Re:第一〇話『亡羊セパレイション』 ( No.37 )
日時: 2013/02/06 21:43
名前: 迅風

同期の友人も現れて最近凄く嬉しいよ……!!

と言う感動の下、執筆頑張るかーとほにゃほにゃながらに震い立てる!!

話数も遂に二桁で話も動き出すから万々歳だしね!!

と言う事で運命が動き出す第10話をよろしくです!!

では、狂々と動き出す物語をどうぞですよ☆

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 第一〇話『亡羊セパレイション』



        1



 夜空にぷかりと浮かぶ綺麗なお月様の下で少年は思いに深け込んでいた。

 どうしてこんな激動の一日を過ごしていたんだったっけか、と困惑気味に考えながらダクダクと体から血を垂れ流しながら今日を振り返っていた。借金から始まり化け物との戦いに至った出来事の数々を走馬灯のごとく思い返している。このまま死んだらある意味、楽だが生憎と不幸中の幸いの様にタフそのものである彼の身体は気合と根性を持って回復の兆し濃厚であった。

 痛みで引き攣りそうになる体をどうにか起こして綾崎は次の行動に移る。

 化け物三匹から逃げ延び生き延びたとしても、自分達にはあのわけのわからない船員達の恐怖がある。借金取りに追われる恐怖があるのだ。そこらへんあの天から降ってきた変態男性がどうにかしてくれているかもしれないが万全を期さねばならない。

 現状を確認する。

(うーんと……僕が攻撃しまくったのと諸々で気絶中の五十嵐君と、僕が助けられなかったのと諸々の事情で失神中の双子さん……)

 自嘲して自殺したくなるほど情けない自分に項垂れそうになった。

 ただ双子少女に関しては気絶しているにも関わらず実に愉快そうな笑みをぽわぽわと浮かばせながら転がっている。気絶しながら「むにゃむにゃ〜……デストロイ」「ふにゃふにゃ〜……シット」と無駄に危険な寝言である。しかし何故この双子はここまで緊張感がないのだろうか。気絶している相手に愚痴を言っても寝耳に水ともなりはしないのだが。

 相変わらず空気読まないよなー、と聞こえてないだろう愚痴を内心零しながら双子の少女を傍の道、路地裏へと運び壁にそっと立てかける。

 次いで転がる全裸の五十嵐を一瞥しながら綾崎はどうしようかと悩んだ。

(全裸……、だもんなあ……)

 全裸と言うのがマズイ、と感じた。

 寒空の下これでは風邪を引くのではないかと言う考えもあるし、だとしたら毛布の一つでも上げたいところなのだが生憎とそんな手頃な毛布は何処にもなかった。自分の上着でもかけてあげようかとも考えるのだが、

(……この着ぐるみ、全然脱げないんですよねー……)

 しょんぼりとした気持ちでくいーっともこもこした白い衣服を引っ張る。

 だがまるで生来生まれ持った皮膚の様に脱げる気配は全くなくどれだけ引っ張っても着ぐるみはこの体から離れてくれる様子は無かった。そもそも服の原理として着れる構造ではないのだ。一度着たらそれきりの様な構造である。

 綾崎はそれこそ知らぬが『奇せ変え人業(ヒューマンモーション)』の特質だ。着れぬ衣装させ着せ替える技巧。土台、着服出来ぬ衣装さえ衣替え。ある種の呪いの域に達しているスキルとも言えるだろう。

(最終手段、鋏で切ったり出来るかな……)

 一生脱げなかったらどうしようと不安を抱きながらも五十嵐を見る。

 服の問題で悩んでいる自分よりも一段階、彼の方が難題を抱えているのは明白だからだ。それにしても全裸の少年と言うものは実に扱いに困る。衣服と言う問題と加えて絶賛気絶中という問題も含めて。

(何故、双子少女がいる中で全裸で気絶してんですか君は……!!)

 理不尽な怒りとでも何とでも言うがいい、と綾崎は思った。

 だが気絶している双子少女の隣に全裸の少年を一緒に寝かせておくわけにもいくまい。明らかに誰かに見られたら即、逮捕の構図しか生まれないだろうから。それを言ったら羊の着ぐるみ着ている自分の存在も同義の様なものだが。

 とすると五十嵐を寝かせておくわけにはいかないというのが綾崎の考えだ。

 歩くにも相変わらず少しばかり脚が軋むが致し方ない。

 綾崎は軋む身体を動かして五十嵐の傍へと近づくとすっと右手を挙げた。キラーンと月光に輝く黒い蹄が唸りを上げる。

 頭の中で五十嵐へ向けて一つ謝罪を行った後に。

(許せ五十嵐君!!)

 蹄が火付く様に五十嵐の頬をぺしぺしぺしと連打する。五十嵐が約一〇数発を抵抗も無く喰らい続けていた後にようやっと「ぼへぼへぼへっ!?」と奇声を上げて意識を徐々に徐々に取り戻し始める。

 その様子に綾崎は仮面越しに良かったぁ……、と安堵の息を吐き出した。

 もしも目覚めなければどうしたものかと怖くなるところだ。

「いってぇ……何、この痛さ……ッ」

 そして五十嵐は何が起きたのかとばかりに混乱した様子ながらも頬を抑えながら意識を取り戻す。そして瞼を何度かパチパチしばたかせながら世界と自分との境界線に手を伸ばし彼の口癖を訊いた。

 何なんだよコノヤロウ、と言う口の悪い口癖を。

 そんな他愛ない事にも何か安心感を抱きながら綾崎はようやく口を開いた。

 良かった、と。

 その瞬間である綾崎はゾクッと背筋に悪寒が走る様な恐怖にバッと周囲へ視線を走らせた。何だ今のは、と言う悍ましさに体が強張るのを感じ周囲を見渡すが誰も何もいない。今のは気のせいだったのか、と訝しげながらも感じる。

 ともかく姿もわからぬ恐怖に脅えても仕方がない。

 今、重要なのは五十嵐たちの事なのだから。そう考えながら五十嵐へ視線を戻した。対する五十嵐はどうやら意識を全て取り戻した様で焦点の合った目をしている。

 本当に良かった、と安堵の息が零れた。

 しかし即座におかしいと。何かがおかしいと理解してしまった。五十嵐雷の顔にどうしようもなく張り付いたものが見て取れる。

 恐怖。

 そのたった二文字にして全てを体現する漢字が感じとれる。表情全てが寒さに強張る様な印象をありありと見せつけている。何が彼をここまで怖がらせるのだろうかと不安になる。

 まさか近くに誰かいるのではないかと後ろを振り返りそうになった。

 後に綾崎はここで振り返らずにいた事に感謝する。

「何者だ……!! テメェッ!!」

 空気を電光が駆け抜ける。身体が麻痺しそうになる電撃が空間をひゅっと駆け抜けた。

 五十嵐の手から乏しいながらも残された力を振り絞って掻き集めて欠片集めた電撃が五十嵐の手の平から音を立てて放たれた。単純明快な放電≠ノ他ならない。

 その動作を鍛え抜いた体は見抜き、そして上体を右へ逸らして回避した。

 けれど同時に綾崎は何が起こったのか。何で五十嵐が自分に牙を剥かせたのかわけもわからずショックを感じた。電撃を受けるより余程ショックであった。

 五十嵐君……、と小さく声を零す。

 対する五十嵐は気迫の籠った表情で腹の奥底に轟く様な衝撃を綾崎の腹部に叩き込んだ。ただでさえ傷付いた体に五十嵐の剛腕。これは実に答える。腹の奥から空気と共に血が噴き出した。だが呻く間もなく脇腹を蹴り飛ばされて綾崎の身体はひゅっと空を舞い、地面をゴムまりの様に何度か跳ね飛んで転がり落ちる。

 すぐに立ち上がる力も無く何が起きたんだろうかと綾崎の脳内は混乱した。

 五十嵐は息を荒く吐き出し汗を拭き出しながらも綾崎の方を据わった目で見据えながら、

「何なんだコイツはよ……コノヤロウ」

 脅えと怒りを混同させた様な表情をしている。

 その表情を見ながら綾崎はふっと事実に思い当った。

(そう言えば僕、羊の着ぐるみ着てるんだった……!!)

 確かに何者だ、と言いたくもなるだろう。加えて確か今自分は、

(……固い)

 ぺちぺちと自分の顔を触れる。硬くて冷たい感触が顔中に広がっていた。自分の目ではとても見えないがこれは明らかに不審者に他ならない。仮面をつけた羊の着ぐるみの誰かだ。五十嵐からしてみれば即時攻撃もするだろう実際。

 五十嵐から見てみれば起き掛けに羊の着ぐるみを着た不審者が自分を抱き上げている様なもの。混乱もするだろう。

「くっそ、どうなってんだよコノヤロウ……!!」

 五十嵐は頭を抱えながら何かを吟味する様子で呻いている。

「何で俺、こんな場所に……」

 周囲を確認しながら、場所が港付近であるという事を確認しながら、

「確か船に乗せられて……、一緒に誰かと共闘したんだが……、それに確か他にも……」

 記憶が混濁している。

 五十嵐の発言内容から綾崎はそれを理解した。誰かと共闘したと呟く以上は誰と共闘したのかわかっていない。いや、憶測になるがそれ以上に色々な事情を脳が理解しきれていないのではないだろうか。

 そして綾崎には五十嵐の記憶混濁の理由が手に取る様にわかっていた。

 いや、文字通り『手に取っていた』張本人な以上当然とも言えた。

(白桜だぁ……)

 多分、と付け加える。

 だがおそらくは元凶はソレだ。白桜に突き刺さって化け物化した影響が五十嵐の記憶にいくぶんか影響をショックの形で及ぼした可能性は十二分に存在しているではないか。

 硬化した状態で剣に刺さって化け物になった。

 なんて言い出したら誰だってショックで記憶が曖昧になる可能性が高い。綾崎には今の状況が一過性で一時的なものである事を願うしかない。

「くそっ。断片的にしか思い出せねぇ……」

 そして五十嵐は忌々しげに舌打ちする。彼にしてみれば共闘までした間柄の人間が誰なのか思い出せない事に不甲斐なさを感じているのだろう。

 故にその意識はこの場にいる異端的存在に目が向けられるのは当然と言えた。

「お前……、俺に何かしたのか」

 ドスの効いた声で羊へ向けて敵意を帯びた声を向けた。

「流石にお前が味方とか思えねぇし……」

 クソッ、と憎々しげに呟いた。どうなっているのだ、という状況の理解できない現状に対してそのまま怒りを覚えているのだろう。だが思い出すべく唸っている間に五十嵐はハッと思いだした様子で周囲を見渡し、そしてある一点へ向いた時に目を剥いて安心の表情を見せた。

 双子少女だ。双子の姿を黙認した事で嬉しそうに口元を緩める。

「良かったぜ……、あいつら無事そうだ……!!」

 路地裏の壁に背中をもたれかける二人を見て安堵した様子で息を吐く。

「でも何であいつらだけあんな場所に……?」

 そこで不自然さを覚えた。何故双子はあんな場所にいるのだろうか。明らかに人為的な力が作用してあそこにいるとしか思えない。この場所で双子をあそこへ運べる者と言えば、

「まさかお前が……!!」

 そう呟きながら視線を羊へと戻す。その視線に羊こと綾崎はパァアっと希望の光を感じとりうんうんと頷いた。これで自分が敵ではない事だけは理解してもらえると感じてそうですそうですとばかりに声を発して頷いた。

「そっか。やっぱりか」

 対して五十嵐は実に冷淡な声を発しながら頷いて、

「あいつらをテメェみてぇな化け物に食わせてたまっかよコノヤロウがァッ!!」

 顔面に減り込む様な痛烈な蹴りが炸裂した。

 それでも安栖里の仮面の中でも最硬度を誇る仮面亡羊の嘆面≠ヘ壊れる事も無く衝撃を伝道させて綾崎の羊な体躯を再び宙に舞わせた。

 なん、で……と理不尽に嘆きながらごふっと声を上げてアスファルトの地面に墜落する。

「何も言わなくても理解したぜ……。お前の正体を。そしてお前の目的をな」

 瀕死間近にまで迫った羊に対してギラギラとした敵意を剥きだしにしながら五十嵐はズビシッと指を差し向けて叫ぶように告げる。

「路地裏へ連れ込んで俺達を喰う気だなコノヤロウ!!」

(何故に!?)

 全くもって的外れな考察である。とはいえ路地裏に連れ込んだのは事実だが。

 が、しかし。五十嵐がそう言う反応を示すと言う事はいったい自分はどんな姿をしているのだろうか。ただの羊の着ぐるみを着ているだけではないのか。

 だがゆっくりと考察する時間は羊には無かった。

 遠くから声が響く。

 見つけたぞこっちだ、という仲間と示し合わす声。遠くだが視力の良い五十嵐は状況を察する事が出来た。港へ着岸したと思しき小型ボート。加えて数名の人数。

 女性と思しき姿が並んでいる。

 と言うよりも女性だけだ。

 五十嵐は若干呻く。何で女ばっかなんだよコノヤロウ、と。なお記憶が混濁している五十嵐はとてもわからないだろうが船上に舞い降りた変態の毒牙を向けられ男性陣は大打撃を被るか逃げ惑っているかのどちらかである。

 故に動ける女性面子が追い掛けてきたと言う具合になる。

 そこで五十嵐はヤバイ、と思った。

(事情は大体覚えてる辺りは幸いだが……、うろ覚えだな)

 ただそれ以上に問題なのだ。どうしたものかと悩む。何故ならば向こうの路地裏には気絶している双子がいるのだから。彼女らが見つかれば抵抗も無く捕まるだろう。

 ならば五十嵐は自分に出来る事をするまでだ。

「……囮になるしか、ねぇな」

 大袈裟に振る舞って敵を引き付けるしかない。動ける自分がやるしかない。そこまで考えた後、五十嵐雷の判断と行動は早かった。

「ヘッ。何だよ随分遅かったじゃねーかよコノヤロウ!!」

 挑発の意思を込めて高らかに叫んだ。

 女性陣はむっとした表情を浮かべながら「見つけたぞ!!」「こいつ一人か……、他の面子はどこに……?」と声を発しながら迫り来る。

 ここから始まるのは純粋な逃亡劇。

 捕まったら終わりなランナウェイだ。使えるものは何でも使って生き延びなくてはならない人生の大一番。故に五十嵐雷は外道になろう。

(…………)

 羊は首の後ろを掴み上げられて宙をぷらんとしながらただただ唖然とした。

「んじゃ手頃なお前さんに……」

 五十嵐は冷然とした表情のまま羊をぐんっと後ろへ一度振るって、

「逃げる為の時間稼ぎとして使わせてもらうぜクリーチャーっ!!」

 放つ怪力そのままに、羊を女性陣目掛けて渾身の力へ放り投げる。

(のぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!?)

 羊は仮面の中で滝の様な涙を流しながら狩人たちの下目掛けて飛んでゆく。目を惹きつける効力は確実だろうと踏んでの五十嵐の行動だ。

 哀れにも文字通りスケープゴート現象である。

 効力はそこそこ発揮し夜の夕闇を切り裂いて飛来する羊の姿を見て追ってきた女性陣は悲鳴と断末魔を上げてもこもこの身体を武器で、脚で、拳でタコ殴りにしてリバース。

(…………)

 最早意識が飛びそうな程の激痛を心地よく感じる程壊れながら羊は逃げる五十嵐を追い越してひゅるるる〜と無造作に宙を飛んでゆく。

 だが落下の寸前、見事な着地を見せてこちらへ走ってくる五十嵐目掛けて罵詈雑言を吐き出した。五十嵐は何処か不快そうな笑みを見せながら「……ちっ。死ななかったのかよ」と憎々しげに舌打ちした。

(何か風当り酷過ぎませんか……!?)

 容姿が激変してるから、全く別人としか思われていないにしても初対面の相手とも友好的な五十嵐にしては随分と冷たい。いや、そもそも初見の時から五十嵐は嫌に手酷く当たってはいたが、死ぬことを期待するまでには何か違和感を感じた。

 そんな羊の視線にさえ不快感を覚えたのか忌々しげに舌打ちをし、

「良く訊けよテメェ……。何の化け物だか知らねぇが……俺はお前らの類が大嫌いなんだよコノヤロウ!!」

 その顔には憎しみすら浮かんでいた。お前らの類が、と言う意味はわからないが化け物の類に深い憎悪すら感じる。羊は五十嵐の過去を詳しく知らない。つまり過去に何かあったのではないだろうかと推察した。

 その意味では白桜に刺された際に化け物になったのはある種の皮肉にすら感じる。

「ああ、クソ。思い出してムカつく……!!」

 わしゃわしゃと頭を掻きながら五十嵐は羊を一瞥し、

「やっぱアレだ。お前の事なんざ露程もしらねーけどお前みたいな危険オーラバリバリの化け物放っておくわけにもいかねぇ……ここで倒す」

 と、拳を握りしめて言い放った。

 その言葉に綾崎は背筋にダラダラと冷や汗が流れるのを感じた。

(……あれ? 何か味方が敵になってる……?)

 それも憎しみ一塩と言った状態でだ。先まで友人で、仲間で、味方であったはずの少年が今は完全に自分へ向けて敵意を向けているという現実が悲しくて寂しくてたまらなく思えてきてしまった。異国の地でも通じ合える間柄だっただけに、向けられる憎悪の感情は何処までも綾崎の心を冷やす。

 数時間前まで自分に向けられていた頼りにしてくれている瞳が。

 今はさっさと目の前から消えてほしいと言う念に彩られていた。

 そんな混迷する感情の最中にも現実は否応なく動き蠢く。五十嵐は容赦なく握りしめた拳を羊の右頬付近に減り込ませ、吹っ飛ばす。げほっと咽込んだ息が奥底から血が溢れる。だが綾崎が手負いであろうとも外観からは判断しにくいのが難点であり。

 故に五十嵐は追撃の手を緩めず怒涛の勢いで攻めを執行する。

 これ以上、攻撃を喰らうわけにもいかない。羊は振り抜かれる拳をギリギリ回避しどうにか攻撃を躱す。その最中、羊は追い掛けてくる女性らの声を訊いた。あいつもしかして、と言う声から察するに気付いたのだ。

 自分が安栖里仮の仮面を喰らった少年であると。

 その事から追手の手は五十嵐だけではない。自分にも向いて来る。いや、向いてくれた。これで自分も囮になれる。そう感じた瞬間には綾崎は若干の怒りを乗せた蹄攻撃を五十嵐のみぞおちに決めて「ほごらひっ!?」羊ながらも脱兎する。

「待て!! お前たち、あの羊も逃げ出した奴の一人だ、追え!!」

 女性の一人が声を上げて追い掛けてくる。その声によし、と拳を握った。

 ただ背中越しに聞こえる声が思わず足を止めそうになる。

「くそっ……!! ここであんな危ねぇ化け物逃がすわけにもいかねぇってんだよコノヤロウ……!!」

 勘違いしているだけ。だからこそ五十嵐に理不尽の怒りは抱けても恨めない。恨むべきは安栖里という男の攻撃と断じて綾崎は羊のもこもこな着ぐるみのまま、真白いしっぽをふりふりさせながら漆黒の闇に映える白い体躯で駆け走って行った。

 体中から流血と。瞳の奥から血涙を零しながら。

 大地に点々と残る赤い滴は誰にも彼の負傷を伝える事も出来ず残されていくばかりであった。故に嘆いた。ただただ嘆いた。嘆きの声を混乱のままに発した。

 それが訊く者を怯えさせる声でしかないと知らずに。



        2



 時間にして四〇分程の時が経過していた。

 追手の手を振り切りながら、五十嵐の攻撃を振り切りながらもどうにか逃げ遂せたは良いのだが銃撃と言った攻撃を回避する事もままならず体には数発の弾丸が埋まっている。特に問題であったのは五十嵐の存在だったが上手く撒いてこれたのが一番嬉しい。

 友人と擦れ違いと勘違いで戦うのは辛すぎるから。

 別れられて良かった、と寂しく頷く。

 ただ今生の別れになりそうなのは苦笑を浮かべるしかない。

(……何か目が霞んできたんですよねー……)

 覚束ない足取りで視界が何度か暗転する中で、どうにか逃げてきた。左手の感覚が嫌に無いし、片足に至っては何かおかしい感覚に至っている。腹部と言うか全身から熱い何かが込み上げてきているのだが同時に、

(寒いなぁ……。何か寒いです……)

 冬場だからとはいえ今日は嫌に寒いね、と綾崎は一人ごちる様に呟いた。

 だからだろうか。

 暖かな場所を求めてしまったのは。後に彼はこの自分が暖かな場所を求めた事を後悔すると知る事になっても、暖かな空間を求め彷徨い歩いて来ていたのは。

 辿り着いた場所は優美な屋敷であった。

 月光の下、大地には彩られた白い花々が優しく風に吹かれて揺らいでいる。よくきたね、とばかりにふわふわと優しく揺れている。その花々に彩られた世界は期せずして潜り抜けた巨大な門の奥にあった。そして目を遠くへと向ければ立ちそびえる荘厳な屋敷の姿。ギリシャのアテネ市でも一際目立つ豪華な屋敷。ずっと貧乏生活をしてきた羊にしてみればあまりにも豪華絢爛な光景に見惚れる様に唖然となる。

 月明かりに照らされた銀幕の世界。

 涼やかな印象を覚えるけれど、同時に無性に暖かな記憶を呼び覚ます。

 そして羊は一度だけこういった光景に覚えを抱き哀愁を思い出していた。

(……一〇年前を思い出すな)

 一〇年前。

 彼には。綾崎ハヤテには忘れられない記憶があった。一〇年前と言う自分にとって幾つもの出来事が存在したある日の日々。

 思い出す黄金の日々を。

 かつて互いに名前を訊き合い、そして左手を差し出して自分に道を示してくれた少女の姿を思い出す。心救われた日々の事を思い出す。黄金色の世界の象徴とも言うべき美しい金髪を持った一人の少女の事を思い出す。楽しかった。そればっかりを思い出す日々が今も脳裏に思い浮かんでゆくのだ。

 そして最後の瞬間を思い出す。

 噛み合っていたはずの感情が絡み合った刃となって砕けて終わった。あの最後。

 正しかったのは彼女で。

 間違っていたのは自分だった。それだけの話が待っていて、自業自得に終わった黄金色の日々が待っていたのだ。罪は自分にしかないと今でも思っている。いや、事実だろう。だからこそ自分はあの日の事を心の底でずっと罪としているのだから。

(ただまあ……ここで思い出すのは場違いだろうになぁ)

 奇跡が起きるわけでもあるまいに。

 確かにお金持ちの屋敷の様だが、ここで運命的に彼女と出会う何ていう結末が待っているべくもあるまい。そんな結果が待っているとしたら、最早どこか怖くすらある。けれど屋敷の造形の所為だろうか、どうしようもなく昔を思い出していた。

 蹄を一歩一歩歩ませて、花々の大地をゆっくり歩きながら鑑賞する。

(屋敷の人には迷惑だろうけど)

 花の匂いを嗅ぎながら羊はポツリと小さく、

(こんな場所で眠れるのだとしたら……僕の人生も最後に救いあったなあ)

 悲しい思いを馳せた。

 自分はもう終わりだから、と。高校生の身分にあるまじき安らかな最期を考察しながら羊はこの地に骨を埋める心づもりで最後の楽しみを十分満喫しようと思った。

 そして静かに眠ろうと。

 花々に包まれる世界は何処までも安らいだ心地に染まっていた。

 けれど現実はそんな当たり前の未来ばかりがひしめく世界ではなくて。

 むしろ現実は一つ先すら無限の樹形図として広がってゆく世界である。

 その事を羊は最後の最後と思っていた最中に理解する。

 サァ……、と風に揺れる姿があった。風にたなびく漆黒のドレスのスカートがひらひらと優雅に揺れている。同様に彼女の陽光を編んで紡いだかの様な綺麗な金髪も風にそよぐ。

 え……、と茫然とした声が喉の奥から零れた。

 その声にピクリと反応した様子で彼女がこちらを振り向く。

 端正な顔立ちだった。一〇人が声を揃えて美人だと呟きそうな程に綺麗な少女だった。凛とした顔立ち、煌びやかな真紅の瞳が神々しくすら感じられた。

 その姿が記憶の中の一人の少女と合致する。

 胸の中を信じられない気持ちが満ちてゆく。満ち溢れてゆく。

 アーたん……、と唖然としたまま彼女へ声を発した。

 彼女が本当に天王州アテネなのかどうか確かめる術がない。だが記憶の中の少女とこれ以上なく一致してしまう。目の前の少女が一〇年前、出会えた少女なのだと。

 こんなことがあるのだろうか。

 最後の最後でずっと謝りたかった、もう一度逢いたかった少女に出会う事等、こんな奇跡が存在しているのだろうか。ただ、それでも。綾崎にとって彼女と再び巡り会えた事は嬉しいなんてレベルではない。

 涙腺が緩んで、目尻が熱くなって仕方がない程の再会だ。

 過去の罪を今だけ忘れて。耐え切れず彼女へ手を伸ばしてしまう程に、触れたいと、声を訊きたいと、あの日を思い起こして堪え切れずそっと手を動かしかけた。

 風を切る音が聞こえた。

「何者です」

 切っ先が鼻筋に突きつけられた。冷淡な声が胸を穿つ。

 むき出しの敵意と一切気を緩める気配のない張り詰めた空気を身に纏い眼前の少女は何処からか取り出した剣を羊へ向けていた。羊は仮面の奥でただただ目を見開いて固まっている。ただ、固まっている。

 そんな気配も仮面は全てを隠すから。

 少女は今だ敵意を緩める事無く言い放つ。

「どこの手の者ですか。名はなんと言うものです」

 何処までも冷静で冷徹な声を淡々と言い放つ。

 その冷たさに羊が一昔前を思い出していた。別れの瞬間の冷え切った感情の言葉と今の状況が何処か似て合わさる。羊は声を振り絞った。自分はどこかの手先でもないと。

 そしてわからないかもしれないけど綾崎ハヤテだよ、と。

 声にして彼女へ届く事を祈って。

 言葉にする。

「■■■■――!!」

 けれど言葉にならない想いとなって世界に形を残す。同時に羊は理解した。

 思わずバッと口を塞ぎそうになる。

 自分の口から零れた訊くも悍ましい声音に愕然と理解した。寒気がする程に低く重く化け物としか、人が畏怖し批難する嫌い疎む化け物の鳴き声だった。

 五十嵐はこんな声の生物と一緒だったから怯えたのだと理解する。

 羊の着ぐるみの時はこんな声出なかった。だとするとこの影響を及ぼす正体は、

(仮面……)

 影響も特に大きくないと思っていた。しかし違った。水中だったから声を出せず、陸地に上がってからは混乱し、今の落ち着いた頭になったようやく理解した。自分がつけられた仮面の効力を理解する。

(コミュニケーションが取れない……!?)

 それが安栖里仮の『面財符』が面貌の一つ亡羊の嘆面≠フ効力であった。

 硬度が安栖里の面の中でも一段と強く条件が揃わなければ外れないのが本来。五十嵐の様に肉体が変化した事で仮面とサイズが合わず物理的に壊れたケースでなければ条件下でしか外れない仮面。

 そしてこの仮面にはいくつかの効力が存在する。

 羊が気付けた様に『他者との接触が難しくなる』と言う特性が。接触が難しくなる為に何が起きればいいのか。いくつもの正解があるが亡羊の嘆面≠フ効力は人語を話せなくなると言う効力があある。より正確には話す人語が化け物の呻き声に変声されるのだ。

 羊がどれ程感情を込めようと、少女の名前に親しみを込めようと、

「■■■■――」

 と、言った形にしかならない。敵意に塗れた怨念の籠った様な化け物の声としてしか成り立たない。その特性故にこの仮面は仮面の中でも上位の強固さを持ち条件下でなければ外れない。

 まさしくコミュニケーション破壊の仮面である。

 故に羊は絶句する。彼女に向けて何の弁明も図れない吐けない自分に絶句する。何度言葉を吐き出しても零れ出るのは化け物の唸り声だけ。

 自分ですら嫌悪感を抱く怨霊の様な声なのだ。

 声を向けられる彼女はより一層不快感と怯えを抱きながら剣を構えたまま近づいてくる羊から一歩二歩と後退しながら、

「何者か答える言葉は持ち合わせていなさそうですね……」

 ですが、と呟いて。

「それ以上近づいて来たならば容赦はしません。早々に引き下がりなさい」

 チャ、と剣を構えて体全身から噴き出る威圧感。

 取りつく島も無い。いや、話し合える余地も無い。彼女は自分には気付く気配が無い。どうしたら気付いてもらえるんだと思い羊の着ぐるみを脱ぎ捨てようとするも脱げない。当然でありスキルで固定化されたこの服装は脱げないし破ける代物ではない。

 ならば残された可能性は一つだった。

 ボディランゲージ。何らかの表現をして自分が敵でもないし彼女の知っている人物であると言う事を伝えるしかないと悟った綾崎は懸命に考えた。

 自分と彼女の間にある記憶を呼び起こす。

 あの日の自分達の絆を連想させれば、何かならないか。そんな淡い期待を抱きながら綾崎は右腕を伸ばす。あの日彼女が向けてくれた左手に触れた時のままに。

 声は届かなくても、この想いを届けられたなら、きっと。

「何やってんだ逃げろアンタ!!」

「■■■■――!?」

 下から突き上げる様な激痛が羊を襲った。全身を痺れる様な痛みが襲う。口から化け物の悲鳴が反響した。仮面の奥の口から思わず煙が吐き出された。

 大地を伝動して電動する一撃。地根伝発電≠ニ言う電撃だ。

 飛びそうになる意識を必死に掴みながらプスプスと焼け焦げながらも声の主へと目を向ける。

 いた。

 予想通りの相手が。思わず苦笑いすら出る相手がいた。そこには大地に手を当てて息を切らせながら傍目映るであろう化け物に襲われる少女と言う構図。その構図を少女を救うべく即座の行動を示しただろう少年の姿。五十嵐雷。

 その余った方の手は傍の壊したであろう街灯に触れている。充電しているのだろう。

 味方なら頼もしい力が自分に向いた時は本当に恐ろしい、と綾崎は思った。

 だけれどそれ以上に。

「俺が時間稼ぐから早く離れろコノヤロウ!!」

 肩を抉る様に電撃が突き抜けた。着ぐるみの中の身体から血が噴き出て止まらない。止まらなくなる。五十嵐の電撃技の一つ銃電≠フ弾丸が駆け抜けた。

 背後からの衝撃に、痛みに肩を抑えつつも羊は少女へ意識を向けるけれど、

「そこまでだ」

 ズン!! と天空から一人の男性が舞い降りる。片目を隠す形の前髪に鷹の様に鋭い眼光をした赤のタイを着用した燕尾服の男性。年は結構食っているだろう壮年の男性だ。だがただの老人とは思えず大地に降り立つと同時に巨大な三枚の瓦を突き立てて門番の様な威風堂々さである。その男性を見た瞬間に少女は安堵した様子で「バトラー」と、恐らくは彼の名前を呟く。

「御無事で何よりです、アテネ様」

「ええ。問題ありませんわ」

「それは吉報」

 厳格な声でバトラーは重々しく頷いた後に鷹の様な鋭い眼光を刃物の様に光らせ、

「正体は存じ上げぬが……、引きなさい異形の者よ。正体も分からぬ貴殿を天王州の令嬢に近づかせるわけにはいかぬのだ」

 すまぬな、と荘厳な威厳を放ちながら老執事は告げた。

 だが綾崎は引けなかった。『天王州』と『アテネ』と言うキーワードから間違いなく目の前の少女が自分の知る相手なのだとわかったのだから。何とかして伝えたい。

 自分は綾崎ハヤテなのだ、と。

 だがそんな想いは彼女の表情を見てどうでもいい塵屑の様に消えて、吹かれて、何処かへ砂塵の様に淡く脆く無くなった。

 少女の敵意と決意、そして僅かに怯えた表情。敵に対する立ち振る舞いと。

 バトラーの前方、左右に構える巨大な瓦が鈍いながらも鏡代わりとなって映る自分の姿を見て思わず羊の中の少年は瞳から輝きを失った。

 一目見て思う。

(ああ……、ただの化け物だ……)

 怖いとしか思えない。羊の着ぐるみの愛らしさ等蹂躙し、むしろ悍ましさを際立たせて周囲を恐怖させる悪魔のようだった。安栖里が付けた亡羊の嘆面≠ヘ正しく嘆いていた。絵画で見るムンクの『叫び』を更に悲壮にさせたかの様に悍ましい顔が映っている。

 羊の悪魔の様な、まさしくクリーチャーの姿が目に映る。

(そりゃ皆怯えるわけだよ)

 覇気のない声で小さく呟いた。その声もまるで怨霊の呻きの様で。

 道理で誰にも何も伝わらないわけだと理解する。

 前方にバトラー、後方に五十嵐と挟まれる形だが、そんなのまるで他人事の様に思いながら羊は項垂れる。これじゃあ何も伝わらないよ、と。僅かに表を上げて、少女を見た。

 違うんだ、と言いたかった。怯えさせたいわけじゃないと弁解したかった。

 でも発せられる声は化け物の敵意剥き出しの声しか出なくて。

 羊は再会した少女に背を向けて静かに歩き出した。五十嵐のいる方向へ、彼の横を通り抜ける形で心身ともにボロボロになりながら足を引きずる様に屋敷を去ろうとする。

 そして共に戦った事のある少年の横を通り過ぎる最中、

「止しなさい。ここまで傷付いた相手に手出しは良くはない」

 バヂッという電光が四散した。一瞬何が起こったのかわからなかった。ただわかるのは自分に伸ばされた五十嵐の手をバトラーが抑え込んでいると言う構図だった。五十嵐が訝しげな表情で、

「……ヤバイ化け物助けるんすか」

 不満そうに声を洩らす。

「生憎、ヤバイ化け物にしてはお嬢様に手出しが随分遅くてな。私の見立てでは……まあ敵意は発してこそいるが、ヤバイとまでは思わんのだよ」

 冷静に言葉で返す。

「……俺達、喰われそうだったんすがね」

 不服そうに呟きながら五十嵐はバヂンと手の電気を霧散させて溜息交じりに矛を収めた。

「そうなの……か? まぁ、それは大変だったろうが……」

 チラリと羊を一瞥し、

「すでに重傷過ぎる程に重傷だよ、この羊の……まぁ羊か」

「傍目どう見ても化け物じゃないすかコノヤロウ……」

「だがトドメを刺そうとするのは感心しないのでね」

 すっと身を屈めるとバトラーは取り出したハンカチを引き裂き、美味い具合に包帯代わりとして羊の肩に、腕に、脚にぎゅっと巻き付ける。

 その光景を見ながら五十嵐は「何で化け物助けるかねー……」と了承しきれない様子で呻くがバトラーの存在からか仕方なく背を向けて手出しを止める。

「早く去りなさい。動けるうちに、な」

 何か完全に化け物として三名はカテゴリーしているが反論を起こす気力すら羊には無かった。自分だってこの姿を見たなら化け物と思うだろうし、何よりこの仮面には発してもいないのに敵意を振りまいていると錯覚させる効力がある可能性を苦慮せざる得なかった。

 危ない存在としか思わせない事で接触を破壊する仮面なのだ、と。

 だから声に出してお礼を言う事も出来ず羊の中の少年は。

 絶望に塗れた光も映さない死んだ魚の様な人形の様な目をしたまま。

 ぺこりと小さくバトラーへ向けて頭を下げて屋敷の門から外へ踏み出した。

 怖いと思った。

 人と通じる手段が消え去ると言うのは、こんなにも怖いものなのだと実感しながら仮面の奥で無表情のまま決壊したダムの様に涙を流しながら。

 足を引きずって羊の着ぐるみの少年は街灯を頼りに闇の中へ闇の中へと溶けてゆく。

 その姿はまるで亡羊の様で。

 そんな後姿を見送りながら佇むバトラーに対して五十嵐は声を掛けた。

「……あの化け物、見逃していいのかよ」

「……あれだけの深手では同情の念の方が強いからな」

 厳かな声で呟いた。

「……だが仮に人へ危害があった際には責任を果たそう」

「遭ってからじゃ遅いぜコノヤロウ」

 納得行かなそうに呟いてから五十嵐は同様に屋敷から出て行こうとする。

「待ちなさい。あの羊について何か知っていれば尋ねたいのだが――。と言うかそもそも君自身相当に負傷している様だが……」

 あー、平気っすよー、と手を振って去ろうとする五十嵐がぐらりと揺れる。

 バトラーが気付いた瞬間には「あ。ヤベ……」と呟きながら「おい、君!?」五十嵐の体躯は力なく花々の中へと崩れ落ちて行った。少女の毅然とした声を耳にしながら、老執事の流石と言うべき対応の声を訊きながら。

 五十嵐雷は共闘したはずの少年のぼやける姿を霞みを掴む気持ちの中でふっと意識を手放した。 お前どこの誰で何処に行っちまったんだよ、と悲しげに呟いて。

 慟哭の音は夜に慎ましく消えてゆく限りで。

 運命の出会いは悲しくも狂々と回り出しているのだった。


【続】

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はい、第10話閲読ありがとうございましたー!!

そして読者の予想を見事に悪い形で裏切らせてもらいましたが何かぁっ!!←

えーでは恒例的ですが幾分解説を入れておきましょうか。

まず五十嵐ですが、彼は過去の諸事情うんぬんで化け物めいた類が憎いんですよね。以上やっはー。

五十嵐「適当!?」

そして安栖里の仮面の一つ亡羊の嘆面≠アれは被された対象が声を変声され、不快感と敵意を振りまき、周囲とのコミュニケーションを困難とさせるものなんですよねー羊の着ぐるみと相まって傍目、何かの化け物ですよ。妖気こそ放っていませんが恐怖の対象に見える感じになってるんですよねー怖い怖い。

羊「■■■■――(最後、適当すぎる)!?」

で、そんな状態だからこそアテネも雷も敵と認識した――はいいんですが前述通りに五十嵐は化け物嫌いでねぇ……。

と言う事で綾崎君に関しては全てに拒絶されて死んだ魚の目状態での日々が幕開けです、いやはや運命の開幕だねー♪

羊「■■■■――(悪魔……)!?」

さて、次回は天王州家での一悶着、そして綾崎君はどうなるか。といった具合でお送りしましょう。では、次回なのです!!

第11話もよろしくです、では、さらばっ!!