Re: しあわせの花(ハヤヒナ)【アフター第1話その?更新】 ( No.69 )
日時: 2012/06/16 00:55
名前: ロッキー・ラックーン
参照: http://hinayume.net/hayate/subnovel/read.cgi?no=7738

こんにちは、ロッキー・ラックーンです。
ムチャクチャ空いてしまいましたが、どうぞお付き合いください。

今回はカップル成立後の一日、深夜の部です。
とりあえずひと段落で、暫定最終回パート2といった所になります。

※この作品は未成年者の飲酒を推奨するものではありません。
「お酒は20歳から!飲んだら乗るな、乗るなら飲むな!!」
です。笑

それではどーぞ!




------------------------





「桂先生、僕こと綾崎ハヤテはヒナギクさんとお付き合いさせて頂く事になりました。命に代えてもヒナギクさんを守る覚悟です。どうか、なにとぞよろしくお願いします!」

「へぇ〜、学校での騒ぎも見てたけど本気みたいね…」

「ハイ、冗談一切抜きです!」

「…よっし!ヒナの事、頼んだわよ〜!!」

「ハイっ!!」

「お姉ちゃん…








なんで何事も無かったかのようにしてるのよーーー!!!」





冒頭からヒナの剛掌波が飛ぶ桂邸の離れ。
果たしてアフター終了までこの建物はもつのだろうか…。笑







     After第1話そのD【 Heart to Heart 】







「んもう!ほんっっ……っとに信じられない!!」

「……」(土下座中)

「まあまあ、桂先生もこうやって謝ってますし…」

「ていうか、ハヤテはなんでそんなに落ち着いてられるの!?」

「ハハ、何というかお約束ですし…」



読者の皆様こんばんは、毎度の事ながらお騒がせしております。
引き続きまたまたヒナのお家からです。
さてさて今回は冒頭からヒナがお説教モード。
前回はとってもイイトコで終わってしまい、非常に残念な思いをしました。
初めての二人きりのキスだったのですが…って、桂先生はずっと聞いてたとか言ってたから、またまた二人きりではなかったみたいだな…orz



「それはそうと、ヒナ!綾崎君!」

「なに?…ていうか、誰の許しを得てしゃべってるの、お姉ちゃん?」

「まあまあ、いいじゃないですか…で、何でしょうか?」



相変わらずツンケンと接するヒナとそれを宥める僕。



「せっかくめでたい事があったんだから、お祝いしないとお酒の神様に怒られるってモンよ!」

「「ぶっ…!!」」



桂先生の手にはどこから取り出したのやら、麦から作られた苦い液体の入った大ビンとジョッキが3つ。
どちらもキンキンに冷えてやがるっ…



「ちょっ、桂先生!いいんですか?教師が生徒にこんな…」

「何を言ってんの綾崎君、この空間に教師も生徒も無いわよ!!私の事は『お姉さま』と呼びなさい」

「…はぁ。もう、仕方の無い『お義姉様』ですね…」



と言いつつ、差し出されたジョッキを受け取る僕。



「ホラ、ヒナも…」

「その手には乗らないわよ!生徒会長である私がこんな事認める訳が…」

「なーに固い事言ってんのよ!そんなんだから胸板だって硬いままなのよ?」


カチーン


「だっ、誰の何が硬いですって〜!?」

「何度でも言ってあげるわ。ヒナのまな板ペッタンコ〜!!」

「げっ…」

「……」(←言葉にならない怒り)



桂先生の不用意な言葉に、ヒナからは轟音が鳴り響くようなオーラが繰り出された。
それはもう、誰もが数秒後に地獄絵図を想像するような。



「よこしなさい…」

「「えっ…?」」

「付き合ってあげるって言ってるの!私の気が変わらないうちにさっさとしなさい!!」

「はっ、ハイっ!」



ヒナの口から出てきた言葉は、あまりにも意外なものだった。
その表情はいたって冷静そのもの。
急な変わり身に、僕も桂先生も驚きを隠せない。
桂先生はとにかく手早く、ヒナにジョッキを手渡して乾杯の準備をする。



「ハイ、では行き渡ったようなので…ゴホン!! 我が妹と、その恋人の末永い幸せを願って…カンパイ!」

「「かんぱーい!」」



数十秒前の不穏な空気はどこへやら、桂家の離れは宴会ムードへ。
ビンを空にすると、どこからか新たなビンを桂先生が持ってくるというループが片手では数えられないくらい繰り返された。



「それにしてもヒナ、よく怒らなかったですね?」

「私が引かないと、お姉ちゃんはドンドン調子に乗るから…。ねえ、ハヤテ?」

「はい?」

「えーっとね、その…私の胸…硬かった?」

「「ぶっ!!」」



早くも酔いが回ってるのか、桂先生の前で…。
しかもこの手の質問には即答でないと、かえってフォローじゃなくなる…!



「そんな事ないです!僕の触覚にジャストフィット!サイコーの柔らかさでした!!」

「もう!ハヤテのえっち〜!!」

「ぶっ!!」



僕を叩くヒナの力加減は明らかに強すぎ、数秒間呼吸が出来なくなった。
うん。僕の彼女、完全に回ってます。



「ヒナ、そろそろやめといた方が…」

「何言ってるのハヤテ!!私は全然酔ってなんてないんだから!お姉ちゃん!!ボーっとしてないで、おかわりよこしなさい!」

「はいはい」



ジョッキになみなみと注がれる黄金の液体。
ヒナはそれをものの数秒で片付けてしまう。
やっぱりこの二人、紛れも無く血の繋がった姉妹だ…。



「ハヤテ、さっきから全然進んでないわね…私とのお酒が飲めないってゆーの!?」

「いえっ、そんな事は…」

「だったら飲む!!…お・ね・が・いっ!」

「…いただきます!!」



くそー、可愛すぎる!!
変なタイミングで僕のテンションはMAXに。なみなみ注がれた液体も一瞬で飲み干した。
ていうか、ヒナ…あざとい。笑



「ごちそうさまでした!」

「キャー、ハヤテカッコイイ!私、もう一回見たーい!!」

「ええ、何度でもお見せします!!」

「お姉ちゃん、ハヤテに注いであげてね!」

「はいはい」



自分でも分かる。これはバカップルだ。
桂先生のニヤニヤと、次から次へと現れる新しいビンは留まる事を知らなかった。





【1時間後】




「ヒナはね、最強なのっ!だってこーんなにカッコイイ恋人と、こーんなにスゴイお姉ちゃんがいるんだもんっ!!ハヤテも、お姉ちゃんも、だ〜いすきっ!!」

「僕もヒナのこと、大好きで〜す!!」

「やった〜!私たち、両想い〜!!」

「両想いで〜す!!」



気付けば、桂家の離れは混沌と化していた。
空になったビンの数は20本を超え、この宴会の言いだしっぺの桂先生はお酌に徹していた。



「売り出せ会長ブロマイド〜♪ファンサービスも絶やすまじ♪チャランポランするわ♪」

「ハハハ〜、さすがは白皇の歌姫です〜!!」

「HIKIKOMORIお嬢様だろうが、超人メイドさんだろうが、実は漫画家志望アイドルだろうが、なんでもかかって来なさいってのよ〜!私の歌を…」 バタン!!



音程ズレズレな歌を機嫌良く歌っていたと思ったら急に倒れこむヒナ。
普段の僕だったら、いの一番に身体を支えるところだったが、この時に限っては笑顔で見守り続けるだけだった。



「ヒナ!ヒナ!…寝ちゃってるわね〜」



ヒナの頬をペチペチと叩く桂先生。
だいぶ乱暴に扱っているように見えたが、起きる気配は一向に無い。



「まったくヒナったらあんな飲み方して…いったい誰に似たのかしらね?」

「良く言いますよ。次から次へと注いでたくせに…。それに、誰に似てるかと言われれば、完全に先生と同じ血が流れてると思いますが…」

「あらそうだっけ?参ったなコリャ…」



ポリポリと頭をかきながらしらばっくれるあたり、最初からヒナを酔い潰させるつもりだった事が伺える。
まったく、この人はホントに…



「まあまあ、こうやって背伸びして大人ぶるのだって今しか出来ない楽しみよ〜。人生一回こっきりだし、『ダメだ』って言われてる事の一つや二つ破るのが子供の仕事ってモンよ!」

「はぁ…まあそれに対しては異論は無いですが…」



「貴女の場合は、一つや二つでは済まなかったのでは?」というセリフは飲み込んでおいた。
確かに、ヒナが「優等生」のカラを破って、一般的に「悪いと言われてる事」をするのであれば、僕や先生の前だけだろうとも思った。
今この時間・この空間というものは、ヒナにとって特別なものなんだと思う。もちろん、僕にとってもだけど。



「じゃあココで騒いじゃヒナにも悪いし、ちょっと外に出て飲むわよ」

「えっ?まだ飲むんですか?」

「あったりまえじゃない!まだまだ序の口よ〜」

「やれやれ…」



ヒナをベッドに運び、布団をかける。
その寝顔はとても気持ち良さそうで、見ているこちらも幸せになるような眠りっぷりだった。
僕はヒナの羽根のように軽い身体を優しく横たわらせ、額にキスをしてから桂先生を追った。

離れから出ると、そこにはバーベキューなどで使うキャンプ用のイスが用意されていた。
それと、これまたどこから持ち出したのか、新しいビンとグラスも。
ホントに、お酒のためであれば色々と用意周到な人だ。



「さぁ〜、座って座って!これからお姉さまが色々聞いちゃうゾ〜!」

「はぁ…」

「とりあえずカンパーイ!」

「かんぱーい」

「で、綾崎君。あんたヒナのドコが好きなの?」

「いきなりですね…」

「人生というのは、いつもいきなり突拍子も無い事が起こるモノなのよ」

「…そうですね」



桂先生の言葉の奥に含まれた意味には特に気にしなかった。
ただひたすらに、ヒナの好きな所を脳内から出るだけ搾り出す。



「知ってますよね?雛菊の花言葉…僕にとって、ヒナはまさに雛菊…『しあわせの花』なんです。ヒナの事を考えているだけで、僕はとても幸せな気持ちになります。気が付いたら、恋してました。不幸だらけだった僕の人生が、いつの間にか雛菊の花でいっぱいになってました。」

「……」



桂先生は面食らった表情。
きっと、ここまで一人の女の子に対して真剣に考える僕が想像出来なかったのだろう。



「ちょっと、キザ過ぎましたか?」

「…いや、そんな事無いわよ!!ホラ、どーした?グラスが空いて無いぞ〜。もっと飲め飲めー!」

「もう…今日だけですからね」



なみなみと注がれたグラス。
ちょっとこっぱずかしいセリフの照れ隠しも込めて、その液体を一気にノドに流し込んだ。



「ぷはっ…」

「いい飲みっぷりじゃないの。ドンドン行くわよ!」

「ゔっ…こーなったらいくらでも来てください!!」



・・・



「ヤバイ、かなーり気持ち良くなっちゃいました」

「あら〜?三千院家の執事はその程度で潰れちゃうのかしら〜?」

「もう勘弁してください…」



だいぶ飲んだ。これまでの人生で一番の量なのは間違い無い。耳が熱い。
しかしそれより何より驚きなのは、僕に注ぎながらもそれ以上のペースで飲んでいる桂先生は、顔色ひとつ変えてないで飲み続けている事だ。



「綾崎君…」

「はい?」



にわかに桂先生の雰囲気が変わる。
ポワポワ浮かんだ感じの今の頭でも簡単に理解できた。
僕は気付けに右手に持ったグラスの中身を一気に空にした。



「私達姉妹の過去の事、聞いてるわよね?」

「ハイ。少しだけですが、ヒナから…」

「あの頃の私は、年もあんたとそんなに変わらなかったわ。だいぶムチャしたもんよ…」

「そうなんですか…」



空に浮かぶ月に遠い目を向ける桂先生。
きっと僕とはまた一味違った波瀾万丈な人生だったに違いない。



「『もうイヤだ』『逃げ出したい』って思った事も数え切れない位あった。…でもね」

「?」

「ヒナがいたから何でも出来た。現実から目を逸らさずに立ち向かえた。あの子は私の『しあわせの花』だったから…」

「それって…」

「そうよ。さっきのアンタの答え、最高だって褒めてんのよ!幸せになりなさいよ〜!コノコノ」



やっぱりヒナは桂先生にとっても、幸せを運ぶ花だったようだ。
小突いてくる手はとても優しく、ヒナに触れられている時を思い出した。
それもそうか。これまでずっとこの手がヒナを撫でてきたんだもんな…。



「ありがとうございます。ヒナも僕も、必ず幸せになってみせます!」

「よっし、いい返事ね!あっ、それと…」

「?」

「……いや、なんでもないわ。何があってもヒナの事、信じてやんなさい!」

「ハイッ!」



何があっても…か。
なんか最近同じような事を言われ続けてる気がする。
それだけ周りの人々がヒナの事を愛しているんだと思うと、また胸が温かくなった。
空に浮かんだ月は、とても温かく輝いていた。



・・・



「おはよう、ハヤテ!」

「おはようございます、ヒナ」



現在時刻、午前8時。ちなみに今日は休みで、ヒナと一日デートの予定。
結局昨晩は何時まで桂先生と語り明かしたかよく覚えていない。
話した内容もイマイチ記憶に無い…ヒナの事というのだけは確かだ。



「き、昨日の事は…皆にはナイショね?」

「ハイ、もちろん」



どうやらヒナは昨日の事は覚えているようだ。
流石姉妹、アルコールにはめっぽう強い。



「じゃあ私、着替えて来るね!」

「ハイ。僕も着替えてから向こうに行きますので…」

「うん、後でね!!」



少し跳ねた自慢の髪を可愛らしく揺らして出て行った。
ヒナを見送った後、僕もすぐに持参した私服に着替える。



「ゔ〜ん…今日もいい天気だ」



身支度を済ませて離れから出ると、秋口の心地の良い陽気が僕を照らした。

今日はどんなヒナと出会えるだろう。
そのヒナに対して僕はどんな事を思うのだろう。
今よりもっともっとヒナを好きになれたら良いな…。

希望に満ちた胸を高鳴らせながら、桂家の本邸へと向かうのだった。



「ハヤテ、コレはあくまで暫定最終回ぞよ。もうちっとだけ続くんじゃ!!」



澄み渡る空から、お嬢様の良く分からない天の声が聞こえた気がした。




おわり





------------------------




【あとがき】
カップル成立後日談は今回で終了です。
アフター第1話としながらも、第2話の構想がまだ無いので暫定最終回という扱いとなりました。
雪路の姉の威厳的なものと、これからのハヤテの希望を軸としましたが、いかがでしたでしょう?
では、解説を数点…。


■サブタイトル
ハヤテと雪路の話す雰囲気を出せたらいいなと思いました。
余談ですが、アフターのサブタイトルは、全て何かしらの別の作品タイトルをもじってます。

■ハヤテのフォロー
コイツはいったいヒナの胸に何をしやがったんでしょうか。笑
まあ原作でも思いっきり触ってましたけど…(ヒナがヒーローショーの楽屋にいた時です)
生徒会室の目的外使用はいけません!

■ヒナに限って…
酔って歌った歌は、本来のヒナなら口にする事の無い歌です。
いつも好き放題やってる3人娘を見て、文句を言いながらも羨ましく思っていたヒナを表現しようと思いました。

■姉・雪路
雪路にとっても、ヒナは「しあわせの花」でした。
それをハヤテが言ってくれたのが嬉しくてたまらなかったようです。
その事が「ハヤテの過去」を追及するのを留まらせました。(雪路自身、美希を情報源に既にハヤテの過去を知っています)

余談ですが、畑先生の脳内にある雪路主役のアナザーストーリーがいつか実現するのを楽しみにしてます。

■希望の朝
「おれ達の戦いはこれからだ!」的なシメです。
楽しい事でも辛い事でも、ヒナと一緒なら大丈夫でしょう。
最後のナギはもちろんドラ●ン●ールのパロディです。



さてさて、アフターひとつ終わらせるのに5ヶ月近くかかってしまいましたが、まだまだこのハヤヒナ+周りの人々でやりたいお話はたくさんあります。
いかんともしがたい遅筆ではありますが、読んで頂ける皆様の声を糧にこれからもやっていこうと思います。
どうぞよろしくお願いします!!



ご感想・ご質問などお待ちしております。
ありがとうございました。