Re: 新世界への神話 ( No.54 )
日時: 2010/03/23 19:20
名前: RIDE

更新します。
第18話ラストです。



 5
 逃走していた陰鬱の使者たちは、背後から近づいてくる気配を感じ、足を止めた。

「誰かが、来る」

 その警戒心が、ネガティブライオーガを人型形態へと変化させる。それと同時に、強い風が突然吹いた。

「ちっ、やっぱり青銅の奴らか!」

 風と共に彼らの前に現れたのはシルフィードであった。そこからネガティブライオーガに向けて疾風怒濤をお見舞いしようとするが、ネガティブライオーガは上に跳んでそれをかわした。

 だがその上には、ヴァルキリオンが待ち構えていた。

「氷華乱撃!」

 必殺技を受けたネガティブライオーガは、光となって封印された。

 遅れてやってきたハヤテとヒナギクも、拳や木刀・正宗で陰鬱の使者たちを叩きのめした。

「あなたたちは、何も持っていないようね」

 ヒナギクは黄金の勾玉やリングがあるかどうか確認するが、この二人はどれも持っていな
かった。

「ひとつだけ聞きたい」

 ハヤテは陰鬱の使者たちに問い掛けた。

「兄さんは何故あんなに変わってしまったんだ?兄さんに何があったんだ?」
「それを知れば、貴様は罪の意識によって自ら命を絶つであろう」

 陰鬱の使者たちは、笑って語りだした。

「貴様らも見たとおり、今の雷矢様に流れているのは血でも涙でもない、憤怒の炎よ」
「雷矢様をそうさせてしまったのは、貴様ら三千院家の関係者なんだぞ」

 三千院家という言葉が出てきたことに、ハヤテとヒナギクは驚きを隠せなかった。

「そ、それは一体・・・・」

 だがそれ以上は聞けなかった。陰鬱の使者たちが舌を噛み切ったからだ。

 何が兄を変えてしまったのだろうか。本当に自分たちのせいなのだろうか。ハヤテの疑念は募るばかりであった。



 とある池のほとりに、一人の陰鬱の使者が到着した。ここが落ち合いの場であるようだ。

 しかし、彼の仲間たちは一行に集まる気配がない。

「黄金の勾玉をもった奴は先に雷矢さまのところへ行かせたからよしとして、他の奴らはどうしたんだ・・・・?」
「倒されたに決まってんだろ」

 突然、そんな言葉が聞こえてきたかと思うと、池の水がひとりでに吹き上がった。

 そこから現れたのは、人型形態のジャーグインであった。

「言われなくてもわかっていると思うけど」

 同時に、達郎もその姿を見せる。

「黄金リングを持ってんなら、素直にこっちに返せ。そうじゃなきゃ・・・・」
「このっ!」

 全て言い終わる前に、ネガティブライオーガが人型形態となってジャーグインに飛びかかった。

「やっぱり、やるしかねぇか」

 ジャーグインは両手を前に揃えて水球を作り出す。

「ハイドロスプラッシュ!」

 激しい水流がそこから起こり、それに呑まれたネガティブライオーガは封印された。

 陰鬱の使者も余波を受け、転倒してしまった。その際、黄金リングが零れ落ち、達郎はその隙を逃さず掴み取った。

「黄金リングは取り返すことができたか・・・・」

 だが、黄金の勾玉は雷矢のもとへ向かっていると言っており、マリアもまた雷矢自身の手の内だ。そして、この男の言葉から察するに雷矢はもう、こちらの追える範囲にはいない。今すぐに取り返すことは不可能となってしまった。

「それにしても、手応えがねぇな。あんたたち、陰鬱の使者じゃ弱いほうじゃねぇの?」

 それを聞いた陰鬱の使者たちは怒ることはなく、素直に受け止めた。

「そのとおり。俺たちは単なる雷矢様の影にすぎん」

 彼は、笑いながら続けた。

「黄金リングを取り返して対等になったと思ったら大間違いだぞ。雷矢様のまわりには最強の陰鬱の使者がついているのだからな」

 そこまで言って、彼は自決した。

 やはり、雷矢の憎しみを解こうとするのは無理かもしれない。激突しかないと悟った達郎は、空しさを感じるのであった。



「う・・・・」

 目を覚ましたマリアが見たのは、知らない風景であった。

「ここは・・・・?」

 起きようとするが、縛られているために身動きがとれない。

「気がついたか」

 彼女の近くには雷矢がいた。さらにそこへ闘技場に現れた黒ずくめの男がやって来た。

「申し訳ありません雷矢様。どうやら他の者たちはやられ、黄金リングまで取り返されたようです」
「貴様らの実力ではその程度よ」

 雷矢は気にした様子を見せなかったが、その声には怒気が含まれている。

「奴ら八闘士たちが盾突くというのであれば、打ち砕くまでだ!」

 彼は、三千院家に肩入れする者たちに向けて、敵対心を露にする。

「そして黄金リングを再び奪い、この雷矢の野望を実現させるのだ!」

 雷矢から発せられる憎しみを感じたマリアは、反射的に身震いを起こすのであった。