Re: 君と共に! 第一章 2月20日更新 ( No.50 )
日時: 2013/03/04 15:39
名前: 李薇

サブタイがひどい、という苦情はうけつけません

エリカ「…うん、何かしらねこのサブタイ…」

ふっ、気にしてはいけない…! 最初は騒がしい放課後、だけだったんだよ? でもメインはどっちかっていうと後半のこの文字じゃないかなと

エリカ「ひ、否定できないのがあれだけど…なんにせよどうぞ↓」

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第十話 騒がしい放課後――帰ってきたメイド


 日本某所の空港。

 金髪縦ロール、と至って目立つ外見の少女――天王州アテネは空港にてある人物を待っていた。

 道行く人々が「うわぁ…綺麗な人…」などと言いながら彼女の方を見てくるが、彼女自身はあまりそれには気付いていなかった。

 そんなこと気にかけていられなかった、といった方が正確だろう。

 彼女が気にしているのは今日日本着の飛行機に乗っていた2人の従者の内の1人―マキナだ。

 どうやら、ハイジャック事件などがあり、その混乱のせいでどこかへ消えてしまったようなのだが……。

『全く…』アテネははぁ、とため息をついて、『どうしてマキナはすぐいなくなってしまうのかしら…』

「まぁ、おバカさんですからねー」

「ええ、本当………ってええ!?」

 急に聞こえてきた声に驚くアテネ。

 それに対して、急に声をかけてきた方は「?」と首を傾げて、

「どうなさったんですかアテネ様? 急にそのような声を…」

「いやいや…! あなたはどうしてこう急に現れたんです…! 唐突でビックリですわよ…! しかもさりげなく内心読んでるし…!」

 それに対して、声をかけてきた彼女はにこにこ、と笑って、「…ま、メイドですから♪」と言った。

 メイドですから、なんて意味の分からないような…でもなんだか納得できるような言葉を発したのは自分よりも年上の女性。

 綺麗なさらさらの茶髪。そして髪と同色の瞳。一見、穏やかそうな目元。

 さらさらの茶髪は腰のあたりまで真っ直ぐに伸びていて、全体的にスラッとした体型の美人だ。

 服装は膝丈くらいまでのメイド服。決してコスプレではなく、―彼女は正規のアテネのメイドである。

「…何はともあれ、お帰りですわカレン」

「ええ♪ ただいまです♪」

 彼女の名前は咲城カレン(サキシロ カレン)。

 自分よりいくつか年上のとても有能なメイドさんである。…まぁ、有能とかそういうレベルを遥かに逸脱しているところはあるのだが…。

「あ、そうそう。マキナくんはすでに捕獲して車の中に」

「捕獲って…、もう少し言い方があるでしょうに…」

「ハンバーガーの匂いにつられてのこのこ出てきたので、このマキナくん用捕獲網でばしっと」

「本当に捕獲されてた!? そしてどっから出したんですのその巨大な網!?」

「見てませんでしたか? エプロンのポケットから…」

「物理的に不可能ですわよ!?」

「物理的に不可能でも、メイド的には可能ですってば♪」

「なんか意味が分かるような、分からないような文面ですわね!?」

「気にしちゃダメですよ♪」彼女はにこにこと笑いながら、「メイドですから♪」

「ああ、なんかもうそれでいいですわ…」

 彼女が「メイドですから♪」という言葉を発すると、もう何も言えなくなる。

 それくらい彼女の「メイドですから♪」には重みがあるのだ。―その重みを生じさせているのは過去の実績だろう。

 もう超人という域をはるかに逸脱した…そんなハイスペックすぎる自分の従者を見てアテネは「はぁ」とため息をつく。

「そういえば、アテネ様。昨日、電話で言っていたのは一体?」

「電話…」アテネは考え込んで、「…ああ。電話で言った通りですわ。神とパートナーになってパーティーに参加することになった、と」

 字面だけみると意味不明だな、とアテネは思った。

 が、この有能なメイドさんはそれだけで全てを悟ってくれているのか特にそれ以上言及はしてこなかった。

「パーティーですか…。懐かしい響きですね」

「ん? カレン、あなた知っているの? 神々のこの争いの事」

「あらやだアテネ様ったら♪ 私が知らないとでも?」

「…いえ、思いませんわね。ま、詳しくは私のパートナーに会ってからでいいですわね? あなたも長旅で疲れているでしょうし」

 お気遣いありがとうございます、というカレンの返答に頷いてアテネは車へと歩き出す。

 カレンはそんなアテネに続いて歩き出しながら、

「…さて…、今回で大詰めって感じですけど……。“彼”はどうしてるのかしらね」

 と、誰にも聞こえない声で小さくつぶやくのだった。












 その後、教室に帰ってきた明美とアイはというと、教室の窓際で談笑をしていた。

「ねー、明美のケイタイにも人が入ってるの?」

「はい?」

 急なアイの疑問に明美も疑問符で返す。

「ケイタイって中から声するじゃない? 私どうやってあの中に人が入ってるのか不思議で仕方ないのよね……ちょっと分解してみようと思うんだけど」

「………、ア、アイちゃんってケイタイのことあまり知らないんですか…? 海外って携帯がない…そんなことないですよね?」

 そんな会話をしている2人をハヤテは教室の入り口から見ていた。

 会話内容はあれだが、アイが誰かと話している現場は初めて見た。

「………あれは…確か桜井さん…。いつの間にアイと知り合ったのかな…」

「へえ、転入生友達できたんだ。」

 突如、後ろから声がした。

 そこにいたのは、黒髪の長身の少年…新橋ユウマであった。

「あ、ユウマ。珍しいね、この時間に来るのは…。朝から全部授業受けるの?」

「んー、エリカに出なさいよっ! って言われちゃったからね…」

「ああ…エリカさんに…」

 にしても珍しいな、とハヤテは思った。

 ユウマは基本エリカより強いので、エリカに怒られたくらいで出てくる彼ではないのだが…。

 と、そんなハヤテの疑問を察したのだろうか。ユウマは「ああ…、」と言ってから、

「いや、エリカがジャンケンで自分が勝ったら授業出なさいよ、って言ってきてさ…」

「はぁ…。それでエリカさんが勝ったの?」

「いやいや、俺が全勝」

「………、」

 新橋ユウマという少年は確かにハイスペックな少年である。

 ハイスペックな少年……であるが、ジャンケンまで強いのかぁとハヤテは愕然とした。

 多分だが、かなりの強運の持ち主なのだろう。

「あれ? それじゃ、何で教室に…?」

「…いやぁ」ユウマはふっ、と笑みをこぼし、「流石にわなわなと奮えながら『次…! 次こそは私が勝つ…! だからもう一回…!』って言ってるエリカを見てると…可哀そうになってきたから出てあげようかなと」

「…エリカさんが聞いたらすごい怒りそうだけどねそれ…」

 それはともかく、とユウマはアイ達の方に目を向けて、

「…よかったじゃん。転入生友達できて」

「え?」

「いや、綾崎は転入生と妙に仲良いから嬉しいだろうなぁって」

 まぁ…と曖昧な返事をするハヤテ。

 相変わらず鋭い友人だ。まぁ、自分が分かりやすいのもあるわけだが。

「…ま、その友人が明美ってのは意外だったけど」

「…? ユウマ、桜井さんと知り合い?」

「…あー、親同士が仲良いから知り合いではあるけど…高校入ってないから全然話してないから知り合いともう言えるかは微妙ってとこだけど」

 そっかぁ、とハヤテが曖昧な返事をしたところで不意にこんな会話が聞こえてきた。

「ところで、アイちゃんはどの辺に住んでるんですか?」

「へ?どの辺…って…ハヤテの部「どわあああああっ!!!!」何よ、ハヤテ」

「?」

 素で答えようとするアイときょとんとしている明美。

 そして横からかなり怪しい物を見るような目で見てくる鋭い男友達。
 
 やはり、ハヤテの安息の日々は遠そうである。










 昼休みになった。

 ハヤテとアイと明美は、人気の少ない裏庭の方まで来ていた。

 ユウマも誘ってみたのだが、エリカと食堂に行くからと断られてしまった。

 …しかし、本当に仲の良い兄妹である。

「…あ、あのっ、ところで…」
 
 お弁当を取り出しながら、明美はおずおずとアイとハヤテの方を見て口を開く。

 どうしたのだろう、とハヤテが明美の方へ視線を向けると、

「…2人は結構仲良しですけど…も、もしかして付き合ってたりとかしますか?」

「「!?」」

 その瞬間。お弁当のフタを開けているハヤテの手も、今まさにチョココロネを食べようとしていたアイも手も動きをピタリと動きを止めた。

 それは予想外の質問過ぎた。

 返事がないので明美は余計心配そうに、

「あの…だとしたら私かなりお邪魔なんじゃ…」

「い、いや!! 付き合うって!! 何言ってるんですか! ね? アイ?」

「そ、そうよ明美。そ、そそそそんなことありえないわよぜぜ、絶対に…」

 何故か妙に焦った返答するアイ。

 そんな返答をしたら余計怪しいのに、何で妙にアイは焦っているのだろうか?

 まぁ、唐突な質問に驚いているのかな、と適当にハヤテは結論づけるが、明美はまだ不安そうな表情で、

「で、でも…名前呼び捨て…ですし…」

「そんなこと言ったら明美さんも呼び捨てされてましたよ…!」

「へ? どなたに?」

「ユウマにですけど?」

 と言った瞬間、さーっと明美の顔が青ざめた。

 あれ…? とハヤテは首を傾げる。

 もしやこの流れはあまり触れてはいけないことだっただろうか…?

 でも青ざめるって…何があったらそこまでいくのか…。

『桜井さんに何したんですかユウマ…!』

 とはいえ、彼が何かをしたとも考えにくい。

 ともかくこの話題は避けた方がいいだろうとハヤテは判断した。

「…ま、まあとにかく全然お邪魔とかじゃないので安心してくださいね桜井さんっ」

「…そう…だといいんですけど…」

 おずおずとした態度のまま明美は、パカッと小さなピンク色のお弁当箱を開ける。

 ちらり、とハヤテが明美のお弁当に視線を送ってみると、中には様々な工夫が施された美味しそうな食材がたくさん詰め込まれていた。

「わー。美味しそうなお弁当ですね。桜井さんがつくったんですか?」

「え? いえ…これは、母が…」

「へー。桜井さんのお母様は料理が上手なんですね」

 と言われると「はい…♪」と明美は短くうなずいた。

 今度はちょっと笑顔だったから、ハヤテは少し安心した。

「私のお母さんは…私と違ってなんでもできるんです…。キレイで…美人だし…明るいし…」

「はむっ。へー。本当に美味しそうね…はむっ」

 チョココロネを一口ほおばりながらそう言うアイ。

 そして「…!」と目を開けて「このチョココロネ…良い感じの甘さだわ…!」とかなんとか呟いている。

 すると、明美がすっ…とお弁当をアイの方に差し出してきた。

「もしよろしければ…どれかどうぞ?」

「え? いいの?」

 はい、と明美は返事をしてから「…友達、ですし…」と何故か恥ずかしそうに言っていた。

 そんな明美を見てアイは少々笑みを浮かべつつ、タコさんウインナーを取って食べてみた。

「………うん。美味しい。あ、じゃ私のチョココロネでよければ…はい」

 アイは、チョココロネの下の方を少しちぎって明美に手渡す。

 と、明美は律儀に「ありがとうございますっ」と言ってそれを食べた。

 なんとも見ていて微笑ましい光景だなぁ、と思いつつ自分ここにいていいのだろうか? と少々疑問に思うハヤテ。

 と、そこでピリリリリ…とケイタイの音がした。

 アイは、ケイタイを持っていないしハヤテは教室においてきてしまった。

 ということは…、

「桜井さん。電話なってますよ」

「え? あ…」

 何故か申し訳なさそうに、いそいそとケイタイを開く明美。

 きっとメールでもきていたのだろう。

 が、それを見た瞬間、わかりやすいくらい明美の表情が暗くなった。

 チョココロネに夢中でアイはあまり気付いていないようだが、あからさまに先ほどまでの表情とは違った。

 明美は、ケイタイを閉じると、少しモジモジしながら、

「あ、あのっ、お2人とも今日はおヒマですか?」

「え? …僕は平気ですよ。」

「…私も平気よ」

「じゃあもし良ければ一緒に少し出かけませんか?」

 突然の誘いにハヤテは、首をかしげる。

 先ほどのメールにいったい何が書いてあったのかはわからないが、何かがあったのは確かだ。

「わかりました。大丈夫だよね? アイ」

「ええ。アンタがいいならね」

「………、ああ…まぁ…」

 アイが言っているのはおそらく特訓のことだろうが、まあそれは1回おいておこう。

 いっきにやっては伸びるものも伸びないし、何より明美の先ほどの表情がハヤテには、気になって仕方がない。

「…ありがとうございますっ」

 何故かそうやって笑った彼女の顔が、嬉しそうな悲しそうな…なんともいえない表情に見えた。










「はーいっ、じゃあ解散っ! 気を付けて帰んのよ!」

 雪路の声にはーいっ、とみんなが頷く。

 教室で「疲れたねーっ」などという声がこだまする中、ハヤテはカバンの中に教科書をつめこみ、帰りの準備を始める。

 と、もうすでに準備を終えたアイが横で何故かため息をついていた。

「…えと…どうしたの?」

「いや…真面目だなぁと思って…。わざわざ教科書持ち帰ってるなんて」

「いや、そりゃ持ち帰るよ…! アイは頭良いから予習復習なんかしなくてもいいんだろうけど…」

「…頭良いってわけでもないけど…。でもここの編入試験は満点だったわね」

「頭良いよそれ…!」

 と、語るギリギリ合格者のハヤテ。

 まぁ、あれから勉強頑張ってきているから徐々にあがってきてはいるのだが。

「…あ。それで桜井さんは?」

「ああ」アイは頷くと、「なんか校門で待ってるって。もうすぐ修学旅行なんだって? だからそれようの私服とかほしいらしいわよ」

「へーっ。じゃあ急がなきゃね」

 と言ったところで、不意に前の方の席の茶髪の少女が目に入った。エリカだ。

 彼女は上着を着てカバンを担ぐと―こちらの視線に気づいたんだろう。若干睨みながらこちらを見てきた。

「…何よ?」

「あ、いや…エリカさんにしては珍しいなぁと思って」

「…? 何が?」

「いや、今日はユウマが一緒じゃないんだなと思って」

「………、」エリカはちょと黙ってから、「…別にっ。いつでも一緒ってわけじゃないわよ」

「でも仲良いじゃないですか♪ エリカさん、ユウマのこと大好きですし」

 と言ったとたん。

 エリカは沸騰した薬缶のようにかぁぁぁ、といっきに真っ赤になり、

「ばっ、そういうこそばゆくなることを言うんじゃないわよ…! 別に大好きじゃないわよあんな奴…!」

「いやいや♪ またまたー♪」

「いやいや♪ またまたー♪ じゃないわよ!? ……そりゃ感謝はしてるけどさ。でも別に大好きとかそういうんじゃない」

 何故か必死に言い訳してくるエリカを見ながらなんかおかしくなってきた。

 誰がどう見ても兄が大好きであるのは一目瞭然なのだが…。

「で、ユウマはどうしたんですか?」

「知らないわよっ。なんか病院に用があるからってさっさと行っちゃったし」

「病院って…」ハヤテは急に心配そうな表情になり、「…ユウマどこか体の具合でも悪いんですか…?」

「さぁ? 知り合いのお見舞いとかじゃないの? アイツ自身は至って健康…よ…」

「あれ!? なんで最後だけ小さな声になるんですか!?」

「いや…ちょっと嫌なことを思い出しただけよ…」

 ははは…、と苦笑しながら呟くエリカ。

 ちなみにハヤテは知る由もないが、嫌なこと…というのはエリカが早とちりでユウマが死んでしまうと勘違いしたあの件のことである。(参照、番外編『新橋兄妹』)

 ハヤテはなんだろう? と不思議に思いつつも、まぁユウマが健康でよかったかなと思うことにした。

「…でもエリカさん1人じゃ寂しくないですか? なんなら、僕今からアイと桜井さんと買い物に行くんですけど来ますか?」

「買い物ぉ?」エリカは目を細め、「…アンタ真面目にもう少し男友達つくった方がいいんじゃないの? ユウマとかくらいしかいないんじゃない?」

「ぐはっ! いや…うん、わかってますって…」

「本当にわかってんの? …ま、私は良いわ。買い物とかあんま興味ないからね。服とかもTシャツGパン愛好家だし基本ユウマからおさがりもらってるから」

 じゃねー、と言って去っていくエリカ。

 それに対してハヤテも「さようなら♪」と言って、手を振った。

 …でも、さりげなく最後に出た言葉がやはり兄妹仲がいいのを表しているような…。

 そんなことを思ったが、照れ屋なエリカは認めてはくれないので心の中におさめておこう。

 と、そこで、不意に視線に気づいた。

 その視線の名は…何か気にくわない、といったものだろうか。

 そーっ、と振り返ってみると後ろで銀髪の少女アイがむすーっとした表情でこちらを見ていた。

「…えーっと…アイ?」

「……随分楽しそうね? 明美を待たせてるの…忘れてるんじゃないわよね…?」

 と、そこではっとするハヤテ。

 結局ここから校門までダッシュして明美に謝ることになったハヤテであった。


                                         第十話 END


以上…!

さて、今回も当然のように2話同時更新だったわけですがどうだったかな…!

最初のシーンでついに…帰ってきましたねあのお方が私の作品に…!

咲城カレン…アテネのメイドさんにして作中最強の方なのです! 私の作品では一番長い付き合いだったりね☆ かれこれ3年ほどの付き合いだよカレンさんとは…!

プロフィールは追々のせるとして、ちなみに彼女がアテネのメイドをやっている経緯などについては近々更新するであろう番外編でまた…!←

次回、少年現る。彼の名は一体―…! まぁ、ギャグパートだよねこの辺w ではまたー♪