Re: 新世界への神話 ( No.42 )
日時: 2010/02/03 21:12
名前: RIDE

更新します。


第16話 炎龍VS雷獣

 炎龍を模した精霊、火のムーブランの使者である佳幸と、雷獣を模した精霊、雷のコーロボンブを従えた塁は互いに向き合う。

 八闘士同士の戦いとあって、エイジたちも緊張した面持ちで観戦する。

[第四試合、開始!]

 その号令とともに互いの精霊は人型形態と変わっていく。その際、塁は観客席から自分の知っている顔を見つけた。

「板長、理子?」

 がっちりとした体躯の男と、ボーイッシュな女。いずれも板前として働いている対の上司である板長と、同年代の職場の関係者である。

「何で二人がここに・・・・?」
「どうしたんですか、塁さん?」

 あらぬ方向を向いたままぼんやりとしている塁が気になって、佳幸は呼びかけた。

「悪い。知り合いの顔を見つけたもんだから、つい・・・・」

 ここが戦いの場であることを思い出した塁は、再び佳幸と対面する。

「仕切りなおして、戦いをはじめるか」

 コーロボンブはムーブランに向かって駆け出し、ムーブランは青龍刀のような大きめの剣を持って構える。

 ムーブランが剣を振るった。それをかわしてコーロボンブは顔面に拳を入れようとするが、ムーブランも頭を動かしてそれを避け、またも剣で攻撃する。

 攻撃してはかわされ、攻撃されたらかわす。一進一退の攻防に、緊迫した観客たちは声を出せずただ固唾を飲むばかりである。

「塁!!」

 そんな戦いに水を差したのは、板長と理子であった。二人は観客席から塁の近くまで降りてきたのだ。その際、二人を止めようとした警備員は板長が殴り倒していた。

「板長、理子。どうしてここに?一体何が?」

 佳幸にちょっと待てと手で合図しながら、塁は二人に尋ねた。ここまでして自分に会いに来たのだから、何か重大なことが起こったということだけは感じていた。

「塁・・・・・・。おじいちゃんが、おじいちゃんが危篤なの・・・・」

 それを聞いた途端、塁の目は大きく開かれた。

「なんだって!老師が!?」

 目で板長に問いかけると、彼は首を振って肯定を示した。

 塁が老師と呼ぶ理子の祖父は、塁たちが勤めている料亭のオーナーである。

 高校卒業後、実家の居酒屋を継ぐためにそこで修行していた塁だが、偶然訪れた老師に目をつけられて、塁はそのまま彼の料亭に引き抜かれることとなった。

 老師の料亭は名高いところであり、そこで修行することに塁は緊張した。しかし最初の頃は料理をさせてもらえず、またそこのしきたりなどに彼は苦悩した。そんな時、老師から助言と励ましをもらい、何度も乗り越えてきた。そうやって三年間老師の教えを受け、現在厨房を任せられる板前の一人として働いている。

 塁にとっては大恩ある老師。その老師が今、臨終を迎えようとしているとなると、いても立ってもいられない。

「悪い。すぐに行きたいところだけど、少し待ってくれ」

 しかし、塁は佳幸に向き直った。

「老師が言ってた。自分が受け持ったことなら、最後まで責任を持てと」

 老師の教えを守らずに死に目に立ち会ったら、老師に合わせる顔がない。せめてもう始ま
っているこの試合を戦わなければと塁は思ったのだ。

 不安げな理子に、彼は言った。

「なあに、すぐに終わるさ」
「いいんですか?そんなことを言って」

 佳幸が言った。ここに残ると決めた以上は自分と戦ってからでなければ老師のもとへはい
けない。しかし、自分は簡単にやられるつもりはないし、同様に塁も負けない気でいる。決着はそう早く着くものではないと思ったのだ。

「心配はいらねぇさ」

 だが、塁は何故か余裕であった。

「あれから五年間、俺たちは揃って戦うことはなかった。その間に、俺はおまえらの知らない新たな必殺技を編み出していたんだ」

 コーロボンブの拳に、パチパチと電気を帯び始める。

「こいつを前にしたら、立ってなどいられねぇはずだ」

 その拳を構えて、コーロボンブは放った。

「サンダーボルトナックル!」

 電気を帯びた正拳突き。それを喰らったムーブランは大きく後方へ飛ばされてしまった。

 必殺技がまともに入った手応えを感じた塁。相手を確認するまでもないと、自分の勝利を
疑わなかった。

「よし、行こう」

 戦いの場から降りて、老師のもとへ向かおうとする塁。だが理子はビックリして塁の後ろ
を指した。

「る、塁、まだ・・・・」

 振り返った塁も驚愕した。ムーブランが立ち上がっていたのである。

「バカな。サンダーボルトナックルはまともに決まったはず・・・・」
「生憎だけど、僕も黙ってやられるわけにはいかないんですよ」

 佳幸は、不敵に笑った。