Re: 新世界への神話Drei 5月14日更新 ( No.27 )
日時: 2012/05/23 22:20
名前: RIDE
参照: http://hinayume.net/hayate/subnovel/read.cgi?no=7129

どうも。
一週間以上間をおいて始めます。

最近気分が乗らないな…


 2
 天空高く浮かぶ霊神宮、

 そこにナギたちが降り立った。

「ほう、ここが霊神宮か・・・」

 はじめてきたナギは、感慨深げに辺りを見渡す。

「ここには誰もいないみたいだな・・・」

 氷狩も周囲を確認する。自分たち以外、人っ子一人いない。

「静かすぎるな・・・」

 塁がこの様子に不穏を抱く。自分たちは侵入者なのだ。なのに、何故それを撃退しようとする動きが無いのだろうか。

 既に自分たちの子とは知れ渡っているはず。警戒していてもおかしくないというのに・・・。

「まあ、敵がいないならそれでいいじゃないっスか」

 達郎は呑気ともとれるような調子であった。

「このまますんなりといってくれないかなぁ・・・」
「本当、達郎ってお気楽な脳ミソ筋肉ダルマね」

 ため息をつく花南。そんな彼女に苦笑をしながらも胸中の不安も佳幸は察していた。

「本当に何もなければいいんだけど・・・」

 とりあえずその場に留まっている訳にもいかないので、明智天師がいると思われる大聖殿を目指して移動し始めた。

 先導を切るのは八闘士やジェットたちなど、霊神宮に何度か訪れたことがあるものたちだ。ハヤテは伊澄が迷子にならない様に最後尾に着いている。

 そして、初めて霊神宮を目の当たりにする者たちは興味深げにあちこちをきょろきょろ見ていた。

「それにしても、すごいところだね」

 歩が建物の造りなどに感心を抱いていた。

「結構歴史が多くあるんじゃないかな?」

 実は彼女、ゴールデンウィークでアテネなどを旅行し、歴史ある文化財を見ていく内に歴史や神話などに面白味を感じていたのだ。今も霊神宮の神々しい建築物に目を輝かせている。

 また、美希、泉、理沙の三人はビデオカメラで周囲の光景を撮影していた。

「こんなものは滅多にお目にかかれないからな・・・」
「カメラに収めておかねばな」

 ビデオカメラ片手に、興奮する三人。

「やれやれ、これじゃあ女の子のピクニックだな」

 彼女たちのはしゃぎように、優馬は苦笑する。

 だが、彼はすぐに表情が険しくなった。彼の精霊であるユニアースの角が敵を察知したのだ。

「皆、止まれ!」

 いち早く敵がいることを知った優馬は、全員に制止を呼びかけた。

「囲まれていますね」
「それも、大勢にね」

 ハヤテとヒナギクも気付いていた。最も二人の場合、培われた鋭い感覚によるものではあるが。

「隠れてないで出てこい!」

 優馬の怒鳴り声が、辺りに響き渡っていく。

「ちょ、ちょっと優馬さん!それは・・・」

 佳幸が咎めようとするが遅かった。

 優馬の叫びに反応したのか、青銅のリングを腕に着けた者たちが次々と姿を現していく。

 しかも、その数はざっと見ただけでも百近くはいた。

「こ、こんなに仰山おるんか!?」

 咲夜はあまりの多さに仰天してしまう。

「優馬さんのアホ!」
「こんな状況になっちゃったじゃないっスか!」

 達郎と塁は優馬に苦情をつけてくる。

「俺のせいじゃないだろ!」

 自分が仕掛けた罠じゃない。お門違いもいいところだという気持ちで言い返す。

 だが二人の気持ちもわかる。

 例えこの場での襲撃が必須だったとしても、優馬が叫ばなければこのような事態にはならなかったはず。タイミングを早めただけでも怒るのは当然だ。

 それに、こう数で圧倒されては、一人一人が楽勝な相手でも厄介である。

「霊神宮に仇なす者たちめ!」
「明智天師の元には行かせん!」
「ここで成敗してやる!」

 そして、青銅の使者たちの精霊が一斉に襲い掛かった!

「うわああああ!」

 青銅の精霊の一部は、咲夜に狙いをつけて迫ってきた。

「愛沢さん、危ない!」

 そこへエイジが彼女の身を手で押し下げる。と同時に、ウェンドランが青銅の精霊を撃退した。

「大丈夫か?」

 咲夜に無事を確認するエイジ。

 怪我は無かったが、何故か彼女の顔は赤かった。エイジが疑問を抱いていると、咲夜が恥らいながら口を開く。

「そ、その・・・」
「どうした?」
「手・・・手をどけてくれへんか?」

 言われて、自分の手を見るエイジ。彼の手は、咲夜の胸の上にあった。

「わ、わわわ!ごめん!」

 慌てて手をどけるエイジ。恥じらいからか、お互い気まずくなってしまう。

「痛ぁ!」

 そこへ、ナギが横からエイジに強烈な一撃を入れてきた。

「なにすんだよ!」
「それはこっちのセリフだ!」

 ナギは何故かエイジに対して怒っている。

「こんな状況でそんな破廉恥なことをするなんて、何を考えている!」
「いや、あれは・・・」
「言い訳なんて見苦しいぞ!」

 エイジは何故ナギが起こっているか理解できない。咲夜本人ならば納得できるのだが、その理由が思い当たらない。

 しかし、こう理不尽に責められていて、尚且つ危険な状況下の中黙っていられるほどエイジもおとなしくはなかった。

「てか、何でそんなに怒ってんだよ!」
「え・・・?」

 すると、ナギは言葉に窮してしまう。しかし、口を噤んだら負けるような気がするので、言い立てるの止めようとしない。

「と、とにかくおまえが悪い!」
「俺の質問に答えろよ!」
「うるさい!バーカバーカ!」

 そのまま、ナギとエイジは睨み合いを続ける。

「ちょっと、痴話喧嘩は後にしてくれる?」

 そんな二人の間に拓実が仲裁に入る。彼の精霊アイアールは、敵である青銅の精霊を矢で射抜いていた。

「痴話喧嘩じゃない(っスよ)!」

 二人は声を揃えて言い返す。

「だったらハモらないでほしいんだけどな」

 これに拓実は苦笑してしまう。

「だから!」
「まあまあそれだけ仲がいいなら、戦いでもチームワークが期待できるよね?」

 それを言われ、ナギとエイジは青銅の精霊たちを見据える。

「中段から飛び掛ろうとする奴がいるぞ!そいつを狙うんだ!」
「わかった!」

 ナギの指示に、エイジはウェンドランに銃を持たせる。

「ファイブラスター!」

 そして、的確に狙い撃つ。二人が協力し合えたのを見て、拓実は笑みを浮かべた。

 他の仲間たちも精霊たちを撃退していく。しかし、相手の数は一向に減ったようには見えない。

 更に白銀の使者までもが現れ、一体化して青銅の精霊と共にこちらへ畳みかけてきた。

「これじゃあキリがない…」

 このままでは数で押されてしまう。

 この状況に、ジェットたちは決意して佳幸たちに告げた。

「おまえたち!この場は俺とドリルとジムに任せろ!」
「ええっ!?」

 戦いながらジェットは続けて言う。

「巻き込まれた連中も俺たちが守る!おまえたちは三千院と一緒に先に行くんだ!」
「で、でも…」

 ヒナギクは躊躇してしまう。この大多数に対して、彼ら三人だけで抑えきれるかどうか不安を抱くのは仕方のないことだ。

 だがジェットは快い笑みを見せた。

「何十人いようと、この俺が遅れをとるものか」

 それを証明するかのように、一瞬で相手を抜き去る。その直後、精霊や一体化した使者十数がその場で倒れだした。

 目にも留まらぬスピードでの剣技で、ジェットが攻撃したのだ。それによって、敵軍の中に突破口が生じた。

「さあ行け!」

 ジェットがそこへ進むように促していく。

「行こう、皆!」

 佳幸が呼びかけ、氷狩も先導しようと真っ先に動き出した。

「ここで止まってどうする!動かなきゃいけないはずだ!」

 これが響いたのか、他の皆もつられるように走り出す。ヒナギクはそれでもまだ気がかりであったが、拓実と優馬に諭される。

「ここは彼らを信じよう」
「高杉を助けるために、あいつらはここに残ることをべストとしたんだ。あいつらのことを思うなら、前に進むべきだ」

 更に、ナギまでもが彼女を説いた。

「あいつらは私たちが勝利のための鍵と見込んだ。だからこうやって私たちを行かせようとしているのだ。だから、私たちはこの先の戦いで勝つ!そして高杉を救出するのだ!」

 神妙な面持ちで語るナギに、ヒナギクは目を丸くした。

 まだ子供である彼女の口から、こんなしっかりとした言葉が出てくるとは思わなかったのだ。

 だがすぐに理解を得たヒナギクは迷いを吹っ切った。

「そうね。私も行かなきゃ!」

 彼女たちは走り出した。最後尾につくのは運動音痴のナギ。

「ダイを頼んだぞ!」

 別れる間際にジェットがかけた声が、ハヤテたちの背を押しているようであった。

「しまった!奴らが大聖殿へ向かってしまう!」
「止めねば!」

 使者たちは後を追おうとするが、その行く手をジェットが塞いだ。

「ここから先は行かせないぞ」

 そんな彼を見て使者はたちは笑う。

「ふっ、たった一人で食い止められると思っているのか?」

 数で圧倒している彼らの中で先頭に立つ者たちが、ゆとりをもってジェットに襲いかかろうとする。

 だがそんな彼らを、ジェットは高速の剣技で一蹴する。

「悪いが、こちらは悠長なことを言ってられないのでな」

 ジェットの愛刀、飛燕の鞘が光り出し、彼の身に鎧が纏われた。

「本気で行くぞ」

 一方、ドリルとジムも咲夜たちを巻き添えにしないように戦っていた。しかしたった二人で大多数による攻撃全てを引き受けるのは難しく、いくらかが咲夜たちの方へと流れていってしまう。

「ぬおおおお、来たぁー!」

 迫りくる危機に対し咲夜たちは悲鳴を上げる。が、突如として彼女たちは光のドーム状のものに包まれ、それが攻撃を防いでいく。

 伊澄が霊力によって、結界を張り、自身や友たちを守ったのだ。

 振り返ったドリルとジムは伊澄と目が合った。彼女は視線で訴えていた。咲夜たちは自分が守るから、戦闘に集中してよいと。

 頷いて了承を示すドリルとジム。彼らは再び使者たちと戦う。

 全ては、ダイ救出を託したナギたちのため。そのために三人は使者たちをここに引き留めるのであった。




今日はここまで。
ちょっと長かったかな…

次回も更新少し遅くなるかも。