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私は王女、あなたは執事
日時: 2013/02/02 22:53
名前: みっちょ

お久しぶりです!
前にひなゆめでこの小説を投稿していたみっちょというものです!
あの時はあと二話程で完結だったのですが結局、完結できずに終わってしまってすごく残念でした。
しかし復活したことを聞いてまた一から投稿しなおそうとおもいます!
(サタンさんありがとうございました!)
初投稿の小説だったので表現力とか誤字・脱字があったらすみません。

それでは本編です!

第1話「王女の想い」

むかしむかし世界は大きな4つの国に分かれていました。

ハート、スペード、ダイヤ、クローバー

どの国も気候や特色を生かし栄えており国々が良好な関係を築いてきました。


これから話す物語は美しい一国の王女とその執事の甘く切ない恋物語です。



商工業が盛んでにぎやかな国、ハート国
その都市の中心には大きく立派な城が建っている。

美しい花々に囲まれた城にはその花たちも見劣ってしまうくらい美しい姫がいた。
彼女の名前は・・・

「王女!ヒナギク王女!どこにおられるのですか!」

青髪の少年が王女の名前を呼びながら城内を走り回っていた。

先程は出遅れたが少年が叫んでいた通り彼女の名前はヒナギク

「ハヤテ!ここよ、ここ!」

少年ーハヤテは声をしたほうを振り向くとたくさんある部屋のいちばん隅の部屋から
きれいな手が手招きしているのが見えた。

「王女。こちらにいらしたのですね!」

ハヤテは部屋へ駆け寄りドアを開こうとした。

その瞬間さっきまで手招きしていた手がいきなりハヤテを部屋へ引き込んだ。

咄嗟のことに対応できずハヤテはバランスを崩して顔面から部屋の中にダイブした。

「あ、いたたた・・・」

「ご、ごめんなさい。」

ハヤテを起こそうと手を差し出すヒナギク。

「大丈夫です。それに王女のお手を借りるなど僕にはもったいないですよ。」

ハヤテはすぐに立ち上がり笑顔を見せた。

その言葉に王女が一瞬さびしそうな表情をしたのは・・・気のせいだろう。

「そんなことより早く明日の衣装を決めてください。
 明日は王女の婚約者を決める大事なパーティーなのですから。
 マリアさんたちも王女のことを探してましたよ?」

「・・・そうね。すぐに行くわ。
 悪いけどマリアさんたちに私の居場所をしらせてきてくれる?
 きっと心配してるでしょうから。
 あと衣装合わせはこの部屋でしたいことも伝えといてもらえるかしら。」

「わかりました。すぐ伝えてきます!」

ハヤテは部屋の前で一礼すると走ってマリアたちのもとへ向かった。
遠ざかっていく足音を聞きながらヒナギクは窓の外を向いてため息をついた。

なぜこんなにも落ち込んでいるのか。
それはヒナギクの心の中にある想いが原因


ヒナギクはハヤテのことが好きだ。
それは家族や友達と違う。異性としての好き。
小さいときからずっとそばにいていつどんな時も守ってくれた。

いつからこんなに彼にひかれていたのか

彼のいることが当たり前になりすぎてそれすらわからない。

本心を言えば婚約者を決めるパーティーなど絶対に行きたくない。

かなうならハヤテと結ばれたい。

しかし自分は一国の王女である。

自分の気持より祖国と国民を大事にしなければならない。

そのためには有力な権力者との婚約は免れないのである。



「ハヤテ・・・」

あなたはそれでいいの?

私が違う人と結婚してもあなたは笑っていられるの?

伝えたい言葉が雫となって頬を伝い赤いカーペットにしみを作る。

窓の外は曇っていて王女の気持ちを代弁しているようだった

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Re: 私は王女、あなたは執事 ( No.1 )
日時: 2013/02/02 23:05
名前: みっちょ

第二話「王女と呼ばれる少女」

翌日、ヒナギクの婚約者を決めるパーティーが行われた。


婚約者を決めると言っても王女自身が決めるのではなく王や王妃が決めるために開かれるためヒナギクは、最初の顔合わせの挨拶をするくらい。



王女の婚約者というだけあって各国の権力者から有力な貴族、中には王族も混じっている。

ヒナギクがあたりを見回すと錚々たる顔触れの中に見覚えのある顔を見つけた。

「お姉ちゃん!」

「ヒナ!」

そう、見つけたのはヒナギクの姉、雪路の姿。

そしてその隣にもう一人・・・

「お義兄さんも来てたんですね。」

雪路の夫でスペード国の王子である京ノ介だった。




ハート国とスペード国は極めて良好な関係を築いてきた。

その背景には政略結婚が大きく関わっている。

二人もまた許嫁同士だった。

しかし二人は好きあって結婚したのだ。

楽しそうに笑っている二人・・・

姉は好きな人とずっと同じ道を歩んでいける。



私は・・・


昨日流し尽くしていた涙がまた溢れてきた。

雪路に泣き顔を見られたくなかった。

だから・・・

「お姉ちゃん!ごめんなさい。すこしつかれたみたいだから一度部屋に戻るね。」

「え、ちょっ、ちょっとヒナ??」

雪路の言葉を聞く前にヒナギクは逃げるように会場の外に出た。



惨めだった。
王女という名に縛られ、自由を奪われ、愛する人さえ決められてしまう。

寂しくて、切なくて、苦しくて・・・

「王女」

聞きなれた声が私を呼ぶ。

「王女」

(いや)


「王女!」

(いや!)


「王女、ここにいらしたのですね」

「・・・・・・ないで。」

「えっ?」



「その名前で私を呼ばないで!!」

もう涙を隠す余裕なんてなかった。

ヒナギクは自室に駆け込むと声を殺して泣いた。

ハヤテはその場に立ち尽くすことしかできなかった。



時同じくして

パーティー会場


二人の男女が隅で声を殺して話している。

「あの王女のお付きの執事。似てるわね・・・」

「でも、あの子はもう・・・」

「そんなの調べてみないとわからないじゃない!!」

「しっ!声が大きいよ。」

「ご、ごめんなさい。でも・・・」

「君が言う通り少しでも望みがあるのなら。調べてみよう。」

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Re: 私は王女、あなたは執事 ( No.2 )
日時: 2013/02/02 23:07
名前: みっちょ

第三話「本当の想い」

パーティーが行われた翌日

ヒナギクは王と王妃が自分のことを呼んでいるとメイドから聞き、
長い廊下をひたすら歩いていた。

その少し後ろからついてくるハヤテは昨日のことがあってか少し浮かない表情。


みなさんも知っての通りハヤテは鈍い。

なので昨日のヒナギクの言葉の意味が全く分からず
「王女を不快にさせてしまった」
という罪悪感でいっぱいだった。

とりあえず謝らなければ・・・

ハヤテは目の前を歩いている少女に意を決して話しかけた。

「あ、あの、お・・・」

しかし問題発生

「王女」と呼ぼうとしたが昨日呼ぶなと言われた以上なんて呼べばいいかわからない。

しどろもどろになっているハヤテにヒナギクは振り向いて・・・

「ごめんなさい。」

「えっ??」

自分が謝ろうとしたのにいきなりその当事者に謝られてハヤテは面をくらってしまった。

数秒の間があり我に返ったハヤテは・・・

「謝らないでください!!悪いのは僕なんですから!」

「いいえ、ハヤテは悪くないわ。
 悪いのは私だから。あれは、私のわがまま。
 だから気にしないで。今まで通り普通に接してくれる?」

「・・・はい。王女がお望みなのでしたらそのようにします。」

「ありがとう。」

王女は笑った。

とても美しく・・・儚かった。

ヒナギクが大広間につくと王と王妃が駆け寄ってきたため
ハヤテはすぐに後ろへ下がり広間の端へ向かった。

「ヒナギク!!喜んでくれ!お前の相手は大物だぞ!
 あのスペード国の王子、康太郎王子だ!」

「よかったわね!これで祖国も安泰よ!」

「・・・・・・」

ヒナギクは無言だった。

何と言えばいいかわからない。

喜べと言われても本心から喜べない以上何も言えなかった。

嘘でも「うれしい」と言うべきなのかもしれない。

でも嘘はつきたくなかった。

だから無言。

「どうしたんだい?ヒナギク?」

黙っている自分を心配そうに見つめている両親。

「なんでもありません。」

「そうかい?それならいいけど・・・
 何かあるならちゃんというんだよ?」

両親に心配はかけたくない。

でも・・・やっぱり喜べなかった。

「明後日、顔合わせがあってその次の日には挙式を挙げるから
 今日はゆっくり休んどいた方がいいわ。」

ヒナギクの母は優しく話しかけヒナギクを部屋へと連れていくようハヤテに申しつけた。

部屋へと戻るヒナギクはまた無言だった。

ハヤテはヒナギクの手を引いて部屋まで連れて行った。

「それでは、失礼します。」

ヒナギクを部屋まで送るとハヤテは一礼して部屋を出ようとした

「まって!!」

がヒナギクによって引き止められた。

「なんですか?」

不思議そうな顔でヒナギクを見つめるハヤテ

「あ、あのね。えっと・・・」

「?」

「だから、えっと、さ、散歩がしたいの!付き合ってくれる?」

「え、いいですけど・・・。
 急にどうされたのですか?」

「な、なんとなくよ。なんとなく!!」

少し強い口調で言うヒナギクにたじろぐハヤテ

「わ、わかりました。では参りましょうか。」

ヒナギクはうなずくと手を差し出す。

ハヤテはその手を優しく握って庭園に案内した。

美しい花々が咲き乱れて小鳥たちが歌っている。

大きい花、小さい花、鮮やかな色をした花、おとなしい色をした花。

そのどれもが輝いている。

短い命を精一杯つかって美しく咲こうとしている。

「きれい・・・」

そんな言葉が自然と出た。

そして同時に自分はちっぽけだ、と思った。

自分の想い一つも打ち明けられない。



ずっと我慢してきた。


「ねえ、ハヤテ。」


ずっとずーと言いたかった言葉。

大好きなあなたへ。

「なんですか?」


私の最後のわがままだと思って許してね。

あなたにこの思いを伝えることを・・・


「好き。」


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Re: 私は王女、あなたは執事 ( No.3 )
日時: 2013/02/02 23:12
名前: みっちょ

第四話 「執事の想い」

「好き。ハヤテのことが大好き。」


花たちが美しく香る庭で打ち明けられた想い。

甘いにおいを風があたりへまき散らす。

王女はこの甘いにおいに惑わされておかしくなったのだろうか。

王女が僕のことを好き、なんて・・・

「ははは・・・、冗談はやめてください。」

「冗談なんかでこんなこと言うと思う?」

「・・・・・・」

「私、結婚するの。顔も知らない男の人と・・・」

「・・・王女は、この婚約を望まないというのですか?」

「本音はね。でも王女だもの。この国を守ることが私に課せられた義務よ。
 もし私がこの婚約を破棄したらどうなると思う?
 相手の国が戦争を仕掛けてくるかもしれない、貿易を拒んでくるかもしれない。
 私ひとりの身勝手な判断でこの国の人が苦しむのは見たくない。
 この国が大好きだから。私は結婚するの。」

振り返った王女は泣いていた。

泣きながら・・・笑っていた。

「でも、好きな人に想いを伝えられないままなのはどうしてもいや。
 このまま結婚してもきっと杭が残る。だからもう一度だけ言うね。 

 私はハヤテのことが好きです。誰と結婚してもこの気持ちは変わらない。
 だからハヤテも正直に答えて。王女としてじゃなく一人の女として。」

「僕は・・・」

王女のことをどう思っているんだろう?

王女といると楽しくて。
王女が泣いてる自分まで泣きたくなる。
王女が笑ってると僕も自然と笑みがこぼれてくる。

王女が誰かと、けっこん・・・


「・・・だ」

「え?」

「そんなの絶対に嫌だ!!!!」

感情が抑えきれなかった。

「僕は、王女、いえヒナギクのことが大好きだ!!
 他の誰かと結婚なんてしないでください!!
 僕は、ぼくは・・・」

情けないと思う。

好きだと言いながら泣き崩れるなんて・・・

でもどうしようもなかった。

僕は執事で、あなたは王女なのだから・・・
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Re: 私は王女、あなたは執事 ( No.4 )
日時: 2013/02/02 23:15
名前: みっちょ


一日だけでもいい。 あなたと一緒にいたい・・・

第五話「恋人ごっこ」

「ハヤテ、落ち着いた?」

「・・・はい。すみません・・・。とり乱してしまって・・・」

「いいわよ。そんなことで謝らなくても。それに・・・」

「それに?」

「ハヤテが私のことどう思ってるのかも聞けたしね!」

ヒナギクはうれしそうに笑った。
ハヤテも照れながらも笑顔だった。

「あの、おうz・・・」
じょ、という前に不意に口をふさがれた。

初めてのキス
甘くて、せつなくて、唇から体全体に電流が流れるような
そんなキスだった。

唇を重ねていた時間はほんの少しだったのに永遠のように感じられた。

「ヒナギクって、呼んで・・・」

「え!?」

「お願い!結婚式まで残された時間はたった一日しかないの!お願い!私と・・・私と付き合ってください!!」

数秒の沈黙

「・・・はい。よろしくお願いします///」

「ありがとう。ハヤテ」


たった一日の恋人関係

それははたから見たら遊びにしか見えないと思う。

王家の少女と使用人の少年の恋愛ごっこ。

決して結ばれることのない男女の悲しいおままごと。

それでも彼らは真剣だった。
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Re: 私は王女、あなたは執事 ( No.5 )
日時: 2013/02/02 23:18
名前: みっちょ

第六話「最初で最後の日〜思い出の場所〜」

「ハヤテー!早く早く!!」

「まっ、待ってください!」

「今日一日しかないんだから急がないと日が暮れちゃうわよ!!」

ここは城からほど遠くない、ハート国の中でもっとも大きい都市
その町の中心部に二人はいた。

なぜ、二人がこの場所にいるのか。
それは昨日の夜までさかのぼる・・・

ヒナギクとハヤテは明日のことについて話し合っていたとき
ヒナギクが「ハヤテと街に出かけたい」と言ったのが始まり。

結婚すれば自分はこの国ではなく別の国で暮らすことになる。
だから最後にハヤテとこの国を見て周りたい。と、

ハヤテもその意見には賛成・・・というかヒナギクと一緒にいられれば場所はなんてどこでもよかった。

王も王妃も街に出かけたい理由(ハヤテとのことは伏せて)を話すと
「それはいい、今日は楽しんでおいで」と承諾してくれて今に至る・・・


「王・・・じゃなかった。ヒナギク!そんなに走ったら危ないですよ!!」

「大丈夫だいじょ、キャッ」

ヒナギクは足を滑らせて転びそうになった。

「だから言ったじゃないですか、『危ない』って」

ハヤテはすごい勢いで走って来てその体をしっかりと支える。

「あ、ありがとう・・・」

ヒナギクは顔を真っ赤にしたままお礼を言った。

「いえ、ヒナギクにケガがなくてよかったです。」

ハヤテは笑顔で答えた。

「さて、ではどこから見て周りますか?」

「そうね・・・あのお店とか新しく出来たみたいだし行ってみたいわ」

「では、行ってみましょうか」

ハヤテはヒナギクの手をしっかり握って店に向かって歩き出した。

ヒナギクは再度真っ赤。

それから二人はいろいろなものを見て周った。

洋服や小物、小さな公園や劇場もみたり一日休みなしで遊び尽くした。

楽しければ楽しいほど時間は早くに過ぎていき、気がつくと空は紅に染まっていた。

そろそろ帰らなければいけない時刻・・・
それはこの関係が終わってしまう最後の時だった。

二人は、口数の少ないまま城に向かう小道を歩いているとハヤテが何かを決心したように
顔をヒナギクの方へ向けた。

「ヒナギク、すこし寄り道していってもいいですか?」

ハヤテの言葉に少し驚いたが一秒でも長くハヤテと一緒にいたいという想いがあったヒナギクに断る理由はなかった。

ハヤテは小道からそれてどんどん進んでいく。

ヒナギクも黙ってハヤテの後ろをついていく。

そして、

「つきましたよ。」

そこは城のすぐ下にある小さな丘だった。

昔、幼い日の

「ハヤテ・・・どうしてここに?」

「ここは僕たちの思い出の場所ですから・・・」


少年と少女が出会った場所。

今から十年前のあの日・・・
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Re: 私は王女、あなたは執事 ( No.6 )
日時: 2013/02/02 23:25
名前: みっちょ


十年前のあの日、僕らは出会った

第七話「最初で最後の日〜十年前の出会い〜」


「ヒナギク王女がまたいなくなったーーーー!!!」

場内に響き渡る悲鳴めいた声を尻目に一人の女の子が城の周りを取り囲む城壁を降りながら笑っていた。

「あはは、まだまだ甘いわよ。クラウス」

この女の子こそ先程場内で騒ぎが起こる原因となった張本人、
ハート国の王女、ヒナギク(六歳)である。

六歳といえばまだまだ遊びたい年頃

しかし王女ともなれば覚えることは山ほどある。

遊んでる暇などない。

なので時々使用人たちの目を盗んでこっそりお城から逃げるのが彼女にとっては遊びなのだ。

一方、使用人たちは気が気じゃない。

王女に何かあれば自分たちの処遇だけじゃなく国全体に関わる。

城の中が騒がしくなって「王女ー!」という声があちらこちらで聞こえる。

さすがにここにいてはせっかく抜けてきた苦労が水の泡

急いでこの城壁を降りなければ!

ヒナギクは足元を探りながらさっきよりもスピードを上げて降りはじめた。 

しかし焦ってしまったせいか足は壁の石を空振りし宙に浮いた。

そして

「キャアーーーー!!」

ヒナギクはそのまま真っ逆さま!

このまま落ちていけば地面との正面衝突は免れない。

ヒナギクがあきらめかけて目をつぶった、その時である。

どこからか風が吹いたかと思うと地面にぶつかった時に体中を走るであろう痛みがいつまでたっても来ないのである。

恐る恐る目をあけると・・・

「大丈夫?」

優しそうな男の子がこちらを心配そうに覗きこんでいた。

「助けてくれて本当にありがとう!私、ヒナギクって名前なの。あなたは?」

「僕はハヤテ」

「よろしくね!ハヤテ君」

「こちらこそよろしく、ヒナギクちゃん!でもあんな危ない場所にどうしていたの?」

「えっと、それは、お城から逃げるため・・・かな」

「お城って!まさかヒナギクちゃんこのお城に住んでるの?」

「うん!」

「すごいな〜」

「ハヤテ君はどこに住んでるの?」

「僕はそこの孤児院に住んでるんだよ。」

「そう、なんだ・・・」

ヒナギクは「孤児院」と聞いてすこし顔を曇らせた。
幼いヒナギクにもそこがどんな子供が住んでいるか分かっていたからだ。
そんなヒナギクの様子にあわてたハヤテは必死に弁解した。

「で、でもお兄ちゃんやお姉ちゃんや妹や弟がいるから毎日とっても楽しいよ!」

「・・・私もお姉ちゃんが一人いるんだよ!でももうお嫁に行っちゃっていないからつまらないの。」

「そっか・・・」

「見つけましたよーーー!!!」

「「!!!」」

二人とも同時に振り返ったその先には・・・

「クラウス!」

汗だくで息も荒い男性が睨みつけるような視線で二人を見ていた。

「まったく、あなたって人は・・・さあ帰りますよ!」

「待ってよ!!まだ、ハヤテ君とお話したい!!」

「わがまま言わないでください!それに誰なんですかこの少年は?」

「誰って私の友達よ!」

「少年、どこのだれかは知らないが、ここにいるお方は次期王位継承者だ。」

「!!」

ハヤテは驚いた顔でヒナギクの方を向いた。

「別に今そんなことどうだっていいでしょ!」

「大事なことですよ!!」

「今は重要じゃないでしょって言ってるの!」

「どこの誰ともわからない相手と会話するのはおやめください!」

「彼は私の命の恩人よ!」

「!!!!!」

クラウスは驚きのあまり言葉を失った。

数秒後

「それは本当ですか?」

「ええ、城壁から落ちたところを助けてもらったの」

王女の命を救ったと聞いては下手に手出しできない。

「これで彼と話す時間をくれるわよね?」

しかしここで引き下がるわけにもいかない。

「待ってください。それではこの少年には王家のものを助けたものとして恩義があります。
 恩義は王家の者として返さなくてはなりません。
 どうでしょう、彼を王とお妃に逢わせてみてはいいかがでしょう。」

「お父様たちに?」

「そうです。彼にとっても悪い話ではないでしょう?」

「え・・・あの・・・」

いきなり自分に話題を振られて戸惑うハヤテ

「ハヤテ君はどうしたい?」

「あ・・・だからえっと・・・別に大したことしたわけじゃないし、ヒナギクちゃんが無事なら僕はそれで・・・」

「でも私もお礼はしたいと思ってたから。できればさせてほしいんだけど・・・」

「・・・ヒナギクちゃんが言うなら・・・」

「それでは城までご案内します」

クラウスを先頭にハヤテとヒナギクは手をつないでお城へ向かった。





実はこの部分の話は最初の段階では入る予定がなかった話しなんですが書きはじめたら
「ハヤテとヒナギクの出会いの話が書きたいな〜」と思って付け足した話なんですよ(笑)
現在絶賛コピー中です!
あと何話か写します!
明日には全部コピーできると思うので!!
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Re: 私は王女、あなたは執事 ( No.7 )
日時: 2013/02/02 23:58
名前: みっちょ

第八話「最初で最後の日〜十年前の決断〜」

「・・・すごい」

城内へ入るとあまりの美しさにハヤテは感嘆の声をあげた。

大きなホールや部屋がいくつもありすべてが輝いて見えた。

ヒナギクも目を輝かせて城内を見回すハヤテを嬉しそうに見ていた。

「さあ、つきました」

そこはひときわ目立つ大きなドアの部屋だった。

どこか威圧感をまとったその部屋のドアが静かに開いて、中にいる使用人たちがハヤテ達を招き入れた。

そこには一人の女性が椅子に座ってこちらを見ていた。

「ヒナギク、と可愛いナイトさんがいるようね」

よく通るソプラノの優しい声

「この者が先程ご報告した王女の命を救った者です」

「名前はなんていうの?」

「ハヤテです・・・」

「”ハヤテ”良い名前ですね。このたびは娘の命を救っていただきありがとうございました。」

「い、いえ、当たり前のことをしただけなので・・・」

いきなり頭を下げられ戸惑うハヤテ。
そんなハヤテに助け船を出したのはヒナギクだった。

「お母様。ハヤテ君に何かお礼をしたいのですが・・・」

「そうですね。何か欲しいものなどありますか?」

「え、えっと・・・」

「なんでもいいんだよ?」

ヒナギクは笑顔でハヤテの答えを待った。

「・・・それじゃあ、僕が住んでいる孤児院の人数が多くなちゃって、ものがいろいろ不足してるから服とか家具とかがもう少しあったらいいかなって・・・」

「そうですか・・・わかりました。国の人に使わなくなった家具を譲渡してもらえるようにお願いしてみます。それと孤児院への寄付金を倍にします。」

「ありがとうございます」

「お母様。私からも一つお願いがあります。」

「なんですか?」

「勉強も真剣に取り組みます。もう逃げ出したりもしません。
 だから、たまにはハヤテ君と遊ぶことも許可していただけませんか?」

「王女!彼は恩人とは言え平民ですぞ!王女の遊び相手なら貴族の子弟「わかりました」

「あなたも遊びたい年頃なのにいろいろしてあげられなかったことが今回あなたを危険な目にあわせた原因だと私は考えています。そのくらいは認めましょう。」

「ありがとうございます」

「しかし、クラウスの行っていた言葉にも一理あります。だから彼には遊び相手ではなく執事になってもらうのはどうでしょう?」

「「執事?」」

「そうです。執事になれば身の回りの世話をしたりするので勉強で忙しいときなども時間を無駄にすることなく遊べますよ?」

「でも・・・」

執事という仕事は朝起きてから夜寝るまで主と一緒にいて世話をする。
それは、ハヤテの今の生活が壊れてしまうことを意味していた。

「もちろん彼の考えもあるでしょうから強制ではありません。一つの案としてだしただけですので。今日はここに泊って行きなさい。ひと晩じっくり考えてから明日の朝、返事を聞かせてください。クラウス、部屋へ案内してあげて。」

「かしこまりました」

ハヤテは案内された部屋のベッドに腰掛けてずっと考えていた。

ヒナギクともっとお話ししたい。

彼女ともっと遊びたい。

彼女のことをもっと知りたい。

でも、それは今の暮らし、家族と別れることになってしまう。

コンコン

ノックの音がしてドアの方を見るとヒナギクが立っていた。

「ハヤテ君」

「ヒナギクちゃん」

「ごめんね、こんなことになっちゃって・・・」

「・・・」

「あのね、ハヤテ君の好きな方を選んでいいから」

「えっ?」

「私のことなんて気にしないで、ハヤテ君は自分の心に嘘はつかないで、自分のやりたいようにすればいいから。」

「ヒナギクちゃん」

「それじゃあ、お休み」

ヒナギクはそういうや否やドアを閉めることも忘れて駆けだしていった。

「自分の心に正直に・・・。わかったよ、ありがとう、ヒナギクちゃん」
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Re: 私は王女、あなたは執事 ( No.8 )
日時: 2013/02/03 00:01
名前: みっちょ

第九話「最初で最後の日〜十年前の追憶〜」

「あのときこの場所で僕があなたに出会わなければ今のこの幸せは絶対に手に入らなかった。」

そう、僕があの日、あの時間にこの場所を通っていなければ、
ヒナギクがあの日、あの時間に城内を抜け出していなければ、
今の関係はおろか存在すら知らずに生きていただろう。

「だから、この場所に連れてきたかったんです。あなたと出会い、歩み始めたこの場所に・・・」

「ハヤテ・・・」

ヒナギクは涙が止まらなかった。

「悔しい・・・最後は笑顔で別れようと思ったのに・・・」

涙は頬を伝って地面へと落ちていく。

「ヒナギク・・・」

ハヤテは優しくヒナギクを抱きしめた。

「ハヤテ・・・」

ヒナギクもハヤテの背中に手をまわして必死に抱きついた。

離れたくない。

ずっとこうしていたい。

ずっと・・・

しかし時間は有限で残酷だ。

どんなに強く願っても止めることはできない。

「ヒナギク・・・」

ふいにハヤテの体がヒナギクから離れた。

「ヒナギク、結婚式をしよう!」
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Re: 私は王女、あなたは執事 ( No.9 )
日時: 2013/02/03 00:10
名前: みっちょ

第十話「最初で最後の日〜二人だけの結婚式〜」

「ヒナギク、僕と結婚式を挙げてください」

「えっ?」

ハヤテの言ってる意味が全く理解できなかった。

「結婚式?」

「そうです。きれいな衣装や教会があるわけでも、認めてくれる家族がいるわけでもありません。でも、僕たち二人がこの結婚を認めるんです。戸籍上は無理でも心はこれから先ずっとあなたと共に歩んでいきます。ですから・・・」

ハヤテはヒナギクの前でひざまずいて・・・

「僕と結婚していただけませんか?」

ハヤテの手にはいつの間にか指輪の箱が乗っていた。

「・・・はい。」

ヒナギクは目尻に涙を浮かべながらも笑顔で答えた。

「手を出してもらっていいですか?」

ヒナギクが手を差し出すと、手の甲に短いキスをして指輪をはめた。

「ハヤテ、今度は私が・・・」

「はい。」

ヒナギクはハヤテから指輪を受け取るとハヤテの手をとって指輪をはめた。

「愛してます」

「私も・・・」

あいしてる

たった五文字の言葉にどれだけの意味があったのだろう。

言葉は目に見えなくて、すぐに消えてしまう。

「ねえ」

「わかってますよ。」

誓いのキス

甘くてとろけそう

どれくらい唇を重ねていただろう

数秒、数分、数時間

どれだけ重ねていてもほんの一瞬のように感じてしまう。

「これで私たち離れないわよね?」

「はい、ずっと一緒です。」

ハヤテは、笑いながら・・・泣いていた。

「ハヤテ・・・」

「あれ?なんでぼく泣いてるんだろう。おかしいですね・・・結婚式挙げた直後に泣くなんて。」

ハヤテは一生懸命袖で涙をぬぐうがあとからあとから溢れてきて止まらない。

「気にしないでください。きっと目にゴミでも「我慢しないで」

ハヤテの言葉を遮ってヒナギクは言葉をつづけた。

「我慢なんてしなくていいわ。泣きたいときは思いっきり泣いて。」

その言葉にハヤテは何かの糸が切れたように大声をあげて泣いた。

ヒナギクは黙ってハヤテを抱きしめた。

「ヒナギク、ヒナギク・・・」

ヒナギクの名前を何度も何度も呼びながらハヤテも抱きしめ返した。

本当はずっと一緒にいたかった

この先も君の笑顔を隣で見ていたかった。



自分がこの手で・・・君を幸せにしたかった。


「ハヤテ・・・」

「ヒナギク・・・」



最後のキスは涙の味がした。



今日はこの辺で終わります。
また明日移します!

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Re: 私は王女、あなたは執事 ( No.10 )
日時: 2013/02/03 10:44
名前: みっちょ

第十一話「ピリオド」

ヒナギクはベッドの上で目を覚ました。

隣の彼はまだ夢の中のようだ。

あの結婚式の後どうやって帰ってきたかは覚えてないが二人とも泣き疲れて眠ってしまったらしい。

「ハヤテ・・・」

この名前を近くで呼べるのも今日が最後

今日は王子との顔合わせがある

そして明日は結婚式

この国と離れなければならない

「はぁ・・・」

ヒナギクは小さくため息をついた。

「ため息をついたら幸せが逃げてしまいますよ?」

その声に驚いて顔を向けるとハヤテが苦笑しながら体を起こした。

「ハヤテ!起きてたの!?」

「はい、名前を呼ばれたので」

ハヤテは笑顔で答えた。

「幸せ・・・か」

ヒナギクは対照的に悲しそうな顔

「私の幸せはハヤテがいてくれるだけでいいのに・・・」

「・・・大丈夫ですよ。僕はどんなに離れててもヒナギクのことを愛してます」

「そうね、結婚式までしたんだから!」

ヒナギクは自分の左手の薬指にはまっている指輪を見て笑顔になった。

「さて、そろそろマリアさんたちが起こしに来る時間なので僕は着替えて自室に帰ります」

「え・・・」

「ここに僕がいたらまずいでしょう?」

「・・・」

まだ一緒にいて!

そんな言葉が喉の奥まで出かけるが必死に抑え込んで、

「そ・・・うね」

これが精一杯だった。

「それでは、失礼しました。王女」

ばたん、と扉が閉まる

「ハヤテ・・・」

王女、と呼ばれることがこんなに苦しいと思ったのは初めてだ。

この前は気持ちを確かめる前だったからかもしれないが気持ちを知ってしまった今、
その名前で呼ばれることが苦しい

顔合わせまであと数時間。

ハヤテとの恋人ごっこは終わった。

次は顔も知らない相手との結婚ごっこ

たった一日とこれから先の一生

周りから見ればどちらが重要かなんてたかが知れている

でもヒナギクにとってはたった一日でも「ハヤテ」という少年との時間が大切だった。

あと数時間でこの気持ちにピリオドを打たなければならない。

「無理よね・・・」

ヒナギクの声はマリアたちが勢いよく開いたドアの音にかき消されて消えていった。
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Re: 私は王女、あなたは執事 ( No.11 )
日時: 2013/02/03 10:48
名前: みっちょ

第十二話「ペンダント」

「王女ーー!!」

マリア達が大慌てで部屋に入ってきた。

「どうしたの!?そんなにあわてて!」

ヒナギクは目を丸くしてマリアたちの方に顔を向けた。

「どうしたもこうしたもありませんわ!
 王女!!今すぐ支度なさってください!」

「どうして?顔合わせはお昼のはずよ?」

「それが、予定が少しずれたそうであと一時間もしない間にこちらに着くそうなんです!」

ヒナギクは絶句した。

心の整理がつかないまま顔合わせなんて無理にきまってる。

数時間あってもつかないものをあと一時間足らずで決めなくてはならない。

「とにかく急いで着替えてください!!」

ヒナギクは目の前に突き付けられた現実を受け入れられず放心状態

その間にマリアたちはてきぱきとヒナギクの着替えを済ませていく

しかしマリアがヒナギクの左手に白い手袋をかぶせようとした時、今まで動いていた手が止まった。

「あの・・・王女?これは・・・」

そう、マリアが見たものは左手の薬指にはめてある指輪

「え?」

ヒナギクがその声に反応して自分の左手を見ると同時に「しまった」と思った。

「あの、これは・・・」

「え、えっと・・・これは、その・・・お、おまじないなの!」

「おまじない?」

「ええ、結婚する前に自分で一度この指に指輪をはめると結婚してからもずっと幸せ出られるらしいの!」

ヒナギクはそう言いながら指輪をはずしてテーブルの上にそっと置いた。

「そうなんですか・・・」

マリアは不思議そうな顔をしたが特に深く質問せず、かぶせかけだった手袋をはめた。

「それでは、王子がお見えになるころにお呼びしますのでそれまではこちらで待機してください。」

マリアたちは一礼して部屋の外に出て行った。

「はー」

ヒナギクは安堵のため息を漏らした。

「危なかったわ。さすがにこの指にはめてるのはまずいわよね・・・」

ヒナギクはすこし考えて指輪をペンダントにすることにした。

引き出しから昔つけていたペンダントを見つけてきてそれをバラバラにして糸だけを残した。

そして指輪を通しもう一度結びなおす。

首にかけてみると服の下にすっぽりと隠れて見えない。

「よし」

ヒナギクが首にかかるペンダントを見つめていると・・・

コンコンッ

「王女!王子がお着きになりました」

ついにその時が来てしまったのだ。


旧ひなゆめではここら辺までかいた記憶があるので次からひなゆめ初でしょうか?
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Re: 私は王女、あなたは執事 ( No.12 )
日時: 2013/02/03 10:50
名前: みっちょ

第十三話「真実」

ヒナギクが大広間につくとそこはあの日の舞踏会以上に豪華な造りになっていた。

城じゅうの使用人達が全員集まっていてきれいに端に並んでいる。

ヒナギクの眼は無意識にハヤテを探していた。

『いた!』

ハヤテはドアのいちばん近い所に無表情のまま立っていた。

最後にもう一度話がしたい・・・

ハヤテ、呼びかけようとしたその時、

「ヒナギク」

突然名前を呼ばれて振り返るとそこには王妃が優しそうな笑みを浮かべて立っていた。

王妃はヒナギクを優しく抱きしめてヒナギクの耳元で「ごめんね」とつぶやいた。

王妃はわかっていたのだ。

ヒナギクがお付きの執事に恋をしていたことも彼がまたヒナギクに恋をしていたことも・・・

ヒナギクは涙を流さないように必死で耐え、「ありがとう」と伝えた。

「王子がお見えになりました。」

クラウスの一言で王妃はヒナギクから離れた。

ついに来た。

これですべてが終わるのだ。

ドアのところには正装した男の子が立っていた。

一歩一歩こちらに近づいてくる。

「初めましてスペード国第一皇子康太郎です。よろしくお願いします」

「初めましてハート国第二王女ヒナギクです。こちらこそよろしくお願いします」

社交的な会話の後は、そのものに結婚の意思があるか確かめる王家の儀式

結婚式はただの形式

本当の婚姻はこの儀式で行われる

これを交わしてしまったら絶対に後には引けない。

神官が朗々と述べていく誓いの言葉

「誓いますか?」

最後に問われるこの言葉

「ち、誓い・・・」

その時、バンッと荒々しくドアが開いてフードをかぶった二人組が入って来た。

「だれだ!!」

王は声を張り上げてどなった。

「今は大事な婚姻の儀を取り行っている。邪魔立てするものは打ち首だ!」

使用人たちはおろおろしながらその様子を見ていた。

「いや、すまない」

その声を聞いて王の顔色が変わる。

「まさか、お前は・・・」

「久しぶりだね。ハート国の王」

「ああ、スペード国の王よ」

使用人、ヒナギク、そして康太郎までもが驚いて目を丸くした。

「しかしなぜそのような格好をしているのだ?」

「ん?ああ、身分を隠して調べ物をするにはこの格好が一番だからね。」

「ん、もう!そんな世間話している場合じゃないでしょ!!」

フードをかぶったもう一人が二人を咎めた。

「ああ、そうだったな。てなわけで私のお姫様の気分が悪くなる前に話しておこうかな」

スペード国の王は壁に並んでいる使用人たちの中からある一人を見つけるとまっすぐ向かった。

「名はなんという?」

「ハヤテです。」

「”ハヤテ”、よい名前をもらったな。息子よ。」

「「「「へ?」」」」

「あの、息子とは康太郎王子のことですよね?」

ハヤテが控えめに聞くと、

「いや、お前のことだよ。」

あたりは騒然となった。

ハヤテがスペード国の王の息子?

てことは王子?

周りは錯乱状態で当の本人はあまりの出来事に放心状態

「もう!ちゃんと説明しないからみんな話についていけてないじゃない!!」

「いや、すまなかった。」

スペード国の王は自分の妻とハヤテを交互に見た。

「実は、お前が産まれた直後に運悪く盗賊に襲われてお前までさらわれてしまったのだ。王家の子どもなら高く売れるという考えからだろうが、産まれたばっかりだったお前には買い手がつかず孤児院送り。私たちは必死で探したよ。国中駆けまわったさ。しかしお前は見つからずに16年という歳月が流れてしまった。そしてあのパーティーの日お前を王女の近くで見つけてな。それからずっと調べてた。そしてやっとお前が私たちの子であることがわかったんだ。たった一人の血のつながった、な」

「それはどうゆうことですか?」

ハヤテが王の子どもということについては今の説明で大体把握できた。

しかし「たった一人の血のつながった、な」の部分はどう考えてもおかしい。

それは今ヒナギクと結婚しようとしている康太郎のことだ。

「康太郎、お前にも言っておかなければならない。」

スペード国の王は決心したように話しだした。

「ハヤテが盗賊達にさらわれた時、私たちを命懸けで守ってくれた男女がいたんだ。その人たちは私の家臣でもありよき友でもあった。その人たちには生まれて間もない赤ん坊がいたのだ。それがお前だよ。彼らは死に際に『子供を頼みます。』と言ったのだ。私はハヤテが見つからない現状で考えた。お前を養子にして王子とすれば彼らの意思に報いることができる、と。今まで黙っていて本当にすまなかった。」

康太郎は黙ってをうつむいた。

王はさらに続けて言う。

「ハヤテが見つかってもお前と過ごした時間は変わらない。どうかこのまま私たちの子供でいてはくれないか?」

康太郎が顔を上げると目にいっぱい涙をためていた。

「僕に血のつながった本当の両親がいたことを知っても僕を育て、愛情を注いでくれたこと、僕を家族として迎えてくれたこと心より感謝してます。これからも僕はあなたたちの家族でいたいです!」

周りにいた使用人たち、王、王妃、ヒナギク、ハヤテも涙をこらえきれず泣いていた。

しばらくして落ち着いてくると婚姻の儀の途中だったことに全員気がついた。

しかし問題はハヤテと康太郎どちらと婚姻の儀を結ぶかということ。

スペード国の王はハヤテと康太郎を交互に見た後、目を閉じて数分。

考えが決まったのかゆっくりと目を開けた。

「・・・康太郎には悪いが私たちとしてはこの婚約は直接王家の血をひくハヤテと結ばせてもらいたいのだが・・・」

ヒナギクとハヤテは同時にお互いを見た。

「ハヤテはどうだ?」

ヒナギクは優しくハヤテにほほ笑んだ。

ハヤテも微笑み返す。

「はい、お願いします!」
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Re: 私は王女、あなたは執事 ( No.13 )
日時: 2013/02/03 10:53
名前: みっちょ

最終話「未来への翼」


ある国に美しい王女がいました。

王女という名に自由という翼をもがれ、大空に羽ばたけなかった少女

しかし、ある少年が彼女の翼になったのです。

「恋」という羽が詰まった翼は彼女を大きく羽ばたかせました。

未来という名の大空に・・・



結婚式当日

美しい花嫁衣装に身を包んだヒナギクは、今までの思い出を確かめるように一歩一歩ハヤテに近づいていく。

ハヤテと出会ったとき

ハヤテが執事のなったとき

ハヤテに告白して、返事をもらったとき

そして二人だけの結婚式

一つ一つが大切でかけがえのない思い出

愛しさでいっぱいの胸を高鳴らせながらハヤテの前に立った。

「きれいです・・・」

ハヤテが真顔で言うのでヒナギクは顔を真っ赤にしてうつむいてしまった。

「バカ・・・」

ヒナギクが照れ隠しにそんな言葉をつぶやき、そっと顔を上げるとハヤテは「真実を言っただけですよ?」と小さく笑った。

誓いの言葉が終わると指輪交換。

ヒナギクとハヤテの左手の薬指には、すでに一つ指輪がはまっていた。

ヒナギクはペンダントにしていたのを崩してもう一度指輪に戻していた。

ハヤテがその上からもうひとつ王家に伝わる本当の結婚指輪をはめる。

ヒナギクも同じようにハヤテの指に通す。

誓いのキス。

あの結婚式とは違う涙が頬から唇に伝う。

すこししょっぱいその味はあの時のことを鮮明に思い出させてくれた。


式が終わり式場の外に出ると街はお祝いムード一色だった。

ハヤテと結ばれることをたくさんの人が祝福してくれる

ヒナギクの心は歓喜で満ち溢れていた。

「ヒナギク」

もう呼んでもらえないと思っていたその名前をハヤテが呼んでくれる。

たったそれだけのことでもヒナギクはうれしかった。

「ハヤテ」

これから先、楽しいこと、うれしいことがたくさんあってそれと同じくらい悲しいこと、つらいこともたくさんあると思う。

でもその苦しみを一緒に乗り越えていきたい。

ハヤテがもし翼をなくしたとき、自分がハヤテの翼になりたい。

ハヤテと一緒に未来に羽ばたいていきたい。

この先もずっと・・・

永遠に。




ついにこっちでも完結することができました! 初めて書いた長編で本当に楽しかったです! ここまでお付き合い頂き本当にありがとうございました! これからは受験勉強をしながらも短編をちょっとづつ投稿していけたらいいなと思います!!

アフター投稿しますのでそれも楽しんで頂けたら幸いです!


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Re: 私は王女、あなたは執事 ( No.14 )
日時: 2013/02/03 11:00
名前: みっちょ

アフターストーリーです!時期とかそうゆうのは気にしない方向で!

ここはスペード国

この国一番の大都市は、周辺の村から働きに来る人、買い物に来る人、たくさんの人たちで埋め尽くされ活気づいている

その都市から少し外れた場所に凛としてたたずむ一つの城があった

その城にはまだ年若い王とその王妃がいて、まだ未熟ながらも国をしっかりと動かしていた



〜春〜

「風雅!そんなところに登ったら危ないわよ!!」

まだ冬のにおいが残る春の空に少女の声がこだました。

海をそのまま映したかのような澄んだアクアブルーの髪と琥珀色の瞳を持つ7、8歳くらいの少女

その少女が見つめる先には・・・

「大丈夫だよ、風花!」

木の上で無邪気にはしゃいでいる同い年くらいの少年がいた

その少年も少女と同じアクアブルーの髪、顔立ちもよく似ている

違うところといえば髪の色と同じアクアブルーの瞳をしているところくらいだろう

少女の名前は風花、少年の名前は風雅というらしい

「でも、落ちたりしたらどうするの!!」

「へーき!へーき!!」

風雅は太い幹を探りながら幹の上を綱渡りをするように歩く

「ほら、怖くないから風花も来いよ!」

「絶対にいや!高い所なんて死んでもいかない!!」

「いやいや、この城十分高い所にあるじゃん!」

「だって、ここはちゃんと足がつくじゃない」

「いや、まあそうなんだけどさ」

風雅は苦笑いしながら風花をみた。

「それに、お父様とお母様が見たらすっごく怒ると思うけど?」

「げ・・・父さんはいいにしても母さんが怒るのは勘弁してほしいな・・・」

風雅はいかにも嫌そうに顔をしかめた

「というわけで私の言うことを素直に聞いといた方が身のためだと思うわよ?」

風花は不敵な笑みをこぼしながら風雅を見上げる

「ちぇ、面白いのにな・・・。というかお前なんでそんなに偉そうに言うんだよ!」

「だって私の方が姉なんだから」

「ほんの少し先に産まれただけだろ・・・」

風雅が小さく悪態をつく。

「何か言った?」

「なんも言ってない。仕方ないなぁ・・・」

風雅はしぶしぶ木を降り始める

枝をしかっり握って足元を確かめるように慎重に。

その時!

バキッ

「えっ?」

枝がもろくなっていたのか、はたまた風雅の重さに耐えきれなくなったのか風雅の体は支えを失い、重力に負けて真っ逆さま。

「わああああああああああああああ」

ぶつかる!

風雅と風花が同時に目を堅く閉じたその瞬間。

黒い影が飛び出してきて風雅を抱きかかえた。

「ふー、危なかった。」

優しげな声

恐る恐る目をあけると・・・

「と、父さん!」

そう、そこにいたのは風雅、風花の父でありこの国の王、ハヤテだった

「まったく、高い所にいると必ず落ちてしまう遺伝子が受け継がれてるのか?」

「それ、どういう意味かしら?」

凛としたよく通る声が三人の耳に響いた。

「母さん!」

「お母様!」

「ヒナギクも来てたの?」

いつのまにか立っていたのは、二人の母、ヒナギクだった。

「ええ、書類整理で疲れちゃったから少し目を休めようと思って。」

緑は目にいいからね。と

「それにしても、今の言葉は何かしら?」

「何って。言ったまんまの意味だけど?」

ハヤテは笑いながら

「ヒナギクも一番最初は空から落ちてきただろ?」

その言葉にヒナギクは恥ずかしそうに顔をそむけると話題を変えるように風雅に話しかけた

「それにしても、あんなところに登ったら危ないでしょ。風雅」

ヒナギクは風花と同じことを言う

風花も言わんこっちゃないという顔

「全くだよ」

ハヤテも少し怒ったように言う

「・・・ごめんなさい」

風雅も最初の強がりはどこへやら、雨に打たれたチワワのようにうなだれている

「まあケガがなくてよかったよ。春先とはいえ寒いし、中に入ろう」

ハヤテは笑顔で風雅に手を差し出す

「うん!」

風雅も笑顔でうなずきハヤテの手をしっかりと握った。

「ずるい!風花も!!」

「それじゃあ風花は私とつなごうか?」

ヒナギクは優しく手を差し出すと「わーい」と風花が手を握る。

城に向かう4人の前を少しあたたかい春の風が花びらを舞い上げていた




はい!これで「私は王女、あなたは執事」完結です!
裏話するとこの二人の名前はある掲示板でアンケートを取ったところこの名前がいいと言われたのでつけました!
アンケート取ってから半年くらい間があいてしまったのですが出すことができてすごくうれしかったです!
感想・アドバイスあったらよろしくお願いします!
それでは!!

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Re: 私は王女、あなたは執事 ( No.15 )
日時: 2013/02/05 15:51
名前: 氷結アイスブリザード

こんにちは
氷結です
ハヤテとヒナは子供たちと幸せでよかったです
わたしもこんな話書いてみたいです
でも2月はあるミスと時間の都合で私は何もできそうにありません
悲しいです。
それではまた
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Re: 私は王女、あなたは執事 ( No.16 )
日時: 2013/02/05 18:53
名前: みっちょ

氷結アイスブリザードさん
感想ありがとうございます!!
私も二月と三月の中旬までは入試があるので何もできないかもです・・・
ヒナギクの誕生日はちょうど日曜日なのでもし間に合えば誕生日小説あげれればいいなとおもってます!
ちょっと成績落ち気味なので厳しいかもしれませんがまあそこは気合(?)でなんとか(笑)
あと1カ月ちょいなのでがんばります!
それでは!
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