Re: 転生 (1月12日更新) ( No.45 )
日時: 2020/01/12 12:00
名前: masa

こんにちはmasaです。

本編の更新です。

どうぞ。
-----------------------------------------------------------------------------------

前回、ナギは出張で出掛け、沙羅はルカに食事を作りに行こうとしたところ、声を掛けられた。


「えっと、どうして?」
「ん!?」

普段ルカは、防犯上の理由等で近くまで送ってもらい、そこから歩いて帰宅していたのだが、今日に限ってかなり近くまで送って貰っていたので、聞いたのである。

「ほら、今日ナギは出張で遅くなるでしょ?で、夕飯はお弁当とかで済まそうって思ってたらマネージャーさんが作ってくれるって言ったから、それに甘える事にしたんだよね」
「は、はあ」

ハヤテがリアクションに困っていると

「あ、そうだ。沙羅ちゃんも一緒にどう? 良いですよね?」
「ええ、勿論」

マネージャーが答えると、ルカは一旦車を降り、

「ハヤテ君、今日は大丈夫?特にご両親とかさ」
「パパもママも今日は帰りが遅いので平気ですよ。使用人の人達も理解ある人ばかりですし」

ヒソヒソと内緒話をし

「沙羅ちゃんも大丈夫だし、行きましょうか。買い物してから帰ろうって話になってたし」

鼻歌交じりで車に戻り、

「さ、乗って。良いですよね?」
「勿論ですよ」

沙羅は少し悩んでから周囲に人の目が無い事を確認して、乗り込んだ。


移動中の車内、ルカは楽しそうに鼻歌を歌っていたが、沙羅は複雑だった。

「(家の中だと気が緩んで、ルカさんが思わず僕達の関係を口走っちゃう可能性は否めないんですよね。若しそうなったら、マネージャーさんは意地でも僕とルカさんの接触を防いでくるだろうな)」

普段は三千院家内ではハヤテでいられるのだが、今回ばかりはそう言う訳にはいかないので、何時も以上に注意する事を心に誓う羽目になった。

「(でも、何だろう。この人が来ると思うと、変な感じがする。ルカさんへの恋愛感情は無いって言ってたのに)」


                   × ×


買い物を終え、三千院家に着くと

「えっと。ルカさん、ここで生活してるんですか?」
「ええ、まあ。同居人は物凄い財閥の人で、ここに住まわせてもらってるんです」
「な、成程」

ルカは門の所でSPさんに話を付け、車で三千院家に入り、屋敷近くに止めてから中に入った。

「凄いですね。ここに来るまでも凄かったですが、キッチンも広いですね」
「まあ、財閥の家ですからね。あ、冷蔵庫とか好きに使っちゃっていいですよ」
「あ、はい」

料理を始めた森谷マネージャーを後ろから眺めていた沙羅は

「(なんだか、凄い状況な気が。この人が何時までいるかは分からないけど、ナギさんが帰って来てこの状況を見たら、良い気がしないかもしれないな)」

何故かまでは分からないながら、こんな事を思っていた。
そして

「(それに、さっきからこの人が家にいる事を歓迎出来ない自分と素直に歓迎している自分が一緒にいる。何なんだろう)」


                   × ×


一方。
ナギは自分の家がそんな状況になっている事は知らず、帰路に着いていた。

「(蓮司、か。良い奴だったな)」

帰りの車窓で外を眺めながら思っており

「(あいつには悪いが、肝心の友人は死んでしまっている可能性は高い。そうなら、私と似てるんだよな。「大切な人を亡くしてる」って点がな)」

強めの親近感を感じ、ナギは今迄以上に親密にして行く事にした。

「(こうして思うと、ハヤテが戻って来てくれたのは、本当に大奇跡なんだよな。本当に感謝せねばならないな、神様にな)」

信心はこれと言って無かったが、強く芽生えていた。

「(まあでも、今のハヤテは女だから、複雑怪奇だよな。ルカには悪いが今の日本じゃ同性婚は禁止だからな。 っとはいえ、ハヤテが来てくれる以上、私自身も楽しんで、大切にしないとな)」


                   × ×


一方。

「う〜ん、良い匂い」

料理が完成し、食卓に並べられていく料理を見て、ルカはテンションが上がっていた。

「ええ。僕も楽しみですよ」
「え!?」
「あ、いえ。何でも」

森谷マネージャーの前では一人称に気を付けていたので、慌てて誤魔化した。

「(それにしても、マネージャーさんは手際が良いですよね。元執事として素直に感心しちゃいましたから)」

沙羅が感心していると料理を並べ終わったので

「「「では、いただきます」」」

挨拶し、料理を堪能していた。
すると

「やっぱり、こう言うのは良いですよね」
「「え!?」」

突然言われ、ルカも沙羅も驚きの声をあげた

「私は1人暮らしなもんで、こうして食卓を囲んで食事する事は中々なくて。仕事が忙しくて実家に帰る事も稀ですから。だからこそ、家での食事が嬉しくて」
「そうですよね。私もお仕事から帰って来た時、食事の準備をして待っててくれて、一緒にご飯を食べる事がどんなに嬉しかった事か。何気なくても、幸せってこう言う事なんだなって思いますから」

そう言った後、ルカは少し暗くなった。

「でも、皆が皆私みたいに楽しく仕事している人って、少ないと思うんですよね。この業界にしろ、そうじゃないにしろ、楽しくなかったり苦痛だったり。でも、夢だったり大切な人の為だったり、そう言う理由があるからこそ、頑張れるじゃないかなって」

一旦切ると、ルカは続けた。

「こう思う様になったのは前言った様に「生きる意味を失ってたから」なんですよね。私にとって大切な人が、ある日急にいなくなってしまったんです。その人が当たり前にいる日々、その人と当たり前に過ごす日々。それが急に無くなっちゃった時、気付かされたんです。それがどれだけかけがえの無い物だったかを」

ルカの言葉に沙羅も暗くなってしまった。

「今思うと、同居人の人にも申し訳ない事をしたかなって。私にとって大切だったように、その人から見ても大切な人だったんですよね。会話も無く、ただただ暗い日々を送っちゃって」

「ルカさんにそこまで言われるなんて、よっぽど大切だったんですね、その人は」
「ええ」

肯定して来たルカに森谷マネージャーは笑みを浮かべたが、食卓が暗くなっている事に気付き

「(余計な事言っちゃったかな?何とかしなきゃ)」

後片付けは沙羅が手伝ってくれたので、その間挽回の策を練り

「ルカさん、トランプってあります?」
「え!?確かあったっと思いますけど」
「お借りして良いですか? 空気を悪くしちゃったみたいなんで、お詫びに特技をお見せしようかなって」

少し考え、ルカはトランプを取に部屋を出た。


「で、こうすると。ほら」
「おお〜、凄い」

森谷マネージャーはルカと沙羅にマジックを披露していた。

「こう見えて、高校時代は奇術研究部に所属していたので、割と出来るんですよ」
「へ〜」

ルカは素直に感心していたが

「(今のマジックのタネって、確かあれだったはず。なまじ知ってると驚けないな)」

前世の時、マジックショーの手伝いのバイトをした時に色々と覚えたので、大概のトリックなら分かってしまうので、沙羅は驚いたふりをしていた。

「他にも出来る奴有ります?」
「ええ。ではですね」


                   × ×


時間を少し飛ばし。

「ふう。疲れた」

ナギは帰宅し、運転してくれたSPに礼を言って屋敷に入ろうとした時

「あれ?こんな車、家にあったか?」

見覚えのない車に首を傾げつつ何時も通り屋敷に入って居間に向かった。
その道中

「そう言えば、ハヤテは今日遅くまでいられるって言ってたよな。って言ってももう帰ってるだろうがな」

会えない事を残念に思いつつも、沙羅の両親が過保護なのは知っているので、今日の所は諦める事にした。

すると、居間の前で中から話声が聞こえたので、まだハヤテがいるだろうと期待してドアを開けると

「あ、お帰り、ナギ」
「あ、ああ。ただいま」

怪訝な目付きのナギにルカは

「あ、初対面だっけ?私のマネージャーさんだよ」
「あ、初めまして」

自己紹介をした森谷マネージャーに

「もう、9時だぞ」
「え!? あ、もうこんな時間ですね。私はもう帰りますね」
「忘れ物とか気を付けてくださいね」

現場の微妙な空気を察した沙羅は気まずそうな顔になった。


ルカは車の所まで見送り

「今日はありがとうございました」
「いえいえ。お礼を言うのはこちらですよ。 では、また明日」
「ええ」

車が見えなくなった頃合で

「おい、ルカ。ちょっと来い」
「え!?」
「いいから来い」

ルカは首を傾げつつ、ナギに従った。


-----------------------------------------------------------------------------------
以上です。

次回は続きです。

では。