Re: しあわせの花(ハヤヒナ)【アフター第1話その?更新】 ( No.62 )
日時: 2012/03/27 13:36
名前: ロッキー・ラックーン
参照: http://hinayume.net/hayate/subnovel/read.cgi?no=7738

こんにちは、ロッキー・ラックーンです。
またひと月あけてしまった…。

今回はカップル成立後の一日、夕方の部です。
それではどーぞ!



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「は〜い、二人とももっとイイ顔して〜!」

「こっ、こんな格好で出来るわけないでしょ〜!!」

「……」



こんにちは、綾崎ハヤテです。急な展開に読者の皆様は置いてけぼりですね。
簡単に今の状況を説明すると…

ヒナのお義母様→カメラを持って満面の笑み
桂ヒナギク→三千院家執事服着用
綾崎ハヤテ→白皇学院制服(女子用)着用


…って、また僕はヒナの制服を着てるのかーーー!!!


あ…でもヒナの良い匂いがする…(←変態)





     After第1話そのB【 かつらけ おとまり 】





「はぁ〜…それにしてもアリス達ったら、悪ふざけが過ぎてるわよね…」

「まあまあ…」



てんやわんやの学校からの帰り道。
僕達二人の足はアパートではなく、別の場所に向かっていた。
今日はお義母様と桂先生にご挨拶に伺うというワケで、ヒナの実家に泊めてもらう事になっているのだ。
朝から色々と慌ただしさを極めたせいか、ヒナの顔には少し疲れが見えていた。



「今日はあと僕が頑張るだけだから、帰ってゆっくり休みましょう?」

「休むのも良いけど…ハヤテと色んな事話したいな…静かな部屋は久しぶりだし」



確かに、アパートのヒナの部屋にはアーたんがいる事もあって、二人でじっくり話すことは少ない。
三人で過ごすのも楽しくて落ち着くけど、たまには二人きりで話してみるのも良いかもしれない…。
二人きり…朝の生徒会室の続きも期待出来るかな…ウェヒヒヒ



「そっ、そうですね!アパートじゃ二人きりになるのも難しいですしね」

「ハヤテ…今エッチな事考えてたでしょ?鼻の下が伸びてるわよ」

「え゙っ…そんな事ひとっつも無いですよ…?」

「んもう!一応、お義母さん達がいるんだから、期待には応えられないわよ?」

「ハハハ…スミマセン…」



うん、自重しよう。
挨拶に来た自分の娘の彼氏が家でそんなチョメチョメな事をしていたら、僕はそいつを殴って追い出すだろう。(その娘が誰との子供なのかはとりあえずは置いといて)
何事も信頼が一番大事だ…でも、「一応、お義母さん達がいるんだから」と言う事は、ヒナとしても致し方無いという意識があるのかな…ウェヒヒヒ
というか、こんなエロな綾崎ハヤテ…他に書く人なんていないですよ?困った作者だ…(←人のせいにするか)



「ゴホン…まあ、とりあえずそれは置いといて、緊張します…」

「大丈夫。あのお義母さんとお姉ちゃんよ?いつも通りのハヤテでいてくれれば平気…まあ気持ちは分かるけど」



家に泊めてもらうのはヒナの誕生日の前以来だから…だいぶ久しぶりだ。
前回、ヒナのお義母様はいきなり転がり込んできた僕に優しく接してくれて、連泊もあっさり快諾してくれた。
今回の僕の挨拶も、多分笑って聞いてくれると思うけど…やっぱり緊張するな…

と思い巡らせている内に到着。
相変わらず大きな家だ。



「じゃあ入るわよ?お話はお茶でもしながらしてもらうから、玄関では軽い挨拶程度で済ませてね」

「ハイ…頑張ります…」

「あっ、ハヤテ…おでこ…」

「ん?何か付いてますか?」


チュッ…

差し出した額に軽いキス。
不意打ちに僕は顔を真っ赤にさせる。



「ちょっ、ヒナ!?」

「そうそう、その表情よ。いつものハヤテでねっ!」



その眩しい笑顔に浸るヒマも与えられず、扉は開かれる。
あ、なんか肩の力抜けたな…さすがはヒナ。



「ただいま〜!」

「お邪魔します」

「あら、ヒナちゃんお帰りなさい。あらあら綾崎君も…」



入るとほぼ同時にお義母様は玄関へと出迎えてくれた。
なんか、この前お会いした時よりさらに若々しくなってるような…



「こ、こんにちは!お久しぶりです」

「いらっしゃい!さ、立ち話もなんだから上がって上がって!」

「はい、お邪魔します!」



そそくさと上がる僕を笑顔で迎えてくれるお義母様。
その姿を見て、心なしかヒナも安心してるように見えた。



「ハヤテ、私着替えてくるからちょっと待っててね。お義母さん、お茶の用意をお願いしてもいい?」

「はいはい任せてね…でも良いのかしら?」

「…ん?何が?」

「綾崎君に着替えさせてもらわなくてヒナちゃんは良いのかしら?」

「「ぶっ…」」



お義母様の不意打ちに僕達は二人して顔を真っ赤にさせる。
そして、自然とヒナの身に纏った色鮮やかな制服に目がいってしまう。



「何言ってるのお義母さん!?こら、ハヤテもジロジロ見ない!!」

「え〜、残念だな〜…綾崎君も残念でしょ?」

「え、いや、その…」

「もうバカ!私は行ってるわよ!!」



ドスドスと足音をたてて自室に向かうヒナ。
残された僕はただしどろもどろにしているしかなかった。



「フフフッ、ヒナちゃん顔真っ赤だったわね〜」

「は、はあ…」



悪戯な笑顔を浮かべるお義母様。似たような表情を最近よく見るような…あ、アーたんがよくする顔だった。
コレは幸先が…良いのかな…?



「じゃあ、私はお茶を淹れてるから、綾崎君は手を洗ってからリビングに来なさい…洗面所の場所は覚えてるわよね?」

「あ、ハイ!」

「綾崎君から大事なお話があるってヒナちゃん言ってたから、楽しみにしてるわね〜!ワクワク!」

「は、ハハハ…」



お義母様はスタスタと僕の荷物を持ってリビングに向かう。
僕も一人でつっ立ってる訳には行かないので、足元に用意された来客用のスリッパを履いて洗面所へと向かった。





・・・





「う〜ん…」



洗面台の石鹸を無心で泡立てる。
こういう一人の時間を与えられると逆に緊張が盛り返してしまうというか…



「…いかんいかん!!」



ハッと我に返り、無意味に泡まみれの手を流す。
せっかく二人が緊張をほぐしてくれたんだ、あとは僕の勇気だけなんだ!!



「いくぞ…」



手を拭いて、意を決した僕はお義母様の待つリビングへと足を進めた。
…おっと、うがいを忘れていた。






・・・






トントン

「失礼します」

「あら綾崎君、リビングに入るのにノックなんてしちゃって!!自分の家のようにくつろいで良いのよ〜?」

「いえいえ、そーいうワケには…」

「もう、頑固者なのね…あ、好きな所に座ってね」

「ハイ、では失礼します」



好きな所と言われたので、当然ながら下座に着席。
キッチンにいるお義母様の淹れる紅茶の香りが鼻をくすぶった。



「ヒナちゃん、例のお姫様とは上手くやれてるかしら?」



お茶菓子を用意しながら発せられる声。
ただの世間話とはいえ、この件に関しては話したい事がたくさんある。



「ハイ、それはもう…本当の親子みたいにいつも一緒で…」

「本当の親子…?」



その単語に、お義母様の笑顔が一瞬消える。
僕はそれに気にせず話を続ける。



「ええ、いつだったかヒナが言ってました。今のご両親が自分に注いでくれた愛情をそのままアーたんに向けて注いでやるんだって…」

「まあ…ヒナちゃんがそんな事を…」



僕の言葉に、お義母様は驚きを隠そうとしない。



「ハイ。僕、思うんです…血の繋がりは確かに大事なものだと思います。でも、切れないものかと思ったら実はそんなでもなくて、意外とアッサリ切り捨てられてしまうんです」

「…」



いきなり語り出してしまったが、この話はもちろん僕の両親の事だ。
血は繋がっているけど、僕は彼らに対して怒りだとか悲しみの感情すら抱かない。…多分、向こうも僕に対して「便利な金ヅルだけど、無ければ無いで全然気にしない」といった程度の認識をしている事だろう。
完全に無関心…マザー・テレサいわく「愛の反対」の状態だ。



「でも、心の繋がりは切っても切れません。いくら見捨てようと思っても、心が繋がっている限り見捨てきれない。心の底から憎んだり恨んだり…ましてや無関心になりきる事は出来ないんですよ。だから、本当は切れないはずの心の繋がりを無理矢理切り離されてしまったヒナはとても深く傷ついたんだと思います」

「心の繋がり…かぁ」



そう、親に捨てられて悲しいと思うのは血ではなく心を離されたから。
これが僕の思う、僕とヒナの境遇の決定的な違い。



「ハイ。だから僕にとっては三千院家の皆様は家族ですし、お義母様とヒナ、ヒナとアーたん…例のお姫様だって本当の親子なんだと思います。心の繋がりという点で…」

「…そうね」

「あっ、スミマセン!熱くなって生意気な事を言ってしまいました…」

「ううん、その通りだと思うわ…。それにそう言ってくれて、とっても嬉しいわ!!」

「ハハハ…」



相変わらずの優しい笑顔。
それはヒナがアーたんを見るときの表情とどことなく似ていた。



「それより綾崎君?」

「はい?」



いきなり真剣な表情に変わるお義母様。
アレ…やっぱり失礼だったかな?



「さっきからウチのヒナギクの事、なんて呼んでるのかしら?」

「…ん?…あっ!!」



言われて初めて気付いた。
さっきから僕はお義母様の前でヒナヒナと連呼していた。



「いえ、あの、ヒナギクさんとは懇意にさせて頂いていると言うか、その…」

「フフフッ、あなた達はからかうと本当に面白いわね〜!」

「いえ…スミマセン…」

「謝る事なんて無いのよ〜?綾崎君のお話が楽しみね〜!ヒナちゃんまだかしら…」



モジモジと赤くなる僕を、お義母様はニヤニヤと眺める。
ヒナ…早く来てください…!



「お待たせ〜!」



颯爽とリビングに現れるヒナ。待ってました!
最近はようやく見慣れてきた私服姿。相変わらずカワイイな…



「あ、来たわね〜!綾崎君が待ちかねてたわよ〜?」

「ん?どーゆー事?」

「フフフッ、コッチの話。じゃ、お茶にしましょうか〜!」



僕の隣に座るヒナ。
お義母様はその姿を見守りつつ、お湯を入れて温められていたティーカップの中身を空けて、香りの良い紅茶を注いでいった。



・・・



「お味はいかが?」

「ハイ、とっても美味しいです」

「フフッ、それは良かったわ…」



とりあえずは紅茶をひと口。
これからする挨拶への緊張で乾いているノドにはちょうど良かった。



「…じゃあ、早速だけど『お話』っていうのを聞かせてもらって良いかしら?」

「…はい」



ついにこの時が来た。
まるでヒナに告白した時のように心臓がバクバクいっている。
ヤバイ、こんなに緊張するものなのか…  グイッ


「えっ?」

「大丈夫だから…落ち着いて」



僕の服の袖を軽く引っぱってのヒナの言葉。
その笑顔に、今までの緊張は全て消し飛んでしまった。
…よし!



「ゴホン…お義母様、僕こと綾崎ハヤテはヒナギクさんとお付き合いさせて頂く事になりました。ふつつかものでご迷惑をおかけすると思いますが、命に代えてもヒナギクさんを守る覚悟です。どうか、なにとぞよろしくお願いします!」

「…え?」



僕の言葉に、お義母様はキョトン顔。
アレ…そんなに意外だったのかな?



「あの…いかがなさいました?」

「それだけなの?ヒナちゃんと付き合うって…お話っていうのは、本当にそれだけなの?」



少し深刻な顔で迫るお義母様。
しまった…なにかまずったか…?



「スミマセン…僕のご挨拶に至らぬ点があれば、反省します!」

「いや、そうじゃなくて…。なんだぁ〜…残念…」



酷くガッカリした様子のお義母様。
ヤバイ…僕は取り返しのつかない事をしてしまったのか…?
せめて、何がいけなかったのか教えて頂ければ…!!



「せっかく、おばあちゃんになっちゃったかと思ってワクワクしてたのに〜…」

「「………はぁ!?」」



お義母様の言葉から約3秒の間。
その意味をようやく理解した僕達二人のシンクロした声が部屋に響いた。



「ちょっ、お義母様いったい何を!?」

「そ、そうよ!私達まだ何も…」

「あらあら!『まだ』って事はヒナちゃんは十分その気みたいね。良かったわね〜綾崎君!」

「え、ホントに…?」

「だからそーじゃなくて!ハヤテは黙ってなさい!!」



ものすごい剣幕で僕に突っかかるヒナ。
久々にこんな顔してるのを見た…でもカワイイ…



「綾崎君…」

「はい」

「離れのベッドに枕ふたつ用意してあるから…ヒナちゃんの説得さえ上手くいけば私からは何も言わないからね!」

「え゙っ…あの…頑張ります」

「頑張らなくていいから!!(ゴツン)んもう、お義母さん!!」



久々にヒナの拳骨を頂いた。
あ、なんかあんまりにも久しぶりで逆に気持ち良いような…おかわりお願いします!(←最近変態に歯止めがきかなくなってきた綾崎ハヤテ君)



「うふふっ…ヒナちゃんたら照れちゃって」

「もう…こーゆー時くらい親の威厳ってものを出してもいいんじゃないの?」

「心配しなくても、そんなの必要無いわよ。綾崎君は、ヒナちゃんが私にとってどれだけ大切なのかわかってるもの…」

「えっ…?」

「だから、お義母さんから言う事は一つだけ。『幸せになりなさい』…それだけよ」

「……」「……」



僕達は互いに顔を見合わせる。
「しあわせの花」の名を持つその少女の瞳は、涙を溜めて輝いていた。
それを見て思った。僕達二人ならきっと幸せになれると。



「お義母さん…私、もう十分過ぎるくらい幸せよ…」

「あらあらヒナちゃんたら…。綾崎君…いえ、ハヤテ君。私はいつだってあなた達の味方だから、困った事があったら何でも相談してね!」

「お義母様…」



お義母様の言葉に、僕の胸も熱くなる。
自分の存在が認められるというのは、何度経験しても嬉しい事だ。



「もう、『お義母様』だなんて他人行儀ね〜。ヒナちゃんの彼氏なんだから、『ママ』って呼んで良いのよ〜?」

「え゙!?それはちょっと抵抗が…」



流石に娘のヒナを差し置いてママ呼ばわりは出来ない…というのもあるし、何より照れくさい。
僕とお義母様のやりとりを見るヒナの表情も複雑な感じだ。



「ちょっと、お義母さん!あんまりハヤテを困らせないの!」

「ちぇ〜、つまんないの…」

「ハハハ…」



プンスカと湯気を立てるヒナに、口を3の形にするお義母様、苦笑いの僕。
なんだかとっても和やかな雰囲気だ。



「そんな和やかな雰囲気を一気に盛り上げるわよ〜!!」

「?」「?」


カシャッ

そんな音を立てて、時計の歯車が回ったような映像がお義母様の言葉と同時に頭に飛び込んできた。
…ふとヒナを見てみると、良く見知った三千院家御用達の執事服を身に纏っていた。
あぁ、男装も良く似合ってる。凛々しくてカワイイなぁ〜。

って、アレは僕の服じゃないか!

恐る恐る自分の身体を見てみると…


・・
・・・
・・・・


鮮やかなピンクのセーラー服。



「って、えええええええええええええ!?」

「キャ〜!!何よコレーーー!?」

「フフフッ、せっかくだから記念撮影をと思って。二人とも良く似合ってるわよ〜!」

「そーじゃなくて、いったいいつの間に着替えさせたのよ!?」

「知り合いの魔法少女に時間を止める力を持ってる子がいてね〜。ちょっと、ねっ!」

「ちょっとって…どこのほ●ほむですか!?」



…といった感じでタイトル前に続くというワケです。
それにしても、ヒナの制服を一度とならず二度までも着る事の出来る僕はなんという幸せ者だろう。
このまま本能に身を任せてヒナの匂いを堪能する…ワケにもいかず、写真を撮った後(結局撮った)ヒナの部屋を使って交代で着替えたのだった。



「フフフッ、ハヤテ君!ヒナちゃんの制服を初めて着てみた感想は?」

「あ…実は初めてじゃなかったりします」

「まあ!まあまあまあ!!二人とも意外とマニアックなのね…うんうん!お義母さんはそーゆーの、全然否定しないからねっ!」

「ハヤテ…貴方、少し黙りなさーーーい!!」



白桜の放つ桜吹雪がキレイだなと思うと同時に、僕の視界はブラックアウトしたのだった。




つづく



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【あとがき】

夕方の部、終了です。
今回は私の考えるハヤテとヒナの家族観の違いをハヤテに解説させました。
境遇の似た二人ですが、その心持ちは完全に正反対です。その根拠はというと…物語内でハヤテが語った通りです。
「心の繋がり」という意味で、ハヤヒナ+アリスの家族論なんかも後々やりたいなと思っています。

それにしても、ヒナママ書いてて楽しいですね。アリスと絡ませてハヤヒナをタジタジにしたいです。
ハヤテ…再びのヒナ制服着用、許せませんね。

夜の部はまた別のキャラが出る予定ですが、皆様もうお分かりですよね?笑
姉の威厳を見せて貰いたいところです。

ご感想・ご質問などお待ちしております。
ありがとうございました。