Re: しあわせの花(ハヤヒナ)【アフター第1話その?】暫定最終回 ( No.72 ) |
- 日時: 2012/07/13 00:01
- 名前: ロッキー・ラックーン
- 参照: http://hinayume.net/hayate/subnovel/read.cgi?no=7738
- こんにちは、ロッキー・ラックーンです。
久々の更新は、ヒナ編を終盤に迎えようというお話です。 間が開いてしまってますので、ヒナ編これまでのお話はページトップの目次からご覧ください。(←さりげに宣伝)
ヒナ編3話は涙で終わってしまいました。 あくまでポジティブポジティブに進むのが、この物語です。 …というような作者の反省を活かしたお話として、皆様に伝えられれば幸いでございます。
それではどーぞ!
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いきなりの話になるけど、私こと桂ヒナギクは負けず嫌いだ。
これは幼少の頃から何ひとつ変わってない自分の性格だと思う。 例えばテストだとか、マラソン大会だとか、順番がつくものはもちろんの事。 果ては「バスの降りますボタンを誰よりも早く押す」だとか「帰り道の水たまりを全部飛び越える」みたいな自分ルールに関してもこだわりが強い。
そんな負けず嫌いの権化のような私だけど、最近完膚なきまでに叩きのめされた事がある。 「それ」はとても単純な事だけど、私にとってはとても難しくて、まさに「生まれ変わった自分」にでもなれなきゃ無理と思える事だった。 しかしその大敗北の中で、ひとつ得たものもある。 「生まれ変わった自分だったらこの勝負に勝てる」という確信だ。
私は負けず嫌いだ。 このまま負けっぱなしで終わるだなんて、ありえてはいけない。 生まれ変わらなきゃ勝てない…上等じゃないの!
最高の私を、見せつけてあげるわよ!!
しあわせの花 -Heart of Daisy- 第4話【 Spring will come!! その@『決心』 】
「で、ヒナさん。大事な話というのはいったい何かな?」
「うん。順を追って話すから、落ち着いて聞いて欲しいの…」
冒頭から真剣ムードで話し込むのは、私こと桂ヒナギクと親友の西沢歩の二人。 前回(ヒナ編第3話)涙した夜から数日後、私はひとつの決心をした。 今日は、それを歩に伝えようと思い、いつもの喫茶店に呼び出したのだった。
その決心というのは、以前宣言した事を撤回するというもの。 そういった行為を歩に対してするのは二度目になる。一度目は…『ハヤテのごとく!』原作をどうぞ。
というわけで、前科のある私は、非常に緊張した面持ちで彼女に向き合うのだった。 テーブルの上には、これまでオーダーした飲み物のカップが二つずつ。 ちなみに、既に下げてもらったものが一つずつある。 私達がこの客席に着いてから、一時間強が経過していた。
「歩…私ね、この前…」
「うん」
「ハヤテ君に勉強を教えてて、その後、いつものお礼にクッキーを焼いたって言って私にくれたの。そのクッキーが美味しくて、私の事を見てくれる笑顔が嬉しくて、『ハヤテ君が好きだ』っていう気持ちが止まらなくなったの。…でも、結局ソレを言えなかった」
「…」
「それで、やっと気付いたの。『ああ、自分から好きだって言う事が悔しいんじゃなくて、そんな簡単な一言も言えない自分が情けなくて悔しいんだ』って。ようやく、ほんの数日前に」
「…そうなんだ」
「だから私、変わろうと思うの。ハヤテ君への気持ちをアウトプット出来る自分に…!『自分からは告白しない』っていうやつ、撤回させて欲しいの…」
「うん。ソレが良いと思う」
歩は優しい笑顔を絶やさない。 多分、私がこういう話をするだろうと分かっていたのかもしれない。
「ゴメン、私…歩に言った事、なにひとつ守れなくて…」
「そんな事いいよ。好きになるのは仕方ないし、好きな人に自分からは告白しないっていう方が変じゃないかな?むしろ、ヒナさんがようやくスタートラインに立ったんだなって…私はそう思う」
思い返してみれば、彼の事となると私はいつもおかしな選択をしてしまっていた。 その度に私の話を聞いてくれたのは歩だった。 歩のおかげで、少しずつ、だけど確実に、私がつまらない意地を張る場面は減っていった。 恋敵のはずの私が道を踏み外す度に、そこからの軌道修正をしてくれた。
「歩…ありがとう…」
「お礼を言うにはまだ早いんじゃないかな!ココからなんです。ヒナさんがハヤテ君と恋人同士になって初めて一つの節目になるんです!!」
「…そうね。私も歩のように、好きだって…きっとハヤテ君に言ってみせるわ」
「その意気です!そうと決まれば、景気付けの甘いものですね。マスター、デラックスチョコレートパフェふたつ〜!」カシコマリマシタ-
歩が注文したゴキゲンメニュー。 コレを食べ終わる時には、彼に私の気持ちを打ち明ける覚悟が出来る。 そう思いながら、夢中になってパフェに食らいつく歩を上回るペースで食べ終えた。
「そーいえば、ヒナさん」
「ん?」
「私、こないだハヤテ君から告白の返事をもらいました」
「…そう、なんだ」
あまりにも急な告白。私はあえてその結果は聞かない。 どちらにしても、私からどうこう言うような事じゃないと思ったからだ。
「『ヒナさんが好きだから』って、ハッキリと断られました」
「……」
歩は複雑な表情を浮かべていたが、どこか吹っ切れたような爽やかさを感じる事が出来た。
そして、以前ナギから聞いた「ハヤテ君は私が好きだ」という情報…改めてそれが事実であると知って嬉しい反面、親友の恋の終わりが自分によるものだという事に胸が締め付けられる。
「だ〜か〜ら、ヒナさん!」
「はいっ!?」
「私も心置きなくヒナさんの応援に回るんで、そこんとこヨロシクです!!」
「…うん!」
胸を張って言い切る歩の姿は、これまで見たどの彼女よりも頼りがいがあった。 やっぱり私、この人の事がスキなんだと改めて思った。
「でも、私まだまだハヤテ君の事好きだから、油断しちゃダメですよ〜?」
「え…?そうね、私も負けないわよ〜」
この夜、生まれ変わった私に大チャンスが訪れる事を、この時はまだ知る由も無かったのだった。
【その@終わり】
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「ただいま、アリス」
「あらヒナ、おかえりなさい。待っておりましたわ。とりあえずお茶でもいかがです?」
「うん、いただくわ」
時は移って土曜日の夕方。 学校からアパートに帰って来て最初に私を迎えてくれたのは、私の同居人兼ラブ師匠。 いつもと同じく、縁側でお茶をすすっていた。 ちなみにアリスのお茶のメニューは毎日マリアさんが変えてくれているらしく、今日は玄米茶だった。
「今日の修行はお庭でやります。ちょうどハヤテの帰りも遅いようですし、お夕飯までみっちりですわ!」
「了解であります、マスターアリス!」
↑のやり取りは私とアリスのもの。 修行の時はこうしないといけないと、ナギから教わったらしい。 多分、なにかしらのアニメの影響を受けているんだと思う。
帰ってきて早々、制服を着替えもせずに縁側にカバンを置いてアリス…ではなくてお師匠様に対するのだった。
しあわせの花 -Heart of Daisy- 第4話【 Spring will come!! そのA『 Do my Best! 』 】
「いよいよ明日はハヤテとデートですわね。コレまでヒナは、私の厳しい修行に弱音を吐く事もせずに、本当によく耐え続けてきました。今日は総仕上げに、明日のデートのシミュレーションをやろうと思ってます」
「して、庭でする修行というのはなんでございましょう?」
「チッチッ、ヒナ…『急いては事を仕損じる』ですわ!順を追ってお話ししますわよ」
「ハイ!」
↑のやり取りは私とアリスのものです。念のためもう一度。 お師匠モードになると一変して違った雰囲気になるアリス。私をたしなめるような素振りはいつもの事だ。
「さてヒナ、『恋人同士になる前のデート』で一番重要な事は何か、分かりますか?」
「う〜ん…会話の内容とかでしょうか?」
「確かにそれも重要ですわね…友達以上恋人未満な気になってる異性に、『犬のフンとかりんとうを間違えた話』をされたりでもしようものなら、雰囲気は台無しになりますわ」
「はぁ…」
ツッコミどころがありすぎる例えに、虚を突かれて何も言えない私。 まさかアリス……いや、ここでは何も問うまい。
「しかし、それよりも何よりも大事なものがあります。『二人の距離』、"distance"ですわ!! りぴーとあふたみー、"distance"!」
「でぃ、でぃすたんす…」
「ん〜、ナイスな発音ですわ!」
「ど、どうも…」
アニメ2期の24話を思い出すヒマも無く、話がだんだんと脱線していくのは、もはや修行の定例だ。 うさん臭い英会話教師は話を続ける。
「普段から顔を合わせている者同士のデートで重要になるのは『デートでしか得られないプレミアム感』です。それを一番に演出するものが、『距離』なのです!!」
「なるほど…」
「勉強を教える時や、洗い物をする時も確かに距離自体は近くなります。でもそれは『近くにいる必要があるから』であって、『近くにいたいと思っている事のアウトプット』ではないのです。ココまでは分かりますか?」
「ハイ、とても分かりやしゅうございます!」
「ですから、勝負は『移動する時の二人の距離感』、コレに尽きるのです!!」
「つまり一緒に歩いている時や、電車やバスに乗ってる時の位置取り…という訳ですね?」
「さすがヒナ、ソコまで理解してらっしゃるなら…もう、今回の修行の内容はお分かりですね?…マリアさ〜ん、出番ですよ〜!!」
「はーい、待ってました!…本当に、出番を待ってました…」
お師匠の指パッチンで現れるは、このアパートの家事の総指揮官マリアさん。 その出で立ちは普段のメイド服ではなく、デニムにTシャツという随分とラフなものだった。
「マリアさん、その格好は…?」
「ヒナ、ココでは『コーチ』と呼びなさい。マリアさんには今日の修行ではハヤテ役になってもらうべく、ハヤテの『歩き方』から『乗り物に乗る時のクセ』まで、ひと通りのハヤテの動きをマスターして頂きました!」
「ハヤテ君の動きィ?」
「ハイ!ヒナギクさんのために私、頑張っちゃいました!」
キャピという効果音が着いてきそうなマリアさんの素振り。 それにしても、「ハヤテ君の動き」って…? なんだか意味が良く分からない…。
「むむ、イマイチリアクションが悪いですわね…ではマリアさん、例の手を!」
「お任せください!…コホン、『ヒナギクさん、お手をどうぞ』」 ←『』囲みは白石涼子ヴォイス
「!!?」
一瞬、何が起きたか分からなかった。いや、今でも理解できてないけど。 マリアさんの口からハヤテ君の声が出たかと思えば、私の手を引く強さや速さ…マリアさんの取る挙動の全てがハヤテ君のものと同じ感触を私の脳みそに覚えさせたのだった。
「『ヒナギクさん、僕は貴女の事が好きです。僕とお付き合いしてください!!』」
「ひゃ…ひゃい、よろこんで…」
相手はマリアさんなのに、ドキドキが止まらない。 身に纏うオーラというか、雰囲気までもがハヤテ君と同じものに感じるからか…。 ああ、このまま私のカラダもココロも預けてしまいたい…!!
「どうですか、ヒナ?コーチの実力、分かっていただけましたか?」
「は、ハイ!よろしくお願いします、コーチ!」
「うふふっ、メイドさんに不可能はありませんわ!」
「では修行を始めますわね。まず最初に…」
庭先で行われる奇妙な修行は、夕飯前まで続くのだった。 果たしてこの修行の成果を彼に見せる事が出来るのだろうか? …などと細かい事を考えるのはいったんやめよう。
・・・
「では、今日の修行はココまでにします。ヒナ、お疲れ様でした。本当によく頑張りました!」
「ありがとうございます、師匠!!しかし…」
「なんでしょう?」
「距離感を掴む修行だったはずですが、最後には相撲の稽古になってしまって…大丈夫なのでしょうか?」
「ヒナ、私の修行にムダなものなど一切ありません!精進あるのみです!!」
「ハイ、疑って申し訳ありません。頑張ります!!マリアコーチもありがとうございました!」
「うふふっ…頑張ってくださいね!」
なんか色々ごまかされたような気がするけど、この二人が大丈夫だっていうなら多分大丈夫!!…だと思う。 明日のデートでは見てなさいよ、ハヤテ君!!
【そのA終わり】
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【あとがき】
ヒナ編完結に向け、遊園地デート前のヒナを書いてみました。 では、いつものように解説を…
■タイトル
すべてヒナのキャラソンからです。 ただ、「Spring has come!!」にすると過去の事になってしまうので、そこらへんはいじってます。
『決心』 →HiNA2からです。ヒナの「告白するぞ!」という気持ちを表すには最適なタイトルですね。 ちなみに曲の方はビーチバレーのあたりを表現してるらしいです。 「最高の私を見せつけてあげる」というフレーズがとても印象的で、使ってしまいました。
『Do my Best!』 →アニメ2期のキャラソンから。懐かしい…。
■その@
ハヤテがナギ・アリスから映画のチケットを貰う日の夕方のお話です。 「歩の片想いへの決着」と「ヒナの気持ちを前向きにさせたい」というのがテーマでした。 客観的に見た歩の恋は決着しましたが、歩自身のハヤテへの想いの決着がまだついていません。 これも「やりたい話」のひとつなんですよね…。
■そのA
デート前日、アリスの地獄の特訓編です。 二人の会話はGガン●ムの流派東方不敗師弟コンビのノリです。笑
距離感の修行を積んだヒナ。 ハヤテ編6話で千葉県の某遊園地的な場所に行く際のハヤテのモノローグ、「駅までの道のりも、電車の中も、とにかくヒナギクさんを近くに感じる事が出来て、これまたとってもイケてる感じだ。」というのを読み返して思いついたお話です。
マリアさんの万能っぷりを変な方向に出してみました。 久々に書いたらマリアさんをもっと出したくなったので、次回にも登場してもらおうかなと思います。…多分。笑
さてさて、前話とはうって変わって前向きなヒナを書くことが出来たかなと思います。 「告白する!」と意気込むヒナですが、実際はしませんでしたね。 次回はそこら辺の補完をするお話を予定しております。遊園地前のお話が続く予定です。
ご感想・ご質問などお待ちしております。 ありがとうございました。
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