Re: 転生 (10月20日更新) ( No.20 )
日時: 2019/10/20 12:40
名前: masa

こんにちはmasaです。

本編の更新です。

どうぞ。
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前回、沙羅(ハヤテ)は同級生の男の子に告白された。


沙羅が告白されてから数日後。

「ルカ、出かけて来るな」
「あれ?ナギ、出かけるの?今日はお休みじゃなかったっけ?」

今日は休みだったルカが自室で寛いでいると、ナギが顔を出して言って来たので確認がてら聞くと

「まあ、私も偶には1人で息抜きしたいんだよ」
「ああ、そう。行ってらっしゃい」
「ああ」

挨拶を済ませ、ナギは出かけた。


                   × ×


ナギはとあるサッカー場に来ていた。
そして観客席を探し、

「お〜い、ハ・・沙羅ちゃん」
「近くに人が居ないので、何時も通りで良いですよ」
「そうか」

ナギはハヤテの直ぐ隣に腰かけた。そして周囲の人と距離があるのを確認し

「で、どいつ何だよ。お前に告白した男子って」

ハヤテはグランドを指さし

「あそこです。ああ、丁度ボール持ってる人です」
「ああ、あいつか」

ナギが見ていると、相手のディフェンダーを華麗にかわして疾走していた。

「ふ〜ん。サッカーはゲームの知識しかないが、上手いもんだな。ゲームだと「優秀キャラ」に分類されそうだな」
「ええ、たぶん」

少しの間試合の様子を見て

「あいつの事、ルカには言わない方が良いな」
「やっぱり、そうですよね」
「言ったりしたら、ルカの事だ。小学生の男子相手でも果たし状を出すぞ」

無いと断言出来ないハヤテだった。


                   × ×


さて。ナギがなぜ休日返上でサッカー場に来ているのかというと、話は5日程前に戻ります。

「え!?同級生の男の子に告白されたのか!?」
「ええ、まあ」

三千院家を訪れていたハヤテはタケルとの事をナギに話していた。

「ふ〜ん。因みに、どんな風に、なのだ?」
「どんなって。 普通に「好きです。付き合ってください」って」
「ほう。小4でそれか。ませてるな」

何故かナギはワクワクと顔を輝かせていた。

「んで?OKしたのか?」
「してないですよ。 小学生で付き合うって、幾らなんでも早すぎますよ。 聞いた所、お兄さんとお姉さんがいるとの事なので、ちょっと大人ぶって言いたかっただけだと思いますよ」

ハヤテの言葉にナギは

「(いや、それはお前の天然ジゴロが影響していると思うんだが)」

こう思ったが、言った所で無意味でしかないので黙っておき

「って事はあれだ。「私には婚約者がいるので」って断ったのか?」
「もう、止めてくださいよ。普通に「ごめんなさい」って言っただけです」
「ああ、そう」

学校の宿題をしているハヤテを少しの間見守り、ナギは

「で、どうするんだよ」
「取り敢えず、「自分が出るサッカーの試合を見に来てほしい」って言われましたよ。 ただ、サッカーは大まかなルールは知ってますけど、細かいルールは全く知りませんし」
「1人で行けば浮くんじゃないかって?」

フォローする様に言ったナギに頷いた。

「試合に出れるって事は凄い奴なのか?」
「さあ? でも、有名らしいですよ。上手らしいですし、他校の小学校にもファンが沢山いるみたいですし」
「へ〜。そうか」

そう言うと、ナギはスマホを取り出し

「それで。肝心の試合は何時なんだよ」
「次の日曜ですけど」
「えっと。 その日は大丈夫だな。何とか出来る」

何故か嬉しそうに言うナギに

「え!?まさか来るつもりですか?」
「当たり前だろ。この三千院ナギが見極めてやる。 これでも人を見る目は自信あるんだぞ」
「は、はあ」

反対した所で意味は無いので、成り行きに任せる事にした。

これがナギが来ていた理由です。


                   × ×


その後も試合を見続け、試合終了のホイッスルが鳴らされた。

「へえ。タケルって奴がいるチームが勝ったぞ。おまけにあいつ1人で3点も決めたぞ」
「素人目にも凄さは分かりましたね」

ハヤテとナギがこんな風に感想を言い合っている一方、タケルはチームメイトと勝利を喜びあっていると、ハヤテに気付き、騒いでいる美幸と取り巻きには目もくれずに

「五月女。 来てくれたんだな」
「ええ、まあ」

沙羅とナギのもとに一直線にやって来た

「ん!?そちらのお姉さんは?」
「ああ。近所の仲良しの」
「三千院ナギだ。よろしくな」

タケルがナギに挨拶すると

「お〜い、タケル〜」
「若しかして彼女か〜」

チームメイトがグランドから声をかけて来たので

「ああ、そうだぜ。 紹介する、俺の彼女の五月女・・」
「ちょ!?ちょっと待ってください。 否定してくださいよ。告白は断ったじゃないですか」
「え!?サッカーの試合見に来てくれたから、考え直してくれたと」
「どうしても、って言われたからですよ」

沙羅が言うと、タケルは少しは残念そうにしていた

「第一、小4なのに付き合うとか早すぎですって」
「そうか?ってか、そう言うって事は付き合っても良いって事か?」
「違いますよ。変な風に言葉の意味を取らないでください」

ナギはもめている2人を止めるべきか少しだけ考えていると、タケルは呼ばれ

「先行ってて、お母さん」

自身の母親にそう言った後、沙羅の方へ向き直し

「今日は来てくれて、マジでありがと、五月女。すげえ嬉しかったぜ」

そう言うと、スコアボードの方を見つつ

「今日の対戦相手な、かなり強いんだ。でも、五月女が見てくれていると思ったら、何時も以上に動けたんだ。だから、勝てたのはお前のお陰だよ」
「まあ。お役に立てたのなら、良かったです」

すると、タケルは真っ直ぐ沙羅と向き合い

「前も言ったけど、もう一度言うな。 俺、お前が好きなんだ。顔もそうだけど、クラスメイトにも敬語使っちゃう所とか、女の子なのに自分の事を「僕」って言っちゃう所とか、すげえ優しい所とかさ。確かに前も優しかったけど、最近レベルアップしたって言うのか?本当に優しくなったよな」

ここまで一気に言うと、一旦息を整え

「それにさ、お前の出している空気って言うのも好きなんだ。本当に優しい奴って分かる空気って感じがして。お前は知らないかもしれないけど、クラスの男子で俺以外でもお前の事が好きって奴、多いんだぜ。 お前が「まだ早い」って言うなら、待つよ。待たせてくれ。俺の気持ちは変わらねえからさ」

一部始終を聞いていたナギは複雑な感情にみまわれた。

「言いたい事は全部言ったよ。 じゃあ、また学校でな」

そう言い残し、タケルは駆け足で母親の元に向かった。


                   × ×


ナギとハヤテは一緒に帰路に着いていた。

「なんだか、随分真っ直ぐな奴だったな」
「ええ、まあ」

ナギは少し考え

「お前さ、どう思ってるんだ? ルカは「8年待って結婚する」って冗談抜きに言ってるだろ?その事もだし、あいつの事もさ。 今のお前の正直な気持ちを聞かせてくれよ」

ハヤテは少しの間考え込んだ後

「ルカさんとの事は、色々と複雑ですよね」
「まあな。今のお前は女だし、ルカも女。同性婚は日本じゃ認められてないもんな。認めようって動きはあるにしろ。あいつの事だから本当に政治家になって法律変えてでも自分の気持ちを貫くだろうし」

ナギの言葉にハヤテは否定も肯定も出来ないでいた。

「それで、あのタケルって奴はどうなんだ?」
「・・分かりません。 確かに今の僕には「前世である綾崎ハヤテの記憶」が残っています。ですが、今の僕は女の子なんです。つまり、「女の子の気持ち」も持ってるんです。あんな風に告白されて、嫌な気持ちが無かったのは、正直本当なんです」

ハヤテの言葉にナギも複雑な顔をし、

「ルカはお前を喪って以来10年間、本当に寂しそうだった。心配になる程に。 だが、形はどうあれお前が戻って来てくれて、あいつは本来の明るさを取り戻したんだ。お前の事情とかは理解出来ない訳じゃ無い。だが、あいつの事は真剣に考えてやってくれ。どうしてもってときは、私が何とかしても良い」

ナギの真剣過ぎる表情と声色にハヤテは

「ルカさんとの事は、先程の事以外にもあるんですよね、事情が」
「え!?」
「・・何でも無いです」

笑顔で誤魔化され、ハヤテに「もうここで良い」っと言われたので、分かれた。


                   × ×


ナギが帰宅すると、ルカが出迎えてくれた。

「どう?息抜きは出来た?」
「・・まあな。 お前は何してたんだ?お前も休みだったわけだし」
「これです」

ルカが差し出して来た物を見てナギは

「懐かしいな、それ。昔を思い出す」
「でしょ〜?」
「今こうしてみると、酷いもんだな。よくこんなもんを世に送り出したよ。若さって怖いな」

苦笑いのナギに

「ところでさ、ナギ。頼みがあるんだけど」
「何だよ。別に構わんが」
「今のハヤテ君、つまり五月女沙羅ちゃんのご両親ってどんな人なんだろうね」

そう言うと、一旦間をおき

「ハヤテ君だった時の両親は「救い様が無い程のクズ」だったでしょ?だから五月女沙羅ちゃんの両親がどんな人達なのか、気になるでしょ?」
「確かにな。言われてみれば気になるな」
「って事でさ。ナギなら調べられるんじゃない?三千院家の力を使ってさ」

真面目な顔のルカにナギは

「分かったよ。相手がよっぽどじゃなきゃ、何とかなるし」
「じゃあ」
「任せろよ。直ぐに手配する。 結果は割と早く出ると思うぞ」

ナギに言われ、ルカは笑顔になった。


                   × ×


一方その頃、同時刻。

沙羅は現在の家に帰宅すると、ある事に気付いてしまった。
その為、出来る限り静かに自室に行こうとしたが

「沙羅!!!」

突然呼ばれ、緊張が走った。


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以上です。

次回は続きです。

では。