Re: 君と共に! 第一章 2月4日更新 ( No.27 )
日時: 2013/02/09 22:27
名前: 李薇



どうも、李薇です!

今回も二話同時更新+番外編つきというとんでもねぇ無茶をやりましたぜ私は…!

特に番外編が…一万文字を超えているのである。

かなりボリューム満点な更新になっていますが…おつきあいください♪

そんなわけで修羅場突入な本編と、ほのぼのな新橋兄妹のお話の入った番外編をお楽しみください! どぞ!

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

第五話 心の悲鳴


 アイは、きょろきょろと辺りを見渡した。

 2人が立っている位置は交差点だ。

 ここから分岐点のように2つ、道が分かれていた。

「………このあたりだと思ったんだけど…」

「…はあ…」

 アイは今までにないくらい真剣な目をすると、

「今回の対戦相手は、電光を司る神ライとの戦いよ」

「電光…っていうとこの間の?」

「そ。私はアイツいけ好かないから好きじゃないんだけどさ。」

 アイは、はあっとため息をついた。

 まぁ、わかる。話を聞いてる限り、電光を司る神は姑息な手段を使うようだし、アイはそういうのが嫌いなタイプだ。

 多分彼女は出来ることなら全部正面から殴って終わらせたいタイプなのだろう。

「…んー、どっちにいるかしら…仕方ない。手分けしましょ。私はこっちを探すからアンタはそっち。見つけたら大声で呼ぶこと!」

「わ、わかりました!」

 2人は頷くと左右バラバラの道へと進んでいった。

 ハヤテが歩いているのは結構狭い道だった。車ではとうてい通れないだろう。

 しかも昼間なのに妙に薄暗い。何でこんなところにいるのか…、まぁ人気のない方がこちらとて好都合だが。

「…電光ね…」

 この間の紫電。

 たまたま、例の氷結能力とやらで止められたが…正直うまくいくだろうか?

 そういや、あれ以来能力の使い方については教えられていない。

『どうもよめないんだよなぁ…アイさんって…』

 協力してほしい、という割に情報を全然教えてくれない。

 パーティーのこともそうだし、兄のことも教えてくれない。

 そりゃ聞かれたくないこともあるのだろうが、協力するなら色々知っておきたいのも確かだ。

 結局電光を司る神もどこにいるかわからないしなぁ、とボソッとハヤテが呟くと、

「俺がどうかしたか?」

「!!」

 突然聞こえた声にハヤテはきょろきょろとあたりを見る。

 そして、しばらくして音源が塀の上だと気付いた。

 金髪に青い瞳の物静かそうな雰囲気の男―間違いなく、電光を司る神だ。

「この間はどうも」

「………、」

「まぁ、そう睨むな。俺は電光を司どる神、ライ。お前は…クイーンの契約者…そして、綾崎イクサの弟か」

「え、まあ…」

 ハヤテの曖昧なセリフに対して、ライはふっと笑った。

「お前…その様子じゃまだ知らないようだな。」

「え?」

 相手の言っている意味がわからなくて、きょとんとするハヤテ。

 知らない? まぁ、パーティーに関して言えば知らないことだらけではあるが…。

 そんなことを考えていると、予想外にも相手から返ってきたのは違う答えだった。

「…お前の兄がなぜ死んだのか、その理由を、さ」










 アイが歩いているのは薄暗い道だ。

 住宅街が並んでいる割に、結構暗めで夜は1人で歩きたくない感じの雰囲気だ。

 少なくとも、夜女の子が1人で歩くべきではないな…と思いつつ、

「………うーん。私は気配を読むような細かいことは苦手なのよね…めんどいし」

 1人そんなことをつぶやいたときだった。

「はぁ〜い♪」

「!」

 気の抜けるような軽い調子の声。

 そこにいたのは、1人の少女だった。

 明るい茶色い髪を肩くらいまで伸ばしているその少女だ。

 制服を着ているので高校生くらいだろうか?

「………アンタは?」

 間違いなく人間。それでも警戒心を募らせた声でアイは尋ねる。

「………、」彼女はちょっと黙ってから、「電光を司る神ライのパートナー。橋本結衣。フツーの女子高生…だったんだけどねー」

 結衣と名乗った少女はふうっとため息をついた。

 正直、全くと言って戦う気配を感じない。言っちゃなんだが強そうでもない。

 それでも見た目では判断できないので、アイはゆっくり構えをとって、

「………戦う気があるなら、相手するけど?」

 と、慎重な声で言った。

 いつでも氷の剣を出す用意はできている。

 それくらいの心構えはしてここにきている。

「え? 違う違う。私はさ、ぶっちゃけ戦いとか好きじゃないから、戦わなくてもいい方法を選びたいんだよね」

「?」

 その言葉に、アイは眉をひそめた。

 パーティーにおいて、戦わない方法。

 それは―…頭脳戦ということか? とアイは首をひねった。

 が、―次の瞬間すべてを察した。

「ようはさ…パートナーと神との間にある絆ってモンをさ…ぶっ潰しちゃえばそこでおしまい♪ …って思わない?」

「………ッ!」

 結衣の笑みは、楽しそうな笑みだった。

 まるで…人と人との関係をぶち壊すのが楽しい、と言いたげなように。

「…アンタまさか…アイツに…ッ」

「さあ?どうだろうね♪今頃ライが上手くやってるんじゃない?」

「ッ!」

 ヤバい、と思った。

 こんな少女に構ってる場合ではない。すぐ向こうに行かなくては…。










「…知らないって…何をですか?」

 ハヤテは、目の前にいるライに聞き返した。

 素直に答えてはもらえないとは思っていたが、案外ライは素直に口を開いた。

 まぁ、無論それが向こうの作戦なわけだが、ハヤテはそれには気付くことはできなかった。

「…さっきも言ったろ?綾崎イクサが何故死んだのか、だよ。」

「兄さんが何故死んだのか…?」

 ハヤテに対して、ライはふっと笑った。

「………、お前の兄はな…殺されたんだよ。」

「こ、殺された?」

 とはいっても自分の兄は、そう簡単に殺されるとは思えない。

 彼はとても強いのだ。そんじょそこらの奴に殺されるなんて―…と思う気持ちがあったが、現に死んでいると聞くとそれは否定はできない。

「…いったい誰に…?」

「………、」ライは少し黙ってから「今、お前はその犯人のもっとも身近にいるんだけどなー」

「………、」

 まさか、と。ハヤテの頭を最悪の可能性がよぎる。

 ありえない、と。頭の中では否定をしていた。

 でも、どこか―否定できない何かが時折心をよぎっていく。

 そんな混乱状態のハヤテの表情を見て、ライはただにやにや笑っていた。

 そして―、楽しそうに真実を告げた。

「そ。お前のパートナーのアイだよ。お前の兄を殺したのはな。」

 そのセリフと同時に、冷たい風がハヤテの体を突き抜ける感覚だった。

 自分の兄が死んだ、と聞いた時と全く同じ感覚だった。

「………え…」

 何か言おうと思っても、それ以上のことが言えない。

 アイが…兄を殺した? 何で? 何のために?

 いや、それ以前に真実なのか?

 でも、そうだとすると、自分に対してイクサの話をあまりしないのも―…。

「…なあ。お前そんな奴とパートナー組み続けるのか?いっそもうやめて…俺の協力をしてくれねえか?」

 混乱状態のハヤテの心を揺さぶるように、ライの重苦しい声が続く。

 嘘だ、そんなはずがない。

 そう否定しつつも、ライがあまりに饒舌に語るので、何が何だかわからなくなってしまった。

 大体、否定できるほど―…アイの性格を自分は理解できてはいない。

 と、その時。

「綾崎ハヤテ! いるなら返事しなさい!!!」

「!」

 聞き覚えのある―アイの声。

 なんだか、その声はいつもの彼女の声よりも焦っているように思えた。

それが聞こえると、ライはふっと笑い、

「じゃあな。お前が賢明な選択をすることを祈ってるよ」。

「………、」

 ハヤテは返事をすることはできなかった。

 が、ライは確かに笑みを浮かべると、次の瞬間には塀の上から消えていた。

 それとほぼ同時にタタタタッ、と軽やかな足音が後ろから聞こえてくる、

「いた! 返事しろっつったでしょ!!」

 走ってきたアイは少し息を吐きながら声を出す。

 それに対して、ハヤテのリアクションはなかった。

 そのことに疑問を思ったのか、彼女は「ん?」と首をひねって、

「…ねえちょっと。聞いてるの?」

「え? えと…。」

 どうしようか迷った。

 本人に聞くべきか?

 でも、そんなこと聞けるか? なんて聞くんだ?

 色々悩むことはあったけど…でも、疑念を晴らすためにも聞いた方がいい。

 その方が自分のためにも、アイのためにも良い。

 そう思ったので、ハヤテはゆっくり口を開いた。…実際少々声は震え気味だったから、動揺は隠しきれていなかったが。

「…あの…」

「え?」

 慎重にハヤテは頭の中で言葉を選びながら、

「…さっき…兄さんが…アイさんに殺されたって聞いたんですけど…あの人のウソですよね…?」

「!」

 その質問にアイは、大きく目を見開いた。

 それは今まで見た彼女のどの表情ともまた少し違っていた。

 しばらく沈黙の時間が続く。

 沈黙するってことは図星なのか? いや、そんなはずがない。

 さっきから疑問を抱いては否定するの作業を繰り返しながら、ハヤテは返事を待つ。

 正直言って、「は? アンタ何言ってるの?」と言われると思っていた。

 アイのことだから、またあの冷めた目で「そんなわけないじゃない、バカじゃないの?」と言ってくれると思っていた。

 が、しばらくしてから返ってきた答えはハヤテの期待を見事に裏切るものだった。

「…ウソじゃないわ」

 ピタリ、と一瞬時が止まった気がした。

 え、とハヤテが何か言葉を発する前に彼女はこう続けた。



「…綾崎イクサを殺したのは…この私よ」



 この時せめて、彼女がつらそうな表情でもしていたら。

 せめて、申し訳なさそうな声でその事実を述べてくれていたら。

 しかし、実際に彼女がこの時に浮かべていた表情は―氷のように冷酷な表情。

 それ以外の何でもなかった。

「…な…なんで…」

 なんとかハヤテとしては否定要素を見つけたかったからそう問う。

 ここでもし、納得できる理由が得られれば…彼女のことを許せる。

 しかし、

「私が決勝で戦ったのは闇を司る神。そいつは私たちに勝てないと踏んで、アテネを人質に誘拐したの。罠だから待てっていう私を振り払って、イクサはアテネを助けに行った。で、まんまとボコボコにされて人質にされたのよ」

「………、」

「答えるならこうね。足手まといになったから殺したの。それだけよ」

「…なっ!」

 相手が女の子だから少しとどまったが、そうでなければアイの胸倉に掴みかかっていただろう。

 それができないハヤテを、彼女はあざ笑うように、

「嫌になった? 私のパートナーでいるのが。まぁ、そうでしょうね? 邪魔になったら殺すようなペアなんて嫌だろうからね。そんなんじゃ自分にいつ矛先が向くかわからないもんね?」

「…っ!」

 気付くと、ハヤテの右手がぐっ、と拳を握っていた。

 それを見てアイはさらに冷酷な笑みを浮かべ、

「だったらやめれば? 私を殺せばそれで終わりに出来るわよ。兄の敵討ちもできて一件落着。パートナーに刃を向けられるのも、私は慣れてるわ」

 冷たい表情のまま、―そう告げた。

「…っ」

 ハヤテは、顔をそらすと元来た道をゆっくりと引き返していった。

 …アイの方を決して振り返らずに。振り返ったら、きっと彼女を許せなかったから。

 きっと彼女をそのまま放っておくなんて…出来なかったから。

 でも、振り返れば、彼は気づくことができただろう。

 彼女がこの時、―どれだけつらい表情を浮かべていたかに。

「………、」

 そして、もっと早く気付けばよかった。

 パートナーに刃を向けられるのに慣れるわけがないことに。

 彼女がどんなに苦しい思いをしてきたかに。

 …彼女の心がとうの昔に悲鳴をあげていたことに………。


                                         第五話 END



最後の最後にシリアス展開…!

君共一番最初のクライマックスですぜ…!

次回、10年前のパーティーで何があったのか…? こうご期待っ!

…さて、二話連続でいくよーっ☆