Re: 新世界への神話Drei 2月12日更新 レイアースクロス中 ( No.15 )
日時: 2012/02/24 18:56
名前: RIDE
参照: http://hinayume.net/hayate/subnovel/read.cgi?no=7129

また更新に一週間以上かかってしまった・・・・。
最近スランプで、モチベーションも上がらない・・・・。
現実も意思消沈中・・・・。

ため息ばかりついています。


でもまあ、ここに来るとそんな気はしません。
テンションあげていきたいと思います。

それでは本編どうぞ。


 2
 緑に溢れ、心地よい香りが漂っている。

 そんな広い部屋の中央に寝具が設置され、その上に男がまるで死んでいるかのように、安らかに眠っていた。

 眠っているとはいえ、男は外の様子がわかっていた。一人の少女がこの部屋に近づいてくることも。

「イーグル、具合どう?」

 光が部屋に入り、ゆっくりと寝具のもとへと近づいていく。

[大丈夫ですよ。あなたの強い願いで、少しずつですが回復に向かっているようです]

 眠っている男は、光の心に直接語りかける。

 男の名はイーグル・ビジョン。セフィーロの友好国のひとつ、オートザムの軍司令官だ。

 友好国といっても、昔からそうというわけではなかった。一年前、柱であったこの国の姫が亡くなり、その座を狙ってチゼータ、ファーレンという国と同時に、オートザムはイーグルを司令官としてセフィーロに侵攻してきたのだ。光たちも参入したこの戦いを通じて、セフィーロだけでなくこの世界の真実を知ったオートザムらは侵略を止め、友好を結んだのだ。

 またその当時、イーグルは病に冒されていた。オートザムは機械文明が発達しており、その動力を人の精神エネルギー、つまり心で動かしてきた。そしてイーグルは心を使いすぎてしまい、永久に醒めない眠りにつこうとしていた。彼はそんな自分を犠牲にして祖国やセフィーロを救おうとしたが、光に生きることの大切さを諭され、現在はセフィーロにおいて光等イーグルを想う者たちの祈りを受けて療養している。

[信じる心が力になる。本当に不思議な国ですね]

 そのイーグルの言葉に、光は微笑んだ。

 彼女も、それに共感できたからだ。

 そこにまた一人、部屋に入ってきた。マントがついた白い服装の、背の高い男だ。

 男に気付いた光は、彼に向けて会釈した。

「こんにちは」

 男は一見無口無愛想な感じであったが、少し表情を和らげて光に並んだ。

 彼はセフィーロ唯一の魔法剣士(カイル)、ランティス。イーグルの親友だ。

 ランティスはかつて各国を旅していた。その中でも一番長く滞在していたのがオートザムであり、それだけイーグルと親交が深かったことがよくわかる。

 一年前、姫が亡くなったと同時にランティスは戻ってきた。姫の悲劇には神官であった彼
の兄も深く関わっており、その末に死んだので、ランティスはこのようなことは自らの命を賭しても繰り返させないつもりであった。その死ぬ危険が、イーグルの命を投げ出そうとした理由でもある。ランティスに死んでほしくないという思いが。

 そのイーグルは、光に尋ねた。

[皆さんにはもう会われましたか?]
「ううん」

 先にイーグルの顔が見たかったからだと付け加える光。

[今日はうちのジェオや、チゼータやファーレンのお姫様たちも来ていますよ]

 イーグルが述べた人物たちは、いずれもあの戦いで絆を結んだ大切な者たちだ。
[ランティス、ヒカルを皆さんのところへ連れて行ってください]
「・・・・ああ」

 それを聞いた光は、大丈夫と言わんばかりに笑いかける。

「一人で行けるよ!」

 ランティス自身は光を送っていきたいのだが、光にそう言われてはどうにも手が出せない。中々手を出せない彼に、イーグルが後押しした。

[ランティスは連れて行きたいみたいですよ]

 クスクスと笑うイーグルに、自分の心を見透かされたような感じがしたランティスは少々不快を覚えた。

「あとでランティスと一緒に来るね」

 そんなことは全く存じない光はランティスに連れられて、笑顔で部屋を出て行く。二人が去り、部屋はイーグル一人のみとなった。

[ヒカル・・・・ありがとう]

 今こうして自分は大切な人たちと一緒に生きようとしている。それがどんなに素晴らしいことであるか、教えてくれた光に大きな感謝を抱いていた。イーグルにとって、光は大切な人の一人なのだ。

[それにしても・・・・]

 イーグルは、それとは別に疑念も抱いていた。

[ヒカルに、何か暗いものを感じたが・・・・]

 相手の心に直接語りかけて会話しているイーグルだからこそ気づけた。光の心の中に、何か暗くなる感情みたいなものを。

 あれはいったい何なのだろうかと不安に思うのであった。



 ランティスと光は、海たちのもとへ向かうため広い廊下を歩いている。

「イーグルって、本当に素敵な人だよね」

 光はイーグルに対しての感想をランティスに述べていく。

「私もあんな風になれたらいいな」
「・・・・おまえたちはよく似ているがな・・・・」

 光を見ながらランティスは言った。その意味がわからなくて可愛らしく首を傾げる光。

 そんな彼女を微笑ましい気持ちになったランティスは、彼女の視線に合わせて膝を屈めてそっと光の頬に手を添える.

「その強い心が、そっくりだ」

 そして、優しく微笑んだ。

「おまえのその強い心が、セフィーロを本当に美しい国へと変えたんだな」
「皆の心で、だよ」

 光は訂正した。セフィーロはこの国を愛する人々のもの。当然自分や海、風もその一員だ。

 柱であった姫の悲劇を通じて、この国を変えたいと思った。皆がそう思ったからこそ、変わることができたのだ。光はそう考えている。

「私、ランティスとイーグル大好きだよ!海ちゃんも風ちゃんも、みんなみんな大好き!」

 光は、その思いを吐露していく。

「ずっとずっと、一緒にいたい!」

 そう言った時だった。

 突然、光は白昼夢に引き込まれてしまった。

「ヒカルは皆と一緒にいたいの・・・・?」

 気が付くと、目の前には自分と同じ体格の少女がいた。逆光がかかっているため、顔はよ
く見えない。

「なら、その願いをかなえてあげる」

 少女の残忍な笑い声が光の耳に響いてくる。

「皆、ヒカルと一緒に殺してあげる」

 その言葉に戦慄を覚え、光は大きく息を呑んだ。

「ヒカル、どうした?」
「あ・・・・」

 ランティスに声をかけられ、光は現実に戻った。

「大丈夫か?」

 ランティスが心配そうに光の顔を覗き込む。

「ううん、なんでも・・・・」

 ないと続けようとして、光は口を噤んだ。

 そう答えても、ランティスはそれ以上追求しないだろう。しかし、彼はそれでも自分のことを気に掛けるだろう。そんな彼に、何も言わないままというのは失礼である。

 それに、以前海に言われたことがある。自分は一人でなんでも背負い込もうとするから、自分が口にする大丈夫ほどそうではないと。

 風も言った。悩みを一緒に分かち合い、解決に協力できる人がいれば大丈夫だと。

「・・・・最近、夢を見るんだ」

 本当は海や風、セフィーロの人たちと一緒に話し合いたかったのだが、光はここで言っても構わなかった。むしろ、先にランティスに聞いてもらいたいと、何故かそう思ったのだ。

「夢?」
「うん。とても大きな闇で、そこから聞こえるんだ。セフィーロはもうすぐ私のものって・・・・」
 とてつもなく不気味な女の声。思い出すと鳥肌が立ってくる。

「それとは別に女の子が現れて・・・・。顔はよくわからないけど、ノヴァって名乗っていた。そして、私が大好きなみんなを殺すって・・・・」

 物騒な内容の夢に、ランティスは眉を潜める。

「東京にいたときも見たけど、あの夢は一体・・・・?」

 不安になる光。まるでこれから先のことを啓示しているようで、もしあの夢を言うとおりになってしまったら・・・・。

「みんなには話したのか?」
「ううん、これから・・・・」

 不吉な夢に不安を隠せない光に、ランティスは励ます。

「大丈夫だ。俺も皆も死なない」

 短調な言葉だが、そこには頼もしさが大いに感じられた。

 ランティスは立ち上がり、光の肩に自分のマントを掛ける。ランティスが長身のため、小柄な光は彼に抱きかかえられるような形となった。

 それにより、光は彼に身を預けてもよいような安心感を得た。

 そのままランティスに連れられて歩き出す光。その光景は、さながら騎士に守られている姫のようであった。




今回はここまで。
あと、レイアースの時間軸ですが、原作ラストの場面から。
原作では戦いが終わってから3年後になっていますが、ここでは一年後ということになっています。
あと、原作中心ですが、アニメのオリジナルキャラも出ているので、原作の舞台にアニメのキャラが登場した、ということになっています。
詳しい説明は、また後ほどに。
それでは。