Re: 君と共に! 第一章 ( No.13 )
日時: 2013/02/03 21:50
名前: 李薇

どもーっ☆ お久しぶりの李薇ですっ☆

なんか感想たくさんきてて…泣いたっ! ありがとですっ!

久々更新、張り切っていきますよーっ!

そういえば、前回言い忘れた諸注意ですが時系列的にはGW過ぎてますが、アテネとは再会してないし、家は三千院家のまま。遺産もそのまま…となっています。

なんせこの話作ったときはムラサキノヤカタまで話がいってなかったですので…その辺はご了承してください

では、レッツゴー☆

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第二話 『波乱の幕開け』


 喫茶店どんぐりの近くの木の上。

 銀髪をなびかせつつ、小柄な少女アイは太い木の上に座り、

「…これはアンタの領分よ」

 ボソボソと呟いていた。

 一見、独り言のようにも見えるが違う。―会話だ。

 テレパシー。現在アイは天界のある者と連絡をとっていた。

『えー、面倒くさいー』

「え? 何? 死にたいですって?」

『ちょっ、その冷めた声で言われると怖いぞ!?』

 どんな聞き間違いだよ!? とツっこんでくる相手に対して、アイはげっそりとした表情でその声と対話と続ける。

 中性的なこの声の主は―先ほど言った上位の神である。

 が、まるで貫録がない。創造神とか本当嘘のような気がしてならない。

 アイは、はぁーっとため息をついて、

「あのね、今回奴がやったのはほとんど反則でしょ。そりゃ、私的には綾崎ハヤテと契約を結べてラッキーよ? でも喫茶店めちゃくちゃだわアイツの主がケガするわ…これは放っておけないでしょ」

『出会ったばかりの赤の他人を心配か。お前は優しいなぁ』

「……、ミカとか程じゃないわ」

 ある少女の名前を出しつつ、

「そんなのはどうでも良いの。とにかく、アイツの主達のケガの修復、記憶消去、喫茶店の改善。全て手配しといて。契約をする前にいきなり襲撃なんて反則に近いんだから、アンタの責任よ。よろしく」

 最後のよろしく、に重圧をかけて言ってからアイはテレパシーを切った。

 これだけ言えば喫茶店を完全に元に戻し、ナギ達のケガと記憶は綺麗に元通り。

 これできっと問題はないはずだ。

 ふと空を見上げると、額に十字の傷がある―1人の少年の顔をふと思い出した。

「……イクサ…」

 アイはそう呟いてから、

「…何でよりによってアンタの弟をパートナーにされたのかな…。イクサ…」

 今回地上に来てから一度も見ていない、柔らかく、でも儚くさみしげな笑みを彼女は空へ向かって浮かべるのだった…。










 不思議なこともあるものだなぁ、とハヤテは思った。

 アイの指示で10分後に喫茶店に入るよう言われて入ってみると、

「おお、ハヤテ。お帰り。1時間もかかるなんて…どうしたんだ?」

 ケロッとしたナギにそう問われた。

 先程までケガをして瓦礫の中で倒れていたとは全く思えない。

 喫茶店の内装も元通りだしナギの正面の席に座る歩も元気ににこにこ笑っていた。

「ああ…えと、隣町まで…」

 きょとんとする主に対して、ハヤテはたどたどしくそう答えた。

 それ以外に返答のしようもなかったし、仕方あるまい。

 なんにせよ、無事だったのは良かったが、ハヤテからすれば『?』の連続である。

「にしてもハヤテくん、なんか疲れ切った顔してるね?」

 歩の鋭い指摘にギクリ、としつつも、

「はは…そんなことないですよ。あ、僕これキッチンに置いてきますね」

「あ、うん」

 ハヤテは、疲れ切った足取りで歩の横を抜けてキッチンへと向かった。

 まぁいきなり神が現れて戦わされれば疲れもするし、しかもこれは説明しても信じてはもらえないだろう。

 まぁ、状況が状況だしハヤテも誰かに言う気は一切ないが。

『神…か』

 いっきにいろいろと起こったせいで頭の中がゴチャゴチャしていた。

 神の登場。パートナー。アイという少女。紫電の男。なし崩し的に参加させられたこと。

『なんやかんやで僕ってやっぱり不幸なのかな…』

 思わずはぁっとため息をついた。

 しかし、一度やると決めた以上はやるしかない。

 アイのセリフだと、アイが強くてそこを潰す為にパートナーが狙われやすいとのことだったし、そこはもう仕方ない。

 だったら、潰されないように強くなり続けるまでだ。

 そして、ぐっ…とこぶしをつくって決意をした瞬間。

「はわっ! ハヤテくん! 上!!」

 少し慌てた歩の声。

「上?」と言って、見上げてみると何故か視界が真っ白になった。

 そして真っ白になった視界のままふと思い出す。


 ああ、そういえばこの上の棚の扉開きやすかったな…ということと、

 しかもこの棚って…小麦粉大量に入ってるんだよなぁ…ということ。


 バサーッ!! という音と共に頭上から襲ってくる小麦粉。

 そこから逃れる術もなく、しばらくしてからそこには全身真っ白になった執事がいたという。










 ―三千院家

 ナギの住んでいるこの家で、使用人の1人が掃除をしていた。

 茶髪のその女性の名前はマリア。

 17歳という年齢からは考えられないくらい大人っぽい彼女は(老けてるんじゃない! 大人っぽいの!)、1人箒を持って廊下を歩いていた。

 すると、ピンポーン…とインターホンがる音が耳に届いた。

 マリアはふと顔をあげて、

「あ、2人ともバイトから帰ってきたようですわね」

 すたすた、と玄関へ向かって歩いていって大きな扉を開けて、そして少し目を丸くした。

「………、」

 何故かそこには全身真っ白のハヤテと苦笑しているナギがいたのだ。

 ちなみにマリアは有能なメイドである。そんなわけで何かを察して、

「………まあ、毎度の不幸でこうなったんでしょうけど…」

「おお」ナギはぽんっ、と手を打つと、「流石はマリア。察しがいいな」

「とりあえず、シャワー浴びます?それまで、仕事は私がやっておくので」

「スミマセン…」

 何か申し訳ない気持ちと恥ずかしい気持ちでいっぱいなのだろう。なんとも情けない声で謝るハヤテ。

 それから、シャワーは向こうだったな、と呟きながらフラフラと向かって歩いていった。

 それを見ながらマリアは

「…どうやったらあんなに毎度毎度不幸になるんでしょうね〜…」

 何かに取りつかれてるのかしら? と首を傾げるのだった。










「はあ…」

 不幸な人間というのは張り切れば張り切るほど不幸になるものだ。

 なんか昔誰かがそんなことを言っていたなと思い出しつつハヤテはため息をつく。

 まさか、決意した瞬間上から小麦粉が降ってくるとは思っていなかった。

「とりあえず仕事をマリアさんにずっと任せておくわけにはいかないし…早く行かないと」

 シャワーを浴び終えたハヤテは、手早く執事服に着替えた。

 窓の外を見ると夕焼けが見える。もう夕方だ。

 早く夕食の準備をしなくてはならない。

 そう思ってドアノブに手をかけたところで、

「………、アンタも本当ごくろうね」

「………、」

 やれやれ、という声。

 不意に横から聞こえてきた、聞き覚えのある声にそっとそちらを見てみると、そこにはいついたのか、アイがいた。

 ハヤテはズサァッ! と一歩後ずさると、

「ど、どっから湧いたんですか!? そしていつの間に!?」

「どっからって…扉からよ。安心して。服着てから入ってきたから別に覗いたりしてないから。別に見たくもないし」

「いや、それはともかく……っていうか完全に不法侵入ですけど…」

「そういう細かいことは気にしない方がいいわ」

 細かいのか!? と思いつつハヤテはツっこまないでおいた。

 なんかツっこんでもまともな返答が返ってくることは期待できない気がする。

 ちなみに、ハヤテは知る由もないが、それは正しい判断であった。

「で、僕に何か用ですか?」

「ああ、さっきパーティーのこときちんと説明できなかったからちゃんとしようと思って」

 はぁ…? と曖昧な返事をすると、アイがあからさまにイラッとした顔をした。

 ああ、多分この少女は曖昧な答えとか曖昧な相槌とかが嫌なのだろう。

 今後気をつけなくては、と肝に銘じたところで、

「で、説明の続きね」

 面倒くさそうなアイの説明が再び始まった。

 ちなみにハヤテは知る由もないが、アイはこの説明をパーティーが始まってから何百回とパートナーに説明してきているから面倒くさいと感じているのであるがそれは良しとしよう。

「先ほども言った通り、パーティーの参加者は全部で10組。さっき現れたのは電光を司る神ね」

「電光…」

 まぁ、バンバン雷使ってたしなぁ…とハヤテは金髪長身の男を思い出す。

「そういや、さっきの神はパートナーいなかったね?」

「これからコンタクトとるんでしょうね。多分。…で、パーティーは基本的に自由。どこを責めようが最後まで身を潜めて決勝に出てこようが自由。―…時には一般人を巻き込む奴もいるわ」

 最後の言葉にハヤテはぞっ、とした。

 一般人を巻き込む。神達の争いに。

 そんなの、巻き込まれた一般人が無事でいられるはずがない。

「……ん?」

 と、そこで1つ気になることがあった。

 神々の争い。暇つぶし。にも関わらず、

「…待ってください。何でそこまで神は本気でこのパーティーに…?」

「良いとこに気が付いたわね。パーティーは何度か行われてるんだけど、毎回勝者には商品が行われる」

「…商品? お金とか高価なものとか?」

「そういうのも可能だけど…そうね。商品―何でも願いを叶えてくれること」

 なんでも? とハヤテは首をひねったが、おかしいことはない。

 主催者はこの世界の創造神。ならば、願いを叶えるくらい造作ないことなのだろう。

「叶える願いは神とパートナーで相談して決めるわ。時には思い通りにならない人間を神が殺したり、はたまた人間が神に刃をつきつけることもあったわ」

「………、」

「…ま、そんな理由もなく刃を突き付けられることもあるけど」

 付け足したように言った言葉は小さくてハヤテの耳には届かなかった。

 けど、その時アイが物凄く悲しげな表情をしていたのは、ハヤテにもわかった。

 アイはすぐにまたいつもの真顔に戻ってから、

「…それで、アンタに頼みがある。…その商品、なんだけど…」

 彼女にしてはたどたどしく話し始めた。

 ハヤテがこの少女に会ってから、初めてだった。こんなに不安げなアイは。

 だからハヤテはなるべく柔和な笑みを浮かべて「なんですか?」と問う。

「……、」アイは少し黙ってから、「もし、私たちが勝ち抜くことが出来たら『パーティーを止める』…という願いを叶えたいの」

 え? と思わずハヤテはきょとんとしてしまった。

 申し訳なさそうに言うから、もっと別の願いかと思った。

 パーティーを止める? 意外な彼女の解答の意図が分からずずっとぽかんとしてると、

「―綾崎イクサ」

「!!」

 急に出てきた兄の名前に、今度はハヤテの表情が驚愕に変わった。

 綾崎イクサ。それはハヤテが尊敬するただ一人の兄の名だ。

 そういえば、先ほどの電光神も兄がどう、とか言っていたが………、

「10年前に行われたパーティーでの、私の…パートナーの名前よ」

「…兄さんが…パートナー…? そ、それで兄さんはどこに…!? ずっと会ってなくて、それでその…っ」

 あまりに興奮したあまり、アイの肩を掴んでしまった。

 彼女自身は肩を掴まれた方は気にしていなかったようだが、イクサの行方を口に出された瞬間あからさまに表情を曇らせた。

 それは普段鈍感なハヤテにもはっきりわかるくらいの曇らせ方。

 だから、急かさないで答えを待っていると、彼女はゆっくりと重い口を開いて告げた。

「…イクサは……前回のパーティーで…死んだわ」

「………え?」

 室内にも関わらず、ハヤテの体を冷たい風が突き抜けていく感覚がした。

 イクサが死んだ? 自分にとって、憧れで強い…あの兄が?

 ぐるぐる回る感情を制御できずに混乱したハヤテを見ながらアイは相変わらず表情が曇ったままだった。

「……私の目の前で…死んだから間違いないわ。…知らなかったのね…」

 知らなかった。

 あの両親も特に何も言っていなかったし…。

 いや、それ以前に―絶対、兄の事だから…どこかで人助けでもしながら生きていると思っていた。

 なのに、

「……続き、話して良い?」

「………はい」

「………、それで…ね。私はパーティーが良い結果をうまないと思った」

 神々の争い。ただの暇つぶしで始まった残酷な戦い。

多くの神が悲劇を見て、パートナー同士で醜い争いをして、商品を取り合って、

 ―そんな残酷なこと、嫌だった。

 それ以前に、関係ない一般人が勝手に巻き込まれて、これ以上死ぬなんてことは…絶対に許すわけにはいかなかった。

「もう、これ以上イクサのような奴を出すのは…嫌なのよ」

「………、」

「だから協力してほしい」

 真っ直ぐと。

 綺麗な青い瞳でハヤテを見つめながら、

 心のこもった綺麗な声で、アイはそう告げた。

「…勝手に巻き込んで悪かったと思ってるわ。…でも、これ以上この戦いを続けたくないの。アンタの事は、絶対守るから…! だから、ここは何も言わずに協力して!」

「………、」

 なんだろう。

 話を聞いてると、神はロクでもない感じがするのに、

 ―この少女は本当に、本心からそのように願っていることが分かる。

「……アイさんは優しいんですね」

「………、」アイはしばらく黙ってから、「…別に。で、協力してくれるの?」

「………、」ハヤテはにこりと笑い、「もちろんです♪ 僕に出来ることなら手伝いますよ♪」

 その返事を聞いて、初めてアイの表情に安堵がうまれた。

 彼女は少し穏やかに笑って「ありがと」とつぶやいた。

 たぶん、ハヤテが初めて見た―アイの笑顔だった。

「あ、でも先に言っとくけど…なれ合うつもりはないからね。…あくまで利害が一致した関係。そう割り切って頂戴」

「え?」

 それはなんか、意外な言葉だった。

 さっきまであんなに強気に守る、なんて言っていたのに。

 まるで、自分に言い聞かせているかのようなその言葉だった気もしたが…。

「こほんっ。で、さらに言うと神とパートナーは基本共同体。神にとってパートナーは力の泉。補給源。近くにいることで最大限の力を発揮できるの」

 それ故のパートナーだからね、とアイは付け加え、

「だから私もここに住むわ」

 ………、HA?

 そこで思わず、ハヤテの表情が固まった。

 というか、このときは本当に周りの時が全て止まった気がした。

「えーっと…?」

「ここ、っていうか…アンタの部屋? に住むから」

「ちょ、ちょちょっちょっと待ってください?」

「何よ? 今までもそうやってたんだから良いでしょ?」

 そうなの!? とハヤテは驚愕の色を表す。

 もしや、イクサがなかなかハヤテの前に姿を現さなくなったのってそれが原因なんじゃ…? とふと思ってしまうハヤテ。

 それにも関わらず、少女は全く気にしていないようである。

「言っとくけど、アンタに拒否権はないのよ? ほかの部屋じゃアンタの主とかに見つかるかもだし…これは必然よ?」

「………はは、わかりました…。了解です…」

 先ほどからすべてがなし崩しな気がするので、もう気にしない。

 でも、10年前の兄の苦労が少し分かったような感覚を持ちつつ、ハヤテは部屋にある種の爆弾少女を残して仕事に向かうのだった…。










 同時刻。

 三千院家と比べても全く劣らないくらいの豪邸にて。

 豪邸の中のある一室に、ある少年がいた。

 外見から判断すると、年は13歳くらいに見えた。

 紅色の髪のショートヘアーで左目に眼帯、肩にはマント、頭に黒い帽子…という格好だった。

 …パット見が少し怪しく見えなくもないが、13歳程に見える見た目だからこそ許される格好だろう。

「………なあ、コレ何?」

 少年は、ピラピラと一枚の髪をちらつかせつつ、奥の部屋にいる少女に向かって話しかける。

 しばらくしてから、少女の大人びた声で返答が返ってきた。

「白皇への転入の書類ですわ。明日、白皇に転入生がくるんですって」

 少女の答えを聞くと少年は「へー…」と言ってから、もう一度その書類を見る。

 その書類には銀色に青い瞳、と見知った少女の写真が貼ってあった。

「ついにきたか…。クイーンのアイ。アイツとはまだ当たりたくなかったんだけどなー…」

 どこか楽観的な口調で、少年は呟く。

 “自分と同じ神”である少女の写真を見ながら、

「…にしてもアイツ…。もうあの事で深く思いつめてないといいけど…」

 そのセリフにだけ、楽観的な色はなく、真剣な声が灯っていた。

 本当に心配するような声に、奥の部屋にいる少女は少し首を傾げていたが、

「…なんですの? もしかして神ですの?」

「勘鋭いなぁ。流石“アテネ”」

「いえ、それほどでも」

 奥の部屋にいる少女。

 それは、白い肌に金髪盾ロールの美しい外見。抜群のプロポーション。

 ―天皇州アテネだった。


                                         第二話 END


前回の補足などなど。

オリジナル部分もできましたねー

ひなゆめから見てる人は誰が誰だか大体わかるはず…!

まぁ、見てない人にも分かるように書いていますのでよろしくです☆

では次は割とすぐ更新できると思うので…またです!