Re: しあわせの花(ハヤヒナ)【第4話更新】 ( No.20 )
日時: 2011/11/03 03:44
名前: ロッキー・ラックーン
参照: http://hinayume.net/hayate/subnovel/read.cgi?no=7738

こんにちは、ロッキー・ラックーンです。
ハヤテのアニメ3期が決定だそうです。おめでとう!
この勢いで「HiNA」第2弾の製作もお願いします!!

それではどーぞ!


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「ごめ〜ん、ハヤテ君!!…待った?」

「いえいえ、つい今来たばかりです」


とまあ聞き飽きたようなデートの常套句でやり取りをするのは、僕こと綾崎ハヤテと、皆様ご存知桂ヒナギクさん。
恋人同士でもない僕ら二人だけど、今回は僕からの誘いで、一緒に映画館に行く事にしたのだ。
いつぞやの「自分の意思で誘いなさい」という彼女の言葉を信じ、勇気を出して誘ってみたのだ。

ちなみにヒナギクさんは約束の時間の1時間前に待ち合わせ場所にやってきた。
そういう僕はその1時間前からこの場所にいる。
さてさて、今回はどんな事が起こるのだろうか…?


     第5話【「ハヤテ!」での金髪+幼女の回答例は2通りある】


事の始まりは4日前…
僕は自室で好きな人の事を考えながら悶々としていた。

相手と自分二人だけの世界を脳内に創り出す。その好きな人を自分の思い通りに動かす。欲望と妄想は止まらない。
「恋」だなんて言葉にすればキレイなものだが、その実態は幼い独占欲に他ならないものなのだ。

…などと片想いの恋ひとつで人生を悟ったように考え、またそんな自分に陶酔してしまう。
実際はアクションひとつ起こさずに妄想しているだけ。
そんな自分に気付いて、また切なくなる。

コンコン

誰かのノックの音でハッと我に返る。
余談だが我に返ってしまうと「恋する自分」なんて、実に滑稽で笑えるものに見えてしまうものだ。


「はい、どうぞ」

「失礼します。ハヤテ君、ナギが部屋まで来て欲しいそうなので、手が空いたら行ってもらっていいですか?」


ノックの音の主はマリアさん。
お嬢様がマリアさんを使って呼び出すだなんて、ココに来てからは一度も無かった事だ。
一体なんだろう?


「かしこまりました。すぐ行きます!」

「ええ、お願いしますね」


あまり考えもせず、ふたつ返事で部屋を飛び出した。
この呼び出しがこれからの僕の運命を大きく変えることも知らずに…


コンコン

「あ〜、ハヤテか?」

「ハイ」

「いいぞ、入ってくれ〜」

「ハイ、では失礼します」


お嬢様の態度はいつも通り。特に気にもせずドアを開けてみると、アーたんも一緒に姿勢を正して待っていた。
お嬢様とアーたんがこんな風に僕を呼び出すのも初めて…というかこの二人が一緒というのもあまり見た事が無い。


「あれ…アーたん?」

「よく来てくれましたわね、ハヤテ」

「ああ、アーちゃんも私が呼んだ…というか、私たち二人でお前を呼んだと言った方が正しいな」

「…そうですか」


色々と初めて尽くしだった事で、ようやく僕もこのただならぬ雰囲気を察して何かしらの事件を覚悟した。
一体どんな言葉が僕を待っているのだろう。


「まあ立ち話もなんだから、座ってくれ。ホラ、そこのイスに…」

「ハイ、では失礼して…」

「わざわざすまんな。マリアを使って呼び出して改まった話をするのは、他でもないハヤテの事だ。いくつか質問するから答えてくれ…答えたくないものには答えなくても構わない」

「ハイ」


改まった雰囲気に、さすがに緊張してきた。
最近は特に問題も無かった気がするけど、何かあったのかな…?


「なぜ私にはこの物語で出番が無い!?」

「ほえ?」


あまりに唐突かつ意味不明なお言葉に、変な声が出た。
出番って…?


「ナーちゃん…その質問は作者にする事ではなくて?」

「おおっと、すまんすまん…こんなふいんき久しぶりだっただから素の自分が出てしまった!テヘペロ」


一瞬にして雰囲気台無し。
というかさっきはスルーしていたけど、この二人の呼び方って…?こんなに仲良かったっけ?


「えーっと…それで僕への質問…というのは?」

「ああ、それそれ!お前、ヒナギクの事好きだろ?」


ギックウウウウ
と心臓が鳴ったような気がした。
脳みそがこの展開に追いつかない。


「え…え?ええ!?」

「否定しないんだな…」

「そうですわね」


なんか二人して残念な雰囲気を醸し出している。
この後の言葉が怖い。


「まあそんなのお前を見てればすぐに分かる…というワケで、アーちゃん!」

「ハイ。ハヤテ、これを…」

「?」


といってアーたんが差し出すは2枚の紙切れ。
受け取って見てみると、それは今流行りの恋愛の泣けるマジな映画のチケットだった。


「コレは…?」

「見れば分かるだろ?映画のチケットだ」

「はぁ…」


もちろんそんな事を聞いた訳では無いが、その後の会話に困ってしまう。
どういう聞き方をすればこの展開に追いつけるものなのか…?


「このチケットはな、私たち二人の汗と涙の結晶なのだ!」

「その通りですわ!」

「…それで、その結晶を何故僕なんかに?」

「そりゃあ、私たち…」

「その映画、全く興味ありませんし」


ズコー
という音をたてながらコケた。
汗と涙の結晶なのに…


「という事だ。お前にやる!誰か誘って行って来たらどうだ?」

「ハイ、ありがとうございます…」


いまだに雰囲気が掴みにくい所ではあるけど、流れからかろうじて察するに、これでヒナギクさんを誘えって事なのかな…?


「ゲフン ヒナギクとか ゲフフン 誘って行けば ゲフフフン 良いんじゃないか」

「ケホッ そうですわね ケホケホ ヒナなら ケホン 喜びますわ」


全部言っとるー!
今度はヘコーという音をたててコケた。


「では二つ目の質問だ。ハヤテはこの映画、誰を誘って観に行くつもりだ?」

「えーっと…では、ヒナギクさんを…」


改めて姿勢を正しての質問。
なんか言わされた感が強烈だけど、僕の意思でもあるから何の問題も無い答えだ。


「な、なにーー!?あのヒナギクを誘うのか!!?お前、本当にイケるのか?」

「ハヤテったら、まさかあのヒナを…成長したのですわね…嬉しいですわ…」


えーっと…何でしょうかこの茶番は?
僕はどんなリアクションをしたら…


「では、三つ目を私から。…ハヤテの好きな人は…誰ですか?」

「!!」


急に空気が締まった気がした。
この質問には本気100パーセントで答えなければならない、そんな気を起こさせる雰囲気になった。


「答えたくないのであれば、答えなくても構わんのだぞ?」

「ええ、ハヤテ…」


一度目を瞑る。
お嬢様と過ごした日々、アーたんと過ごした日々を思い出す。
そして最後に、ヒナギクさんの事を…

覚悟は決まった。


「僕の好きな人は…ヒナギクさんです!」

「なるほど…本気なのだな?」

「ええ、お嬢様にウソなど言いません!!」

「私…といっても、アテネの方ですが。好きな人というのは私でもないのですね?」

「ハイ、ヒナギクさんです!」


覚悟して言った。
これに何を返されても後悔しない。するもんか。


「よーし、じゃあ頑張って来い!ハヤテならいける!!何より、私がついてる。」

「私も、及ばずながら応援してますわよ」

「お嬢様、アーたん…」

「あらあら、お話は終わりですか?」

「「「マリア(さん)!?」」」


マリアさん、いきなりの登場。
まるで待ってましたと言わんばかりのタイミングだ。


「ハヤテ君、貴方には貴方の話を聞いてくれる人がたくさんいます。…もちろん私もです。だから、何かあったら遠慮なんていりませんからね?」

「そうだハヤテ!私の執事なら、好きな女くらい口説き落として来い!借金の事なんか気にしないでいいからな!!」

「私も、ハヤテが好きです。…だから、その大好きな貴方の幸せを望みます。過去の事を気にする必要もありません」

「…っ」


思わず涙が出てきた。
僕は一人ではないし、この恋も僕一人で悩む事でもないのだと分かったからだ。
というか、思い返してみたら完全に僕のために会話の流れを作ってくれていたのだ。

もう迷いは無くなった。
僕はヒナギクさんが好きだ。誰に咎められてもコレだけは譲れない!


「皆さん、ありがとうございます…僕は、嬉しくて嬉しくて…」

「おっと、ハヤテ!!その言葉はヒナギクを落としてから言うんだな。アイツはお堅いぞ!?(笑)」

「そうですね、皆さんに良い報告が出来るように頑張ります!!」

「あとハヤテ、この映画を観に行って告白しろというワケじゃないぞ?このチケットは私たちからの支援物資の一つに過ぎない…戦況が思わしくなければ、引く事も重要だ」

「ハイ、報告がいつになるか分かりませんが、全力を尽くします!!」


なんか途中から兵士の送別会みたいになってるような…


「よ〜し、じゃあ今夜は一発景気付けだ!…マリア!」

「ハイハイ、お持ちしましたよ」


お嬢様の一声で、マリアさんが台所に行き、戻ってくる。
と、マリアさんの手にあるアレは…!
少し刺激的なジュース(笑)ではないですか!?

ツッコむ暇も与えられずに全員分がグラス(アーたんにはひと口分だけ)に注がれる。


「よし、皆に行き渡ったな?では、ハヤテの恋の成就を願って…カンパーイ!!」

「「「カンパーイ!」」」


僕自身あまり乾杯の席に慣れていない事と、今回の乾杯のテーマもあり非常に照れくさい。
けど、僕の右手にあるグラスの中のものを飲み干せば、きっと「しあわせの花」を手に入れる覚悟が出来るのだと思った。
その覚悟を決め、ひと思いに飲み干す。
…うん、久しぶりに少々刺激的。


「お!ハヤテ、グラスが空だな…では私自ら注いでやろう!」

「お嬢様、ありがとうございます!…いただきます!!」

「はーはっはっは!いいぞ、ハヤテ!もっと飲みんしゃい!」

「ハヤテ君、私からも注がせてください」

「マリアさん、ありがとうございます!!…いただきます!!」

「さすがハヤテ君、もう一回カッコイイ所見せてください」

「ええ、今夜はいくらでも飲みますぞ!!」


…終いにはただのどんちゃん騒ぎになっていた。
そして僕以外全員飲みすぎて寝てしまった。(アーたんはおねむの時間なのでひと口で寝てしまいました)

眠ってしまったお嬢様たちに布団をかけ、縁側に出て夜空を眺めていた。
ヒナギクさんをデートにか…昔、そんなことを生徒会の三人組にやらされた事があったな〜。
あの時もホントに楽しくて、でも嫌われているんじゃないかって怖くて…
今は、お嬢様が、アーたんが、マリアさんが、西沢さんが…皆がついている。勇気は100倍だ!!


「あら、ハヤテ君?」

「ヒナギクさん!?こんな時間に…」


突然のエンカウント。
と同時に心臓がバクバク言い出した。
さぁ、どうやって切り出そうか…


「ハヤテ君、アリスはナギの部屋かしら?すぐ戻るって言ってたけど…」

「ああ、アーたんならお嬢様のお部屋で寝てますよ。だいぶお疲れのようだったので、今夜はこのままお休みです」

「そうなんだ。マリアさんもいないから心配しちゃった…ところでハヤテ君、ちょっとお酒臭いわよ?」

「え゙…やだなぁ、ヒナギクさん。ぼかぁまだ16歳でござんすよ…」


あのダメに…桂先生と一緒に暮らしていたとなると、ヒナギクさんの嗅覚も研ぎ澄まされているようだ。
いえいえ、僕らは少し刺激的なジュース(笑)を飲んでいただけなので、決して飲酒など!!


「まったく、未成年でしょ!?黙認なんてのも立場上出来ないし、ホントに頼むわよ…?まあ、ハヤテ君もストレス溜まってるわよね…私からはガミガミ言わないけど」

「え…ハハハ…」

「でも、あんまり飲みすぎるとすぐお姉ちゃんみたくなるわよ!?…ああはなりたくないでしょ?」

「ハイ、断じて」


なんとかヒナギクさんのお目こぼしも頂けた。(いや、飲酒ではないのでそんな必要もありませんが!!笑)
さてさて、映画の話…


「あの…ヒナギクさん?」

「なーに?」

「あの、今週末お暇ですか…?あ、いや、今週末が無理でしたらお暇な時が出来るまで待ちます!!」

「どうしたの?改まっちゃって…あ、スケジュールね。今週は日曜ならお休みよ」


いやったあ!と、ガッツポーズをしたい所だけど、まだそれは先だ。
まだ本題にすら入っていない。


「えと、あの…でしたら、良かったら僕と一緒に、この映画を観に行きませんか!?」


言えた!言えたぞ!!
あとは野となれ山となれ(←それは違う気がする)…チケット2枚をかざし、ヒナギクさんの返事を待つ。
かざしたチケットをヒナギクさんは手に取り、書いてある情報を読む。


「ハヤテ君から映画のお誘いなんて…また美希たちからの差し金かしら?」

「いえ、今回は100パーセント僕の意思です!!」


そう、チケットは貰い物だけど…誘う意思は全部僕のものだ。
笑顔でヒナギクさんの返事を待つが、内心はヒヤヒヤだった。


「そう…なら嬉しいわ。是非行きたいわ」

「やった…」

「あ、でも日曜は朝ちょっと実家に行くから…駅前で待ち合わせでいい?」

「ええ、是非!!」

「フフッ、楽しみにしてるわね…じゃあおやすみ。もう飲んじゃダメよ?」

「気をつけます。…おやすみなさい!」


という訳で、あっさり成功!日曜日、楽しみすぎる!!
それから3日間、僕の脳みそは何百、何千とヒナギクさんとデートする姿をシミュレートするのだった。
確実に来る幸福を待つ時間こそが至高と言うが、まさにその通りなのだった。

ヒナギクさん、今度は前みたいな失敗はしません。
だからどうか…僕の事を見ていてください!!


つづく


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【あとがき】


タイトル前より先に進まずに終了です。
だいぶ長くなってしまいましたので…

今回で、ハヤテの恋における手枷・足枷を取り外しました。あとは本人の勇気次第です。
アテネ関連はもっと殺伐とした感じにも出来ましたが、ハヤテにはヒナをまっすぐ見てもらいたいと思って書いてるので、ハヤテの恋に対し本気の憎悪を抱く人間を出しません。あくまでコメディ主体です。
失恋を迎えてしまったナギ・アリス(アテネ)、それぞれがハヤテの幸せ・ヒナギクの幸せを考えた末に精神的に成長した結果の行動と読んで頂けたらと。
ちなみにナギもアリスもマリアも、ヒナの想いを知ってます。
彼女たちも、ハヤヒナがさっさとくっつくように全面協力する形となります。

ナギとアリスは良いコンビ(ねぼすけ・世間離れコンビ)になると思うんですが、原作では絡みが本当に少ないです。
コレもキャラ多すぎの弊害かと…
アーちゃん・ナーちゃん話は次回に真相をやる予定です。

あと、マリアさんが持ってきたのはあくまでジュース(笑)です!
未成年の飲酒はいけませんよ〜。

ご感想・ご質問などお待ちしております。
ありがとうございました。