Re: 新世界への神話 ( No.9 ) |
- 日時: 2009/09/23 18:52
- 名前: RIDE
- 更新します
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高い岩場が並んだその麓に、小さな村があった。
その村の薬屋は平和な一日の終わりに安息していた。だが、近づいてくる轟音が彼の平穏を断ち切った。
スーパーカーが薬屋の家屋に突っ込み、壁を破壊した。
「おいジェット、速けりゃいいってもんじゃねぇんだぞ!」
スーパーカーからドリルがジェットに文句を言いながら降りてきた。
「いいではないか。目的地に着ければ」
ダイを抱えながら降りてきたジェットは何事もない様子で店主に近づいた。
「腹痛の薬をくれ」
突然の来客に店主は慄きながらも薬を運んできた。ジェットはそれを受け取って、ダイに飲ませた。
「どうだ?」 「・・・・治ってきた」 「そうか、よかった。これは代金だ」
霊神宮から資金の提供を受けているので、金銭面には問題なかった。しかし・・・・。
「あの、壊した壁は・・・・?」 「え?」
壊した壁はもちろん、壊した本人が弁償しなければならない。
「直ちに払ってもらいますよ」 「ええっと・・・・」
時を待ってもらえば、霊神宮が立て替えてくれるのだが、今すぐ払えというのなら別だ。現在の自分たちの手持ちはではとても足りない。
仕方がないのでダイたちは、自分たちで壁を修理する事になった。
「な、情けない・・・・」
ジムは自分たちの格好の悪さに、涙を流していた。
「泣いている暇があったら手伝え。それにしても綾崎、おまえ釘打つの早いな」 「僕以前大工仕事のアルバイトをやった事がありますから」
ハヤテのおかげで修理が捗る中、村が騒がしくなってきた。
「どうしたんだ、一体?」
村の入り口あたりに人が集まりだしている。気になったので、一同も作業を止めてその輪 の中に入っていく。
村の前には、荒くれ者と思われる集団がやって来ていた。しかも驚くべき事に、その先頭にたっているのは、ハヤテたちが良く知る人物であった。
「咲夜さん!」
その声を聞いて、咲夜もハヤテたちの存在に気付く。
「何や、自分らも来とったんか」
咲夜は、クックッと感じ悪く笑った。
「咲夜さん、どうしてここに?後ろの人たちは一体?」
咲夜の後ろにいる荒くれ者らを指すと、咲夜の代わりにその者たちが答えた。
「我々は艶麗様の使いである」 「咲夜様は艶麗様に忠誠を誓った。手始めに我々と共にこの村を襲う事にしたのだ」 「そんな・・・・」
ハヤテとマリアは信じられなかった。咲夜は悪事に手を貸したりはしないはずであった。
「ほなおまえら、行くで!」
咲夜の号令で艶麗の手下たちは村の襲撃を始めようとしたその時だった。
「おまえ、人という道を知らないな」
村人たちの前へダイが出てきた。その場にいる全員が彼に注目する。
「俺は薬屋の壁を修理しなければならねえと約束した。約束は守らなきゃいけねえ。それが 人という道の一つだ。約束果たす前に滅茶苦茶にしてもらっちゃあ困るな」
尊大にかまえているダイに対して、艶麗の手下たちはキレだした。
「ふざけるな!何を訳のわからんことを言っている!」 「そうだ!おまえからぶっ殺してやる!」 「待った!」
ダイに襲い掛かろうとした艶麗の手下たちを咲夜が止めた。
「中々面白い男やな。気に入ったで」
咲夜は天に手をかざした。すると掌で炎が浮かび出た。目の錯覚かとも思ったが、どうやら本物のようだ。
「あれはまさか、精霊の力?」 「精霊の使者なんて、久しぶりに見たぞ!」
村人たちが交わす言葉を聞いて、人間たちに世界を委ねたというのは本当らしいと賢明大聖の言葉を思い出したダイであった。
「ここは僕が・・・・」
ハヤテはシルフィードを呼び出そうとするが、ダイによって止められる。
「何するんですか!?」
精霊との戦いは自分に任せるとダイは言った。それなのにここで自分を止めたら、村は荒 されてしまう。自分の命も危ないというのに、彼には戦う意思も見当たらない。
「ここじゃ駄目だ。ジム、いいか・・・・」
ダイはジムにそっと耳打ちする。
「それじゃ、はじめるか」
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