Re: しあわせの花(ハヤヒナ)【第6話更新】 ( No.30 ) |
- 日時: 2011/11/19 06:57
- 名前: ロッキー・ラックーン
- 参照: http://hinayume.net/hayate/subnovel/read.cgi?no=7738
- こんにちは、ロッキー・ラックーンです。
今回こそデート編です。 それではどーぞ!
------------------------
第6話【 Steppin' 】
さて、前回のタイトル前からの続きです。 待ち合わせ時間の1時間以上前に集合した僕たち。
ちなみに、待ち合わせ時間があるという事は、僕が先に来る事が出来ていれば、彼女が予定より早く来れた時間がそのまま、一緒にいられる時間となる。 つまり、「ヒナギクさんが僕を待っている」などという、あまりにも無駄で馬鹿馬鹿しくて勿体無い時間が発生しない。 よって約束の2時間前に来ている事なんて、僕にとってはなんらおかしな事ではなかった。
「映画の時間まで随分あるし、お茶でもしましょうか?」
「そうですね、是非!」
やった、期待通り!いや、期待以上!! 本来なら僕が提案しようと思っていた事を、ヒナギクさんから言ってくれた。 かなり幸先の良いスタートではないだろうか…。
「ココに入ってみませんか?」
「ええ、良いわよ。初めて入るお店よ…」
「僕もです」
映画館の方向に歩いていった所にある少々古そうな喫茶店に入った。 ドアにつけてある鈴の音とともに、60歳手前くらいになると思われるマスターの「いらっしゃい」の声が僕たちを迎えた。 マスターは僕と目が合うと、優しい笑顔で目配せしてくれ、僕もそれに対して軽い会釈で返した。
というのも実は昨日、今日のデート(って言って良いんですよね?)のための下見でこの近辺をくまなく歩き回ったのだ。 前回の映画の時の反省ももちろんあるが、なにより今まで行った事のない所から、「ヒナギクさんと初めて二人で行った思い出の場所」を作りたいと思ったからだ。 もちろんこの喫茶店にも立ち寄った。コーヒーが美味しいかったのもあるが、初対面の僕のくだらない話をマスターがとても親身になって聞いてくれた。 そんな事もあり、本番の今回ヒナギクさんを連れて来る事にしたのだ。 ちなみにヒナギクさんに対して言ったセリフは、「貴女と二人で入るのが初めてだ」という意味で返したので、ウソをついた訳ではない。(かなり苦しいかな…)
「はい、おまちどうさま」
「「いただきます」」
僕はホットのブラック、ヒナギクさんはホットのミルクティを注文。 好きな女の子の手前だからカッコつけた訳ではなく、僕はブラックコーヒーが好きだ。 両親の下にいた時は、それはもう薄いコーヒー(粉1に対してぬるーいお湯90くらい)しか飲んだことが無く、砂糖やミルクなんてものの存在すら知らなかった。 5歳くらいだかの時に、父親の仕事(もちろん犯罪です)の手伝いの帰りに一回だけ寄った普通の喫茶店のコーヒーが僕にとっての究極であり至高であった。そのため、初めて三千院家御用達のコーヒーを飲んだときに「コーヒーのIT革命や!」と叫びまくったのは言うまでも無い。
「美味しいわね」
「そうですね」
どうやらヒナギクさんにも気に入って貰えたようだ。 美味しいものを口にした時の顔というのは、本当に幸せそうなものだ。 そんな彼女の顔を見ている僕はもっと幸せだが。
「それでね、またアリスったら…」
「ハハハ…」
それから、他愛もないお話を1時間ほど。 ずっと喋りっぱなしだった訳ではない。会話が途切れると、その都度ヒナギクさんは僕に目を合わせて笑いかけてくれた。 その笑顔を見る度に、僕の鼓動は経絡秘孔を突かれたかのように熱くなったのだった。 やばい…可愛すぎるぜ…
「「ごちそうさまでした〜」」
「ハイ、ありがとうございました」
そんなこんなで、映画の時間にも良い頃合いになり、席を立つ。 お会計には僕一人で行ったが、その手にはヒナギクさんから貰った小銭を持っていた。 というのも、今回のデートでは「自分の分は自分で払う事」をヒナギクさんから強く提案され、僕もそれに応じたのだ。 つまり、お金を出す事以外でヒナギクさんを満足させる手腕が問われるのである。
「可愛らしい娘さんじゃないですか」
「えへへ…そうですよね…」
気を利かせてくれたマスターの言葉に、なんともアホみたいな答え。 これも若さゆえの過ちで見逃して欲しい…
「また、お二人で来てくださいね」
「ええ、きっと…」
マスターのセールストークに、絶対の自信は無いけどとりあえず答える。 今度は恋人同士になって来れたら…最高だなぁ。
「お待たせしました!」
「いいえ〜。良いお店だったわね」
「気に入って頂けて何よりです!さて、映画館に向かうとしましょうか」
「うん!」
映画館までの道のり、約300メートル。 ヒナギクさんの両手…手ぶら。綾崎ハヤテの両手…手ぶら。
う〜ん、手を握りに行って良いのだろうか… この前(第2話参照)はあんまり意識しなかったけど、僕はなんて羨ましい時間を無駄に過ごしたんだ! 何かきっかけがあれば…!!
コツン
と、不意に僕の左手がヒナギクさんの右手に当たってしまった。
「あ、スミマセン!」
「いいえ、大丈夫よ…」
コレがきっかけなのか!?行っちゃっていいんですか!? いや…でも…ちょっと痛い思いさせて「手を繋がせてください」だなんて厚かましいよな…
と、グルグル考えてる内に映画館にご到着。「いくじなし…」ボソッ
「えっ?なんでしょうか…?」
「あ、独り言よ。気にしないで」
完全にテンパってたので、その時のヒナギクさんの言葉を聞く余裕など無かったのだった。 はぁ…僕ってヤツは…orz
おおっと、いけない!気を取り直して映画だ! さすがに前回のような(原作第16巻参照)お化け屋敷みたいな所ではなく、最近流行りのごくごく普通のシネコンというやつだ。
映画の内容はというと…いわゆる「純愛ラブストーリー」で、笑いどころが無い「マジな感じ」だ。正直あんまり興味は無い。 観るなら断然、今年夏に公開された執事コメディのアニメ映画だ。(主人公に片想いの生徒会長の娘が最高に可愛い!!) まあそんな事を言っても、ストーリーが始まってしまったら最後まで見るのに変わりはないのだが…
「私もこの映画観たかったのよね〜」
「そうですか〜、良かったです!」
しかしながら、ヒナギクさんの掴みは良さそうだ!ありがとう、アーたん、お嬢様!! この言葉に、僕の映画への興味が一気に沸いてきた。
・・・(上映中)
いや〜、しかし本当にマジな感じですよコレ… あ、でもやっぱりヒナギクさんは見入ってる。 僕も終わった後で内容話せるようにしないと!(←すっかり邪念ばかりの綾崎ハヤテ君)
・・・(そして映画はクライマックスへ)
おお…なかなか感動的で少しウルッと来ちゃうな。 と思いながら、横のヒナギクさんを見てみると…大号泣。
「ちょ…ック…ゴメン…ね…ヒック…気に…しないで…」
「……」
僕は何も言わずに、ヒナギクさんの目の前に自分のハンカチを差し出した。 多分、泣き顔を僕に見せるのは彼女にとってかなり悔しい事だと思う。 僕なりに精一杯気をまわした結果の行動だ。
「ありがと…」
その言葉に僕は笑顔だけで応える。 映画を存分に楽しんでいるヒナギクさんの邪魔にはなりたくなかった。
・・・(特にハヤテ的なオチも無く、無事に上映終了)
「いや〜、なかなか感動的でしたね」
「……」
ゔっ、ヒナギクさんは俯いたまま。 映画の掴みが良過ぎたのが失敗だったかな… 僕は、かける言葉をあまり無い脳みそのすみずみに至るまで探した。 …が、ヒナギクさんはその俯いた顔を少し上げて上目遣いで
「みんなにはナイショね…お願いっ」
「…はっ、ハイッ!もちろんです!!」
ズギューンと心臓を撃ち抜かれた気がした。 ちょっと、いきなりそのお願いは反則的な可愛さですよ…
「あと、ハンカチありがとう…洗ってから返すわね」
「…ハイ」
本当は洗ってない方が良いんだけど…ってコレじゃ変態だ。 いやいや読者の皆様、僕は決してヒナギクさんをよこしまな目で見るだなんて!!(←言い訳をするほど泥沼にはまる綾崎ハヤテ君)
ゴホン…なんにせよ、以前タオルを借りた(第1話参照)お返しにはなったかな…
「もうお昼過ぎね。お腹も空いたし、どこかでご飯にしましょう」
「そうですね」
喫茶店の時に引き続き、僕が言おうと思うよりわずかに先にヒナギクさんが提案してくれた。 ホントに流れとしては理想以上じゃないだろうか。
さてさて昼食だが、ヒナギクさんのリクエストでラーメンを食べる事に。 かなり意外な提案だったが、この辺りのお店は全てチェックしてあり、ラーメン屋もその例に漏れないので困る事は無かった。 というか、ラーメンは執事になる前はこの辺りでかなりの頻度で食べてたからチェックするまでも無かったのだった。
ちなみにラーメンというものは、ささやかな贅沢(1杯600円は贅沢品ですよ)として、僕の至福のひと時を演出する食べ物だ。
「それにしても、本当にラーメンで良いんですか?」
「あら、ハヤテ君はラーメン嫌い?」
「いえいえ、まさか!むしろ主食みたいなモノですよ」
「そう。なら問題無いわね?ほとんど行く機会も無いし、自分で作るのも無理だし、ハヤテ君に美味しい所を教えて欲しいのよね。それに…」
「はい?」
「いや、なんでもないわ…」
「?」
最後の一言がちょっと気になったが、確かにヒナギクさんの言う通りだ。 女の子にラーメン屋通いはなかなかハードルが高いし、インスタント以外で自分で作るにはあまりに難しい食べ物だ。(麺・スープ・具、いずれも一から作るのはすごく時間がかかります。しかもなかなか自分の思い通りの味にならないんですよ。) ともなると、「美味しいラーメン」は想像以上に女の子にはレアな食べ物なのかもしれない。
「分かりました!ラーメンならお任せください!!」
「ホント!?楽しみ!!」
・・・
アリガトウゴザイマシター
「美味しかったわ〜」
「ええ!」
「あーゆーこってりしたのは食べた事無かったから、新鮮だったわね。今度アリスも連れてきてあげましょう」
「そうですね。お気に召して頂けて何よりです!」
良かった。お腹もいっぱいでヒナギクさんも上機嫌だ。 それにしてもヒナギクさん、ホントにアーたんが可愛いんだな。 「でも今は僕の事だけ考えて欲しいな」なんて、父親だったら思うものなのかな…?
さてデートもまだまだお昼過ぎ。さて、これからどうやって過ごそうか…
「ふ〜、お腹もいっぱいだし、ちょっと休みましょうか?」
「そうですね…って!?」
「え゙っ!?」
セリフと同時に突き当たるは、「ご休憩」の看板が入り口にある建物。 コレにはヒナギクさんの顔も見る見る真っ赤になる。
----------- 「オッス、メインヒロインの三千院ナギだってばよ!! ↑の意味が分からない人はグーグル先生に聞くんだぞ!お前たちのお父さんお母さんに聞いたら…どうなっても知らんぞ♪まあ私は面白いけどな。 …ってハヤテ!私の出番はコレだけか!?」 -----------
「え!?いや、その、け、決してそーゆー意味で言ったんじゃなくて!!」
「わ、分かってますから!大丈夫ですから!落ち着いて…」
「ホントなの!私、ホントに…」
うう、一刻も早くここから立ち去りたいけど…まずは落ち着いて貰わないと!
「やや!そこにいるのは…」
「ヒナちゃんとハヤ太君ではあ〜りませんか」
「それはそうとこんな街中で、何を揉めてるんだ?」
「ゲッ!?」
うおっ!最悪な場所で最悪なエンカウント!!(セリフは上から順に朝風さん瀬川さん花菱さんです) 最近こんな展開無かったぞ!作者どーゆーことだ!?(←知りません)
「むむ、まさかハヤ太君…こんなアダルティな場所にヒナを無理矢理連れ込もうと…」
「え〜!?そんなの、このいいんちょさんレッドが許さないよ〜!」
「なんだハヤ太君、結局ヒナのカラダがお目当てじゃないか」
ヤバイ。典型的なヤバイパターンだぞ! …かくなる上は!!
「…あーーー!!?あんな所でガンダムに乗った魔法少女がアッカリーンしてるーー!!」
「「「なにーー!?」」」
と反対側を向いた瞬間に
「逃げましょう!」
「…うん」
何とか逃亡成功。 恐らく75日は僕に黒い噂が絶えなくなるだろうけど…orz
…いや、むしろよくぞヒナギクさんの痛恨のミスをうやむやにしてくれました! ありがとう生徒会の皆さん!! ヒナギクさんの為ならば、僕はどんな汚名でも喜んで被りましょう。
「とりあえず、どこか入って落ち着きましょう?」
「うん、ゴメンね…」
「ヒナギクさんのせいなんかじゃありませんよ」
僕はこの時走るのに夢中で、ヒナギクさんの手を握ってるのに気付かないのだった。
・・・
「まったくハヤ太君も『俺たちはこれから愛について語り合うんだ!』くらい言えば漢らしいってもんなのに…」
「それじゃハヤ太君じゃないだろ…」
「まあどうせ何かミスってヒナが癇癪起こしたんだろ?いつもの事さ…さて、独り身の姉の方でもからかいに行くか」
「「さんせー!」」
・・・
「……」
「落ち着きましたか?」
「…うん。ありがとう」
僕たちはとりあえず、ヒナギクさんの手を引いて一番最初に目に付いたファミレスに入っていた。 ココなら、元々の目的である「少し休む事」も果せて、一石二鳥だ。 それにしてもヒナギクさん、俯いたままだ。 そりゃあまあ気まずいだろうけど…僕は全然気にしないのに。
…って、いかんいかん!黙って観察なんてしててどうする!? たまの休みに付き合って貰ってるんだ。僕が頑張らなくて誰がヒナギクさんを楽しませるっていうんだよ。
「ヒナギクさん!」
「ひゃい!?」
いきなりの呼びかけに驚くヒナギクさんを可愛いと思いながらも僕は口調を緩めない。
「今度はヒナギクさんが行きたい所に行って、やりたい事をしませんか?せっかくの休日です。落ち込んでるヒマなんてありませんよ!」
「ハヤテ君…」
「ね。そうしましょう、そうしましょう!!」
「……ありがとう」
僕の精一杯の笑顔に、ヒナギクさんの表情も徐々に緩んでくる。 その後は、何処に行こうか少し考えてる様子だ。
「何かリクエストはありませんか?」
「う〜ん、そうねえ…あ、『あそこ』にまた行きたいわ!」
「『あそこ』ですか!」
「あそこ」というのは、千葉県某所にある日本一有名な遊園地とは全く無関係な(笑)あの遊園地だ。(原作第16巻参照) そういえば、この前映画に行った後もあそこに行ったんだよな。今思うと、我ながら無謀なヤツだな…
「いいですね〜!実にいいですね〜!!そうと決まれば早速行きましょう!」
「うん!」
ヒナギクさんにも笑顔が戻ってきて、なんだかとってもイイ感じだ。 駅までの道のりも、電車の中も、とにかくヒナギクさんを近くに感じる事が出来て、これまたとってもイケてる感じだ。
そして、着いたぞ!「あそこ」!! ココのスゴイ所は何と言ってもリピーター率の高さだ。 1度来て存分に楽しんでも、まだまだ遊び足りない感覚を残したまま一日が終わってしまう不思議な魔法をかけてくれる場所だ。 前回が初来園で、しかもアフター5からしか遊んでいないヒナギクさんなら…魔法の効力は倍増だ。
「うわ〜!ハヤテ君アレ見て見て!!」
「すごーい!コレはこないだは見られなかったわね?」
「た…高い所だから…手…離さないでね?」
「ホラ、ハヤテ君早く〜!」
あえて言おう。し・あ・わ・せ・だ!! それにしても前回ココに来た時の僕は、こんなヒナギクさんを見てて何も思わなかったワケだ。 …アホか。いやアホだ。
「♪〜」
3時間ほどアトラクションに乗り続けたので、軽く休憩。 ジュースを可愛らしくすするヒナギクさんに、疲れが癒される。
「楽しんで頂けてますか?」
「うん!ハヤテ君と一緒だからとっても楽しいわ」
「……」
ちくしょ〜!嬉しすぎるぜ!! この一言のために生きていると言っても過言ではない。最高のお言葉だ。 この言葉こそが今回のデートのハイライトだと思った。少なくともこの時は…
「ハヤテ君も…楽しい?」
「ハイ!最高です!!」
「そう…時間もあと少ししか無いから、ラストスパートね」
「ハイ!!」
やっぱり、楽しい時間というものは矢のように過ぎていってしまい… 魔法の国もタイムリミットを迎えてしまうのだった。
・・・
そして、アパートの最寄り駅からの帰り道。 僕たちは線路沿いの人気の無い道を歩いていた。
「今日はありがとう。とっても楽しかったわ!映画も『あそこ』も」
「…はい。楽しんで頂けて良かったです」
なんてカッコつけて返事なんてしていたが、実はこの時、僕は最高に緊張していた。 ヒナギクさんに告白しようと、帰りの電車の中で決意したからだ。 家に帰って寝るまでが「あそこ」の魔法のタイムリミット。 僕は魔法にかけられたかのように、これまでの人生で一番最高にヒナギクさんに魅入ってしまったのだ。
アーたん、お嬢様、マリアさん、西沢さん…僕はこれからヒナギクさんに告白します。 どうか勇気を…僕に与えてください!! 手には汗をかきまくってるし、視点は定まらないし、呂律(ろれつ)は微妙にまわってないし、これじゃまるっきり不審者だ。 どのタイミングで行こうか、なかなか踏み出せない。
…いや、今さら何を言ってるんだ! 僕には皆の支えがあったじゃないか。 タイミングは待つものじゃなくて、自分で作るものだろうが! 行け!綾崎ハヤテ!!
「ひ、ヒナギクさん!」
「はい?」
「あの、えと…ヒナギクさんに、聞いて欲しい事があります!」
「改まっちゃってなに〜?あ、まさか…またお金無くなっちゃった?」
「いえ、そうではなくて…」
「ゴメン、冗談よ。お話の続きをお願い…」
前回の事を覚えていてくれて嬉しいけど、今はそうじゃない。 もう言い出したんだ、引き返すだなんて漢じゃない!
ゴオオオ パアアアン 「はい…その……僕は!…ヒナギクさんの事が好きです!」 ゴオオオオオオオオオオオオオ
…あれ? ってええーーーーーーーーーーーーーーーーーー!?
このタイミングで電車だなんて… そりゃないよ…
ガクッ
僕は大きくうなだれてしまった。 魔法が解けてしまった。そんな感覚だ…
「ハヤテ君、今なんて言ったの?電車がうるさくて…」
「ハハハ…すいません。何でも無いです。」
もう今日は仕方ない… お嬢様が言った通り、「戦略的撤退」として次のタイミングを作る事に僕の脳みそで決定してしまった。
「えー!?なんだったのよ…?」
「すみません…奇跡か魔法でもあればもう一度お聞かせする事が出来るんですが。ハハハ…」
「……」
ごめんなさい、ヒナギクさん。 タイミングと歯切れの悪い僕を許して下さい… でも、次こそは必ずや…!!
つづく
・・・
「奇跡でも!魔法でも!私が…ハヤテ君に起こしてあげる!!」
「えっ…」
ギュッ…
何が何だか、一瞬ワケが分からなかった。 「第6話は終わったんじゃないの?」とかそういう事を言ってるんじゃない。 脳みそが冷静になって状況を飲み込むにつれて、心臓がバックバクに動き出したのを感じた。
…ヒナギクさんが僕に抱き着いて来たのだった。
「これで…ハヤテ君が言うまで…私は離れないわよ…?」
「ひっ、ヒナギクさん!!」
「お願いだから…言って…言いなさいよ、綾崎ハヤテーー!!」
・・・
きっと、ヒナギクさんも不安だったんだと思う。 思わせぶりな僕の態度、次第に近づいていった距離、はっきりしない二人の関係…
今ならばもう分かる。僕も同じだったから。
「ヒナギクさん」
「…何よ!?」
「残念ながら、僕が『それ』を言っても…貴女は僕から離れられません」
「は?それってどーゆー…」
「僕が貴女を離さないからです!」
ギュッ
「!?」
「好きです、ヒナギクさん。僕は、貴女の事が…大好きです!!」
力いっぱい…本当に力いっぱい、その細い身体が折れてしまう程に強く抱きしめた。 やっと…やっと言えた。 でももっともっと、全然言い足りない。
「貴女の笑顔が好きです。怒った時の顔も可愛らしいし、泣いた時の顔にも惚れました。もっともっと、いろんなヒナギクさんを…知りたいです!好きになりたいです!!」
「は、ハヤテ…くん…」
「こんなしょーもない僕ですが、貴女のそばにいさせてください!!」
「うん…ヒック…私も…大好き…」
「ヒナギクさん…」
「変なの…嬉しくて…嬉しくてたまらないのに…涙が…止まらないの…」
「止めないでください。もっと…その涙、僕に見せてください」
「もう…いじわる…」
ヒナギクさんが僕の告白に、涙して喜んでくれている。 この人を好きになって…本当に良かった。
・・・
「落ち着きましたか?」
「うん…あったかい…」
僕たちは一旦場所を移して、負け犬公園まで寄り道をしていた。 僕が買ってきた缶のココアをヒナギクさんはゆっくりと飲んだ。
「!」「!」
不意に目が合った。 先程のやり取りを思い出して照れ臭くなるけど、目を逸らしたりはしない。 ようやく手に入れた「しあわせの花」…もう手離さない、絶対に。
「これから…よろしくね、ハヤテ君」
「僕の方こそ…よろしくお願いします、ヒナギクさん」
ヒナギクさんの持つココアが無くなるまでの甘い時間。 それを僕たちは大切に大切に過ごすのだった。
アーたん、お嬢様、僕の愛する全ての皆さん、僕…好きな人がいます。大好きな人が。 それって、素敵な事ですよね? きっとそうですよね?
僕はその人を、この命尽きるまで愛し続けます。 ありがとう…みんな、ありがとう!
今度こそ つづく
------------------------
【あとがき】
ヒナギクの魔法で物語を延長させられました。笑 ようやく二人をくっつけられましたが、いかがでしたでしょうか? さて、物語に沿って解説を…
・タイトル →「HiNA」からです。OVAのテーマでしたね…懐かしい。 歌詞の感じが二人のこれからにピッタリかなと思いましたので。
・「あまりにも無駄で馬鹿馬鹿しくて勿体無い時間」 →ハヤテにとってはそうかもしれませんが、それはヒナにとっては「確実に来る幸福を待つ至高の時間」です。 恋に恋してるハヤテの身勝手さを表現したつもりです。
・喫茶店 →デート前日の下見は実はナギ・アリスの提案というのが裏設定です。自分たちの助力したイベントで上手くいって欲しいという願いが二人にはあります。 思いっきり余談ですが、これからのハヤヒナを思いっきりシリアスに向かわせる伏線の文章をなんとなく入れましたが、回収するかは未定です。 回収しなくても良いくらい微妙な感じで書きましたので…笑
・映画 →原作16巻同様、「映画を観に行ったけど、映画以外が話のメインになった」感じです。 ヒナは頭が良いから、物語のキャラクターの心情を理解しようと観ているため感情移入が強いんじゃないかなと想像して、大号泣してもらいました。
・ラーメン →ヒナが口ごもったのは、「ハヤテ君と初めて二人で行った思い出の場所を作りたい」と言おうとして、恥ずかしくなったからです。 二人とも考える事は同じです。笑
・「ご休憩」うんぬん →無くても全く問題無い部分でした。 が、3人娘も出したかったのと、たまには不幸スキルを発動してもらおうと思ったので… ミスったのはヒナでしたが。笑
・某遊園地(笑) →16巻の流れを追って、今度は告白するという形にしたかったので使いました。 休憩時のヒナの感想の部分は、16巻と読み比べて彼女の成長を分かるようにしたつもりです。 ちなみに見てお分かりの通り「魔法」をひとつのキーワードとして多用しました。
・告白 当初ヒナには「奇跡も魔法もあるんだよ」と言わせようかと思いましたが、あまりにもゲンが悪いのでやめました。パクリだし。笑(←ネタ元は「魔法少女まどか☆マギカ」です。)
最後のモノローグはアニメ2期13話のヒナのパロディです。 さすがにハヤテ目線で「お父さん、お母さん」はあり得ないんで、こんな形です。 このモノローグは原作には無いので、とても印象的でした。 伊藤静さんのセリフの言い方が「私がスキになったからあなたたち(両親)はいなくなったんじゃないよね?」というヒナの根底に存在するある種の恐怖を上手く表してたなと思います。もちろん「ハヤテをスキになった」希望の方が上でしたが…
そしてこの二人、まだチューの一つもしてませんね。 どうやってしてもらおうか、現在画策中です。
かなり駆け足になりましたが、以上です。 ご感想・ご質問などお待ちしております。 ありがとうございました。
|
|