Re: 漆黒の原野 白銀の騎士編 ( No.6 )
日時: 2013/03/04 17:38
名前: 絶影

どうも、絶影です。
とりあえず前のところまで追いつき、追い越したいので
一気に溜め込んでいた分を放出します(というか以前連載したのが大部分ですが…

それではー
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 第二話 漆黒竜


三度の閃光とソニックブーム音を経て、窓の外に草原のようなものが目に入った。
デロリアンはしばらく動いていたが、
やがてプスプスと音を立てて止まってしまった。

「ここはどこなんでしょう?」

「八年前の東京のはず……だけど?」

マリアの疑問に志織は自信無さそうに答える。
しかし、辺りには車はおろか道さえもない。
「何もない」があるだけだ。
どこぞのハムスターの田舎と同じである。

「とりあえず元の時代に戻ったほうがいいんじゃない?」

ヒナギクが提案した。
タイムトラベルをしたという実感はないが、
今居るここがとても現代には思えなかったので、少しは認めたようだ。

志織は頷き、車に乗り込んだ。
が、すぐに首を振って出てきた。
訳を聞くと、どうやらロケットブースターを使った際に部品が壊れてしまったらしい。
修理をしなければならないが道具がない、と志織はハヤテ達に告げた。



どうしようか、と一同が悩み始めた時、野太く大きな声が漆黒の原野に響き渡った。
それから地から湧き出したように複数の男が現れた。

「……?」

訳も分からず戸惑うハヤテ達はぼんやりとした目で彼らの服装を眺めた。
服装は薄汚れていてみずぼらしく、ゲームで見かける盗賊のような格好をしている。

男達はこちらの姿を認めると近寄ってきた。
目が血走っている。

「な、何ですかあなた達は……?」

男の一人がナギを掴もうとしたので思わずハヤテはその男を蹴り飛ばした。

男は痛そうに顔を歪める。
仲間の一人がハヤテを束の間凝視し、大きく口を開けて叫んだ。

「殺せ!」

数人ぐらいならば、とは思ったが、その声に呼応するかのように声が上がった。
どうやら近くに仲間がいるようだ。
ハヤテは咄嗟にナギを抱え、他の人々にも逃げるよう声をかけた。
三人はハヤテの言葉に従って走り出した。

横から複数の足音が聞こえた。
現れたのは後ろの集団と同じような服装をしている男達だった。

「見つけたぞ!」

ハヤテ達は一心不乱に逃げ続けた。
後ろからは捕まえろだとか殺せだとか、物騒な言葉が聞こえる。

どうすればいいのだろうか。
ハヤテが見ているのは自分の活路ではなかった。
ナギやマリア、ヒナギクや志織の活路である。
彼女達を救うためならば自分の命だって犠牲にするつもりでいた。

「!!」

思わず舌打ちした。
前が袋小路だったのだ。
ナギの、そして他の人の不安そうな顔が見える。

どうすればいいのだろうか。再び考えた。
このままでは全員殺されてしまうだろう。
殺されないとしても、もっと酷い目に遭うに違いない。

「ハヤテ君」

冷静さを欠いているハヤテの耳に、ヒナギクの落ち着いた声が届いた。
後ろを振り返ると木刀正宗を差し出された。
自身は白桜を持っている。

「何もしないで死ぬよりはましでしょ?」

そう言うヒナギクの声は微かに震えていた。
気丈に振舞っているこそいるが、彼女も恐いはずだ。
ハヤテはヒナギクに向かって微笑んだ。

「全員倒してやりましょう」

「ええ」

ヒナギクも少し笑った。
当然無理だということは分かっている。
後ろを見ると、敵は百は越えている。
とても二人で倒せる数ではない。
しかし戦わなくては生きる可能性はゼロだ。

ハヤテとヒナギクはそれぞれ剣を構えた。



「奴らか?」

「おそらく」

黒影は小さな丘の上に立っていた。
彼は所領地の村が賊に襲われたため、急遽従えていた兵達を連れて、
村にいた賊を百人ほど斬り、さらに逃げた賊が通ったと思われる道を辿って来たのである。
賊は多くて二百程度だろう。
皆殺しにする、と決めていた。

彼が今率いているのは半分の百だが、二百の賊を殲滅させる自信が彼にはあった。

「動いているな」

「はい」

その賊の動きがおかしい。
慌ただしく動いている感じなのだ。
好都合であったが、何故動いているのか気になった。

「もしかしたら誰かが襲われているのかも知れません」

配下の一人が言った。
黒影は鼻で笑う。

「それではそいつに感謝しなきゃな」

守りを固めている相手を攻撃するのには犠牲が大きくなるが、
今のように全く守りを気にしていない状態ならばこちらの犠牲を少なく倒すことが出来るのだ。

黒影は剣を振り上げ、振り下ろした。
漆黒に染まる原野を一気に駆け抜ける。
突然の攻撃に、賊が動揺しているのがはっきり見えた。


ハヤテは何十人という盗賊と向き合っていた。
幸い、道は細くなっていたため一度に斬りかかって来る敵は三人が限度だが、
次々に襲ってくるため休む暇がなく、息が苦しくなってきている。
ヒナギクも同じようなものだろう。
さらに、たとえ五十人を倒したとしても、次の五十人の相手をしている間に
気絶していた五十人が息を吹き返してしまう。
つまり無限に相手が襲ってくるのと同じなのだ。
だが、諦めるわけにはいかなかった。命がある限り。
ハヤテは大声を上げて、斬りかかって来る敵二人を吹き飛ばした。
しばらくの間、ハヤテの気に呑まれたように敵が攻撃してくるのを中断した。
が、再び斬りかかって来る。
呼吸は既に限界だった。眼も眩み始めてくる。
これまでか。諦めかけたその時。
地響きが聞こえ、盗賊に衝撃が走った。
ハヤテは地響きが聞こえたほうに目を向けた。
黒い塊が土煙を上げ、物凄い速度でこちらに向かってきていた。

「漆黒竜だ!逃げろ!」

盗賊の一人が現れた黒の塊を見て、叫んでいる。
彼らは散らばって逃げようとしたが、散らばりきる前に黒い塊が盗賊の群れを打ち砕いた。
そこでハヤテは黒い塊は人が乗っている馬群だということに気がついた。
先頭の、一際大きな馬に乗っている男。
彼に触れた者は何か触れてはいけない物に触れたかのように飛ぶ。
触れていない者も男の後ろにいた者に斬られている。
はっと思い立ち、ハヤテはナギに駆け寄り、手で目を覆い隠した。

「何なのだ、いったい!?」

ナギが叫んでいたがハヤテは気にしなかった。
こんな殺戮にも近い行為をナギに見せるわけにはいかない。
他の人も目の前の戦闘から目を背けているのが見えた。

十五分程して物音がしなくなった。
どうやら終わったようだ。
ハヤテが顔を上げてみるとさっき先頭にいた男が馬から飛び下り、近寄ってきた。

「無事か?」

大丈夫です、と答えようとしたがヒナギクに止められた。
彼女は警戒して白桜を構えなおしている。
男は苦笑した。

「一応助けたはず、なんだけどな」

「あなたは……人殺しよ」

ヒナギクは低い声で答えた。
確かにその通りであった。
彼は盗賊とはいえ、人を何のためらいも無く殺している。
それだけで警戒するには十分だった。
ハヤテも正宗を構え直す。

男は心外だ、という態度をとっている。

「私が奴らを倒していなければ死んでいたのはお前達だぞ?」

「獲物の横取りかもしれないじゃない」

ヒナギクからすればさっきの男達も今自分達の前に立っているこの男も同じに見えるようだ。

「だったら……私と戦うのか?」

男はにやりと笑い、ヒナギクを見据えた。
少し面白がっているようにも見える。
腕に自信があるのだろう。
確かにさっきの手並みを見る限り、ただ者ではないことは確かだ。

「ヒナギクさ――「ハヤテ君は黙ってて」

ハヤテの言葉をヒナギクは遮り、それから笑いかけた。

「私、間違ってるかな?」

「いえ、ヒナギクさんが戦うのなら僕も加勢しますよ」

ハヤテとヒナギクはそれぞれ剣を構えた。
男は再びにやりと笑う。
事態に気付き、彼の手下だと思われる人たちが出てきたが、
男はそれを手で制して前に出てきた。

「この漆黒竜を知らんのか。面白い奴らだな」

「漆黒竜?」

そういえばさっきの賊徒も同じようなことを言っていたな、と束の間考えたが
すぐにそんなことは考えられなくなった。
背筋が凍るような殺気を感じる。
男はただ立っているだけだった。
だが、それだけでハヤテは自分の体が動けなくなるのを感じていた。

ヒナギクも同じらしい。
なんとか白桜を構えているものの動かすことは出来ていない。
尋常ではないほど、強い。二人で戦っても勝率はほとんど無い、と分かる。


弱い二人ではなかった。
むしろ手練れと言っていいほどの腕だった。
黒影は武器を構えて向かい合っただけで、相手の腕はほぼ読める。
この二人はさっきの賊徒などとは比べ物にならぬほどの闘気を放っていた。
だが、それだけだった。彼らの気に殺気は感じられない。
何故こんな奴らがこんなところに。
疑問に思ったが、今はそれどころではない。
油断すればこちらがやられかねない。

二人の気が体を打ち、それに呼応するかのように黒影の体からも気が引き出される。
鍛えれば壮馬や絢奈に匹敵するか、それ以上の遣い手になるかもしれない。
今の状態でも二人ががりでこられると『剣で』勝つのは難しい。
無理に戦えば怪我をすることにもさせることにもなりかねない。

配下の一人に短く、槍と言った。
配下は驚いたような表情をしたが、黙って槍を差し出す。
鬼天槍。黒影の専用の武器で重さは約十五キロの槍である。
穂先は鎧の上からでも容易く貫通させることができ、
いくら突いたり斬ったりしても斬れ味が鈍ることはない。
静岡で一番いい腕だと言われる鍛冶師に作らせたのだ。

最近では剣を使うことが多いが、長く親しんできた武器は槍である。
黒影が本格的に武術を始めたのは十歳の時であり、
子供が大人と対等に戦うためには、武器のある程度の長さが必要だったからだ。
同じ長さの武器だと、リーチの差で不利になってしまうのだ。


黒影は鬼天槍を頭上に掲げるようにして構えた。
彼らに与える威圧はさらに強くなったはずだ。
それでも彼らは耐え続けている。大したものだった。
普通の人間ならばすくみあがり、武器を構えることさえ難しいはずだ。

黒影は潮合が満ちてくるのを感じた。



相手の殺気がさらに強まった。
男が剣を槍に持ち替え、構えた後である。
ヒナギクは体が震えていることに気がついた。
だが、それを押さえつけることに意識すると、なんとか体が動くようになった。
ヒナギクはハヤテに目で合図する。ハヤテは黙って頷いた。

二人は同時に動いた。
ハヤテの正宗が男の顔面を、自分の白桜が男の腹部を捉えた、と思った。
男がその重そうな槍を竹でも振り回すかのように一振りしたのが見えたと思ったら
白桜に衝撃が走った。
ハヤテの持っていた正宗も吹き飛んでいる。
負けた。ハヤテと二人がかりでかかったのに為すすべもなく負けた。
唖然とするヒナギクとハヤテに対し、男は特に何をするというわけでもなく尋ねた。

「何故こんな賊徒の巣に居た?」

「……え〜と色々ありまして」

ハヤテが返した。
男はしばらく考え込んでいたが、

「行くあてがないならついて来い」

とだけ言った。
薄っすらと分かっていたが男には自分達を殺すつもりはないらしい。
かといって別に強制的に連れてこさせようとはせず、ついて来ないならばそのまま置いていくつもりなのだろう。

ヒナギクはハヤテと顔を見合わせた。

「どうしましょう?」

ナギがハヤテを呼ぶ声が聞こえた。

「一体なんだったのだ、あいつは?」

「ついて来い、と言われました」

ハヤテが答えている。
ナギは黙り込んだ。
男について行っていいのか迷っているのだろう。
マリアや志織も近づいてきた。

「大丈夫ですか?ハヤテ君、ヒナギクさん」

ヒナギクは大丈夫です、とマリアに告げ、男について来いと言われた事を話した。
マリアはとりあえずついて行った方がいいと言い、志織も賛成した。
こんなところで野宿などはしたくはないからだろうし、行くあてもないからだろう。

五人は男が向かった方向へ歩き始めた。

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プロフィール

名前 神崎 黒影(カンザキクロカゲ)
年齢 19歳
誕生日 さあ?
血液型 知らん
家族構成 義父
     義弟
身長 182cm
体重 68kg
好き・得意 騎馬隊の指揮・槍
嫌い・苦手 廷臣・近衛軍の将軍
所属 神崎軍
役割 総指揮官
 
母は彼を産んだ際に死去。
父は黒影が二歳の時、謀反を起こして打ち首に。
その際、謀反人の息子として殺されそうになるが
帝でもあり現在の義父である倉臼平八郎に
『何も知らない子供にどんな罪があろうか?』
との言葉を受け、なんとか助命される。

十歳の時に五百の兵を預かって精鋭を育て上げ、
十三歳の時に初陣を飾り、軍神宇佐美天竜を討ちとり勇名を馳せる。
その際、自身や配下の兵馬が黒の軍装をしていたために
『漆黒竜』と呼ばれるようになった。
特に騎馬隊の指揮に優れ、野戦で彼に勝る者はいない。
鬼天槍を持てば天下無双。

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はい、以前とほとんど変わっておりません(笑)
それではまた後ほど。