Re: 続・新世界への神話(9月28日更新。ヒナギク編) ( No.83 )
日時: 2011/10/05 19:29
名前: RIDE
参照: http://hinayume.net/hayate/subnovel/read.cgi?no=3929

十月に入りました。
これからもっと気温は低くなっていきます。
寒いのが苦手な私にとっては辛い時期です。

では、レス返しから


絶影さんへ

>どうも絶影です

>では早速感想に!

感想ありがとうございます!

>おまけとは千桜の話でしたか
>ダイが石にされてしまったと知り、自分も助けに行きたいと思う彼女でしたが
>翼の言葉によって何とか納得はしたようですね

まあ、渋々従ったというところでしょうね。
翼は大人ですから、どうしても言い負けてしまいます。
それでも、自分が行っても何もできないとわかっているからこそ、千桜も引き下がったのです。

>最後のマリアさんが何だか物寂しい感じが出ていて面白かったです(笑)
>あれ?後ろに何かの気配…?

マリアは今のところ、浮いた話はありませんからね。
それよりも後ろの気配って、あれ?私のところにも・・・・?

>そして今回からはヒナギク編に入りましたね
>生徒会室で悩むヒナギクに突然現れ、暴言を言う花南
>彼女の思惑は一体なんなのか気になりますね

花南が何を考えているのか、今のところはまだはっきりとしないでしょう。
口にもしないでしょう。

>それでは更新お待ちしてます♪

はい、できましたよ!

絶影さん、感想ありがとうございました!


最初に言っておきますが、ヒナギクファンの人には辛くなるかもしれません。

それでは、本編どうぞ。



 2
 得物の先を向けて、ヒナギクを挑発した花南。

 自分の剣技に大きな自信を抱くヒナギクは、こんな相手にやられるはずはないと疑わなかった。ここで叩きのめして、二度と大きな態度を取れなくしてやると考えていた。

 だが、しかし。

「くっ!」

 花南に棒の先で大きく突かれたヒナギクは、後方に倒れこんだ。

「これで五回、私に倒されたことになるわね」

 棒の先をヒナギクに向け、花南は不敵に笑う。
 あれから、ヒナギクは一方的に打ち負かされていた。押しても引いても花南に人たちすら浴びせることすら出来ず、完全に遊ばれていた。

「な、なんで・・・・」
 容易に突き飛ばされることが、ヒナギクには信じられなかった。

 その理由は至極簡単であった。今のヒナギクは怒りのままに剣を振るっているため、自然と大振りとなってしまっている。だから、隙を突かれ易く、返り討ちを喰らってしまっているのだ。

 それでも、ヒナギクならすぐにそのことを気付けたかもしれない。だが、もうひとつ信じられないことがあったため察することが出来なかったのだ。

「いつもの白桜とは、違う・・・・?」

 そう。手にしている白桜から、力が感じられないのだ。ゴールデンウィークのアテネでは、大きな力が剣に宿っていることが良くわかっていた。だが、今はその恩恵を受けているという実感が、まったく感じられないのだ。

「その剣はわかっているようね。今のあんたには力を貸すべきではないって」

 花南は白桜とヒナギクを交互に見ながら言った。

 白桜は正義を成すための剣。そのため、ただ苛立ちをどうにかしようとする今のヒナギクには力を貸すべきではないとしているため、ただの剣でしかないの状態なのだ。無論、花南は白桜がどういう剣かは知らないが、ヒナギクが剣を扱いきれていないというのは、手合わせしてわかったのだ。

「自慢の武器もその様じゃあ、このケンかは私の勝ちね」

 そう。ヒナギクにはもう、勝つ見込みなど無かった。

 そんな彼女に、花南は何を思ったのか近づいていき、彼女の頭をつかみ出した。

「キャッ!あっ・・・・」

 そして、ヒナギクの前髪を止めているヘアピンを剥がしとったのだ。自分のヘアピンが花南の手にあるのを見て、ヒナギクは血相を変えた。

「か・・・・返して!」

 自分にとって大事なヘアピンなのだ。焦った様子でそれを取り返そうとする。

 しかしそれを嘲笑うかのように花南はかわしていき、そして彼女はあるところへと足を踏み入れた。

 そこは、時計塔からの絶景を眺めることができるテラスであった。ヒナギクは青ざめ、立ち止まってしまう。高所恐怖症であるヒナギクにとって、そこは立ち入り禁止の危険遅滞であった。

「どうしたの?追いかけてきなさいよ」

 挑発してくる花南に対して、ヒナギクは彼女を睨みつける。

「わ、わかっているわよ!」

 ヒナギクはテラスに近づこうとするが、中々一歩が踏み出せなかった。しばらくそうやって動けない状態が続いた。

「こ、こんなところにテラスさえなければ・・・・」

 とうとうそんな弱音まで吐いてしまう。

「まったく、これほど甘ちゃんだとは思わなかったわ」

 そのいじけた様子を見て、花南は呆れてため息をついた。

「あんたのその慌てる様子から、このヘアピンがあんたにとってどれほど大切なものかはよくわかるわ。けど、それならどうしてここまで来れないの?本当に大切なものなら、高所恐怖症を乗り越えてまで取り返そうとするでしょ?」

 花南の言葉が、ヒナギクの心に大きく突き刺さった。

「あんたは他人のためなら恐怖を乗り越えられる。それはいいことだけど、ならなんで自分のために同じことが出来ないのかしら。自分自身には嘘がつけないから、私としてはそっちの方がよほど立派なことだと思うけど」

 それは遠慮なしに次々とヒナギクにぶつけていく。

「・・・・まあいいわ。これはあんたに返す」

 ヒナギクにヘアピンを渡す花南。

「それつけて、自分が惨めな敗北者だと言うことを見せしめているといいわ」

 そう言い残し、花南は生徒会室から出て行った。

 一人になったヒナギクは、力尽きたかのようにその場で膝をついてしまう。

 完敗だった。花南に対してだけではなく、何よりも自分自身に。

 花南の言うとおり、自分の大切なものなら相手がテラスにいたとしても取り返しにいくべきだった。だが、高所恐怖症に打ち勝てず、弱音まで吐いてしまった。

 自分はそれだけの存在だったのだ。日頃は生徒会長として生徒を守り、動物に対しても苦手な高いところに登ってまでも助ける。それが義務だとして、弱々しいところを見せられないようにと努めてきたが、自分のことになるとこの有り様だ。

「うっ・・・・うう・・・・」

 悔しさがこみ上げ、こらえきれずにヒナギクは泣いた。

 彼女の中で、白皇の生徒会長であることのプライドは完全に砕かれたのであった。



 生徒会長から出た花南は、すぐさま美希とばったり会った。

「随分と大口を叩いたようだな」

 表情はいつもと変わらないが、その口調には怒気が含まれている。どうやら部屋の中での出来事をこっそりと見ていたようだ。

「君は何様のつもりなんだ?」

 ヒナギクに対して友情以上の特別な思いを抱いている美希。その愛情表現がヒナギクを困らせるなど素直ではないが、他人がヒナギクを困らせることは絶対に許さない。

 だから、ヒナギクに対してあのような仕打ちをした花南に対して怒っているのだ。

「美野花南様、ってところかしら」

 しかし花南はそんな美希の気持ちを交わすかのように通り過ぎようとする。美希は気に喰
わなかったが、ヒナギクが心配なので生徒会室へ向かおうとする。

 そんな彼女の肩を、花南が強く掴んだ。

「あの堅物のところへは行かせないわよ」
「何故だ!?」

 美希は花南を睨みつける。

「今のやり取りを見ていたのならわかるでしょ?これはあの甘ちゃんが一人で立ち向かわなければならないことよ。誰も手を貸してはいけないわ」
「だが・・・・!」

 尚も反論しようとする美希の様子を見て、全てを察した花南は皮肉気に笑った。

「もしかして、あんたがそこまであの堅物を助けたいのは、あんたがあの堅物の力になったという自己満足が欲しいだけなの?」
「なっ!」

 正解とまではいかないかもしれないがそれに近かったのか、図星を疲れたように美希は押し黙ってしまう。

「まあそれもいいけど、それならあんたはかなりちっぽけで、寂しい人間だということね」

 そう言って、花南は去っていった。

「私は・・・・」

 自分に言い聞かせるような美希の呟きは、虚しく響くのであった。



すごく暗いような話になってしまって、すみません。

次回も、ヒナギクの苦悩は続きます。