得ないと思ってた事が、目の前で起きた。

それはまるで、自分が自分で無くなったような―――。

「呆然としてる所悪いけど、説明するから聞けー」

零司の言葉に意識を戻され、ハヤテはボードの方に目を向ける。

それを確認すると、零司は大きく書かれてた文字を消し、新たに『呼称』と書いた。

「という訳で、次に説明……ともいえないんだが、呼称について説明する」

後ろ手に一度ボードを叩き、

「この力には、明確な呼称というのがない。故に俺ら能力者は、力の事を『闇の力』と呼んでる」

「『闇の力』…」

「まぁ、何故闇って言ってるのかは追々説明するんで置いとくが……ともかく、力もしくは闇の力で通じるから、覚えとけ」

「はぁ…」

いつかその呼称でいう日が来るのだろか、と内心疑問に思いながらもハヤテは相槌を打つ。

「んじゃ、次な。ここからは気を引き締めて聞けよ?」

冗談めかしてニヤリと零司は笑うが、ハヤテにはそれが警告のようにも見え、気を引き締める。

「さて、今度は順を追って説明しようか」

そう言って、今度は『1.発現条件 2.注意点 3.実践などその他』とボードに書く。

「つーわけで、最初に説明するは発現条件」コツンとボードを叩き「まぁ、これに関しては全員に共通するもんだからな。別に気にする事でもない」

その言葉にホッと一息つき、緊張を若干ハヤテは解く。

「んで、一番重要な条件なんだが…」

説明する前に、と零司はペンをハヤテに向けて突きつける。

「ハヤテ。お前、覚えてるか?」

「何をですか?」

いきなり話題を振られ、ハヤテはキョトンと返す。

そんな反応を見て、零司は「やっぱ覚えてないか…」と頭をかく。

「キヒヒ……出た瞬間は覚えてるけどな、俺」

そこへ伊吹が口を挟んだ。

「あー…。それじゃ駄目なんだよな。本人が覚えてないと意味無いし」

だな。と言って伊吹はすぐに引き下がる。元よりわかっていたのだろう。

「ま、いいや。別に覚えて無くても何とかなるし」

「……本当にいいんですか?」

「いいったらいいんだよ。それでいい加減に本題に移る。この力の発現条件は至ってシンプル」

そこでボードに向き直り、書きなぐるようにペンを動かす。

「発現に必要なのは唯一つ」

そして書き終わると、ハヤテに文字が見えるようにその場を零司はどいた。

そしてハヤテの目に映ったのは―――





「『絶望的なまでの負の感情』だ」

零司の言葉と同じ言葉が、黒く書いてあった。





「これさえあれば、たとえ赤ん坊でも老人でも、果ては子供までも普通に能力が開花する」

呆然とするハヤテをほっといて零司は淡々と説明を続ける。

「そして負の感情の中身はなんだっていい。怒り。憎しみ。恨み。嫉妬。悲しみ。嫌悪。怨嗟。上げたどれかの感情がある一定のラインを超えたときに、能力は発現する」

「じゃあ…」

恐る恐るといった感じで、ハヤテは震える唇を動かす。

「僕も…」

「そんな感情が一定ラインを超えたんだろ」

ハヤテの言葉を、何でも無いように零司は返す。

「ひとまず、感情の整理は置いとけ。先に全部聞いてそっからした方が楽だぞ」

「……そうします」

その返事に満足したのか、零司は一つ頷き次の説明をするために口を開いた。

「んで次。『注意点』。これは結構多いし、後々後悔しないようにちゃんと聞いとけよ?一回しか説明もしないしな」

「……後悔って何ですか!?」

後悔は後悔だよ。と零司は肩をすくめながら言い、ペンを窓から投げ捨てた。

数秒遅れて、コンッ。と小さな音がハヤテ達の耳に届く。

「何で今捨てたんですか!?」

「いや、もういらないし?」

だからって捨てなくてもいいじゃないですか…。と文句を言うハヤテを無視し、零司はボードをバン!と強く叩く。

「ともかくだ。注意点は悲劇を生む物が大半だから一字一句、聞き逃すなよ?」

「何故さっきからツッコミどころがある言い方をするんですか!」

悲劇を生むって…!と言いながら頭をハヤテは抱える。

だが、零司と伊吹は「そう言われても…」という雰囲気を出していた。

「まぁ、事実だから諦めとけ。キヒヒッ」

「諦めきれませんよ…!」

「知るか。というか、聞けばなんとかなる部分が多いから聞いとけ。つか、聞かないと今殺す」

「物騒すぎですから!」と怒鳴るハヤテを「はいはい」といなし、零司は話を続けた。

「注意点その一。感情を昂らせるな」

「…?」

「……首を傾げるな。説明するから」

コホン。と一息入れ、

「さっき説明し忘れたんだが、この力はある物で強くなる。弱くなる事はなく、一方通行だ」んで、と言葉を切りつつハヤテを指差し「さて問題。ある物とは何でしょう?」

「そんないきなり言われても……わかりませんよ」

「いやいや。もう答えは言ったんだよ」

言った。そのフレーズに、ハヤテは説明始めから先程までに言われた事を思い出す。

その中に、多く出てきたフレーズは?

パッと思いつくのは一つ。

「負の感情…」

「半分正解。正確には『感情』だ」

「『感情』…」

そ。と零司は言い、続ける。

「この力には感情ってのが深く結びついてる。ま、発現条件からしてそこはわかりやすいだろうがな」

「そして、感情が強く出てる程、この力は強くなる。威力、精度、その他諸々がな。キヒヒッ」

「といっても、一番強くなる感情はハヤテにもわかるものだがな」

それが、負の感情だとハヤテも何となしに理解する。実際、そんな感触が手に残ってる。ような気がしている。

「んで、これは二番目にも繋がってるからついでに言っておく。二番目の注意点は暴発についてだ」

「暴発?」

そんな拳銃じゃあるまいし、と内心笑うハヤテ。

だが、零司の表情はハヤテとは対照的に硬かった。

「笑い事ではないんだよなぁ、これが…」

「キヒヒ……確かにそうだな…」

「……え?」

二人の態度と言葉に、やっとハヤテも気づく。馬鹿に出来る内容ではないと。

「まぁ、とっとと説明すると……第一第二の注意点を繋げて話すと、『感情を昂らすな。暴発するぞ』ってことだ」

そう言われても、理解出来ずハヤテは首をかしげる。

「詳しく説明すると、この力は感情が密接にリンクしてる。それは説明したが、それだけで済まない。正の感情ならんな事は無いが、負の感情が昂ったが最後、能力が勝手に発動する」

「っ!?」

勝手に発動する。その言葉に、ハヤテは息を詰まらせた。

「これは自分の意思なんて一切関係ない。オートで発動する決まりごとだ。覆せない」

「ちょ、ちょっと待って下さいよ!それなら、それで発動した場合どうなるんですか!」

「簡単だよ」まるでそれが常識かのように「最大の威力で能力が発動して、大抵回りの奴が死ぬ」

「……っ」

零司の言葉をハヤテは信じたくなかった。

周りの人間が死ぬ。周りの人間で最初に浮かぶのは、女神の名を持つ女性。その人が死ぬ?

ギリッ。と歯軋りする。

認めなくない。そんな事を。

「まぁ、負の感情を絶大な量で抱かなきゃ発動はしないがな」

「……安心は出来ませんよ、それ」

しゃーねぇさ。ハヤテにはそれが諦めを促してるようにも聞こえた。

「んで、次。三番目の注意点は『リスク』についてだ」

「リスク…」

何かあるのか、と身構えるハヤテに零司は「身構えるな、これも無理な類だ」と言う。

「どっかの漫画で言ったように何かの犠牲を払わずに何かを得る事は出来ない。これもそんな感じだ」

「キヒヒ……これも原理は簡単だ。ある一定回、能力を使ったときに何かを失う」

「失う…!?」

伊吹の言葉に、目を見開いて驚くハヤテ。そんなハヤテに零司は「……俺の話聞いてたか?」とジトっとした目を向けていた。

「といっても、これに関してだけは検証してないからわかんないんだけどな」

との零司の言。それにハヤテはホッと息をついたが、「ま、失うのは事実だがな」と言われ、再び沈んだ溜息をついた。

「追加で言うが……失うのは人それぞれだ。ここにいる俺や伊吹、ハヤテで絶対にリスクは違う。……つっても、人が持ってるものは少ないから重なる事も無いわけじゃないがな」

「はぁ…」

零司に言われた事も、まだ失ったことのわからないハヤテにはピンと来なかった。

「……そういえば、スルーしてましたけどお二人も能力者だったんですね」

『今更!?』

「そんなに驚く事ですか!?」

「だって、今までスルーされてるから納得したかと思ってたんだが…」

「単に理解が追いつかなかっただけです!」

ハヤテの反論を無視し、零司は伊吹に「にしてもスルーだけはヒデェよなー」などと話しかけていた。話しかけられた伊吹はただ頷いただけだったが。

「まぁ、いいや。次の注意点に移るか」

「お願いします」

ハヤテの返答を思っていなかったのか、零司は目を見開く。だが、すぐに顔全体を笑いの表情へと変えた。

「心構えが出来てるって感じだなぁ…♪それじゃ、次の注意点は『惹かれ合い』だ」

「惹かれ合い?それって…」

「ま、恐らく想像してる通りだと思うぞ?」零司は自分を指差し、次に伊吹を指差し「能力者同士はなんでか惹かれあう傾向にある」

これは今もそうだがな。と零司は愚痴るように吐き捨てる。

それに加え、さらにだ。と前置き続ける。

「能力者同士だけじゃ飽き足らず、覚醒するかもしれない奴も引き寄せる」

「それなら僕も…」

「それに合致するな。まぁ、突拍子も無い仮定を言うなら…」

「闇が近くにある奴同士を引き寄せてるとも言えるかもな。キヒヒッ♪」

零司の言葉を途中で遮り、伊吹が続ける。

それを零司は許せなかったのか、「てんめ、さっきから何途中で台詞かっさらってるんだよ!」と伊吹に突っかかる。それを「キヒヒ……さっさと説明しないお前が悪いだけだろ♪」と伊吹は返す。

その伊吹の言葉が火種となり、「いい度胸だ!邪魔できねえように縛ったらぁ!」「はぁっ!?」掴み合いへと発展した。……といっても、勝手に零司が伊吹を縛ろうとしてるだけだが。

そんな光景を視界の端に捉えながら、ハヤテはさっき言われた自分の闇について考えていた。

(闇……それって、月乃君の事ですよね…)

伊吹が関わっている。それはわかるが、それ以上のことがわからず、ハヤテは頭を悩ます。

だが、すぐにある事に行き当たった。

(負の感情……あぁ!)

伊吹への負の感情が募っていたのかと思い、得心する。

ハヤテの心のモヤモヤが晴れる。だが、今度は伊吹に対しての疑問が湧き上がってきた。

もしかしたらまだ狙っているのではないかと。

伊吹の狙いはアテネを殺す事だとハヤテは記憶している。それを遂行するにあたって、一番の障害はやはりハヤテだろう。故に、お見舞いを装って自分を殺しに来たのではないか。そう疑り、伊吹の方を見ると、

「零司、お前何やってんの!?」

「うるせえ!さっさと縛られろ!」

「いや、普通に嫌だけど!?」

零司が伊吹を縛ろうとしていた。

「…………」

その光景に、思わずハヤテは口を開けてしまう。そしてそれと同時に理解もした。

あぁ、もうそれは無いな、と。

そう思った時、ハヤテの視線を感じたようで零司はパッと伊吹から離れた。

「ゴホン。さ、説明を続けようか」

「最初からやれ!」

何事も無かったかのように続けようとする零司に、伊吹はハイキックでツッコム。

その際にメキッ。などの音がした気がするが、空耳だったようで零司は何事も無かったように話を続ける。

「んで、話を戻すが。次の注意点は……『制約』にすっか。そこにサンプルもいるし」

「誰がサンプル!?」

「じゃあ、実験用マウス「そういう問題じゃねえよ!?」何て言えばいいんだよ…「普通に協力仰げよ!?」じゃ、頼んだ「色々複雑だなぁ!?」」

何だかんだ言っていたが、結局はやるようでハヤテの前に出る伊吹。

「という訳で、伊吹を例に説明して行こうと思う」

「はぁ…」

「何だよ、そのやる気のなさは」

いや…。と頭をかくハヤテ。

「『制約』って言われても……あんまり実感湧かないんですよ」

「まぁ、そうかもな。でも、知っとく事で後々便利だがな……多分」

「最後の言葉で一気に信憑性が無くなりました」

辛らつな言葉に、流石の零司も気まずそうに頬をかく。

「ははは…。ともかく、例を挙げながら説明するから、伊吹後よろしくー」

「結局人任せかよ……キヒヒッ」

どうでもいいけどな。と続け、伊吹は左手でポケットから一枚のカードを出した。

「キヒヒ……つーわけで、説明する前に俺の能力を明かしとこうと思う」

「月乃君の能力って…」

ハヤテはあの戦いを思い出す。

それで最初に思い浮かぶのは、カードから矢が出てくる光景だった。

そこから想像できる能力は…。

「あぁ、名前の事は伊吹でいい。んで、俺の能力はお察しの通り、『カードの絵の実体化』だ。キヒヒッ」

そう言って、伊吹は持っていたカードの絵の方をハヤテの方へと向ける。

そうして向けられたカードには、矢の絵と『Arrow』と描かれていた。

「へー…」

カードが珍しいのか、ハヤテは感心した声を出す。

「キヒヒ……んで、ここからが本題だが……この能力、どんな風に思う?」

「え?」

伊吹に言われ、ハヤテは少し考える。

カードの絵の実体化。その能力を単純に考えてみると、カードに描かれている絵をなんでも実体化出来るという事だろう。

「それは……かなり便利な能力だと思いますけど…」

故に、ハヤテはそう言う。だが、当の能力者である伊吹は苦笑いをするかのように、口を少し震わした。

「これがそうでもないんだよ…」困ったように両手を上げ「この能力には、多くの制約が存在する。キヒヒッ…」

「多くって……どれくらいなんですか?」

「そうだな……五個はあるか」

「五個…」

その数がまだビギナーであるハヤテには、多いのかはわからない。だが、やれることがかなり絞られるのは確かだろう。

「順序立てて説明していくとな…」

そこで言葉を切ると、再びポケットからカードを伊吹は出した。

「まずはこのカード、『Black pen』。つまりは黒ペンだが…」

言い終わると、間髪入れずにカードが淡く光り、黒ペンが虚空に出現した。

突如現れたペンを空中で伊吹は取り、後ろのボードへ小さな丸を描く。

「とまぁ、カードから出しても普通に書ける」

「便利ですねー…」

「いや、実際にはここからが本題だ」

そして再びポケットへと手を突っ込み、今度は『Ray gun』と書かれた書かれたカードを出す。

「『Ray gun』。つまりは光線銃だが、これは実体化できない」

「え…?」

「これが制約その一、『現実に無い物は実体化出来ない』だ」

「あ…」

光線銃なんて物は、それこそ映画やアニメでしか見れない代物だ。それを実体化できるのなら、伊吹は最強の存在になってしまうだろう。

「それで、次の制約だが…」

伊吹は再びボードへと向き直り、黒ペンで何かを書き始めた。

だがそれも数分も経たずに伊吹が書き終わり、その絵が時計だという事をハヤテは知る。

「何の変哲も無い時計の絵…。だが、これも実体化出来ない」

「それはそうでしょうね…」

その制約だけは言わなくてもわかったようで、ハヤテはげんなりした様子で呟く。

伊吹の制約その二『カード以外の物に書いた絵は実体化出来ない』

そもそも、伊吹の能力自体が『カードの実体化』であるため、この制約は簡単に想像できる。

「まぁ、そういう反応をすると思ってたさ。んで、次の制約は口頭で説明させてもらうが『見たことが無い物は実体化出来ない』」

「それは……何故ですか?」

「これはある制約に繋がってるんだ。この際だからついでに言うが、制約その四は『絵と文字が合ってなければ実体化出来ない』」

「なるほど…」

ハヤテも伊吹の言葉で納得したようで、しきりに頷く。

伊吹の制約その三、その四は実に繋がっているといえる。

まず、その三の『見たことが無い物は実体化出来ない』。これは当たり前の道理ともいえる。

知らない物すら実体化出来るのなら、大砲でも核兵器でも実体化できるのだ。

そして制約その四『絵と文字の合致』。これは少しハヤテには意外だった。

別に合致していなくても実体化出来るという先入観が勝手に働いていたのもあるが…。

「まぁ、これに関係する色々な制約はあるんだが……それに関してはいいだろう。ハヤテには関係ないことだ」

「そうなんですか…」

「という訳で、次の制約に移るぞ」

そこでまたポケットからカードを出し、絵柄の方をハヤテに向ける。

書いてあったのは『Sword』と書かれた文字と、刀の絵だった。

「これは零司に書いてもらった絵だが……これは俺には実体化出来ない」

「え?でも、伊吹君の能力って…」

傍らで零司が「何気にハヤテ順応早いな…」と呟いていたが、それを気にせず伊吹は首を横に振る。

「それでも無理なんだよ。これも制約の一つ『他人の絵は実体化出来ない』」

「つまり…」

「自分で書いた物しか実体化出来ないって事だよ」

そこまで聞くと、不便に思えてくる。そう思うハヤテだった。

「んで、説明最後の制約だが…」

伊吹はそんなハヤテが見えてないのか、ポケットからまた一枚のカードを出した。

「『Flame』…」

炎の絵が描かれたカード。何となく恐怖をハヤテは覚えた。

「これも実体化は出来ない。制約の『形の定まっていない物は実体化出来ない』って事によってな」

つまりは、炎、水、風などは実体化出来ないということである。

「……結構制約があるんですね」

全て聞き終えたハヤテは、おもわずそう呟く。

「といっても、俺が結構特殊なだけだと思うぞ?実際零司の制約なんて殆ど無いし」

伊吹に言われ、ハヤテは零司へと視線を向ける。

その視線を向けられた零司は「ま、そうだな」と興味なさそうに呟いた。

「そういえば、零司さんの能力って何ですか?」

「……え?俺の能力?」

「はい」

その質問を想像してなかったのか、「えー……めんでー…」などと呟いていた。

「まぁ、別に教えてもいいんだが…」

「別に教えたっていいじゃねぇか。キヒヒッ」

「てめ、他人事だと思いやがって」

「キヒヒ……実際他人事だけどな」

「くっそ…」

その後も教えようか教えまいか迷っていたが、「あー、わかったよ!」と叫んだ。教える気になったのだろう。

「俺の能力は―――」

だが、零司の言葉はそれ以上は続かなかった。

ガラッ!!と乱暴に病室のドアが開く。

『?』

その音に、病室の中の三人は一斉に音の方向へと顔を向ける。

そこには―――





「動くな!」

全身黒尽くめの銃を持った男達三人がいた。





『……へ?』

それを見て、思わずとぼけた声を出す三人だった。




――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――



さて、二十八話しゅーりょー!

零司「結構遅れたな…」

色々体育祭とか文化祭が重なったからね…。

それはともかく、今回は説明回でしたー。

伊吹「キヒヒ……めんどかったな…」

零司「お前殆ど何もやってなかったよな!?」

ハヤテ「あはは…」

まぁ、ひとまず伊吹の能力はカードの実体化です。

伊吹「結構制約あるけど、慣れればそうでもない。キヒヒッ」

実際結構強いしね。

零司「だな」

というか、ここで説明できないので、もし質問あったら感想ででも言ってください!

ハヤテ「適当!?」

というわけで、今回はここまでです!次回の更新はテストが近いので当分更新できないと思われます!

零司「修学旅行も近いしな」

そうだねー。さて、次回は……零司無双かな。

零司「俺!?」

では!

零司「色々聞きてえなぁ!?」
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Re: 誰がため、何のため 10/6更新 ( No.64 )
日時: 2012/10/06 20:25
名前: 匿名

どうも♪最近別サイトでも小説を書いてる匿名です♪
輝雪「『小説家になろう』でーす♪鬼狩りキャラも出るよ♪」
ルナ「そういうのは鬼狩り内でやりませんか!?とにかく感想です」
輝雪「伊吹・・・とりあえず君のあだ名は『イブくん』だー!」
二人「「なぜ!?」」
輝雪「二人のことはスルーしといて、とにかく天王州さんに六花さん。零司くんにイブくんの四人が集まってたのね」
伊吹はイブくんで決定なのな・・・。話の内容はハヤテに関わることっぽいな。
ルナ「天王州さんがハヤテさんを捨てるかもしれない程の事情とはいったい?」
輝雪「でもそんな時、話の中心のハヤテくんは」
寝てたね。
輝雪「・・・今なら既成事実を」
輝雪?
ルナ「ユキ姉?」
輝雪「は!冗談よ冗談!」
二人「「(((恐ろしい)))」」
輝雪「そして新キャラ登場ね!何か・・・独特な人ね」
ルナ「でも、こういう人ってかなり優秀だったりしますよね?院長ですし、大丈夫ですよ」
ナースコールの使い方があれだけどな。それに慣れてる皆さんも。いやー、慣れって恐ろしい。
ルナ「採血が終わり、途中で伊吹さんと零司さんの二人がお見舞いに」
輝雪「いや、お見舞いというより乱入でしょ、これは」
ホワイトボードはちゃんと返せよ。
二人「「そこお!?」」
うん。
輝雪「まあいいか。ここでは異能についての説明が・・・」
え?てか零司て異能使えるの!?
ルナ「あなたもですか!話の流れで気づきましょうよ!」
うるせえ!みんながみんな、KY(空気読める)じゃねえんだよ!」
輝雪「使い方が違うわよ、それ」
とりあえず、異能も万能、てわけじゃなさそうだ。
輝雪「というか、私たちの使う闇、影より強力じゃない?」
四式あるだろ(いつ出せるかな?)。
ルナ「私の三式は竜神さんのところの感想で出しましたけどね」
反省はしている。後悔はしていない。
輝雪「はいはい。で、零司くんが自分の異能を喋ろうとしたら」
はい怪しい!
ルナ「あわわ!ハヤテさんと伊吹さんは怪我をしてるのに!」
零司がいるから大丈夫。
輝雪「そうね♪」
ルナ「ど、どうしてですか?」
どうしてと言われたら、
輝雪「某メイド神には信用度で劣るけど、この理由よね。それは」
二人「「零司だからね!」」
ルナ「・・・・・・・」(←唖然)
輝雪「それでは、次回も楽しみにしてます♪」
それでは♪
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Re: 誰がため、何のため 10/6更新 ( No.65 )
日時: 2012/11/01 22:08
名前: コサッキー

<レス返し>

▼ 匿名さん

>どうも♪最近別サイトでも小説を書いてる匿名です♪

>輝雪「『小説家になろう』でーす♪鬼狩りキャラも出るよ♪」

>ルナ「そういうのは鬼狩り内でやりませんか!?とにかく感想です」

ハヤテ「感想ありがとうございます♪」

成る程、書いてるのか…。見てみますー♪

零司「というか、若干クロスするわけ?」

伊吹「キヒヒ……いいのか、それ?」

ハヤテ「さぁ…」

>輝雪「伊吹・・・とりあえず君のあだ名は『イブくん』だー!」

伊吹「勝手に決めてろ。キヒヒッ」

本当、無頓着だね…。

伊吹「興味ない」

>輝雪「二人のことはスルーしといて、とにかく天王州さんに六花さん。零司くんにイブくんの四人が集まってたのね」

>伊吹はイブくんで決定なのな・・・。話の内容はハヤテに関わることっぽいな。

零司「まぁ、簡単に言ってハヤテの能力の事だな」

伊吹「キヒヒ……加害者がいる場で話すことでもねえと思うがな…」

零司「まぁまぁ」

>ルナ「天王州さんがハヤテさんを捨てるかもしれない程の事情とはいったい?」

ぶっちゃけ、殺す危険性を孕む奴をそばに置いてけますか?という事情ですかね。

零司「普通は置かないと思うが……天皇洲見たらなぁ…」

六花「アテネ様はハヤテ君のことを特別に見てますからね…」

アテネ「にゃ、にゃにを言ってるにょですか!?」

零司「……成る程」

>輝雪「でもそんな時、話の中心のハヤテくんは」

>寝てたね。

幹也「まぁ、術後だったからな。かったりぃ」

ハヤテ「それは寝てることに対してのかったりぃですよね?手術に対してのかったりぃじゃないですよね!?」

伊吹「必死だな……キヒヒッ」←(そりゃ必死になるさ…)

>輝雪「・・・今なら既成事実を」

>輝雪?

>ルナ「ユキ姉?」

……はい?

零司「大胆だな…」

六花「いっその事やって見てもらいます?」

アテネ「六花!?何を言ってますの!?」

六花「冗談ですよ♪まぁ、やるならアテネ様にやってもらおうかとこの頃は思ってますが…」

アテネ「何をですの!?///」

六花「わかってるんでしょう♪」←(只今、アテネに対して友人モード)

>輝雪「は!冗談よ冗談!」

>二人「「(((恐ろしい)))」」

ハヤテ「……背中に悪寒が…」

伊吹「……気にするな」←(ポンと肩に手を置く)

>輝雪「そして新キャラ登場ね!何か・・・独特な人ね」

>ルナ「でも、こういう人ってかなり優秀だったりしますよね?院長ですし、大丈夫ですよ」

というわけで、医者キャラの治水幹也先生。

幹也「かったりぃ…」

見ての通り口癖はかったりぃ。ただし、腕は相当。だって院長だしね!!

幹也「たりめぇだクソガキ。こちとら目標があって医者になってんだ。生半可な覚悟と腕でやってられっか」

零司「……やべえ、混乱する」

……ひとまず、プロフィールを作るよ。

零司「……そうしとけ」

>ナースコールの使い方があれだけどな。それに慣れてる皆さんも。いやー、慣れって恐ろしい。

ナース達『もう慣れました』

幹也「そーかそーか。ならいいな」

ナース達『言いわけありませんよ、先生!?』

幹也「知るか。それなら誰か俺についてろ」

ナース達『えー…』

幹也「……だからかったりぃんだよ…」

人望あるんだか無いんだか…。

>ルナ「採血が終わり、途中で伊吹さんと零司さんの二人がお見舞いに」

>輝雪「いや、お見舞いというより乱入でしょ、これは」

零司「いや、落ち込んでるかと思って…」

伊吹「普通に行けよ…。キヒヒッ」

零司「普通…?」

ハヤテ「何故そこで不思議そうな顔を!?」

>ホワイトボードはちゃんと返せよ。

>二人「「そこお!?」」

>うん。

伊吹・ハヤテ『そこ!?』

零司「ちゃんと返すって」

伊吹「信用ならねぇなぁ!?」

>輝雪「まあいいか。ここでは異能についての説明が・・・」

説明できた気がしねー…。

零司「おい!?」

まぁ、それぞれで適当に解釈してください!!大幅に間違ってなければそれでいいです!

ハヤテ「アバウトすぎますけど!?」

>え?てか零司て異能使えるの!?

>ルナ「あなたもですか!話の流れで気づきましょうよ!」

零司「使えるからあそこにいるんだがな」

ハヤテ「確かにそれもそうですね…」

伊吹「キヒヒ……まぁ、ハヤテはつっこまなかっただけだけどな」

>うるせえ!みんながみんな、KY(空気読める)じゃねえんだよ!」

>輝雪「使い方が違うわよ、それ」

確かに…?

零司「色々当てはめられるけどな、あれ」

>とりあえず、異能も万能、てわけじゃなさそうだ。

万能な物なんてあってたまるかぁ!!!

零司「力説!?」

全ての物にメリットとデメリットが存在してると私は思う!!

伊吹「いや、そんな事言われても!?」

>輝雪「というか、私たちの使う闇、影より強力じゃない?」

零司・伊吹『知るか』

ハヤテ「声を揃えて否定!?」

実際、感情で色々左右されるからね……この能力。

零司「強くなれば弱くもなるんだよなぁ…」

>四式あるだろ(いつ出せるかな?)。

>ルナ「私の三式は竜神さんのところの感想で出しましたけどね」

>反省はしている。後悔はしていない。

零司「普通ネタバレ厳禁じゃね?」

……ノーコメント。

>輝雪「はいはい。で、零司くんが自分の異能を喋ろうとしたら」

>はい怪しい!

三人『本当に怪しすぎるわ(ますよ)!!』

……テロリストと言うか、何というか…。

>ルナ「あわわ!ハヤテさんと伊吹さんは怪我をしてるのに!」

銃で武装したごときじゃ、伊吹は倒せませんけどねー。

伊吹「キヒヒ……舐めんな、左腕折れてるくらいでも、銃は簡単に避けれるわ」

ハヤテ「……避けれる物じゃないと思うんですよね、銃弾」

>零司がいるから大丈夫。

>輝雪「そうね♪」

>ルナ「ど、どうしてですか?」

零司「何この信頼感」

ハヤテ「実際信頼できますけど?」

零司「えー……めんどー…」

>どうしてと言われたら、

>輝雪「某メイド神には信用度で劣るけど、この理由よね。それは」

>二人「「零司だからね!」」

零司「その言い方やめて!?めッちゃ怖いんだけど!?」

まさかの零司大慌て!?

伊吹「キヒヒ……よっぽど怖いんだろ」

>ルナ「・・・・・・・」(←唖然)

>輝雪「それでは、次回も楽しみにしてます♪」

>それでは♪

今回は零司無双!!

零司「あー、めんで…」

しゃーないよ。零司しか五体満足に動ける奴いないし。

零司「ハヤテ無理矢理に動けよー…」

ハヤテ「無理ですからね!?」

六花「なにはともかく匿名さん感想ありがとうございましたー♪」




さて。

零司「……何故そこで切る?」

いや、今回はバトルだからね。……いや、蹂躙か。

ハヤテ「蹂躙!?」

伊吹「キヒヒ……実際蹂躙されるしかないけどな、能力者と戦う一般人は」

ハヤテ「えぇ!?」

……まぁ、実力が軽くカンストする能力もあるからね。

ともかく、どうぞ!!



――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――



ハヤテ達の所に怪しい男達が雪崩れ込んできた同時刻、病院の最上階の一角の院長室にて。

「かったりぃ…」

ハヤテの担当医、そしてこの病院の院長である、幹也は机に突っ伏していた。

「あー…。カルテ書くのかったりぃ…。つか、院長って役職自体かったりぃ…」

突っ伏したままぼやき、右手に持っているペンを机に放り投げる。

カン、コロコロ…。ドタドタドタッ!

「……あ?」

ペンの転がる以外の音が聞こえ、幹也は不快を隠さずまま顔を上げる。

「足音ねぇ…」

音をさらに詳しく聞くため、幹也は目を閉じ、耳を極限まで澄ます。

(んー…。ドタドタドタ。って音と……ジャカッ。って音も聞こえるな…)

「はぁ…」

音を大体聞くと溜息を一つ吐き、目をゆっくりと開く。

「かったりぃ事になったなぁ、オイ…!」

言葉の端々に怒気を含ませながら、バン!と机を叩き立ち上がる。

直後、バァン!と破壊するような勢いで扉が開いた。

そこから雪崩れ込む、一人の銃を持った黒尽くめの男。

男は銃を幹也に向け「動くな!!」と叫ぶ。

「あ゛?」

それに対し、幹也はドスの効いた声で応ずる。

「お前がこの病院の院長だな?」

「だったらどうした」

「ならば、死にたくなければ動くな!」

「はぁ…」

男の言葉に、幹也は右手で顔を覆い、大きく息を吐くと、





「舐めんな、クソガキ」

殺意の篭った声で、静かにそう言った。





「ひっ…!」

殺気を感じ取り、黒尽くめの男は仰け反る。

「あのよぉ……死ぬのが怖くて、医者なんてやってられっかよ…?」

「う、動くなって言ってんだろ!!」

ユラリ、と動いた幹也に男は銃を再度突きつけるが、幹也は動じる様子も見せない。

平然としたまま、男の持っている銃を視線だけで見て、コキリ。と首を鳴らす。

そして、いきなり机を男に向けて蹴飛ばした。

ガンガラガン!と激しい音を立てながら迫る机に男は反応出来ず、そのまま机ごと床に転がる。

「ぐは…!」

吹き飛ばされた拍子にうつ伏せとなり、起き上がろうとした時、背中に体重がかかった。

「さて、質問させてもらおうか?」

背中から聞こえる声で、院長だと男は理解する。

「な、何も言う事なんて…」

「勘違いすんなよ?」

その言葉と共に、チクリとした感触が男の首から脳へと伝わる。

「これは質問なんて優しいもんじゃねぇ。尋問だ」さらに幹也は注射器を首へと押し付け「だから、話さないと痛い目見せて吐かせるだけだぜ?」

「ひっ…!」

その言葉を本気と捉えたのか、先程まで威勢のあった男の語調が怯えた物へと変わる。

「さて、もう一度言おうか?」

男は恐る恐る、瞳だけを動かし背中に乗ってる幹也を見る。

「ひぃ…っ!」

そして、その行動を男は後悔した。

「質問させてもらおうか?」

こちらを見下ろす、その顔が狂気に彩られていたのだから―――。





       第二十九話「ただ一方的な病院制圧」





そして所変わって、ハヤテの病室。こちらも幹也と同じような状況になっていた。ただ、人数が三人に増えているが。

突如、病室のドアが開きそこから三人の銃を持った黒服が入ってくる。これほど、普通からかけ離れた光景もなく、突如として訪れたら呆然とする事間違いなしだろう。

だが、それにはある一つの前提が必要となる。

それは、『普通にしか慣れていないのなら』である。

つまり―――普通からかけ離れている、詳しく言うなら能力者にはその理屈が通用しないわけで。

そして、この場には能力者が三人。さらに、戦場と言う名のつくものを幾戦も潜り抜けた男が一人、いる。

その男、零司は二人よりも早く意識を確かにし、行動を開始した。

「ったらぁ!」

叫び、零司は左手一本でホワイトボードを男達に向かって投げつける。

ゴッ!と一瞬だけ音を立て、ボードは一人の男に真正面から当たる。

「ぐぇっ」

情けない声を残し、ボードごと男は病室から吹き出る。

『―――っ!!』

その起きた事に、二人の男は目を見開く。だが、すぐに平静を取り戻し、銃を零司のいる方向へと向ける。

だが、向けたときにはもう零司の姿は無かった。

「遅いっての」

背後から声が聞こえ、一人が後ろを振り向く。

「悪いね」

言葉を聞いた直後、ゴシャッ。と折れる音が体の内部に響く。

「ごがっ!?」

一瞬遅れ、痛みが脳を刺激しそのまま意識が刈り取られ、その場に崩れ落ちる。

「てめえ!」

二人を倒された事により、怒りの口調で最後の男は零司へと銃口を向ける。

「死ねっ!」

そして、躊躇など微塵もする事無くトリガーを引き絞る。

ドガガガガガッ!!けたたましい音が連続して響き、放たれた銃弾が零司へと向かう。

普通ならよけられる事など無く、体中を穴だらけにして即死するだろう。

そう、普通なら。今、銃弾が放たれた先にいるのは普通を遥かに逸脱してしまった人間。つまり異常者と言っても、何一つ差支えがない存在。

ギギギギギギン!!連続して金属同士を擦り合わせる音が病室内に響く。

続き、ドドドドドッ!と音と共に病室の壁に穴が次々と空く。

「なっ…」

その音が意味するところを理解し、男はありえないというような声を出す。

それもその筈。男の視線の先、つまりは零司は、無傷で立っていたのだから。

コキリと音を鳴らしながら首を傾げ「んで?終わり?」とつまらなそうに言う。

その声にはっ、と男は我に返り「ま、まだだっ!」と再び銃口を零司に向ける。

だが、向けられた零司は一つ欠伸をすると「あー、俺から振っといて何だが…」男の背後を指差し「もう終わりなんだわ、あんた」

「は−――」

何を馬鹿な、とは続かなかった。それを遮られたという方が正しいが。

何が起こったのかと言うと、

「キヒッ!」

気配も無く伊吹が近づき、男の頭に思い切り踵落としを食らわせたのだ。

「ぐ……っ」

威力こそ軽かったので、倒れはしなかった。が、脳を思い切り揺さぶられてしまった。

男の視界は歪み、平衡感覚すらまともに働かない。

「……悪いね、寝ててくれ」

零司の声が聞こえると同時、側頭部に衝撃が走り、男の意識は暗くなった。

「おっしまいっと」

上げていた足を下ろし、零司は気だるげに呟く。

「…………」

それをポカーンと口を開け、ベッドの上でハヤテは一連の出来事を見ていた。

その感想は(人間業ですか、あれ…!?)であった。

まだ、ホワイトボードを投げるくらいや背後に回るくらいならまだ許容範囲内である。だが、放たれた銃弾を全て弾くというのは幾らなんでも許容範囲を遥かに超えている。

しかも、病室内は決して広いわけではない。つまり、殆どゼロ距離で。秒数にしてコンマ数秒の距離で全てを弾く。これを人間業ではないと言わずして何と言うか。

(これが……能力者って事ですか…)

「まぁ、違うけどな」

ハヤテが思うと同時に、間髪入れずに零司が答える。

その事に驚いてるハヤテの方を向かず、零司はなんて事もないように言葉を続けた。

「別に能力者だからって、こんな戦い方が出来るわけじゃない」

「単に零司自体が膨大な戦闘の経験を生かしただけだしな。キヒヒッ」

「だからまぁ……これが普通なんかじゃないって事をわかってくれればいいか」

「いや、そんな事をいわれても…」

今、目の前で起こったことがハヤテの中ではほぼ普通になってしまってる。零司の戦闘を身近で見る機会が多いという事で、主に零司のせいに出来るくらい。

それを今更変えろと言われても無理なのだ。

「ま、ぼちぼち変えてけばいいさ」

それを見越してなのか、零司はそう言うと病室の扉に手をかけた。

「んじゃ、俺は周りの様子ざっと見てくっから。伊吹、少しの時間頼むわ」

「キヒヒ……りょーかい」

「そんじゃ、行ってくらー」

そう言い残し、零司は病室の外へと消えていった。

そして後にはハヤテと伊吹の二人が残され、二人の間を静寂が包む。

「さて、と…」

呟き、伊吹はその場に座る。

「あの……何をする気なんですか?」

「んー……ロープ作り」

ハヤテの質問に答えつつ、伊吹は数枚のカードを取り出し、淡い光と共に全てのカードを実体化させる。

「……色鉛筆?」

「こっちの方が書きやすいんだよな。キヒヒッ」

さらに一枚のカードを伊吹は取り出す。

「今度は白紙ですか?」

「キヒヒ……そりゃそうさ。白紙からしか生み出せないんだからな」

そこで茶色の色鉛筆をカードに当て「スタート」手首から先がぶれるスピードで手を動かし始めた。

(早っ…!)

思わずそう思うハヤテ。だが、すぐに伊吹も能力者であった事を思い出し、半ば無理矢理に(あれは普通、あれは普通…!)自分を納得させる。

「一枚…」

呟きと同時に、一枚のカードが空中へと投げられる。そのカードはひらひらと宙を舞い、ハヤテの膝元へと落ちる。

何となしにカードを拾い、絵柄をハヤテは見て見る。

(う、上手い…!?)

そして、同時に驚愕もした。それもその筈、伊吹が書いたロープの絵は大きささえ合っていれば本物かと見間違うほどの絵だったのだから。

「ところでハヤテ」

「はいっ!?」

突如かけられた声に、まるでやましい事がばれたかのように痛みも忘れてハヤテは背筋をピンと伸ばす。その一秒後には涙目になってすぐに背中を丸めたが。

「いい加減に理解したか?キヒヒッ」

「え…?」

そのハヤテの疑問の声に、一度伊吹は手を止め「だから、こっちの世界の事」と静かに言った。

「あ…」

いきなり意味不明な事が起こったり、零司達の圧倒的な強さを目の前で見せられたので頭からすっかり忘れていたが、ハヤテも能力者であった事を思い出す。

「まだ……少し理解してない所も多々……ありますね…」

だから、曖昧にそう返すしかハヤテには出来なかった。

「ふーん…」その返事を興味深そうに伊吹は聞き「本来、異常な事態とかにはゆっくり慣れていけばいいもんなんだけどな……これに関しちゃ、何も待ってくれないからな」

「そう……なんですか…?」

「キヒヒ……そうそう。ま、経験者が言うなら間違いないさ」

「はぁ…」

説得力はあるものの、何となく理解できないハヤテだった。





     *    *   *





場面は変わり、病室を出た零司へと。

「さってさて」

コツコツ、とわざと音を立てながら零司は無機質な感じがする廊下を一人歩く。

「まずは現状確認からする……としても、情報が少なすぎるな」

しゃーねぇ…。と気だるげに呟き、目を閉じて意識を集中させる。

(…………。……何故か、この階にはあの二人以外には残り二人。しかも、一人は動いていないっぽいな)

さらに零司は意識を集中させていく。

(…………一階に大量に集められてる感じかな、この感じだと。二階と三階には見張りっぽい奴らがそれぞれ五人程度。四階には……一人の周りに十人程度の奴らが倒れてるな)というか、と零司は呆れたように呟き「これ……六花さんだな、絶対に」と断言する。

感覚として、先程までアテネや六花と話してた場所の近くであった。そこから零司は六花と判断したのだ。

(恐るべき六花さん…)

胸中で戦慄しつつ、零司は意識の集中をやめる。

「大体把握したし……まぁ、普通に警察に電話だよな」

至極当たり前な事を呟くと、携帯を取り出し1、1、0。と押す。そして通話ボタンを押そうとして、直前でピタリと指を止めた。

「……プラスするんだっけか」

そして何やら他の人が聞いたら思わず首を傾げることを言い、すでに入力されている110の次に0、と入力して今度こそ通話ボタンを押した。

「さって、出てくれるかね…」

携帯を耳に当てるとすぐにコール音が零司の耳に届く。数度のコール音の後、ガチャと受話器が取られる音が聞こえた。

「はいはい。こちら警察0課です。何か凶悪事件でも巻き込まれましたか?」

そしてすぐに聞こえる、ここ数年ですっかり顔なじみにもなった人の声。

「相変わらずっすね、その電話に出たときの言葉…」

「あれ…?その声は零司君?何々?また銀行強盗にでも巻き込まれたのかい?」

電話の相手。名を錠立楽と言う刑事が失礼な事をあっけらかんと言った。

「失礼ですねえ!?」

否定は出来ませんけどね!と心の中でも一応つっこんでおく零司だった。

コホンと一度咳払いし、零司は再び電話を耳に当てる。

「兎も角、さっさと来てくださいよ…」

「まぁ、それがこっちの仕事だから良いんだけどさ……でもなー」

「…?何ですか、言ってくださいよさっさと」

零司が急かすも、錠立はあー。うー。などと唸って、その先を話そうとしない。

「あの、錠立さん?こっちにも限度ってもんがあるんですけど?」

それに痺れを若干だけ切らし、先を急かす。それが功を奏したのか、「はいはい」と若干呆れたように錠立の方も了承したのだった。

「じゃぁ、単刀直入に言うけど……零司君が片付けといてねー♪」

「言われると思ってたよこんちくしょう!」

予想してたけどなんで一字一句同じなんだよ…!と心の中で恨み言を言いつつ、壁を無性に殴りたくなる零司。だが、歯を食いしばってそれをどうにか耐える。

「いやだってまぁ……現場に零司君いるなら僕達いらないじゃん」

「そういう問題は一切含まれてないと思うんですがっ!?」

そこでまさかの追い討ち。こちらも零司の予想に含まれており、多少の違いはあれど大体の意味は同じだった。

「まーまー」

「怒らせてるのは誰だと!?」

宥めようとしてるのだろうけど、今の零司には逆効果のようであった。その証拠に持ってる携帯がギリギリと悲鳴をあげていたり。

「……しょうがないなぁ。さっさと行くように努力しとくけど、大体は『お片づけ』しといてくれると嬉しいかな♪」

「……錠立さん、色々わかって言ってますよね?」

「僕のは予想に過ぎないんだけどね」

それでも凄い事には一切変わりないですって…。そう思う零司だった。

「それじゃ、準備整えたら「立てこもりが起こったというのは本当かぁー!!」「ちょ、何であんたがここにいるんですか!?仕事は!?」「そんなもん後でも出来るわぁ!」「いや、あんた今日政府のお偉方と会食だったはずですけど!?」「知るかっ!」……ごめん、当分行けないや」

「ですよねー」

電話越しにでも聞こえてくる大声の狂騒に、零司は悟る。あぁ、こりゃ俺だけでやるしかないと。

「それじゃぁ…」

「頑張って下さい…」

ありがと…。と言い残して、電話は切れた。

(……何やってんだか、あの人も)

呆れながら、零司は役目を終えた携帯を仕舞おうと―――シュガッ!―――したところで、鋭利な物が手スレスレを通っていった。

「……あんた誰?」

それを見た零司は、鋭利な物が飛んできた方向、背後に向かって声を投げかける。言葉の端々に殺気を若干込めながら。

「そりゃこっちの話だっての。あー、かったりぃ…」

殺気に気づいているのかいないのか、それすらもわからないが、零司にはただ背後から気だるげな声が聞こえるのみ。

その言葉を受け、零司は手にコインを握る。

(……誰だかはわからん。だから…!)そのまま勢い良く振り向き(先手必勝!)動く視界に何かが入ったと同時に、コインを勢い良く見えたものに向かって弾く。

当たるとは零司も思ってはいなかった。が、相手が一瞬くらい躊躇して、一歩くらいのアドバンテージは取れると思っていた。

が、

「ふっ!」

ジュリン!と肌が一瞬だけ焼ける摩擦音が振り向く途中の零司に届く。

(マジで!?)

その今までに起きなかった事態に、零司の振り向く速度が一瞬だけ遅くなる。

「はっと!」

そうして完全に振り向いたところで、短い叫びが聞こえると共に零司の目が突き出されるものが捉えた。同時にその狙いも頭が予想した。

(―――っ!)

理解すると同時に、零司は反射的に動いていた。

ダダン!と短く二回足を叩きつける音が廊下に響き、そのまま静寂が廊下中を包む。

「……普通に驚きだな」

「……こっちもだけどな」

至近距離で二人はお互いの事を、皮肉を若干含ませつつ褒める。

その姿は鏡に映ったかのごとく同じでそれぞれの喉に、零司は右手を、幹也はメスをそれぞれ突きつけていた。

両方とも後少しでも動けば喉を貫くだろう。その寸前でそれぞれ手を止め、動きを止めたのは流石と言うほかないだろう。

「……名前、所属先」

幹也が短く問う。

「三千院家執事、大神零司」それに零司も短く返し「あんたは?」問い返す。

「院長、治水幹也」

幹也が自分の名前を言うと、どちらとも無く喉から手を離し、これまた鏡像のように同じタイミングで一歩下がる。

「……三千院家執事……ってことは、綾崎のお見舞いてことか?」

「ま、そういうことっすね」

「ふーん…」

そこで興味を無くしたのか、幹也はメスを手の上で一回転させて白衣の内ポケットへと流れる動作で入れた。

(……この人、本当に医者か?)

その姿を見た零司は軽い疑問を抱く。

さっきは躊躇無く零司を殺す気であったし、今だってメスの扱いが慣れていた。というよりも、慣れすぎていた。

(どーせ、さっき投げたのもメスだろうしな…)

メスにしては明らかに軌道が正確すぎたが、気にしない事にした。今はそれよりも先にする事がある。

そう思い、踵を返そうと重心を傾け、

「おい、三千院家執事」

たところで、幹也に声をかけられた。話しかけられたのに無視するのも何なので、零司は移動しかけけた重心を戻す。

「何すか?こっちもやりたい事があるんですけど…」

「安心しろクソガキ。お前の実力さえあればさっさと終わる仕事だ」

あれ、クソガキ扱い!?と驚いた零司を無視し、幹也はその先を続ける。

「この病院にいるテロリスト共を追っ払って欲しいだけだ」

「…!」

その言葉を聞いた途端、零司の表情が引き締まる。結局は、自分でやろうと思っていたことだからだ。

「一つ訊きます」

零司の雰囲気が明らかに変わった事に気づきながら、「言ってみろ」幹也は適当に返す。

「一階……それもロビーの所、壊してもいいですか?」

零司らしくない遠慮した言い方に、幹也は一瞬だけキョトンとして、「くくっ…」笑いをかみ殺すように笑った。

「別に気にしなくていいぞ」

「それじゃ」

「ただし」

暗そうな表情から一転した零司の言葉を遮り、幹也は続ける。

「全部の階の奴らを叩き潰す事が条件だ」

「叩き潰すって…」

んなおおげさな、とでも言いたげな表情を零司はする。実際、若干誇張された感がある。

だが、幹也の表情は真剣そのものだった。

それを見て、零司も表情を戻す。

「ここは病院だ。怪我や病気が軽い奴もいれば重い奴だっている。そんな奴らは治そうとここに来てるんだよ。命に深く関わろうが関わらなかろうが命を延ばそうと、生きながらえようとここに来てるんだよ。そんな場所を命を軽く見てるような奴らに土足で踏みにじらせて言い訳ねえだろ…!」

そう言う幹也の顔は怒りで染まっていた。

言葉にも力が篭っており、過去に何かがあった事が零司にも簡単に想起できた。

だからだろうか、零司にもその熱が伝わってきたのは。

「……了解しました」

瞳の中に静かな怒りを含ませ、零司は了承する。

「この病院にいる奴らを全員、叩き潰します…!」

ギュッ…!と力強く拳を握り、零司は確かに幹也に言った。

「……じゃ、頼んだわ」

「はーいっと」

今度こそ、背中を見せ階下へ降りようと足を一歩踏み出した。

「あ、そうだ」

と思ったら、再びその場で止まり首だけで幹也へと振り向く。

「車椅子って……この階にあります?」





       *    *    *





「何で…!」

そして、零司と幹也が廊下で話した数十分後。

「こうなってるんですかねえ!?」

ハヤテは叫んでいた。病院の廊下中に響くような声量で。

だが、その声は誰にも聞こえる事無く、虚空へと消えていく。隣にいる零司にもだ。

「ん!?何か言ったかハヤテ!!」

「だから!何でこんな事になってるんですか!!って聞いてるんですよ!!」

「あー!?聞こえねえっての!!」

「でーすーかーらー!」

隣に座っている零司がハヤテの声が聞こえたのか、ハヤテに向かって叫んでいる。が、またもや聞こえないらしく何度も何度も押し問答が続く。

ここで、ハヤテと零司が置かれている状況を説明しよう。

まず、ハヤテは車椅子に座っている。これはつい数十分前に病室に持って来て、無理矢理にハヤテを乗せたのだ。そしてそのまま、有無を言わさずにハヤテを今いる三階にまで連れてきたのだ。

そしてその三階。そこでハヤテは命の危険に陥っていた。

といっても、怪我が開いて失血で死にそうなわけがない。というか、そんな手術を幹也がしない筈が無いのである。

なら何故ハヤテは命の危険にあっているのか?理由は簡単。単に―――





―――銃撃戦のど真ん中に巻き込まれているだけである。しかも、乗った事のない車椅子に乗って。





(死にますってばーーー!!)

叫んでも聞こえるわけではないのだが、何故か心のうちで叫ぶハヤテ。その内容はやはりと言うか、恨み言に近い物があった。

チュチュン!チュガッ!ドドドドッ!!

途絶える事無く続く銃撃の音。それは壁一枚を隔てての音。

このままだといつか壁が打ち抜かれてしまう。なので、普通はどこかに移動するなりしなければいけないのだが。

「…………一丁、二丁、二個」

零司は壁に張り付いてしゃがみつつ何事かを呟いていた。

しかも、銃弾の飛び交う場所を見てるわけでは無く、扉から刀を出して傾け、そこに反射する光景を見ていた。

(……相変わらずどこから出してるんでしょうか…)

刀に反射する光景を見ている事は零司だから、という事で納得しているハヤテだったが、やはりいつもどこからか出す刀については疑問が残るのだった。

「……よし」

ハヤテがその事について考えていると、零司は調べ終えたのか刀を鞘に仕舞った。

「……どうしたんですか?」

「ん?いや、調べ終えたからさ…」立ち上がりながらこれまたどこからか出したコインを弾き「反撃をしようと思う」

「反撃…!?」

この中を!?とハヤテは驚愕する。それもそうだろう。零司の実力が普通を遥かにかけ離れているとしても、銃弾飛び交う場所に飛び出して無事で済むはずが無い。そうハヤテは思っていた。

だが、その固定概念は零司の本当の実力を知らないから言える事である。

「ま、大丈夫だろ。マシンガン二丁に手榴弾二つ、ショットガン一丁程度なら何とかなるさ」

「いや、ならないですけど!?」

「よし、行ってくるぜ!」

「あ、ちょ、零司さん!?」

話を聞いて!?とでも言いたげなハヤテを無視し、零司は扉の影から飛び出す。

一拍置き、ドガガガンドン!!と様々な音が入り混じった爆音がハヤテの耳を叩く。

思わず耳を塞いで聞こえないようにするハヤテ。ついでにこれから起きるだろうと予想する事に強く目を瞑る。

だが、幾ら待っても耳を叩くような爆音は聞こえてこなかった。

「…?」

その事をおかしく思ったハヤテは、車椅子をぎこちなく動かしながら扉の影から出て見る。

「……えー…」

そして影から出た瞬間に驚きを超えて呆れた声が出た。

まぁ、それも当たり前なのだろう。

絶対に無理だと思っていた状況をやってのけた男が、倒れた男達の中心にハヤテに背を向け立っていたのだから。しかも無傷で。

「な?何とかなっただろ♪」

そして振り向いてそう言った零司に、ハヤテは若干殺意が湧いたとか。

さらにそのままのノリで二階にも二人は行ったのだが……ハヤテが車椅子の操作に難航してる間に、零司が全ての暴徒を鎮圧していたのであった。因みに、二階の暴徒の装備は、ショットガン二丁に閃光手榴弾一つにマシンガン三丁であった。勿論、零司は傷一つ無かった。それにもハヤテは多少殺気が湧いたらしい。





       *    *    *





「いぇーいゾロゾロいるぜー…」

「テンション下がってるのに無理矢理テンション高めの台詞言わないでいいですから…」

二階を鎮圧した数分後、ハヤテと零司はロビーに繋がる通路の角にいた。そこからロビーを覗くと、中央に縛られた人質と、その周りを囲むように武装した男達がいた。数は二十人弱と言ったところだろうか。

「にしても、先に人質どうにかしなきゃいけねえんだよなぁ……………無視して鎮圧していいか?」

「いい要素なんて微塵もありませんけど?」

「ですよねー」

ハヤテとの軽い漫才をすると、零司はハヤテの乗っている車椅子のハンドルに両肘を置いて頭を悩ませ始める。

「どーっすかなぁ…」

実は人質を無視して無理矢理鎮圧できる方法は零司にはごまんとある。だが、その方法を実施すると間違いなく怪我人が出てしまう。故に、他の方法を模索しているのだが…。

(どー考えても一つしか思いつかねえ…)

「あの、零司さん」

「んー?」

自分の考えに落胆していると、ハヤテが声をかけてきたので、零司は適当に返す。

「聞いてなかったんですが……何で、この人達はこの病院を占拠したんですか?」

「あー…」

そういえば言って無かったけか。と言って零司はコインを弾く。

(どこから!?)と驚いてるハヤテはさておいといて、零司は「まぁ、簡単な理由さ」と答える。

「というと?」

「まー、あれだ。知人が病院に入院しました。そしたらそいつが取る行動は?」

「……普通に考えて、お見舞い。ですね…」

「だろ?んで、今日お前を見舞った奴らは?」

「えっと…」

そこまで言われてハヤテは今日来てくれた人を思い起こす。

まず、零司と伊吹。その前に……ナギやヒナギク。さらに生徒会三人組…。

「あぁ…」

「理解したか」

「それはそうですよ…」

ハヤテを最初の方に見舞ってくれた、ナギ、ヒナギク、泉、美希、理沙。これらの人物に共通する点。それがこのテロリスト共の占拠に繋がっているのだと、流石のハヤテも理解した。

「まぁ、どっからその情報を入手したのかは知らんが……世界に名だたる三千院家の令嬢。超有名電気メーカーの令嬢。でかい神社の娘。元総理大臣の孫。……どう考えたってやる価値はあるだろ、この面子」

まぁ、ヒナギクはおまけみたいな感じじゃね?と零司は小さく付け足す。(それを言ったら怒られるでしょうねー…)などと、この場にヒナギクがいたら間違いなく殴られているだろう事をハヤテも思っていた。

「目的自体は恐らく、身代金の要求だろうなー」

「というか、それ以外の要求が考えられないんですが…」

「だよなー。ま、つってもそれが成功する確率は低いんだけどな」

「……それって、零司さんがいるからですか?」

というか、それしか考えられませんよ…。などとハヤテは思っていたが、零司は「いんや」と否定した。

「俺がいなくたって別に解決するんだよなー、この事件」

「え?そうなんですか?」

「そりゃそうだろ。日本の警察ってかなり優秀だからな。実力は兎も角、結束がかなり強いからな。そこで足りない部分をカバーできるんだ」

はー。などと感心するハヤテを尻目に、(まぁ、0課もあるしな)と零司は普通の人には知っていない情報を心の中で呟く。

「さて、いい加減に助けねえとチビ嬢が何か言い出しそうだ」

「何かって…」

「大体、犯人達に何か言ってややこしい事になりそうなんだよな…」

「……否定……出来ませんね」

だろ?と言って、零司はハンドルから手を離してハヤテの前に立つ。

「さてさって」そして首だけで後ろを向き「ハヤテ、お前に見せてやるよ」

「見せる?」

「あぁ。俺の能力と、能力の使い方って奴をな♪」

笑うと、零司は背を向けてロビーへと歩いていった。

そして―――

「いぃぃぃぃぃぃぃやっはぁあああああああああああ!!」

一番近くにいた男に一瞬で肉薄し、殴り飛ばした。

「ごべっ!?」

殴られた男は、奇声を上げながら吹き飛び、ガラスへと直撃した。当然の事ながら、ガラスはガッシャーン!と大きい音を立てて砕け散る。

『!?』

そしてその音の方向に、全ての目線が集まる。その視線を受け、零司はまたもやどこからか出した刀を抜き放つ。

そして切っ先を男達へと向け「さぁ、一方的な蹂躙を始めるとしましょうかぁ!」とガラスが揺れる声量で叫んだ。

「…っ!って、てめえ!まだ残ってやがったか!」

「ええ、ええ!残ってあげましたよ!」

「ふざけてんのか…!一人で何が出来る!」

「一人いれば何でも出来るんだね、これが!人間の可能性ってのは無限大なんだぜ!?それすらわからないんですかね、バカは!」

「っ!おい、撃て!見せしめに殺せ!」

零司の明らかな挑発に、体が普通より一回りでかい男が一喝する。それを聞いた周りの男達は一斉に零司に銃口を向ける。

「はっは!いいねえ!ちっぽけな殺気が集まるといいねえ!塵も積もれば山となるってかぁ!」

「撃て!」

零司の言葉を無視し、リーダーらしき男が命令する。瞬間、周りの男達が一斉に引き金を引いた。

ダダダダダダダダダダダダダ!と連続した銃声がロビー中に響き渡る。

その場の誰もが、零司の主のナギまでもが目を瞑る。そして、誰もがこの後来るであろうグロテスクな光景を想像していた。

だが―――ギギッギギギギギッギギギン!連続した金属音がまたロビー中に響く。

「なっ…」

リーダー格が驚きの声を発する。

それにつられて、一人、また一人と瞑った目を見開いていく。そして同時に驚愕した。

「どーしたどーした!こんなもんで終わりかい?」

一斉に銃弾を撃たれたはずの零司が、傷一つ無く平然と立っていたのだから。

「あ?何も無いの?じゃ、こっちは人質解放させてもらおうかなっと」

そう言うと、零司の右手が一瞬だけぶれる。

刹那、パラッ…。という音が静かに、人質達の間から聞こえてくる。

「え…?」

疑問の声。それが次々と口から出て、やがて人質全体が理解する。

「助、かった…?」

誰かが呟いたこの場には似つかわしくない言葉。だけどそれは一斉に人質の間に伝播し、浮き立たせる。

それを見た零司はすぅ…。と息を大きく吸い「てめえら!とっとと二階行ってろ!」と今度はガラスにひびが入る程の声量で叫んだ。

『!!』

その音に人質達は一瞬、腰を浮かすが、すぐに言葉の意味を理解し、我先に行かんと、ハヤテの隠れている方向へと押し合いへし合い駆け出した。

「うわわわわっ!?」

その突然の事に車椅子からハヤテは転げ落ちそうになった。が、廊下の手すりを握って事なき事を得た。

そして次々起こる予想外の出来事に、テロリスト達はポカンとした顔でそれらを見ていた。

「おい、零司!」

「駄目よナギ!早く行かなきゃ!」

だが、狙っていたナギというテロリストにとっての餌の声で、全員がハッ、と気づいた。そしてすぐさまリーダー格の男が銃を構えた。

(マズイ…っ!)

それに気づいた零司はすぐさま駆け寄ろうとする。が、動揺してしまった事が仇となって、最初の挙動が遅れた。

(間に合わねっ…!)

普通に今から駆け寄ろうとするなら間に合わない。零司はそう判断した。

普通の方法なら。なら、残った方法はたった一つ。普通の方法ではない方法。それしか残っていない。

「―――」

全身に力を一瞬だけ入れる。それと同時に自分の能力をイメージする。

刹那、「がぎゃがががががっ!?」男の悲鳴が響いた。それも、普通には出ないであろう舌が痺れたような声で。

そしてそのまま男はその場に倒れる。しかも、よく見ると所々から煙が上がっていた。恐らく焦げているのであろう。

『……………』

そしてまた、ポカーンとした表情に、今度はその場の全員がなる。勿論、ナギやヒナギク、ハヤテもである。

「さーってさてさてさてさて?」

そんな中に一人、平然とした零司の声だけが明瞭に響く。

自然と、その場の全員の視線が零司へと再び向く。

「それ以上チビ嬢を狙うってんなら…」表情を笑いから無表情へと変え「腕一本くらい無くすぞ」

ゾゾゾッ!テロリスト全員の背筋に寒気が走る。

カチリ、と誰かの歯が鳴る。それは伝播し、カチカチカチカチカチカチカチ…。と全員が歯を鳴らし、共鳴を起こす。

それを満足したのか零司は一つ頷くと、ヒナギクに向かって指をハヤテのいる方向へと示した。

「…!」

それに気づいたヒナギクは、未だ呆けてるナギを抱えてハヤテの後方へと走っていった。

「おーい、ハヤテー」

「…………」

「ハーヤーテー!」

「……っはい!?」

「いや、お前まで呆けてどうするわけ!?」

「いや、零司さんの殺気に当てられてたんですが…」

ハヤテの言葉に、あれ?と零司は首を傾げる。そして「おっかしーなぁ……殺気なんて殆ど出してないはずなんだが…?」と呟いてた。

その言葉に(あれで…!?)と戦慄するハヤテ。それもそのはず、零司が放った殺気は零司にとっては軽いものだったのだろうが、ハヤテにとってはかなりの物だったのだ。その証拠に、未だテロリスト達は固まっている。

「まぁいいや」

「何がいいんですか!?」

「いや、話進まないからそこは一旦置いといて…。能力の応用ってのを実演してみようと思う」

「え?今からですか?」

「うん、だってもう起きるし」

「……へ?」

ほら。と零司が後ろを指差す。その方向を零司越しに見てみると、確かに男達がゆっくりと我を取り戻していた。

「つーわけで、見てろよ?」

そう言うと、再び零司はテロリストに向き直る。

「さて、あんたらさー、リーダー格いなくなったんだからさっさと捕まってくんね?めんどくさいんだけど」

「ふざけるな…!俺らにはもう後が無いんだよ…!」

『そうだ!』

「知らねっての」

テロリスト達の必死の言葉すら、零司は一蹴する。

「お前らに何があってどうなったのかなんて一切合財興味無いし、何をしようがどーでもいい」そこで一旦切って、刀を鞘に仕舞い「だけどな?お前らは一つだけ駄目な事があった」

右袖へと手を突っ込みながら零司は続ける。

「チビ嬢を狙った事。それだけがお前らの間違いだ」

そして勢いよく、手を袖から引き抜いた。

ジャラジャラと音を立てながら、手に握られていたのは。

「……鎖?」

多少細長い輪をかなりの数繋げた金属製の物―――鎖の端の部分が零司の手に握られていた。全部が出ていないという事は残りは零司の服の下の中にあるのだろう。そう誰もが推測する。

それはいいのだが……これで、戦うというのか?そんな疑問も同時にその場の全員に存在した。

元々、鎖というのは施錠やタイヤのチェーンなどに使われる物である。それを今出したという事は、少なくても武器として扱うという事だろう。

だが、鎖で戦うなんて事は普通はありえないし、無理だ。だから、男達は馬鹿にしたような感情で零司を睨む。

だけど、そんな中ハヤテだけはそんな感情とはかけ離れた感情で零司を見ていた。

危険視。とでもいうべきだろうか。何か危険な感じがする。そうハヤテは感じていた。

事実、先程零司が殺気を放っていた時から背筋に冷たいものが通って仕方が無い。

「はぁ……はぁ…」

息が勝手に荒くなっていく。体が震える。ここに居たくない。逃げ出したい。

それでも、

(逃げる何て……しない…っ!)

ハヤテは無理矢理、自分を奮い立たせてその場に残る。

これから起こることは自分にも降りかかる事。逃れられない災難ともいえるもの。

それならば、今体験する。そうすれば、多少は楽になる。

ハヤテはそう思い、その場に残った。そして、この場で起こること、一つ漏らさず目に焼き付けようと零司を睨むように見据える。

それに気づいたのか、零司はハヤテに背を向けたまま口角を少しだけ上げ、笑う。

(さって、いい加減にやるとしますかね)

口を舌で舐めて軽く湿らせ、零司はポケットからカメラのフィルムケースを取り出す。

そしてそのままフィルムケースを男達がバラバラに散っているちょうど真ん中のあたりへと、高く投げる。

(さぁ、始めようか…!)

フィルムケースに視線が集める中、パチッ…。バチッ…。と火花のような音が静かに響く。

その音に、全員がフィルムケースから目を離し、音源を探そうと首を巡らす。

「お、おい…!」

そして数秒すると、一人が驚いたように声を上げた。その男は見つけた音源に指を指しており、その指を辿って全員がその方向を見る。

『!?』

そして驚愕した。その先にあった光景に。

その間にも火花の音はバチバチッ!バチン!と音を激しく鳴らしていた。

キィン……。その場の全員が驚愕してる中、火花以外の、金属が弾かれる音が今度は一瞬だけ響く。

音を立てた金属―――コインがくる、くる、とゆっくりと回転しつつ、上昇していく。

そしてそれはやがて軌道の頂点へと達し、下降へと動く方向を変える。

そのまま落ちていったコインは零司の人差し指で親指を押さえたところへと落ちた。

刹那、―――――ッ!!! 音が消え、一瞬だけオレンジ色の線が顕現した。

否、正確には音が聞こえなかったのだ。いや、それすらも正確ではない。言うならば、その場の全員の脳が、その音を聞くことに関して嫌がったとでも言おうか。それほど、今出た音は大きかったのだろう。

兎も角、脳が音を許容するようになり、オレンジ色の線が空気に溶けると、細かい何かが空気中にばら撒かれた。

よく見ると黒い、その細かい何かはゴマのようにも見えた。

その黒く細かい何かは、満遍なくロビー中に広がり、勿論ハヤテのところにも来た。

それを確かめるべく、ハヤテはそれに手を伸ばし、そして気づいた。

(これって……砂鉄?)

指で挟んで擦るとジャリッ、とする砂のような感覚。普通の砂と色が違う、砂鉄だった。

これで何を?と一瞬思ったハヤテだったが、ふと頭に砂鉄の事がよぎった。

(砂鉄……鉄……砂鉄の取り方……まさかっ!?)

そしてある結論に至ったところで、弾かれたように顔を上げて零司を見つめる。

それと同時に、零司は次の行動を始めていた。

「よっと」

砂鉄が舞う中、零司は垂れ下げていた鎖を取り、勢いよく壁へと投げつける。

そのまま鎖は壁にぶつかり、地面へと落ちる。

何て事は起こらず、鎖は易々と壁を突き破っていった。

「さーぁ、ショータイム!」

零司が叫ぶ。それと同時に、右袖から壁に繋がっていた鎖がジャジャジャ!と音を立てて壁へとどんどん吸い込まれていった。

そして、もう一方の端が袖から出た瞬間、零司はそれを掴み、同時に鎖も動かなくなった。

「『蜘蛛の巣』」

更に零司が呟くと、壁から、床から、あらゆる所から鎖が轟音を立てて反対側の場所へと突き刺さっていく。

縦横無尽に存在する鎖は、まるで獲物を取ろうとする蜘蛛の巣のように見えないことも無い。

バジン!と三度、火花の散る音。

すると、空気中に散っていた砂鉄が鎖へと殺到していった。

そのまま空気中の砂鉄は全て鎖へとくっ付き、今度は細かく振動し始める。

ブブ……ブブン…。と細かく振動する砂鉄は、嫌な感じをさせるには十分であり、テロリスト達は鎖から離れるように後ずさる。

「おいおいおいおい!」それを見た零司は叫び「殲滅するってのに、逃がすわけねえだろが!」持っていた鎖を離し、地を蹴ってテロリスト達へと駆ける。

「ひぃっ!?」

それを見たテロリストの一人が悲鳴を上げる。恐らくその男には零司が命を刈り取る死神に見えるのであろう。

そんな悲鳴を聞きつつも、零司は一番近くにいるテロリストに向かって駆け続ける。その距離およそ五メートル。零司にとっては数秒未満で詰められる距離である。

故に―――

「ひぃぃぃぃぃ!!」

一番零司の近くにいた男はなすすべなどあるはずも無く、ただやられるだけであった。

「っはぁ!」

「がべん!?」

そうして零司に肉薄された男は、顔面を殴られて鎖の森の中を飛んでいった。

「次ぃ!」

『ひっ!』

零司が叫び、テロリスト達が全員怯える。これだけ見るとどっちが悪役なのかわからない。

「く、来るなぁ!」

そして恐怖の限界を超えたのか一人の男が零司へと銃を向け、引き金を絞る。

タァン!と軽い音と共に銃弾が零司に向かう。

発射された銃弾は零司の体のどこかに向かい、穴を空けるだろう。

ただ、鎖から伸びた砂鉄が邪魔さえしなければ。

ジャリッ。と音を立てながら、鎖から伸びた砂鉄は銃弾を通す事無く切り刻む。その斬り味は明らかに砂鉄などという砂とはかけ離れていた。

そしてその光景を見て、ハヤテは零司の能力がわかった。

まず最初に零司が能力を使った場面。それは、リーダー格の男が急に倒れた時だ。

その時は完全に知覚できなかったが、男は焦げていた。

次に、フィルムケースを投げた後の時。

あの時は明らかに火花が零司の髪から散っていた。

次に、オレンジ色の線が出たとき。

あの時も明らかに特別な方法を使っていたであろう。でなければあんな事は出来ない。

最後に、先程の砂鉄。

あんな伸び方をするなんて普通ではあり得ない。

これらの情報から推測した、零司の能力。それは―――

「どりゃぁ!」

ハヤテの推測を裏付けるように、零司は叫び、右手から何か光る物を一瞬で放出する。

バジッ!と音も聞こえた。

これで、ハヤテは確信した。零司の能力を。

零司の能力は、『電気』。これなら全ての事に説明がつく。

(伊吹君とは明らかに違う系統の能力…)

伊吹の能力は『カードの実体化』。だが零司の能力は『電気』。タイプと言うものがあったとすると、明らかに違うタイプに振り分けられるだろう。

だが、ハヤテはそんな零司の能力を、伊吹の時とは違ってすんなり受け入れていた。能力うんぬんの説明を受けたからでは決して無い。

どこか、シンパシーを感じているかのようで―――。

ゴンッ!

「はっ!」

何かが壁にめり込んだような音でハヤテは我に返った。

慌てて零司を見ると、ちょうど一人の男を壁にめり込ませたところだった。

(やり過ぎじゃありませんか…!?)

ハヤテは驚愕するが、そんなハヤテの心を知らずに零司は尚も暴れまわる。

「ははははははっ!」

壊れたように笑い、零司は肉薄し、どんどん男達を倒していく。

だが残りが五人程度になった時、異変は起きた。

「っ!?いってぇ…!」

男を殴り飛ばしたと同時、零司は目を押さえて、その場でたたらを踏んだ。

テロリスト達は何が起こったのかわからないようにしていた。それはハヤテも最初は同じだったが、すぐにある事に思い至った。

(リスク…)

能力を使う度に失っていくというリスク。それが今、零司を蝕んでいるのであろう。

そしてそのハヤテの推測は当たっていた。

(いってぇ…!幾ら何でも使いすぎたか…)

零司の能力は電気。それを先程から砂鉄を操るなどという磁力に変えて使っている。それも半永続的に。

一回一回、断続的に使うならリスクというのはあまり消費しない。だが、半永続的に使っていると、リスクの消費は途轍もない。

(ま、後五人程度なら何とかなるだろ…)

楽観的に決め付け、零司は目を押さえていた手を離し、眼光鋭くテロリスト達を睨みつける。

「くっ…!」

若干怯えたように後ずさるテロリスト達。だが、慣れたのか、残りの殆どの者はすぐに眼光を鋭くして零司を睨み返す。

「散れっ!」

「お?」

誰かが叫ぶと、残りの五人が鎖の森の中を散り始める。

零司を囲むように五人は散り、零司は円の中心にいるように囲まれた。

周りにいる奴らをぐるっと見渡し「へぇー…」と零司は興味深そうに笑う。

「随分と訓練されてるようで……っと」

バチッ、と額から電気を発し、砂鉄を操る。そして一人の男に狙いをつけ、砂鉄を飛ばす。

「っち!」

が、狙った男は機敏にそれを察知し、転がるように避ける。

(マズッ!)

避けられた事に焦り、零司はすぐさま砂鉄を操る事をやめる。

瞬間、「にょぷっ!?」奇声を上げ、零司の背後にいた男が弾け飛んだように背後に飛んだ。

『……は?』

一瞬、何が起こったのかわからない。そんな声がテロリスト+ハヤテから上がる。

零司が砂鉄を操るのをやめたと同時に、後ろの男が弾け飛んだ。

それが何で飛んだのか。それがハヤテとテロリスト達は理解できなかった。

だが、その疑問はすぐに氷解した。

「ったく、何をやろうとしてんのかねえ…?」

そう呟く零司の指。そこから煙が上がっていた。

つまり―――

「めんどくせえなぁ…。一々コイン弾かなければいけねえのってはよぉ…」

零司が、やめた瞬間と同時に、指でコインを弾いたのだ。それもかなりのスピードで弾き出しただろうから、その熱で煙が上がっているのだろう。

「ど、どうしてわかった…?」

「あぁ?」

「な、何でお前は後ろで銃を撃とうとしていた事がわかったんだ!!」

信じられない、信じたくない。そんな感情を孕んだ声で、一人が叫ぶ。それに同調するように、周りのテロリスト共も頷く。

それを聞き、零司はきょとんとした表情となる。だが、一瞬後に「あーあーあー!」と妙に納得したような声を大声で叫んだ。

「べっつに簡単な事だぜ?」両手を頭の後ろで組み「単に感知しただけだしな」

「感知……だと…?」

「そ、感知。これってば簡単な能力の応用でさー」頭を右手親指で指し「人間の体ってのは脳から神経を使って筋肉へと指令を与え、その指令を受けた筋肉が動いて動作になる」

極々当たり前であるかのように、つらつらと零司は述べる。

「そして俺の能力は電気。少し集中するだけで電気の流れってのがわかるようになった。そして人間とか、生物に流れる生体電気。俺は一瞬だけ流れるそれを察知して行動を起こしただけ。な?簡単だろ?」

『…………』

零司の説明に、全員が唖然となった。

零司の説明。それの内容は、一切簡単な内容など無かった。

テロリスト達は能力の事なんて微塵もわからなかったし、能力の事がわかっているハヤテですら、零司の言った事がわからなかった。

人体に流れる生体電気。それを察知する?一瞬だけ流れるというそれを?

普通ではない能力者でもそんな事は不可能といえる。

例え察知したとしても、こちらが動く前に相手の方が速く動けて、何もする事なんて出来ない。

だがそれを零司はやってのけた。明らかに普通では無い能力者。そのカテゴリを遥かに飛び越えていた。

「さーて?」唖然とするテロリスト達を首を回しつつ見渡し「もう、終わりにするぜ?」ニィィ…。と笑った。





「いやー。お疲れ様だねー、零司君」

「正直に喜べませんって…」

「あはは…」

それから数十分後、零司とハヤテは病院から出て錠立と話していた。

視界の端には一列に並んだテロリスト達が護送車の中に入っていくのが見える。たまに焦げた人がいるのは中々シュールである。

「まぁ、能力使ったフォローはこっちでしとくからさー……帰っていいよー?」

「うぃーす」

「えぇ!?事情聴取とかしないんですか!?」

「うん、やる気でないし。後報告書書くの物凄くやる気でないんだ」

「いやいやいや!?」

警察のやる気でないという発言に大慌てでハヤテは突っ込みを入れる。が、錠立はそれが当たり前だからといわんばかりに取り合ってくれないし、零司に関しては諦めの表情が見えた。

それを見て「もう、いいです…」と項垂れたハヤテを見て錠立は一つ頷き、

「それじゃーねー」

と手を振って去っていった。

「何なんですか…」

「まぁ、警察にも色々種類はいるだろ。失礼な言い方だけど」

「確かにそうですよねー…」

人にも色々ある。そう無理矢理に納得するハヤテだった。……でもやはり、不安は拭えなかったが。

「さて、ハヤテ」

「はい?」

「もう、わかったろ?」

「……………参考にはなりそうも無かったことばかりですけどね」

「まぁ、そういうなよ」

無理ですって…。とハヤテは溜息を吐く。実際、ビギナーであるハヤテには出来そうもないことばかりだったが。

「ま、惹きあうには時間が多少あるしさ、ゆっくりとレクチャーしてやるさ」

「お願いします…」

「まっ、楽しめや♪」

「はぁ…」

これから起こるであろう災難続きの生活に、溜息しか出ないハヤテだった。




――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――



はい、おしまいなり!

零司「挨拶変えたのか?」

うんにゃ、気分。

零司「気分屋が」

あったぼうよー。

まぁ、それは兎も角として……消えちゃったね、ひなゆめ。

ハヤテ「消えちゃいましたね…」

まぁ、双剣士さんが止まり木を作ってくれたからここにいるんだけどね…。

零司「だな。感謝しとけよ」

いや、ものっそい感謝してるからね!?

さて。この話もここまでにして……今回の話に入ろうか。

伊吹「キヒヒ……今回って、単に零司の戦闘能力を示しただけじゃねえの?」

うんまぁ、そうだよねー。そして零司。今回は無傷……だったはず。

ハヤテ「何故そこで自信無さげ!?」

実際自信ない。でも多分無傷の筈だよー。

伊吹「物凄いな…。キヒヒッ」

零司「そうか?」

ハヤテ「そうですって…」

んで、零司の能力は電気!

零司「俺は雷(いかずち)って呼んでるんだけどなー」

まぁ、電気でも雷でも好きに呼んでくださいな。

さてさて、ここで終わろうかなっ!下に伊吹と幹也先生と語句説明を置いときます。よかったらどうぞ!!

零司「んじゃ、これからもよろしくな♪」




▼ 月乃 伊吹 (つきの いぶき)
性別:男
年齢:16歳
誕生日:9月11日
身長:164cm
体重:51kg
能力:カードの実体化
リスク:運動能力
好きな事、物:占い、苦い物、日陰、ハヤテ、零司
嫌いな物、事:占い、甘い物、テンションのやたら高い奴、自分自身、日なた
〈詳細〉
〈容姿〉
闇のように黒い髪を鼻を過ぎるまで伸ばしており、顔は口以外まともに見えない。以前見えた左目は緑色をしている。服装は基本的に白皇の制服が多い。休日などは黒を基調とした服装を好む。
〈その他〉
ハヤテを襲っていた黒ローブの正体。だが、あの時は伊吹曰く自分の意思ではないらしい。
性格は、基本的に暗く、あまり人と関わらないようにする。というか、話しかけられても無視したりする事が多い。
一人称は「俺」。口癖として文頭に「キヒヒ…」文尾に「キヒヒッ」のどちらかをつけて話す。この事からかなり不気味がられてたりする。
放課後は白皇の校舎のかなり端の教室で占いをやっていたりする。因みに七不思議の一つに数えられてるとかないとか。
占いは普通とは一切違う方法であり、カードを選んでもらってそれをめくるだけという簡単な方法。
当たる確率は実に98%程であり、外れる事は殆ど無い。だが、それは他人に向けての占いであり、自分に向けての占いは30%以下に確率は下がる。
戦闘能力は零司未満ハヤテ以上といったところ。
力は二人に負けるが、スピードだけならハヤテの数倍以上。最高速度は自身にもわからないらしい。
能力はカードの実体化。
様々な制約があって使う事は難しいが、その分パターンに嵌ったり、罠として使うとかなり強かったりする。
過去に何かあったようであり、それは教会にかなり密接していたと考えられる。
尚、髪の下にある目を頑なに見せようとはしない。故に、その目を見た人物はいない。




▼ 治水 幹也 (ちすい みきや)
性別:男
年齢:35歳
誕生日:11月14日
身長:183cm
体重:74kg
好きな事、物:暇、昼寝、医療関係の勉強
嫌いな事、物:怪我、命を粗末にする奴、命を平気で踏みにじる奴
〈詳細〉
〈容姿〉
ぼさぼさの茶色の髪と気だるそうな目つきをしている。服装は基本的に白衣。しかし、皺だらけがデフォルト。
〈その他〉
天皇洲系列の病院の院長。
性格は極度のめんどくさがりで、口癖も「かったりぃ…」である。
しかし、流石は院長であり腕は確かな物。ハヤテの手術を執刀したのもこの人。
性格こそアレだが、病院の医者、ナース、入院者にはかなり信頼されていたりする。ただ、人間性に関しては病院関係者からは微妙だが。
医者になった今でも勉強を続けている。それは自分が医者になった理由と密接に関係しているらしいが、誰も聞いたことはない。
命を粗末にする奴や命を平気で踏みにじる奴らを絶対に許さない。事実、病院に入ってきたテロリスト達には微塵も容赦しなかった。
強さは零司と一回だけ引き分けに持ち込んだ事のある強さ。だが実際はわからなかったりする。
医療の大体は網羅しており、白衣の中には大体の簡易医療キットが揃っていたりする。



語句説明
〈闇の力〉
負の感情がある一定ラインを超えると発現する、原理不明の力。
発現するタイミングは選べないし、不意に発動してしまって人を殺してしまう事もあるという最悪な力。
能力を使う度にリスクが消費されていく。その消費量、リスクが何かはその人しかわからない。
感情を昂らせたりする事で能力が暴走する事がある。その時には一切何があったかその人にはわからないし、何をしてしまったのかすらわからない。
しかもこの能力に目覚めた者、目覚めそうな者は惹きあう性質があり、ハヤテや零司、伊吹はその為に出会った。
現在能力が確認されているのはハヤテ、零司、伊吹の三人である。

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Re: 誰がため、何のため 11/1更新 ( No.66 )
日時: 2012/11/07 16:18
名前: キーst

 にはは…ひなゆめが消えて忘れたころに………もういいや、面倒だし。(;一◇一)
というわけで、このくだりはしばらく封印しようと思います。 

 さて、記憶の限りでは奏と…桜姉妹かな?   では、感想です。

 奏「どうも、お久しぶりです♪電気かぁ。…てことは磁界とかも作れるんだよね。こっち
は『電気』だったり『雷』みたいな属性はないんだよねぇ。代わりに『光』があるけど。」

 サラ「サラです。冗談抜きでハヤテくんには今後立て続けに悲惨なことが起こりそうな予
感が……普段なら気のせいで済むかもですけど、…ハヤテ君だから本当になりそうです。」

 奏「テロリストは…まぁ自業自得なので……あれ?そういえば ナオがまだ来てない?」

 サラ「お姉ちゃん多分もうそろそろ…」

 ナオ「やほーーーーーーーーー♪遅れてごっめんね〜♪また面白そうなことに巻き込まれたハヤテくんを見てるのが面白くて……」

 奏「…反省する気が全くないわね。」

 ナオ「まぁまぁ、医者の幹也…みっきーでいいやそれと月乃君…こっちもつっきーでいい
や。すごいねぇ。零司君と六花さんも合わせてさすがハヤテくんの知り合い。…4人ともす
ごくキャラが強い。」

 サラ「日本の警察は無能で有能ですからねぇ。やる気なくていいんじゃないですか?…さ
て、ひなゆめは無くなっても双剣士さんが……あの方には感謝し無くては。」

 ナオ「てことで、更新頑張ってください。また来ますよ。…忘れられる前に。…リクあれ
ばどーぞ♪」
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Re: 誰がため、何のため 11/1更新 ( No.67 )
日時: 2012/11/11 19:22
名前: コサッキー

<レス返し>

▼ キーstさん

> にはは…ひなゆめが消えて忘れたころに………もういいや、面倒だし。(;一◇一)
というわけで、このくだりはしばらく封印しようと思います。 

お久しぶりですねー。

零司「だなー。って、封印するんかい」

のようで。まぁ、だからこっちも言ってないんだけどね。

ハヤテ「軽い対抗心ですか?」

全然違うけどね。

> さて、記憶の限りでは奏と…桜姉妹かな?   では、感想です。

……そうだっけ?

伊吹「キヒヒ……覚えとけよ」

テストとかで上書きされたんだ…。

零司「だから知らねえっての」

ハヤテ「ともかく感想ありがとうございますね♪」

> 奏「どうも、お久しぶりです♪電気かぁ。…てことは磁界とかも作れるんだよね。こっち
は『電気』だったり『雷』みたいな属性はないんだよねぇ。代わりに『光』があるけど。」

零司「まぁ、作れるんだが……いかんせん疲れるんだよね。アレ」

ハヤテ「そうなんですか?」

零司「そりゃぁな。純然たる能力じゃないからな。少し迂回する感じで作るから疲れる事疲れること」

ハヤテ「……大変ですね」

まぁ、零司の能力は応用利く事がメリットとデメリットの両方を指してるからね。

あ、後、こっちの能力にも『光』はありますね。

ハヤテ「正反対の能力!?」

零司「呼称に騙されるなって。つっても、どんな能力が発現するとかはランダムなんだがな」

伊吹「だけど、結構関係するところもあるんだけどな。キヒヒッ」

> サラ「サラです。冗談抜きでハヤテくんには今後立て続けに悲惨なことが起こりそうな予
感が……普段なら気のせいで済むかもですけど、…ハヤテ君だから本当になりそうです。」

起こるに決まってるじゃないですかー。

ハヤテ「断言された!?」

零司「元々惹きあうのにプラスして不幸……そら、起こるわ」

伊吹「キヒヒ……だな」

ハヤテ「フォローなし!?」

> 奏「テロリストは…まぁ自業自得なので……あれ?そういえば ナオがまだ来てない?」

テロリストは不幸といわざるを得ませんね。零司いなければ……いや、かえってそっちの方がまずかったか。

零司「俺以上の事が起きるのか!?」

まぁ……院長のせいで。

幹也「かったりぃけどやるからな…。かったりぃ…」

……命拾いしたねぇ…。

>サラ「お姉ちゃん多分もうそろそろ…」

>ナオ「やほーーーーーーーーー♪遅れてごっめんね〜♪また面白そうなことに巻き込まれたハヤテくんを見てるのが面白くて……」

>奏「…反省する気が全くないわね。」

零司「よーし!一回殴っとこうか、ナオさんよぉ!?」

ハヤテ「落ち着いてくださいよ零司さん!?って、ナオさんは何を言ってるんですか!?一切面白くはないんですけどねぇ!?」

伊吹「……二人とも必死だな。キヒヒッ」

> ナオ「まぁまぁ、医者の幹也…みっきーでいいやそれと月乃君…こっちもつっきーでいい
や。すごいねぇ。零司君と六花さんも合わせてさすがハヤテくんの知り合い。…4人ともす
ごくキャラが強い。」

キャラ強すぎたかなっ☆

零司「『☆』じゃねえよ!」

六花「キャラ濃いですかね…?」←(いや、濃いよ間違いなく…)

伊吹「キヒヒ……だろうな」

幹也「あー、かったりぃ…」

……濃すぎるな、この面子。

ハヤテ「ですね…」

>サラ「日本の警察は無能で有能ですからねぇ。やる気なくていいんじゃないですか?…さ
て、ひなゆめは無くなっても双剣士さんが……あの方には感謝し無くては。」

零司「いや、0課だけは有能すぎて怖い。他は……まぁ、若干だけ無能だな」

錠立「0課だからねー。有能じゃなきゃいけないのさ、僕達は。といっても、荒事専門だけどね♪」

ハヤテ「ひとまず0課って…?」

錠立「知ったら捕まっちゃうよー?」

ハヤテ「すいません何でもありません」

零司(実際秘匿されてる課だしなぁ…)

そして双剣士さんには多大な感謝を。

零司「急にかしこまった口調に…」

>ナオ「てことで、更新頑張ってください。また来ますよ。…忘れられる前に。…リクあれ
ばどーぞ♪」

ありがとうございますー♪リクエストはお任せします♪

六花「キーstさん感想ありがとうございました♪」





さーて、今回の話はどこだったか忘れたんで、若干時系列がおかしくなってるかもしれません。

ハヤテ「いやいやいや!?それくらい覚えときましょうよ!?」

無理だけど!?最後に書いてからテストとか修学旅行とか色々あって無理だったからね!?

零司「いや、それでも覚えとけよ」

伊吹「キヒヒ……だな」

……酷い、酷いよこの主人公勢。

三人『ちょっと待て(待ってください)』

何?

零司「……主人公って誰がかなぁ!?」

ハヤテと零司と伊吹。

伊吹「何で俺も入ってんの!?」

こっから先、伊吹主体の話が結構かどうかは知らんけどあるよ?

伊吹「えぇー…」

まぁ、そこんとこの談義は置いといて、どうぞ!!

三人『納得のいく説明をしろー!!』




――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――




病院がテロリスト達に占拠されて、それを零司が圧倒的に潰した数日後。

ハヤテは常人ではあり得ない回復力で病院を退院した。

これは、その数日後。三月も差し迫ったある日の事である。





晴天ともいえる空模様のある日。

こんな天気なら、普通は放課後には友達と外に繰り出したり、恋人がいる者は恋人との逢瀬を楽しんだりするだろう。

だが、三人の少年達はそんな事はしていなかった。

三人は、鬱蒼とした森の中にいる。それも普通では無い目的を持ってだ。

その目的は普通の人から見れば鼻で笑われるような物。だが、本人達にとっては至上とも言える物である。

その目的とは―――

「わぶっ!?」

バァン!何かが破裂したような音と共に、何かが転がる音と奇声が同時に上がる。

そして数秒した後にドン!と何かにぶつかる音が響く。

「おーい。ハヤテー」

「きゅう…」

一人の少年が声を木にぶつかった少年にかけるが、声をかけられた少年は顔の前で星をメリーゴーランドさせており、少年の声は聞こえていなかった。

「あっちゃー…」

それを確認した少年―――零司は、右手で額を覆い呆れた声音を出す。

「キヒヒッ」

その様子を少し離れた所で見ていた少年―――伊吹は零司とは対照的に楽しそうに笑った。

「あー、めんどくせ…」

零司は心底めんどくさそうに言うと、空を仰いだ。

そして視界に入るのは青々とした空。一点の曇りも無い、大空。

(……眩しすぎるな、こりゃ)

そこから入ってくる眩しさに目を細めると、再び目線を戻し、未だ倒れている少年―――ハヤテの元に歩み寄っていくのだった。



ハヤテ、零司、伊吹の三人の少年がこんなところにいるかといえば、それは三人に共通する事を考えればすぐにわかる事である。

三人に共通する事。遠まわしに言えば人命に関わる事。さらに遠まわしに言うと、漫画やライトノベルのような事象。時系列で少し遡って、病院で説明した事。そして簡潔に言えば―――『闇の力』、異能。

そして、ここで行われているは実践授業。プロフェッショナルである零司と伊吹を先生とし、ビギナーであるハヤテを生徒とした。

教えているのは初歩の初歩。知っていて当然のこと。

それは―――能力の制御。





第三十話「プレゼント選びって、失敗するリスクも考えると怖いよね」





「痛い…」

それから数分後、持ち前の頑丈さで起き上がったハヤテは、ぶつかった拍子に頭に出来たたんこぶを押さえていた。因みに、表情は今にも泣きそうだった。

「お前の能力考えれば、結構な痛さになるだろうな…」

ハヤテの行動を見ながら、呆れたような声音を発する零司。だが、表情は優しい顔つきであり、「ほれ」と水につけたタオルを渡していたりする。

「キヒヒ…。痛みはすぐに慣れるさ。ハヤテだし」

「どういう事ですかね、伊吹君!」

「さぁね。キヒヒッ」

わざとハヤテを怒らすような発言をしながら、伊吹は笑う。表情は髪に隠れて一切見えないが、唯一見える口元が笑っているため、笑っているのだろう。

「にしてもよー」

伊吹と口論しているハヤテの顔を無理矢理零司は自分の方向へと向ける。その際、グキッという骨の音と「ぐぇっ」と声が聞こえた気がしたが、零司は無視して続ける。

「これ始めてから何日経ったよ?」

零司の言葉に、えーっと…。とハヤテは空中に視線を巡らせ「三日……くらいですかね?」と首をかしげながら言った。

『長げえよ』

そして放たれた二つの拳。その拳はハヤテの顔面に、両の頬から吸い込まれていった。

「……ひふぁいふぇふ」

力は加減されていたが、正常に発音できるような空気が確保されてないために変な言葉遣いになるハヤテ。

スッ、と拳を頬から離し「ともかく、長すぎるっての」零司は悪びれる様子すら見せずにそう言う。

「何がですか…」こちらは頬をさすりながら、尚且つ反論の篭った目で睨みながら聞き返す。

「え、制御」

そして簡潔に返す零司。最早意味も何もあったもんじゃない。

「簡潔過ぎますね。そして色々と抜けてますけど…」

「だな。キヒヒッ」

「わーい、至極冷静に返されたー」

そして冷たい突っ込みに、零司は半ば自棄に反応する。

「まぁ、おふざけはここまでにしてと」だがすぐに立ち直り、手を一回叩き「いい加減に本題入るか」

「キヒヒ……最初から入れって話だけどな」

「ですよねー」

「だから辛辣…」

再び投げかけられた言葉に、今度こそ零司はがっくりと項垂れる。意外とメンタルが弱い零司だった。

「まあまあ。どーでもいいコントは置いといて」

「意外と早く復帰した!?」

そしてすぐに復活する零司。その事にハヤテは驚いた。……まぁ、メンタル面ですらおかしい零司を見れば当たり前だろうが。ましてや、まだ付き合いの短いハヤテなら尚更である。

「それでは議会を始めまーす」

軽い調子で零司は言うと、どこからか小さいホワイトボードを取り出した。

「議題は、『ハヤテの制御が上手くいかない』。その理由について専門家の月乃伊吹さんに説明をお願いしましょう」

「すいません零司さん。そのノリについていけそうに無いんですが」

議題という学級会にも似たノリだけでも明らかについていけないだろうに、そこにテレビでよくやる討論番組らしくされると最早蚊帳の外にされる事は間違いないだろう。

それを知った上で「うん、ついてこないでいいわ」と零司は言い「えぇっ!?」と議題の中心であるはずのハヤテは弾かれた。……何故なんだろうか。

「少し邪魔が入りましたが……専門家の伊吹さん、この状況をどう思いますか?」

「そうですねー…。まず、簡単なイメージすら想像を固められてない所から駄目ですね。キヒヒッ」

「最初から駄目出し!?そしてそのセットはどこから出したんですかねぇ!?」

つっこむハヤテの言うとおり、何故か森の中に、それこそテレビの番組のようなセットが用意されていた。これは、本当にいつ用意されたのかはハヤテにはわからない。

「なるほど。それならイメージすら固まれば制御できると?」

「いや、そういうわけではありませんね。あくまで今言ったのは基本中の基本です。そこから実際に具現化させるのが難しいともいえますね。そこは零司さんの方が詳しいと思われますが?キヒヒッ」

「まぁ確かにそうですね。私の能力とそこにいるハヤテの能力は似すぎていますからね。だからといって、どうにかなるわけでも無いですけどね」

「げふっ…」

退院してから今までやってきた事が基本中の基本だという事にショックを受けるハヤテ。下手したら今にも吐血しそうである。

「では、この馬鹿を「だれが馬鹿ですか!?」…。……ハヤテの制御を格段に進ませる方法などはあるんでしょうか?」

「そうですね……簡単で一番確実なのが、数をこなすというつまらない方法ですね。えぇ。キヒヒッ」

「それは幾らなんでもつまらなさすぎますね」

「つまらないって何ですか!?こっちからすればつまらない方がいいんですが!?派手な方法なんてお断りですけど!?」

『えー』

「なんでそこで残念そうに!?」

まさかこの二人、ドS!?などと勝手な想像で戦慄するハヤテを視界の端に入れつつ無視しながら、二人は話を続ける。

「なら、つまら……ではなく、確実でない方法は一体?」

「今つまらないって言いかけましたよね!?ねぇ!?」

「うるっせぇよ!少し黙ってろっての!!」

いい加減うるさくなってきたのか、零司は一度コインを弾いてハヤテに当てる。当てられたハヤテは「痛い…!」などと言って額を覆ったのを見て、二人は話を再開する。

「コホン。それで伊吹さん、その方法はあるとしたら?」

「そうですね……もう、いっそ死ねばいいんじゃないですかね。キヒヒッ」

「それを方法とは言えませんよね!?」

『当たり前じゃん』

「知ってて言われた!?二人は僕をどうしたいんですか?!」

『弄って遊ぶ』

「お断りだぁあああああああああああ!!!」

『だが断る』

「なんでだぁああああああああああああああああああああ!!」

『楽しいから』

「ふざけないで下さいよぉおおおおおおおおおおおおおおおお!!」

『え、やだ』

「またっ!?」

「というか、ハヤテうるさい」

「誰のせいだと?!」

「俺らのせいだろ?」

「自覚してた!?」

「自覚した上で弄ってるに決まってるじゃん」

「性質が悪すぎる!!」

「能力者ですから」

「それだけでは明らかに説明できないと思うんですがっ!!」

「じゃあ、性格ゆえに」

「じゃあ!?じゃあってなんですか!?」

「なんだろなー」

「なんだろうなー」

「二人ともいい加減にしろぉおおおおおおおおおお!!!」

度重なるボケの嵐に、とうとう突っ込みきれなくなったハヤテ。殴るように拳を突き出し、同時に能力を発動させた。未だ制御を出来ない能力を。

そんな物を発動させればどうなるか。結果は見えている。

轟っ!!と突風の音を発し、ハヤテたちは突如発生した竜巻に巻き込まれた。

当然のことながら身構えてない三人に対抗する術などありもしないわけで。

三人とも仲良く、風に乗って回転していた。それも物凄いスピードで。

「―――――――!!」

「――――――――!?」

「―――。――――――!」

断片的に中から音が聞こえてくるものの、やはり竜巻の回転音にかき消される。意思疎通すらまともに出来ない。

話をしているのか、それともただ叫んでいるのか。そんな些細な事すら判別が出来なかった。

そしてそのまま竜巻にもまれ続けること、数分。突然、竜巻が消滅した。

『……へ?』

間の抜けた三人の声。

突然、回っていた感覚から開放され、その代わりに虚空に浮いてる感覚が生まれたからこそ出た声。

そして、竜巻から開放される。つまりは、落ちる。

どこへかと聞かれれば、地面へと。どうやってかと聞かれれば自由落下と。

そしてそれを三人ともが理解した時、フワッとした感覚が腹の中に生まれた。

そしてそのまま―――落下し始める。

「うわぁあああああああ!!?」

まずは、落下の経験など皆無なハヤテの声が空中に響く。

落下し始めた体勢は、高台から後ろ向きに飛んだような体勢。

だが、自由落下を始めた高さはおおよそ十メートル未満の高さ。それだけの高さがあれば、人間は落下する体勢を変えてしまう。

それを具体的に言う前に、人間の一番重いところはどこか?という設問をしよう。

その答えは部分を区切ってしまえば、多少の違いはある。だが、全身の中から選ぶと答えは案外身近である。

頭。それが、この設問の答えである。

頭には何があるか?頭蓋骨があったり目があったり。そして、一番重い脳が詰まっている。

そして今度は人間の形状を見てみよう。

人間は気をつけの体勢で見ると、縦に細長い。

この形を、振り子に例えてみるとしようか。そしたらどうなるだろうか。

片方に頭と言う重り。もう片方には足という頭よりは軽い重り。では、この状態ならどっちに振り子は振られる?

答えは明白。重りが重いほうに傾くに決まっている。

つまり、落ちてる内に頭が下になってしまうのだ。

その現象はハヤテにも襲い掛かった。

ぐるりと視界が反転する。先程まで上にあった青空が、今度は下にあった。

「えぇええええええええ!!?」

再び、ハヤテの叫びが当たり一面に響いた。

そして一方、ハヤテと同じように空に投げ出された零司。

(あー、落ちてるわー)

ハヤテとは正反対のようで、落ち着いた様子であった。

それもその筈。零司にとってはこんな事は昔にかなりあった。

故に、こんな時の対処法など知っていて当然なのである。というよりも、知っていなければ死んでいた。

(ま、死にはしないだろ。多分)

そしてこちらも一緒に投げ出された伊吹。

(……どうしようかね)

伊吹自身はこんな状況になった事などは無いが、少なくともハヤテよりは落ち着いていた。

(いきなり体験外の事やられても困る…)

そう思いながらも明らかに慌てた様子など微塵も見せない伊吹。

零司程ではないにしても、それなりに過去が過激だった伊吹である。こんな状況にはなった事がないにしても、切り抜ける方法など幾らでも思いつく。

(……まぁ、適当でいいかな)

そして、三者三様に考えてる間にも、地面は間近に迫っていた。

そして地面との距離が一メートル未満になった―――。

まずは最初に伊吹が動いた。

カードを地面に向かって投げ、刺さらせる。間髪入れず、能力を伊吹は使う。

淡い光を発し、カードはその絵柄を実体化させる。

その描いてあった絵柄はマット。といっても、マット運動で使うような薄いマットではなく、高飛びなどで使うような厚いマットである。

それが完全に実体化するとほぼ同時に、伊吹はマットの上に落下した。マットは上から落ちてきた衝撃を吸収し、伊吹を難なく包み込んだ。

伊吹、着地成功。

続いて零司が地面に近づいた。

地面との距離が一メートルを切ったところで、頭を下にしたまま体を軽く丸める。

そして頭が地面についた瞬間、体を丸めたまま、前に体重をかける。

すると、そのまま零司は前転を繰り出し、転がる。そして数回転したところで、勢いは止まった。

零司、着地成功。

そして最後にハヤテは―――

「へぶっ!」

顔面から着地した。それも垂直に。

だが、頑丈だった事もあってか、普通に生きていたが。

「い、痛い…」

「いや、痛いで済むお前の頑丈さって一体なんだよ!?」

「キヒヒ……本当に、人間か?」

「人間ですからね!?」

そしてすぐにいつもの会話へと戻る。最早、人間とは思えない零司と伊吹だった。

「というかさ」ハヤテが立ち上がるのを手伝いながら「能力使えばよかったんじゃないか?」

「能力って…」顔についた土を拭いながら「どうやってですか…」

「それくらい考えろよ。キヒヒッ」

「考え付かないから訊いてるんですけどね…」

そのハヤテの言葉に、零司と伊吹は同時に溜息をついた。そして呆れたような目でハヤテを見る。といっても、伊吹の目は見えないのでどんな感情の篭った目で見てるのかわからないが。

「ハヤテ、人間って考える事が出来るんだぜ?」

「いや、知ってますけど!?何で諭すような感じで言うんですか!?」

「キヒヒ……実際諭してるけどな」

「酷い!?」

「いやいや酷くはねーよ。自分で考えられない子供に諭してるような感覚だから、こっちからしたら」

「僕子ども扱いですか!?」

「まぁ、子供じゃん?キヒヒッ」

「子供じゃないですからね!?というか、本当に教えてくださいよ!!」

「え、却下に決まってるじゃん」

「即答された!?」

「よし、じゃあこれは次に戦いに巻き込まれるまでの宿題にしとこう」

「戦い前提の宿題って何ですか!?それって宿題とは絶対に言いませんよね!?」

「キヒヒ……ごちゃごちゃ言ってないで考えとけ。………………死にたくなければ」

「物凄く最後だけ実感が湧きましたよ!!」

「まぁ、どうせ一ヶ月以内に惹きあって戦闘になるだろうしなー」だがそこでいや、と続け「……死合いか」

「途轍もなく物騒ですね!?」

「実際伊吹とそうなったじゃん」

零司の言葉に「うぐ」とハヤテは言葉に詰まる。その傍で伊吹は胸を押さえていたが。恐らく二人ともがあの事を思い出しているのだろう。……伊吹の方がダメージは大きそうでもあるが。

「ま、それはそれとしといて。お前らこれから今日何か用とかあるか?」

「……用事?」

怪訝そうに伺うハヤテに、零司は「そー」と気楽に答える。

「俺はないけどな。キヒヒッ」

「一応僕も無いですけど…」

(伊吹はともかく、ハヤテは執事……って、前もこんな事あったな)

零司が考えてる事と、実は今のハヤテは同じ状況である。

以前、いやかなり前から放課後の理事長室へのハヤテの入室は六花によって禁止されている。その答えは簡単で、ハヤテの不幸で仕事が全く進まないのである。その事にアテネは不満を漏らしていたが、ハヤテが宥めていたりする。

故に、ハヤテは放課後の予定などないわけである。

「んじゃ、どっか行かないか?今日暇貰って何もやる事ないんだよね、俺」

「珍しいですね…」

「まぁな…。マリアさんが半分強制的に休ませたもんでさ…」

「キヒヒ……どーでもいいけど、行くならさっさと行こうぜ」

「だな」

ガシッ。と零司はハヤテの襟首を掴む。

「……何で掴むんですかね?」

「んじゃ、行くぞー」

そしてハヤテの言葉を無視し、そのまま零司はハヤテを引きずっていく。

「だから何で引きずるんですかぁあああああああああああああ!!」

森全体に、悲痛な叫びが響いたのであった。





       *    *    *





「さてさて」

「うんうん」

そして三十分後、ハヤテ達一行は商店街に来ていた。勿論、ハヤテは途中で引きずられなくなっているので普通に立っている。

「……来たのはいいがどーするかな…」

「まさかのノープランですか!?」

「うんまぁ…」

結構気分屋の零司であった。

「ここに来たら普通は買い物とかするんじゃないか?キヒヒッ」

「あー、買い物」

「そういえば、ヒナギクさんの誕生日近いんですよね」

「……なんで覚えてるの、お前」

「え?普通じゃありません?」

『普通じゃないけどな』

「えぇ!?」

(いや、普通はそんなに覚えないと思うんだが…)

(だよなー。キヒヒッ)

二人の言葉に戸惑うハヤテを尻目に、零司と伊吹はアイコンタクトで会話する。真実を知ればハヤテも二人が普通じゃないと突っ込むことだろう。どちらにせよ、三人ともが普通では無いのだが。

「まぁ、ともかくだ。俺と伊吹はともかく、ハヤテはこの前世話になったからプレゼントの一つくらいしないとな」

「いや、元からそのつもりなんですけどね…」

「色々と問題があると」

「まぁ…」

ハヤテは言葉を濁したが、零司達にはすぐに理解できた。

「ヒナギクは、いやヒナギクの家は、アテネやナギの家ほどではないが、金持ちの部類に十分入るほどの規模である。

そして服などはかなり難しい。先程言った金持ち云々を含めると、そんじょそこらの服では駄目であろう。しかも、ハヤテには金と言う物が殆ど無い。まぁそれは、ハヤテの不幸が関係してるからでもあるが。

なら貴金属類はどうだろうか?そうハヤテは考える。が、すぐに頭を振ってその考えを打ち払う。何故ならさらに高いからである。

なら、ぬいぐるみ等はどうだろうか?と続けハヤテは考える。だがやはり、その考えをすぐに打ち払う。流石に子供過ぎる。と。

……って感じでオーケー?」

「ひとまず地の文風に言ってもらってご苦労様だと言っておきますが一々うるさいとも言って置きましょうかぁ!!」

「どっちもご苦労様だよ。キヒヒッ…」

流石に零司の地の文風の言い方に、大きなお世話とつっこむハヤテ。ただその突っ込みは一息であったが。そしてその二つに辟易する伊吹だった。

「まあともかく。どうするわけ?」

「そうですよね〜…」

「キヒヒ……『こんな時に女心がわかればなぁ…』とか思ってるだろ」

「だから何で読んでるんですか、心を!!」

「まぁ、占い師だし?キヒヒッ」

絶対に嘘だ。ハヤテはそう思うものの、特にそれを証明できる事実もないので強く突っ込む事も出来ず、若干の唸り声と共に黙ったのだった。

「女顔なのに女心はわからないんだな」

「……………」

「落ち着け、落ち着けハヤテ!!手を袋の中の刀にかけるな!!」

「離して下さい伊吹君!!この人だけは一度斬っておくべきだと思うんです!!」

「いや、往来でそんな事をやろうとするなよ!?」

「なら裏路地とかなら構わないんですよねっ!?」

「いいわけねえけどな、一つもよ!!」

ひとまず一連の会話を説明するなら、まず零司が明らかなハヤテの地雷をわざと踏み、それに怒ったハヤテが無言で刀を抜こうとしたのを伊吹が羽交い絞めにして止めているのだ。

その奇行ともいえる所業に、周りを歩く人達は不審の目を三人に向けているが、普通にその状況を楽しんでいる零司以外は全く気づいていなかったりする。

(いやー。結構試しの部分が多かったんだが……いい反応返してくれたなー♪)

零司は零司でこんな事を考えていたりする。やはり性分はSなのだろう。

「ま、冗談は置いといて」

「俺には冗談で済ませられる事じゃなかった気がするけどなぁ!?」

「結構僕も傷ついてますからね!?」

「あ、そ」

『簡素な返し!?』

「実際どうでもいいんだけどな」

ともかくだ。と零司は一度手をパンと叩き、

「ハヤテは結局どうするわけ?」

「そうですね…」

「因みに俺には頼るなよ?キヒヒッ」

「まぁ、男ですもんね」

「俺は……こういう経験がないとも言えないが訊くなよ」

「何で!?」

「え、だって教えるのめんどい」

「気分の問題だった!?というか、教えてくださいよ!?」

「こーとわーる。というか、同年代の女友達にでも聞けっての」

「あいてっ」

軽く頭をはたかれ、下を強制的に向かされるハヤテ。

「叩かなくてもいいじゃないです―――」そして顔を上げて文句を言おうと「―――か…?」したが、語尾が弱くなってしまった。

その理由は至極簡単。

顔を上げた先に、ちょうど同年代の知り合いの女の人がいたのだから。

『……………』

そして、二人して見つめあいながら硬直。

「うああ!に!西沢さん!!」  「ぬああ!ハ!ハヤテ君!!」

そして同時に大声を上げて驚くハヤテと、ハヤテの知り合いこと歩。

「ハ、ハヤテ君は何でこんなところにいるのかな!?」

「え?」

先に先手を取るように歩がハヤテに質問する。

「え、えっと…」

その返答に困り、ハヤテは傍にいる二人に助けを請おうと両側を目だけで見るが、

(何でいないんですか…!!)

二人の姿は消えており、風が空しく吹くだけだった。

というわけで、ハヤテが説明するしかなくなったわけで。

「え…!えっと、僕はその、ヒナギクさんの誕生日プレゼントを選んでたんですけど、何買っていいかわかんなくて、アドバイスをくれる同い年の普通の女の子でもいないかな〜って思っていたところで…!」

「へ?」

ハヤテの説明にきょとんとなる歩。

ハヤテの説明は、実際のところは最初に友達二人とが入るのだが。

そして、ハヤテの説明どおりに受け取るなら、ちょうどその人物が目の前にいるではないか。

「…………」

それに気づいたのか、ハヤテは目の前の歩を見つめる。

「えっと…」

「……………」

そして、二人の間に気まずい雰囲気が流れるのであった。





       *    *    *





その十数分後、何やかんやあったものの、ハヤテと歩はデートのようなものをしていた。

それを近くの路地裏から見ていているものがいた。

「……何で俺まで隠れる必要があるんだよ…」

「まぁまぁ」

先程ハヤテを見捨てた伊吹と零司である。実は二人は案外ハヤテの近くにいるのだが……勿論それにハヤテが気づくわけも無く、普通に歩と話している。

「というかよぉ…」

「はい?」

「いい加減に理由を説明しろよ」

「あー」

ジトッとした感じの視線を受け、零司は(そんなことあったなー)などと思い出す。

思えば、無理矢理に襟首掴んで路地裏へと一緒に連行したのだが……零司はそんな事はすっかり頭から抜け落ちていた。

なので、「んじゃ、説明するとしますかね」説明する事に。それが当たり前といえば当たり前なのだが。

「まず、お前を連れ込んだ理由なんだけど……実は特に意味ないんだよね、これが」

「おい!?」

驚愕の事実!伊吹はノリで連れ去られたのだった!!

「まぁ、俺と同じくらいのキャリアだから連れてきた……って言えば聞こえは良いんだがな。それも今思いついたんだし」

「……その言い方。何かあるって事だろ?キヒヒッ」

ま、な。と零司は少し言葉を濁し、談笑してるハヤテと歩を見つめる。

それにつられ、伊吹も顔の向きを変える。

「んで、俺が隠れた理由は主に二つ」伊吹の上から顔を出しながら「一つはリスクの見極め」

零司の言葉を聞き「リスク……ね」伊吹はどこか雰囲気を違わせる。

「少し……本当に少しだが、わかってきたんだよな。あいつのリスク」

リスク。この能力に目覚めてしまった物が失っていくもの。

「キヒヒ……というか、何でわかった?」

「だから、わかりかけてるが正しいんだっての。少し、違ったからな」

何が。とは伊吹は問わない。どうせすぐにわかる事だろう。そう思って。

だから、別の質問を伊吹はする。

「何で、わかっとく必要がある?」

別に、他者がその人のリスクを知っとく必要など無い。

―――ある事を除いて。であるが。

そして、零司はそのある事を口にした。

「わかっとくに越した事はないと思うんだがな」だってよ、と口の中で呟き「俺らとあいつが戦わない。なんて保障はどこにあるんだ?」

「…………」一度その言葉を脳内で反芻し「確か……に、な」

能力者は惹きあう。それはいい。

だが、この能力。『闇の力』は危険極まりない代物である。

発現条件からして危険。負の感情の暴走とも言い換えられるほどの条件。

そんな負の感情に包まれた者同士が会えばどうなる?きっと、些細な事でも喧嘩になるであろう。それもそこらの不良がするような喧嘩ではなく、殺し合いとでも言える、命を懸けた戦いへと発展する事は確実である。

そして、今はその目的に二人は向かっていないが、二人には目的がある。

それは、人の道から外れた外道の目的。

そんな目的をハヤテが知ったらどうなるか。恐らく、止めようとするだろう。

優しいから。底なしに優しいから。そんな目的間違っている。そんな事を言いながらきっと戦おうとするだろう。

だが、そんな優しさで止めようとするハヤテを、零司と伊吹は排除するだろう。

死をもって。殺して。この世から消して。動かなくして。

昔から持って来た目的を、優しい。そんな理由で止めようとするな。と言いながら。

だから、零司は知ろうとする。ハヤテのリスクを。

戦う事を視野に入れ、戦いを有利に進めるために。

「んで、もう一つの理由は……どーせ後でわかるだろうから今はいいや」

「そっちはそっちで何なんだよ…。キヒヒッ」

しょーもない事さ。そう言い捨て、零司はハヤテに向けている視線をさらに強くする。

その視線の先では、ちょうど歩が走り去っていくところだった。

「……なーんか、色々ありそうだな」

「キヒヒ……単にハヤテが悪いだけだと思うがな」

「……一概には否定できないところがハヤテの凄いところだと俺は思う」

「それはフォローにもなってないからな。キヒヒッ」

そんな事を話してる内に、ハヤテの周りにヒナギクと生徒会三人組が集まってきていた。

「あいつら何を話してるんだろうかねっと…」

「キヒヒ……聞こえるわけがないけどな」

「だよなー」

「読唇術とかは使えないのか、零司?キヒヒッ」

「生憎と使えねえな」

あいつなら使えるだろうけどな…。などと意味不明な呟きをしながらも、集中して聞き耳を零司は立てる。

伊吹もそれに続き聞き耳を立てる。

『………西……ん…………嫌い……な………す…』

(駄目だ、やっぱわかんねー)

だがやはり、少し離れているのに加え、商店街の喧騒にハヤテの声など聞こえない。

だがどうしても聞きたい零司は、(……しゃーねぇなぁ…)諦めのような心になり、目を閉じて先程とは違う集中をする。

暗くなった視界に、断続的な火花が散るのが零司にはわかる。

(応用とはいえ……これ、疲れるんだよなぁ…)

今、零司が感知しようとしてるのは音ではなく、電気。

それも、ハヤテの言葉という音を聞いた耳から脳へと走る電気をだ。

そもそも人間の耳というのは、音を受け取っているわけではない。

正確には空気の振動を鼓膜が受け取り、それを耳の中にある器官が脳に伝え、それを脳が言葉に直しているのだ。

そして零司は、ハヤテの言葉を聞いている、つまりはヒナギク達の耳周辺に流れる電気を感知しようとしているのだ。

無論、かなり難しい事でもある。

ハヤテの言葉を聞いているといっても周りを歩いている人だってそうである。

更に、ヒナギクだけを感知できたとしても、人間の体は電気が流れ続けているような物である。その中から耳周辺の電気だけを取得するなんて不可能に近い。

だが、零司はそれをやってのける。並ならぬ集中力。それとこれまでに何度と無くやってきた。その経験を生かして。

感知した電気を、自分の中で言語化。それですら頭が痛くなる作業だったが、零司はやってのけ、ハヤテの今言ってる言葉を理解した。

『だから僕は西沢さんの事……何とも思ってないと言うか…』

『―――え?』

「は…?」

ハヤテの言った言葉に、周りにいるヒナギク、零司が間の抜けた声を出す。それと同時に集中力も途切れ、何も聞こえなくなったが、それでよかった。

「は、ははは…」

右手で顔を覆い、笑いが口から勝手に出る。

(面白い。面白すぎる。面白すぎるだろ、綾崎ハヤテ…っ!)

零司の中でそんな感情が渦巻く。顔のニヤけが止まりそうにない。

「…?おい、零司。何かハヤテ達おかしくなってる……って、お前もかよ。キヒヒッ」

そんな中、伊吹が声をかけてきてくれたおかげで、零司は我に返った。

だが、顔のニヤけだけは治まりそうに無かったので、そのまま「やっべぇ…!楽しいわ、あいつ…!」

「キヒヒ…。何が?」

「あいつの発言……どんだけ普通と違うか、わかったんだよ…っ!」

熱が引かない。言葉にも力が入ってしまう。

「……教えてくれよ」

「あぁ、あぁ…!こんな面白いもん、一人だけ知ってるなんて我慢できるかよ…っ!」

そのまま零司は熱の入った様子で、伊吹にさっき知った展開を全て話した。

そして―――

「キヒ、キヒッ!キヒヒヒヒヒヒヒッ!!」

伊吹も笑った。不気味に。高々と。空に響くように。聞こえない者などいないように。

それほど、狂った能力者たちには面白すぎた。ハヤテの背負ったリスクは。

重くて軽くて。それでいて簡単で。一番わかりやすくて。

そんなハヤテのリスクを言う前に説明すべき物がある。

普通とは違う。それが能力者と言う者だ。だが、実はハヤテはその中でも異質である。

『異質中の異質』。それが能力者綾崎ハヤテ。

何故異質か。その理由は至極簡単。単純明快。

恨んで発言する。その発現の対象が違うのだ。

普通の能力者なら、恨む相手というのがいる。それは零司も伊吹もそうである。

だが、ハヤテにはいない。いや、無意識が意図的にそうしたのかもしれない。

あの時、発現したあの時、普通なら恨むのは伊吹なのであろう。だが、そこでハヤテの特徴の一つ、優しさが出た。

『あの時とは違う。だから、伊吹君が黒ローブなんかじゃない。これは間違いだ』などという勝手に心の中で思った。

なら何故、相手がいないのに能力は発現したのだろうか。

いや、相手はいた。正確には人間が。

ハヤテ『自身』という人間が。

だからハヤテはその時に自分を恨んだ。アテネを守れなかった。力が足りなかった。そんな自分を恨んで、許さないで、憎んで。

そうして能力は発現した。普通とは違う、歪みを生じて。

だからか。今、判明したハヤテのリスクが普通とは明らかに違うのは。

ハヤテのリスク。それは―――

「感情、気持ち、心情、喜怒哀楽、情念、感性………どれも当てはまって、当てはまらねえ…!そんなもんだよな、あいつのリスクってのはよぉ…!」

一番近いのは感情だろうか。今さっきの場面で言えば、無かったのは包み隠す感情。所謂オブラートに包むような事をしなかったのだろう。

そして、そのリスク。それは一番強くて弱い。

この『闇の力』などと呼ばれる力は、感情に直結している。

感情をリスクで、失う。そして感情に直結した能力を使う。その繰り返し。これほど使えなくなる物はあるのだろうか。

使えば使うほど弱くなっていく。これほどふざけた物もないだろう。

歪んでるが故に、得た物。これすら不幸。その一言で片付けられるかもしれない。

「は、ははは…っ!」

その事を想像するだけで笑いが止まったと思っても込み上げて来る。

弱すぎる。敵にすらなる事は無いだろう。障害物にすらならない。そこらへんに転がってる石程度の存在。能力者として最弱レベル。

「あー、笑った笑った…」

まだ笑ってる伊吹を尻目に、零司は笑い止む。

「だけどよぉ…」コキッ。と右手を鳴らし「ここで邪魔が入るのは死んで欲しいわ」

零司がそう呟いた直後、透明な弾丸が降り注いだ。

「………」

それを零司は手を振り、全て軌道を逸らす。

そして、いつ出したのかわからないコインを思い切り上に弾く。

弾かれたコインは勢いよく上へと跳ね上がり、「がっ…!?」という音を奏でた。

そして零司の上に影が差した。

それを零司は一歩下がるだけで、避ける。

グシャ。と音を立てながら、一人の男が地面に落ちる。

零司はその男を足で仰向けにし「ああー、てめえかー」などと興味の無い声音で呟く。

「ったくよー、折角いい気分でいたってのによぉ…」腹を思い切り踏み「何台無しにしてくれちゃってんの?」

「だ、黙れよ…!」

「は?黙るのはお前ですけど?」

更に零司は足を沈める。

「がっ…!?」

「てか、お前に前言ったよな?」ポケットからフィルムケースを取り出しつつ「次に目の前に現れたら腕無くすって」

「ひっ…!?」

零司の殺気の篭った言葉に、男は怯えを見せる。

だが、零司はそんな事お構いなしにフィルムケースの蓋を開け、手に火花を軽く散らせる。それに合わせて、フィルムケースの中にある砂鉄が踊る。

「それじゃー、腕一本ぶった切ろうか?」

「や、やめてっ!?」

「ド却下」

言葉と共に、砂鉄を二つに分け、一つを男の口の中に詰め込む。

そしてもう一つを高速で振動させ、形状を刀の形へと変える。

「んー!んんー!!」

「それじゃ、痛みでショック死するなよ?」

指一本を下へ動かし、砂鉄を落とす。

ザシュッ。と存外軽い音を立てて、男の片腕は男から離れた。

「――――――――!!??」

声にならない悲鳴を出し、男はそのまま白目をむいて気絶する。

「あーあ、興ざめ興ざめ」

能力を解除し、砂鉄を男の上に撒きながら、零司は両手を頭の後ろに組む。

「あー、血でも見ればテンション戻ると思ったんだがなー」

男から流れ出る大量の血など気にした様子も無く、零司はつまらなさそうに呟く。

「ま、今日はリスクが知れただけでもよしとするか。おい、帰ろうぜ伊吹」

「ちょ、ちょっと待っ…!笑い過ぎ…っ。苦しい…っ!」

「……笑い過ぎだっての」

ほら。と言いながら零司は伊吹に肩を貸す。

「んじゃ、帰るか」

そうして二人はその路地裏を後にする。まるで何も無かったかのように。





これが正常。異常で狂気に彩られた者。普通を捨てた外道。

だから、能力者観点から見ればハヤテは異常。

優しさなんて異常。助けるなんて論外。協力なんてもっての他。

冷酷こそが通常。妨げるのが普通。利用するのが正常。

それが、全ての『闇の力』の能力者に共通する考え。

これに迎合できなければ―――どうなるかなんて、考えるまでもないのだ。

だから、零司も伊吹も。どっちもどっちを利用しあってるだけ。

ハヤテもただ利用している。

ただ、それだけの事。





――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――



はーい、第三十話おしまい!!

零司「見事にタイトルと中身が合ってねえな…」

だねー。まぁ、良いんだけどさ。

さて、今回はハヤテのリスクか色々わかったね!

伊吹「だな。キヒヒッ」

まぁ、普通の人から見たら異常なことばっかだけどね。

零司「それが俺らには普通だけどな」

何だよねー。そこがめんどいんだ。

それじゃ、今回は短めでしたがここで終わります!

では!
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Re: 誰がため、何のため 11/11更新 ( No.68 )
日時: 2012/12/14 20:07
名前: コサッキー

では、久々の更新を始めるとしますかね。

零司「かね。って言い方はおかしいだろ、明らかに」

ハヤテ「ですねー」

うるっせぇよ!?忙しいからね、私もさぁ!

伊吹「知ったこっちゃねえけどな。キヒヒッ」

ひでー!こいつらひでー!!

零司「いいからとっととやれよ。めんどくせえな…」

うん、始めるさぁ!色々と無理がある展開をなぁ!!

ハヤテ「それはそれで待ちませんか!?」

しーるーかー!!では、どうぞ!!



――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――



三月二日、早朝三時。

零司と伊吹が住んでいるアパート、『紫苑荘』。

その借りてる一室にて、零司は目を覚ました。

(……んー……何か嫌な予感するなぁ…)

勿論、普通に起きたのではなく、何か虫の知らせとでも言うべきものに起こされたのであるが。

それにしても、今回の虫の知らせらしきものは零司にとっても異質な物だった。

(……何で今感じて、今起きないんだろうかねー)

基本、零司の感じる虫の知らせは、感じたとほぼ同時に何かが起こるのであった。

だが、今回は起きていない。これは零司にとってはイレギュラーともいえる事態だった。

(まぁ、何でもいいんだがな。どうせ巻き込まれることは確定してるだろうし)

自分でも悲しくなる事を思いながら、零司は立ち上がり、ハンガーにかけてある執事服へと袖を通す。

「さ、今日も適当に頑張りますかねっ」





       第三十一話「ぐるぐる回る不幸な前日」





時刻は同じく、所変わって、天皇洲家にて。

「くぁ…」

そこで働いているハヤテは、庭掃除をしながら、珍しく大きな欠伸を一つした。

「眠いなぁ…」

一つ呟き、眠気を覚ますように頬を叩いてみたりするが、効果は全く出ず、眠気はただ募るばかり。

「ふわ…」

そして、もう一つ大きな欠伸。

「うぁ…」

気を抜けば、すぐに寝てしまいそうな眠気に、ハヤテはうめき声を漏らす。

勿論、こんな事は初めてとは言わないが、ここ最近連日なのは異常だった。

原因ははっきりとはしておらず、それを考えて速く寝ていたりするのだが……一向に眠気が覚める日などなかった。

(何でだろうなぁ…)

箒を動かしながら、ハヤテは頭を別の事に動かし始める。まぁ、眠気のおかげで余り働いてはいないのだが…。

ともかく、ハヤテはこの眠気の原因について考え始めた。

(まず……いつからだっけか…)

次期はいつだったか。その事についてハヤテは記憶を探る。

(確か…)ぼんやりする頭で一生懸命思い出しつつ(ヒナギクさんの誕生日プレゼントを零司さん達と買いに行った日だよなぁ…)

そこからまで思い出した後はするすると、芋づる式に思い出せた。

流石に何を言ったのかまでは覚えていなかったが、何かを言った後、ヒナギク達が怒ったのは覚えている。

その時は、いや今も何故怒られたのかはわかっていないのだが…。

ともかく、その日からである。この眠気が続くようになったのは。

(でも、これが原因じゃない……よな…)

だがやはり、これが原因とは思えないハヤテは、別の事に原因があると思い、更に考えを深めていく。

(原因原因…………………)

しかし、考えても考えても一向に原因と思えることは無かった。

(あれー?)

その事に首をかしげ、手をハヤテは止める。

見つからないなんて事はありえないはずなのだが…。何故か、ハヤテの記憶の中には原因と思えるものが全くと言っていいほど無かった。

「……まぁ、いいか」

どうせ慣れてるし。などという妙に悲しい事を自嘲しながら、ハヤテは目の前に積まれた、雑草を見やる。

別の事を考えていたので気づかなかったが、積まれた雑草は悠々と一メートルを超える高さになっていた。

「……こんなに……雑草ってありましたっけ…」

思わずそう呟いてしまうほどの高さであった。

見あげると言うほどの高さではないが、十分におかしい高さでもある。

秋の落ち葉ですら、普通はここまでは至らないのであろうか。というよりも、何故こんなに雑草が落ちてるのかと言う事が気になる。

(……まぁ、なんでもいいんですけどね)

そんな事を考えるのもめんどくさいしなー。などと、若干零司に近い思考になりつつも、ハヤテは摘まれている雑草に右手をかざす。

「練習には……ちょうどいいですしね」

頭の中に、雑草を浮かすイメージを浮かべ、精神を集中していく。

(集中……集中…)

そんな事を心で呟いていていると、制御を始めた日の零司の言葉がハヤテの脳に思い出された。





『いいか?ハヤテの能力自体は簡単だ。だが、コントロールは難しいって言っていいだろう』

『それは僕の能力が風だからですか…?』

『ま、大体はそれだな。そもそも風ってのは空気の流れだ。それを人間が制御しようってのは無理な話なんだが…』

『異能にそんな事言われても…』

『まぁ、そうだなー。っと、そこは置いといて。まず、コントロールしたいならイメージを固めろ』

『イメージ…』

『そ。どうしたいか。どんな軌道を描きたいか。何をしたいのか。どんな感じでやるか。それをイメージして、固める。それが出来れば基本的なコントロールだけは出来るだろうな』

『……それって、すぐに出来たりするんですかね…』

『いや、センス無いと無理だろ』

『ですよねー…』

『ま、最初は慣れろや。そうすりゃ呼吸するのと同レベルで出来るようになるさ』





「ふー…」

深く息を吐き、目を閉じる。

何をしたいか。草を軽く浮かばせる。

どんな感じでやるか。手で下から持ち上げるようなイメージで。

どんな軌道を描きたいか。ゆっくりと、ふわりと浮かばせるイメージで。

それらのイメージを、ハヤテは少しずつ、確実に、何回も脳内で反芻させて固めていく。

「―――っ!」

そして、目を見開き、一気に能力を発動させる。

といっても、イメージ通りならふんわりとした感じなのだが。

何はともあれ、能力はイメージ通りに発動した。

伸ばした右手から、頬を撫でる程度よりも若干強い風が発生し、積まれた雑草を揺らす。

そして揺れたかと思うと、ゆっくりと、雑草は浮かび上がる。

「ふー…」

その光景を見て、成功とわかったハヤテは大きく息を吐き出した。

「成功したぁー…」

その言葉には、かなりの安堵が含まれていた。

といっても、それはそうなのだが。

そもそも、ハヤテは退院してから今の今まで、成功した確率がかなり低かったのだ。数値にするならば、十パーセントにも満たない数値である。

そんな中で、成功したのはかなりの安堵なのだ。

……まぁ、失敗するたびに吹き飛ばされてどこかにぶつかっていればそうだろうが。

ともかく、成功は成功なのだが、これはあくまで第一段階でしかない。ここからが本番なのだ。

(次は……動かす…)

先程ハヤテがやったのは、あくまでプログラミングされたコンピューターのような動きだった。

ここからは、オート操作ではなく、マニュアル操作だ。つまり、自分で操作する必要があるのだ。

無論、軽くならオートに切り替えることも出来るが、それは静止や一方向に動かせる事だけである。

細かい操作は操作者本人がしなければならない。

(くっ…!)

そしていざ動かそうとすると、ハヤテは歯噛みした。

(難しすぎる…っ)

地面より少し上に停滞している雑草。その下にある、能力で作った手は、動こうとぴくぴくと動いているが、それしか動いていなかった。

(あぁっ…!)

少し上に動かそうとするだけで、まとまっている風が瓦解しそうになるし、そのままの状態にしていては練習の意味は無い。

(く、ぁあ…っ!)

それでも、ハヤテは数ミリづつ、手を上に持ち上げていく。それに伴い、雑草も少しずつ上がっていく。

「く、ぁぁああああっ!!」

脳の血管が切れるのではないかというほどに集中し、ハヤテは手を一気に持ち上げる。

だが、急いでしまったのがいけなかった。

持ち上げた瞬間、風の手が爆散した。

「あぁっ!?」

ハヤテは叫ぶがもう遅い。轟っ!と風は勢いを増して庭に散っていく。

そんな中、雑草の塊だけは何故か固まったまま、ハヤテの背後へと飛んでいった。

それを振り払おうと箒を手にハヤテが勢いよく振り返えろうとした時、

「ハヤテ君?ひとまず庭仕事は終わりにして下さーい」

この屋敷に住む、もう一人の同僚の声が背後から聞こえた。

そして、ハヤテが完全に振り返り―――

べしゃっ。という音がハヤテの耳に届いた。

「………………………」

その音を聞き、ハヤテの全身から汗が吹き出る。振り返ってしまったが故に、その音の元を見てしまったのだ。

「…………………ハヤテ君?」

鈴のように軽やかな声。普段なら安心するかもしれないが、今のハヤテには死刑宣告のように聞こえた。

そして雑草にまみれたハヤテの同僚―――六花はにっこりと笑って、

「弁明があるなら、聞きますよ♪」

「あ、あはは…」

その満面の笑みを見て、終わった。そう思うハヤテであった。





       *    *    *





それから少し経ち、昼ごろの鷺ノ宮家にての物置にて。

「なんやこれ?」

そんな中で、喋り方に特徴のある声が響く。

その声の持ち主である、咲夜は目の前にある普通では無いであろう物を見つめながら、続ける。

「明日がヒナ祭やからヒナ人形飾るんはわかるけど……これおヒナ様が二つあるで?」

咲夜の言うとおり、目の前にあるひな壇の一番上の段にはお内裏様とお雛様では無く、お内裏様のところにもお雛様が飾ってあった。

「むやみに触ってはダメよ、咲夜」

それを見て、一緒に入っていた伊澄が口を開いて忠告する。

「それは呪いのヒナ人形。下手に触って封印が解けたら……大変な事になるわ」

そこで咲夜に伊澄は背を向けて続ける。

「本当は早く処分してしまいたいのだけど……強力な力を持つものだからそれも難しくて…」

「ふーん…」

伊澄の話を半分聞き流しながら、咲夜はお雛様を手にとって弄っていた。

「呪いのヒナ人形ねぇ〜…」

何かありげに呟いた、瞬間。

ベキッ。という軽い音が響いた。

「……………」

その音につられるように音源を見ると、予想通りと言うべきか、咲夜の手の中には首の折れたヒナ人形があった。

「特にありえないけど、首をもいではダメよ。くびをもぐと封印が解けて…」

そこで勢いよく振り返り、キラーンと擬音が付きそうな顔で、

「この辺で一番、運の無い人に……恐るべき呪いがかかるから!!」

と言い放った。

そしてすぐに、視線は咲夜の手へ吸い込まれた。、

「――――――――――――――――!!!」

「ごめーーーーん!!」

そうして、その二人のいる物置からは何か禍々しい物が出ていたとか。





       *    *    *





それと同時刻、場所は再び天皇洲家へ。

天皇洲家のとある一室にて。

「………………」

「………何ですの、ハヤテ。魂の抜けたような顔をして…」

先ほど起きたアテネが、入れたばかりの紅茶を飲みながら傍にいるハヤテにたずねる。

「……………」

だが、尋ねられたハヤテは依然として、口をポカンと開け、虚空を見つめていた。

「……ハヤテ?聞いてますの?」

「……………ほけー…」

……返事なのかどうかは判断しかねるが、何かを喋ったのは進歩と見てアテネは続けて話しかける。

「ハヤテ?何があったんですの?さっきから上の空で…」

「……………あ、お嬢様…」

「……………」

ピクッ、と頬が引きつったのをわかりながらも、アテネはわざとらしく溜息を吐いた。

「え?えぇ?何で溜息吐くんですか!?」

「……ついさっきまでの事を覚えてませんの?」

「……さっき?」

本当にわからなさそうに首を傾げるハヤテ。それを見て、毒気を抜かれたアテネは「まぁいいですわ」と言って紅茶をすする。

「それで、何があったんですの?」

「何が。と言われましても…」

特に何も…。と答えるハヤテに、アテネは疑惑の視線を向ける。

「……本当ですの?」

「はい。朝、六花さんに怒られただけですよ?」

「間違いなく原因はそれですわね」

アテネは即行で原因を断定した。……その言葉で断定するのもどうかと思われるかもしれないが、アテネの中では普通の事である。

「…?」

そしてその言葉の意味が分からず首を傾げるハヤテ。

「……本当に何も覚えてないらしいですわね…」

「えっと…?」

尚も混乱した様子のハヤテを見て、アテネは怒るべきか呆れるべきか、悩み始める。

だがそれも数分とせずに終わり、紅茶がなくなったカップを置き、ハヤテを見る。

その行動にハヤテは首を傾げるが、構わずアテネはハヤテを見つめ続ける。

「うぅ…」

穴の空くほど見つめられ、段々ハヤテの顔が赤くなっていく。

そんなハヤテを見て、アテネはそっと両手をハヤテの頬に伸ばす。

(え?えぇ?!)

その行動の意味が全く微塵も理解出来ず、頭の中がグルグルと回りだす。

そして、アテネの両手がハヤテの両頬にゆっくりと触れた。

女性に顔を触れられるという事に全く経験が無いハヤテはそれだけで心臓が一つ跳ねる。

更にそのまま、アテネはゆっくりと顔を近づけていく。

(!?)

その行動を見て、ハヤテの脳裏にあの日々の事がフラッシュバックする。

まさか。まさかとは思うが。いや違う、絶対に違う。……と思う。

そんな理路整然としない思考だけがハヤテの中を駆け巡り、まともな思考だけが無くなる。

そんなハヤテの前で、アテネはゆっくりと目を閉じた。

それがハヤテの中でどう作用したのかわからないが、ハヤテも目を閉じる。





そして、頬の辺りに強烈な痛みが走った。





「いひゃひゃひゃ!?」

その痛みに、目を見開いてその原因を探ろうと視線を頬にハヤテは移す。

「ここらへんかしら…?」

その視線の先には、先程アテネが手で触っていた手で頬をつねっていた。

「ふぁにふふんふぇふふぁ、おひょうひゃま!?」(何するんですか、お嬢様!?)

「ありませんわね…?」

「おひょうひゃま!?」(お嬢様!?)

ハヤテが必死に叫んでも、アテネには聞こえていないようで、更に痛みが強くなった。

「いひゃいいひゃい!?」(痛い痛い!?)

「あぁ、ハヤテ。少し我慢してくだ……さいっ!」

更にその力が強くなる。

「いひゃーーーーーーーーーーーー!!????!!」

ありったけの声で叫んでも、アテネはつねる力を弱める事はなく、それどころか更に強くしていった。

(ち、ちぎれる…!?)

このまま続けられたら……その先の想像に、戦慄するハヤテ。

だが、そんな想像をしたとき、ポンッ。と軽い音がハヤテの耳に届き、それと同時に頬をつねられていた感覚も無くなった。

「へ…?」

「やっと取れましたわ…」

何が起こったのか全く理解していないハヤテを尻目に、アテネは今離したであろう手を見つめていた。

「あの、お嬢様……一体何を…?」

まだ痛みの引かない頬をさすりながら、ハヤテは恐る恐る尋ねる。

「あぁ、少し剥がしていただけですわ」

「僕の顔の皮を!?」

「何でそうなりますの!?」

明らかに飛躍した思いつきに、行動をしたほうであるアテネが驚く。……まぁ、普通は考え付かないであろう考えにいたったので仕方ないのだろう。

「ともかく違いますわ…」

呆れた声音で、アテネは右手をハヤテに差し出す。

「はぁ…」

困惑した声を出しながらも、ハヤテは手をアテネの手の下に差し出す。

それと同時に、アテネの手が開かれ、何かがハヤテの手に落ちた。

「これは…?」

それを見て、ハヤテは疑問の声を出す。

ハヤテの手の中にあるのは、注視していないとわからないであろう肌色をした紙だった。

「知りませんわ。ただ、六花の持ち物という事だけはわかりますわ」

「六花さんの…?」

「えぇ」

これが…?と困惑するハヤテ。

「確かにそれは私のですけど…」

「……相変わらずですわね、六花…」

「はい♪」

……そしていつの間にか室内にいた六花。ハヤテ、アテネの両名が一切の気配を感じなかったところを見るにやはり底の知れないメイドである。

「ところでアテネ様」

「何ですの?」

いえ…。と言って、六花はポケットからカメラを取り出す。

「ひとまず、この角度を変えて撮ってみた、あたかもキスしているように見える写真をどうしましょうか?」

「今すぐに消しなさい!!!」

「お断りです♪」

「なら何故聞いたんですの!?」

「弄る……いえ、反応を楽しむためですけど?」

「さほど意味は変わってませんわよ!?というか、そのカメラを渡しなさい!!」

「ダメですよー♪」

「六花〜〜〜〜〜!!!」

「あぅ…」

アテネと六花の言い合ってるそばでただ一人、顔を真っ赤にしているハヤテだった。





その三十分後、何とか色々と立て直したアテネは深々とソファーに背中を預け、切り出した。

「それでハヤテ…」伺うようにハヤテを見て「思い……出しましたの?」気まずそうにそう言う。

「えぇ…」

そう答えるハヤテ。だが、その言葉は弱々しく、今にも消えてしまいそうだった。

「はぁ…」

溜息を吐いて、アテネは暗雲が立ち込めてそうなハヤテから目をそらし、反対側でニコニコと笑っている六花へと視線を向ける。

「何をやりましたの…」

「いえ、何も?」

笑ったまま、おどけた調子で言う六花。その様子がさらにアテネに拍車をかけていく。

「何もしてないなら、ハヤテがああなるわけないですわよね?」

「……まぁ、そうですが…」

「随分と歯切れが悪いですわね?」

そのアテネの言葉を聞き、六花の表情が苦笑いへと変わる。

「色々とやっちゃいましたから…」

「色々!?」

「えぇ、色々です♪」

「何故そこで楽しげに言うんですの!?」

それ以上六花はアテネの言葉には答えず、再びニコニコと笑いの表情になる。

それを見たアテネは、しょうがないと思いつつもハヤテへと言葉を投げる。

「ハヤテ、本当に何があったのか教えて下さいません?」

「……何があったかと言われましても…」はぁ…。と重い溜息をつき「ただ僕が一方的にボコボコにされただけですから…」

「十分にありましたわねぇ!?」

予想だにしていなかった言葉に、アテネは目を見開く。

それを知ってか知らずか、ハヤテは遠い目をしながら続ける。

「僕が色々とミスをして六花さんに雑草の束をかけてしまったのが始まりでした…」

昔話でもする口調ですわね…。と心の中でアテネはつっこむ。

「そして、気づいた時には倒れていました…。その時の体の痛さは今も続いてます…」

「一気に飛びましたわね!?」

全く中身の無い話に、アテネは愕然とした。

最も、ハヤテとしては勝手に心の防衛機能が働いて、その部分を省いただけなのだが。

ともかく、ハヤテからはこれ以上の情報が得られないという事はアテネにはわかった。

アテネは六花にもう一度訊こうと向き直る。

「六花…。何があったのか教えてくれます?」

「まぁ、そこまで言われるなら…」

コホン、と一つ咳払いをし、六花は口を厳かに開いた。

「先程ハヤテ君が言ってくれたように、大量の雑草が私にかかりました」

確かにそうであったとアテネは記憶している。まぁ、そこで記憶が食い違ってるとも思えないのだが。

「それで、私が『何か弁明があるなら、聞きますよ?』って笑顔で言ったらいきなりハヤテ君が震えだしまして…」

「あぁ…」

何となくその光景を想像して、納得するアテネだった。

アテネには何となく、六花が怒ったら怖いというイメージがある。それは俗に言う『普段怒らない人が怒ると怖い』と言われているからでもあるだろうが……何故か、六花にはそんな言葉が無くても怖いと思うのだった。

ともかく、そんな感情をハヤテも孕んだのだろう。それだけは簡単に想像できる。

「そして、すぐにハヤテ君が慌てて謝りながらこちらに来ようとしたんですが…」

「ですが…?」

そこで六花は言いにくそうに頬をかき、

「後一歩と言うところで、足を滑らせたようでして……こう…」

六花は頭からこけるような動作をそこでした。

「ボスッ、っと頭から私の胸に…」

「………………」

その言葉を聞いた瞬間、アテネはこめかみに欠陥が浮かび上がるのがわかった。

「………あの、アテネ様?物凄く怖い顔をしてますよ…?」

「……そうかしら?」

「えぇまぁ……まるで……その…」

六花にしては珍しく、言葉を選んでいるようであった。だが、すぐに言葉を見つけたようで恐る恐ると言った様子で呟いた。

「般若のよう……と言いましょうか…」

その言葉の後に「……オーラが」と六花は小さく呟いていたのだが、音量が小さい事もあってアテネには聞こえる事はなかった。

(……まぁ、これもハヤテ君の不幸体質が起こす事なんでしょうね〜…)

ただならぬオーラを纏うアテネが立ち上がって、ハヤテの元に近づいていく光景を見ながらそんな事を考えている六花であった。

(……そういえば、今日はさそり座って最下位でしたっけ…)

朝早くにちょうどやっていたテレビでの占いを思い出す。その時に書かれていたのは『今日は色々と不幸が襲ってきそう!なるべく部屋で過ごした方がいいかも…』だったような気がする。

(……案外当たりますね…)

……一回部屋を出たから起こった現象なのだろうが、部屋を出なくても変わらないであろう。

「ちょ、お嬢様!?その腕はそっちには…!?六花さん、助け…っ!」

「……どこ見てますの?ハヤテっ♪」

「お嬢様!?何で満面の笑み何で痛たたたたた!?!折れる!?折れますよ!?」

(……まぁ、自業自得と言う事でいいでしょう)

適当にタイミングを見計らって助けよう。目の前で起きている惨劇を見ながらそう思う六花だった。





       *    *    *





「……なーんて、めーんどくーさいんでしょーねー…」

『妙に気が抜けてんな…』

「当たり前でしょ…」

ハヤテが折檻を受けているのとほぼ同時刻、蓑実早菊花はそれなりに高さのあるビルの屋上にうつ伏せに寝転がっていた。

最も、ただ寝転がっているわけではなく、右手で通話中の携帯を持ち、左手で狙撃銃を支えている。

「なーんで、私が変えなきゃいけないのかしらねーって話よ…」

心底嫌そうに顔を歪めながら、サイトを覗き込む。

一気に視界は薄暗くなり、二本の棒とと共に狙っている物―――走行中の車が映る。

『まぁまぁ。んで、今回狙うのってのは何だっけか?』

右手から聞こえてくる呑気な相手の声に若干イラっとしながら、視線を少し動かし、狙っている人を十字の真ん中につける。

「んー…?狙ってるのはねー…。鷺ノ宮伊澄と、愛沢咲夜ね…」

その言葉の通り、サイトを通して映るのは、車の後部座席に座っている伊澄と咲夜だった。

『あー。そりゃ片方が厄介だなー』

「本当よ…。撃った瞬間に気づかれるんじゃないかって思ってるわよ…」

『そうだよなー。まぁ、結構距離離れてるし、大丈夫だろ…』

いや、そうとも言えないんじゃない…?と菊花は心の中で一応突っ込んでおく。

『ま、俺ならもっとめんどくさい方向に発展するだろ、百パー』

「確かにそうなんだけどさ…」

何で私なのよ…。と小さく、恨みがましく呟く。

『適材適所って言葉知ってるか?』

「知ってるわよ!!」

最早やけのように叫び、先程から支えている狙撃銃の引き金に指をかける。

(……まぁ、外さない事には自信があるけどさ)

「一発目…」

先程までのようにだらけた声音ではなく、集中した声音だった。

全神経を集中させていき、サイトの中心に伊澄を合わせる。

「……貫け」

言葉と共に、引き金を思い切り引く。

直後、ガァン!とけたたましい音が菊花の耳を叩く。

「……っぅ…!」

久々に聞く音に思わず両手で耳を塞いでしまう。

だが、すぐにサイトに目をあて、成功かどうかを確認する。

(……よし、成功…)

サイトに見えた光景は、咲夜が突如倒れた伊澄のそばにいる光景だった。伊澄の様子から察するに、当たったのだろう。

「……ま、こっからは目を瞑っててもできるんだけどさ」

サイトの中心に何かを叫んでいる咲夜を持って来る。

そして引き金に指をあて、

「一応、撃つ礼儀としては見ておいてあげるとしましょうか」

引き金を引いた。

それと同時に、回り一帯に銃声が響いたのだった。





       *    *    *





「全くハヤテは…!」

「嫉妬は醜いですよ?」

「しっ…!?」

何気ないツッコミで顔を真っ赤にするアテネを笑顔で見守る六花。

先程アテネの折檻より約三十分後。ハヤテに掃除をさせ、六花の淹れた紅茶をアテネは飲んでいた。

といっても、静かに優雅に。何てことは無く、何かをぶつぶつ言いながらなのだが。更には口をついて出るのはハヤテへの文句ばかり。

ついさっきの会話を見ればわかるように、アテネが文句を言い、それに六花がツッコミ、そしてアテネが顔を真っ赤にするという事の繰り返しなのだが。

(……まぁ、これはこれで面白いのでいいのですが)

相変わらず主人への礼節などが抜けてる気のする思いである。まぁ、それが六花としてのスタンスでもあるのだが。

基本ちゃんと礼節をもって仕えるが、時々弄るというスタンスで六花はメイドをやっている。……アテネからしたら迷惑な話が一つ混じっているのだが、六花のそういう所には諦めている節があるためか、仕方なく享受しているのである。

「というか、六花…」

まだ赤い顔のままでアテネは六花へ振り返る。

「あなたは何も感じてませんの…?」

そして、疑問と恨みの篭ったような視線で睨みながらそう言った。

恐らく、さっきから平然としている六花への純粋な疑問と指摘され続けている事への恨みからの言葉なのだろうと、六花は推察する。

アテネとしては平然してるとは思っていないのだろう。

「まぁ、特に何も恥ずかしがってもませんが…」

「えぇ!?」

だから、その六花の返答には大層驚いた。どれくらいかと言うと、座っていた椅子の背もたれに手を置いて身を乗り出すほどに。

「そんな驚かれましても私としては困るんですが…」

「だ、だってあなた…!胸を揉まれたんですわよ!?」

「明らかに誇張してますよね?」

「違いましたの?」

「全然違います。ただ単に胸に顔を埋められただけです」

「それでも十分に恥ずかしいですわよね!?」

「いえ別に、アテネ様のように胸元の開いたところに直接埋められたわけではありませんし…」

六花のその言葉に、アテネは更に顔を赤くして胸元を庇うように隠した。

(……まぁ、ハヤテ君は不幸体質ですし。それを気にしてたらキリがありませんしね〜…)

ハヤテの行動を『不幸体質だから』で済ます所は流石と言える。……実際的には誰かが怒らないでいないとハヤテが可愛そう過ぎるとの考えもあるのだが。

というより、一度六花も怒ってしまったので、それで怒りが鎮火したといった方がいいかもしれないが。

そんな考えを見ることの出来ないアテネは更に慌てるように顔を赤くしていたが。

(……まぁ、そこは経験ですかね〜…)

そんなアテネの様子に苦笑しながら六花は自分の親友の奇行の数々を思い出していた。……それのおかげで今平然としていられるのだけは納得もいかないようだが。

そんな風に、六花にとって穏やかな時間が流れていた。

―――が、その音はドアのすぐ外から聞こえてきたガラスの破砕音に壊された。

「っ!」

その音を聞いた瞬間、六花はどこからか箒を取り出し、慣れた手つきで構える。

そのまま目つきを鋭くし、部屋全体を見渡す。

先程とは打って変わって緊張感を振りまく六花に、アテネが若干注意したように周りを警戒している以外には変化は何も無かったが、六花は警戒を解かずに窓まで歩み寄っていく。

(……狙撃と言う事も念頭に入れたとしても、距離が足りるとは思えない…)

屋敷が大きいという事と、周辺にそれほど大きすぎる建物も無い為、狙撃の線は薄い気がする。が、そんな先入観で備えるほどに六花の人生は甘くは無かった。むしろ、そんな事を考える暇なんて無かったほどに辛かった。

と、そんな感傷に浸る暇など無かった。

その理由は簡単で、六花の額に衝撃が走ったのだ。

「つっ…!」

「六花っ!!」

突如ふらついた六花にアテネが駆け寄ろうとするのを、六花は手で押し留める。

「流石に衝撃までは殺せませんでしたね…」

そんな事を言いながら、六花は額に手をあて、何かを握った。

「……やはり狙撃ですか」

そして手の中にある、銃弾の存在を確認しつつ、そう呟く。

(……狙撃にしてはおざなりな気もするんですけどね…)

それと同時に、何かおかしさも感じていた。それは、まるで殺す事が狙いではないような―――

「……まぁ、いいでしょう」

「……相変わらずでたらめですわね…」

「いつもの事ですから慣れてますよね?」

「えぇ、まぁ…」

六花の出鱈目さに納得のいかない様子を見せながら、アテネは頷く。

「では、一応ハヤテ君を探しにいきましょうか」

「ですわね」

「あ、アテネ様は私から離れないで下さい」

「わかってますわ」

その言葉通り、アテネが六花の肩に手を置いたのを確認すると、六花は窓を離れて扉の前に立つ。

そして、一思いにドアを思い切り開き――――固まった。

目の前に起きた、もしくはあった出来事に、脳が思考を停止させた。

それほどまでに、意外すぎるものだった。

「……六花?どうしましたの?」

「…………はっ」

怪訝なアテネの声で、思考が回復する。

「いえ、アテネ様……流石に予想だにしなかった物が目の前にあったもので…」

「……何ですの、それ…」

六花の言葉にさらに怪訝な声になるアテネ。

そのまま気になったのか、六花の肩越しにそれを見て、

「――――――――」

六花と同様に固まった。

「……まぁ、ですよね〜…」

それを確認し、六花は固まった原因、『メイド服を着て倒れているハヤテ』を見やる。

先程折檻されてたときまでは執事服だった。なのに今はメイド服。……何が起こったのか、一切六花はわからない。

ただ、何か一つわかった事はあった。

(……ハヤテ君、似合いすぎますよ…)

元々女顔とは言われているハヤテだった。そこに女物の服を着せてみようなどと言う考えは、アテネと六花には無かった。……まぁ、正確には六花は一回は考えたのだが、ハヤテのメンタル面を考えてやめたのだが。

ともかく、今のハヤテは女と言われればそう信じてしまうほどにメイド服が似合っていた。

「……どうしましょうか…」

そんな風に六花が途方にくれていると、

「う、うぅん…」

ハヤテが若干身じろぎした。

それを見た六花は「ハヤテ君、起きて下さい」とハヤテの体を軽く揺らした。

「……あれ……六花さん…?」

「起きたのはいいんですが、寝ぼけてますね…」

「寝ぼけ……って、一体何が…?額も痛いし…」

ハヤテの言う通り、ハヤテの額は赤くなっていた。それを涙目でさするハヤテ。……何故だか、途轍もなく美少女にしか見えない。

「……あの、ハヤテ君?」

それを見て思ってか、六花は恐る恐ると言った感じでハヤテに話しかける。

「はい、どうかしましたか?」

「あの……物凄く言いにくい事なんですが……自分の体を見てください…」

「…?」

六花の言う通りに、ハヤテは自分の体に視線を落とし、

「……………」

スカートを持ち上げてみたり、自分の姿を背中まで見てみたりしていた。

「……な、何ですか……これ…」

「……さぁ…」

返答に困り、六花は気まずげに目をそらす。

「いやいやいや!?絶対に六花さんが何かしたとしか思えないんですけど!?」

「私は何もしてませんって……それと、意外と落ち着いてるんですね…」

「色々と巻き込まれて耐性ついてますからねっ!!!」

それはそれでどうなんでしょうか…。と思う六花だったが、言わないでおいた。それを言ったらハヤテが落ち込むのが容易に想像できたから。

「うーん、遅かったようやな…」

「ですね…」

と、そんな時声が聞こえた。その方向に二人が同時に振り向くと、

「伊澄さん!!それに咲夜さんまで!!」

顔を真っ赤にした伊澄と咲夜が立っていた。

(……?)

そして何か、ひっかかりを感じた六花だった。が、特にわからずすぐに頭の中から消した。

(まぁ、ともかく…)まだ固まっているアテネを一瞥し(面倒な事になりそうですね…)と思ったのだった。





「は?ヒナ人形の呪い?」

それから数分もしない後、ハヤテは聞き返すように言っていた。

「ええ」

それに伊澄もはっきりと答える。

その後、ハヤテ。そして同じ部屋にいるアテネと六花の聞いた話は…。



昔々、女装が好きな人形職人がいた。

その人形職人は、事あるごとに、

「あぁ……どうして自分は女に生まれてこなかったのか…。ワシも女の着物が着たい女の着物が着たい!!」

などというどう考えてもおかしなことを言っていたそうな。

職人はとても腕が良かったので、その土地の領主様に仕えて数々のヒナ人形を作り上げていたのですが、ある時…、

「はっ!!気が付くとお内裏様に十二単を!!」

なんと、男物の着物を着せるお内裏様に女物の着物である十二単を着せてしまったのです。

勿論それが似合うはずなど無く、超キモイと城内で話題沸騰。

その後、運悪く職人による横領事件なども発覚し、職人は斬首。

しかし、今わの際でも職人は……

「あぁ……一度でいいから女の着物を着てみたかった…」

と言ったそうな。

そしてその強い思いが呪いとなって、以来運の悪い者を女装させる呪いがかかったのだとか。



『…………』

「何でお嬢様と六花さんは同情的な視線で僕を見るんですか!?」

「……ハヤテ君……それを言っていいんですか?」

「いえ、やっぱり言わなくて結構です!」

「そうですか」と言って、今度は慈悲の篭った視線でハヤテを見る六花。

……というよりも、そっちの方がかえって心を傷つけるのではないだろうか…?などと思う、アテネであった。

「というか、あまり同情できない話ですね…」

横領って…。と呟くハヤテに「ですが、そういう呪いは強力で厄介なのです」と伊澄がたしなめる。

「でもなんでよりによってメイド服なんですか?」

疑問に思ったハヤテが伊澄に質問する。その傍で「よりによってって…」と六花が言っていたが、ハヤテには聞こえていなかった。

「それは恐らく……その職人の趣味です」

「趣味……ですの?」

「えぇ。多分ハヤテ様に似合うと思ったんですよ」

「確かにええセンスではあるな」

「………………」

そんな事言われても、性別が男であるハヤテとしては複雑極まりない事である。

だが事実として、似合ってしまっていることは似合ってしまっているので、何とも言えないのだが。

「でも見とれているばかりでは困ります。三月三日のヒナ祭りが終わるまでに呪いを解かないと…」

「解かないと!?」

「一生女装が趣味の男の子になってしまいます!!」

「…………」

シリアスムードになったにしては、何だか微妙な呪いだった事に、ハヤテはどう反応したものかと困った。

だがやはり、そんな趣味はごめんこうむりたいわけなので、半ば無理矢理に思考を切り替える。

「で、呪いを解く方法はあるんですか?」

「えぇ。それは……ヒナ段のおヒナ様……つまりこの辺で一番高い場所の主を……倒す事です」

ここらで一番高い場所。それを考えたとき、全員の頭にはある場所が一斉に思い浮かんだ。

「この辺で一番高い場所って……もしかして白皇の…」

「時計塔でしょうね」

ここにいるほぼ全員が時計塔を見ているというのもあるだろうが、かなり目立つからかすぐに思い立ったのだった。

「てことはヒナ段の主って…」

「まぁ、生徒会長さんと言う事になるでしょうね」

「よかったな〜。知り合いなら事情を説明すりゃわざと負けてくれるやろ?」

「ええ。とてもいい人なので大丈夫だと思います。まぁでも、この姿で会うのは恥ずかしいですけど。他の生徒に見られるのもアレなので夜にでも生徒会室に来てもらって…」

「あの、ハヤテ君……水をさすようなんですが…」

そんな時、恐る恐ると言った風に六花が発言した。

「明日の夜は白皇学院五つの伝統行事の内の一つ、『ヒナ祭り祭り』があるので夜も人がいっぱいですよ?」

ビシッ。その言葉を聞いた瞬間、ハヤテは固まった。

「え?そんなに人が…?」

「はい、結構。前日も設営の人が一日中いっぱいです」

現実を認めないように確認をハヤテはするが、六花は容赦なく現実を突きつける。

「ヒナ段の上で倒さないと呪いは…?」

「解けません」

藁にすがるように伊澄にも確認してみるが、結果は変わらないままだった。

「…………」

詰んだと言わんばかりに絶望の表情にハヤテはなる。

「……どうするんですの?」

「今から……考えます…」





こうして……ヒナ祭りがやってくる。





――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――



ひゃっはい、一ヶ月ぶり!!

零司「さて、斬るか」←(真剣をすらりと抜刀)

待て待て待って!?いきなり何!?

零司「一ヶ月もほったらかしにしといた奴は黙れ」

いや、色々あったんだよ!?テストとかテストとかテストとか!!

伊吹「キヒヒ……テストしかないのな…」

……後は、二足のわらじとかかな?

ハヤテ「軽く意味不明です」

……ともかくすいませんでした。

零司「よし」←(納刀)

……さて、次からはヒナ祭り祭りだね。

零司「……の前に、最初の俺は何?意味あるの?」

あるよ、多分。

伊吹「自信なさげだな。キヒヒッ」

ハヤテ「ところであの肌色の紙の意味って…?」

……今は言えない感じかなー。もう少し後になったらね。

零司「ふーん…?」

ハヤテ「後、蓑実早さんの意味は…」

ここじゃ説明できねー。というわけでスルー!!

零司「……まぁ、何でもいいんだがな」

まぁ、今回はここで終わろうか。……次いつになるかなぁ…。

伊吹「キヒヒ……早め早めにしろよ」

……善処します。

ハヤテ「では♪」
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Re: 誰がため、何のため 12/14更新 ( No.69 )
日時: 2012/12/31 23:21
名前: コサッキー

……色々と困ってる、今日この頃。

ハヤテ「いきなりなんですか…」

いやねぇ……色々と問題があるんだよねぇ…。

零司「……いや、明言しろよ。わかんねぇよ…」

……どうやって呪い解こうかなぁ!!

ハヤテ「ちょっとー!?」

伊吹「キヒヒ……いっその事解かなくていいんじゃね?」

ハヤテ「いいわけありませんけど!?」←(因みにこの瞬間もメイド服)

……ま、何とかなるよね!!主に零司が何とかするよ!!

零司「俺に何とかできるとでも!?」

さて、ではどうぞ!!!

三人『不安材料しかない!!!』





――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――





「あー、マジでミスった…」

ハヤテに呪いがかかったのとほぼ同時刻、零司は白皇の中を歩いていた。

何故ここにいるのか。それは至極簡単な理由である。

「何で俺もノート忘れるんかねー…」

零司の言う通り、ただ単にノートを忘れただけである。……ただ、一教科だけではなく、全教科というどうやったら忘れられるのか謎な忘れ物ではあるが。

故に、仕事中でありながらここに来ているのだ。

「めんどくせー…」

とはいっても、忘れ物を取りに行くなどという事は本来零司にとってはありえない事でもある。だからか、その足取りは力を抜いた歩き方であり、いつも纏っているような覇気もなかった。

「ん…?」

と、そんな零司の前方に何やら人が見えた。

(……誰だアレ?)

気になった零司はちゃんとした足取りで近づいていく。そうする内に、段々その人物達が見えてきた。……最も、一人は人といえるか怪しいが。

(神父にヒナギク……これ以上に珍しい組み合わせもなさそうな組み合わせだな…)

珍しい組み合わせな二人に、零司は声が届くような距離まで近づいたところで、ヒナギクが集中するように目を瞑ったので、零司は神父へと声をかける。

「何やってんの?」

「ん?君か。いや何。相談に乗ってるだけさ」

「随分と神父らしい事で…」

「これでも生前は神父だったぞ?」

今もそれっぽいけどな…。と零司は心の中で一応つっこんでおく。

「にしてもよ、ヒナギクが悩むなんて明日は嵐でも起こるんかね?」

「色々と酷くないか?悩む事なんて誰でもあるだろ?」

「……ま、確かにあるわな」

失言だったと零司は思い、零司は乱雑に髪をかく。

(にしても、ヒナギクの悩み、ねぇ……流石に想像ができないわぁ…)

悩みなどない。とまでは言わないが、流石にヒナギクにそこまで悩むほどの悩みがあるとは零司には全く思えなかった。

(ま、人の事言えないのかもしれないけどさ)

だが実は、零司にも悩みはあるといえばある。最も、解決など出来なさそうな悩みなのだが。

「自分の心に素直になれば……この心のモヤモヤの原因がわかるの?」

「ああ。全ての迷いを取り去れば、自ずと見えてくるはずだ。自分の心が……本当に望む物が…」

そんなヒナギクと神父の会話を聞き、零司は(あぁ、思春期か)と勝手な結論を出して納得していた。……若干合ってるので、何も言えないのだが。

そして零司の納得と共に、ヒナギクが何かに気づいたように目を開いた。

「わかったわ」

「わかったかね」

(おぉ…)

何故かそんな会話に感動した様子の零司。まぁ、恐らく自分で見つけたことに感動しているのであろう。

「どうして……今までこんな簡単な思いに気づけなかったのかしら…」

「人は……自分の素直な気持ちを認めるのが中々難しい。しかし……それが恋心と言う…」

「お礼が言えてないからよ」

(……あら?)

神父の言葉にそぐわない言葉がヒナギクの口から飛び出し、零司はどこかおかしいかのように首を一人傾げる。

「…………お礼?」

「そう。思えば色々とハヤテ君には助けてもらってる……それらのお礼が言えてないから、きっと私はモヤモヤしてたんだわ!!」

勝手に自分の理論を展開し、勝手に自分で納得するヒナギクに、神父は「…………斬新な結論だな」とだけ返した。

(いやいやいや!?斬新過ぎるし、神父も諦めてるんじゃねえよ!?)

零司が心の中でつっこむが、所詮は心の中での事。口に出さずに伝わるはずもない。

「あの…」

と、そんな時この場にいる人物ではない人物の声が三人は聞こえた。

「ん?あなたは確か…」

ヒナギクが咲きにその人物に振り向き、話しかける。その人物は伊澄であった。

「えっと……ハヤテ様からこれを…」

「何?手紙?」

「はい。言葉では上手く説明できないので、要点を文章にしてみました」

「へえ、どれどれ…」

受け取った手紙をヒナギクが覗き込み、その横に回った零司も手紙を覗き込む。そこには、こう書かれていた。

『明日九時二人きりで白皇学院時計塔最上階にて待つ

勝負してください(武器持参)

勝つのはハヤテ様』

(……なにこれ)

手紙を読み終わった最初の零司の感想がそれだった。

意味不明もさることながら、何故ハヤテとヒナギクが勝負する羽目になるのか。それすら零司にはわからなかった。

「なるほど、そういう事ね」

手紙を読み終わったヒナギクは伊澄に手紙を返しながらそう言った。

その言葉に伊澄は意味を理解してもらえたのかと思ったのか、安堵した表情を浮かべていた。

「お礼をしないのなら、今まで助けてきた分鬱憤を晴らさしてもらうと…」

だが、その言葉を聞いた瞬間、安堵から焦燥へと伊澄の表情が変化した。

(というか、お前の中でハヤテはどんなキャラになってるんだよ!?)

そして零司は何回目になるかわからない心の中でのツッコミを入れる。

「でもそうは行かないわ!倒して今までのお礼をするのは私よ!!」

(おかしいだろうがぁあああああああああああああああああああああ!!!!)

口に出して思い切り叫びたいのを、零司は必死に我慢して心の中だけに留める。

(というかおかしいだろ!?まずハヤテがそんな事考えるわけないだろ!?それくらい考えなくてもわかるだろ!?おい!?)

零司の思うとおり、きっとハヤテならそんな事考えるはずがない。というよりも、ハヤテの場合助けるのが当たり前になっていて覚えてすらいないのだろうが。

「本心に気づくのも伝えるのも中々難しいな」

「最早そういう問題を遥かに超えてるよな!?」





      第三十二話「良くも悪くもお祭り騒ぎ」





そして時は流れ三月三日。

「う〜ん……確かにこれはかなりの規模ですね〜…」

わいわいがやがやという擬音が似合うであろう祭りの様子を見下ろしながら、ハヤテはそんな事を呟く。

「この中を誰にも見られずに時計塔に侵入するのは至難の業ですね」

「せやけどなんやねん、その格好は…」

真剣そうに呟くハヤテの横で、咲夜はそう突っ込む。その横では突っ込まないでも怪しんでいるワタルもいるが。

そして咲夜のツッコミ通り、ハヤテの格好は明らかに普通ではなかった。

コートを頭まですっぽりとかぶっており、傍から見たら怪しい事この他無かった。

もし、この場に零司か伊吹がいたのなら、『人の事は一切言えないな』というニュアンスの言葉を間違いなく言うだろう。

「ところで伊澄は?」

オレ、伊澄に誘われて来たんだけど…。と呟くワタルに、咲夜は「あぁ、一緒に来てたんやけど…」と言いにくそうに目を伏せ「一秒も一緒にいる事無く迷子や」と続けた。

「記録更新ですね」

何の記録更新だかわからないが、三人は何となく理解していた。

「しかしこの″ヒナ祭り祭り″って何なんですか?前の五大行事のマラソン大会に比べて随分と随分楽しそうですけど…」

「そりゃ五大行事が全部ヤバイ勝負事なわけじゃねーだろ」

というよりも、五大行事の全部が全部勝負事だったとしたら学校としては成り立たないのではないだろうか…。

「バレンタインの逆でさ、男が女を誘って一緒に踊って思い出を作る祭りなんだとさ」

「なるほど。やっぱ夏は盆踊りっちゅうわけやな」

「いや、今三月ですけど…」

弱々しくハヤテが突っ込むも、眼下に見えるやぐらを見ると何とも言えなくなる。

「まぁ同時に試験前のお祭りだから……最後の想い出作りってわけさ」

「最後?」

意味のそぐわない言葉にハヤテは首を傾げる。そのハヤテに現実を教えるごとくワタルは続ける。

「試験で赤点取って退学になる奴の」

「地味に嫌な行事ですね…」

普通に考えれば、やる気の削がれる行事である。……かえってやる気が出る場合もあると考えれば否定も何もしにくい行事でもあるのだが。

「ま、とにかくここを突破しなくては僕の明日が無いので……何としても九時までに誰にも見つからずに時計塔に…」

「何してるのハヤ太君♪」

「!!」

決意しているところに、いきなり声をかけられてハヤテは跳ねた。といっても心臓がだが。

「せ!!瀬川さん!?」

「あれ?何そのコート。何かのコスプレ?」

驚くハヤテを尻目に、泉はハヤテの着ているコートを指差す。

それにハヤテは驚き、慌てて一気にまくし立てる。

「な!!何でもないですよ!!隠し事とかは何も無いので!!」

「はへ?」

隠し事?とでも言いそうな泉の顔に、ハヤテは自分が自爆した事を悟った。

「……………」

自爆した事に固まるハヤテと、

「…………♪」

楽しい物を見つけた動物の耳が生えたように見える泉。

「ハヤ太君ダメだよ♪こんな真夏にコートなんか着ちゃ…」

纏う雰囲気と手を怪しくしながら、にじり寄る泉。

「いや……だから今三月ですって…」

そんな泉が一歩一歩にじり寄るごとに、ハヤテも一歩ずつ距離をとるように下がり始める。

「その下どうなってるのか見せて―――♪」

「わ―――!!ダメです―――――!!」

そして弾かれたように泉が走り出したと同時に、ハヤテもコートを翻して逃げ出した。

そのまま二人が走り去って言った後。

「言ってもうたな」

「で?あの下どーなんってんだ?」

とかいう二人の会話があったとか。

余談であるが、ハヤテが泉から逃げる際にコートが走っているよりもはためいていていたとか。そのおかげで若干コートの下が見えたらしい。





       *    *    *





ハヤテが泉から逃げ始めるのとほぼ同時刻。

時計塔から祭りを見下ろす二つの影があった。

「あー、めんど」

キィン…。と何かを弾く音を一人が発する。

「そー言うな。キヒヒッ」

そしてもう一人が特徴ある口癖と共に声を発する。

「つってもよー…。何で俺らが祭りにこんな事をやらなきゃいけないんだよ…」

「キヒヒ……受けといて何を言うんだかね…」

るっせ。と言って一人はさっき弾いた物を手に受け取る。

「んじゃ、伊吹。さっさと済まそうか?」

「さっきから言ってるけどそれは無理だっての、零司。キヒヒッ」

二つの影―――零司と伊吹は、第三者が聞いてもわからないような会話をしつつ、賑わう祭りの会場を見下ろす。

「んー…。ざっと見ただけで、いそうな奴は結構いるなぁ…」

遠くを見渡すように額の上に手を置き、そんな事を零司は呟く。

「キヒヒ……大体何人くらい?」

「推定、十人程度」

零司の答えに、多いなぁ…。と伊吹は呟きながら十数枚のカードをポケットから取り出す。

「零司、明かり」

「ん」

伊吹の言葉に零司は懐中電灯を取り出し、伊吹が出したカードに光を当てる。

そして光を当てたまま後ろからカードを覗く零司。

そしてすぐに顔をしかめた。

「あー…。確かに大体逆恨みとかしそうな面子がそろってるわー…」

「だろ?キヒヒッ」

伊吹のカードに書いてあったのは人。それも、白皇の人物だけであった。

写真かと思うまでの絵の下に名前、クラス、さらには出席番号までもが書かれており、何のために使うのか疑ってしまいそうになる。

まぁ、零司は伊吹がそんな疑うような事には使わないと知っているので別に何も関係ないのだが。

「んー…。こいつは見るからにそういう顔してそうだよなー」

そう言い、零司はカードの中から一枚抜き取る。

そのカードには『寺道 坂尾』と言う名前の男が書いてあった。

顔はどこにでもいそうな普通の顔。だが、人を見てきた零司や占い師ともいえる伊吹にはわかる。

この男が、今日に限ってはどんなに危険かが。

いや、零司や伊吹でも無くてもわかる。

零司と伊吹に共通する異常。それに精通する者ならわかる。いや、わかってしまう。

「ったく…。祭りの概要が概要なだけに発生しやすくなるとはねぇ…」

「そういう性質だから仕方ないんだけどな。キヒヒッ」

発生する。とカビか何かのように言ったが、発生源は人間である。故に正しくは無いのだが……何となしに伊吹も理解はしていた。

「性質イコール現象。それってめんどくさい事この上ないな…」

「だなー…」

この祭りで出る災難ともいえる現象。

それは至極簡単な事―――力の発現。

「ま、無謀な奴も多いんだろうなぁ…」

「キヒヒ……こっちからしたら傍迷惑なだけだがな…」

伊吹の辛辣な言葉に、言ってやんなよ…。と呆れる零司。だが、心の奥底では案外伊吹と同意見だったりする。

だがしかし、これはある意味仕方ない事なのではある。

この祭り―――ヒナ祭り祭りの概要。『男が女を踊りに誘う』という概要である。

この概要に則って、男が女を踊りに誘う事はこの祭りが近づいた頃には案外見られる光景である。

だが、その時に成功する光景もあれば失敗する光景もある。

成功すれば特に問題は無い。しかし、失敗したときに発生するかもしれない事が、今零司と伊吹がこんな所で愚痴ってることに繋がる。

さらに細かく言おう。

もし、申し込んで断られるとする。その時、どんな感情が湧き出るであろうか?

潔い人、諦めが早くにつく人、もしくはよくそんな事があって慣れてる人。今上げた人らには、「あぁ、やっぱり」「まぁ、しょうがないよね」「よくある事だ」などという言葉と共に落胆も何も無い、ただ純粋な諦めの感情が湧き出るだろう。

だがしかし、そうではなかったとしたら?

申し込み、断られる。

その時に表面上は諦めていても、中身で諦めていない諦めの悪い者。断られた事で、相手に逆恨みを抱く者。そんな者達が抱く感情は、一般的には「諦めが悪い」などいわれる感情だ。

だがそれは、能力発現の引き金となる。

といっても、その感情の量には個人差がある為、なる場合もあればならない場合もあるのだが。

だがもし、発現してしまったとしたら?

その者は間違いなく、断った相手に何かしらの危害を加えることになるだろう。

そして実は、それは毎年少なからず起きていたりする。

多い年もあれば少ない年もあった。だが、決してゼロは無かった。

全てが未然に防げる物ばかりだというのに、能力に関する造詣が全く無い人が多い為、被害を出してしまう。

―――だから、今年は零司と伊吹が抜擢されたのだ。

二人が二人とも、能力者である。更には、能力のことに関して造詣も深い。

それを見込まれ、昨年まで処理に走っていた六花に依頼されたのである。

それを特に断る理由も無い二人は受けた。そうしてここに今いるわけなのである。

「ま、受けた以上はちゃんとやりますかねっと…」

「最初からそれしかないけどな。キヒヒッ」

ようやく決意を固めた零司に、伊吹は持っていたカードの内の半分を零司に渡す。

「これがビンゴブックってわけか…」

「そういう事。キヒヒッ」

渡されたカードを一度ざっと見、零司は全てポケットの中に仕舞う。

「んじゃ、始めるとするか」

「だな」

その言葉と共に、二人は時計台の頂上から飛び降りた。

賑やかな祭りの裏で、殺伐とした狩りが始まる―――





       *    *    *





賑わう祭りとはまたもや別の静まった場所。白皇の校舎にて。

祭りの見える窓から、二人の人物が祭りを遠くから見ていた。

「まったく…」

その片方が祭りを見て、口を開いた。

「何がヒナ祭り祭りですか、くだらない…」

口を開いた人物―――執事服に身を包んだ、顔の造詣が整っている男はそう心底どうでもいいように呟く。

「そうですか虎鉄君。僕は意外と好きですけど」

その呟きに、一緒にいた東宮家の執事である野々原は言葉を返す。

「ところでそちらの主は?」

「お嬢ならその辺走り回ってるんじゃないですか?うちはそっちほど過保護じゃないんで」

虎鉄と呼ばれた男は、野々原の質問にもぶっきらぼうに答える。

そして答えた後すぐに真面目な雰囲気を纏い始めた。

「大体男が女を誘う祭りって何ですか。そんな不順異性交遊を後押しする祭りなんて…」

ここだけ聞けば真面目で堅物なイメージが湧くだろう。実際、野々原もそんなイメージが湧いた。

だが、次に続いた言葉で色々と台無しになった。

「さ……誘いたくとも誘う勇気のない“漢”たちはいったいどんな夢を見れば…!!」

(不順異性交遊関係ないですね)

野々原の思うとおり、不順異性交遊は関係が一切なかった。というよりも、単に誘う勇気が出なかった者達の僻みに近い感情を代弁しているだけであった。

まぁ、そんな者達がいるおかげでこの祭りは平穏を保っていられるわけであるのだが…。そんな事を、この二人が知るわけがない。

「じゃ、私はそろそろ坊ちゃんがフラれて慰めなきゃいけないのでこれで…」

「あ…。東宮の坊ちゃんは告白できるのか……すごいな」

厳密的には告白とは違う気もしてならないのだが……まぁ、誘う勇気すらない者たちからしたら告白同然なのだろう。

「それでは」と言って去っていく野々原の後姿を見ながら、虎鉄の中に後悔に似た感情がこみ上げていく。

「ああ……私にもそんな勇気があれば…」

まぁ、確かに勇気さえあれば大抵の人からはOKを貰うだろう。最も、虎鉄はその事を知るわけも無いが。

「どこかに転がってないのか!?運命!!」

そして悲しくなり、演技がかった動作で両手を振って叫ぶ。

―――ガッ!!

「キャ!」

その音と声は虎鉄が両手を振ったのとほぼ同時に聞こえてきた。

「え!?あ!!ス……スミマセン―――」

誰かに当たったと理解した虎鉄は謝りながら、その声の主を見るべく振り返り、止まった。

振り向いた先。そこにいたのは―――涙目の、可愛らしいメイドだった。

……まぁ、ハヤテなのだが。そんな事を知らない虎鉄には、とても可愛らしい美少女に見えた。

(運命が……来たぜぬるりと―――)

「おおおおおお名前はなんですかお嬢さん!!」

明らかにきょどりながら、虎鉄はハヤテに詰め寄る。

「へ?な!!名前?へ!?」

その予想外の行動に、ハヤテもパニックに陥る。

「な……名前は綾崎ハ…!!ハ…!あ、いや!!」

「綾崎ハ?ハ?何ですか!?」

「だからそのあ……あっと…!あ……あ…」

パニックの起こった頭で、自分の名前をさらさない方がいいと判断するが、代わりの名前が浮かばないハヤテ。

そして天啓のようにある名前が思いつき、碌に考えずにその名前を口にする。

「綾崎ハーマイオニーです」

「魔法使いみたいな名前ですね」

……明らかに人につける名前ではないだろう。それなのに納得する虎鉄はいったい何者なのか、疑問が残るばかりである。





       *    *    *





それと同時刻、屋台が並ぶ所にて。

「ひーまーだなーっ♪」

言葉は何気に悲しげなのに、何故か口調が軽く歌を歌っているような感じのする声が喧騒の中に消える。

その誰にも気に留めないであろう声を発したのは、一人の少女。

茶色の髪を、ポニーテールにまとめて腰まで伸ばした、一人の少女。

顔立ちも決して悪くなく、むしろ可愛い分類に入る方だった。

そんな少女は、周りが誰かしらと歩いているのに対し、一人でポニーテールをひょこひょこと揺らしながら歩いていた。

決して友達がいないわけではない。むしろ、多いともいえる少女。

普通に考えて友達と回るであろうところを、少女はわざわざ一人で回ることを選んだ。

孤独が好きなわけが無い。でも、一人でいたかった。

そんな感情があったからこそ、少女はわざわざ一人でいるのだ。

「んー…。一人でいるのはいいんだけど……やる事ないんだよね…」

まぁ、わかってたけどさー…。などとも呟きながら、少女は人ごみの中を歩いてゆく。

ふと立ち止まり、周りを見渡してみる。

女同士で歩く者達。家族と一緒にいる者達。綿菓子の文字。たこ焼きの文字。射的の文字。小さい子達が走ってる様子。

そして―――仲睦まじく二人で歩いてる男女。

「……っ」

最後に目に入った者達を見て、少女は胸の中がちくりと痛んだのを感じた。

羨ましかった。会えることが。傍にいる事が。とても羨ましくて―――とても妬ましい。

「……ふぅ…」

そんな感情を吐き出すように息を一つ吐き、空を仰ぐ。

そうして前を見たときには、普通の顔に戻っていた。

「そーいえば……ヒナちゃんのパーティがあったっけ…」

その事を思い出した少女はニヤリと笑い、駆け出した。

「さって、楽しもっと♪」

その呟きは、誰にも聞こえる事無く祭りの喧騒の中に消えていった。





       *    *    *





そしてそんな風に、何も無い人達はお祭りを満喫してる頃、ハヤテは―――

「いやしかし……お嬢さんに怪我が無くてよかった」

「あ……はぁ……そうですか?」

相変わらず何の疑いもなく女の子とだと勘違いされていた。

……まぁ、ハヤテがメイド服を着ている姿を初見の人が見れば、確実に女の子だと勘違いするだろうが。

ともかく、ハヤテは虎鉄の言ってる事を適当に流して、思考を巡らせ始める。

(いかん……まさかこの姿を人に見られるとは…。まぁ幸い女の子だと思われているのでいいけど…)

と、そこまで考えたとこでふと思うことがあった。

もし、ここで男とばれたら?

恐らく……『女装して夜な夜な学校に来る変態』と思われるだろう。

「……………」

それを想像したのか、ハヤテは冷たい汗が背中を伝う感覚を感じる。

(だめだ!!そんな勘違いを許すわけにはいかない!!天皇洲家執事として!!ここは無難に乗り切らなくては!!)

そんな決意をするハヤテ。その時に両拳を作った為、手に持っていた紙コップが潰れた。

ともかく、一刻も早くこの場を離れなければ。そう思ったハヤテは、「じゃぁ、ちょっと忙しいんで…」と言ってこの場を離れようとする。

「あ!!ま、待ってください!!」

が、そんなハヤテを虎鉄が止める。

めんどくさいながらも、ハヤテは「……何か?」と応対する。

「へ?あ〜いや…」

ハヤテが止まった事が意外だったのか、虎鉄は一瞬困惑する。が、すぐに立て直し、「きょ……今日はその、お祭りの夜なんです!!」と続ける。

「ええ、知ってますよ」

何を今更、といった黒い感情が湧きあがってきたが、必死に堪えそう返答する。

「あっちではみんなが盆踊り大会みたいに楽しく踊ってます」

「みたいですね…」

横を見ると、虎鉄の言葉通りいろいろな人がワイワイ踊っていた。

「で……ですからその……私と一緒に踊ってくれませんか?」

絶対に嫌です。言葉を聞いた瞬間、そんな言葉がハヤテの喉から危うく出かかった。

とても面と向かって言える言葉ではないので、必死に我慢したようだが。

「もう行かなくてはならないんで、踊るなら他の人とどうぞ」

だから、ハヤテはそんな風に言って、背を向けて逃げようとする。

「ああ!!そんなに冷たくあしらわなくても!!だがそれがいい!!」

「どっちなんですか?」

あれ?この人変態?などと思うハヤテだが、実質的に変態なのは男なのにメイド服を着てるハヤテではないのだろうか。

「私は本気なんです!!」

「わっ!!」

そしてそこで、背後から虎鉄に掴まれるハヤテ。

そうして無理矢理に向き合うように体を回転させられ、

「私はあなたの事が好きなんです!!」

「………………へ?」

至近距離で、衝撃的な言葉を言われた。

その言葉を理解できなかった、いや理解しようとしなかったハヤテの頭は一瞬フリーズした。

だが、すぐに再起動し、先ほど言われた言葉の意味を普通に理解する。

「ちょ!!何言ってんですか!!冗談はやめてくださいよ!!」

「冗談でこんな事言うわけ無いでしょ!!本気なんです!!私は!!」

叫んで冗談だと主張するハヤテと、同じく叫んで冗談ではないと主張する虎鉄。

傍から見れば、告白を冗談だと思うメイドと冗談ではなく本気だという執事の一場面に見えることだろう。

……まぁ、実際的にはそれからはかなり遠いのだが。

「そ……そんな……困ります。そ……そんな事急に言われたって…」

そして虎鉄の「本気」という部分に反応したのか、顔を赤くして虎鉄から背けるハヤテ。

「僕は…」

そして顔を背けた先でそう言った瞬間、またもやハヤテは固まった。

顔を背けたその先、そこに明らかにわくわくした顔の泉が立っていたからだ。

先ほどの赤くなった顔は一瞬にして青ざめる。

「瀬川さん!!」

「ん?あれ?お嬢?」

そして盛大に叫んで驚くハヤテと、意外な人を見つけたような声を出す虎鉄。

「あはははー♪ゴメーン邪魔して♪」

それを楽しそうに、それでいて全く謝る気のない声で返す泉。

「ま、私の事は気にせず続きを…」

そしてそのまま、泉は場を元に戻そうとする発言をする。

それを受け虎鉄は「では…」とハヤテを引き寄せ「では、じゃなくて―――!!」ハヤテはそれに叫んで対抗する。

「いやー、でもハヤ太君にそんな趣味があったなんてね〜」

「ち!!違うんですこれは!!」

泉のふと呟いた言葉に、ハヤテは心外だ、とでも言うようにすぐさま否定する。

「ん?ハヤ太君?」

そして泉とハヤテの少しの会話にあった、少しの齟齬に疑問の声を出す虎鉄。

「なんですかお嬢。そのハヤ太君って…。この人はハーマイオニーさんという女の子で…」

「男の子だよ♪」

「………は?」

泉の言った事が、いまいち理解できない虎鉄。

「だからハヤ太君は男の子なんだって♪綾崎ハヤテ君。私のクラスメートで、理事長さんの執事さん♪」

呆けている虎鉄をよそに、ハヤテをペラペラと紹介していく泉。その説明を聞きながらハヤテは「あ、僕の本名知ってたんだ…」などと呟いていた。

「はは…。何、言ってんですか?お嬢…」

その説明を聞いても、納得できない様子の虎鉄。

「え?男の子?こんなに可愛いのに?え?」

「だったら確かめてみればいいじゃない♪」

泉の言葉がハヤテの耳に聞こえると同時―――メイド服の胸元の部分を思い切り虎鉄によって引っ張られた。

「!!」

その行動は流石に同性からでも恥ずかしかったようで、ハヤテの顔が一瞬で赤面へと変わる。

「ななな何をするんですか!!何を!!」

そしてすぐに虎鉄の手を離させ、胸を隠すように虎鉄に背を向けるように体を向きを変える。

……というか、別に男なのだから、胸を隠すようにする動作はいらないのではないだろうか。

「大体勝手に勘違いしたのはそっちなんですから…!!僕は…!!」

「裏切ったな…」

赤い顔で糾弾していると、憎悪の篭った声がハヤテの耳に届いた。

「え?」

「お前もまた……今までの女みたいに……私を裏切ったな…」

ポツポツと、聞こえる呟きは、ハヤテに嫌な予感を彷彿とさせるには十分だった。

「ウチの虎鉄君は全然モテないんだよ♪超強いけど思い込み激しいし、キレるとヤクザだし、鉄道オタクで時刻表ばっか読んでるから」

そこで更に、泉からいらないであろう情報の提供。その情報を聞いたことによって、更にハヤテの嫌な予感は加速した。

そしてその予感は、的中した。

「お前みたいな奴がいるから…」

「!!」

ボソッと聞こえた声に、ハヤテの体の前面を何かが撫で通った。

「戦争が無くならないんだ―――!!」

そして勢いよく振り下ろされる竹刀。

「知らないですよそんなのー!!」

それを叫びつつ、大きくバックステップして避けるハヤテ。

そして着地と同時に、虎鉄から背を向け逃げ出した。





       *    *    *





「遅いですわね…」

ハヤテが虎鉄から逃げ出した若干後の時間の、アテネの呟き。

そんな事を呟いたアテネはというと、一人でいた。

いや、一人でいた。という言い方には語弊がある。

正確には、周りにはSPが数人いる。そこを踏まえて考えると一人ではないのだが……アテネの気分的には、一人でいるのと同じだった。

ともかく、アテネは屋台が並ぶ場所から少し離れたところにいた。

先程、六花が「ちょっと色々と買ってきますねー」と言ってアテネの傍を離れてから、数分が経過していた。

何をどれくらい買ってくるのか一言も言ってなかったので、六花が色々買ってきてるので、当分戻ってこないのはわかっているアテネだった。

が、やはり変なところで茶目っ気を出す六花なので、やはりかなりの量を買ってくるのではないか。そう思わずにはいられなかった。

……事実、かなりの食品を買ってくる事なんて日常茶飯事レベルである。

「はぁ…」

導き出される解答に、物憂げな溜息をつくアテネ。

その溜息の理由としては、先程言った六花の悪戯に似た茶目っ気に加え、もう一つ。

ハヤテがいない事である。

(全くハヤテは…)

内心でハヤテを責めるが、それでハヤテが来てくれる訳でもない。

「ふぅ…」

また一つ、溜息が吐き出される。

そしてそこで、アテネの目線は屋台の並ぶ場所へと移る。

三月三日。白皇学院ではヒナ祭り祭りという行事が開催される、この日。

アテネは、密かに楽しみにしていた。

その理由はとっても単純だった。

(……三人で一緒に回りたかったですわ)

そう。ただ単に、六花、ハヤテ、そしてアテネ自身。その三人で回りたかったのである。

祭りということ自体に、あまり興味がアテネには無かった。

元々、行くような用事も無ければ、行く目的も無い。そんな事もあり、アテネは祭りに行く事は今まで無かった。

だが、今年は何故か無性に行きたいと思ったのだ。

理由は完全にはわからない。だが、一つ上げるなら。

ハヤテ、そして六花がいるからだろう。

片や、思いを寄せてる異性。片や、立場や肩書きを無視して接してくれる、姉のような存在。

年の晦日と言う時期に再び出会ったハヤテ。そして、去年の五月にある事件を通して出会った六花。

この二人と、幼稚な考えかもしれないが、仲を深めたい―――そんな事を考えたのではないだろうか。

そう思うと、色々と辻褄が合う。

「……ふふっ」

思わず笑いが込み上げる。

(随分と依存に近い形ですわね…)

もしくは毒されているのか。それでも、不思議と嫌な感じはしなかった。

「全くハヤテと六花は…」

どこか嬉しそうに、アテネは呟く。勿論その呟きには、非難の色は微塵も見当たらなかった。

そしてどこか嬉しそうな雰囲気を回りにアテネは出し始める。

『ハヤテ?』

「っ!」

だから、どこからか声が聞こえたときには大層驚いた。

『お前……綾崎ハヤテの知り合いか?』

「……ハヤテは私の執事ですわ」

どこからか聞こえる声に、アテネは先程の雰囲気を消し飛ばし、警戒しながら答える。

「ならば来い!!」

「えっ!?」

そして、一瞬聞こえた怒声に似た声。

それが耳元で聞こえたかと思うと、浮遊感がアテネを包む。

それが、自分がいきなり男に連れ去られてるとわかるのにだいぶ時間がかかった。

「綾崎ハヤテに伝えろ!!執事だったら主を迎えに来いと!!」

耳に近い場所で聞こえる怒鳴り声と、遠くから聞こえる『お嬢様―!!』という複数の太い声が、とてもアテネには印象的だった。





「……さて、弁明があるならどうぞ?」

そしてその数分後。アテネと共にいたSP達は、全員が全員共正座をさせられていた。

そうさせられたのは目の前のメイド、六花のせいである。

アテネが連れ去られたその数十秒後に戻ってきたが、SPしかいない現状を見た途端、「ちょっとそこに全員正座しなさい」と言って満面の笑みになった次第であった。

SP達はその笑顔に恐怖を感じ、正座をして……今に至るわけである。

勿論、まだ六花はニコニコと花の咲いたような笑顔である。……かえってそれがSP達の恐怖を加速させまくっているのであるが。

「もう一度聞きましょう。弁明は?」

『……ございません』

そして六花の催促に、SPは一斉に声を揃えて斉唱。

その言葉にさらに六花の放つ怒りのオーラが増した。

「……死んだかも」

ボソッと誰かが呟いた言葉。それがSP達全員の心の代弁である事は、言うまでも無いだろう。

だが、その呟きをしたと同時、六花から発せられていた怒りのオーラが萎んでいった。

その事に、SP全員は首を心の中で傾げる。

そんなSP達を前に六花は大きく溜息をつき、「……まぁ、執事相手ですしねー…」などとSP達の心を抉る発言をした。

「まぁ、連れ去れた事に関してはもういいです」

「……いいのですか?」

「えぇ。給料カットで許します」

給料カットという単語に、うめき声を出すSPが大半だったが、六花はそれを無視し、携帯を取り出した。

そしておもむろに電話をかけ始めた。

「もしもし、アテネ様?今どこにいるんですか?」

『電話――!!?』





「……どこと言われても…」

さらわれたアテネは、電話に出るなり困った声でそう言った。

その言葉に『……まぁ、確かにそうですね…』という六花の声が聞こえる。

『では、質問を変えましょう。どんな目的で連れ去られたんですか?』

「連れ去られたにしては冷静すぎじゃありませんの?」

連れ去られた。そんな重い事実を軽い事の様に言う六花をアテネは糾弾するも『まぁ、学園内にいて無事な事はわかってますし…』などと従者として、明らかに問題な発言をしていた。

だが、アテネもそんな六花の態度には慣れているものなので、普通にスルーし、アテネとは少し離れた所で立っている虎鉄に話しかけた。

「一つ聞きますけど……目的は何ですの?」

突然アテネに話しかけられた虎鉄は、半分だけ顔を向け、質問に答える。

「安心しろ。お前は綾崎をおびき出す為のエサに過ぎん」

「ハヤテを?」

虎鉄の口からハヤテの名が出たとほぼ同時、アテネの目が睨むように細められた。

「……ハヤテを呼び出してどうするつもりですの?」

細めた目のまま、アテネは背を向けたままの虎鉄に向け、再度問いかける。

無論、その見つめる目には『もし』の場合の殺気を込め。





「私は……あいつの事が好きだ…」





「……………は?」

だが、虎鉄の口から語られた言葉は、アテネの予想を遥かに、それで斜め上を行っていた。

そして霧散する殺気と、口から出た気の抜けた声。今のアテネをハヤテか六花が見たのなら、『……何だかバカっぽいですよ?』と言うであろう程の顔になっていることだろう。

『…………アテネ様。狙撃班を呼んだほうがいいのでは?』

「………頼めるかしら?」

『はい。脅して行動させたなら、五分後にはザクロが散ってますよ』

「なら、頼みますわ」

「待て待て待て!?何、着々と進めてるんだ?!」

電話越しの六花の提案から始まった、虎鉄の狙撃計画を大声で阻害されたアテネは、明らかに不機嫌なオーラを出す。

「……危険思考の人物をどうにかしようと思っただけですわよ?」

「な!!馬鹿にするな!!」

アテネと六花は至って真面目なのだが、虎鉄にはそれが馬鹿にしてるように思えたようで、声を荒げて反論する。

それを可愛そうな者を見るアテネ。そして電話越しなので姿は見えないが、恐らく呆れている六花。

そんな二人を放っておいて、虎鉄はぎゅっと目を瞑り、「私は本気で…!本気であいつの事が…!」などと自分の世界へと入る。

そんな虎鉄の様子を見て「……ハヤテは出来る限り呼ばなくていいですわ」とアテネは極めて冷徹に告げ、電話を切った。





「……相変わらず不幸ですね〜…」

ツー、ツー、ツー。と音を鳴らす電話を耳から離しながら、そう六花は呟く。

電話越しに聞こえてきた虎鉄の声音は余りにも本気だった。

そこからハヤテとは別行動をとった後の行動を大体推測し、尚且つ今のハヤテの状況を鑑みて、それらを合わせれば……まぁ、今の虎鉄みたいな人が出るのは簡単に推測できよう。……ただし、会話と並行してその状況を推測できる者は少数だろうが。

とにかく、アテネが無事だという事はわかった。なので、六花の役目はある意味終わったといえる。だからだろうか。

「しかし、お嬢様が無事で何よりだ」

「いやー、よかったよかった」

……SP達を見ていると六花の腹の底から怒りがふつふつと湧いてくるのは。

そしてその怒りはあっという間に六花の許容量を超えた。

「……おい」

『っ!!』

六花らしからぬ、ドスの効いた声に今の今まで話していたSP達は一瞬で背筋を伸ばし、固まった。

「てめえら……そこまで仕事やめたいなら、今すぐやめさせてやるよ」

『お嬢様の居場所を確認してまいります!!』

脅迫……に近いであろう、六花の言葉にSP全員はまさに脱兎のごとく駆け出した。

……というよりも、六花から逃げ出した。と言った方が正しいだろう。

それほど、今言った六花の言葉には現実味があった。

「……ふぅ」

SP達が全員が去った後、六花は大きく溜息をついた。

(久々に学生時代の素を出しましたね〜…)

ドスの効いた声に、荒い言葉遣い。これらの要素から、学生時代の六花がどんな存在だったかは容易に想像がつくだろう。

だが、それはあくまで『学生時代』の素である。今の素は丁寧な言葉遣いに、柔らかな声である。

最も、そうなったのはここ一年以内なのだが。

「……ま、知ってるのは少数人が好ましいんですけどね♪」

誰に言うでもなく呟き、六花はその場を歩き出していった。

……最初から両手に持っていたビニール袋を両手で持ちながら。





       *    *    *





「あいたたたた…」

ガラッ…。と石ころが急斜面を転がる音が響く中、ハヤテの声も響く。

「まずったな……まさか崖から落ちるなんて…」

ついさっき、自分が転がり落ちていた、背後の崖を見つめながらハヤテは自分の失態を嘆く。

といっても、祭りの中心から離れ、明かりが殆ど無いこの場所。かつ、必死に逃げ惑っていると来れば、いきなり崖から落ちる事などなんら不思議ではないのであるが。

「でもどうにかあの人を撒くことが出来たし……これで…」

地面に手をつき、体勢を整えようとする。

「よか…」

そしてそこまで言ったところでハヤテは固まった。

ギギ…。と油の無くなって来た機械のような音を出すような動作で自分の姿を見る。

まず、服。明らかに先程まで着させられていたメイド服のロングスカートではなく、ミニスカートに変わっていた。

さらに下を向いた際、びよん。と頭の辺りから耳が落ちてきた。耳と言っても、ウサミミだが。

そして、それらを目に収めたハヤテは。

「うわああ!!な、な!!なんだこれ!?」

どう見たって錯乱していた。

「更に恥ずかしい服になって…!!なってますけど…!!」

そしてその錯乱はどんどんエスカレートしていく。周りに人一人いないことが、幸いであろう。

(ど、どうしよう…!服を隠すマントも無くなっちゃったし……こんなミニスカなんて…)

内心で慌て、顔を真っ赤にして共同不審に周りを見渡す。

勿論、今のハヤテが落ち着ける要素なんてあるわけも無い。いや、もしあったとしても無駄であろう。

「どうすれば…」

そして口を出た絶望に似た言葉。ここからそのまま落ちていく。そうハヤテですら思った。

「ハァ、ハァ、ハァ」

「………………」

ハヤテの目の前で息を荒げている、妙な人形さえなければ。

それを見た瞬間、ドゴゥ!!という音が辺りを揺らした。

「な!!何なんですか!!あなたはいったい誰ですか!?」

一瞬で沈んだ気持ちが吹き飛び、妙な人形から距離をとるハヤテ。

「この時代の奴は踵落としを決めてから人の名前を聞くのか?」

そして、言う通りにハヤテに踵落としを決められ、地面にめり込んでいる人形。

因みに。踵落としをした際、ハヤテは無意識に能力を使っていたりする。そのおかげか、人形の地面へのめりこみ具合は普通を遥かに超えて、突き刺さってるといえるほどのめり込み具合へと変貌してたりする。

ともかく、そんなめり込み具合を無視し、人形はいとも簡単に地面から抜け出てハヤテの前に浮く。

「……何者なんですか?」

「知らぬのなら教えてやろう」

警戒しながら問いかけるハヤテに、人形は胸を張るように身をそらし、

「辛抱たまらず出てきてしもうたがワシこそが!!お前に散々女装させているヒナ人形の呪い!!人形師のぜぺっどじゃ!!」

自分を語った。

「なるほど」そしてその言葉にハヤテは一つ頷き「あなたを絞め殺せばこの馬鹿な呪いも解けると」視認出来ないスピードでぜぺっどを掴んだ。

「ぬぉおお!!待て待て―――!!」

みしみしと自分の体が鳴るのを聞き、必死にぜぺっどはハヤテを静止しようと声を荒げるが、ハヤテは止まる事などなく、さらに掴む力を強くしていく。勿論、激情が入っているので、風がハヤテの周りを吹いていたりする。

このまま絞め殺せば終わる。だが、そう上手く事態が回ってくれないのがハヤテである。

『ピロロロローン♪』

この場の雰囲気に似つかわしくない音が、ハヤテの腰辺りで鳴り響く。

その音からして電話であり、無視するわけにもいかないハヤテ。

「ほら!!電話じゃ。電話が鳴っておるぞ!!」という必死すぎるぜぺっどの悲鳴を聞きながら、ハヤテは一つ「ちっ」と舌打ちをして、通話ボタンを押した。

「はい。もしもし」

『あ、ハヤテ君ですか?』

「六花さん?」

そしてスピーカーから聞こえてきたのは、六花の声。

何かあったのかな?と呑気に思ってるハヤテ。

そんなハヤテに、六花は上機嫌な風に爆弾を投下した。

『アテネ様がさらわれちゃいました♪』

「えぇええええええええええええええええええええええ!!?」





『えぇええええええええええええええええええええええ!!?』

「っさ…!」

電話越しにハウリングを起こしそうな声量に、思わず六花は電話を落としかけた。

(驚きすぎじゃないんですかね…?)

たかが誘拐された如きで…。と一時呆れた六花。だが、(……そういえば、普通は誘拐って大事件でしたね)とすぐに考えを改める。

それでも、ハヤテの叫びの大きさは普通を遥かに超えていたが。

『もしもし!?六花さん!?もしもーし!?』

と、そんな事を考えていたらハヤテが電話越しに自分のことを叫んでいたので、すぐに「いや、いますけど。どうかしたんですか?」と問いかける。

『それでお嬢様はどこに捕らえられてるんですか!?』

「慌ててた矢先にそれを聞くことは流石に驚きです」

立ち直るにしても、流石に速すぎる。六花はそう思い、同時に戦慄した。

(……ま、ハヤテ君ですしね〜)

だが、結局そんな理由で納得するのだった。





『えーっと…。色々な情報源を駆使してわかった結果…』

色々な情報源ってなんですか。とツッコミたくなるハヤテだったが、必死に堪える。どうせ聞いても答えが返ってこないことはハヤテにはわかっている。

『ちょうどお祭りの会場のど真ん中をまっすぐ抜けるのが最短かと』

「わかりました!!」

経路を聞き、ハヤテは決意する。

「安心してください!!お嬢様は必ず僕が助け出してみせます!!」

アテネを必ず助け出すと。

「その格好でか?」 『その格好でですか?』

「!!」

が、電話越しと人形の声を聞いて、思い出した。自分が今、どんな格好をしてるかを。

「さっきの蹴り超痛かったしー。もっと恥ずかしい格好もいいかもな〜。人目を避けて回り道をした方がいいんじゃねーの?」

私怨と支援をごちゃ混ぜにしたようなぜぺっどの発言に、ハヤテは汗がにじみ出るのがわかった。

確かに、今の自分の服装を鑑みれば、遠回りした方が良い事は一目瞭然だ。

このまま突撃してしまえば、この女装姿を見られることは間違いない。

だけど―――

「ぜぺっどさん……これは呪いではなく天罰なんです」

ハヤテは、それくらいで道を違えようとだけはしない。

ぎゅぅ。と拳を握り締め「最近の僕は自分の事ばかり…!そのせいでお嬢様が危険な目に合ったんです…!」搾り出すように、呟く。

「だから!!一番恥ずかしいのは僕の格好ではなく、僕の心!!例えメイド服を着ていても……心は執事!!」

叫び、前を見据える。

そして、駆け出そうと足を踏み出し―――

『まぁ、そのまま出て行ったら私は怒りますけど』

たところで、石像の様にハヤテの体は固まった。

そして間髪いれず、いまだ通話の続いていた電話から六花の声が続く。

『ひとまず冷静になりなさい。そして無謀に突っ込むのではなく、安全策の周り道を通ってアテネ様を助けに行って下さい。一々やる事なす事で、面倒ごとを増やさないで下さいよ。ところで聞いてるんですか?』

「……………ハイ、オッシャルトオリデス」

勢いを挫かれただけでなく、小言まで貰ってしまったハヤテは、最早死んだ目で六花の言葉を聞いていた。

だがやはりと言うべきか、勢いを挫かれても、ハヤテは反論した。

「でも六花さん…。早く助けないとお嬢様が…!!」

『心配要りませんよ』

ハヤテの心配をよそに、六花の声はとても静かだった。

『手配はしてありますから』

「手配…?」

『えぇ。だから、ハヤテは誰にもその姿を見られないように移動を開始してください』

その言葉を言うや否や、電話は切られた。

「…?」

六花の言う「手配」とはなんなのかわからないまま、ハヤテは六花の言う通り、回り道をしていくのだった。





       *    *    *





場所は変わり、ヒナギクの誕生日パーティ会場。

ヒナギクは、先程まで歌を歌わされていたが、今さっき歌を押し付けて逃げてきていた。

そして今は、パーティ会場の隅っこで取ってきた飲み物を飲んでいた。

「ふぅ…」

溜息と共に、視線をさっきまで自分の立っていたステージに向ける。そこには誰か別の人が立って歌っており、最早カラオケ大会と化していた。

「……疲れた…」

大勢の人の前に立つことは慣れているヒナギクだったが、流石に歌までを披露するとなると疲れるのであろう。

(そういえば……この後ハヤテ君と…)

時計塔の上で果し合いをするんだっけ。と思い至る。

時間はまだ早い。だが、さっさとついておこう。そう思い、隅っこから進もうとした。



「やっはー!」



いきなり目の前に、見覚えのある少女が現れる前までは。

「……あなたも来てたのね」

「ちょっと待って。何でそんな疲れた顔するの?傷つくんだけど!?」

現れるなり、騒ぎ立てる少女。そんな少女の相手をする余裕など、今のヒナギクにはありはしないのだ。

だが、そんな事を目の前の少女が知るわけも無い。

「むー。まぁ、いいけど」

「あっそ…。ところで、あなたがこんな所に来るなんて珍しいわね」

「まぁねー。今年は気まぐれなのですよ」

気紛れって…。溜息と共に呆れを口にすると、少女は満面の笑みに何故かなった。

「あはははっ」

「笑い事?」

「いぇーっす」

やはりこの少女は疲れる…。そう判断したヒナギクは、「ごめん。これから行くとこあるから」と言ってこの場を離れようとする。

「あ、そうなの?」と少女も特に引き止めようとはしなかった。

「えぇ。だからじゃあね」

「うん、バイバーイ」

手を振り返すのに手を振り返し、出口に目を向けた。その瞬間。





「桂ヒナギクはどこだぁ!!!!!」





会場全体に怒声が響き渡った。

その声に、カラオケで騒いでいた連中も騒ぐのをやめ、入り口を一斉に振り返る。

そんな好機の視線にさらされた、入り口に立っている少年は血走った目を回りに走らせ、ヒナギクを見つけるとヒナギクにその視線を固定する。

そしてヒナギクに向かって、走り出した。

「え?ちょっと…」

いきなり走ってこられたヒナギクはその行動に戸惑い、周りに目を移す。

だが、周りの人も何が起こってるのかわからない様子であった。

そしてそのまま少年とヒナギクの距離は詰まって行き―――

突如、ヒナギクの横から風が吹いた。

その感覚を感じ取ったとほぼ同時、しっぽのような髪が見え、少年に突っ込んでいった。

そしてそれらの情報を脳が処理した時には―――少年は、先程ヒナギクに話しかけていた少女によって、地に付していた。

「んー…っ。ちょっと歯ごたえ無さすぎかなー?」

少年のそばで、伸びをしながらそんな事を言う少女。

そんな少女に、会場の全員は目が釘付けになっていた。

その視線を感じたのか、少女は会場を見渡し「……じゃあねっ!!」と言って、会場から出て行った。

『………………』

その行動に、会場内の人達が固まっていた。

そして、再び行動を開始するまで、この後数十分が必要だったとか。





       *    *    *





「お嬢様!!」

バァン!と乱暴に扉が開かれ、ハヤテの姿が扉から現れる。

この時、ハヤテは虎鉄とアテネの二人しかいないと思っていた。

が、事実は色々と違った。

「遅かったですわね、ハヤテ…」

若干呆れた表情のアテネ。

「よーっ」

そして予想だにしていなかった者の一人、軽く手を挙げる零司。

「キヒヒッ」

同じく予想だにしていなかった者の一人、零司の横で笑う伊吹。

「…………」

そして入ってきたハヤテを見ながら何かを考えてる表情の虎鉄。

「……なんですかこの状況」

「……私にもわかりませんわ」

呆れた表情のまま、アテネは立ち上がってハヤテの横に並ぶ。

そして、それを見て虎鉄はハヤテの前に立った。

「……色々とすまなかった、綾崎」

「いえ、別にいいんですが…」

何があったんです?と言う表情で訴えるが、誰も答えてはくれなかった。

勿論虎鉄も、そしてその後ろで笑っている零司と伊吹も。

(……まぁ……いいか)

アテネが無事ならばそれでいい。結局はそう思うハヤテだった。

「そして綾崎よ」がしっと虎鉄はハヤテの両肩を掴み「同性婚が認められているオランダに移住して、私と結婚してくれ綾崎ぃいいいい!!」そんな事を言いのけた。

「……は?」

そして結婚を申し込まれたハヤテは、ポカンとした声を出すしか出来なかった。

最早予想の範疇を超えていた。

だが、それを理解する前に、

「「アホかっ!!」」

先程まで、後ろで傍観していた二人が虎鉄に蹴りを入れていた。

ゴスン!!と蹴りでは出ないような音を上げて虎鉄はその場に沈んだ。

「……だから何がなにやら」

「ひとまずお前がこいつに男でもいいから。ってことで好かれたんだろ」

「……え」

何やら衝撃の内容を言われた気がするが、そんな事は無かったかのように零司はハヤテの姿を興味深そうに見る。

「ふーん…?女装趣味にでも目覚めたか?」

「目覚めてません!!」

「ちっ」

「何故舌打ちされた!?」

「気にすんな」

「いやいやいや」

その後もハヤテが話を聞こうとすると、零司が話をそらすので、やがてハヤテも諦めた。

「んで?呪いの根源は?」

「えっと…」一瞬躊躇い「この人形……です」自分の傍に浮いているぜぺっどを指した。

「ほー…。至って普通の人形なのな…」

「呪いに関しちゃ普通じゃないけどな。キヒヒッ」

まぁ、そうだな。と零司は呟き、背中に手を回した。

(……なんだろう、嫌な予感しかしない…)

そしてその予感は当たった。

零司が背中に回した手を前に出したとき、握られていたのは―――

「……何故、刀…」

「お祓いの要素を含んでる刀だし」

へ?と疑問を口に出す暇も無く、ピュン。と風切り音がハヤテの耳のそばでした。

直後、ボン。と存外軽い音を立て、ハヤテの服がいつもの執事服に戻った。

「……さて、ハヤテの服も戻った事ですし、帰りますわよ」

「え?ちょ、お嬢様?」

ハヤテの服が戻るなり、踵を返したアテネ。それを追うハヤテ。

「……ま、そりゃああなるわな」

「キヒヒ……だな」

その様子を見て、つい苦笑交じりに呟く二人だった。





       *    *    *





「疲れた…」

その言葉を呟き、ハヤテはベッドに吸い込まれるように身を投げた。

(今日はもう……寝てしまおう…)

ベッドに身を沈めるなり、襲ってきた睡魔に身を任せようとハヤテは目を閉じる。

カチ、カチ、カチ。時計の音だけが、部屋中に響く。

(なんか……忘れてる事が…)

まどろみの中、ハヤテは急にそんな事を思い始めた。

カチカチカチ。時計の音が妙にハヤテの頭の中に響き―――、

(―――ある!!)

その何かを思い出したハヤテは、急いで支度をして、屋敷を飛び出していったのだった。





そして白皇。

(待ち合わせは九時…)

ゴウンゴウンと大きな音を鳴らしながらエレベーターは生徒会室へと上がっていく。

その道すがら、ハヤテはそんな事を考えていた。

勿論、色々な事があって忘れていたのではある。

だから、ハヤテの中には多分いないだろう。そう思っていた。

(もう十一時半だし…)

そう思いながら、ハヤテはドアノブを回す。

ドアノブは抵抗などせず、回った。

(開いてる…)

猛烈に嫌な予感がし、ハヤテはゆっくりとドアを開けつつ「ひ、ヒナギクさーん…?」と呼びかける。

「…………」

そして、その扉の先の光景に、思わず黙ってしまった。

ソファーに横たわり、眠るヒナギク。

何となく、その光景に見入ってしまった。

「……ん?」

そうしてると、気配を察知したのか、ヒナギクが目を開けた。

「あ…。ヒナギクさん…」

「ハヤテ君…」






にぎやかなお祭りが終わり…



静まりかえった夜…



誰もいない校舎の片隅で…



二人だけの誕生日が、始まる。





――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――



よっしゃ皆さんあけましておめでとー!

零司「時間的に微妙だな!!」

ハヤテ「本当ですね!?」

伊吹「キヒヒ……まぁ、いいんじゃね?」

うん、気にするな。さて、今回色々と語っていきたいんだが……最後はグッダグダね。

ハヤテ「……ええ」

零司「……ああ」

伊吹「……だな」

……まぁ、気にするな!苦情があったらいって下さい!

では、今回はここまでにします!!

皆さん!良いお年を!!

全員『良いお年をー!!』
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Re: 誰がため、何のため 12/31更新 ( No.70 )
日時: 2013/01/27 23:05
名前: コサッキー

ペース落ちてきたなー…。

ハヤテ「物凄く今更感凄い発言ですね?」

まぁねー…。

零司「まぁ、色々あるんだろうが……どうせ今回の話が原因な部分もあるだろ?」

ギクリ。

伊吹「キヒヒ…。図星かよ」

……まぁ、中々に難しいよね。

というわけで、気にせずに。

よかったら、どうぞ♪





――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――





突然だが、少し時間を戻した所から話そうか。

ハヤテが来る前。時間にして約一時間半ほど前の事だ。

時刻は十時。約束した九時からは、もう一時間が経っていた。

カチコチと時計が刻む針の音が妙に響き渡る中、一人の少女が時計を親の仇とでも言うように睨んでいた。

「ていうか……なんで来ないのよ!」

そう時計に向かって呟いているが、時計からは針を刻む音だけが返ってくるのみ。

それにむかついた……いや、誰からも答えが返ってこないのと、ハヤテが来ない八つ辺りも込め、ヒナギクは手の中の時計に力を入れる。

その力でギリギリと今にも壊れそうな音を時計は発すが、ヒナギクはそれに構わずに鬱憤を言葉にして時計にぶつける。

「十分前行動って学校で習わなかったの?九時に約束したら八時五十分には来るのが常識でしょ!?ねぇ!!聞いてる!?」

そんな事を言っても、答えは誰にも返ってこない。

時計は(そんな事言われても…)と困ってそうな感じはするが。

そもそもだが、ハヤテはそれを守ろうとする奴だ。

が、意気込んで行動しても、不幸で結果が伴わない事は多々あったはずである。

今回もそんなケースだったんだろうな。

それにすぐさま気づけない辺り、ヒナギクも頭に血が上りきってるな。

「も―――!!来るならさっさと来なさいよバカ――――――!!」

その証拠に、白皇中に響き渡りそうな声量で叫んでいた。

これからもわかるように、この時でヒナギクの怒りはピークに達していた。

―――だが、その一時間後。

「…………………」

そこにはちょっと寂しくなってきたヒナギクが、ソファーに軽く横になっていた。

その表情は先程までの怒りは感じられなく、捨てられた子犬のような感情が見えた。

「なによ……もぉ…。まさか、本当に来ないつもり…?」

いや、『ような』じゃなくて、そのものだな。

「はー、失敗したな〜。なんせ、お互いケータイの番号も知らないし…。てか、ハヤテ君ってケータイ持ってるのかしら?」

気を紛らわすためか、ヒナギクはわざと明るい声を大声で話す。

だが、その声は空しく部屋に響くだけだった。

その現状に落胆ようで、空元気も無くなった様子のヒナギク。

「…………もしかしたら、私嫌われてるのかしら…」

そして、その言葉はポツリと呟かれた。

ヒナギクにしては、珍しいであろう弱気の言葉。

それほどまで、今の状況はヒナギクに堪えているのだろうと容易に想像できる。

……まぁ、暗い部屋の中に一人だけでいたら普通はそうなるな。別段ヒナギクが一人に強いわけでも無さそうだし。というか、かえって弱そうなイメージがある。

と、そこでヒナギクは倒していた体を起こし、クッションを抱きしめた。

その抱きしめている表情から察するに、(嫌われるのは当然か…)みたいな思考回路になっている事は想像に難くない。

確かにハヤテに好かれるような事をした覚えは無いだろうし、ハヤテには女の子らしいところを見せた覚えも無いだろう。というか、あまり見つけられない気がする。

「……何故かしら、今誰かに物凄く殺意が湧いたんだけど…」

そんな事を呟いて、ヒナギクは前に掴んでいた時計を再び仇のごとく睨み始めた。

……八つ当たりされてる時計には悪いが、ヒナギク鋭いな…。

「何よ…」

ぎゅっとクッションを抱きしめるヒナギク。

「結局私のことなんてほったらかしじゃない…!」

恨みの篭った呪詛を吐き、ヒナギクはそれからすぐにウトウトと舟を漕ぎ始めた。

「どーせ私のことなんて…………忘れて…」

それだけを呟くと、今度こそヒナギクは静かに寝息を立て始めた。





       第三十三話「近いからこそわからない」





「あの……ヒナギク……さん?」

暗い部屋の中、寝てるヒナギクの前でハヤテは恐る恐ると言った様子で声をかける。

その声で起きたのか、ヒナギクはゆっくりと目を開き、ハヤテを視界に入れる。

「……ハヤテ君?」

若干まだ頭が寝てるのか、その声は確信が持てないように聞こえる。

が、「へ?あれ?」などと声を上げつつ回りを見渡している内に、目が覚めたようで表情は見る見るうちに驚きの表情へと変わっていく。

「私いつの間にか寝ちゃって…!?ていうか……今は…」

混乱しつつも、机の上に置いてある時計を目に近づけ、「十一時半?」と呟いた。

瞬間、部屋が光に包まれた。

まぁ、勿論そんな事はない。ただ、速すぎて見えなかっただけだ。

その証拠に、今まで座っていたヒナギクは木刀・正宗を持ってハヤテに振り下ろした様だし、ハヤテは正宗を白刃取りしていた。

明らかに二人とも普段以上の速さだったが、あんま不思議ではないから怖い。

「九時に来るって約束じゃなかったかしら?」

「すみませんすみません!!」

正宗を挟んで、ヒナギクは糾弾し、ハヤテはひたすらに謝る。

「まぁ要するに宮本武蔵気分ってわけね?」

「へ?」

ヒナギクの言った意味不明な言葉に、ハヤテは素っ頓狂な声を出す。

「わざと遅れて敵の油断を誘うっていう…」

いや、それをハヤテがやる必要は無いんじゃ…?と思ったが、ヒナギクは勘違いをしている事を思い出し、納得する。

「いや、そうじゃなくてですね、えーとどう言ったらいいやらなんですが…」

事情があった為、どう言ったらいいか言葉をハヤテは必死に探している様子。

そして一つ汗が頬を伝い落ち、「ちょっと素で忘れていたというか…」最悪の答えを口にした。

ピキッ。そんな音がヒナギクから実際に聞こえた。

「あれ?あの……ヒナギク……さん?」

笑顔を固めて、ハヤテはヒナギクに声を投げかけるが、その返答は帰ってくる事はなかった。

というか、ハヤテが声を投げかけてる最中から、正宗に妙なオーラ的な物が見える…。

「素で……忘れて……いた…?」

ピキピキと青筋を立て、プルプルと震えながら、ヒナギクは呪詛の声を出す。

「はい。ちょっと色々あってですね…。その、すごくめんどくさい事に巻き込まれて…」

「めんどくさい…?」

「ち!!違いますよ!!め!!めんどくさい事に巻き込まれたんです!!」

ハヤテの弁明空しく、ヒナギクの怒りは静まるどころか、弁明の途中にあった言葉でさらに加速していく一方。

……本当にめんどくさいな…。

「勝負して欲しいんだっけ?武器早く持った方がいいわよ?」

正宗をヒナギクが構えなおしたのを見て、ハヤテは後ろに下がり、両手を振って必死にヒナギクを止める。

「いや……あの…。勝負はもういいっていうか……あ、僕の負けでいいですから…」

だがやっぱり、ヒナギクにはそんな事で正宗を引く気は無いらしく、満面の笑みになる。

「あなたがよくても……私の気が収まらないのよ―――!!!」

「わ―――――!!!」

夜の生徒会室に、一人の怒りの篭った叫びと一人の哀れな悲鳴が響き渡った。





       *    *    *





「……圧倒的に不利だなぁ…」

「だな。キヒヒッ」

そんなハヤテとヒナギクの様子を見ている二つの影があった。

「うっわ、明らかにヒナギクの実力超えてやがる」

テラスの縁に掴まりながら冷静に戦況を分析する零司。

「キヒヒ…。あの妙なオーラ放ってる木刀のおかげだろうな」

天井から頭をぶらさげ、零司と同じく戦況を分析する伊吹。

「……そうだな。そうなんだが…」

「…?」

珍しく言葉をよどませる零司に、伊吹は逆さになりながら首を傾げる。

その際に、普段は顔の半分を覆っている前髪が揺れた。勿論、逆さになっているので髪は下に垂れている。

(……その髪がホラーっぽいんだよっ!!)

もしも、生徒会室の中から今の伊吹の状況を見たのなら、間違いなくホラー映画によく出そうなお化けに見えることだろう。

だが、伊吹自身がそれに気づいていないのにそれを言うのは、何だか躊躇ってしまう零司だった。最も、伊吹の事ではあるので気づいてやっているのかもしれないが。

「……まぁいいや」

「だから何がだよ。キヒヒッ」

別にー。と零司はそこで話を打ち切り、視線を再び部屋へと戻す。

「……やっぱ、卑怯なのかね。あの木刀」

それと同じくして、ポツリと伊吹が呟いた。

その視線はやはりヒナギクの握っている木刀・正宗に注がれていた。

「……まぁな。あれってば、鷺ノ宮家の宝具らしいぜ?」

「……いや、詳しく説明頼むわ」

へいへい。と空返事してから、零司はごく小さな声で言葉を紡ぎ始めた。
 
「俺がその事を聞いたのは……まぁ、鷺ノ宮がヒナギクに手紙を渡したときだ」

事は少し前のことだった。




『なぁ、鷺ノ宮』

零司は、ヒナギクが妙な間違いをしたまま去ったのを見てから伊澄に話しかけた。

『何ですか?』

『武器勝負にしたってのは、まぁわかる』

命を賭けた勝負から賭けない勝負まで、多種多様で様々な戦いをしてきた零司には、伊澄の魂胆はわかりきっていた。

武器勝負とは、双方が武器を持って始まる勝負である。

持って始めるなら、終わるのは、決着がつくのはどういう時か。

簡単に言ってしまえば、開始の条件。つまりは武器を持っていることが出来なければ負けである。

とまあ、勝負の方法は零司にはわかっていた。が、腑に落ちないこともあった。

『だけどよ。何で武器での戦いなんだ?ヒナギクが勝てる部分って運の部分だけじゃねぇの?』

そこが一番腑に落ちない点だった。

ヒナギクが弱いわけではない。むしろ、一般人基準だと強い方に入るであろう。

だが、ハヤテはそうではない。ヒナギクよりも強いであろう事はわかっていた。

能力の事を差し引いても、ハヤテがヒナギクに負ける要素など、零司には見当たらない。

というか、武器勝負だとこの頃本物の刀を使っているハヤテの方に分があるのではないだろうか?と、零司は考えていた。

『いえ、違います』

しかし、伊澄は零司の言葉をきっぱりと否定した。

『……何故違うのか、説明してもらえるか?』

『はい。まず、相手が生徒会長さんという事が…』

『あー…』

ハヤテの性格を考慮に入れてなかった…。と零司は何となく納得する。

『それと……生徒会長さんには……木刀・正宗を貸したままにしているので…』

『え、あの木刀?』

はい。と答える伊澄の横で、零司は首を傾げる。

(……あれって、どう見ても普通の木刀にしか見えないんだが…)

そんな零司の心中を察したように伊澄は口を開いた。

『あれは持つ者の潜在能力を極限まで引き上げる鷺ノ宮家の宝具』

『……何そのチート』

『生徒会長さんほどの人が持てばハヤテ様の動きは……全て見えます』

『……割とマジでチートじゃねぇか』





「とまぁ、こんな感じの説明だな」

「キヒヒ……そしたらハヤテ勝てなくね?」

「勝てないまでとは言わないが、限りなく低いだろうな、確率的には」

そんな雑談をしている途中にも、ハヤテとヒナギクは攻防を繰り返していた。

「……まぁ、欠点として感情が昂りやすいらしいんだがな」

「アウトだろ。キヒヒッ」

まぁな。と呟いて零司は部屋の中で正宗を振り回しているヒナギクを見る。

(……明らかにコントロールできて無いぞ…)

そのおかげでハヤテがピンチのようだったが、あえて口には出さなかった。

(……ま、面白そうだしな♪)





       *    *    *





さて、再び部屋の中を見ていこうか。

といっても、先程から一方的な展開ではあるんだがな。

「はあああ!!」

ヒナギクが叫びながら、空間を歪ませる勢いで正宗を振り、それをハヤテが中々アクロバティックに避ける。そんな展開が続いているわけで。

まぁ、正直言ってハヤテは何の武器も持ってないし、ヒナギクを傷つけるような事はしないだろうから、こんな展開になるのは当たり前といえば当たり前か。

「まったく!!あなたのご主人様はちゃんと覚えててくれたっていうのに…!」

そんな間にも、ヒナギクの怒りのボルテージは上がり続ける。

「ずいぶんうっかり者の執事さんね!!」

またもや空気を鳴らしながらヒナギクが正宗を振るう。それを、今度は上に上体を反らすようにハヤテは避ける。

着地して、距離をとるように後ろに飛んだハヤテの表情には、焦りが浮かんでいた。

まぁ、確かにこの状況はマズイよな。

打開できるほどの力はハヤテにはあるだろうが、今の状況じゃ無いに等しいしな。

前に伊吹から聞いて、ハヤテに確認を取った必殺技…?確か「疾風のごとく」とか言ったけか?

ともかくそれを使えば、この場は収まるだろうけど……怪我人出るよな、絶対。

聞いただけなんでよくはわからないが……それって、平たく言えば超スピードの突進みたいなもんだろ?

それで正宗だけを狙えれば何とかなるんだろうが……動く標的をどうにかする事の難しさと、部屋の中でやった場合とか考えたら無理に近いよな。

どうせ成功しても、スピード緩められずに壁に激突とかしそうだし。

ま、他にもハヤテが取れる方法なんて大量にあるんだが……今のハヤテの様子じゃ、何も思いつかなさそうだから意味無いか。

と。そんな事を思ってるうちに、少し違った局面になりそうだった。

「大体誕生日の約束をしたのは綾崎君じゃない!!ここ数日私が……どんな想いでいたかも知らないで!!」

…ん?

「すみません!!すみません!!ですがその…!!本当に色々あってですね…」

「色々あったからって……なんで……私との約束は…」

傍から見ると、さっきからしているハヤテへの糾弾のようにも見える。

だが、何となく語調が弱いし、ヒナギクの表情が言葉と微妙に噛み合ってない。

……想像するに、感情の抑制が上手くいってない感じだな。

「そりゃ女の子らしくなくて……可愛くないかもしれないけど…!!」

ヒナギクが正宗を上段に振りかぶる。

「すみません!!ほんとすみません!!」

それを見てハヤテも謝り続ける。が、

「―――って、え?」

すぐに困惑の声を出した。

そのハヤテの目の前で正宗は止まっていた。そしてなにより―――ヒナギクが、涙を流していた。

「一年で一番大事な日なんだから……それくらい……覚えておきなさいよバカァ…」

力なく正宗を落とし、ハヤテへ頭を押し付けるように寄りかかる。

「すみません……ほんとすみません…」

それに困惑しながらも、ただハヤテは謝った。





       *    *    *





またまた場面は、外の零司と伊吹に変わる。

「……まぁ、大体アレなのかね」

先程終わった出来事を頭の中で反芻しながら、何となく零司は呟く。

その呟きには、確信のようなものが含まれていた。

「…?アレって何がだ?キヒヒッ」

その呟きを、テラスの上の方から伊吹の声がかかる。

それに零司は少なくとも驚いた。

確かにテラスに掴まっている。とはいえ、体はさっき上に上げていた時とは違って、ぶら下がったままである。

しかも、顔は下を向いていて、声量は風に消されるレベルで呟いたはずだった。

なのに聞こえたという事は(……耳が超絶的にいいか、俺が声量間違えただけかだな)ということ以外はありえないだろう。

「おーい、零司―?」

「あ、あぁ。悪い」

ボーっとしてた事を謝り、零司は懸垂の要領で体を上に上げる。

「んで?何だっけ?」

真面目に忘れたので、零司はとぼける風でもなく伊吹に尋ねる。

「……オイ」

怒りの篭った声が聞こえ、ヒュン。と風斬り音が零司の耳に届いた。

そして零司の視界に星が舞った。

「……ぁ!?」

そして遅れて鈍痛が頭頂部から全身に走る。

両手を離して頭を抱えたい衝動と、叫びたくなる衝動を、必死に零司は我慢する。

具体的には、歯を食いしばって耐えた。

そして痛みが少し引いたところで、……ァン…。とどこか遠くから金属音のような音が零司の耳に入った。

(何だよ今の音…!?下から聞こえた……ってことは!)

「何を投げやがった…!」

怒りを隠そうともせず、零司は上を向いて伊吹を視界に入れる。

それを一身に受けながら、伊吹はぶつけた物らしきものを手に持って揺らす。

暗闇なのとぶつけられた痛みから最初はそれが識別できなかったが、段々それを認識できるようになった。

「って…!」

そしてそれを認識した時、零司の目は驚愕に染められた。

「金槌…!それは死ぬぜ…」

「キヒヒ…。死んでないじゃん」

いや、そうだけど!と大声を出しそうになるのを、再び歯を食いしばって耐える。

因みに、零司が歯を食いしばっている時、テラスを掴んでいる手にも力が入っており、ミシミシとテラスが鳴っていたりする。

「んで、二度目だが。何だっけか?」

「お前が呟いた『アレ』って何だよ。キヒヒッ」

あぁ。そういや言ったけか。そんな事を思いながら、零司は力を抜いてまたぶら下がるような格好になる。

「まぁ、何だ。ヒナギクも落とされたのかなってさ」

「あぁ…」

物凄く簡潔に言っただけで伊吹も大体を理解したようで、納得の声を出していた。

「……さっすが、フラグメイカーハヤテ」

「どっちかと言うとフラグ一級建築士だがな」

だな。と何でも無い会話を上にいる伊吹としながら、零司は下を向く。

下は当然と言うべきか、暗闇が支配していた。

「……お先真っ暗闇にならない事を祈っておこうかね」

「それは乱立させすぎて刺されないように。とかの意味だよな?キヒヒッ」

「……裏まで察するなよ」





       *    *    *





そして、再び場面は部屋の中に戻る。

「はい。紅茶が入りましたよ」

カチャ、と軽い音を立てて、ヒナギクの前に紅茶が置かれる。

淹れられたばかりの紅茶は、当たり前ながら湯気を出していた。

……その前に座っているヒナギクも煙を出しているのは何の因果か。

「あ……少しお腹すきませんか?材料もあるみたいなんで、僕、軽く作りますよ♪」

ヒナギクの後ろで、楽しげな声でハヤテは声をかけるが、今のヒナギクには答えることは出来なかった。

(不覚……一生の不覚…!!)

カップを手に持ちながら、ヒナギクは先程の自分を心底恥じていた。

(あんな事…!!私とした事があんな事―――!!)

急速に顔を赤く染めながら思い出すは、先程の光景。

例えば、ハヤテの顔間近で涙を流した事。

さらに、ハヤテの肩に寄り添うような体勢になったこと。

その事がさっきから頭から離れず、顔が熱いままだったりするヒナギクだった。

「でも……怒られといてこういうのもなんですけど…」

本当に意外だとでもいうような感情が見え隠れする口調で、

「ヒナギクさんにもああいう、乙女チックな一面があったんですね〜」

振り返りつつ、笑顔で何気に失礼な事を言ってのけた。

「……………」

その言葉を聞き、更に顔を赤く染めて数秒間、ヒナギクは固まった。

(いっそ私を……殺してぇ〜…)

そして、固まった状態から動き出すと同時に、テーブルに突っ伏すような格好になる。

その際に「あ!あれ!?ヒナギクさん!?」とハヤテが言っていたが、羞恥に染まったヒナギクには聞こえていない。

(いかん!!このままでは私、負けっぱなしだわ!!何に負けたかはわからないけど!!このまま負けてていいわけないのよ!!)

もし、ここに零司などがいたら明らかに呆れる考えを巡らしながら、ヒナギクは拳をぎゅっと握り締める。

(どうにか…!!勝たなくては!何に勝つのか知らないけど!!)

『呆れたわ、真面目に…』

(うっさいわよ!!)

更には、頭の中で勝手に作り出されて、勝手に喋る零司にまでツッコミを入れる始末。本当に呆れるしかない状況である。

が、ヒナギク自身はそんな事無く、羞恥ではなく怒りに顔を赤く染めながら、ハヤテに詰問する。

……所謂、逆切れといった理不尽な怒りで。ではあるが。

「で!?プレゼントは!?プレゼント!!素敵なプレゼントとやらをくれるんでしょ!?」

「へ?」

流石のハヤテも、急に怒りだしたヒナギクの行動についていけなかったようで、素っ頓狂な声を出す。

そんなハヤテを置いといて、ヒナギクは軽く包装された箱をハヤテに突きつけるように取り出した。

「因みにナギは……この…!」そこでつっかかり、箱を刺す勢いで顔に近づけ「え……えーと…。ブ……ブル…」語調をどんどん弱めていった。

ハヤテとしては、その一連の行動にどう反応した物かと、ただ成り行きを見守っていた。

「なんか読めないけど可愛い時計をプレゼントしてくれたわ!!果たしてこれに勝てるかしらハヤテ君!!」

「どういうルールの勝負なんですか?」

読めなかったことで、顔を赤らめながら逆上するヒナギクに、ハヤテは苦笑いで言葉を返す。

「まぁ、ルールはよくわかりませんけど…」

そう言って、ハヤテは手を後ろに回す。

「む!!く……来る気ね!!」

その行動に、何故か身構えるヒナギク。といっても、傍から見れば身構えてるようには見えないが。

「はい♪」

「ん?」

そんなヒナギクの目の前に、スッと差し出された何か。

「……これは…?」

「クッキーですよ。僕の手作りの」

それは、可愛く包装された袋だった。そして、袋の上部から少しだけ姿を見せるのは、ハヤテの言う通りクッキーだった。

「ケーキは他の人がもっと豪華なのを用意するかなと思ったので。ヒナギクさん家も周りのお友達もみなさんお金持ちなので、あえて裏を狙ったみたいな感じで…」

つらつらと説明される、ハヤテのプレゼントの理由。

だが、話されているはずのヒナギクは、ハヤテの言葉には一切反応せずに、プレゼントされたばかりのクッキーの袋に目を奪われていた。

「―――って、あの……ヒナギクさん?」

「へ?」声をかけられ「あ……何?」やっと正気が戻った。

その反応に「いえ…」とハヤテは続け、「ルールはわかりませんが、これはもしかして負けでしょうか…?」つーっ、と一筋の汗を流しながら、恐る恐る訊いた。

自信があった。とは言わないが、一生懸命に作ったクッキーである。それで合格を貰え無ければしょうがないのだが、流石に寂しいに似た感情がある。

そんなハヤテの心情を察したのか、ヒナギクは若干声を大きくして否定の言葉を続けた。

「い……いや、そんな事無いわ。ありがとう!!」しかし、そこで急に暗い表情になり「ただ……ちょっと思い出しただけ…」と呟いた。

「ちなみに、僕の家はバカみたいにビンボーだったから……ケーキの代わりにクッキーひとかけらという絶望感漂う誕生日もありました」

「それは中々悲惨な絵面ね」

ハヤテのいう光景が、ありありと想像できるヒナギクだった。

細かく言うのならば、クッキーの上にろうそくを立て、その前で涙を流しているハヤテを、ヒナギクは易々と想像できた。

「でも……私もあったわ」

「え?」

突如ヒナギクが暗い声を出した事に、思わずハヤテは聞き返す。

ヒナギクは視線を手に持ったクッキーに注ぎながら、続けた。

「ケーキの代わりにクッキーひとかけら。プレゼントはちっちゃなヘアピン一つなんて誕生日が…」

その事実は余りにも意外で、ハヤテは心情通り「い……意外ですね。あんなお金持ちなのに…」と言葉を紡いだ。

そんなハヤテの言葉に、ヒナギクは短く「ええ」とだけ返した。

そして「だって……あの親は…」ここに来て、一番暗い声で「私の……本当の親ではないから…」と呟いた。

「………え?」

それだけを呟くのが、ハヤテには限度だった。

それほどまでに、ヒナギクの口から出た事実は衝撃的だった。

そんなハヤテを置いて、ヒナギクは更に続ける。

「私の本当の両親はね、私の六歳の誕生日前に、八千万の借金を子供に押し付けていなくなってしまったの」

それは、今も衝撃を受けているハヤテにさらに衝撃を上乗せした。

その後話されたヒナギクの言葉は殆ど入ってこなかった。

だが、たまに理解できる言葉を並べると。

借金は、姉である雪路があの性格で何とかしてくれた。

その後、二人を引き取ってくれたのが今の桂家の人たち。

今のヒナギクの養父は雪路の小学校の先生だった人。

その人は、今は先生こそやっていないが、ずっと雪路の事を気にかけていた。

それを頭の中で繋げながら、ハヤテはヒナギクと自分が似ていることに驚いていた。

自分にも借金があった。でも、今は無い。

「…………」

そんなハヤテにヒナギクは気づく事はなかった。

「ねぇ、ハヤテ君」

そして突然、ヒナギクはハヤテに問いかけた。

「何か……理由があるって思わない?」

どこか、縋る様に。

「一緒に連れて行ってもらえなかったのは……何か仕方ない理由が。って…」

捨てられた子犬のような視線で、ハヤテの目をまっすぐに見つめる。

「…………」

その問いに、ハヤテは答えない。答えられない。

確かに。確かにヒナギクの言う通り、何か事情が、理由があったのかもしれない。

そんな事はハヤテでも思う。だが、ハヤテには、同じ捨てられた身でもそうは思えなかった。

何故か。と質問されれば、ハヤテはこう答えるだろう。



―――あんな親達に。あんな親達にそんな理由があるはずない。と。



声の表現を入れるなら、呪詛を多分に含んだ声で。恨みの篭った声で。殺意の充満した声で。

そんな声で答えるだろう。

それが、答えない理由。

同じ境遇だとしても。

同じく借金を負わされ、返済したとしても。

親に対して含む想い。それだけは、真逆。正反対。

もしも、その言葉を口にしたのなら、間違いなくハヤテはヒナギクを傷つける。

完膚なきまでに。傷が一生残るまでに。心を―――砕け散らすまでに。

「………………あの……ヒナギクさんは、今のお養母さんのこと…」

だからハヤテは、質問には答えず、こちらから質問した。

「好きよ!大好き!!大好き……だけど…」

質問自体には即答した。だが、言葉をヒナギクは濁し、

「本当のお母さんの事も……大好きだったから…」

本当に、暗い表情でそう言った。

(……羨ましいな)

心からハヤテはそう思う。それほどまでに、思える人がいる事が。途轍もなく、羨ましかった。

「……あの、ちょっとこっちに来てくれます?」

そして、ハヤテはその感情を押し殺し、ヒナギクの手をとってテラスへと誘導しようとした。

その行動に、最初「へ?」と呆けていたが、すぐに「え!?あ!!ちょっとダメよ!!テラスは!!私は…!」と若干錯乱しながらも、必死に抵抗していた。

「はは。大丈夫ですから」

それを笑って流し、ハヤテは更にヒナギクの手を引き、とうとうテラスに連れ出した。

「ダ!ダメよ!!知ってるでしょ!?私が高いところ苦手な事!!」

連れ出されたヒナギクは、言葉を体現するかのように、目を強く瞑っていた。瞑った目の端からは光る液体のような物も見える。

そんなヒナギクを優しく自分の傍に誘導し「僕がしっかりつかんでいますから。目を開けてみてください」諭すように、ヒナギクの傍でそう囁いた。

その言葉に導かれ、ゆっくりと、ヒナギクは目を開いていく。

そして、目を完全に開いたとき。景色が飛び込んできた。



最初に入ったのは、沢山の光だった。

暗い学校の中で光る淡い光。

町で輝く色とりどりの光。

夜空に瞬き、大小様々な光を放つ星の光。

黒に染まった大空の中で、一際眩く、優しい光を降らす月の光。

それらはヒナギクの目に一斉に入り、何てこと無い普通の景色を一枚の絵画のように見せた。



「………………凄い」

思わず、ヒナギクはそう呟いた。

それほどまでに、この光景に見入っていた証拠なのだろう。

「そうでしょう?」

聞こえた言葉に、ハヤテも笑顔で返す。

そしてそのまま、視線を前に向けて、ハヤテは続ける。

「理由はあったかもしれないし、なかったのかもしれません。人から見れば不幸に見えるかもしれませんし、心に深い傷もあるもかもしれません」

でも、とハヤテは区切り、

「今いるこの場所は……それほど悪くは無いでしょう?」そう、微笑で言った。



結局は『今』なのだ。

昔、理由があったにしろないにしろ、捨てられた。

それは、不幸かもしれない。

それで、心に深い傷を負ったかもしれない。

それでも―――今、この状況は不幸ではないだろう。

親にどんな感情を感じようと。境遇がどれだけ不幸だったとしても。

今が途轍もなく不幸な訳じゃ、決してない。



(あ…)

そして、ヒナギクはハヤテの言葉を聞いたとほぼ同時に、ヒナギクは気づいた。

いや、ようやくわかった。

(私……この人の事が好きなんだ)

自分の本心が。

(好きになると……いなくなってしまう気がする)

隠していた気持ちが。

(そんな想いが……どこか怖くて…)

無理矢理押さえつけてきていた、自分の全部を。

「私……バカだな」

「へ?」

突如呟かれた言葉に、キョトンとしたハヤテ。

それを耳に聞きながら、ヒナギクは続ける。

「この景色と同じ。側にあったのに……怖くて見れなかったなんて…」

結局は、恐怖。

それだけが、ヒナギクを縛っていたのだ。

「今も……怖いですか?」

ハヤテのその問いに、ヒナギクは一瞬躊躇った後に「怖いわ」と答え「でも……悪くないわ」と続けた。

「……そうですか♪」

その答えに満足したのか、ハヤテは笑顔になる。

そして、気づけば二人は片手を繋ぎ、正面から向き合っていた。

そんな二人を、満月だけが見ていた。





      *    *   *





それと同時刻。真夜中の道路を歩く二人がいた。

「さってさて。どうなったのかねっと♪」

「楽しそうだなぁ。キヒヒッ」

言わずともわかるだろうが、零司と伊吹である。

楽しそうな歩調に、腕を頭の後ろに組んで歩く零司。それとは対照的に、沈んだ歩調と腕をだらんと下げて歩く伊吹。

「ん?何でそんなに沈んでるわけ?」

「今更になって罪悪感湧いてきたぁー…」

口癖も出ないほどに落ち込んだ様子で隣を歩く伊吹に、流石に零司も苦笑した。

「別にいいだろ?ちゃんと途中で退散したわけだし」

「それなら最初から行かなくても同じだろうがぁ…」

ますます沈んでいく伊吹に、(あ、もう放っておいた方がいいや)と結論付けてそれ以上は何も答えなかった。

(……相っ変わらずそういうところは固いよなー)

余りにも異常なほどの落ち込みように、零司は伊吹をそう判定する。

といっても、さっき零司が言ったとおり、二人はヒナギクが暴れ終わったところで覗くのをやめて帰っていたのだが。

(……あ、俺との会話か)

だが結局、ヒナギクの気持ち的なものは零司との会話でわかってしまったようなものである。

(……自分でわかるのはよくて、人からはダメなのかねー?)

そんな気持ちは零司にはわからない。

人から聞こうが、自分で知ろうが。結果は変わらないではないか。

だが、百聞は一見にしかずという言葉もあるくらいでもある。

(人それぞれってことか)

その結論に達した零司は、それ以上考えようとはせずに、夜の闇に染まった先の道を見る。

「……恋、ねぇ」

「キヒヒ…。してるわけ?」

復活した伊吹の問いに、零司は喉を鳴らして苦笑する。

「してる、いや」唇を歪め「出来ると思うか?」

「…………キヒッ」

帰ってきた問いには答えず、伊吹は笑っただけで返した。

「さ、帰るか♪」

「だな。キヒヒッ」

そして二人は、そのまま真夜中の闇の中へと消えていった。





――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


はいっ、今回も終わりです!!

いやー、アレだね。

零司「アレ?」

……グッダグダだね!

ハヤテ「何を今更言ってるんですか」

ぐふっ!?

伊吹「……流石にハヤテに言われるとダメージでかいか」

零司「そりゃぁなぁ…」

     ←屍

零司「白い…?!」

ハヤテ「これは予想外ですよ…」

だが、復活するわ!

三人『早っ!?』

うっさい!

さて、次回は……ふっ。←(零司を見やる)

零司「すげえ悪寒がするんだが…!?」

……次回から少し、零司には大変な目にあってもらうからね♪

零司「はぁ!?」

では、今回はここで終わりましょう!!

ハヤテ「それでは♪」

零司「説明しろやぁあああああああああああ!!」
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Re: 誰がため、何のため 1/27更新 ( No.71 )
日時: 2013/02/11 22:28
名前: コサッキー

突然だけど、零司にはちょっと大変な目になってもらいます。

零司「殺すっ!!」

ハヤテ「いやいやいや!?何でそんなに殺そうとするんですか!?」←(羽交い絞めで止める)

零司「嫌な予感しかしないんだよ!!」←(もがくもがく…)

伊吹「キヒヒ…。たまにはいいじゃねぇか」

零司「微塵もよくねぇけど!?」

あ、言っとくけど零司の話終わったら次伊吹だから。

伊吹「……は!?」

では、本編どうぞー♪

零司・伊吹『待てやぁああああああああああああああ!!』



――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――



時間は、ヒナ祭り祭りが終わってから数日後の放課後。

それは、突然起こったのだった。

主に、一人が色々と大変な感じになる出来事が。





       第三十四話「正位置の『Resumption』」





「くぁ…」

放課後の事。学校から帰ろうと、学校内の道を歩いていたとき、不意に零司は歩きながら欠伸をした。

「ねみぃ…」

そんな事を言いつつ、目尻に浮かんだ涙を拭いていると、隣から呆れた声が飛ばされた。

「キヒヒ…。そりゃぁ、夜中まで起きてりゃな」

独特な顔……といえるかどうか疑問に思う、伊吹の顔を覆う髪の下から糾弾の声が零司の耳に届く。

「何時まで起きてたんですか?」

更にその隣から、優しく諭すような声。

零司と同じく、執事服を着た少年、ハヤテだ。

そんなハヤテの質問に、伊吹は顎に手をあてて数秒間考えた後に「……四時だっけかな?」と自信なさげに言った。

「遅すぎません…?というか、それってほぼ朝…」

「あぁ、まぁ……なぁ…」

流石にばつが悪いのか、虚空に目をそらしながら、零司は言葉を探す。

が、見つかる事もなく、溜息をついた。

「……で、何をやってたんですか?」

「勉強だよ」

『え』

「オイ待てそこの二人。何でそんなに意外そうな声を出しやがる」

「いやだって…」「零司さんですし…」

「よーし、二人とも。ちょいと俺のイメージ言って見やがれ」

『天才』

「正座しろゴラァ!」

割とマジで怒った零司に、いやここまだ学校内ですよ!?と、どこかずれたツッコミをするハヤテと、キヒッ。と独特に笑う伊吹。

何とも、怒る気を萎んでいかせる二人だった。

それに零司も当てはまったようで「もういいや…」と明らかに沈んだ声で零司は歩き出す。

そして二人もそれに続き、そのまま数メートルの間会話が途切れる。

そして、唐突に零司が口を開いた。

「つか、何で俺が起きてた事知ってるわけ?伊吹さんよ」

「……さ、さぁなー」

「明らかに声が上ずってますよ?」

ぐ。とハヤテの鋭い指摘に、思わず言葉が詰まる。

それが決め手だった。

「結局、お前も起きてたんだろ?」

その零司の言葉に、観念したのか「……まぁ」と伊吹も認めた。

「伊吹君の場合は何やってたんですか?」

「別に変なことはしてねぇよ。今まで通り、カード書いてただけ。キヒヒッ」

「それって、能力用の?」

当たり前だろ。とそこだけ声を小さくして、また伊吹は独特に笑う。

「キヒヒ……この頃色々あってな。ストックが無くなって来てるから補充してるんだよ」

「ま。俺とハヤテと違って、準備しなければ弱いもんな、お前」

「でも……丹念に準備したら物凄く強いですよね?」

実感の篭ったハヤテの言葉に、零司も「あー…」と思わず唸る。

事実、ハヤテは伊吹の万全の準備と戦っている。

といっても、あの時の伊吹は伊吹の意思で戦っていたわけじゃない。のだが、罠のごとく張り巡らされたカードは、未だ鮮明に思い出せるレベルでもある。

「本当にあの時は……死ぬかと思いました…。は、はは、ははは…」

「おーい…。戻ってこーい…」

死んだ表情で笑うハヤテに、流石の二人もハヤテから距離をとる。

……黒い雰囲気をまとって、薄笑いをしていると確かに不気味ではあるが。

だがそれも長くは続かず、すぐにいつものハヤテに戻ったが。

「というか、二人とも遅くまで起き過ぎですよ。もっと早く寝ないといつか倒れますよ?」

「つってももう慣れちまったしなぁ…。てか、お前はどうなんだよハヤテ」

「そこまで言うならお前は早く寝てるんだろ?キヒヒッ」

ジトッとした二人、いや、一人はどうか怪しいが……ともかく二人の視線を受け、ハヤテは自信満々に告げた。

「えぇ。僕はちゃんと毎日三時には寝てますから!」

『大して変わってねぇよ!!』

異口同音でツッコム二人。流石に一時間は変わらないのではないだろうか。そんな思いが二人の中にはあった。

「……え、そうですかね?」

「そうだよ!そうなんだよ!」

「零司さんキャラおかしいですよ?」

「つか、一時間程度で全く俺らと体力変わらないのってどうなんだろうな」

「ぐふっ」

ザクっと心に矢が刺さったのか、胸を押さえたハヤテ。

その際に「言わないで欲しかった…!」と言ってたが、二人はそんな事は気にしようとはしない。

そして、ふと零司は気づいた。いや、思い出した。

ここが、学校内であり、放課後真っ最中だという事を。

つまり―――こちらを見ている人の目が沢山あったのだ。

(やっべー…。素で忘れてた…)

頬を伝う嫌な汗の存在を感じながら、零司はさっと周りを見渡し、ハヤテと伊吹を最後に見る。

「………うぉーい」

が、二人を見た瞬間、愕然とした声が出た。

何故なら―――

「大体ハヤテってば、あんま強くないんだから特訓でもしてたらどうだ?キヒヒッ」

「なっ!?で、でも早く寝て体力差で実力を埋めてやりますよ!」

「キヒヒ…。出来るもんならやってみろよ」

「それは喧嘩売ってるんですか?売ってますよね?」

「さぁねー。キヒヒッ」

「いいですよ!なら僕の言う事が正しいかどうか確かめてみようじゃありませんか!」

「キヒッ!いいだろうよ!」

―――このように、口喧嘩が始まっていたりするからだった。

しかも、口喧嘩が発展して、真面目な喧嘩になりかねないような一触即発な雰囲気まで醸し出しているので、尚更愕然としてくる。

(マジで頭いてぇ…)

この状況に零司の頭は急速に頭痛を促す。

その頭痛の痛みを和らげる様に、こめかみの辺りを揉んでみるが……痛みは治まるどころか加速的に痛くなるばかりであった。

そもそも、この口喧嘩の原因は、最初に売り言葉を言った伊吹なのだろうが、それを買ったハヤテもハヤテで勝手にヒートアップしている。

そういう点で見ると、喧嘩両成敗と言う言葉が全くもってしっくり来るので不思議である。

というわけで。

「二人ともめんどいからやめろやぁ!」

『ぐげっ!?』

喧嘩両成敗の言葉通り、零司は二人を纏めて蹴り飛ばした。

蹴り飛ばされた二人は、綺麗な放物線を描き、横合いの木々へと突っ込んでいった。

それを確かめるなんてことはせずに、零司はグッ!と拳を勝者さながらに天に掲げる。

そんな一連の様子を見て、周りの生徒達は『おぉー…』などと感嘆の声を上げながら拍手していたりする。

それを十分な時間をかけ、一身に受けた後、零司は再び歩き出そうとした。

ここで断っておくが、あくまで歩き出そうとしただけである。

先に結論を言うなら、歩き出しはしなかった。

何故なら―――



「待てぇえええええええええ!!」

吹き飛ばしたはずの伊吹が、突如零司の頭にとび蹴りをかましたのだから―――



「みょるにるっ!?」

当然のことながら、飛び蹴りを受けた零司は、先程ハヤテと伊吹が吹っ飛んでいったのとは逆の木々へと吹っ飛んでいった。

だが、変な奇声を上げられる辺り、零司には余裕が感じられる。

「あー、いってぇ…」

そして、零司を蹴飛ばした伊吹にも、制服に葉っぱなどがついてる以外は案外余裕そうに見えた。

「ちょ、ちょっと速いですって伊吹君…」

更に、伊吹が飛び出てきた方向から、葉っぱに加え土までつけたハヤテが出てくる。

こちらも、見た目が若干みずぼらしくなってるだけで体は平気そうだった。

……相変わらず頑丈である。

結局、変なところで三人とも異常だったりするのだろう。

そんな事を周りの生徒達も思っているのか、唖然としながらも二人を見ている。

「……ところで、零司さん遅くありません?」

「だよなぁ」

いや、まだ吹っ飛ばされてから一分程度しか経ってないけど!?

盛大にその場の生徒達の心の声はシンクロした。

というか、どうやったらそんな基準が出来るのか。

余談だが、伊吹は枝を使って一回転を決めて舞い戻り、ハヤテは上手く風で着地して戻った。

閑話休題。

それから数分かけて、零司は戻ってきた。

その時の姿は、土や葉っぱはついてなかったが、顔に血らしき物がついていた。

それがなんなのかは二人は訊きはしなかった。というか、ハヤテだけは訊くのが怖かった。

ともかく、何事もなかった様に三人は下校を再開する。

が、やはりと言うべきかヒソヒソとこちらを見て話をする者が出てくる。

だが、それは予想の内だったハヤテ達はそれを受けつつも普通に下校していた。

……ただ単に、気にするのがめんどくさいだけでもあるが。

「にしてもよー」コキッ、と首を鳴らしつつ「案外この面子で帰るのって珍しいな」

「あー。ですよねー」

「だな。キヒヒッ」

零司に言われた事に、どこか気を抜きつつ返事する二人。零司の言葉に賛同しているのだろう。

だが実際。この三人で帰るということは稀の中の稀であった。

ハヤテは基本的にどんな遅い時間になってもアテネを待って学園にいるし、零司はナギと一緒に帰る事が多い。伊吹に至っては学園の隅で占いをしたり気ままに帰ったり。

要は合わないのである。時間というか用事というかが。

しかし、今日は珍しくも違った。

ハヤテは六花から『今日は帰っていいですよ』と言われていたし、零司はナギが学校に来ていない。伊吹はカードが足りなくなってきているので買いに行こうと思っていたのだった。

何度も言うが、これは珍しい事態だった。珍しすぎて最初は三人が三人とも(何か不幸でも降りかかるのか?)と思ったほどである。

といっても、何も起こっていないで今に至るのだが。

ここで「じゃあ、さっきのは?」と疑問に持つかもしれない。

だがしかし。あれは三人にとっては日常茶飯事である。故に問題なんて一つもない。じゃれ合いにしかならない。

「んー…。ハヤテが一緒にいて不幸の一つも起こらないとなると…」

「零司さん喧嘩売ってます?」

何となしに呟いたのだったが、ハヤテには禁句の一つだったらしく、青筋を立てる。それに加え笑顔なのが怖い。

「いや、売ってはない」とすぐさま否定しつつも、脳内では考えを続けていた。

(ハヤテの不幸体質に俺の巻き込まれ体質とでもいう体質のことを考えると……何かあるとしか思えないんだがなぁ…)

考えても、先のことがわかるわけはない。

が、予想のつく事が出来る奴はここにいる。

「つーわけで伊吹。占ってくれや」

「三百円」

金取るの!?と驚く零司を無視し、伊吹は手のひらを零司に突きつける。

それに数秒唸った後、零司は泣く泣く三枚の硬貨を手の上に乗せる。

それを受け取った伊吹は、硬貨をポケットに入れると、ポケットから勢いよく手を引き抜く。

すでにその手には三枚のカードが握られていた。

「前々から思ってるんですけど、体中にカードを仕込んでるんですか?」

「いざという時にな。キヒヒッ」

そうですかー。と何故か感心した風のハヤテの声を聞きながら、零司は伊吹から受け取ったカードに目を通す。

『0』『Resumption』『After a long time』

その三枚だった。

(……なんだろうか、嫌な予感がただ増しただけだわぁ…)

不安を拭い去るどころか増やすとは。金を払ったのが無駄にしか思えない零司だった。

そんな何気ない事を話しつつ、しつつ、三人は歩く。

そして、そこから数分間は何事もなかった。

やっと三人の前方に校門が見えた、その時。

カキィン…。と甲高い金属音がどこからか響いてきた。

(あ、来る)

聞いた瞬間、零司は軽く身構える。

瞬間。

「あだっ!?」

悲鳴と共に、ハヤテが前のめりになった。

その光景を目の端に収めつつ、振り払うように右手を振るう。

軽い火傷のような痛みを感じながら、手に飛び込んできた何かを握りつぶす勢いで握る。

「……流石に熱いな…」

そうは呟いているが、全くそうは感じさせないような様子で、今しがた握った手を零司は見る。

「ボール…。それも野球部のね」

「キヒヒ…。案外飛んだな、それ」

だよなー。と伊吹に返事しつつ、零司はキャッチしたばっかのボールを手首で回転をかけ、宙に放る。

ほどよい回転をし、ボールは重力に従って―――ハヤテの頭の上に落下した。

コツン。と軽い音を立てて、ハヤテの頭でバウンドするボール。

「……くふっ…」

そんな光景を見てか、下校中の生徒の中から笑いが漏れる。

零司と伊吹も笑いそうではあるのだが、ここで笑うとハヤテが怒る事がわかっているので、必死に笑いを堪えている。

「零司さぁん…?」

そんな中、ユラリ幽鬼のようにハヤテは立ち上がった。

零司から見たハヤテは、生憎と光の加減で顔は見えなかったが、口元は笑っていたように見えた。

それを見たと同時にマズイと感じた零司だったが、時すでに遅し。

ハヤテの周りには、注視しなければわからないが、風が渦巻いていた。

「何をしてくれてるんですかぁ…?」

「いやまず落ち着け」

一歩ハヤテが近づき、一歩零司が下がる。そんな光景に、周りの生徒達も流石に危険を察知したのか、二人から距離をとり始めた。

(まずいマジでまずい!)

先程ボールを放った事を心の中で心底後悔するが、後の祭りである。

なので思考を切り替え、この状況を打破しようと考えを回転させ始める。

が、何故かこんな時に限って全くいい意見が出てこなかった。

(やばいやばいやばいやばいーっ!?)

更に、そこに拍車をかけるかのように、思考が一貫して纏まらなくなる。

「覚悟はいいですかぁ…!?」

「いや、何一つよくないんだが!?」

いつもと百八十度違う雰囲気を纏ったハヤテに、流石の零司も恐怖を今更ながらに感じる。

あえて言うなら、その『今更ながら』と言うところが零司の失態だったのだろう。

「一回…」プロ野球選手も真っ青なフォームで振りかぶり「反省してこぉい!」ありとあらゆる物を全力で投げた。

ゴウッ!!と空気を切り裂きながら迫るボールに零司は、(いやこれ避けられな…っ!)避けるのを諦めた。

「ごぶぅ!?」

そして、ボールは零司の鳩尾にクリーンヒット。

ボールの勢いそのままに、下校路をそのまま巻き戻しのように戻っていった。

『いや、なんで!?』

そんな有り得ない光景に、周りの生徒は一斉にツッコムが、怒りの渦中にいるハヤテには聞こえてなかった。





そして、吹っ飛ばされた零司はというと。

「ごふっ!?」

歩道で一回跳ね。

「みぎゅぅ!?」

二回跳ね。

「ぬぁーーーー!?」

三回跳ね、そのままゴロゴロと転がっていた。

数十回転してから勢いは止まった。が、零司は身を投げ出したまま動こうとはしなかった。

(やべぇ。めっちゃ体痛ぇ)

いや、動けなかった。

鳩尾からじわじわと来る鈍痛と、体の至る所から発しられる鋭い痛みが予想を数段超える形で零司を襲っていた。

どうにか体を無理矢理動かし、仰向けになってみる。しかし、それ以上は体が動きそうになかった。

ので、しばらくこのままでいようと零司は思った。

(というか、目が回ってるつーのもあるけど)

数十回転はまずかったかー。と呑気に考えながら、零司は正面に見える空を見上げる。

(あー…。今日も晴れかー…)

雲もまばらで太陽の光が燦々と降り注ぐ中、寝転がる。

これだけ見れば休日に野原で日向ぼっこをしているようにも見えるだろう。

(……ま、事実はそうじゃないんだけどさ)

背中からは芝生のような柔らかい感触からは程遠い、ゴツゴツとした硬い感触。

しかも、場所は野原などではなく、学校の歩道のど真ん中。

(まー、ヒソヒソ声が聞こえるけど……どーでもいいしなー)

どうでもいい。というよりは関心が無いだけではあるのだが。

というよりも、そんな事を一々気にする零司ではない。

「……ま、例外はあるけどな」

小さく呟き、流れる雲に視線を移す。

風が無い中で緩やかに流れる雲が、今の現状を映してるように思えた。





その数分後。

「……何で道のど真ん中で寝転がってるんですか?」

「謎だな。キヒヒッ」

ハヤテと伊吹は零司を見るなり、呆れた声を出した。

「いや、それは心外…」

吹っ飛ばしたのは誰でしたっけなー?と小さく呟くと、ぐ。とハヤテが呻いた。

それで満足したのか、零司は両手だけを使って、勢いよく立ち上がる。

「立てるんかい」

「ま、今になったからな」

体の節々を回しつつ、零司は服についた土を払っていく。

「今日はよく汚れる日だ…」

「基本的に零司さんのせいですけどね」

「まぁ、そうなんだがな」

悪びれもせず、零司は肩を大きく回す。

そんな様子に、ハヤテは呆れの溜息をつき、伊吹は短く笑った。

「さ、帰ろうぜ」

「キヒヒ…。お前のせいで遅くなったんだけどな」

「言うなって」

短い会話をし、三人は何度目かの歩みを再会する。

何度も何度も騒ぎを途中で起こしたせいか、道を歩く生徒は全く見当たらなかった。

強いて言うなら、三人の数メートル前を歩く高等部らしき女生徒が一人くらいだった。

「つーか、ハヤテも無意識でなら能力は強いのな」

そんな状況だからか、零司はハヤテに向かってそんな事を言い放った。その声量は、周りに軽く聞こえる程の声量だった。

「ちょ、ちょっと零司さん!?」

周りに人が沢山いるわけではないが、前方に一人いるので、慌ててハヤテは小声で零司を注意するが、零司は「別に平気だろ」と取り合おうとはしてくれなかった。

「で、でも…!」

「大丈夫だっての。いざとなったら伊吹が気絶させるから」

「俺かよ。キヒヒッ」

「一番速いしな」

「まぁ、やるけど」

「まずそんな事が起こらないように努力しないんですか!?」

「めんどいじゃん」

「相変わらずめんどくさがりですね、零司さん!!!」

今日一番である大声を上げるハヤテ。近場で聞いてた零司と伊吹が思わず耳を塞いでいるところを見ると、かなりの声量だったのだろう。

「キヒ…。うるさいぞ…。今の大声で前の奴もこっち向いたぞ…」

「え゛」

伊吹の注意に、詰まったような声を出し、ハヤテはぎこちなく前を向く。

視線を向けると、伊吹の言った通りに、先程まで前を向いて歩いていた女子生徒がこちらを不思議そうに見ていた。

「いや、あの、えっと…!?」

そんな様子の女生徒に、どうやって弁明したものかと呻きながらハヤテは脳を必死に巡らせる。

そんなハヤテの横で「落ち着けよ。キヒヒッ」と落ち着いた伊吹の言葉が聞こえてはいるが、ハヤテの脳はその言葉を正しくは認識してくれずにいた。

そんな中、少女は三人の方向に一歩進み、二歩、三歩と歩を段々進める。

そんな女生徒の行動に、ハヤテの慌てようは更に数段加速される。

あえて心の中を表すなら、(あわわわわわわわわ…!?)といった所であろう。

そしてそのまま、ズンズンとハヤテへと近づき…。

「……むっ!」

スッと、そのまま通り過ぎた。

「………………へ?」

ポカンとしたハヤテを無視し、女生徒はそのまま更に歩を進める。

そして、ハヤテの後ろで何故か背後を向いていた零司の前で立ち止まった。

「……零司?」

「ヒトチガイデスヨー」

何故にカタコト。思わずそう突っ込みそうになる二人だった。

そんな零司の言葉が気に入らなかったのか、女生徒は「う・そ・だっ!」と妙にテンポよく大声を上げる。

「私が零司の事を忘れるわけがないっ!」

「イヤイヤ、ワタシレイジナンテナマエノヒトジャナイデスヨ?」

「それこそ嘘でしょ!?というか声まで変えられるなんて相変わらず器用だねぇ!?」

「コレハジゴエデース♪」

「だから嘘でしょ!?あの頃から匂い変わってないし!」

「匂いって何だよ!?」

流石に琴線に触れる言葉があったようで、勢いよく零司は振り返った。

『あ』

「……………あ」

「………あはっ♪」

しまったぁ…!と言いつつ、ガシガシと乱暴に零司は頭をかく。

最初は後悔が表情に出ていたが、やがて諦観が前面に出てきた。

そしてついに。

「……久しぶり、美香」

「うん♪久しぶりっ、零司♪」

苦笑いと共に、認めた。

(……僕ら蚊帳の外なんですかね、伊吹君)

(だな。面白そうだから見てようぜ。キヒヒッ)

(そうですねー♪)

そんな二人の様子を小声でやり取りしながら見守ることに決めた二人。野次馬根性とも言えるが。

「最後に会ったのって中学の卒業式の一瞬だけだよね?」

「まぁなー…。めんどくて途中で抜けたし」

「あいかわらずめんどくさがりな所はあるんだね…」

呆れた苦笑いをしつつも、喜びの方が大きいのか、割と喜色の笑顔を浮かべる美香と呼ばれていた女生徒。

そして、突如笑みを引っ込めると、体を震わし始めた。

「……先に謝っておくよ零司。ごめんね♪」

「いや何を―――」

それ以上の言葉は零司の口からは続きはしなかった。

理由はただ一つ。先に述べてしまうのなら、言う暇が無かったのである。

そしてその具体的な行動とは、

「零司――――!!」

ピョーン、と擬音がつきそうなまで見事なジャンプを美香と呼ばれていた少女がしたからである。

勿論、叫んでいた通りに零司に向かってである。

「はぁっ!?」

その突飛な行動に、素っ頓狂な声を上げる零司。

そして。

「どーん♪」

「ぐっふぅ!?」

まともに反応する事も出来ず、のしかかれ、もとい押し倒される。

そんな光景に(あー…)とどこか冷静に見ているハヤテと(面白そうだなぁ…♪)と玩具を見つけた子供のように口元を歪ませている伊吹だった。

傍観の二人はさておき。見られている二人はというと。

「わー…♪やっぱ落ち着くなー…♪」

「いや、人を押し倒すような事しといて、尚且つ人の上で和むんじゃねぇよ!?」

歩道に倒れた零司の上で、美香という女子生徒が何故か和んでいた。

「いやー……三年ぶりな気がするからね。こういうの」

「いや別にやらなきゃいけないわけじゃないよなぁ1?」

「やーだー!こうすると落ち着くんだもん!」

「知るかぁあああああああああああ!!」

割と真面目な咆哮に、零司の上で身を縮こませる少女。

だが、それでも零司の上からどこうとはしなかった。

「あー、もう!本当にめんどいなぁ!」

とうとう堪忍袋の緒が切れたのか、先程よりも怒りを込め、零司は叫んだ。

「いい加減に……っ」腕を掴み、体を前から後ろへと軽く揺らし「しろっ!」その勢いに加えて腕の力を使い、見事に後ろへと投げ飛ばした。

「えぇーっ!?」

驚きと共に、少女は軽々と投げ飛ばされた。

「えぇっ!?」「はぁっ!?」

そして、それを傍観してたハヤテと伊吹も思わず声を上げてしまった。

まさか零司が女性を投げ飛ばすとは露ほどにも思っていなかったのだろう。

因みに。男子を投げ飛ばすところなら二人は腐るほど見てきてたりする。

そういう時は決まって、零司が下級生と話してるところだったが。

ともかく。二人は助けようと体重を前に傾けた。

その時。二人からしたらありえないような光景が繰り広げられた。

対象は、先程投げ飛ばされた女性。

その光景とは。

「よっ…!」

空中で体を捻り、安定した体勢へと少女は移行し、

「はっ」

そのまま地面に手をつき、軽く跳ねるように後ろへ飛んだ。

そして、クルクルと一回転ほどして、「やーっ!」体操選手顔負けの着地をした。

『……………』

そんな一連の光景に、ハヤテと伊吹の両名は唖然となる。

今見た光景が何とも予想していなかったのもあるが、それ以上に自分達でも出来るかどうかわからない事を平然とやってのけられた事の方が何よりも驚きだった。

「いや、零司!?流石に投げるのは酷くない!?」

そんなハヤテ達を無視して、着地を華麗に決めた少女は零司に詰め寄る。

詰め寄られた零司は零司で「いや、お前だし」と平然と言ってのける。その内容が理由には微塵にもなってない。

「あーのーねー!」

「あー、うっせぇな」

いい加減に対応がめんどくさくなってきたのか、零司は適当に突き放すように会話を打ち切り、ハヤテ達のほうへと顔を向けた。

「おいそこの傍観者二人」

『はいっ!?』

内心ビクビクしながら二人は同時に返事をする。その際、声が裏返ってしまっていたがしょうがない事であろう。

そんな様子の二人を見て、零司は溜息を一つつき「ま、いっか」と呟いた。

「あのー…?」

そんな零司の様子に、恐怖が消えたのか、おずおずとハヤテが手を上げた。

「ん?」

「さっきから何も言わなかったんですけど……その方、誰ですか?」

「うんまぁ……所謂幼馴染って奴だよ」

そう言うと零司は、「ほれ、自分でやれや」と女生徒を自分の前に押し出した。

「んじゃ、自己紹介だねー♪」

押し出されたのにも拘らず、満面の笑み。

(まさか…!?)

「うん、そういう性癖は持ってないからねぇ!?」

「あれ!?顔に出てました!?」

「思いっきり!」

グッ!と親指を突きつけられ、恥ずかしさに頭を抱えたくなるハヤテだったが、何とかこらえる。正直な話、ヒナ祭り祭りのあの格好の方がよっぽど恥ずかしい。

「まぁともかくだよ」仕切りなおしと言わんばかりに一つ咳払いし「私は松原美香♪さっき言われたとおり零司の幼馴染の女の子ですっ♪」満面の笑みでそう言った。

「は、はぁ…」

だが、それに対してハヤテは何とも微妙な反応だった。もしかしたら苦い顔をしてるかもしれない。

何故か。それを訊かれたのなら、こうしか答えは無いだろう。

『零司の幼馴染と言われたから』。

何とも失礼ではあるのだが、零司の幼馴染という所にハヤテは何か嫌な予感を感じてならなかった。

「絶対違う絶対違う…!」

「……ね、ねぇ零司。何で自己紹介した途端に自己暗示をかけるかのようになられたの…?」

「気にするだけ無駄だろ」

ま、後で殴っておくが。とは言わないでおいた零司であった。

「まぁ、ともかく」ビシッ、と零司は親指でハヤテと伊吹の二人を指し「あっちの執事服着てるのが綾崎ハヤテ。制服着てるのが月乃伊吹」と軽く紹介した。

「二人共よろしくっ♪」

「キヒヒ…。よろしく…?」

零司の紹介とそれに関する美香の反応に対し、伊吹は半分困惑で返し、

「絶対違う絶対違う絶対違う…!」

「お前はいつまでそうなってんだよっ!」

「あ痛ぁ!?」

ハヤテは今の今まで自己暗示をかけており、零司に殴られようやく意識を現実に戻した。

「……あれ?僕何やってましたっけ?」

『この短時間を忘れたっ!?』

まさかの発言に、三人は同時にツッコム。

驚愕に染まる三人をよそに、ハヤテは何で怒鳴られたのかわからず、首を軽く傾げていた。

そんなハヤテを見て、零司と伊吹は溜息をつき、美香は「あぁ…」と納得の声を出した。

「成る程…。やっぱり零司の友達だね…」

「ちょっと待て。何か思いっきり不名誉な事を言ってねぇか?」

「言ってないよー?まぁ、褒めてもないし貶しても無いから……いいよね?」

「いいわけあるか」

頭を撫でるように、平手で零司は美香の頭をはたく。スパーン。と小気味いい音がしたが、力を入れてなかったのははたから見ても明らかだった。

「……仲いいですねー」

「だな。キヒヒッ」

『え?普通じゃね?(じゃない?)』

いや、普通では無い。そう思った二人、というよりもハヤテだったが、何となく違和感があったのでツッコムのはやめといた。

「ところで……執事の二人は、仕事いいの?」

『……あ』

執事二人は顔、いや体全身からサーッと血の気が引くのがわかった。

「やっべぇ!早く行かねぇと!!」

「僕も色々と六花さんに頼まれてるんでしたーっ!!」

血相を変え、血色を何故か変え、零司とハヤテは急ぎその場から走り出した。

また明日ねーっ!!そんな声が、走ってる零司の耳に聞こえた気がしたが、必死な零司の脳は、理解はしてくれなかった。





       *    *    *





そして翌日の昼休み。

生徒全員が多少長い休み時間に、気を抜く時間。

「零司―!!お昼一緒に食べよーっ!!」

『わぁっ!?』

だが、その時間は終わりのチャイムが鳴り終わる前に、儚くも崩された。

その原因は、教室の扉をスパーンッ!!と勢いよく開けた美香によってであった。

気を抜いているところに、急に大きい音が聞こえれば、何が何でもびっくりする事だろう。

そして、それは零司も例外ではなかった。

「…………」

背伸びしてたところに、美香が入ってきたので、椅子ごと後ろに倒れた零司。そのまま零司は、ゆっくりと立ち上がる。

「おい美香ぁ…」

「え、何?って、怖っ!?今めっちゃ怖いよ零司!?」

一歩。一歩と、美香に零司は歩を進めていく。それに合わせ、美香は逃げるように一歩ずつ退いていく。

「あのなぁ…?突然教室のドア勢いよく開くバカがいるかぁー!!」

一喝。

教室の窓が震えるほどの声量で、零司は叫んだ。

「ごめんなさーい!?」

その声に、反射的に謝る美香。

だが、それぐらいで零司の気が収まるわけがない。

たんっ、と床を蹴り、一歩で美香の前に詰め寄る。

(あ)

突如目の前に零司が現れたのには、全くもって驚きはしなかった美香だが、嫌な予感。というよりも、痛い目にあう予感がした。

そして、その予感は運が悪くも当たってしまった。

ガッ。と美香の頭を大きな手が掴む。

「反省しろや…!」

ミシッ。

間髪いれずにそんな音が美香の体の内部から聞こえた。

「いたたたたたたたぁ!!?」

痛みに耐え切れず、悲鳴を美香は思い切りあげるが、零司は力を緩めるどころか強めていく。

ミシミシミシ…。と更に異音が体、というよりも完璧に頭蓋骨から聞こえてくる。

(マズイマズイマズイーっ!?)

全身が死の危険性を訴えるが、痛みの方が勝ってるせいか、体は思うように動いてはくれない。

「……ま、ここら辺で終わっとくか」

そして、突然零司は手の力を緩めた。

ふっ、っと消える頭蓋骨への圧力。それが無くなった事で、思わずへたりこんでしまう美香。

「あぅ…。痛いよ…」

「自業自得だ馬鹿」

こめかみをさすりながら、涙目で零司を美香は見上げるが、零司は手酷い言葉で返すだけだった。

「……だよねー♪」

そんな返しが、何となく嬉しいのか笑顔で、ピョン、と軽く跳ねて再び立つ。

「さっ、食べよ零司♪」

「……お前マジでタフだよな…」





「それで……なんで僕らを巻き込むんですか?」

「え、気分以外に理由いる?」

えー…。とハヤテはとても不服そうだったが、零司は無視して弁当に箸を伸ばす。

時間としては、あれから数分程度経った後。零司は美香に加え、ハヤテと伊吹を巻き込み、教室内で弁当をつついていた。

余談ではあるが、美香に対するお仕置きもといアイアンクローは、何でもないようにスルーされてたりする。

零司がやっているから。その一言で済む話ではあるが、何ともスルースキルの高いクラスメイト達である。

最も、それくらい出来なければこのクラスではやっていけはしないのだが…。

閑話休題。

「ところでよ」

「ん?」

「何で松原ってそんなにお前に懐いてるわけ?キヒヒッ」

「あ、美香でいいよー。名字で呼ばれるのって慣れないし」

「え?そうなんですか?」

「まぁねー。まぁ、松原ってのは家の名前なわけ。だから名字で呼ばれるとさ、何か私自身じゃなくて家を見られてる感じがするんだよねー」

「あー…。何となくそういうのって窮屈そうですよね…」

「実際窮屈だけどね。というわけでよろしくっ♪」

「というか話戻していいか?思いっ切りとは言わんが結構脱線したんだが」

あ、ごめん。そう美香に言われ、零司は嘆息して弁当のおかずを一つ口に入れる。

口に入れたかぼちゃの煮物を一回二回三回と咀嚼。その度に口の中に広がる甘い味。

(……何でこんなよく染み込むんだろうか…)

少々真剣に悩み始めるが、伊吹から「おい、零司」と催促の声がかかったので、渋々ながら零司は箸で美香を指す。

「簡単な話はこいつに聞け。説明するのめんどい」

「おい」

「んじゃ、美香よろしく」

「了解―♪」

基本的に説明を押し付けられるというのは嫌なはずなのだが、何故か美香は役目を受け取ると満面の笑みになった。

それに伊吹は疑問になりながらも、美香の言葉を、おかずを口に運びながら待った。

「んーとねー…。簡単に言うとね」

「言いますと?」

「私が零司の事が好きだから。かなっ♪」

『……は?』

美香の口から出た言葉に、ハヤテと伊吹は理解が追いつかなかった。

好き?

誰が誰を?

「…………あの、誰が誰を好きですって?」

確認するように、ハヤテは美香へ問いかける。

その質問に、美香は笑顔になり、

「私が、零司を、好きだって事だよ?」

『………………………はぁ!?』

流石に二度目を言われればちゃんと理解もしたようで、二人は声を荒げ、我関せずを貫いている零司に同時に振り返る。

「あん?」

急に視線を向けられた零司は、怪訝な目を二人に向けるが、二人は零司の視線をものともせず、零司に詰め寄る。

「色々訊きたいんですけど零司さん!?」

「何!?お前は何がしたいの!?付き合ってるの!?」

「いや、付き合ってないけど…?」

「じゃあ、何ですか!?フッたんですか!?」

「フッてもないが…?」

『じゃぁどんな状況!?』

フッてもない。付き合ってもない。こんな状況を何というのだろうか。

「まぁ、単に保留されてるような感じなんだけどねー♪」

「稀にも見ないような展開ですね、それ?!」

最早ツッコム事しか出来ないハヤテであった。

だが実際、この二人の中では稀にも見ないような展開が開かれているのは事実だろう。

「……じゃあ、訊きますけど」だから、ハヤテは恐る恐る藪を突っつく様に「いつから告白を保留してるんですか?零司さん」そう尋ねた。

それに何故か零司はキョトンとし、箸をくるくると空中で数回回した後、「……小三の頃辺りからか?」とポツリ呟いた。

『長っ!?』

「え、長いか?」

「長いわ!長すぎるわ!!」

「えー?でも、年取ると案外早く感じるけど?」

「まだ僕達若いですよね!?まだ十代ですよね?!」

「そう思ってるのは自分だけだよ、ハヤテ君」

「美香さんまで混じるのやめてもらえます!?」

「つか、そんな期間あったら自然消滅しそうなもんだと思うんだがな!?」

「あー、そこは問題が無かったっちゃ無かったんだよな」

「そうそう。何故なら私がしょっちゅう告白しなおしてたからね!」

「無駄にポーズ決めて言う事でもないと思います!!」

「えー。そこは個人の自由だよー。自由権心外しないでよー」

「憲法一切関係ねぇ!?」

「……よし、終わるか」

「だねー。これ以上弄るのも可哀想だし」

『なら最初からやるなっ!!!!!』

最後に見事なまでにシンクロしたツッコミをして、ひとまずこの会話は終わった。

終わったのだが……何ともハヤテと伊吹の疲労は多大だった。

ゼェゼェと息を切らしつつ机に突っ伏しそうな二人とは対照的に、零司と美香は平然と弁当を食べ進めていた。

そんな二人を見て、ハヤテは美香をやはり零司の幼馴染だと思ったのだった。





       *    *    *





それから数日の間、美香は事あるごとにハヤテ達の教室に遊びに来た。

そんな事もあってか、数日後にはすっかりハヤテや伊吹だけではなく、クラスまでもが美香の事を気にしなくなっていた。

そして、その数日経った後の、放課後の事。

零司は一人で校内の外を歩いていた。

「くぁ…」

何となく、いや、確実に以前も同じように欠伸したなと思いつつ、零司は一人寂しく帰り道を歩く。

別に零司としては寂しくもなんとも無いのだが、周りを複数で歩く学生達を見ると、若干寂しい気がしてならないのである。

といっても、今日は一人で帰らなければいけない理由がちゃんとあるのだが。

というよりも、一人で帰るしかないのだ。

まず、ハヤテはいつも通りアテネや六花の仕事が終わるまで校内で待っている。

次に伊吹。こっちはこっちでカードが補給できたから、あの教室で絵を書いてるという。

別にアパートで書いても同じだと零司は思っているのだが……伊吹は「学校の方がはかどるんだよ。キヒヒッ」と言っていたので、特に言及もしなかった。

最後に、主であるナギ。こちらは昨夜、ゲームで零司が負けたので今日は学校に来ていない。

などと、三つの理由から零司は今一人で帰っているのであった。

(まぁ、美香がいないのは結構意外なんだが……あいつも色々あるんだろうな)

そんな事を考えながら、零司は歩みを続けていると、何事も起こらずに校門が前方に見えた。

(……ん?)

が、そこで見覚えのある姿を零司の目は捉えた。

腰まで伸びてる茶髪を、ポニーテールにした髪形。

何年も昔から見てきて、今も殆ど変わっていない後姿。

自分の幼馴染である、美香が校門前にいた。

「おー―――」

そうして、声をかけようとして―――やめた。

(……誰だあれ)

一歩踏み出して気づいたが、美香の前に誰かいたようで、美香と何かを話していた。

なので、零司は声をかけるのをやめたのだが…。

(んー…。あいつって多分…)

いい噂を聞かない奴じゃ…?と口内で呟く。

美香と話していた者は、性別は男子。

そこは別にいいのだ。昔から美香は男子から人気があったし、美香自身も性別関係無しに分け隔てなく接していた。

だから、話し相手としては問題は無いのだが。

問題なのは、その話し相手なのである。

(……結構ごっちゃだなぁ)

色々とややこしいな。と思いつつも、零司はその話し相手、良い噂を聞かない男子の事を思い出そうと頭をひねる。

(……ぬー…。噂の内容は思い出せても、名前までは思い出せないかー…)

「まぁ、興味なんて微塵もなかったしな」

ボソッと、周りの誰にも聞かれぬように呟き、零司は止めていた歩を美香に向かって進めた。

「おーい、美香―」

若干めんどくさそうに言うと、美香は話していただろう話を打ち切りもせずに、勢いよく振り返った。

それは失礼だろ、と零司は思ったが、振り返った際の美香の顔には笑顔が浮かんでいたので、何も言えなかった。

甘いなぁ…。と思いつつ、零司はそのまま美香に近づいていく。

その距離が近づくにつれ、美香の笑顔は輝きを増していく。もし、尻尾があったのならちぎれる勢いで振られている事だろう。

「よぉ」

「やっはー♪今帰り?」

「そりゃそうだろ。下校なのに下校しない奴がいるか」

「いや、宿直の先生とかさ」

「それは生徒じゃねぇだろ…」

「そっか。でも、学校に寝泊りする人とか…!」

「そいつは色々とやばい物を背負ってそうだなぁ!?」

「ね!だからいると思うんだ!」

「いねぇよ!?いたら一瞬で全校集会開いてるわ!!」

「!!」

「何でそこで驚くんだ!?」

「いや、そこまで思ってなかったから…!」

「思えよ!最初に思えよ!!」

「いやー……ねぇ」

「いやいやいや」

流石にアホか…。と呆れ始めた時、零司は美香と話していた男子がこちらを睨んでいたのに気づいた。

(素で忘れてたぜ)

何気に酷いが、事実美香に突っ込んでたら周りが見えなくなっていたので、しょうがないといえばしょうがない。

「おい」

と、零司がこちらを見たのを感じたのか、男子が怒りを含ませた声で零司に話しかけた。

「何?」

零司としては、普通に返答した。そう思っていたのだが、

「貴様!僕が美香さんと大事な話をしていたのだぞ!!」

何故か男子は怒った様子で零司に詰め寄った。

「……えー…」

その怒った理由が全くもって理解出来ない零司は、ただ困惑の声を出すしかなかった。

そんな零司を無視して、男子は続ける。

「大体貴様は美香さんの何なんだ?」

何と言われようが、零司の答えはたった一つ。

「ただの幼馴染」

きっぱりすっぱりと零司断言すると、隣で美香は「幼馴染…」と複雑そうに呟いていた。

それを目ざとく発見したようで、「はっ」と男子は零司を鼻で笑った。

「その反応を見ると、美香さんは貴様の幼馴染でいる事が嫌そうじゃないか」

いや、違うんだが。と脊髄反射で反論しそうになった零司だが、言ったら言ったでめんどくさそうと判断し、必死に押さえつけた。

だが事実、美香が複雑そうに呟いた理由は、零司が自分をそういう風に見てくれていない事に対して残念と思ったからである。

だがそれを初見で判断するのは難しいだろう。

しかもハヤテや伊吹達のように美香がカミングアウトしたわけではないのに、推測するのはほぼ不可能に近い。

なので、仕方ないと言えば仕方ないのだが…。何とも釈然としない感じの零司だった。

「……もうめんどくせー」

「なら、今すぐいなくなるといい。美香さんもそれを望んでいる事だしな」

「いや、勝手に人の気持ちを決め付けるなよ、モブキャラ」

「モッ…!」

一瞬で顔を真っ赤にし、男子は零司の胸倉を掴んだ。

「いい加減にしろよ一般庶民…!」

「うっせ七光り」

「何だと…!」

「語彙少ねぇぞキザ野郎」

「キザ…!?」

つか放せ。そう言って、零司は軽く力を入れ、掴まれた手を離させる。

その時に若干強く力を入れすぎたのか、男子はふらつき、地面に力なく座った。

それを見てから、零司は側にいる美香へと、

「あー、めんどくせ…。おい美香」

「はいはい?」

「帰るぞ」

「りょーかい!」

ビシッ!と何故か敬礼を返し、美香はスキップでもしそうな歩き方で先に校門をくぐった。

後には、地面に座った男子と、それを見下すように見下ろす零司が残った。

「……言っとくけどさ。お前じゃ無理だよ」

それだけを言い、零司は美香の後を追うように男子に背を向け去っていった。





その数分後。

「くっそ…!何だあの下衆は!」

そこには悔しそうに地面を叩く、男子生徒がいた。勿論、先程零司に座らせられた男子である。

「何故、あいつが美香さんとあそこまで仲がいい…!」

自分の方が全てにおいて優れている。そう妄信している。

だから。

「……あいつを許さない…!僕の方が優れている事をわかっていない奴には、僕が直々に裁きを下してやる…!」

そんな方法を取るのだ。





       *    *    *





「あー…。本当にありがとね、零司…」

「急にどうしたよ」

校門を出てから少し後、美香が突然お礼を言ってきた事に零司は多少驚いた。

「さっきのだよ…」

「さっきのって……七光りキザ野郎の事か?」

「うん」

「……本当にお前疲れてるのな」

適当にあだ名的な感じで言ったのだが、まさか突っ込まれずに進むとは思わなかった。

まぁ、それ程に疲れているのだということはわかったのだが。

「つか、あいつ誰よ」

「同じクラスの久坂君…」

「ふーん。どうせアレだろ?いい噂聞かない奴の」

そ。と短く返答しただけで、美香はそれ以上何も言わなかった。

その反応で、零司も噂がほとんど真実だと言う事がわかった。

(噂が本当だとすると……危険だな、美香)

噂の内容。零司が訊いた限りでも全てが嫌な感じのものであった。

例えば、久坂に殴りかかろうとしたとある一生徒が学校から突然いなくなったり。

例えば、久坂に注意をした先生一人が突如学校を辞めたり。

そんな内容の噂しか聞いたことがなかった。

しかも、全て親の権力に物を言わせてやったと言われ、親は暴力団やヤクザなどといった組織と繋がっているとか何とか。

(……ふむ)

それらの噂が本当だとしたら…。そう考えるが、何もできる事が無い事に零司は気づいた。

というよりも、やる気なんて微塵も無いのだが。

「……ま、気をつけとけよ。美香」

「うん…。でも、色々と疲労困憊だよぉ…」

「なら今日はとっとと帰って寝てろよ」

そうするぅ…。と美香が力なく呟いたところで、ちょうど分かれ道にさしかかった。ので、適当に二人は別れた。

一応、零司は美香が見えなくなるまで見ていたが。

そして、美香が見えなくなったところで零司も三千院家に向かって歩き出す。

その道すがら、零司は思考を巡らせ始める。勿論、考える内容は久坂の事である。

(多分、というか絶対に久坂は美香に好意を抱いてる。だから、あんなにアプローチしてるんだろうな)

まぁ、実ってるかどうかは別だが。と思う零司ではあるのだが、実際的に実ってない事は一番零司が知っている。

(んで、今日の事があって、噂を統合して考えると…)

「十中八九、か」

そう呟くと、これから起こるであろう事を想い、辟易しそうになる零司だった。





       *    *    *





そして、その夜。時刻としては大体十一時ごろ。

暗闇に支配された街を、零司は歩いていた。

勿論三千院家からの帰りであり、仕事帰りである。

(今日の晩飯何かな…)

度々鳴る腹の音に従って、そんな事を考えながら零司は帰路についていた。

「ん?」

そんな時、ポケットから振動が伝わってきた。

そういえばマナーモードのままだったか。と呟きつつ、零司はポケットから携帯を取り出す。

振動が長続きしなかった事から、メールと判断し、零司は携帯を起動させる。

が、すぐにその一連の動作を後悔した。主に、携帯の起動を。

「……しまった。迷惑メールフォルダ作るの忘れてた…」

そんな些細と思われることに、零司はうぁー…!と唸るほどに頭を抱えた。

何故作っていなかったのか自分。そんな風に自分を責めるまでに。

「……まぁ、作ってたって変わりはしないよなぁ…」

だがしかし、結局は変わらないと判断を下し、零司はクヨクヨした気持ちをどこかへ捨てる。

起こった事は後の祭り。後悔したところで前には進まない。なら、開き直って適当に進もうではないか。

という訳で、出鱈目な羅列の差出人のメールを開く。

そのメールにはこれだけ書いてあった。

『美香さんは預かった』

「ふむ。短いが中身はわかる良い文だな」

精一杯の皮肉を言葉に込め、そんな事を呟いてみる。

(流石に予想外の速さだよ…!)

まさか今日あったばかりなのに、今日に決行するとは。

来るだろうと予想していた零司ですら、予想だにしていなかった。

「あー……んでよぉ…」携帯を閉じ、ポケットに仕舞いつつ「周りにいる奴、出てきていいぞ」そんな言葉を暗闇の中に投げかける。

その言葉に対する返事はなかったが、零司の前方から数人の黒服の男が出てきた。

(後ろも、か)

その際に感じたが、後ろからも数人出てきたらしい。

それを察知した零司は、めんどくさそうに頭をガシガシと乱暴にかく。

「んで?お前らさ、久坂のSPとからだろ?何の用?」

俺さっさと帰りたいんだけどー。とやる気なく言うと「……黙ってついて来い」そう一人が言った。

「普通に断るけど?」

「……これを見てもそう言えるか?」

スッ。と懐から一人が拳銃らしき物を出す。それに呼応するように、周りの黒服たちも次々と懐から拳銃らしきものを出し、零司に向けた。

こんな状況になれば、普通の一般人なら萎縮して、素直に言葉に従う事間違いないだろう。

だが、零司は生憎と一般人などというカテゴリーには入っていない。

なので、零司はごく普通に「うん、言える」と言った。

その言葉が気に入らなかったのか、ピキッ。と青筋を黒服たちは一斉に立てる。

それに気づきながら、零司は「だからさー。とっとと久坂の所に案内してくれね?」と平然と言い放つ。

そんな言い草に、とうとう一人の黒服が痺れを切らした。

「ふ、ふざけるなぁ!!」

撃鉄を起こし、標準を零司に合わせて引き金を絞る。

乾いた音を拳銃は発し、銃弾は放たれ、零司に当たるはずだった。



零司の周りで浮いている、黒い何かがなければ。



「……短気だねぇ…」

明らかに失望を声に滲ませながら、零司は周りに浮かせている黒い何か、もとい砂鉄を操作して、剣の形に変える。

そんな人間業とは思えない光景に、黒服たちは見てわかるように動揺を走らせる。

「ま、死ぬなよー」

それを零司が逃すわけも無く。問答無用に、零司は砂鉄剣を振るう。

ギャギャ!と剣は砂鉄を擦り合わせつつ、零司の前方の黒服に襲い掛かる。

「ぎゃぁ!?」

「ぎっ!?」

「げばっ!?」

奇声を上げつつ、斬られた黒服たちは次々に血を出しながら倒れていく。

「ば、化け物…!」

「うんそう。だから、お前らも倒れとけ」

後ろの黒服たちの怯え声ににも答えつつ、零司は再び砂鉄を走らせる。

今度も、砂鉄は黒服たちに襲い掛かり、一瞬で蹂躙していく。

血を噴き出し、悲鳴を上げ、黒服たちは地に倒れていく。

そして、やがてその場に立っているのは零司一人になった。

「……手加減も大変だなぁ」

一応手加減してたと、聞こえてるかどうかは定かではないにしろ、アピールして、砂鉄を霧散させる。

「さって、と」

霧散させ終わったところで、零司は倒れ伏している黒服たちを見渡す。

「意識のしっかりしてる奴は…」

少しキョロキョロと見渡したところで、呻いている黒服を発見。すぐさまに零司は近づいていく。

「うぅ…」

「おーい?聞こえてっかー?」

「く、くぅ…!」

零司が近づくと同時に、悔しそうな顔をした。流石にちょっぴり傷ついた零司。

だが、それはともかくとして訊く事があるので、目の前にしゃがみ、問いかける。

「美香はどこにいる?」

「………………ここから一番近い港の、三番倉庫だ」

「ありゃ。案外素直に教えてくれんのな」

「あんな力を見せ付けられたはな…」

そりゃそっか。と適当に返すと、零司は立ち上がり―――黒服の顔を蹴った。

「ごっ!?」

蹴られた黒服は顔から血を垂れ流しながら、地を転がり血の道をある程度作ったところでぐったりと動かなくなった。

「用済みはいらないんでね。色をつけて返してやったぜ♪」

満面の笑みで聞こえていない男に告げると、零司は背を向け、港へと歩き出した。

(特に時間指定もされていない。なら、晩飯食ってからでもいいよなぁ…)

一瞬そんな非道な考えが頭をよぎる。

が。

(……まぁ、そんな事するわけないがな)

あの人たちも怖いしな…。と同時に頭によぎった人達の事を頭から追い出すように、脳を振る。

「……さて、要請してから行くとすっかねー!」

だがしかし、それでも頭からは追い出せなかったようで、零司は思い出さないように大声を出す。

そして、ポケットから再び携帯を取り出し、零司は走り出した。

(……嫌な予感するしなぁ)

胸中に嫌な予感を感じつつ、零司は携帯を操作し、とあるメールアドレスを呼び出す。

(ま、こいつらいれば何とかなるだろ)

適当に文面を打ち、送信。数秒もしないうちに返信が帰ってきたのには驚いたが、内容に微笑む。

「これで、憂いは無いな…!」

凄絶な笑みを浮かべ、零司は美香を救出するべく、さらにスピードを速め、暗闇の中に消えていった。





――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――



よっし、終わった!

という訳で、新キャラ松原美香です!!

美香「よろしくねーっ♪」

本文に書いたとおり、零司に好意を抱き、すでに告白した女の子です!

まぁ、返事貰ってないんだけど!!←

ハヤテ「そこは奇妙ですよねー…」

伊吹「本当にな。キヒヒッ」

零司「うっせ」

まぁ、零司にも色々あるからね…。

そんで、久坂だけど……はっきり言って使い捨てキャラだよっ!!

ハヤテ「えぇっ!?」

伊吹「そんなオーラはしてたがなぁ…。キヒヒッ」

まぁ、ざっくり言ってキザ野郎的な感じだからねー。

美香「ああいう人は嫌いだよ…」

零司「だろうなぁ…」

さて、次は……うん色々と予想外かもしれないね!!

ハヤテ「予想外…?」

うん、予想外。ま、次だよそこはさ。

というわけで、今回はここで終わります!!さよならですっ!

美香「それではー♪」
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Re: 誰がため、何のため 2/11更新 ( No.72 )
日時: 2013/03/15 00:50
名前: コサッキー

イェーイ、一ヶ月ぶりー♪

ハヤテ「明るく言う事じゃないですよね!?」

まぁねー♪……でもね?テストはどうしようもないんだよぉ!!

零司「逆切れすんな!」

伊吹「キヒヒ…。単に作者の書くスピードが遅かっただけな気もするがな…」

はい、スイマセン。

ハヤテ「……なんかションボリしちゃったんですが…」

零司「まぁ、何でもいいがな」

ま、ともかくどうぞ!

伊吹「立ち直り早い…」



――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――



夜の闇が完全に街、ひいては日本中を暗闇に染めたであろう、午前一時十四分。

そんな真夜中といっても過言ではない時間に、零司は一人コンクリートの上に目を瞑って立っていた。

目を瞑ってる事で、普通よりも遥かに匂う、潮の匂い。

目を瞑っているから、普通よりも遥かに耳、更には体中に響く、防波堤に当たって砕ける波の音。

目を瞑っていても、時々目の裏にまで届く灯台の光。

余計な音が全く聞こえる事が無く、聴いてて、香ってて、佇んでいて、気持ちが自然と落ち着いていった。

「……久々に港に来たもんだが……やっぱいいな、こういうとこは」



零司は落ち着く場所が好きだ。

森や林、もしくは自然公園。緑が多い場所が好きだ。

海や湖。海なら波打ち際、湖なら湖畔が好きだ。

山。登ってる途中の山道も、山頂から見える景色も、両方ともとても好きだ。

だって―――そこには、少なくとも無いから。

―――荒廃した景色も、残酷な景色も。

―――鉄臭い匂いも、焼け爛れた肉の匂いも。

―――赤く染まった何かも、動かない何かも。

全部、全部。そこには無いだろうから。



「……まぁ、完璧に無いとは思うほど子供じゃないけどさ」

とはいえ、どこにもゴミは散乱してるし、汚染もされてる。

綺麗だけな場所なんて無いとは知ってる。そういう面では嫌いかもしれない。

だが、その点だけ目を軽く瞑れば、好きなのである。

自分ながらに甘いとは零司は思う。

それは好きと言うのかどうか。恐らく好きとはいえないのだろう。

それでも、落ち着く場所。

(……こういう場合は避難場所ならぬ逃避場所って事になるのかねぇ…)

それはそれで嫌だわ。そう嫌悪感たっぷりに思うと、零司は気持ちを切り替える。

リラックスした気持ちから、若干だけ緊迫した気持ちへ。

「ふー…」

息を長く吐き、零司は目的地である、『3』と大きく書かれた倉庫に目を移す。

「ふむ…」

考えるように顎に手をあて、

「……漫画かっ」

小さく、突っ込んでみた。

だが実際、今回の事態になった時、最初に思ったのはそれだった。

美香をヒロインだとするならば、零司はそれを助けに来た主人公。

ありがちな漫画に置き換えてみるなら、確実にそうなるだろう。

「まぁ……ヒロインはわかるんだが…」

俺が主人公は流石にミスだろうなぁ…。と一人ごちる。

まぁ、誰もそんな状況に置けるように状況を知ってはいないので、結局は零司の妄想の範囲ではあるのだが。

「ま、それはともかく」

ゴキッ。ゴキゴキッ。と音を立てながら、手首と足首を回す。

「時間も遅いし」

コキッ。と音を鳴らしつつ、首を一回転。

そして。扉をノック。

「とっとと終わらそうかねぇ!!」

の代わりに、扉を蹴り飛ばし、零司は倉庫にお邪魔した。





       第三十五話「仮面の下の隠し事」





重い音、破砕音、何かが弾け飛ぶ音。それらの音が同時に上がり、一瞬倉庫内が震えた。

そんな予想以上だった音に、零司は顔を歪めながらも、壊れた扉の残骸を踏みつつ倉庫内に入る。

「おーい。来てやったぞ久坂―」

普通なら緊張するはずの空気の中、零司は気楽に声を倉庫内にいるはずの久坂に投げかけつつ、倉庫内を歩く。

その途中、視線を感じた。単数ではなく、複数のを。

(一、二……まぁ、ざっと見て二十はいるか…?)

その数を数えつつ、零司は倉庫内を見渡す。

後ろには自分で破壊し、外の光が降り注いでいる出入り口。

真正面には、不自然なまでに広がった空間。

両横には、真ん中の空間を空ける為に積まれたであろう、コンテナに棚の山。

「……ふーん」

久坂が何を考えているのかはわからないが、大体の予想はつく。

だから、ここで取るべき行動は一つ。

「くーさかくーん」

キィン…。と金属を弾く音。

「あっそびま…」

バチバチと紫電が零司の額辺りから舞う。

「しょうっ!!」

そして、爆音が倉庫を再び揺らがした。

「おーおー。案外出力は抑えたんだけどねー」

パラパラと倉庫の天井が軽く崩れる音が聞こえる中で、零司は「おっかしいなー♪」とケラケラと笑っていた。

零司は可笑しそうに笑ってはいるが、第三者が今の倉庫の状況を見れば、決して笑いはしないし、笑えるはずは無い。

「クハッ。それでもこの威力ってのは、少々いただけねぇよなぁ」

零司が放った攻撃。それは―――倉庫の壁の一面を、完膚なきまでに破壊していた。

そこにあったはずの壁の場所から月が見えているのが、威力を何よりも証明していた。

「いい加減に出て来いよ久坂ぁ!」

クハハハハッ!と声高らかに笑っていると、零司の前方にあったコンテナの影から、人影が一つ歩み出てきた。

「全く……噂どおりの化け物とはな」

コツコツとわざとらしく靴音を立てつつ、壊した壁から見える月に照らされるような位置、つまりは零司の目の前に久坂は立った。

久坂が現れた事に、零司は満足したように笑みを浮かべ、

「来てやったぜ?茶菓子の一つでも出しやがれクソ野郎♪」

ニコニコと笑顔で、軽く毒を吐いた。

「はっ…。こんなとこでもお茶菓子を要求するとは……やはり庶民は卑しいな」

「誰が庶民だこの七光り」

「貴様…!そこまで僕を七光り呼ばわりしたいのかっ!!」

「事実そうじゃね?」

なっ。と軽く絶句をする久坂を無視し、零司は首を一周させる。

次に、片手を上から背中に向かって手を伸ばす。反対の手も、こちらは下から背中に向けて伸ばす。

そしてそのまま、指先同士を絡めあい、同時に伸ばす。

「ん、んんー…!」

軽い痛みと共に、背筋がピンと伸び、体がほぐれていくような感覚も同時に起こる。

「はぁー…」

指を離すと、軽い脱力感。何とも心地よい感覚である。

「あー…。体をほぐせばいいと思ったんだけどなぁ…」

そう上手くはいかねぇよなぁ。露骨なほど残念そうに呟くと、零司は久坂に指をつきつける。

「さてさてさて。そっちの用件吐けよ。吐かないなら今すぐ帰るから」

「はっ。我慢も出来ないのか愚民は」

「あぁ、出来ないね。特に今はなぁ…!」

そう言うと、零司は暗がりの中で醜く顔を歪める。

頬は裂けたかと思うほどに広げられ、目は血走っていた。

月が照らしてるとはいえ、真夜中なのが幸いして、久坂には見えていないのだが。

もし見えていたのなら、間違いなく怯えていただろう。

そして、零司がそんな顔をしている事に全く気づかず、久坂は大仰に手を広げた。

「なら、しょうがない…。この高貴な僕が下賎な愚民に話をしてやろうでないか」

(はー♪腸煮えくりかえるってのー♪)

一々言い方が気に障って今にも獣のごとく襲いたくはあるが、零司は必死にこみ上げる衝動に理性を必死に動員させているので、それが出来ずに震えていた。

それをどう捉えたのか、久坂は調子に乗ったように言葉をさらに続ける。

「今日ここに貴様を呼んだ理由はいたって簡単だ。貴様の立場を理解させてやろうと思ってな」

(……いや、こいつ何言ってるの?)

一瞬素で何を言ってるのか理解できなかった。

立場?理解?

自分の立場と言えば、三千院家の執事。理解と言われても、何を理解すればいいのやら。

そんな零司の疑問をよそに久坂は口から言葉を発し続けていた。

「貴様は余りにも馴れ馴れしすぎる」

(いや、誰に対してだよ)

パッと思いつく人物はいたが、無理矢理に零司は心の中でそう突っ込む。

というよりも、ここにいる時点で一人しか思いつかないのだが。

「あの天使のような美貌に加え、鈴の音のような声。そして誰にでも優しいという聖母のような性格」

(よくもまぁ、そこまでべた褒め出来るもんだな)

呆れを軽く飛び越し、最早感心しか出来ない。

もしも零司が同じ人物を評価したのなら、軽い罵倒と褒め言葉が9;1という余りにも酷い結果にしかならないことだろう。

(……まぁ、所謂惚れた弱みって奴なのかねー)

というか絶対にそうだろ。と結論付け、話半分に聞いておくことにして耳を傾ける。

幸いにさっきまで必死に抑えていた衝動はどこかへ吹っ飛んでいた。

「それは本来僕のような選ばれた者に全て向けられるはずなのだ。それは他の愚民共もわかっているようだ」

(いや、お前が色々として黙らせてるだけじゃねぇの?)

「それは大変すばらしい事だ。身の程を弁えているからな。だがっ!」

声を荒げ、指を零司に鋭く突きつけ、

「貴様はどうだっ!!幼馴染だか何だか知らないが、ごく普通に話して!しかも、あろう事か僕との大事な話をしている所にずけずけとっ!身の程を知れっ!!」

(あ、こりゃめんどいタイプだった)

気づかれない程度に目を細め、物凄く後悔した。

まさかここまでとは思ってなかった零司は、呆れや怒りよりも憐憫の方の感情が出てきたのがわかった。

(まぁ、色々と言ってきたんだが……全部当てはまってて、それに加えて色々と加算とか…)

「正直笑えないわなぁ…」

まだクドクドと何かを垂れ流してる久坂の言葉を耳に通さず、そんな事を呟く。

『七光り』や『キザ野郎』は零司自身合ってると思っている。

そこに、さっきわかったと思われる『無駄にプライドが高い』と『異常なまでの独占欲』を加えると……正直言って、最悪の一言に尽きる。

そして、幼馴染として長い間一緒に過ごしてきた零司には、美香がこういうタイプが凄く嫌いだと言う事もわかっている。

(あー…。だからあの時凄く安堵した……というか、顔を輝かせたわけね)

うんうん。と納得したので何度も何度も首を縦に振る。

(まー、それくらいなら別にいいんだけどさ)

今回もそうだし。と小さく呟く。

(美香の両親にはお世話になってるし……あとまぁ幼馴染だし)

何に言い訳をしてるのか、自分でわからないままに言い訳をし、それ以上考える事をやめた。

「―――それほどまでに僕は美香さんの事を愛しているっ!!」

「っ!?」

瞬間、耳に特大の言葉が入ってきた。

それまで久坂が何を言っていたのかはわからない。だが―――それだけは妙にはっきりと聞こえた。

ドクン。

心臓が一度跳ねた。

じわり。蓋で塞いでた何かがあふれ出たような感覚が零司の中でした。

ドクンドクン。

心臓が二度跳ねる。

ごぼっ。容器から水のような物が溢れ出した感覚が今度はした。

(ま、ずっ…!?)

その錯覚のような感覚に慌てるが、もうそれは止まりそうにはなかった。

無理に押さえつけようにも、底から泉のように湧き出てきて、蓋を蓋として機能させてくれない。

(抑え、られね、ぇ…!)

少しでも顔の筋肉を動かしてしまえば、一瞬でそれは吐き出されてしまう事だろう。

だから、必死に押し留めていたのだが。

「だが貴様はどうだっ!どうなんだっ!!美香さんの事をどう思っているんだ!」

黙れ。黙ってくれ。

「幼馴染と思っているのか!!それとも―――」

やめろ。

「―――何とも思っていないのかっ!!」

バキッ。と何かが壊れた音が零司の中で響いた。

「……………だろ」

「……ん?」

「何とも思ってねぇわけがねぇだろ!!」

「っ!?」

一喝に似た零司の叫びに、思わず久坂はその場から数歩後退した。

そんな久坂を睨むように見つめ、零司は続ける。

「何とも思ってねぇだぁ…?んなわけあるか」

靴を思い切り地面に叩きつけ、甲高い音を倉庫中に鳴り響かせる。

「あいつの事を幼馴染としか見てない?そんなわけが無い」

すぅ。と大きく空気を肺に吸い込み、



「俺は美香の事が異性として好きだよ!!何か文句でもあんのかっ!!」



思いのたけを思い切り、叫んだ。

もうそこまでやったら止まらない。止まりそうにない。止まらせたくない。

我慢なんて嫌だ。したくない。

だから。

零司は被ってた仮面を今だけ捨てる。

その結果がどうなろうと、後悔なんて微塵もしないから。

「あー、ダメだダメだっ!」髪をわしゃわしゃと掻き毟り「素直になると真面目にめんどくさいよなぁ…!」と歓喜と失望の入り混じった声で叫んだ。

そんな零司を、久坂は明らかに困惑の目で見ていたが、零司はそんな事を気にせずに快活に笑った。

「あー、そうだそうだ!俺ってばこんな奴だったよ!そうだったよ!長い間隠してるとわっかんねー!!」

クハハハッ!!と大声で叫ぶように零司は笑う。

最早いつも学校等で見せてるキャラが見えないが、構わない。

「あー……そうそう。そうだそうなんだ。素直ってことはそういう事だよな」

うんうん。と二回ほど首を縦に振り、上から背中に零司は手を回す。

「つーわけで」そして勢いよく手を振り「悪いが、ちょっくら排除させてもらおうかねぇ!!」銀色に光る刀を取り出した。

「なっ!?き、貴様何故そんな物を持っている!?」

「クハッ。何、執事ってのには武器携帯が必須なだけさ」

「それでも犯罪だろうが…!」

「はっ。どの口が言うんだか。誘拐までしといて……って、あぁそっか」

手首だけで刀を回し、





「そういやお前、美香を誘拐なんてしてなかったよな」

・・・・・・・・・・・・
最初に倉庫の前についた時から気づいていた事を何と無しに言い放った。





「…っ!?」

流石にこの発言は久坂にも効いた様で、歪に頬を痙攣させていた。

そんな久坂のリアクションに、やっぱりかと内心溜息をつきつつ、零司は続ける。

「少し考えればわかることなんだよなぁ。美香っていう存在をさ」

そう。冷静に考えればすぐにわかる事なのだ。幼馴染の零司だけでなく、ハヤテや伊吹、さらには美香と会った事の無いアテネや六花ですら。

松原美香は大神零司の幼馴染である。それも、五歳の頃から親交があるという、かなりの縁である。

そして、美香は小学五年の頃に零司に告白し、その返事を貰っていない。

さらには、何度も零司に告白している。

ここで、零司と多少関わった者なら疑問に思うかもしれないことがいくつか浮上する。

「何故返事をしないのか」「何故普通にしていられるのか」「何故そんな関係に甘んじているのか」等々。

さて、ここで「何故返事をしないのか」という疑問について少し掘り下げてみるとする。

といっても、答えは別にあるのだが、嘘で真実に近い事を言うなら零司は間違いなくこう言うだろう。

「めんどくさいから」と。

勿論そんな言葉で片付けられるわけではない。が、この嘘の答えこそが、美香が誘拐されるはずのない理由に繋がっているのである。

「めんどくさい」。これは零司の性格である。自他共に認めている事実。

そのめんどくさがりの零司が、返事を保留している。それは関係ないのでいい。

問題は、美香が何度も告白しているという事なのだ。

人間、何度も何度も同じ事を言われればどんな内容にしろ辟易してくるものなのである。

それは勿論零司も例外ではないし、めんどくさがりという事も加えれば普通よりも程度が酷い事は容易に想像できるだろう。

そして、零司が何度も何度も告白され、告白に辟易するとどうなるか。

普通なら、それを無視するか怒るかの方法をとる。

それは零司にも漏れる事無く、零司もその方法を取った。

ただし、多少やりすぎた方法でだが。

無視するならば、全速力で美香から逃げ。怒るならば、気絶させるという手段を取るほどに怒った。主に電撃をスタンガンのように美香に流して。

……ここまで説明すればわかる人もいるかもしれない。

明らかに普通を逸脱している零司の行為。そして―――それにもめげない美香の強固な精神が。

普通ならそんな事をされれば、恋の熱なんてすぐさま冷めてしまう。

だが、美香はそんな事は無く、かえって燃え上がった。

そして、その燃え上がりを利用し、いつしか美香は零司が逃げれば追いかけ、零司が自分に電流を流してくればそれに耐えられるようになった。

補足のようなものだが、零司の全速力はかなり速かったりする。

つまり、そのスピードの零司を追いかけられ、加えてハヤテ達が目の当たりにしたあの運動能力の高さを加味すれば。



美香は、例え訓練されたSPが相手でも余裕で相手を出来るのである。



「っくよぉ…。頭に血が上ってたとはいえ、流石に頭から抜け落ちすぎだよなぁ…」

自分に失望したように、くくっ。と零司は喉を鳴らす。

多少無理に思えるかも知れないが、好きな奴の事くらい全部とは言わないから大体を覚えとけよと零司は自分に言い聞かせる。

最も、そんな事を頭の片隅に置いておけるような環境で零司は生きていなかったので、仕方ないといえば仕方ないのだが……納得がいかないのもある。

「ま、どうでもいいがな。所詮昔は昔。今に向き合って忘れなきゃいい事だ」

そして、思い出したように刀を久坂に向け、

「んじゃ、色々と危険なんで排除させてもらうぜ?」

口元に笑みを浮かべつつ、瞳に危険な色を浮かべながらそう言った。

「それはこっちの台詞だ愚民…!」

その雰囲気に全く押されることなく、久坂はそう返す。

零司はその姿勢は評価できると考えてるが、力が無い事に関しては評価はかなり下だった。

零司の自論、というよりも他論で気にいってる言葉で、『格上、もしくは対等、それか足元程度の力があってこそ、初めて同じテーブルにつける』という言葉がある。

当たり前だ。と思う者もいるかも知れない。

が、零司はそれは当たり前だが当たり前だとは毛ほども思ってない。

零司は、この世には自分の力量をまともに見れている者は少ないと思っている。

別にいないと言ってるわけではない。少ないのだ。零司の感覚としては、百人いたら十人はいないと勝手に思っている。

といっても、自分の力量なんて自分でわかる者は小数にも程がある。だからこそ、自分の力量ではなく他人の力量で自分を測れと零司は思う。

こちらなら、百人いれば確実に半分以上は出来る者はいるだろう。

だが、目の前の人物、久坂はそれすらも出来ていないと零司は思っていた。

零司が他人を通して測った自分の評価と、零司の目から見た久坂の評価は、まさに天と地ほどの差があると判断していた。

それなのに、物怖じせずに自分に相対する。

何かあるとは考えられない事だった。



だから、零司はそれに反応できた。

背後から鋭く横薙ぎに振るわれた、大剣に。



「っ!!」

全力で、咄嗟にしゃがむ。

直後、ちょうど頭があった場所を空間を切り裂く音と共に大剣が通り過ぎて行った。

それを察知した後、すぐさま横に跳ぶ。

今度は約一秒後に、自分がいた所に大剣が地面を抉りながら突き刺さった。

「あっぶね…!」

流石の零司も、あの大剣を上から振りおろられていたかと思うと、冷や汗が背を伝う。

「ちっ。外しちまったか」

そんな零司の前で、大剣を振り下ろした中々に大柄な男は、地面から剣を引き抜きつつぼやく。

その時に片手で引き抜いていたので、零司は若干驚きつつも、油断無く立ち上がる。

「ふん。避けられるとはな。これでは始末など出来ないのではないか?」

「何を言ってやがりますか依頼主様」

「(うっわ、めんど…)」

久坂と男の会話で、大体の事を理解した零司は心底めんどくさいといったように口の中で呟く。

会話の内容から察するに、久坂が男を雇ったのだろう。

目的は勿論、零司の始末。

「……舐められたもんだねぇ」

唇を舌で濡らし、心外だといった声で呟く。

どれだけ自分の実力を下に見ているのか零司にはわかりはしないが、あの程度の男で零司がやられるはずがない。というよりも、楽に返り討ちにできる。

「ふーっ…」

息を少し長めに吐き、構える。

楽に倒せるだろうが、油断は微塵もしない。どんな相手だろうと、基本は全力で戦う。それが零司のスタンスであった。

「っ!」

地を強めに蹴り、数歩で男に肉薄する。

「ぬぉっ!?」

予想を超えたスピードだったのか、慌てた様子で男は大剣を横に薙ぐ。

それを零司は剣を下から掬い上げるように弾き、大剣の自重で体勢を崩すように仕向ける。

「くっ…!」

そしてそれは上手くいき、男は大剣を上手く操れずにふらついた。

それを見た零司は、懐に踏み込み、

「しっ!!」

峰で顎を打つように刀を切り上げた。

それは、零司自身入ったと思った。近くで見ていた久坂もおぼろげながらそう見えてそう思っていた。



顎に当たったはずの刀がドロリと溶けるのを見るまでは。



「はぁっ!?」

その光景に、零司は目を見開いて硬直してしまった。

普通では絶対にありえない光景。それが耐性あったとしても目の前で繰り広げられていれば、流石に零司も動揺の一つはして硬直してしまう。

「ははっ!!」

そして零司の硬直という隙を男が見逃すはずが無く。体を回転させ、横に大薙ぎに振るう。

もしも硬直していなかったのなら、避けれてたのかもしれない。が、そんな『もしも』の考えは捨て、零司は最初から避けるのではなく、両腕を交差させて大剣を受け止めた。

「い、ってぁ…!?」

咄嗟にそれだけの動作が出来たのに加え、服の中に仕組んである鎖を腕に巻きつかせたので腕への傷は無いに等しかったが、勢いだけは殺しきれずにそのまま背後に吹っ飛ばされた。

(マズ…っ!?)

そのまま吹っ飛ばされたらどうなるか、わかっていた零司は焦って吹き飛ばされつつも体勢を整えようとするが、そんな時間は無かった。

ドゴン!と積まれていたコンテナに窪みをつけるように零司は激突した。

「かはっ…」

これ如きでは傷つきもしない零司ではあるが、硬いコンテナにぶつかった痛みだけは別であり、一瞬肺が機能してくれなかった。

「こほっ、こほっ…!」

軽く咳き込み、目の前を睨む。そしてすぐに目を上に向けた。

(『積まれてた』んだったよなぁ…!?)

暗かったのでよくは見えなかったが、ぐらり、と何かが揺らめいたのは見えた。

「―――っ」

ヤバイ、と思う暇もなく。

多数のコンテナは零司に降り注いだ。

ズズン…。と複数の重い音を立てながら地面は揺れ、倉庫内は数瞬の間土煙のようなものに覆われた。

「けほっ…」

「こほっ…。流石に積みすぎじゃねぇの…?」

その土煙に、久坂と男は顔を覆い、それぞれの反応を示した。

そしてすぐに、煙は作られた数個の出入り口から消えていく。

「……はははっ!こりゃすげぇ…」

煙が消えた後の光景を見て、思わずと言った風な男の笑い声が倉庫に響く。

それもそのはずだろう。

コンテナが落ちてきたその場所は、大量のコンテナが乱雑に積み重なっていたのだから。

しかも、コンテナの数はさっと数えただけでも十を超えていた。さっと見ただけでこれだけの数なら、一体全部数えたら何個あるのか。

そしてその光景に加え、何とも決定的なものがあった。

コンテナが崩れ落ちている場所。その一番下であり、地面と隣接しているとある地点から、一筋の紅く細い川が流れていたのだ。

その川は、細いながらも男の近くまで流れてきており、鉄の匂いが鼻についた。

つまり。

「……潰れて死んじまったか?」

もしかしたらの事態を、男はつまらなそうに口にした。

「あーあー。楽しめると思ったのになー」

顔を失望の表情に染め、男はコンテナに背を向け、久坂に歩み寄る。

「ふん。よくやったとは言っておこうか」

「ま、報酬分は働きますさ」

にしても、と男は呟き、

「……あんな弱っちい奴が化け物なんて呼ばれてたんですかね?」

俺には信じられませんね。と言い、男は持っていた大剣を地面に突き刺す。

久坂はそんな行動を、ふん、と一つ鼻で笑い、

「所詮、愚民という事か…」

答えともつかない答えを呟いた。

「まぁいい。これで美香さんについていた害虫の駆除も終わった。帰る―――」



『おいおいおい。流石にそれはないんじゃねぇの?』



『っ!?』

聞こえないと思っていた声に、久坂だけでなく男も首を勢いよく半回転させた。

だが、目に飛び込んでくるのはついさっきと何も変わらないコンテナの乱雑に崩れ落ちた様。

そんな光景に、さっきの声は幻聴かと二人は思う。

『全くよ、殺しかけといてそれはねぇだろ』

だが、また聞こえてきた声がそんな考えを破り捨てる。

『全くもって本当に』

コンテナがグラっと揺れた気がした。

『流石の俺でも許しがたいな』

今度は気がしたではなく、実際にコンテナが微弱に揺れた。

『つーわけで』

地震が起きたのかと思うまでにコンテナが強大に揺れ、

『出させてもらうぞっ!!!』

上の方に積まれていたコンテナが、ポップコーンが弾け飛ぶように宙を舞った。

それを皮切りに、コンテナは中にあった何かを中心とし、倉庫内を飛び跳ねた。

「ピンボールかよ…っ!?」

重厚な音を立てつつ跳ね回るコンテナを、男は久坂を後ろにかばいつつ手にした大剣で弾く。

時折、体を張ってでも止めなければいけないコンテナがあったが、それは体に触れた瞬間に溶けたので事なきを得ている。

そして、少しの後コンテナは重い音と共に跳ね終わった。

「はーっ……はーっ…!」

「クハハッ。おいおいどうしたよ、能力者さん?さっきまでの威勢はどーっこに消えたのかな?」

「てんめぇ…!」

肩で息をしつつ、男はコンテナを崩して出てきた零司を睨む。

出てきた零司は、額から一筋の血は流していたものの、それ以外の怪我は見られなかった。

(マジで化け物ってことかよ…!)

「クハハッ!よく化け物って言われてたなぁ!なっつかしー♪」

読心!?と驚く男をよそに、零司は右腕を揺らす。

ジャラジャラジャン。ジャンジャラジャラ。ジャラン。

繋がれたような金属の音が、断続的に、半永続的に倉庫内にこだまする。

それを少し聞いた後、「……よしっ♪」と嬉しそうに頷いた。

「んじゃ、さらばっ!」

そして、二人に背を向けて走り出した。

「はぁっ!?」

「なっ!?おい!追いかけろ!!絶対に逃がすな!!」

「わかってますっての!」

待てやーっ!!とどこか呑気な感じのする声を背に受けつつ、零司は倉庫内から走り去った。





       *    *    *





「はっ、はっ、はっ…」

それから数十分後。零司は、倉庫同士の小さくは無い隙間で壁に手をあて、息を整えていた。

「やっべぇ…。流石に視界がふらつくわ…」

クハッ…。と自分に失笑しつつ、じんじんと痛む後頭部に手を当てる。

ぬるっとした感覚と、ズキンと痛む神経。それに思わず顔をしかめる。

「くっそ…」

手を目の前に持ってくると、暗闇の中でも赤々とした血はよく見えた。

「……やべー。色々とやベー…」

流石に血の気が引いた。全身から力が抜けるのがわかった。

「ク、クハハ…ッ」

思わず笑いが込み上げてきた。

この怪我を負ったときに、油断はしていなかった。するはずがなかった。

なのに、たった一つの誤算とも言える事でここまでの怪我を負ってしまえば、最早油断してなかったなどという言い分は通用しないだろう。

(つっても、誰に言うってんだかね…)

パッと思いつく人はいるが、言う気にはなれない。

「……さって、真面目にどうするかね」

壁に手をついて支えにしたまま、零司はまともに働かない脳を必死に回転させる。

(今の状況は正直に言って、窮地だ。ここからどうにかするには…)

「二つの方法、かね」

普段ならもっと思いついたのかもしれないが、生憎と今の零司の状況じゃ二つの方法を弾き出すだけで精一杯だった。

(……ま、実質一つしか方法はないんだがな)

最悪。と小さく呟いて、二つのうち一つの方法を切り捨てる。

すると、残るのは必然的に一つ。

「ハードル高いってもんじゃねぇぞ…!?」

今の状態だと尚更に。そんな方法しか残らない現状を恨む零司。

だが、恨んでも現実が変わるわけもないので、少しだけ引き摺りつつ思考を切り替える。

(止血……今の持ち物じゃ無理か。なら、なるべく血を流さない方法で行きたいんだが…)

絶対に無理だという結論しかどう足掻いても出てきてくれない。

どうすっかなぁ…。と助けを求めるように空を見上げる。

空に浮かぶ雲の隙間から、血のせいか赤く染まって見える月が見えた。

(……マズイね、マジで)

少々危険な現状に、少し長い息を吐く。

ガリガリと何かが自分の意識を浸食しているのを感じつつ、左袖に手を突っ込む。

「んで?やりあうしか無いわけかね?」

そして、背後に向けてそう語りかけた。

返事は、地面を踏みしめる音だった。

「っ!!」

振り向きつつ、左袖から鎖を持った右手を思い切り引き抜く。

甲高い音を奏でつつ、それは零司が振り向いた方向へと勢いよく飛んで行った。

「甘いなぁ!」

しかし、それはすぐさま別の甲高い音を奏でて砕け散った。

具体的に言うなら、何かによって破壊された。

確認するまでも無い。先程の能力者の大剣によってである。

「ちっ!」

軽い衝撃を左腕に受けつつ、背後に零司は跳ぶ。

(あぁもう!本当に相性悪いなぁ!!)

こまめに着地し、再び跳びながら零司は胸中で悪態をつく。

(あいつの能力自体は見当はついてる。その結果がすこぶる相性悪いんだよなぁ…!)

そう。能力自体は大体の見当はついていた。だがしかし、その見当の結果が最悪だった。

先程の倉庫内で、見間違いで無い限り、剣は溶けた。

そこから、融解あたりかと見当はつく。

その能力自体が問題だった。

零司の予想は、『体に当たった物を融解させる』という能力の使い方である。

そして、零司の戦闘方式は、基本的に近接にある。

時折、コインを弾いたり、電撃を飛ばすことはある。

しかし、遠距離ともいう攻撃は零司にとっては不得意であった。特に、能力である電撃を飛ばすことが。

故に、この男との相性は最悪と言って差し支えは無い。

(つか、攻撃自体が不可能に近いんだっての…!)

一々攻撃して、その度に武器を融かされていては、零司が不利になっていくだけである。

つまり、零司は八方塞に陥っていた。

「クッソ…!」

歯を強く食いしばり、何度目かの背後への跳躍をする。

一瞬の浮遊感が過ぎ、着地―――

「や…っ!?」

―――出来はしなかった。運悪く、着地の瞬間に視界が大きく揺れた。

(血が、足らねぇ…!)

失血によって体がまともに機能をしなくなってきたのである。

そして、視界が揺れてしまったので、着地点を正確に測る事が出来なくなり。

「っ…!」

地面に足がつくと同時に、体は横に倒れかけた。

(や、べぇ…!)

倒れまいと、必死に足の踏ん張りを利かせ、何とかその場に踏みとどまる。

その時に、足を止めてしまったのは間違いだった。

何故なら、追いつく時間を与えてしまったのだから。

「うぉら!」

(しまっ)

男が大剣を横に振りかぶるのは見えた。見えただけで、それ以上は何も出来なかった。

つまり、抵抗も何も出来なかった。

ザシュ。

軽い音と共に、腹の辺りを大剣が通り過ぎて行った。

喪失感と痛みだけが、零司の脳を支配する。

視界が下がった。足が立っていられなくなったのだと、脳が遅れて理解した。

暗闇のような硬質の何かが視界いっぱいに広がった。地面に倒れたのだと、視覚が教えてくれた。

鉄の強いにおいが臭った。自分の血が流れ出てると、嗅覚が教えてくれた。

口の中に鉄の味が広がった。体の中から血があふれ出てるのだと、味覚が教えてくれた。

(あ、れ)

思考が上手く働かない。

体が思うように動いてくれない。

最悪だ。と思った。

これで終わりかと最後の理性が思った。

やっぱり仮面なんて外すんじゃなかった。と後悔した。

うるさいな。と嫌悪が理性を食いつぶした。

(あぁ。もうダメだ)

おしまいだ。誰かがそう言った。

(―――さようなら)





ブツッ。





       *    *    *





気づいたときには、白い空間に浮いていた。

何にも染められてない、ただ白だけが広がる空間。

それを見て俺は理解した。

あぁ、やっぱりか。と。

わかってはいた。

大量の出血によって死にかけているから、こうなる事は。

だがまぁ……こんな事で、幕は下ろしたくなかった。

こんな―――狂った方法で。

『今更遅いだろ?【俺】よ』

わかってるよ。これは必然な事だ。諦めなんて半分はついてる。

『クハハッ。相変わらず諦め悪いねぇ』

当たり前だろうが、クソ野郎。

こんな方法を誰が望んだ?誰も望むはずが無いだろ?

『さあなぁ?案外破滅思考の奴は望んでるんじゃねぇの?』

はっ。破滅思考の奴なんか、見たことは少数だね。

いる事は認めるがな。

『クハ。ま、そんな議論は果てしなくどうでもいいがな』

……だな。

『んじゃ、いい加減に終わろうぜ?こんな茶番なんぞ見る観客すら少ないだろうよ』

勝手にしやがれ。

『クハハハッ!そう投げやりになるなよ【俺】よ!!』

うるさい黙れ。

『おー、おっかねぇ。そんじゃ、終わらしてくるぜ』

……行って来いよ、【オレ】

さっさと行って、最悪の結末を作り出して来いよ。





       *    *    *





それは、想像だにしなかったもので、絶句しか出来ないような光景だった。





始まりは、バシャッ。という何かが立てた水音だった。

それを最初、男は零司が息絶えた体を血の中に沈ませた音だと思っていた。

だが、その予想は簡単に裏切られた。

続けて、バシャッ!と先程よりも強い水音が、男の耳に響いた。

まさか。と男は思い、勢いよく、死んだと思っていた零司を振り向く。

振り向いた男の中には、風か何かで動かなくなった体が動いて音を立てたのだという、希望があった。



しかし。

それはいとも簡単に破り捨てられた。



「……ッ…」

かすれた声しか男の口からは出なかった。

いや、声が出ただけまだマシだったのかもしれない。

それほどまでに、男の目に映る光景は恐ろしかった。

バシャン。バシャッ。ピシャ。

妙にリズムよく、水が上から何かで押さえられるような音が倉庫の隙間に響いた。

「……ハッ…」

そして、『そいつ』は口を開いた。

「クハ、クハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハァッ!!!!!」

人間の出せる声なのかと、質問を投げかけたくなるほどだった。

その叫びににも似た笑いは、強大な声量で空気を震わせ、耳を塞げば何とか聞こえる可聴域と、可聴域を遥かに超えた振動数で周りの倉庫に張られているガラスを一つ残らず割った。

「ぐ、ぁっ…!?」

そして、男は耳を力いっぱいに押さえつけ、その場に膝をついた。

(頭が……割れる…っ!?)

実際的には割れないが、そう思わせるほどの力を、その笑いは持っていた。

「―――ぁ。あー、ひっさびさだねぇ…。ほんっと、久々…♪」

そして、笑いを収めたので、男は歪む視界で『そいつ』を視界に入れた。入れてしまった。

「―――――」

今度は、かすれた声すら出なかった。

「クハハ…っ」

独特に笑う『そいつ』は、姿形は零司だった。

いや、零司というには一つだけ違う部分があった。

瞳。

瞳は先程の零司とは一切が違った。

先程までの零司の瞳は、暗がりの中では判別し辛い、黒だった。

日本人にはよくある色ではあるので、特に印象的ではなかった。

が、今の零司はそれを百八十度覆した。完璧に逆の印象を与えていた。

「クハッ。この目がそこまで珍しいか?」

ピッ。と零司は目を指差す。

指差した先の目。それは、何かを連想せざるをえないほどに、紅かった。

その目を見た途端に、男は連想した。

綺麗なバラを。

夕焼けを。

鮮やかな血を。

そして―――

「う、ぇっ…!」

それを連想してしまった途端、胃から問答無用に込み上げてきた。

必死にそれを口の中で一度留め、嚥下した。

「クハハハハッ!やっぱこれを見るとそうなるよなぁ!!」

パチパチと耳障りな拍手をし、零司は笑う。

「黙れ、ょ」

「クハハッ!無理無理無理ぃ!!オレを殺しかけといてそれはねぇんじゃねのかなぁ?」

暗がりの中でもよく見えるふざけた笑顔。それに神経が否が応でも逆立っていく。

「さーぁて?脇役、いやいや、やられ役?まぁ、首級の悪役じゃないお前はとっとと舞台袖に引っ込んでくれるかな?邪魔以外の何者でもないのですよ?」

真面目なのか、ふざけているのか。それすら判別できない口調に、男の堪忍袋は爆発した。

「も一度、死ねぇえええええええええええええ!!」

そばに置いてあった大剣を取り、乱雑に振り回した。

「……ハッ」

それを零司は鼻で笑い、

「ダメダメだな」

足を振り下ろして、終わらせた。

具体的に言うなら、大剣を踵落としで砕いた。

「は…?」

それを最初、男の脳は理解をしてくれなかった。

(何が……起こった?)

剣が砕けたのはわかった。だが、それだけだった。それだけしかわからなかった。

(……いつ、足を振り上げた…!?)

それだけがわからなかった。

剣を振り回した時、足はしっかりと地に着いていた。それを、剣が迫った瞬間に振り上げ、叩きつけられるものだろうか?

「答えはノーだな。普通はな」

「っ!!」

答え代わりの声で、意識は現実に戻された。

ザッ。と一歩を踏み出すような音。

「ま、オレは普通じゃないし?これくらいは当たり前ってな」

ザッ。もう一歩。

「んで、何かおかしいと思わないか?」

何を。と聞こうとして、顔を男は上げた。

「―――っ!?」

そして、その言葉通りの違和感に気づいた。

「お、お前…!」震える指で、腹を指し「け、怪我は…!?」

「あぁ。治った」

ケロッと。なんでもないように、告げられた。

その言葉に、男は恐怖に縛り付けられた。

それもそうだろう。

先程、自分でつけた腹の傷。それは決して深くはなかったが、浅くも無かった。

それが―――跡形も無く、治っていればそうなってしまうだろう。

「クハッ♪」

そして、零司は男の様子に、満足したように笑った。

「そんじゃ、お返しと行こうか」

そう言うと、零司は足をサッカーボールを蹴るように振り上げ、

「吹っ飛べ」

男の腹に、百%の力で蹴りを入れた。

ベキゴキメギブチッ!!

おおよそ、人間が普通は出さない音を発し、男は吹き飛んだ。

吹き飛んだ男は、倉庫の壁を体で紙のように突き破り、壊し、突き飛んだ。

そして、男は数個の倉庫の壁を突き進んだところで、暗闇の中に消えて目視できなくなった。

「けっ」

つっまらね。と言い捨て、零司は足元に転がっている、『何か』を踏みつける。

『何か』は足という圧力を受け、奇妙な音を立てた。

その音は、あまりにも聞きなれない音で。だけど、一度聞いたら癖になりそうな音で。

だから、零司も何度も『何か』を踏みつけ、その音を楽しんだ。

「…♪」

やがて楽しくなってきたのか、リズムを速めて音を重ね、また、時折リズムを遅めて音の余韻まで楽しむ。

そうしている内に、何かが水に落ちた音が残響のように『零司』の耳に届いた。

「クハッ。やっとついたかよ」

その音を聞くと、零司は今まで踏んでいた『何か』から足を離し、視線すら寄越さなかった。

その行動は、新しい玩具を見つけた子供のようにも見える。

新しい玩具に夢中になり、古い玩具は最初からなかったかのように捨てる。

多少のベクトルの違いはあれど、零司が似たような行動をとったのは事実だった。

そして、最後に零司はわかりやすく『何か』を捨てた。

「そんじゃま」

足でリフティングをするようにフワッと宙に蹴り上げ、

「さよなら。名も知らぬ男」

足裏で、『何か』を倉庫の壁に叩き付けた。

叩きつけられた『何か』は、破裂したような水音を最後に立て、薄赤色の液体をあたりにばら撒き、跡形もなく散った。

「クハッ♪」

そして、その薄赤色の液体を正面から浴びた零司は心底嬉しそうに笑い、その場を後にした。

「さってさて…♪幕を終わらそうじゃねぇか、久坂君よお♪」





余談だが、後日その場を偶然通りかかった男性がいた。

その男性は、その倉庫の壁を見た途端に、吐いたと言う。

そして、男性はその時の心情をこう語った。

『あれは……――――のように見えました』





       *    *    *





ずるっ。ずずっ。

ざっざっ。

ずずず。ざっ。

「……生きていたのか、大神」

倉庫の中で、音に背を向けつつ久坂は声を投げかける。

言葉としての答えは返ってこなかった。だが、行動の答えとして、音が止んだ。

それを合図にし、久坂は余裕綽々と言った風に振り返る。

「……っぅ!?」

が、その余裕はすぐさま崩れ去った。

「……クハッ♪」

零司は、その久坂の様子に満足したように笑みを深め、この倉庫に来る前から引き摺っていた、『それ』を久坂の足元ちょうどに投げた。

どさ。と軽い音を立てて、目の前に着地した『それ』を見た久坂は、口を必死に両手で押さえ蹲った。

「ぇ…!ぅぅ…!?」

込み上げて来る異物を必死に手の中で押さえ込み、嚥下する。

「クハハハッ!!その反応もありきたりだなぁ!」

うるさい、とも反論する事も忘れ、久坂は必死に目の前の『それ』から目を逸らす。

「クハハッ!まぁ、目をそらしたくなるよなぁ!」

「……ぅさい…!」

蚊の鳴くような声をどうにか絞りだし、久坂は反論する。が、そんな声が零司に届くはずもなく。万一、届いたとしても零司は絶対に無視していただろうが。

「ま、これがお前の雇った男の末路さ。依頼者なら少しは目に焼き付けてもいいんじゃねぇのかなぁ?」

奇怪な音が、久坂のすぐそばで鳴った。

「ほれ。見てやれよ…!」

「や、やめろ…!」

「断るぜ♪」

心底楽しんでる声と共に、髪をひっつかまれ、無理矢理に顔を上げられる。

そして、『それ』はすぐさま目に入ってきた。

だらりと突き出された舌。

何も見ていない無機質な目。

そして―――





胴の所で千切れた、体。





「う、うぇぇ…!」

それを脳が理解した瞬間、久坂は先程嚥下した物が再びこみ上げてくるのを感じとった。

そうして、今度は押さえ込みなどせず、容赦なく吐き出した。

「クアッハハハハハハハハハハハ!!!」

それを耳障りな大声で笑う零司。

「げ、がほ…っ」

胃の中のもの全てを一気に吐き出してしまった久坂は、吐いた物に付随して何かが自分の体の中から吐き出されるような感覚がした。

だが、それを気にしてる暇など無かった。

「おいおい」

ごっ。と腹に零司の蹴りが入る。

「がっ…!」

その衝撃に、再び久坂の胃の中から何かが込みあがりそうになる。が、胃液すら充分に入っていない胃はそんな事はせずにただ衝撃を受け止めた。

「何を、お前は、蹲って、んのかなぁ!」

ごっ、がっ、どすっ、がっ!とリズミカルに、言葉を切りつつ零司は久坂の腹を蹴り続ける。その度に苦しそうな呻きが漏れるが、それを笑顔で受けつつ、零司はひたすらに続けた。

そして、それが何十回も続いた後、零司は思い切り久坂の腹を蹴り、転がした。

「ごほっ!ごほっ!」

転がり、数メートル離れた場所で久坂は蹲って咳き込む。

「はー……はー…」

「クハッ。蹴られ続けたくせに睨む元気があるとはなー…。無駄なプライドって奴ですか?」

「黙れ……貴様のような奴に受けた痛み程度…」

「あっそう?」ならさ、と零司はブレる速度で右腕を振り「こんなんはどうかな?」右手に一本の鞘に収められた日本刀を握っていた。

「……それは…」

零司の握っている刀を見て、久坂は思わずそう口にしていた。無意識にと言ってもいいかもしれない。

それほどまでに、その刀は一般的に知られている物とは違っていた。

「あ?あー……そーいや、これってば普通とは違うんだよなぁ…」

久坂の視線に気づき、そんな事を言いながら零司は鞘に入ったままの刀をバトンのようにクルクル回す。

自然とその回る刀に久坂の視線は惹きつけられた。それほどの何かがその刀にはあった。

「……紅い…」

一般的に言われる赤色よりも、濃い色である紅色。それが刀の色だった。鞘も柄も全てが紅かった。

普通の日本刀では、絶対にない色。暗闇でも鮮明に見える色。

それだからこそ、久坂の目はその刀に惹きつけられたのだ。

「……おいおい、見とれてていいのかい?」

が、持ち主の声で意識は戻った。

「クハッ。これからこいつで斬られるってのに、見とれてるなんてアレか?マゾか?マゾなんですか?」

そんな零司のふざけた言葉に、久坂はそんなわけはないと声を荒げて宣言したかった。

が、何故か声は喉から出る事はなかった。

「まーいいや。どうせ何にせよ、結果は同じだしな」

声が出ない原因を探ろうとする暇もなく、零司は久坂に向け一歩を踏み出した。

「さーて。めんどいから終わらそうかね」

そして、もう一歩。

「ひっ…!」

思わず引きつった声が喉から出た。

その声に、零司はニヤァ…と笑みを深め、再び一歩を踏み出し、



ピピピピピピピッ!!



「………………」

た所で、零司の胸ポケットの辺りから電子音が鳴り響いた。何とも空気が読めない携帯である。

「…………ちっ」

舌打ちを一つ鳴らし、零司は胸ポケットに手を突っ込み、携帯を取り出す。

そして、ボタンを一つ押し「はいはい、誰ですかー?」と耳に当てた。動作からして、電話のようである。

「……はぁ。はぁ。は!?いや、ちょっと!…………まぁ、そうですけど。あーもう!わかりましたよ!!やればいいんでしょやれば!」

最初は穏便な感じだったが、次第に口調はヒートアップしていき、最終的には乱雑な口調になり何事かを了承した様子だった。

「あぁ、くっそ…!マジで興ざめだ…!」

そしてそのまま、零司は電話を切らずに携帯のボタンを数回押し始める。

カチカチカチッ!と勢いよく数回の打音が響くと、零司は携帯電話を投げた。

カシャッ。と地面に軽い音とともに携帯は激突し、そのまま久坂と零司の間の空間に滑り込んだ。しかも、ちょうど両者から見て真ん中になる場所に停止した。

その芸当に久坂は軽く驚いていた。が、次の瞬間にその驚きはすぐさま霧散した。

『あー、あー。マイクテス……というよりも、スピーカーテストね、こりゃ』

投げられた携帯から聞こえてきたのは、どこか柔和な印象を受ける声だった。

何となく、拍子抜けした久坂。が、

『よっし。んじゃま、聞こえてるであろう久坂家の長男さん?』

自分に電話越しに声をかけられた途端、その印象は不思議にも消し飛んだ。

『おーい?聞こえてるんでしょー?返事の一つくらい寄越しなさいな』

久坂自身に投げかけられる言葉。何故かそれに久坂は恐怖を感じていた。

「はぁ、はぁ…!」

心臓を掴まれているかのような感覚。ここにいないのに、目の前にいるような感覚。そんな不思議極まりない感覚だけが久坂を襲っていた。

「あー…。すいません、その声音やめて下さい。まともに聞こえなくなってます」

『ありゃ?メンタル弱いなぁ…』

やれやれ。とでも言いたそうな声音に変わったと同時、久坂に襲い掛かっていた感覚は全て消え去った。が、記憶は鮮明に刻まれていた。

『……さて。仕切りなおしてだけど……そこにいるのは久坂家の長男でいいわよね?』

「それが……どうした…」

『ん、及第点といえば及第点ねー♪』

「すいません。話進まないんでさっさと本題入ってください」

せっかちねー♪と零司の極めて冷静なツッコミにも、楽しげに返し、電話越しの―――声からして女性は一つ咳払いをして、





『久坂家の長男。君は親に売られたわ』

と、冷徹な声で言い放った。





「…………………………は?」

その言葉の意味が久坂には最初、理解できなかった。

売られた。そんな非日常的な言葉を脳は正しく理解してくれなかった。

『あ、ゴメンゴメン。正確には捨てられたんだった』

あっはっはー♪と能天気に機械を通して聞こえてきた笑い声に、とうとう久坂の脳は理解を示した。

「な、な、な…!?」

『おー、その声からして全部理解したようねー♪いやー、おっそいおっそい♪』

「ふ、ふざけるなぁ!!」

耐え切れなくなって、久坂は叫んだ。もしかしたらその声は震えていたかもしれない。

それでも、叫んでいなければやってられなかった。

「な、何故僕が売られるんだ!ふざけた冗談も大概にしろ!!」

『まー、普通はそう思うわよねー』

だけどね?と諭す声音で、

『事実は事実なのよ、人権無しのただの久坂君♪』

壮絶な事実を突きつけた。



(あー……こりゃ、ダメージでかいだろうなぁ…)

そして、零司は声を聞きつつ、内心でそんな事を思った。

(まぁ、普通に生きてれば『売られる』とか『人権無し』なんて言われるわけないしなぁ…)

かなり失礼だが、まだハヤテなら『売られる』という言葉には若干の耐性があるかもしれない。

しかし、久坂はそんな事から最も離れて生きてきた男である。悪く言えば、加護のある温室の中で生きてきた、一人では何も出来ないひ弱な男である。

そんな男が、急に『売られた』、『人権無し』などと言われたのならば、心は間違いなく動揺し、平常な判断が出来なくなるほどに心にはダメージを負うことだろう。

事実、今の久坂がそれを体現している。

(冷静に考えれば、嘘かもしれないってのになぁ…)

『親に売られた』とは確かに言ったが、『人権』が無くなる筈がないのである。

(そもそも、国際的には一応保障されてるはずなんだが……それすらもわからなくなってんのかね?)

というよりも、人権云々をどうにかするなど人に出来るはずも無いのも事実である。

(……まー、何にせよ相変わらずの手並みってとこか)

ひとまず思考を打ち切り、零司は事を見守るべく意識をそちらに戻す。



「は、はははは…」

『いやまぁ、笑いたい気持ちもわかるんだけどね?現実逃避にしかならないからね?』

「う、るさい!」

『……子供ねー…』

最早呆れた声しか出ないといった様子で、電話の主は呟く。

というのも、先程から久坂が認めてくれないのである。

『(事実は事実として受け止めろ……ってのも無理な話かー…)』

そして、そんな問答を繰り返してるうちに、電話の主の心の中はもうめんどくさいという感情しか湧かなくなってきていた。

『(……まー、亀裂は入れたし後は任せるとしましょうか)』

はぁ。と一つ溜息を漏らし、電話の主は『それじゃ!』と声を張り上げた。

『後は頼んだわよ!零司君!』

「はぁ!?」

突如、話を振られた零司は驚きの声を上げるが、制止するよりも早く『それじゃーねー♪』と電話は無常にも切られた。

「あの人はぁ…!」

規則的な音を出すだけの携帯に向かってそう言うと、零司は八つ当たりするように手の中の刀を握り締めた。

そして、紅い目を細め「色々と略すが…!」と恨めしそうな声で呟き、刀を鞘から抜いた。

ピュン。と空気を軽く斬りつつ、現れた刀身も紅く。またもや、久坂は一瞬だけその刀に目を奪われた。

そして零司は、ゆっくりと切っ先を久坂に向け、

「―――『宣告者』代理が宣告する。久坂明彦。お前を罰する」

凛とした声で、そう久坂に向けて告げた。

「……………は、はははははは!!罰する?僕を?」

「あぁ、そうさ」

「バカか、バカなのか!そこまで救いがたい愚民だったのかお前は!!」

はははははは!!と壊れたように高笑いをする久坂に、零司はただ冷たい視線を注いでいた。

が、それに気づくこともなく久坂は続けた。

「なら、僕が終わらしてやろう!!おい!!」

叫び、右手を振る。

それを合図に、ゾロゾロワラワラと黒服に身を包んだ男達が零司を囲むように出てきた。

数としては二十ほど。という事は、倉庫に入ってきたときに感知した奴らと同じと言う事になる。

その事実に、辟易したように零司は左手でガシガシと頭をかきつつ「あー……めんどい事はあまりしたくねぇしなぁ…」と呟く。

そんな零司の行動を久坂はどう取ったのか、「はっ!今更にでも怖気づいたのか!?」と自分が優位だと信じて疑わないような口ぶりだった。

「あー、うん。それがいっか」

「何を意味のわからない事を言っている!今なら土下座すれば許してやるぞ!!」

「は?何でそんな事しなきゃいけないんだよ」

「……貴様、まだ自分の置かれた立場がわかってないのか?」

「いや、わかってるつもりだけど?」

絶対的に考えが食い違ってる事を理解しながら、零司はそう言った。

(ま、意見がどうであれ、やる事は一つだしな)

右手の刀を一度回し、零司は少し大きく息を吸った。

「―――言っとくが」普通よりは大きい声量で「死ぬ覚悟はあるんだよな?」そう告げる。

その言葉に、軽く黒服たちはざわめく。

「何を言ってるんだこいつは」「気が触れたか」と馬鹿にする、零司から見たら果てしない程に愚かな奴が半分以上。

「……まさかとは思うが」と中々に鋭い、零司からしたら見所のある奴らが五人未満。

そんな現状を見て、内心溜息を一つ漏らして零司は、もう一度刀を一回転させる。

「……まーあれだ。死ぬ覚悟ある奴は残って俺を殺してみろよ。んで、覚悟ない場合はこっから去れよ。追いかけないし殺しもしないからさー」

そして、やる気の無い声でそう告げた。

『ひっ…!?』

勘のいい者はその零司の言い方に怯え、一目散に逃げ出し始めた。

それを零司は呆れた目で追いつつ、残った男達に侮蔑の目を向ける。

「あー……馬鹿が十人程度、ね…。どんだけお前ら馬鹿なんですか?」

「はっ!馬鹿はお前だ!何故逃げ出したのかは知らんが、十人もいればお前を始末する事なんて簡単だ!」

「……もういいや。救いようの無い愚図は一回死んで芯から直してこいよ…」

はーーー…。と不快そうな溜息を深く零司は漏らす。最早今日ここに来るだけで何度溜息を漏らしたのか、数えるのも億劫になる程だった。

「……死ぬのはお前だと言うことがまだわからないのか?」

久坂も、零司に対して呆れた声を投げかける。

そのまま右手を上げ、黒服達を零司から距離を取らせる。

そして距離を取った黒服達は、懐から銃を取り出し零司に向ける。

「どうだ、大神。この状況になってもまだ僕に対してそんな口がきけるのか?」

「あぁ、楽勝にな」

「っ!」

零司の淡々とした回答に、久坂の頬が軽く引きつる。

「……まぁ、何でもいいんだが…」挑発するように零司は人差し指を曲げ「来るなら来れば?」

「…………やれぇ!!」

その挑発に、久坂は男達に命令を下した。

「あぁ、うん」その言葉に零司は視線を宙に移し「使えるといいな、腕」

『……は?』

その言葉に、男達は意味不明そうな声を漏らし―――ボトッ。音が鳴った。

「あ、」

その音の元を一人の男が辿り、

「あぁあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああっ!!!!?????」

悲痛な悲鳴をあげた。

それを皮切りに、周りの男達も連鎖的に自分の惨状に悲鳴を上げた。

「う、腕!腕がぁ!?」「な、なんなんなんな…!?」「あが、あががががががががががががあががっががががががががぁ!!!???」

「な、何だ、と…!?」

その悲惨な光景を見て、久坂も途轍もなく驚いていた。

「な?楽勝だろ?お前に軽口を叩けるのはさ」

零司はその久坂の反応を見て、右手の刀を顔の前まで上げる。

紅い刀身の上に、更に紅い液体を滴らせた刀を。

「お、お前……その血は…!」

「あぁ。ま、想像してる通りで合ってるよ」刀を振って血を払いつつ、「この血は、周りの男達の腕を斬り落とした時の血さ」と、笑みながらそう言った。

その言葉に体ごと後ろに下がりつつ「ど、どうやってやった…!」と問いかける。

それが出来るだけでもかなり良点なのだが、今の状況では悪点にしかならない。

そして、それを再現するように零司は行動を起こした。

「どうやって、ね」

笑みを崩さずに、零司は剣道のように正面に刀を構える。

そして、

「こうやって、さっ!」

それこそ剣道のように、大きく刀を振った。

空気を斬る軽い音が、男達のうめき声に混じって久坂の耳に妙に心地よく届く。

それに一拍遅れ―――ボトッ―――自分のすぐ右でそんな音がした。

その音はつい先程に聞いた音と同じで。

「あ、」

更に、音が聞こえた右側が妙に涼しくて。

「あ、あああああ、」

だから、わかってしまった。―――自分の右腕が無くなって、地面にある事が。

「あぁああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!」

そして、それを認識したと同時に、久坂の体に激痛が走った。

「腕!僕の、腕!」

勢いよく膝をつき、自分から離れた右腕を拾い、その断面に当てる。

が、それで斬られた腕がくっ付くわけがあるはずもなく。ただその断面からは尋常じゃないほどの血が溢れ出ていた。

「ほら。ちゃんと実演してやったぜ?」

「あが、がぁ…!」

零司が面白そうにニヤニヤしながら言葉を投げるが、久坂には聞こえてはいなかった。

「クハッ!そこまで痛いか!なら楽にしてやろうかぁ!?」

「何、だと…!?」

この苦痛から解放される。今の久坂にとって、それ程魅力的な条件も無く、久坂は零司に視線を向ける。

「あぁ、そうさ。楽にしてやるぜ?」

その視線を受け、零司は更に笑みを深め、ちょうど近くにいた男を掴み、

「こぉんな風になぁ!」

刀を、強く横に薙いだ。

「な―――」

その行動に、久坂だけでなく周りで痛みにのた打ち回っていた男達も、目を思い切り見開いた。

そして。

ゴトッ、ゴトン。

少し硬質な音が、縦に丸い何かによって奏でられた。

「ぁ…」

誰かが漏らした声。それが、全員に浸透するのは長くは無く。

現実を突きつけられるには、充分過ぎた。

「……さぁーて♪惨劇始めましょうか♪」

そして、零司は紅い目を輝かしつつ、そう言った。

「う、ぁ」

それを見たその場の全員が全員、一つの結末を連想し。

「うぁああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!」

腕の痛みすら忘れ、まずは男達が一目散に逃げ出した。

零司のいない方向の、元々の倉庫の出入り口へと、男達は情けなくも走っていく。

「クハッ!」

その光景に、零司は心底嬉しく笑い、

「逃がすわけねぇだろうが、このゴミ共がぁ!」

刀を槍のように勢いよく投擲した。

ゴッ!と一瞬空気が震え、

「が、ぁ…」

誰もが気づいたときには、その刀は一番先頭を走っていた男に刺さっていた。

「ひ、ひぃ!」

その出来事に、二番目に先頭を走っていた男がたたらを踏む。

「まっずはひっとり♪つっぎに二人♪」

そして、背後から零司の声が聞こえた。

それに気づいたときには、体はすでに離れていた。

「あーとは、七人♪さっさと片しておっわりましょ♪」

そして、その声が残響も聞こえなく頃には。

「それでは、皆さんごっめいふく♪」

真っ赤な水溜りが、作り出されていた。

「あ、あぁ…」

その光景を見て、腰が抜けてへたり込んでいた久坂は情けない声を出す。

「悲惨だっただろ?」

そして、水溜りの中でただ一人立つ零司は、背中越しに久坂に話しかける。

「凄惨だったろ?」

バシャッ!と水を踏み潰しつつ、ゆっくりと体ごと振り返る。

「そして、これが」ゆっくりと手を大仰に広げ「現実だ」

「……ぁ…」

その突きつけられた物に、俯き、久坂は理解した。

自分が本当に捨てられた事。助けなんて来ない事。そして。

カッ。俯いた久坂の視界に、爪先が紅く染まった靴が見えた。

「じゃあな」

そして、全ては終わった。





       *    *    *





「……ねみぃ…」

窓際ではないのに、差し込んでくる光に思わず零司は目を細める。

(寝てないのはキツイか…)

「くぁ…」

手で口を覆うが、声までは隠す事は出来ない。

なので、隣に座る伊吹がこちらを向いていたが、無視して前を向いたままにする。

今はHR中であった。なので、一応聞いとかなければいけない。

「―――っと、今日の連絡事項はここらへんかしらね。あ、そういえば知ってる?隣の久坂君っていたじゃない?あの子、急に転校したのよねー…。何でも家庭の事情だとか何とか…」

雪路の口から出た言葉に、クラス中がざわめく。

(ま、噂じゃ有名だったしな)

その事に軽い感心を覚えながら、零司は少し遠い窓の外の空に視線を移す。

天気は快晴。

(あぁ―――いい天気だ)

「……反吐が出るくらいにな」

そうして、今日も何も無い日が始まる。





――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――



三十五話おしまい!

ふむ……案外グロくはならなかったや。

零司「いや、なったら問題だからな?」

それもそっか。そんで、グダグダだよね…!今更か!←

ハヤテ「………」

伊吹「………」

それで、何で二人は鳩が豆鉄砲食らったみたいになってるの?

ハヤテ「いや、あの……零司さん、一体何者なんですか!?」

伊吹「明らかにおかしいレベルだからなぁ!?」

まぁ、言えるわけないよね。

零司「だな」

でもまぁ、あれだ。零司には秘密が大量にあるって事さ。

ハヤテ「ありすぎだと思うんですよね、絶対に!!」

伊吹「だよなぁ!」

……まぁ、いつか全部明かすからさ。待ってなよ。

それでは、今回はここで終わろうかなっ!

次回から二話くらいは伊吹がメインだとだけ言っておく!!

伊吹「俺ぇ!?」

では、さよならです!!
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