Re: 君と共に! 第一章 2月3日更新 ( No.18 )
日時: 2013/02/04 19:27
名前: 李薇



伝説の連日更新であるっ。昔は1日に1回ペースだったもんなぁ、懐かしい。

そして今回は二話連続更新ですぜっ! ぐんぐんいきましょうっ!

さて、李薇作品内のキャラクター人気投票第一位のキャラ、登場です

義妹やらその姉やらに先駆けて登場! になります。

……ま、一応彼2人目のヒーローなのでね!



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第三話 『思わぬ再会』


 ピピピピッ…と目覚ましがなる音でハヤテは目覚める。

 まだ、外もようやく明るくなり始める時間帯である。

「うーん…」

 ぐっ、と腕を伸ばすと全身の骨がゴキッと音を立てた。

 ポチッとハヤテは、目覚ましのボタンを押しつつ、やはり固い机で寝るのはキツかったか…と思う。

 何故机で寝たのか。

 その答えは簡単で、彼のベッドにあった。

「………スー…スー…。」

 部屋の隅にあるベッドをこの可愛い少女に占領されたからである。

 普段の強気な発言からは想像できないくらい、可愛らしい寝息で彼女はまだ寝ている。

 まぁ、神にどれくらい睡眠が必要かは知らないが、まだ朝早いし寝ていても無理はないだろう。

「………、はあ」

 思わず漏れるため息。

 とりあえず、ベッドの前にタンスを並べて敷居をつくってはみたもののこれは、由々しき問題だ。

「どうしよう…これは、もう戦い以前の問題だよ…」

 兄さんも苦労したんだなー…と思う健全な高校生綾崎ハヤテは、時計を見る。

 早く着替えて朝食を用意しなくてはならない。

 そういや今日は平日で学校あるけど、

『ま、流石に学校にはついてこれないもんなー』

 ははは、と頭の中で笑いながらハヤテは部屋を出る。

 ちなみにハヤテは気付かなかった。

 アイが寝ているベッドの横に、見慣れた制服が置いてあることに…。










 白皇学院。

 ここがナギとハヤテの通う学校である。

 世間一般で言う名門校で、幼稚園、小学校、中学校、高校とエスカレーター式の金持ち学校だ。

「ふわあ…。くそ…。来たくなかったのに…。マリアの奴…」

 相変わらず自堕落のお嬢様、ナギは欠伸をしながら文句を言う。

 しかし、この少女文句を言っていないときがない気がする。

「まったく。お嬢様ももう少し真剣に学校に通ってくださいよ…」

 引きこもりのナギの説得は本当に疲れる仕事なのだ。

 ということで、ハヤテもマリアもいつも苦労している。

 今日はマリアのナイスプレーでナギも学校に来てくれたが、これで今週はもう学校に行かないかもしれない。

「あら、おはよう。ハヤテくん。」

「?」

 と、不意に後ろから声が聞こえてきた。

 振り返ると、そこには桃色の髪に黄色い瞳の1人の少女が。

 白皇学院生徒会長桂ヒナギク。

 ハヤテとナギにとってはクラスメートにもあたる。

 そんな彼女を見てナギは―…、

「ちっ。ヒナギクか」

「こら。会っていきなり舌打ちするんじゃないわよ。ナギ」

 まったく…とヒナギクは、ため息をついた。

 まぁ、ここで来たのがヒナギクでなくても、ナギの反応は同じだっただろうが。

「本当ハヤテくんも毎日大変ね」

「あはは…」

「なんだその笑いは!!! 否定しろ! 否定!!!」

 えー、否定のしようがないですし…とハヤテは苦笑しつつで主張するが、お嬢様には届かない。

 と、ここでヒナギクがこの時間にここにいることに疑問を覚えた。

 彼女はいつも生徒会室にいるので、この時間ここで会うことはないのだが…、

「ん? 今日は生徒会室には行かないんですか?」

「ううん。もう行って仕事してきたわよ。今日はね、転入生が来るから挨拶がてらに教員室に。だから朝早く来て仕事してたのよ」

 相変わらず真面目だなぁ、と思いつつ、不意に先ほど言ったワードが気にかかった。

 転入生?

「転入生って…?」

「ええ。海外からの留学生らしいわよ。イギリスだったかな?」

「へー♪ 海外ですかー♪」

 勘が良い方なら、ここですべてを察せるだろうが、そこは鈍感執事。

 察することはできず。

 この後起こる展開など全く予期することなく、ハヤテは教室へ向かっていくのだった。










「はーい♪ってことで、転入生を紹介しちゃいまーす!!!」

 担任の麗しき世界史教師(自称)桂雪路がそう言うと全員がおおおおおー!!! と叫ぶ。

 転入生、なんていうのはやはりどこの学校でも盛り上がるものなのだ。

 しかも海外から、となればみんな目新しさも倍増である。

「…ったく元気な奴らだ…」

「あはは…」

 そんな中で冷めた主を見て、ハヤテは半ば苦笑。

 元気って、お嬢様若いでしょう! と心の中でツっこみつつもお嬢様には届かない(本日二回目)。

「さー! 転入生入ってきて!!」

 雪路の声に合わせて、ガラガラと教室の扉が開く。

 扉の向こうに立っていたのは1人の少女だ。

 銀色の髪に青い瞳のかわいらしい―わぁ、なんだかすごく見覚えがある外見の………、

「………、」

「初めまして。転入してきましたアイ・グラハムと申します」

『でえええええええええー!?』

 思わずハヤテの表情が崩れる。

 見覚えがあるどころか、自分の部屋で暮らしている少女だ。

 ってか、ついさっきまで自分の部屋のベッドですやすや寝てたはずの少女だ。

「? どうしたんだ? ハヤテ?」

「な、何でもアリマセンヨ?」

 あまりに表情が崩れていたせいか、ナギが心配そうに尋ねてきた。

 全く誤魔化せる雰囲気ではなかったが、今はそれどころではなかった。

 ハヤテからすれば何でここに!? という感想に限る。

「アイちゃんはねー! あのイギリスの名家グラハム家の娘さんでね! 社会勉強のために今だけ留学中なんだって!」

『何その設定!?』

 名家どころか、実は神様なんてみんな思いも寄らないのだろう。

 男子は「うぉー…美少女ー…」とものすごく盛り上がっている。

 まぁ、わかる。ただでさえ外人を見ると綺麗だな、と思うのに、アイはさらにそれを凌駕する美しさを可愛さを兼ね備えている。

 それに対し女子は、「ったく男子は…」とつぶやきつつも、やはり美人だと思っていた。

 それもわかる。アイは女子から見ても普通に綺麗な顔、と称せる。

 その辺の人の美の定義を簡単に覆せるほどの可愛さなのだ。

「じゃ、アイちゃん。自己紹介」

「もうしたけど」

「えっと、年とか…趣味とか…」

 「年?」とアイは、しばらく黙る。

 彼女は頭の中で何歳だっけ、と計算してから―…、

「年は、1548さ…「うわああああ!!!」…?」

 ハヤテが大声を出すとクラスメート冷たい視線が向かってくる。

 アイもアイで怪訝そうな表情だったが、―どこの世界に1548歳の転入生がいるのか!

 アイさんもそれくらい気付いて! と思いつつ、

「どしたの? 綾崎くん?」

「あ、えと…。や、やだなー! 桂先生! 年齢は同級生なんだから16か17じゃないですか! 聞かなくてもわかりますよ!!」

「あー…それもそうね」

 内心でホッとするハヤテ。

 まぁ、それで誤魔化せたと思ってるのが凄いが、それで丸め込まれる雪路も雪路だ。

 アイは「あー…人間だとそうよね…」と呟いていたが、みんなには聞こえない。

「えっとじゃあ趣味は?」

「趣味? 甘いものを食べることかしら」

「マジで!? じゃあ、今度一緒に食事いこ!? アイちゃんはスイーツ、私は酒! アイちゃんのおごりで☆」

「何がどう『じゃあ』なのよ?」

 全くだ、と一同が同意する中、「まぁ雪路だしな…」とみんな呟く。

 なんかそれで済むのがこの教師の良いところのような悪いところのような…複雑だ。

 すると、ガラガラ、と教室の扉が開く音がした。

 皆アイの方にとられていた視線が再び教室の扉へ向き、

「あー、すいません、遅刻しました」

「遅いわよ! 新橋くん!」

「…あー、まさか遅刻ごときで酔いどれ教師に怒られるとはなぁ…」

 ブツブツ言いながら入ってきたのはハヤテ達のクラスメート。

 黒髪に藍色の瞳。身長も高めで、体格も良く、世間一般でイケメン、と称される少年。

 新橋ユウマ。

 校内でもかなりモテモテの彼は、一応変人だらけの白皇内では常識人(しかし、一般人ではない)であり、ハヤテの数少ない男友達でもあるが、それはまた後程。

「酔いどれ言うなっ! けど、珍しいわねぇ。いつもサボリの新橋くんが遅刻でもくるなんて」

「いや? なんとなく来ただけですよ? そこで睨んでる俺の妹も怖いですし」

 と、ユウマが発言すると教室の隅の方の席に座っている茶髪の少女が反応した。

 彼女は特に発言はしなかったが、「バカ兄貴…」とだけ呟いてため息をついていた。

 と、そこで初めてユウマはアイの方を見て、

「……ん? 転入生?」

「そうそう! アイ・グラハム! 留学生よ!」

「……グラハム?」

 ユウマは少し眉をひそめて「…あの家って一人息子しかいなかったと思うんだけどな…」と首をひねりつつ、ようやく席についた。

「おほんっ」雪路はユウマの着席を確認すると、「まあいろいろと不慣れだと思うからみんないろいろ教えてあげてね!」

 はーい!! とクラスメートから元気のいい返事が返ってきた。

 ちなみにこのHRがハヤテの体力を結構削ったのは言うまでもない。










 1時間目の授業が始まった。

 この日の1時間目は数学の授業だ。

「で、ここはこうだからこうなって…。」

 先生が説明している間もハヤテは、アイの方を見る。

 彼女はシャーペンを持つだけ持ってはいるが、やる気がないのか全く教科書を出してはいない。

 いろいろ大変なことになりそうだなー…と思っていると、

「アイ・グラハム! 教科書も出さないとはどういうことだ!!!」

「え?」

 先生の声が聞こえると全員がアイの方を見る。

 アイは、腕を組みながら机には何も乗っていない状況で先生をジロリと睨みつけ、

「うるさいわね。アンタさっきから教科書に書いてあることしか言ってないじゃない。だったら教科書なんて出す必要ないでしょ。大体教科書の中身は私は全て暗記してるわ」

「なっ!?」

 いっきに教室の空気がザワついた。

 一部頭の良い方々は確かに、という空気を出しているが、それがますますこの教師に火をつけた。

「じ、じゃあこのこの問題をといてみろ!!!」

 先生はバンッ!! と黒板を叩く。

 黒板に書かれているのはかなりの難問だ。

 大丈夫かな、アイ…とハヤテが心配していると、

「V(α1)の基は exp(t)で次元は1。V(α2)の基は exp(-t)とt・exp(-t)で次元は2」

 …え? と一同がぽかーんとする中、アイは一瞬で答えをはじき出した。

 流石に合ってないだろう、とみんな思っていたが、

「……なっ」

「言った通りよ。合ってるでしょ?」

 アイがそういうと先生は悔しそうにむぅ…と頷いた。

 一方でクラスは、物凄くざわついていたがあまりアイは気にしていないようだ。

 …ちなみにアイは、2時間目でも3時間目でも同じことをやり、あっという間に先生に注意人物にされていき、またこの行為は『教師潰し』としていきなり名物になってしまったことに彼女は気付いていない。










「で、何してんですか!?」

 昼休み。

 ハヤテはナギを誤魔化し、男子たちの怖い視線をくぐりぬけてアイを裏庭につれてきていた。

 ハヤテの切羽詰まった問いかけにも関わらず、アイは何気ない表情でサラサラの髪を手でとかしながら、

「何してる…って…。言ったでしょ? アンタの近くにいないといけないって。物覚え悪いわね。」

「いや、そうじゃなくて…」

 はぁ、とため息をつくハヤテ。

 今後の学校生活がどうなるやら…想像もつかない。

「…ねぇ。私が挨拶してる時に入ってきた男…」

「ん? ユウマ?」

「………、」アイは少し黙って、「……いや。気のせいかも。何でもないわ」

 ん? とハヤテが首を傾げる中でアイは目を細める。

『あの男から得体のしれない何かを感じ取れた。それが何かは分からないけど』ううむ、とアイは考え込み、『それに、白皇に入るということで戸籍偽装してグラハム家という家の娘としてきたのに、あの男には即座に嘘がバレてたっぽいし…』

 海外の家なんかそんなに詳しい奴はいないと思っていたが、……曲者だわとかなんとか呟いているアイをを見ながらハヤテはきょとんとする。

 まぁ、考え事してるっぽいから放っておいた方がいいのだろうか?

 と、アイは急に「そうそう」と言い、

「この学校に、神がいるわよ」

「………、」ハヤテはしばらく黙ってから「え?」

「いや、そのままの意味よ。…多分アイツね」

「ええ!? なんですかその唐突な展開!? ってかアイツって昨日の…?」

あー違う違う、とアイは否定して、「…そんな有害な奴じゃないわ」と付け足した。

アイにはわかる。この気配は昨日の電光神ではなく、―別のある神だ。

「安心して。アイツは卑怯な手で勝とうとはしないわ。なんせ真っ直ぐで暑苦しい年下の熱血バカだから」

「いやいや、誰が熱血バカだよ!?」

 次の瞬間聞こえてきた声。

 発信源はハヤテの横。いつの間に!? といった感じにハヤテが横を見るとある少年がいた。

 外見から判断するに、13歳くらいの少年。

 紅色の髪に、帽子をかぶっていてマントを羽織り眼帯をつけている。

 …なんというかファッションにはツっこんではいけないのだろうか。

 っていうか、神様ってみんな神出鬼没なのか? とか色々ハヤテが疑問を抱いていると、

「………、」アイは少年をジト目で見ながら、「…相変わらずアンタの服装センス最悪ね。」

「ちょ!? いきなり会ってそれはねぇだろ! いくらクイーンでも人様の服のセンスにケチつける権利はないはずだぜ!」

 クイーン? とハヤテが首を傾げるのをアイは無視して、

「で? アンタのパートナーは?」

 と、問う。

 どうやら彼女は説明したくないことははっきりスルーするようだ。

 今後、彼女にスルーされたらそれは説明したくないことと判断しておこう。

「ああ…」少年はそうだった、と思い出すように「そこに」

 と言って、後方を指した。

 ザザァ、と緑が風に揺られるのと同時に黒のドレスが見えて、

 カツン、とヒールの音がした。

「ちょっと! 私がヒールだって忘れてません!?」

「…え?」

 どことなく聞き覚えのある声だった。

 そして見覚えのある外見だった。

 それは、金髪縦ロールの少女だった。

 抜群のプロポーションに、黒のドレスが良く似合っている少女だった。

 そして、

 ―かつて、ハヤテが傷つけてしまった少女だった。

「………、アー…たん…?」

 名前を呼ぶと。

 彼女は。

 天王州アテネは、こちらを見る。

「…ハヤテ?」

 きょとん、と彼女の凛々しい赤色の瞳がハヤテを見つめる。

 しばらく、その場に静寂が訪れた。

 ザァ、と風に揺れる緑だけが彼らの再会を物語っていた。


                                         第三話 END


てなわけで、李薇作品ではおなじみ新橋ユウマ登場。

義妹もちらりと出てましたが彼女の本格的な登場はもう少し後…かな?

アイがすでにユウマをロックオンしてますがね、まぁユウマも色々特殊な人間なので…その辺は今後少しずつ解明していくとして。

新橋ユウマ、重要なキャラなので宜しくお願いします☆


そして、名前出なかったけど、熱血漢の神様も出ましたね! 彼もよろしく☆

さぁ、連続更新いくぜーっ☆