Re: 新世界への神話Drei 12月24日更新 ( No.9 )
日時: 2012/01/04 19:08
名前: RIDE
参照: http://hinayume.net/hayate/subnovel/read.cgi?no=7129

あけましておめでとうございます!

2012年も更新頑張っていきたいと思います!
皆様もよい年になるよう頑張ってください!

まずは、レス返しから!

絶影さんへ

>どうも絶影です
>それでは早速感想に!

去年はありがとうございます!
受験のご健闘祈っています。

>前回、エイジに喧嘩を吹っ掛けた佳幸。
>そのバスケ勝負ではやはり兄の方が一枚上手で、
>得点を入れられ続けてしまうエイジ。

エイジはまだ中学二年で、佳幸は高校一年。
中学と高校ではレベルが違いますからその差が出たということです。

>しかし、疲れを見せ始めたのは受験勉強に追われていた佳幸だった。
>やばい…人事には思えませんね…(笑)

受験、本当に頑張ってくださいね。
それしか言えません。

>そんな兄を気遣うエイジでしたが、佳幸が伝えたかったのは
>「自分で選べ」という感じだったようですね。
>いや〜こんな兄がいたらなぁ〜とか思ったのはおそらく私だけではない!…はず。
>佳幸の言葉を受け、偶然見ていた八闘士も奮起したようですね。

確かに、出過ぎた兄ですよね、佳幸は。
それ故にエイジもいろいろ複雑な思いを抱いていますが、尊敬はしています。
八闘士の間でも、塁と戦った時のようにエイジとは違った意味で皆を励ましますからね。

>彼らはそれぞれの想いを抱いて戦いに挑む、という感じでしょうか。
>次回が楽しみになってきましたね!
>それではまた♪

楽しみにしてくださり嬉しく思います。
本当に暇な時に見てくださってくださいね。


残菊さんへ

>どうも!
>残菊です。
>ひさしぶりですねぇ
>ここにくるのもひさしぶりで(;´Д`)

お久しぶりです。
残菊さんのことを待っていましたよ。

>長い間感想書けなくてすいませんでした(m´・ω・`)m
>でも、今までの分は影ながら読ませていただいていたので
>内容の方は理解・・・・・・してると思いますw

読み続けてくださってありがとうございます。
頭が上がりません。
感想は書けるときでいいですからね。内容もまあ・・・・大体理解してくださればいいので。

>とりあえず、今回のお話の感想を
>今回だけになりますが・・・。

今回だけでも嬉しいです。

>兄弟でバスケ勝負ですかぁ
>いいですね、兄弟って・・・(´・ω・`)
>自分は一人っ子なので、そういうのよく分かりませんが

私は下の方(しかも女)にいるので、結構付き合い方とか大変です。
でも、あまり兄とか意識することはありませんよ。
威厳もありませんし。

>でも、やはり兄の方が強いのって定石なんですかね

まあ、上は先に行きますからね。
それに加えて佳幸も、エイジに追い越されたくないと努力していますので。

>それでも、頑張り。
>点を取りましたね!

エイジの素質は、佳幸を超えると言われています。
ですから、まだまだ未熟な面はありますがときに佳幸をも上回ることもあります。

>受験勉強に追われていた佳幸は、運動をしていなかったせいで
>体力的に不利(?)なんですねぇ
>自分は運動も嫌いなので分かりませんが(笑´∀`)

私はバスケットをやっていましたので、長い間プレイしていないと体力はもちろんのこと、試合勘が萎えたりシュートを腕力だけで打ってしまうことがあります。
佳幸はちゃんと足の力を使ってシュートしますが、試合勘はエイジより劣っています。

>>絶影さん
> いや〜こんな兄がいたらなぁ〜 には、一人っ子ながら同意しましたw

佳幸は理想の兄といったイメージを持たせています。
当初は主役格として考えていたので、思い入れは大きいです。
私も、こんな兄貴がいたらなぁ・・・・。

>彼らがそれぞれの想いを選択し、今後の戦いに挑む・・・。
>いいじゃないですか!
>燃えますね!

私はこういう展開が好きです。
男たちが葛藤を経て、立ち上がろうとする瞬間というのはカッコいいじゃないですか。
まあ、真っ直ぐに生きることができるのも難しいですけど。

>でわ、次回の更新待ってますね!
>ガンバってください!!
>それでわ〜
>お休みなさいです
>バイバイ(´・ω・`)ノシ

はい、頑張らせていただきます!
待たせた分楽しんでくれると嬉しいです!

>そういえば、RIDEさんって新潟のご出身(?)なんですよね・・・?
>実は、自分も新潟なんですよーw
>日本って狭いなぁ、と思いました(笑´∀`)

本当、広いようで狭いですね(笑)
同じ新潟出身者がいてうれしいです!

>でわわ。

そちらも頑張ってください!


絶影さん、残菊さん、感想ありがとうございました!

それでは、新年初めの更新行きます!
今回も長めです。


 3
 それから翌日、ナギが出発する日を迎えた。

「私と一緒に行くと言っていた奴らは、全員いるな」

 ムラサキノヤカタにはナギをはじめとしてハヤテ、ヒナギク、翼、大地、シュウ、花南、伝助が集っていた。マリアと千桜は、彼らの見送ろうとしている。

「・・・・おまえは絶対に連れて行かないぞ」

 どこかじれったそうにしている千桜にナギは釘を刺した。先日、連れて行けなんて要求し、それを断られた千桜だが、いざその日になるとやっぱりいてもたってもいられなくなってしまう。

「スキだらけのおまえなど、危なっかしいだけだからな」
「なっ!おまえが言えたことか!」

 ムキになって言い返す千桜だが。

「スキだらけでもなんでもいいですけど、僕たちについて行くなんてやめておいた方がいいですよ」

 そう言って、この場に現れた人物がいた。

「今回ばかりは、僕たちに他人を守るなんて余裕はないですから」

 そう口にしているのは、佳幸であった。

「やはり来ましたか、佳幸君」

 伝助が彼に目をやると、佳幸も応じた。

「精霊界を歩くにあたって、詳しい人は多い方がいいですよ」

 そう小気味よい笑顔を浮かべる佳幸。それだけで、彼から頼もしさというものが感じられた。

 そんな彼に、花南が近づいてきた。

「あんたは来ると思っていたわよ、佳幸」
「僕も、見過ごしたくないと思ったからね」

 佳幸は穏やかではあったが、その眼には強い意思が宿っていた。そんな彼に、花南はわざとらしくため息をつく。

「あんたがいなくても、私がいるから十分なのに」

 いつものような、他人を突き放すような態度をとる。しかしそんな彼女の前で、今度は逆に佳幸がため息をついた。

「見過ごせないのは花南さんに対しても、さ。花南さんが危なくなったら僕が盾になって守るから、安心して戦って」
「それであんたが倒れたら、私が起こしてあげるわ」

 花南は憮然とした、しかしどこか照れくさそうに言い返した。

「私はあんたの背中を押す。だからあんたも心置きなく頑張りなさい」

 そんな会話を交わしながら、顔を見合わせる二人。敵意といった刺々しいものはなく、それでいて友情を超えた思いが両者とも込められていた。

 それを感じ、尚且つ意味を悟ったものたちはそれぞれ照れたり、感心したりする。

「おいおい、二人だけの世界に入るなよ」

 とそこへ、また新たにこの場へとやってきた者がからかいの声をかけた。花南たちはそちらを見る。

「達郎、氷狩、塁じゃない」

 三人の中で、達郎は続けた。

「これだけ仲間がいるっていうのに、蚊帳の外にされちゃあなぁ」
「ゴメンゴメン。でも味方が増えて嬉しいよ、達」

 幼なじみである佳幸と達郎は、長い付き合いによって築かれた固い絆で結ばれているのだということをお互い改めて理解していた。

「氷狩君、塁君も来てくれましたか」

 一方の伝助も、達郎と一緒に訪れた二人が共にいることに喜びを露にする。

「伝助さんたちだけにいい格好はさせませんよ」
「このままじゃ、なんか負けた気がするっスからね」

 氷狩と塁は、揃って不敵な顔を見せた。

 そんな中、どこからかエンジン音が聞こえてきた。こちらに近づいているらしく、それは段々と大きくなっていく。

 一体なんなのだろうかと思っていると、ムラサキノヤカタの敷地内に、二人乗りのバイクが勢いよく入ってきた。

 突然のことなので不審者だと思い、ハヤテはナギを庇うようにバイクのほうへと身を前に出す。

「心配ないですよ」

 そんなハヤテに、伝助があれは悪者ではないというように肩を叩く。

 バイクは、ハヤテたちの目の前で止まった。そこで運転手が降り、歌ぶっていたヘルメットを脱いだ。

「悪かったな、驚かせて」

 優馬は、ハヤテとナギに向けて謝罪しながら、自分のバイクを指差す。

「こいつを停めるのはどの場所でいいんだ?」

 ハヤテやナギナギは呆然としてしまう。その間に優馬の後ろについていた人物も降り、彼に倣ってヘルメットを取った。

「どうしたんだい?」

 拓実がそう尋ねたことにより、ハヤテは我に帰った。

「あ、バイクはそちらに停めてください」
「わかった」

 ハヤテが指した方向へ、優馬はバイクを押して進んだ。

「あの人って、確か医者だったわよね?」

 ヒナギクが小さな声で花南に尋ねた。

「ええ、そうよ」
「医者にバイクって、似合わないと思うけど・・・・」

 白衣の男が、バイクを高速で乗り回す姿を想像してみる。

 どう考えてもミスマッチだ。

 医者が真面目な性格を連想される職業なのに対し、バイクは型破りなものの乗り物だというイメージを湧かせる。この二つはミスマッチのような気がするだけでなく、バイクは事故が多く当然怪我もしやすいので、医者が自らそんな乗り物を使っていいのか注意したくなってしまう。

「色々な奴がいるっていうことよ」

 花南は深く考え込ませないことを言った。

 バイクを停車させた優馬が戻ってきた。彼をはじめ、拓実、達郎、塁、氷狩。いずれも昨日の佳幸とエイジの1on1を見物していた者たちだ。

 佳幸の言葉で、彼らは立ち上がった。各々の心に影響を及ぼすほど、大きかったのである。

 だが・・・・。

「エイジはどうした?」

 優馬は辺りを見渡し、エイジの姿が見かけないので優馬が尋ねてみる。

 兄である佳幸の言葉を直で受けたエイジ。あれに対して、彼が何の思いも抱かないとは思えないのだが・・・・。

 優馬の問いに対し、佳幸は首を横に振った。

「僕よりかなり早く家を出たみたいですけど、どこに行くかも告げなかったから・・・・」
「そうか・・・・」

 エイジは来なかった。

 そのことについては別に責めるつもりはなかった。エイジは自分たちよりも深く迷っていたのだ。悩みに悩みぬいた結果、彼が出した答えがこれであるのならば咎めることではない。エイジはただ逃げたいというだけで身を引くような人間ではないということは、ここにいる全員が十分にわかりきっている。

 それでも、エイジがいないということにやはり気落ちしてしまう。こんな空気を払拭しようと、達郎が明るい口調で盛り上げようとする。

「ま、まあ俺たちだけで十分だろ!あんなチビの力を借りなくっても・・・・」
「誰がチビだって?」

 その時、聞こえてきた声に一同は顔を上げる。

「遅れてきたっていうのに、十分偉そうじゃないっスか」

 タイミングを見計らっていたかのように、物陰からエイジが縁側に姿を表した。

 一同の反応を見て、満足そうにしながら。

「・・・・まったく、趣味が悪いぞ」

 毒づきながらも、佳幸は笑顔だった。ムラサキノヤカタの住人であるハヤテやナギを除く皆が、同様の表情をしていた。

 エイジは縁側から降りて、皆の方へと近づいていく。

「大丈夫っスよ、俺は」

 自分自身を指しながら、彼は笑って見せた。

「もう逃げない、立ち向かうって決めたから。このまま立ち止まったりしないっスよ」

 静かな決意。それにはエイジの意志が強く来られているのを全員はっきりと感じた。

 躊躇いや恐怖などない。あるのはただやってやるという思いを。

「生意気言いやがって、この!」

 そんなエイジを、塁は満悦したといわんばかりにエイジの身体を叩く。これをきっかけに、全員手荒い歓迎をし始める。

「ちょ・・・・ストップストップ!」

 口ではそう言いながらも、祝福されているエイジは嬉しそうであった。

 そんな中で、彼らから少しはなれていたナギが恐る恐るといった様子でエイジに歩み寄ってきた。

「どうした?」

 エイジは彼女に気付き、何気なく尋ねる。佳幸たちもエイジを解放して、また何か揉め事
にならないようにと心配しながら二人を見守る。

「その・・・・」

 ナギはどこかもどかしそうにしながらも、言葉をつむいだ。

「あ、ありがとう・・・・」

 普段からこういうことには慣れていないのだろう。彼女の気恥ずかしさと、それでも礼を言わなければという様子はどこか微笑ましい。

「・・・・別に、あんたのためっていう訳じゃない」

 正面から礼を言われたエイジも、照れ隠しをしてしまう。

「俺は力ずくでも霊神宮へ行く。それだけだ」
「まったく、見栄を張って・・・・」

 佳幸をはじめとして、皆が苦笑を浮かべた。強がってはいるが、これでお互いまずは一歩近づいたのだ。

 とても小さい一歩だが、お互いが認め合う第一歩を。

「皆さん、そろそろ出発しましょう」

 全員がそろったところで、シュウが声をかける。

 彼も達郎たち、とくにエイジは来ないだろうと踏んでいたために、彼らが集まってくれたことには感謝をしている。

 霊神宮へ行く目的には、彼の家族とも言える主の救出が含まれているからだ。

「ちょっと待ってくれ」

 そんな彼に優馬が一声掛けた後、門の方へと呼びかけた。

「おまえたち、隠れてないで出てきたらどうだ」

 言葉の端には若干の脅迫が込められていた。出て来なきゃ、どうなるかと。

 すると、門から申し訳なさそうに咲夜、伊澄、歩、生徒会三人娘がこちらに入ってきたの
だ。

「おまえたち!」

 彼女たちの姿を見てナギは声を上げる。まさか今この場所を訪れるなんて思いもしなかったのだろう。

「いやあ、ナギがなんか企んでいるのを知ってな。ウチらは手ぇだせへんかもしれへんけど、せめて見送りにと思うてな」

 咲夜の言葉に、伊澄と歩も同じ考えだと言うように頷く。

 友だちの自分に対する思いにナギは胸が温かくなるのを感じた。事情もよくは知らないの
に、こうして自分を心配してくれている。

 それだけで、ナギは強力な武器を得たような気がした。

「・・・・で、あんたたちは?」

 一方で、ヒナギクは横目で三人娘たちを睨む。彼女たちの場合、その行動においては単なる善意だけではない。面倒なことを考えているに違いない。

「いや、我らも見送りにと・・・・」
「じゃあ、その持っているビデオカメラは何?」

 後ろ手に隠してはいたが、やはりヒナギクはお見通しだ。

 大方、この三人は面白い映像が取れるということでついていく気だったのだろう。

「悪いけど、連れて行かないわよ」
「そんな!」

 文句を言おうとする三人を無視して、ヒナギクはしゅうに向き直った。

「行きましょう」
「そうですね」

 見送りは嬉しいが、長々とそれに構っているわけにはいかない。

 水を差された空気を引き締めるために、シュウは咳払いをしてから再び話し始めた。

「念のために説明しますが、私たちはまず精霊界へ行き、そこから更に霊神宮へと向かいます」

 シュウの話に、皆耳を傾けている。

「本来ならここから直接霊神宮の中へと入り込めますが、あちらはそれを遮断する備えをしているでしょうし、いきなり敵陣の真ん中に入り込むのも、あまり良いとはいえませんしね」

 わかりやすく言えば、移動手段を制限されたということだ。ワープを近道に例えると、進入禁止として通行止めされているということである。だから、遠回り指定校ということを言いたいのだ。

 これに対して、達郎が口を挟んできた。

「けど、外からも入り込めないようにしているかもしれないだろ?霊神宮は精霊界の上空にあって、しかもただ空を飛んでも発見されないようにしてあるんだぜ」

 霊神宮は常人には察知されないような仕組みになっており、精霊の使者でも裏切り者であるならば入るどころか、捉えることすらできない。それ以上の力の持ち主か、特別な術を施せば可能だが、ここにいる全員はそれに該当しない。

 どうあっても霊神宮に入るのは難しいのではないか。

 しかし、何も手がないわけではなかった。

「その点は心配なく。三千院さんに何か考えがあるようです」

 それを聞いて、全員がナギに注目する。

 一体どうするつもりなんだ。全員が視線でそう訴えかけていた。

 そんな彼らを前にして、ナギは気分が良くなっていた。

「まあ、着いたら教えてやる」

 わざとらしくもったいぶる。どこか不満そうな顔をしている周囲に、彼女は楽しみにしていた。

 まるで、ドッキリを遂行しているかのように。

「では皆さん、行きましょう」

 シュウの言葉と共にハヤテたちは地面に浮かんだひとつの円に囲まれた。この円によって、精霊界へと導かれようとしているのだ。

「ハヤテ君、ナギ、気をつけてくださいね」
「どうあっても、必ずここに帰ってきなさい」

 いよいよ始まろうとする戦いにハヤテが気をを引き締めていると、留守を任されるマリアと新入居者のアリスが声をかけてくる。

 ハヤテがそちらに応えようとした時であった。

「きゃ!」
「な、なんや!?」

 円の外にいた咲夜と伊澄が、まるで突き飛ばされたかのように円の中へと入ってきたのだ。

「な、おまえたち!?」

 ナギは驚愕する。この二人はふざけ半分で円の中に入ることはしない。

 入り方からして誰かが後ろから押してきたのだろう。一体誰かと考えるナギだが、その暇
はなかった。

「西沢さん?」
「あんたたちまで!」

 歩、美希、泉、理沙、そして千桜までもが二人と同じように円の中へ足を踏み入れてしまい、そのまま中に倒れ込んでしまう。

「み、皆さん早く離れて・・・・」

 ハヤテがそう言いかけるが、間に合わなかった。

 ハヤテたちの姿は、消えた。精霊界へと移ったのだ。

 今この場にいるのは。

「あなたは・・・・」

 マリアと。

「一体・・・・?」

 アリスと。

 無言のまま彼女の視線を受けている、仮面をつけた男がいた。

 いつ、どのようにしてこの男が現れたのか二人にはわからなかった。咲夜たちが突き飛ばされた時に、はじめてこの男が存在することを知ったのだ。

 おそらく突き飛ばした犯人はこの男だろう。そうだとしても、何の気配も感じさせずにこんな近くまでいるという神出鬼没さに、二人は薄気味悪いものを感じてしまう。男がつけている、一つ目のような仮面のデザインも、不審を抱かせる材料ともなっている。

 その男は、二人の問いには答えず、アリスの方を向いてこう告げた。

「いずれまた、彼らが帰って来た後会うことになるだろう。その時君は、天王州アテネとして戻っているだろうが」
「!!どういうことですの!?」

 何故、天王州アテネのことを知っているのか。それにハヤテたちが帰ってきたとき、戻っているというのはどういうことなのか。

 さっぱりわからない。しかしこちらの混乱をよそに男はやはり説明をしない。

「今の君にできるのは、彼らの帰りを祈っていることだ」

 それを最後に、男の姿は消えていった。

 マリアやアリスは、何がなんだかわからずその場で立ち尽くすしかなかった。



「どうだったかい?再会は」

 ムラサキノヤカタに突然現れ、謎を残してきた仮面の男は背後からかけられてきた声の主の方を見る。

「あれは再会というわけではないさ。なんせ向こうは天王州アテネとしての記憶がないのだからな」
「そういえばそうだったな」

 そう言って、仮面の男の元へと歩み寄る。仮面の男も長身な方だが、この男も負けていない。その美貌は、頼もしさと力強さ、そして好感が持てる爽やかさがあった。

 女性が通りすがれば、間違いなく振り向かせるであろうその男は、仮面の男に謝罪を入れた。

「しかしすまないな。彼女たちを巻き込ませるなんて、君の気にはそぐわなかっただろうに」
「確かに気に入りはしない。だがあいつがいる。あいつなら、三千院ナギだけでなく、あの少女たちを守れるだろう」
「そうだろうね。なにしろ彼は君の・・・・・」

 その時風が一層激しく鳴って、男の言葉は最後まで聞き取れなかった。

「・・・・ところで、おまえも行かなくていいのか?」
「もちろん行くさ。君に助けられてから、このときをずっと待っていたんだ」

 男はそこで、目を鋭くさせる。

「この世界に落ちて、死を覚悟したところで君に助けられたんだ。君には本当、感謝をしても尽くせないな」
「礼はいらない。私はただ、目の前の人を助けたかっただけだからな」

 仮面には隠し切れないほどの正義感を感じさせ、男は発破を掛ける。

「だからおまえも、自分の信じて行くがいい、ジュナス」

 初めて会ったときはその仮面に驚きはしたが、その見た目とは裏腹な、しっかりとした強さと優しさを後に知った。

 正直、その人間性には素晴らしいと感じた。この男に会ったことは助かったこと以上に嬉しかった。

 それを忘れないようにと誓うかのごとく、男は大きな声で応えた。

「ああ!行ってくる!」

 仮面の男にジュナスと呼ばれた男。

 彼こそは、黄金の精霊翼のフェザリオンの使者であった。一年前霊神宮を抜けだし、龍鳳を救い出したものの行方不明となっていた男は、隣にいる仮面の男に救出され、現在まで行動を共にしていたのだ。

 そして今、ジュナスは仮面の男に別れを告げ、霊神宮へ戻ろうとしていた。

 その胸に、信念を灯して・・・・。




新年最初はどうだったでしょうか?

仮面の男については、当分は登場はまだないでしょう。

それでは、何か指摘があったらよろしくお願いします。