Re: 続・新世界への神話(8月2日更新。ナギ編) ( No.65 )
日時: 2011/08/06 14:04
名前: RIDE
参照: http://hinayume.net/hayate/subnovel/read.cgi?no=3929

夏休みっても忙しいですね。
なるべく早く更新したかったのに・・・・

さて、レス返し行きます。

絶影さんへ

>どうも絶影です!

>今回の話を読んで早速前スレ(でいいのか?)を読み直しました

わざわざありがとうございます!
前スレ書いていたころから、今回のお話を思い描いていましたので、ようやくここまで来れた、という感慨があります。

>まさかここで黄金のリングが出てくるとは!
>しかもナギがそれに選ばれていたとは!
>なんで選ばれたのかも気になります!

性格には、ナギを選んだのは龍鳳、黄金の勾玉とリングとともにあった、水晶の勾玉の方ですよ。
ちなみに、力だけでいえば龍鳳は黄金の精霊よりも強いです。
何故選ばれたのかは、近いうちに話しますので。

>それにナギはスピリアルウォーズのころから選ばれていたんですね!!
>あの頃のナギは…(言い方が少し悪いですが…)何を言っているか訳が分かりませんでしたが
>選ばれていたということを考えるとその意味が明らかに!?

とくに深い意味はありません。
ただ、ナギは何か隠し事をしているのだということを臭わせたかっただけなので。
ただ、それでナギの何かが変わったというのは、早とちりだと言っておきましょう。

>ナギとエイジの言い合いは読んでいて微笑ましかったです(笑)

エイジはこうやって、ナギと言い争える男子というのが欲しかったのでキャラが欲しかったので、登場したあと言っても過言ではないでしょう。
この二人にも、注目して下さるとうれしいです。

>そして…たしかに疑問ですよね
>なんで黄金のリングと勾玉が高尾山にあったのか…
>その疑問が次回から明らかになるということで!

今回語られる過去において、その経緯が語られます。
注目してください。

>次回も楽しみにしています♪

はい、遅れましたが更新しました。
楽しんでください。

絶影さん、感想ありがとうございました。

それでは、本編です。


 2

 一年前のある日の夜。

 五年前の戦いで先代のスセリヒメが選ばれてすぐに亡くなってしまっても、霊神宮は予定
していたような調子で落ち着きを取り戻していた。

 この組織にとって、スセリヒメは旗頭であると同時に、傀儡でもある。

 何も知らせないまま戦わせようとする霊神宮の腐敗の有り様に、良心のある者は少し胸を痛めていた。それは今大聖殿へ戻ろうとしている賢明大聖も含まれていた。

 彼は用があって、霊神宮を離れていたのだ。その間留守は弟に任せていた。その用事も今は終わり、霊神宮に帰ってきたのだ。

 そんなときに、事件は起こったのだ。

 大聖殿に入り、ホッと息をつく賢明大聖。疲れがでてきていることがその顔からわかる。

 とりあえず椅子に腰掛けて少し休もうとした時だった。

 大聖殿の奥から、大きな物音が聞こえてきたのだ。それも、何かが砕けたりしたような物騒な音が。

 ただ事ではないと思い、賢明大聖は急いで奥へと向かい、その先へと伸びていく通路を渡る。この通路は龍鳳が保管されている間へと続く通路であり、大聖殿に繋がっているこの路でしか、龍鳳の間には行けないのだ。

 長い通路を渡りきり、賢明大聖は龍鳳の間へと足を踏み入れた。

 そこで彼が真っ先に見たのは、倒れている自分の弟であった。

「明智天師!」

 賢明大聖は駆け寄り、屈み込んで明智天師を介抱する。

「大丈夫か?」
「う・・・・賢明大聖?」

 明智天師もこちらに気付いたようだ。仮面をかぶっているためよくわからないが、どうやら無事みたいである。

「何があった?」
「りゅ、龍鳳が・・・・」

 のろのろと明地天師が指差した場所に賢明大聖は顔を見上げる。

 そこには、衣装が施された大層な壇があった。それは龍鳳を保管しておくためのものである。

 ところが、その壇は激しく傷ついていた。引き千切られたり拳で砕かれた跡があるなど、どうみても人によって傷つけられた形跡である。

 だがそれよりも深刻なのは、リングと共に飾られていたはずの勾玉が、なくなっていたということであった。

 賢明大聖がじっくりと壇を観察している際にも、明智天師は苦しそうに息を漏らしながらもことの経緯を説明していく。

「ジュナスが・・・・龍鳳を消滅させようとその手にかけていました・・・・」
「なに!?」

 ジュナスというのは、黄金の精霊である翼のフェザリオンの使者であった。その力と人格は、同じ黄金の使者たちからも鑑として見られているほどであった。

 そのジュナスが反逆を企てたということに驚く賢明大聖だが、明智天師は続けて述べていく。

「かろうじてリングだけは守れましたが、私は反撃を受け、ジュナスは勾玉を持ち去って逃亡しました・・・・」

 倒れていたのはそのためであろう。それに、壇の破壊の有り様から犯人はジュナスと特定できた。普通に見れば黄金の使者でも犯人の特定など出来ないほど砕かれてはいるが、誰もが見逃してしまうほどの細かな痕跡をも目に付くのが、霊神宮を統括している者の違いとい
うことだ。

「どうなされましたか!」

 騒ぎを聞きつけたのか、ようやく衛兵たちが到着する。その彼らに部屋の中を見られないようにしてから、賢明大聖は素早く命令を下した。

「ジュナスを追え!まだこの近くにいるはずだ!」

 衛兵や使者たちはくまなく探したが、ジュナスはすでに霊神宮から去ってしまっていた。賢明大聖は霊神宮にいる全ての使者を集め、ジュナスが反逆を企てたことを伝えた。ただし龍鳳のことは伏せられていた。もし明るみにでてしまえば、霊神宮は混乱してしまうだろう。傀儡扱いしているとはいえ、龍鳳とスセリヒメのカリスマは霊神宮にとってそれほどのカリスマを持っているのだ。

 加えて、ジュナスとフェザリオンの後釜については、欠番ということで空席となった。黄金の使者と精霊は必ず十二組存在しなければならない決まりの中で、これは異例の処置であった。その理由としては、体裁以上の何かがあるのだが、詳しい事情は賢明大聖のみしか知らない。

 しかし細かいことはどうであれ、龍鳳はジュナスによって霊神宮から持ち出され、以降現在まで他の使者に知られないまま行方不明となっていたのだ。

 ハヤテやナギたちが高尾山へ遠足するまで。



「・・・・て、ちょっと待てよ」

 そこまで聞いた塁は、つい話を止めてしまう。

「つまり龍鳳は今まで盗まれていたってことか?」
「じゃ、じゃあ霊神宮に返さなければならないんじゃあ?」

 達郎は慌てた様子で龍鳳を指す。先ほども思ったことだが、いくら霊神宮が自分たちに牙
を剥いたとしても、龍鳳が悪事の末にこの場にいるのだとしたら放っておけなかった。愚かと思えるほど、彼らが正義感に溢れていた。

「そうだね。ひょっとしたら、三千院のお嬢さんが選ばれたっていうのも何かの間違いという可能性も高くなるしね」
「そうだそうだ!」

 拓実の言葉に、エイジはナギを睨みながら同調する。

 そんなエイジを見てナギは膨れ、エイジはこれ見よがしな表情を見せる。すぐにまた言い争いをはじめそうなので、お互い保護者に諌められた。

「これで終わりというわけではありません」

 エーリッヒは皆が黙ったのを見て話を戻そうとする。

「ここからが本題です。限られた人間しか知らない真実というのは・・・・」



 全ての使者が賢明大聖の話を聞き終えそれぞれ戻った後、エーリッヒは賢明大聖から極秘
に呼び出されていた。

「私に一体何の用が・・・・?」

 疑問に思いながら、エーリッヒは大聖殿へと入っていった。

 大聖殿の中には、賢明大聖一人しかいなかった。エーリッヒは彼を見るなり敬意を示すよ
うに膝をついた。

「よい、エーリッヒ」

 賢明大聖はかしこまらなくてもよいと言うが、エーリッヒはそれでも四角四面、礼儀正し
くあろうとしていた。

 この言葉を聞くまでは。

「これは賢明大聖としてだけではない、それ以前の一人の男として頼みたいのだ」

 それを聞き、エーリッヒは思わず顔を見上げる。

 一体、この人は自分に何を頼もうとしているのだろうか。見たところこの場には二人しか
いないが、それほど重要なものだろうか。

「先ほど、ジュナスの件について話したが・・・・」

 エーリッヒはそこで隠されていた龍鳳のことについて聞いた。

「ジュナスはそんなことまでしていたのですか・・・・」

 エーリッヒはジュナスに対する嘆きと呆れを露にするが、賢明大聖の口から続いて語られたことに驚愕してしまう。

「犯人はジュナスではない」
「え?」

 思わぬ発言に、エーリッヒは目を見開く。

「この件の真の犯人は、私の弟でもある明智天師だ」
「そんな!」

 エーリッヒはもう、声をあげてしまったことも気にかけていなかった。目の前にいる男と同様に、偉大なる使者として他の使者たちから尊敬されている明智天師が、そんな間遠をしでかしたなんて思いも出来ない。

 しかし賢明大聖は否定もしなかった。

「思えばつい最近、明智天師はあの国に行ったことで何か変わったような気がしていたのだ。いずれ、反旗を翻すのではないかと・・・・」

 先日、明智天師はとある国へ様子を見るために赴いていた。その国は国を支える人物である“柱”を失ったことで崩壊寸前であり、他国からも新たな“柱”を狙って侵略してきたのだ。

 その国は何とか崩壊を免れ、変革によって国は変わった。しかしそれから帰ってきた明智天師は、どこか暗い影が存在していた。賢明大聖、そしてダイぐらいでしか気付けないほどの暗い影が。

 そして賢明大聖の不安は、最悪の形で的中してしまったのである。

「そのため今日私は留守の間、ジュナスに監視を頼んだのだ。私がいない間に、奴は動くはずだからな」
「ではジュナスは・・・・」

 賢明大聖はエーリッヒに頷く。

「龍鳳を守るために、この霊神宮を出て行ったのだ。場合によってはこの世界から出て行っても構わない、とにかく霊神宮には戻らずに龍鳳を守ってくれと頼んだ」

 賢明大聖はここにはいないジュナスに思いをはせているかのように目を閉じた。

「ジュナスは快く応じてくれた。二度とは栄光ある身分には戻れなくなるというのに、即座に二つ返事で応じてくれた・・・・」

 先ほどはジュナスを嘲ったエーリッヒであったが、それを聞いて彼に対する見方を改めた。やはり彼は、黄金の使者であったのだ。

「だがこのことを明るみにするわけにはいかない。情けない話だが、今の霊神宮は私一人では支えきれないのだ。明智天師の力がなければ・・・・」

 そこまで言った時、賢明大聖は突然咳き込みだしたのだ。

「どうなさいましたか!?」

 エーリッヒは慌てた様子で賢明大聖のもとへと駆け寄った。

 そして見た。賢明大聖の口を覆っている手から血が零れ出ていることを。

「ふっ、さすがの私も病には勝てまい・・・・」

 賢明大聖は自嘲気味に笑う。

「もって後一年の命だろう・・・・」

 それを聞きエーリッヒは僅かに表情が暗くなった。賢明大聖が死ぬことに対する喪失感も
そうだが、そうなってしまえばこの霊神宮は明智天師のものだ。彼が何を企んでいるのかは
知らないが、龍鳳に手をかけようとしたものに組織を預からせるのは不安が残る。

「だが私が死ぬとしても、希望は不滅だ」

 賢明大聖はそこで、真剣な表情でエーリッヒに向いた。

「だからこそおまえに頼みたい!いずれ必ず龍鳳は自ら選んだスセリヒメとともにこの霊神宮に戻ってくる。そのスセリヒメと、それを慕う使者たちが果たして本物か見極めて欲しいのだ!」

 気圧されそうな賢明大聖の瞳を、エーリッヒは真正面から受け止めていた。

「これは物事の本質を見抜くことができる、おまえにしか頼めん!」

 エーリッヒは内心動揺していた。事態がこれほどまでに緊迫していたなんて想像だにして
いなかった。それに、果たして自分が勤まるのであろうかと言う不安も存在した。

 だが、尊敬する相手が自分の命をかけて頼み込んでいるというのに、それを無碍に扱うことなどできはしなかった。

「・・・・わかりました」

 エーリッヒは、二つ返事を出すのであった。








以上で今回の話は終わりです。

なお、ジュナスについては語られていませんが、あの後彼は高尾山へと流れつき、そこで自分の精霊であるフェザリオンの勾玉とリングを龍鳳と一緒にあの洞窟に隠したのです。

龍鳳とスセリヒメは必ず出会うというのが運命。ならば、いずれここへスセリヒメとなる人物がやってくるだろうと信じて、それまでフェザリオンに結界を張らせて龍鳳を守っていたというわけです。

そして、その運命の通りに、一年後ナギは出会ったということです。

ちなみに、ジュナス本人については今のところ生死不明です。

あと、賢明大聖と明智天師についての簡易プロフィールも載せておきます。

賢明大聖

霊神宮の指揮をとっている者。
本来はスセリヒメの補佐でしかないのだが、空席となっている為彼が事実上の最高権力者となっている。
腐敗が目立つ組織の中で、彼は明瞭であった。人の話を聞かないということを除けば。
ちなみに賢明大聖と言うのは本名ではなく、号らしい。
病魔によって亡くなられた。

明智天師

賢明大聖の弟で、彼の補佐を務めている。
素顔は仮面によって覆われており、こちらも本名ではない。
兄弟共に、使者としての実力は現在の黄金の使者並である。
賢明大聖亡き後、何かを企んでいるようだが・・・・?


それでは次回、ナギ編ラストで会いましょう。