Re: 新世界への神話Drei 8月21日更新 ( No.40 ) |
- 日時: 2012/08/28 20:58
- 名前: RIDE
- 参照: http://hinayume.net/hayate/subnovel/read.cgi?no=7129
- どうも。
夏休み、皆さん楽しめましたか。 少しでも充実していると幸いです。
それでは本編です。 今回から雷矢の戦いが始まります。
4 大聖殿へと続く階段へと足を踏み入れた雷矢は、その長い道のりを上っている最中であった。
「もう、一体どこまで長いのよ」
うんざりしたと言わんばかりの表情で海が呟く。
彼女の気持ちもわかる。ここまでずっと昇りのままなのだ。この世界では魔法騎士と呼ばれているが、体力的に見れば普通の少女。根をあげるのは当たり前なのだ。
そんな中で、四人はある建物の前に着く。
「あれは…」
風に倣って一同は建物を見上げていた。巨大なそれは念の間とも刻まれていた。
「なんだろう…休憩所かな?」
光の呑気そうな感想に、海は呆れ、風は微笑む。
どう見ても、ここは休憩所じゃない。雰囲気でわかる。
そんな三人を無視して、雷矢は何の断りもなく扉を開け、我が物顔で中へと入っていく。
「あ、ちょっと」
いきなり建物の中に入っていくその失礼な様に眉をひそめながら、光たち三人も後に続いていく。
中は静まり返っていた。それがまた、神秘的な雰囲気を引き立てており、どこか心が落ち着く感じがした。
それに水を差したのが、とある人物の声。
「止まりなさい」
四人のものではない、この間を預かる人物が発したものだ。
静かな口調ではあったが、逆らうことを許さない威圧が含まれており思わず四人は足を止めてしまう。
「勝手にここを通りぬけてもらうわけにはいきません」
黄金の精霊の一つである念のウィルワーの使者、エーリッヒが姿を現し、四人の前に立ちはだかった。
穏やかではあったが、エーリッヒから発している気迫がひしひしとこちらに伝わってくる。
しかし、光、海、風の三人は怯むことはなかった。彼女たちがセフィーロでの戦いを経験したことによって強くなった意志の力は、黄金の使者を相手に恐れを抱いても、決して引くことはしなかった。
三人が今まで対峙した中で、一番プレッシャーを感じたのはセフィーロの神官と、彼が愛した姫である。
ゆずれない願いのために戦い、亡くなった二人。その胸中を知ることなく手にかけた三人は、もう二度と悲しみを味わいたくない、後悔したくないと思っている。
「…ねえ、あなたの名前はなんていうんだ?」
光は、尋ねながらエーリッヒを見返す。芯の通った目で。
反らすことも無視することも、許されなかった。
「私は、エーリッヒと申します」 「エーリッヒ、あなたは明智天師のために戦っているのか?」
知りたかった。相手が何を考えているのかわからないままというのは、例え戦うことになったとしても耐えがたいことだ。
まだ若く、だからこそ眩しい純粋さである。
先にここを通って行った、あの少年少女たちのように。
だから思わず、少し素直に答えてしまう。
「明智天師のためではありません。あえて言うなら、偉大な先人との約束のため、ですね」
エーリッヒの脳裏に、賢明大聖の後ろ姿が浮かんできた。腐敗の中でも埋もれずにいた、立派な使者の姿を。
もちろんそんな胸中も人物も知らない光たちは首を傾げてしまう。
「先人…?先人って…」 「これ以上は語りません」
再びエーリッヒの目つきが鋭くなる。
「ここを通ろうとするならば、力づくでも阻止します」
そのままウィルワーと一体化し、臨戦態勢を取る。
彼は、本気であった。
「言いたいことはわかった」
すると、それまで光たちの後ろで黙って様子を見ていた雷矢が動き出し、かき分けるように彼女たちの前に出た。
「あなたは…ライオーガの使者、綾崎雷矢ですね」
そこではじめて、エーリッヒを雷矢は互いに見合った。二人とも無言ではいるものの、睨み合っているだけでも両者の間にはとてつもない緊張感が漂っている。
それが身に深く刺されたように伝わったので、光たちは思わず竦んでしまう。
「陰鬱の使者たちの一部を力づくで引き入れ、三界で暴れ回ろうとしていた男が、この霊神宮で何を企んでいるのですか?」
光たちに対する時よりも強まった警戒心を剥き出しにするエーリッヒ。だが無理もない。ハヤテやエイジたちのおかげで大きな被害にはならなかったものの、放っておいたらどれ程の混乱がもたらされようとしていたのか、想像に難くはないだろう。
「この三人と一緒にいるのだから、目的はわかりきっているだろう」
エーリッヒなど相手にしていないかのような態度で、雷矢は応じる。
「明智天師のもとへ向かうことだ」 「…明智天師はこのはるか先にある大聖殿にいます」
二人の間に入ることができない光たちはハラハラしながら様子を見ている。剣呑な雰囲気は、誰であろうと近づくことを拒ませていた。
「先程申し上げた通り、この念の間を通ることは許しません」
並の戦士でも震え上がってしまうほど、殺気を凄めるエーリッヒ。
しかし、それで怯む雷矢ではない。
「いちいち告げずとも、おまえもわかっているのだろう?」
雷矢の闘志に応じ、ライオーガが放電を起こしながら姿を現す。
「ここを通らせないと言うのなら、戦って、おまえを倒して通るまでだ」
そう言うのと同時に、雷矢はライオーガと一体化する。
二人の緊迫感は最大限に張り詰め、いまにも火が着きそうであった。
次回、雷矢とエーリッヒが激突する…
感想、指摘等があれば報告お願いします。
それでは。
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