Re: 新世界への神話Drei 3月13日更新 ( No.78 ) |
- 日時: 2016/05/15 21:24
- 名前: RIDE
- 参照: http://soukensi.net/perch/hayate/subnovel/read.cgi?no=23
- どうも。
最近調子が落ち込んでいます
それでは、更新します
2 そんな彼に、シェルドから仕掛けてきた。塁へと素早く殴りかかった。 その攻撃をかわした塁。だがシェルドは一瞬で塁の視界から消え彼の脇へと回り込み、追撃を行う。
寸前のところで回避できた塁。シェルドはまたも姿を消すが、今度は塁も彼がどこに行ったかわかった。
「後ろか!」
振り向き様に塁は拳を繰り出す。そこで攻撃しようとしていたシェルドは急いでかわすが、塁の拳がシェルドの肩をかすめた。
僅かな時間の攻防の後、両者ともに後退して距離を取る。
「中々やるな…と言いたいところだが、これはまだ様子見程度だ」
シェルドはまだ余裕を見せていた。対して塁は彼との距離を詰めずに横へと移動する。
レベルの差を悟った塁は、無闇に近づくことを避けた。自分の攻撃がかすったとはいえ、シェルドは本気を出していない。
だが攻める手立てがないわけじゃない。ショックサンダーを受ければ黄金の使者といえども一瞬は動けなくなるはず。その隙を狙ってサンダーボルトナックルを打つ。それが塁の作戦だ。
しかし、塁はショックサンダーを放つ前に何かによって後ろへと吹っ飛ばされてしまった。
「な、何が起こったんだ?」
何故塁が吹っ飛ばされたのか。
「シェルドがやったんだ…」
起き上がった塁。その身で受けた事だから理解ができた。
「シェルドがって…あいつは特別な力はないはずだが…」
彼自身がそう言っていたことだ。優馬から見て、シェルドは嘘をつくような男ではない。
「奴は、拳を当ててきたんだ」 「拳って…」
塁とシェルドの間は結構距離が開いている。離れたところから、どうやって拳を当てたのだろうか。
「まさか、拳圧で…」 「わからねえ。けど、この衝撃は殴られたものだ」
腹部をさする塁。仕組みはわからないが、確信は持っている。
「なら、次は僕がいきましょう」
伝助はワイステインと一体化し、塁と交代する。
「ウイングトルネード!」
背中の翼で生じた突風でシェルドの逃げ場を塞いだすぐ後、伝助は急接近する。遠距離でも拳を当てられるというのなら、間合いは関係ない。
伝助は至近距離から連続で拳を繰り出す。目にもとまらぬ速さで畳みかける攻撃を、シェルドは全てかわしていく。
それを見て、海は息を呑んでいた。
「す、すごい…目で追い切れるかどうかの動きだわ、二人とも…」 「それでも、シェルドっていう人の方が速い。危なげなくかわし切っている」
隣にいた光も、それが確認できていた。恐らく二人とも剣道やフェンシングで見切りを身につけているのだろう。
そうでなくても、シェルドに攻撃が当たった様子が見られないところ、彼が伝助よりも速く動いていることは明らかだった。
「でも、シェルドはかわすだけで攻撃はしていないな」
佳幸の言うとおり、シェルドは伝助に手を出してはいない。
彼は気づいていた。伝助は牽制のためにラッシュを仕掛けているのだと。執拗な攻撃を続けることで、相手が反撃する暇を与えないのだ。
「攻撃は最大の防御ってところか」
氷狩は観戦しながら冷静にそう口にした。
相手の攻撃を封じている伝助。その状況の彼は機会を狙っていた。
そして遂に伝助は仕掛けた。シェルドの頭に向かって足を大きく蹴り上げる。
かわされはしたが、予想外の攻撃だったためかシェルドは身体を大きく後ろへとのけぞってしまう。そのため彼は姿勢を崩した。そしてそれは、伝助の狙い通りであった。
伝助は嵐鷲滑空拳を繰り出した。シェルドの体勢では回避することはできない。身体を起こすが間に合わない。必殺技は決まるはずだった。
だがそれは、シェルドには当たらなかった。
否、拳は当たりはしたが期待通りのダメージは与えられなかった。
何故なら、シェルドの拳も伝助に命中していたからだ。
シェルドはカウンターを利用したのだ。力の入らない体勢から拳を繰り出しても威力はそれほどないだろう。だが、伝助の必殺技の威力を加えれば拳自体のパワーは少なくても、相手に与えるダメージは大きくなる。
反撃を喰らい、よろめいてしまう伝助。それでも追撃を受けないように素早く仲間たちの元へと戻る。
「強いですね。闘と名を冠するだけはあります」
塁をふっ飛ばした拳といい、今のカウンターといいやはりこの男の格闘センスは大したものである。今のやり取りで、それを実感させられた。
「なら、あの人よりも速く攻撃できれば!」
ハヤテはシルフィードと一体化し、疾風怒濤で攻撃する。先程の伝助以上の速度をもった攻撃であった。
その必殺技を、シェルドはあろうことか真正面から受け止めたのだ。
「えっ、喰らった!?」
ハヤテは驚きに声をあげずにはいられなかった。今放ったのは必殺技だ。速くて完全にはかわせなくても、致命傷を避けるようにしなければ手痛い一撃を受けることになるのだ。
だがシェルドは無防備で受けたのだ。しかもそれ以上に信じられないのは、疾風怒濤を受けたというのに、全く応えた様子がないのだ。
疑問を抱く間もなく、ハヤテは吹っ飛ばされてしまう。シェルドはその際またも、何のアクションも見せなかった。
「どうだ?この俺の力は」
シェルドは余裕たっぷりに話しかけてきた。
「闘いの中で特別な技を使っているが、おまえたちはそれに気づくこともできないようだな」
そうなのだ。ハヤテたちはいつシェルドが言う特別な技を使っているかわからない。特別な力が何かもわかっていない。それに加え、格闘も強い。
「こんな奴を、どう相手にすればいいんだよ…」
思わず達郎は弱音を吐いてしまう。根が素直なために、ついつい本音が口から出てしまうのが悪いところだ。
だが彼の気持ちもわかる。シェルドに対し、皆どう取りかかっていいのかわからないのだ。
その中で達郎が特に顕著に表れていた。彼は既に逃げ腰となっていた。
そんな彼は、ふとハヤテを見た。ハヤテは立ち上がろうとしており、どうやらまだ戦うつもりだ。
何故戦い続けるのか。今はまだ勝機が見えないのに、やっても無駄としか思えない。
達郎は傷つくのが嫌いだ。無意味に傷つくのなんて最も嫌だ。
でも、視界にナギの姿が入った時、達郎は思い出した。ナギの目的と、自分たちはそれに少なからず触発されてここに来たのだと。
そのために、花南や優馬、精霊の使者としては自分より若輩のハヤテも奮戦し、活躍してきたのだ。
そんな彼らに対して、自分はどうなのか。
そこまで考えた時、達郎は意を決していた。
「特別な技が何なのかわからなくても…」 「戦って、倒せばいいだけだ!」
ハヤテと塁は、再びシェルドと立ち向かおうとする。
その二人を遮るように、達郎が全員の前に出た。
「な、何だよ達郎」
突然のことに戸惑う塁。しかし達郎は、衝撃的なことを口にする。
「あいつは、俺がやる」 「はあぁ!?」
全員、素っ頓狂な声を上げてしまった。
「って、なんか不満っすか?」
達郎は全員に向けて口を尖らせる。
「さっき言ったように、一人でやるつもりか?」
塁はまだ達郎の言うことを信じていないようで、確認を取って見る。
「当然っすよ!」
達郎はまた闘の間に入る前のテンションを見せつけている。それがまたかえって不安を煽らせているのだ。
「宣言通り、ここは俺に任せてくれ!」 「けど達…」
佳幸は尚も心配であった。達郎が戦いを嫌うことは幼馴染の彼がもっともよく知っている。だからこそ止めようとするのだが、達郎の意志は固い。
「今ならまだ悪い冗談で済ませるわよ」
花南が半ば脅迫味を込めて告げる。それは警告であり、ここで引いても誰も笑わないという思いやりでもあった。
しかし、それでも達郎は引かなかった。
「いいから!俺がやるって言ったらやるんだよ!」
そんな達郎を見て花南は薄く笑う。どっちかと言うと彼女は友のやる気を応援したいという方だった。先程の発言もそのつもりで、ああいえば達郎はかえって奮起すると睨んだからだ。おかげで、佳幸は益々達郎の身を案じるのだが。
「とにかく、黙って見ていろ!」
今回はここまでです
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